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特許7395322立体表示装置、立体表示方法および撮影方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】立体表示装置、立体表示方法および撮影方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20231204BHJP
【FI】
G02B30/56
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019203696
(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公開番号】P2021076730
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】桃井 芳晴
(72)【発明者】
【氏名】高木 康博
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-316170(JP,A)
【文献】特開2017-062295(JP,A)
【文献】特開2007-206655(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198364(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された空間内に仮想的に設けられた仮想表示面に結像する複数の異なる多視点画像群から合成された要素画素を前記仮想表示面の上方の視域の複数の視点から観察者に直接視認させることにより立体映像を知覚させる立体表示装置であって、
前記仮想表示面において第1多視点画像群を結像する第1光線群を、前記仮想表示面に対向して離間した第1面から照射する第1表示部と、
前記仮想表示面において第2多視点画像群を結像する第2光線群を、前記仮想表示面に対して前記第1面と同じ側かつ前記第1面とは異なる位置に配置された第2面から照射する第2表示部と、を備え、
前記第1表示部と前記第2表示部とは、前記第1光線群の少なくとも一部と前記第2光線群の少なくとも一部とが前記仮想表示面において交差することにより互いに対応した前記立体映像を形成するようにそれぞれ配置されており、
前記第1表示部は、前記第1面に対向し前記第1多視点画像群から合成された要素画素を一の面に表示する要素画素表示部と、それぞれ異なる方向の光線の集合として前記立体映像を前記観察者の目に対して直接視認させるように前記第1面において複数の光線制御素子が敷設されたレンズアレイである光線制御部と、を有し、
前記第2表示部は、前記第2面に対向し前記第2多視点画像群から合成された要素画素を一の面に表示する要素画素表示部と、それぞれ異なる方向の光線の集合として前記立体映像を前記観察者の目に対して直接視認させるように前記第2面において複数の光線制御素子が敷設されたレンズアレイである光線制御部と、を有し、
前記レンズのピッチは、前記仮想表示面において結像する画素の幅よりも大きくなるように設定されている、
前記光線制御部
立体表示装置。
【請求項2】
前記第1表示部および前記第2表示部は、点光源と、前記点光源から到達した光線を準平行光に変換して前記要素画素表示部に照射するコリメータレンズと、をそれぞれ有する
請求項に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記第1表示部および前記第2表示部は、第1点光源と、前記第1点光源と離間して配置された第2点光源と、前記第1点光源および前記第2点光源からそれぞれ到達した光線を準平行光に変換し、前記要素画素表示部に照射するコリメータレンズと、をそれぞれ有し、
前記第1点光源が発光するタイミングと前記第2点光源が発光するタイミングとを時分割により切り替えて表示させることにより前記立体映像を構成させる切替部をさらに備える
請求項に記載の立体表示装置。
【請求項4】
前記要素画素表示部は、前記仮想表示面において結像する複数の要素画素を予め設定されたピッチにより表示するように設定され、
前記光線制御部は、前記複数の要素画素を前記仮想表示面に結像させる複数の光線制御素子が予め設定されたピッチにより敷設され、
下記条件式(1)を満足する
請求項1~3のいずれか一項に記載の立体表示装置。
Ep=Lp(Li+g)/Li ・・・(1)
ただし、
Ep:前記要素画素表示部における前記複数の要素画素のピッチ
Li:前記光線制御部と前記仮想表示面との距離
Lp:前記光線制御素子のピッチ
g:前記光線制御部と前記要素画素表示部との距離
【請求項5】
前記第1光線群および前記第2光線群を前記仮想表示面において透過させる開口部と、
前記開口部の外側に到達する前記第1光線群または前記第2光線群のサイドローブの少なくとも一部を遮断する遮光部と、を有する
請求項に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記仮想表示面に対して前記第1面と同じ側かつ前記第1光線群が通過する領域に前記第1光線群が透過するように配置されたハーフミラーをさらに備え、
前記第2表示部は、前記第2光線群が前記ハーフミラーにより反射された後に前記仮想表示面に到達するように設定された
請求項1~5のいずれか一項に記載の立体表示装置。
【請求項7】
前記第1表示部および前記第2表示部は、前記第1光線群が前記仮想表示面を照射する領域と、前記第2光線群が前記仮想表示面を照射する領域と、の少なくとも一部互いに重なり合わないように配置されていることにより、前記視域を互いに補間し合う、
請求項に記載の立体表示装置。
【請求項8】
所定の軸周りに環状に形成された複数の前記第1表示部を有する下部表示ブロックと、
前記軸周りに環状に形成された複数の前記第2表示部を有し、する上部表示ブロックと、を備え、
前記下部表示ブロックと前記上部表示ブロックとは、それぞれが照射する光線群が前記仮想表示面において重畳するように設置され、
前記視域は、環状に構成される、
請求項7に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記第1表示部および前記第2表示部は、環状に配置され、
前記仮想表示面は、前記第1光線群と前記第2光線群とが重なる領域に設定され、
前記視域は、環状に構成される、
請求項1~5のいずれか一項に記載の立体表示装置。
【請求項10】
予め設定された空間内に仮想的に設けられた仮想表示面に結像する複数の異なる多視点画像群から合成された要素画素を上記仮想表示面の上方の視域の複数の視点から観察者に直接視認させることにより立体映像を知覚させる立体表示方法であって、
前記仮想表示面に対向して離間した第1面に、前記仮想表示面において第1多視点画像群を結像する第1光線群を照射する第1表示部を設置する第1設置ステップと、
前記仮想表示面に対して前記第1面と同じ側かつ前記第1面とは異なる第2面に、前記仮想表示面において前記第1光線群と交差し、且つ、第2多視点画像群を結像する第2光線群を照射する第2表示部を配置する第2設置ステップと、
前記第1表示部と前記第2表示部とのそれぞれから、互いに対応した前記立体映像を構成するための光線を前記仮想表示面へ照射する光線群照射ステップと、を備え
前記第1表示部は、前記第1面に対向し前記第1多視点画像群から合成された要素画素を一の面に表示する要素画素表示部と、それぞれ異なる方向の光線の集合として前記立体映像を前記観察者の目に対して直接視認させるように前記第1面において複数の光線制御素子が敷設されたレンズアレイである光線制御部と、を有し、
前記第2表示部は、前記第2面に対向し前記第2多視点画像群から合成された要素画素を一の面に表示する要素画素表示部と、それぞれ異なる方向の光線の集合として前記立体映像を前記観察者の目に対して直接視認させるように前記第2面において複数の光線制御素子が敷設されたレンズアレイである光線制御部と、を有し、
前記レンズのピッチは、前記仮想表示面において結像する画素の幅よりも大きくなるように設定されている、
立体表示方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の立体表示装置に表示させる前記立体映像を生成するために前記立体映像の元になる立体物を撮影する撮影方法であって、
前記第1多視点画像群を取得するための第1カメラと前記立体物とを、前記仮想表示面と前記第1面との距離の整数倍の距離になる位置にそれぞれ配置して前記立体物を撮像する第1多視点画像群生成ステップと、
前記第2多視点画像群を取得するための第2カメラと前記立体物とを、前記仮想表示面と前記第2面との距離の整数倍の距離になる位置にそれぞれ配置して前記立体物を撮像する第2多視点画像群生成ステップと、を備え、
前記第1カメラと前記第2カメラとは、前記第1光線群と前記第2光線群とが交差する位置に対応する位置にそれぞれ配置される
撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体表示装置、立体表示方法および撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立体的に映像を視認させる立体表示装置が開発されている。
【0003】
特許文献1に記載の視差式3次元空中映像表示装置は、被投影物の立体物を、1つの幾何平面に対する面対称位置に結像可能な実鏡映像結像光学系を少なくとも2つ並べて配置し、各結像光学系に対応してそれぞれに被投影物を配置する。そして、相対的に左側に配置した右目用結像光学系によって結像される被投影物の実鏡映像と、相対的に右側に配置した左目用結像光学系によって結像される被投影物の実鏡映像と、を同じ位置で重ね合わせて表示させる。
【0004】
特許文献2に記載の3次元映像表示装置は、3次元画像を表示する3次元画像表示手段、走査素子および凹面鏡を有する。走査素子は、ディスプレイからの入射光を屈曲させて入射角度に対する出射角度を変えるものであって、素子面が光の入射方向に対して傾斜した状態で回転可能である。凹面鏡は、上記走査素子から入射された光を結像させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-163702号公報
【文献】特開2012-008297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載の技術は、限られた狭い範囲から観察することにより空中に結像する2次元映像を認識させるに過ぎない。また特許文献2に記載の技術は、表示させる像の大きさに対して大きい表示装置が必要となるうえ、光学系の構造が複雑である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、簡単な構成により広い視域を有する立体像表示装置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる立体表示装置は、予め設定された空間内に仮想的に設けられた仮想表示面を通過する光線を視認させることにより立体映像を知覚させるものであって、第1表示部および第2表示部を有する。第1表示部は、仮想表示面において第1多視点画像群を結像する第1光線群を、仮想表示面に対向して離間した第1面から照射する。第2表示部は、仮想表示面において第2多視点画像群を結像する第2光線群を、仮想表示面に対して第1面と同じ側かつ第1面とは異なる位置に配置された第2面から照射する。上記立体表示装置において、第1表示部と第2表示部とは、第1光線群の少なくとも一部と第2光線群の少なくとも一部とが仮想表示面において交差することにより互いに対応した立体映像を形成するようにそれぞれ配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、簡単な構成により広い視域を有する立体像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる立体表示装置の概観図である。
図2】実施の形態1にかかる表示部の構成図である。
図3】表示部が表示する多視点画像の原理を説明するための図である。
図4】実施の形態1にかかる仮想表示面を説明するための図である。
図5】多視点画像を撮影する方法について説明するための図である。
図6】多視点画像によって立体像を再現した状態を示す図である。
図7】実施の形態1の変形例にかかる立体表示装置の概観図である。
図8】実施の形態1の変形例にかかる表示部の構成を説明するための図である。
図9】実施の形態2にかかる表示部の構成を示す図である。
図10】実施の形態3にかかる表示部の構成を示す図である。
図11】実施の形態2の変形例にかかる表示部の構成を示す図である。
図12】実施の形態3の変形例にかかる表示部の構成を示す図である。
図13】実施の形態4にかかる表示部の構成を説明するための図である。
図14】立体映像を生成するためのカメラのは位置を説明するための第1の図である。
図15】立体映像を生成するためのカメラのは位置を説明するための第2の図である。
図16】実施の形態5にかかる立体表示装置の概観図である。
図17】実施の形態5にかかる立体表示装置の側面図である。
図18】実施の形態6にかかる立体表示装置の分解斜視図である。
図19】実施の形態6にかかる立体表示装置の側面図である。
図20】実施の形態6にかかる立体表示装置の構成の第1例を示す上面図である。
図21】実施の形態6にかかる立体表示装置の構成の第2例を示す上面図である。
図22】実施の形態7にかかる立体表示装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態1にかかる立体表示装置の概観図である。図1は、立体表示装置10を斜め上方から観察した状態を示している。
【0013】
立体表示装置10は、第1表示部11、第2表示部12、第3表示部13および第4表示部14を有している。第1表示部11~第4表示部14は、それぞれが立体映像の構成要素となる多視点画像群を表示可能に構成されている。第1表示部11~第4表示部14は、互いに同じ矩形の表示面を有している。第1表示部11~第4表示部14は、それぞれの表示面が立体表示装置10の一の主面を形成するように環状に配置されている。
【0014】
立体表示装置10の上方には、仮想表示面15が設けられている。仮想表示面15は、立体表示装置10の上方の空間内において仮想的に設けられた表示面である。第1表示部11~第4表示部14は、それぞれが表示する多視点画像群が仮想表示面15で結像するように構成されている。また、第1表示部11~第4表示部14は、それぞれが結像する多視点画像群が仮想表示面15で互いに交差するように配置されている。そして、第1表示部11~第4表示部14がそれぞれ仮想表示面15で結像させる多視点画像群は、互いに対応した画像を形成するように設定されている。そのため、仮想表示面15の上方における視域から仮想表示面15を観察するユーザは、複数の視点から仮想表示面15を観察することにより立体映像を知覚する。
【0015】
例えば、ユーザは、図1に示した仮想表示面15の点P1を、第1視点V1、第2視点V2および第3視点V3から観察する。この場合、ユーザは第1視点V1において第1表示部11が表示する第1画像を知覚する。同様に、ユーザは第2視点V2において第2表示部12が表示する第2画像を知覚する。そして、ユーザは第3視点V3において第3表示部13が表示する第3画像を知覚する。第1画像、第2画像および第3画像は、それぞれの視点から観察した場合にユーザに立体映像を知覚させるように構成されている。そのため、ユーザは、視点を変えることにより、立体映像を知覚する。なお、図1の第1視点V1に示すように、第1表示部11~第4表示部14は、ユーザは左右の目に対してそれぞれ異なる画像を視認させるように構成されている。
【0016】
なお、以降の説明において、立体表示装置10の上方または上側とは、立体表示装置10の表示面側を示し、立体表示装置10の下方または下側とは、立体表示装置10の表示面側の反対側を示す。また立体表示装置10の側方とは、立体表示装置10の表示面に平行な方向から表示面を直交する面を観察する方向をいう。
【0017】
次に、図2を参照して第1表示部11~第4表示部14の構成について説明する。図2は、実施の形態1にかかる表示部の構成図であって、第1表示部11の構成を模式的に示したものである。なお、第1表示部11~第4表示部14は、それぞれ同じ構成を有している。本実施の形態において、図2を参照して第1表示部11について説明するが、第2表示部12、第3表示部13および第4表示部14も同様の構成を有している。
【0018】
第1表示部11は、仮想表示面15に多視点画像群を表示する機能を有したディスプレイである。第1表示部11は、多視点画像群を表示することにより、ユーザの両眼視差またはユーザが視点を移動させた場合に生じる運動視差を生じさせて、ユーザに立体映像を知覚させる。より具体的には、第1表示部11は、インテグラルフォトグラフィディスプレイまたはライトフィールドディスプレイといった裸眼立体ディスプレイを採用することができる。第1表示部11は、光線制御部110、要素画素表示部112および光源113を有している。
【0019】
光線制御部110は、第1表示部11上に2次元状に配置された複数の光線制御素子111であるマイクロレンズを有するマイクロレンズアレイである。光線制御部110は、マイクロレンズにより、要素画素表示部112に表示された要素画素の光線の射出方向を制御する。
【0020】
要素画素表示部112は、多視点画像群を形成するための複数の要素画素を表示する。要素画素表示部112は、例えば、光透過型のLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)であって、複数の要素画素を表示する。
【0021】
光源113は、要素画素表示部112に光線を照射する照明である。光源113は、例えばLED(light-emitting diode)であって、LEDに導光板が付加されていても良い。また光源113は、OLEDにより構成された面発光型の照明であってもよい。
【0022】
第1表示部11は、上述の構成により、多視点画像群を仮想表示面15に結像させる。例えば、多視点画像群は、仮想表示面15において、立体映像を異なる視点から撮像した一の点PAを有している。点PAは、複数の光線制御素子111のそれぞれから要素画素の光線が照射され、仮想表示面15の点PAにおいて結像する。このような構成により、ユーザは点PAを異なる視点から観察すると、運動視差を生じる。同様に、多視点画像群は、例えば、仮想表示面15において、立体映像を異なる視点から撮像した一の点PBを有している。点PBは、複数の光線制御素子111のそれぞれから要素画素の光線が照射され、仮想表示面15の点PBにおいて結像する。
【0023】
図3を参照して、第1表示部11についてさらに説明する。図3は、表示部が表示する多視点画像の原理を説明するための図である。図3は、光線制御部110および要素画素表示部112の一部を拡大して示したものである。
【0024】
図3には、光線制御部110が有する複数の光線制御素子111のうちの一例として、光線制御素子111Nが示されている。光線制御素子111Nの下方には、光線制御素子111Nに対応した要素画素112A、112Bおよび112Cが配置されている。要素画素112A、112Bおよび112Cの上方にマイクロレンズである光線制御素子111Nを配置することにより、要素画素112A、112Bおよび112Cをそれぞれ透過した光線は、マイクロレンズによりそれぞれ異なる指向性を有する。例えば、要素画素112Aと光線制御素子111Nの主点との距離がマイクロレンズの焦点距離である場合、要素画素112Aからの光は、光線制御素子111Nを通して、平行光として発せられる。
【0025】
図3の例では、光線制御素子111Nの下において、中央にある要素画素112Aからの光は、実線で示されるように、上方向に発せられる。また、右側にある要素画素112Bからの光は、破線で示されるように、左上方向に発せられる。また、左側にある要素画素112Cからの光は、一点鎖線で示されるように、右上方向に発せられる。このように、光線制御素子111Nの下の要素画素112A、112Bおよび112Cからの光は、それぞれ、ある方向の光として表現され得る。なお、ここでは理解を容易にするため、便宜上、光線制御素子111Nの下方に、要素画素を3つ配置した例を示したが、光線制御素子111Nの下方において対応する要素画素は4つ以上配置されうる。
【0026】
次に、図4を参照して、立体表示装置10が仮想表示面15において立体映像を表示する原理ついて説明する。図4は、実施の形態1にかかる仮想表示面を説明するための図である。図4には、立体表示装置10を構成する第1表示部11、第2表示部12、仮想表示面15および観察領域11Vおよび観察領域12Vが模式的に示されている。
【0027】
図4において、第1表示部11は側方から観察した状態で示されている。第1表示部11が有する光線制御部110は、右端に光線制御素子111Rを有している。光線制御素子111Rは、二点鎖線により示された光線群11Rを照射するように、光線群の指向性が設定されている。光線群11Rは、光線制御素子111Rから右側上方に拡散する。また光線制御部110は、左端に光線制御素子111Lを有している。光線制御素子111Lは、点線線により示された光線群11Lを照射するように、光線群の指向性が設定されている。光線群11Lは、光線制御素子111Lから光線群11Rよりもさらに右側に傾いた方向に拡散する。
【0028】
第1表示部11の上方には、仮想表示面15が太い一点鎖線により示されている。仮想表示面15は、上述の光線群11Rと光線群11Lとが重なり合う領域内に設定されている。なお、光線制御素子111Rと光線制御素子111Lとの間に存在する複数の光線制御素子から照射される光線群も、仮想表示面15を通過するように設定されている。すなわち第1表示部11は、仮想表示面15において多視点画像群を結像できる。
【0029】
第1表示部11の右側には、第2表示部12が示されている。第2表示部12は、マイクロレンズである光線制御素子121L、121Rを含む光線制御部120を有している。光線制御部120は、左端に光線制御素子121Lを有している。光線制御素子121Lは、一点鎖線により示された光線群12Lを照射するように、光線群の指向性が設定されている。光線群12Lは、光線制御素子121Lから左側上方に拡散する。また光線制御部120は、右端に光線制御素子121Rを有している。光線制御素子121Rは、実線により示された光線群12Rを照射するように、光線群の指向性が設定されている。光線群12Rは、光線制御素子121Rから光線群12Lよりもさらに左側に傾いた方向に拡散する。
【0030】
仮想表示面15は、上述の光線群12Lと光線群12Rとが重なり合う領域に設定されている。なお、光線制御素子121Lと光線制御素子121Rとの間に存在する複数の光線制御素子から照射される光線群も、仮想表示面15を通過するように設定されている。すなわち第2表示部12は、仮想表示面15において多視点画像群を結像できる。
【0031】
仮想表示面15の上方には、観察領域11Vが示されている。観察領域11Vは、仮想表示面15の上方に位置し、光線群11Rおよび光線群11Lが重なる領域である。すなわち、観察領域11Vは、第1表示部11が仮想表示面15に結像させる多視点画像群を観察できる領域である。
【0032】
また観察領域11Vの左側には、観察領域12Vが示されている。観察領域12Vは、仮想表示面15の上方に位置し、光線群12Rおよび光線群12Lが重なる領域である。すなわち、観察領域12Vは、第2表示部12が仮想表示面15に結像させる多視点画像群を観察できる領域である。
【0033】
上述のように、仮想表示面15は、第1表示部11が有する複数の光線制御素子からの光線が通過するように設定されるとともに、第2表示部12が有する複数の光線制御素子からの光線が通過するように設定されている。つまり、第1表示部11から発せられる光線群(第1光線群)の少なくとも一部と、第2表示部12から発せられる光線群(第2光線群)の少なくとも一部とは、仮想表示面15において交差する。よって、ユーザは、観察領域11Vおよび観察領域12Vから仮想表示面15を観察することにより、第1表示部11または第2表示部12から発せられ仮想表示面15において結像する多視点画像群を視認できる。
【0034】
以上、第1表示部11および第2表示部12を例示して仮想表示面15について説明したが、立体表示装置10が有する第3表示部13および第4表示部14も同様の構成となっている。すなわち、立体表示装置10において、第1表示部11~第4表示部14は、それぞれが仮想表示面15において多視点画像群を結像するとともに、それぞれが照射する光線は仮想表示面15において交差する。以降の説明においても、図4に示したような2つの表示部による例を示すが、この説明は表示部の数を限定するものではない。
【0035】
このような構成により、ユーザが立体映像を知覚できる観察領域は、環状に配置された第1表示部11~第4表示部14に対応して、環状に構成される。このように、実施の形態1によれば、広い視域を有する立体表示装置を提供できる。
【0036】
次に、多視点画像群と要素画素群との関係について説明する。図5及び図6は、実施の形態1にかかる多視点画像群と要素画素群との関係について説明するための図である。なお、以下の説明では、説明を明確にするため、水平方向について考える。
【0037】
図5は、多視点画像を撮影する方法について説明するための図である。図5には、物体90と、物体90を撮像する11台のカメラ50A~50Kが示されている。図に示した例では、物体90を撮像して生成される画像は要素画素11個分の長さとなる。したがって、立体表示装置は、物体90の立体映像を表示するために、11の異なる方向から撮影した画像が必要となる。したがって、11個の異なる位置に設置されたカメラ50A~50Kが、物体90をそれぞれ撮影する。
【0038】
図6は、多視点画像によって立体像を再現した状態を示す図である。図6は、立体表示装置10が物体90の立体映像を表示した状態を示している。立体表示装置10は、要素画素表示部112に、物体90を撮像した多視点画像を複数表示する。要素画素表示部112に表示される画像は、図5に示した11台のカメラ50A~50Kによりそれぞれ撮影されたものである。これにより、多視点画像が表示された要素画素表示部112から、11台のそれぞれのカメラに対応する11本の光線3A~3Kが発せられ、立体映像90Vが表示される。なお、上述の説明は立体物である物体90を撮影する場合を説明したが、立体映像をコンピュータグラフィックスにより生成する場合は、要素画素表示部112に表示する画素の幅と、表示させる物体の大きさとの関係により複数の多視点画像を生成する。
【0039】
<実施の形態1の変形例>
図7および図8を参照して実施の形態1の変形例について説明する。実施の形態1の変形例にかかる立体表示装置10は、第1表示部11~第4表示部14の構成が実施の形態1にかかる立体表示装置10と異なる。図7は、実施の形態1の変形例にかかる立体表示装置の概観図である。
【0040】
図7に示すように、第1表示部11~第4表示部14は、逆四角錐台のそれぞれの斜面に沿うように配置されている。すなわち、第1表示部11と第2表示部12とは対向する斜面の関係に位置し、逆四角錐台の中心軸を中心として90度回転した位置において、第3表示部13と第4表示部14とは対向する斜面の関係に位置している。
【0041】
したがって、第1表示部11と第2表示部12とは、それぞれの表示面が平行ではなく、互いに対向する方向に傾いている。同様に、第3表示部13と第4表示部14とは、それぞれの表示面が互いに対向する方向に傾いている。また、仮想表示面15は、逆四角錐台の底面側に位置している。
【0042】
図8を参照して、表示部の構成をさらに説明する。図8は、実施の形態1の変形例にかかる表示部の構成を説明するための図である。図8に示すように、第1表示部11と第2表示部12とは、それぞれの表示面が互いに対向する方向に傾いており、光線制御部110と光線制御部130とが成す角度は角度αである。角度αは例えば90度から180度の間の任意の値を取り得る。
【0043】
図8に示すように、光線制御素子111Rは光線群11Rを照射し、光線制御素子111Lは光線群11Lを照射する。ここで、図4図8とを比較すると、本実施の形態の場合、第1表示部11の表示面と光線群11Rとが成す角度は、第1表示部11の表示面と光線群11Lとが成す角度と大きな差がない。そのため、本実施の形態における光線制御部110は、図4に示した例と比較すると、レンズの収差による影響を受けにくく、光学特性が良いという利点がある。
【0044】
以上、実施の形態1について説明したが、実施の形態1にかかる立体表示装置10の構成は上述のものに限られない。
【0045】
例えば、上記立体表示装置10は表示部を4つ有していたが、表示部の数は1以上であればよい。例えば表示部は、複数の表示面を有し、複数の表示面からそれぞれ照射される光線群が仮想表示面において多視点画像群を結像するとともに、複数の表示面からそれぞれ照射される光線群(例えば、第1多視点画像群と、第2多視点画像群と)が仮想表示面において交差するように構成されていれば良い。複数の表示部の配置は上述の例以外に、種々の配置が採用されうる。表示部は矩形に限られず、任意の形状が採用されうる。
【0046】
また、上記立体表示装置10において、第1表示部11~第4表示部14は、マイクロレンズアレイに代えて、ピンホールアレイを有するインテグラルフォトグラフィ方式のディスプレイであってもよい。
【0047】
さらに、上記立体表示装置10において、要素画素表示部112は、OLED(Organic Light Emitting Diode:有機発光ダイオード)により構成されても良い。その場合、OLEDは自発光であるから光源113は、省略される。
【0048】
上述の構成により、立体表示装置10は、簡単な構成により立体像の視域を拡大することができる。以上のように、実施の形態1および実施の形態1の変形例によれば、広い視域を有する立体表示装置を提供できる。
【0049】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2は、表示部から発せられる光線のサイドローブを抑制するための照明光学系を有する。図9を参照して、実施の形態2にかかる構成を説明する。図9は、実施の形態2にかかる表示部の構成を示す図である。実施の形態2にかかる立体表示装置10は、コリメータレンズ114および点光源115を有している。なお、理解を容易にするために図9は第1表示部11を一例として示しているが、図9に示す構成は、立体表示装置10が有する複数の表示部において適用される。
【0050】
コリメータレンズ114は、要素画素表示部112の下方に位置し、点光源115から受けた光を準平行光に変換した後、変換した準平行光を要素画素表示部112に照射する。点光源115は、コリメータレンズ114に対して照明光を放射する光源であって、発光部の面積が比較的小さい照明である。点光源115は、例えば、LEDの発光部を小さく加工したものにより構成される。上述の構成により、点光源115から照射された光を受けた第1表示部11は、仮想表示面15において多視点画像群を結像させる。
【0051】
図9に示した構成において、第1表示部11および照明光学系の位置関係は、以下の関係を有している。
【数1】
ただし、fはコリメータレンズ114の焦点距離、Dは点光源115からコリメータレンズ114までの距離、Dはコリメータレンズ114から要素画素が結合する仮想表示面15までの距離である。
【0052】
また、要素画素表示部112に配置された要素画素群における対応する要素画素のピッチEは、以下の式(2)により表すことができる。
【数2】
ただし、Lはマイクロレンズである光線制御素子111のピッチ、gは要素画素表示部112の表示面と光線制御部110が有するレンズ部分との距離である。なおここでは、要素画素表示部112の厚みはDに対して充分に薄く、また光線制御部110は要素画素表示部112に対して隙間なく設置されているものとする。
【0053】
以上、実施の形態2の構成について説明した。実施の形態2にかかる立体表示装置10において、照明光学系は、ほぼコリメートされた準平行光を要素画素表示部112に照射する。要素画素表示部112を通過した光線群は、レンズアレイとの関係からそれぞれ設定された指向性を有し、仮想表示面15で結像する。
【0054】
上述のような構成により、実施の形態2にかかる立体表示装置10において、照明光学系から要素画素表示部112に到達する光線は、サイドローブの原因となる光を含まない。そのため、本実施の形態における立体表示装置10は、サイドローブによる歪んだ立体映像ないし多重像の形成が抑制される。
【0055】
<実施の形態3>
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3は、一の表示部に対して複数の照明光学系が設けられている。図10を参照して、実施の形態3にかかる構成を説明する。図10は、実施の形態3にかかる表示部の構成を示す図である。実施の形態3にかかる立体表示装置10は、コリメータレンズ114を照射する光源として、第1点光源116Aおよび第2点光源116Bを有している。なお、理解を容易にするために図9は第1表示部11を一例として示しているが、図10に示す構成は、立体表示装置10が有する複数の表示部において適用される。
【0056】
第1点光源116Aは、実施の形態2における点光源115と同様の構成である。第2点光源116Bは第1点光源116Aと離間した位置からコリメータレンズ114を照射する点光源である。
【0057】
コリメータレンズ114は、第1点光源116Aと異なる位置に設けられた第2点光源116Bから照射された光を受けると、第1点光源116Aから光を受けた場合とは異なる方向へ準平行光を照射する。そのため、第2点光源116Bに起因する準平行光を受けた光線制御部110は、第1点光源116Aから光を受けた場合とは異なる指向性を有する光線群を照射する。
【0058】
図に示すように、本実施の形態における立体表示装置10は、第1仮想表示面16Aと第2仮想表示面16Bとを有している。第2仮想表示面16Bは、第2点光源116Bに起因して形成される仮想表示面であって、第1仮想表示面16Aの左側に隣接して形成される。
【0059】
上述の構成により、第1点光源116Aから照射された光を受けた第1表示部11は、第1仮想表示面16Aにおいて多視点画像群を結像させる。また、第2点光源116Bから照射された光を受けた第1表示部11は、第2仮想表示面16Bにおいて多視点画像群を結像させる。
【0060】
図10に示すように、第1点光源116Aおよび第2点光源116Bと、コリメータレンズ114との距離はいずれもDである。また第1点光源116Aと第2点光源116Bとの距離はDである。このとき、第1点光源116Aと第2点光源116Bとの距離Dは、以下の式(3)の関係が成立する。
【数3】
【0061】
上述の構成により、実施の形態3に係る立体表示装置10は、実質的にユーザが立体映像を観察できる視域を拡張できる。なお、本実施の形態における立体表示装置10は、第1点光源116Aを点灯させるタイミングと第2点光源116Bを点灯させるタイミングとを異ならせる切替部(不図示)を有する。そして、第1点光源116Aを点灯させた場合の要素画素表示部112の表示内容と、第2点光源116Bを点灯させた場合の要素画素表示部112の表示内容とを異なるものとする。このように構成した上で、立体表示装置10は、適宜、第1仮想表示面16Aと第2仮想表示面16Bとを交互に照射する。
【0062】
本実施の形態における立体表示装置10は、2つの照明光学系の位置およびマイクロレンズの光学設計を調節することにより、第1仮想表示面16Aの一部と第2仮想表示面16Bの一部とを重ねるように設定することも可能である。すなわち、第1仮想表示面16Aと第2仮想表示面16Bと上記DSより小さい距離に設定することにより、隙間なく視域を拡張できる。
【0063】
本実施の形態における立体表示装置10は、例えば、状況に応じて、適宜照明光学系を切り替えることにより視域を変更することができる。あるいは、立体表示装置10は、時分割により照明光学系を切り替えることにより、視域を拡張させることができる。また、本実施の形態における立体表示装置10は、例えば、観察者であるユーザを検出する機能をさらに付加し、ユーザの位置またはユーザの視線を検出して、検出結果に応じて照明光学系を切り替えることにより視域を変更することができる。
【0064】
<実施の形態2および実施の形態3の変形例>
次に、図11および図12を参照して実施の形態2および実施の形態3の変形例について説明する。図11は実施の形態2の変形例にかかる表示部の構成を示す図である。図12は、実施の形態3の変形例にかかる表示部の構成を示す図である。それぞれの図に示すように、実施の形態2および実施の形態3の変形例にかかる立体表示装置10は、照明光学系として、コリメータレンズ114に代えて、コリメータレンズアレイ117を有している。
【0065】
コリメータレンズアレイ117は、複数の小径のコリメータレンズを敷設して構成されている。図に示したコリメータレンズアレイ117は模式的に3つの小径コリメータレンズが並んだ状態を示しているが、実際にはコリメータレンズアレイ117は、さらに小径のコリメータレンズが複数配列されたものであってもよい。本実施の形態において、各小径コリメータレンズの焦点距離fcaは以下の式(4)により表すことができる。
【数4】
【0066】
図11に示す第1表示部11において、コリメータレンズアレイ117の下方には、それぞれの小径コリメータレンズに対応した複数の点光源115が設けられている。このとき、小径コリメータレンズにそれぞれ対応した点光源115のピッチDは、以下の式(5)により表すことができる。
【数5】
ここで、DLPは小径コリメータレンズのピッチである。式(5)に示すように、点光源115のピッチDは、コリメータレンズアレイ117のピッチDLPとは異なる。ただし、点光源115およびコリメータレンズアレイ117の配置が式(5)に対応することにより、コリメータレンズアレイ117から照射される光線群は、仮想表示面15においてそれぞれの主光線が交わるように構成される。
【0067】
図12に示す第1表示部11において、コリメータレンズアレイ117の下方には、複数の対応する第1点光源116Aおよび第2点光源116Bが配置されている。このとき、対応する第1点光源116Aと第2点光源116Bとの距離DSaは、以下の式(6)により表すことができる。
【数6】
【0068】
なお、図12に示した第1点光源116Aおよび第2点光源116Bは、距離DSaより近づけて配置してもよい。これにより、本実施の形態における立体表示装置10は、隙間なく視域を拡張できる。
【0069】
上述の構成によるコリメータレンズアレイ117を採用することにより、実施の形態2および実施の形態3にかかる立体表示装置10は、照明光学系を薄型化できる。また、本実施の形態における立体表示装置10は、コリメータレンズアレイ117を採用することにより、装置の大型化をした場合においても要素画素表示部112に対して照明を均一に照射できる。
【0070】
<実施の形態4>
次に、実施の形態4について説明する。実施の形態4にかかる立体表示装置10は、仮想表示面15と観察領域とが一致するように設定されている。図13は、実施の形態4にかかる表示部の構成を説明するための図である。
【0071】
図13に示す立体表示装置10は、仮想表示面17を有している。仮想表示面17は、ユーザが観察する観察領域と一致している。すなわち仮想表示面17は、全ての表示部(例えば第1表示部11~第4表示部14)から照射される光線が交差する領域である。よって、ユーザは仮想表示面17における任意の視点から全ての表示部の多視点画像を視認できる。
【0072】
このとき、第1表示部11の要素画素表示部112に配置された要素画素群における対応する要素画素のピッチEは、以下の式(7)により表すことができる。
【数7】
ただし、Lは光線制御部110と仮想表示面17までの距離である。なお当然ながら、上述の構成は第3表示部13にも適用されるし、図13に示していない他の表示部にも適用される。
【0073】
また、視域である仮想表示面17の幅Wは、以下の式(8)により表される。
【数8】
【0074】
ところで、本実施の形態における立体表示装置10に表示させる立体映像を生成するために、任意の立体物を撮像する際には、撮像素子を有するカメラと被写体との位置関係が、第1表示部11~第4表示部14の各表示面と仮想表示面17との位置関係に等しいことが好ましい。すなわち、例えば、撮影者は、仮想表示面17の位置に被写体である立体物を置いた場合、相対的に第1表示部11の光線制御部110の位置にカメラを設置して被写体を撮像する。
【0075】
図14は、立体映像を生成するためのカメラのは位置を説明するための第1の図である。図14には、立体表示装置10の仮想表示面17において光線群が交差する位置にそれぞれカメラ50が配置されている状態を模式的に示している。多視点画像を生成する場合には、一般的に、図14に示すように、複数のカメラ50の対物レンズは、光線制御部110から仮想表示面17までの距離Lの位置に配置され、相対的に光線制御部110の位置に配置された立体物を撮影する。
【0076】
次に、図15を参照して、本実施の形態におけるカメラの配置の例を示す。図15は、立体映像を生成するためのカメラのは位置を説明するための第2の図である。図15には、仮想表示面17にリンゴ形の立体映像80Vが表示されている。仮想表示面17に立体映像80Vを表示させるためには、仮想表示面17の上方に位置するリンゴの表面の画像を撮像する必要がある。この場合、カメラ50を仮想表示面17に配置しても、リンゴの立体映像を好適に生成することができない。そのため、このような問題が発生する場合には、カメラ50を、光線制御部110とカメラ50の対物レンズとの距離を、Lの整数倍の位置に配置する。図15には、光線制御部110から2Lの距離にカメラ50が配置された状態を示している。光線制御部110から2Lの距離には、光線制御部110から照射された光線が交差する位置が存在する。そこで、カメラ50は、光線制御部110から2Lの距離において、光線制御部110から照射された光線が交差する位置に、配置され、ここから立体物を撮像する。このような方法で立体物を撮影することにより、立体表示装置10は、仮想表示面17に好適な立体映像を表示できる。
【0077】
以上の構成により、実施の形態4にかかる立体表示装置10は、広い表示範囲において、多視点画像群を視認できる。よって、実施の形態4によれば、簡単な構成により広い視域を有する立体像表示装置を提供することができる。
【0078】
<実施の形態5>
次に、実施の形態5について説明する。実施の形態5は、表示部の上方に開口部および遮光部を有している。図16は、実施の形態5にかかる立体表示装置の概観図である。図16に示す立体表示装置10は、カバー200を有する点が、実施の形態1と異なる。
【0079】
カバー200は、中空円盤状の部材であって、円環状の遮光部201および中央に設けられた開口部202を有する。カバー200は遮光性を有する材料により形成されている。そのため、遮光部201は、下方に配置された第1表示部11~第4表示部14が発する光線を遮断し、上方に透過させない。一方、開口部202は、第1表示部11~第4表示部14が発した光線を透過させる。
【0080】
次に図17を参照して、実施の形態5にかかる立体表示装置の構成をさらに説明する。図17は、実施の形態5にかかる立体表示装置10の側面図である。なお、説明の便宜上、カバー200は円の中心を通る断面で切り取られた断面図として示されている。また、以降の説明において図19に示されている第1表示部11および第2表示部12について説明する事項は、第3表示部13および第4表示部14にも適用される。
【0081】
図17に示すように、開口部202は、仮想表示面15と一致している。すなわち、第1表示部11が有する複数のレンズである光線制御素子111および第2表示部12が有する複数のレンズである光線制御素子121は、開口部202に多視点画像群を結像させるように指向性が適宜設定されている。そのため、ユーザは、カバー200の上方から開口部202を観察することにより、多視点画像群を視認する。一方、第1表示部11および第2表示部12がそれぞれ有するレンズは、開口部202の範囲外に、サイドローブと呼ばれる光線を照射する場合がある。遮光部201は、第1表示部11~第4表示部14から照射されるサイドローブを遮断する。
【0082】
例えば、図17に示す第1表示部11は左端のレンズから光線群11Lを仮想表示面15に照射する。このとき、第1表示部11は、光線群11Lのさらに左側の領域150にサイドローブ11LSを照射する。同様に、図17に示す第2表示部12は左端のレンズから光線群12Lを仮想表示面15に照射するとともに、光線群12Lのさらに左側の領域150にサイドローブ12LSを照射する。なお、図17に示した領域150は、仮想表示面15の外側の領域を例示したものである。第1表示部11~第4表示部14は、それぞれが有するレンズの特性およびバックライトの光の特性等により、仮想表示面15の外側にサイドローブを照射する。
【0083】
サイドローブ11LSおよびサイドローブ12LSは、所望の多視点画像群ではなく、意図しない歪んだ光線である。したがって、ユーザにサイドローブ11LSおよびサイドローブ12LSを視認させることは好ましくない。そこで、遮光部201は領域150に照射される光線を遮断する。
【0084】
以上に説明した構成により、実施の形態5にかかる立体表示装置10は、表示部から発せられるサイドローブを遮光する。また立体表示装置10は、仮想表示面15と開口部202とが一致していることにより、開口部202に立体映像を表示できる。ユーザは立体表示装置10の上方から開口部202を視認することにより、立体映像を知覚できる。以上、実施の形態5によれば、簡単な構成により広い視域を有する立体像表示装置を提供することができる。
【0085】
<実施の形態6>
次に、実施の形態6について説明する。図18は、実施の形態6にかかる立体表示装置の分解斜視図である。図18に示す立体表示装置10は、各構成を上下方向に分離して示している。立体表示装置10は、主な構成として、下部表示ブロック100、ハーフミラー18、上部表示ブロック210およびカバー200を有している。
【0086】
下部表示ブロック100は、実施の形態1で説明した第1表示部11~第4表示部14と同様の構成を有している。そのため、ここでの詳述は省略する。ハーフミラー18は、透過面と反射面とをそれぞれ有する平板状のハーフミラーである。ハーフミラー18は、下部表示ブロック100の上方において、ハーフミラー18の主面と下部表示ブロック100の表示面とが平行になるように設置されている。またハーフミラー18は、上面が反射面であって、下方に設置された下部表示ブロック100から照射される光線を透過し、上方に設置された上部表示ブロック210から照射される光線を反射する。
【0087】
上部表示ブロック210は、ハーフミラー18の上方に設置された多視点画像群を表示するディスプレイである。上部表示ブロック210は、第5表示部21、第6表示部22、第7表示部23および第8表示部24を有している。第5表示部21~第8表示部24は、それぞれ第1表示部11~第4表示部14と同様の構成を有している。すなわち、第5表示部21~第8表示部24は、それぞれが立体映像の構成要素となる多視点画像群を表示可能に構成されており、それぞれ同じ矩形の表示面を有している。また第5表示部21~第8表示部24は、それぞれの表示面が上部表示ブロック210一の主面を形成するように環状に配置されている。上部表示ブロック210は、上述のように形成された表示面がハーフミラー18の反射面を照射するように設置されている。
【0088】
カバー200は、実施の形態5において説明したカバー200と同様の構成を有した中空円盤状の部材である。カバー200は、上部表示ブロック210の上方に設置されている。カバー200は、円環状の遮光部201および中央に設けられた開口部202を有し、遮光部201において第1表示部11~第8表示部24が発する光線を遮断し、開口部202において第1表示部11~第8表示部24が発した光線を透過させる。
【0089】
次に図19を参照して実施の形態6にかかる立体表示装置10が立体映像を表示する原理について説明する。図19は、実施の形態6にかかる立体表示装置の側面図である。図19には、立体表示装置10を構成する第1表示部11、第2表示部12、ハーフミラー18、第5表示部21、第6表示部22およびカバー200が模式的に示されている。
【0090】
なお、以降の説明において図19に示されている第1表示部11および第2表示部12について説明する事項は、第3表示部13および第4表示部14にも適用される。同様に、以降の説明において第5表示部21および第6表示部22について説明する事項は、第7表示部23および第8表示部24にも適用される。
【0091】
図19に示した立体表示装置10において、第1表示部11、第2表示部12およびカバー200の位置関係は、図17で示した実施の形態5の構成と同様である。すなわち、第1表示部11は、例えば、左端のレンズから光線群11Lを照射し、右端のレンズから光線群11Rを照射し、それぞれ仮想表示面15に多視点画像群を結像させる。同様に、第2表示部12は、例えば、左端のレンズから光線群12Lを照射し、右端のレンズから光線群12Rを照射し、それぞれ仮想表示面15に多視点画像群を結像させる。このとき、図19に示すように、第1表示部11および第2表示部12からそれぞれ照射される光線群は、ハーフミラー18を透過した後に仮想表示面15に到達する。
【0092】
図19に示すように、上部表示ブロック210は、ハーフミラー18の上方に設置され、それぞれの表示面がハーフミラー18の上面(反射面)に対向している。また上部表示ブロック210の上方(背面側)にはカバー200が設置されている。
【0093】
第5表示部21は、例えば、左端のレンズから光線群21Lを照射し、右端のレンズから光線群21Rを照射する。光線群21Lおよび光線群21Rは、それぞれ表示面から右下方向に照射された後、ハーフミラー18に反射して右上方向に向きを変え、仮想表示面15に到達する。同様に、第6表示部22は、例えば、左端のレンズから光線群22Lを照射し、右端のレンズから光線群22Rを照射する。光線群22Lおよび光線群22Rは、それぞれ表示面から左下方向に照射された後、ハーフミラー18に反射して左上方向に向きを変え、仮想表示面15に到達する。
【0094】
このように、下部表示ブロック100から照射される光線群および上部表示ブロック210から照射される光線群は、それぞれ仮想表示面15に到達し、多視点画像群を形成する。なお、このとき、図19に示すように、下部表示ブロック100および上部表示ブロック210は、それぞれが照射する光線群が仮想表示面15において重畳するように設置され得る。
【0095】
次に、図20を参照して下部表示ブロック100と上部表示ブロック210との関係について説明する。図20は、実施の形態6にかかる立体表示装置の構成の第1例を示す上面図である。図20は下部表示ブロック100と上部表示ブロック210との関係を示すために第1表示部11~第4表示部14の外形をそれぞれ実線により示し、第5表示部21~第8表示部24の外形をそれぞれ点線により示している。
【0096】
図に示すように、第1表示部11~第4表示部14は、外形が矩形となるように環状に配置されている。同様に、第5表示部21~第8表示部24もまた、外形が矩形となるように環状に配置されている。さらに、第1表示部11~第4表示部14により形成される矩形と、第5表示部21~第8表示部24により形成される矩形は上下方向から投影した場合に重なり合うように構成される。
【0097】
このとき、例えば、第1表示部11は、図面右側に示した短辺が第4表示部14の長辺の一部と近接し、境界を形成する。同様に、第1表示部11と第2表示部12とが境界を形成し、第2表示部12と第3表示部13とが境界を形成し、そして第3表示部13と第4表示部14とが境界をそれぞれ形成する。すなわち、下部表示ブロック100は、環状に形成された複数の表示部により4カ所の境界部を有している。第5表示部21~第8表示部24もまた、第1表示部11~第4表示部14と同じように、それぞれの近接する表示部との間に境界を形成する。すなわち、上部表示ブロック210は、環状に形成された複数の表示部により4カ所の境界部を有している。
【0098】
本実施の形態における立体表示装置10は、下部表示ブロック100が有する境界部と、上部表示ブロック210が有する境界部とが重なり合わないように配置されている。つまり、立体表示装置10は、下部表示ブロック100から仮想表示面15に対して光線群を照射できない部分と、上部表示ブロック210から仮想表示面15に対して光線群を照射できない部分とが重ならないように構成されている。これにより、立体表示装置10は、複数の表示部を並べて使用する場合に、光線群を照射できない境界部を目立ちにくくすることができる。
【0099】
図21は、実施の形態6にかかる立体表示装置の構成の第2例を示す上面図である。図21に示す第1表示部11~第4表示部14および第5表示部21~第8表示部24は、内側の角部がそれぞれ近接し、内側の長辺が矩形を形成するように配置されている。また、下部表示ブロック100と上部表示ブロック210とは、内側の矩形の中心を通り図面の鉛直方向に延びる軸周りに45度回転した関係となっている。そのため、下部表示ブロック100と上部表示ブロック210とは、外形が互いに重なり合わないように配置されている。
【0100】
このような配置により、例えば、下部表示ブロック100において表示部が存在しない領域21Aは、上部表示ブロック210の第5表示部21から光線群を照射できる。同様に、例えば、上部表示ブロック210において表示部が存在しない領域11Aは、下部表示ブロック100の第1表示部11から光線群を照射できる。このように、図21に示した立体表示装置10は、下部表示ブロック100または上部表示ブロック210の一方が光線群を照射できない領域からは他方から光線群を照射し、視域を互いに補間し合うことができる。
【0101】
以上、実施の形態6について説明したが、実施の形態6にかかる立体表示装置10が有する複数の表示部は、様々な配置パタンを採用できる。実施の形態6によれば、簡単な構成により好適な立体映像を広い視域から知覚させる立体像表示装置を提供することができる。
【0102】
<実施の形態7>
次に図22を参照して実施の形態7について説明する。図22は、実施の形態7にかかる立体表示装置の側面図である。立体表示装置10は、第1表示部11および第2表示部12からそれぞれ仮想表示面15に光線群を照射し、照射した光線群を仮想表示面15で結像させるとともに、それぞれ対応する画素の光線を仮想表示面15で交差させる。例えば、図22に示す第1表示部11はバックライトから照射された光が要素画素表示部112における一の画素112pを通過した後に、仮想表示面15の画素15pに結像する。同様に、第2表示部12はバックライトから照射された光が要素画素表示部122における一の画素122pを通過した後に、仮想表示面15の画素15pに結像する。
【0103】
実施の形態7にかかる立体表示装置10は、表示部が有する光線制御部110におけるレンズアレイのピッチLと仮想表示面15において結像する表示画素の幅dとの関係は以下の関係を有する。
【数9】
ただし、Pは要素画素表示部112における要素画素の幅である。このとき、表示画素の幅dとレンズアレイのピッチLpとの関係がL>dであれば、立体表示装置10は、解像感を向上させることができる。
【0104】
またこのとき、レンズの焦点距離fは以下の式(10)により表すことができる。
【数10】
さらに、式(9)および式(10)より、以下の式を導くことができる。
【数11】
【0105】
以上、実施の形態7にかかる立体表示装置10は、表示部および仮想表示面15が上述の式により示した関係を有し、仮想表示面15における画素の幅が光線制御部110における光線制御素子111のピッチより狭い場合に、立体映像の解像感を向上させることができる。よって、実施の形態7によれば、広い視域を有し、高い解像度を知覚できる立体映像をユーザに知覚させる立体表示装置を提供できる。
【0106】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 立体表示装置
11 第1表示部
12 第2表示部
13 第3表示部
14 第4表示部
15、17 仮想表示面
16A 第1仮想表示面
16B 第2仮想表示面
18 ハーフミラー
100 下部表示ブロック
110 光線制御部
111 光線制御素子
112 要素画素表示部
113 光源
114 コリメータレンズ
115 点光源
116A 第1点光源
116B 第2点光源
117 コリメータレンズアレイ
200 カバー
201 遮光部
202 開口部
210 上部表示ブロック
図1
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