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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】リードフレームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/50 20060101AFI20231204BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01L23/50 D
H01L23/50 H
H01L23/28 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019214173
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021086899
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】512243395
【氏名又は名称】長華科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001405
【氏名又は名称】弁理士法人篠原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菱木 薫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英彦
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-318346(JP,A)
【文献】特開2018-056386(JP,A)
【文献】特開2017-130576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/28-23/31
H01L23/48
H01L23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、
金属板より形成されるリードフレーム基材の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ錫めっき層を形成し、次に前記錫めっき層が形成されていない前記リードフレーム基材の全面に前記陽極酸化膜を形成することを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項2】
封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、
金属板より形成されるリードフレーム基材の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ凹部を形成し、次に前記凹部を構成する底面及び側面に錫めっき層を形成し、次に前記錫めっき層が形成されていない前記リードフレーム基材の全面に前記陽極酸化膜を形成することを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項3】
封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、
金属板の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されためっき用レジストマスクを形成する工程と、
前記金属板における、前記めっき用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分に錫めっき層を形成する工程と、
前記めっき用レジストマスクを除去する工程と、
前記錫めっき層が形成された前記金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、
前記リードフレーム基材における、前記錫めっき層が形成された部分以外の全面に前記陽極酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするリードフレームの製造方法。
【請求項4】
封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、
金属板の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されたエッチング・めっき兼用レジストマスクを形成する工程と、
前記金属板における、前記エッチング・めっき兼用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分をハーフエッチングする工程と、
ハーフエッチングされた部分に錫めっき層を形成する工程と、
前記エッチング・めっき兼用レジストマスクを除去する工程と、
前記錫めっき層が形成された前記金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、
前記リードフレーム基材における、前記錫めっき層が形成された部分以外の全面に前記陽極酸化膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とするリードフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止樹脂型の半導体装置に使用されるリードフレームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂封止型半導体装置には、金属製のリードフレームと封止用樹脂が使用される。そして、リードフレームの基材には、主に銅合金が用いられ、封止用樹脂には、主にエポキシ樹脂が用いられる。しかし、このタイプの半導体装置は、リードフレームの面と樹脂部との密着性に問題が生じることがある。
しかも、半導体素子をリードフレームに実装する際に用いる半田が鉛フリー化されるのに伴い、実装時の半田リフロー温度が高くなり、半田濡れ広がりが生じて隣り合う接続部同士が半田ブリードによって繋がり、回路がショートする虞や、樹脂とブリードした半田との密着力が低下する懸念が生じることから、半田濡れ広がりを制御する必要が生じている。
【0003】
実装時の半田リフロー温度が高くなることによる半田濡れ広がりの問題に着目した従来の技術として、例えば、次の特許文献1には、リードフレームの全面に陽極酸化膜を形成し、レーザー加工により部分的に陽極酸化膜を除去することで、所定の部分にリードフレームの金属材料を露出させ、その部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成されたリードフレームが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-190942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に開示された技術は、レーザー加工設備を必要とし、形成した陽極酸化膜を部分的に除去するために、一つ一つの部位にレーザー加工処理を施して金属板の面を露出させるため、処理時間が増大化し、生産性やコスト面に問題があった。
【0006】
そこで、本発明者らは、鋭意検討及び試行錯誤の末に、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成され、電気的接続が必要な部分に金属板の面が露出したリードフレームを、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性が高く、コストを低減して製造することの可能なリードフレームの製造方法として、必要な箇所をめっき層でマスクして陽極酸化膜を形成し、その後、めっき層を除去する方法を着想した。
【0007】
更に、本発明者らが、上記方法について検討・考察を続けた結果、半田付け性に起因した、製造工程を効率化するための改善余地があることが判明した。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を鑑み、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成され、電気的接続が必要な部分に金属材料が露出したリードフレームを、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性が高く、コストを低減して製造することができ、更には、良好な半田付け性を得ながら製造工程を効率化することの可能なリードフレームの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明によるリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板より形成されるリードフレーム基材の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ錫めっき層を形成し、次に前記錫めっき層が形成されていない前記リードフレーム基材の全面に前記陽極酸化膜を形成することを特徴としている。
【0010】
また、本発明によるリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板より形成されるリードフレーム基材の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ凹部を形成し、次に前記凹部を構成する底面及び側面に錫めっき層を形成し、次に前記錫めっき層が形成されていない前記リードフレーム基材の全面に前記陽極酸化膜を形成することを特徴としている。
【0011】
また、本発明によるリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されためっき用レジストマスクを形成する工程と、前記金属板における、前記めっき用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分に錫めっき層を形成する工程と、前記めっき用レジストマスクを除去する工程と、前記錫めっき層が形成された前記金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、前記リードフレーム基材における、前記錫めっき層が形成された部分以外の全面に前記陽極酸化膜を形成する工程と、を含むことを特徴としている。
【0012】
また、本発明によるリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板の側の前記封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の該封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されたエッチング・めっき兼用レジストマスクを形成する工程と、前記金属板における、前記エッチング・めっき兼用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分をハーフエッチングする工程と、ハーフエッチングされた部分に錫めっき層を形成する工程と、前記エッチング・めっき兼用レジストマスクを除去する工程と、前記錫めっき層が形成された前記金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、前記リードフレーム基材における、前記錫めっき層が形成された部分以外の全面に前記陽極酸化膜を形成する工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成され、電気的接続が必要な部分に金属材料が露出したリードフレームを、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性が高く、コストを低減して製造することができ、更には、良好な半田付け性を得ながら製造工程を効率化することの可能なリードフレームの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造方法により製造される、リードフレームの一例を示す説明図で、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るリードフレームの製造工程の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明を導出するに至った経緯、及び本発明の作用効果について説明する。
上述したリードフレームに形成する陽極酸化膜は、例えば、300℃を上回る、360℃前後の高熱が加わっても封止樹脂との密着性を向上させることのできる陽極酸化膜であって、例えば、銅又は銅合金等からなる金属板に所定形状が形成されたリードフレーム基材を黒化処理液に浸漬し、リードフレーム基材を陽極として通電することにより、酸化第一銅と酸化第二銅と水酸化第二銅とが混在する単層膜として形成され、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造となっている酸化銅の被膜である。
【0016】
導出過程1―陽極酸化膜形成の際のマスクとしてのレジスト層の形成、除去
本発明者らは、電気的接続が必要な部分に金属板の面が露出し、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成されたリードフレームを、特許文献1に開示されたレーザー加工を用いることなく製造するための方策として、最初に、電気的接続が必要な部分を予めレジスト層でマスクを形成し、陽極酸化膜を形成後にレジスト層で形成したマスクを除去する手法を着想し、試行錯誤を繰り返した。
その結果、レジスト層で形成したマスクでは、黒化処理液に浸漬した状態で、陽極酸化膜を形成途中で、レジスト層が剥がれ、電気的接続が必要な部分にも陽極酸化膜が形成されてしまうことが判明した。
【0017】
導出過程2―陽極酸化膜形成の際のマスクとしてのニッケルめっき層の形成、除去
そこで、本発明者らは、鋭意検討の後に、陽極酸化膜を形成する際に用いるマスクをめっき層で構成する手法を着想した。そして、陽極酸化膜を形成する際のマスクにニッケルめっき層を用いて試行錯誤を繰り返した。詳しくは、多列配置された夫々のリードフレーム基材における電気的接続が必要な部分にニッケルめっきを施し、部分的にニッケルめっきを施したリードフレーム基材を黒化処理液に浸漬した状態で、陽極酸化膜を形成し、陽極酸化膜を形成後にニッケルめっき層を、ニッケルめっき剥離液を用いて除去することを試みた。
その結果、ニッケルめっき層を、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いた場合、ニッケルめっき剥離液を用いることで、複数箇所に形成されたニッケルめっき層を同時に剥離させて、電気的接続が必要な部分の金属板の面を露出させることができ、特許文献1に開示された技術のような一つ一つの部位にレーザー加工処理を行って金属板の面を露出させる必要がなく、リードフレームの製造コストは低減できた。
しかし、その一方で、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いた場合、ニッケルめっき層を剥離する時間が大きくかかり、リードフレームの製造時間の点で改善余地があることが判明した。
【0018】
導出過程3―陽極酸化膜形成の際のマスクとしての銀めっき層の形成、除去
そこで、本発明者らは、更なる試行錯誤を繰り返し、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして、ニッケルめっき層を用いた場合に比べて、剥離する時間を大幅に短縮でき、上述のレーザー加工を用いた製造方法に比べて、リードフレームの製造時間及び製造コストを大幅に改善できるリードフレームの製造方法を着想した。
【0019】
このリードフレームの製造方法は、金属板より形成されるリードフレーム基材の面における、半導体素子と電気的に接合する部分と外部機器と電気的に接合する部分に銀めっき層を形成し、次に銀めっき層が形成されていないリードフレーム基材の全面に陽極酸化膜を形成し、次に銀めっき層を剥離する。
より詳しくは、このリードフレームの製造方法は、金属板の両面に所定の部分が開口されためっき用レジストマスクを形成する工程と、金属板における、レジストマスクから金属板の面が露出した部分に銀めっき層を形成する工程と、めっき用レジストマスクを除去する工程と、銀めっき層が形成された金属板を所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、リードフレーム基材における、銀めっき層が形成された部分以外の全面に針状結晶構造となる陽極酸化膜を形成する工程と、剥離液により銀めっき層を除去する工程と、を含む。
【0020】
このリードフレームの製造方法のように、金属板より形成されるリードフレーム基材の面における、半導体素子と電気的に接合する部分と外部機器と電気的に接合する部分に銀めっき層を形成し、次に銀めっき層が形成されていないリードフレーム基材の全面に陽極酸化膜を形成し、次に銀めっき層を剥離するようにすれば、銀めっき剥離液を用いることで、複数箇所に形成された銀めっき層を同時に剥離させて、電気的接続が必要な部分の金属板の面を露出させることができ、特許文献1に開示された技術のような一つ一つの部位にレーザー加工処理を行って金属板の面を露出させる必要がなく、しかも、銀めっき層を剥離するための時間はニッケルめっき層を剥離するための時間に比べて格段に短くて済むため、リードフレームの製造時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0021】
しかも、銀めっき層を剥離するためのコストは、ニッケルめっき層を剥離するためのコストに比べて格段に低く、めっき層の形成を含めたコストで比較しても、銀めっき層の形成及び銀めっき層の剥離に要するコストは、ニッケルめっき層の形成及びニッケルめっき層の剥離に要するコストに比べて格段に低くなる。このため、このリードフレームの製造方法のように、銀めっき層を、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いれば、リードフレームの製造コストが、ニッケルめっき層を、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いた場合に比べて大幅に低減することができる。
【0022】
更なる改善点
更に、本発明者らが、銀めっき層をマスクとして用いる上記リードフレームの製造方法について検討・考察を続けた結果、半田付け性に起因した、製造工程を効率化するための改善余地があることが判明した。
そして、本発明者らは、その点を改善しうるめっき層を、陽極酸化膜の形成の際のマスクとして用いることを着想し、本発明を導出するに至った。
【0023】
本発明のリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板より形成されるリードフレーム基材の側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ錫めっき層を形成し、次に錫めっき層が形成されていないリードフレーム基材の全面に上記陽極酸化膜を形成する。
より詳しくは、本発明のリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板の側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されためっき用レジストマスクを形成する工程と、金属板における、めっき用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分に錫めっき層を形成する工程と、めっき用レジストマスクを除去する工程と、錫めっき層が形成された金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、リードフレーム基材における、錫めっき層が形成された部分以外の全面に上記陽極酸化膜を形成する工程と、を含む。
【0024】
本発明のリードフレームの製造方法のように、錫めっき層を、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いれば、本発明者らが本発明導出前の段階で着想した陽極酸化膜形成の際のマスクとして銀めっき層を用いるリードフレームの製造方法と同様、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性が高く、コストを低減して製造することができるという効果が得られる。
【0025】
しかも、本発明のリードフレームの製造方法のように、錫めっき層を、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いれば、錫が半田に拡散する特性を有しているため、錫めっき層を形成したままの状態にすることで、半導体素子を搭載する際に良好な半田付け性を得ることができる。
このため、本発明のリードフレームの製造方法のようにすれば、錫めっき層を除去して金属板の面を露出させるための工程を設ける必要がなくなり、その分、上述の陽極酸化膜形成の際のマスクとして銀めっき層を用いるリードフレームの製造方法に比べて、製造工程を効率化することができる。
【0026】
また、本発明のリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板より形成されるリードフレーム基材の側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における半導体素子と電気的に接合する部分と該リードフレーム基材の下面側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分にのみ凹部を形成し、次に凹部を構成する底面及び側面に錫めっき層を形成し、次に錫めっき層が形成されていないリードフレーム基材の全面に上記陽極酸化膜を形成するようにしてもよい。
より詳しくは、本発明のリードフレームの製造方法は、封止樹脂型半導体装置に使用されるリードフレームであって、酸化第一銅(CuO )と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH) )とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備え、300℃を上回る360℃前後の熱に対し封止樹脂との密着性を維持する特性を有する陽極酸化膜を有する、リードフレームの製造方法において、金属板の側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内おける半導体素子と電気的に接合する部分に対応する部位と該金属板の下面側の封止樹脂型半導体装置を形成する領域内における外部機器と電気的に接合する部分に対応する部位のみが開口されたエッチング・めっき兼用レジストマスクを形成する工程と、金属板における、エッチング・めっき兼用レジストマスクから該金属板の面が露出した部分をハーフエッチングする工程と、ハーフエッチングされた部分に錫めっき層を形成する工程と、エッチング・めっき兼用レジストマスクを除去する工程と、錫めっき層が形成された金属板を、所定のリードフレーム形状のリードフレーム基材に形成する工程と、リードフレーム基材における、錫めっき層が形成された部分以外の全面に前記陽極酸化膜を形成する工程と、を含む。
このように、リードフレーム基材の面における錫めっき層を形成する部位に凹部を形成しておけば、上述した効果に加えて、半田が凹部内に留まり易くなる。
【0027】
従って、本発明によれば、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成され、電気的接続が必要な部分に金属材料が露出したリードフレームを、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性良く、コストを低減して製造することができ、更には、良好な半田付け性を得ながら製造工程を効率化することの可能なリードフレームの製造方法が得られる。
【0028】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。
本実施形態に係るリードフレームは、種々の形状を有するリードフレームに適用することができ、リードフレームの形状は特に限定されないが、便宜上、図1に示す形状のリードフレームを一例として挙げて説明することとする。
【0029】
図1に示すリードフレーム1は、帯状金属材料として銅又は銅合金からなる金属板にプレス加工やエッチング加工により所定形状をなす、リードフレーム基材10の上面側における半導体素子と電気的に接合する部分10aの底面及び側面に形成された、錫めっき層13aが露出している。また、下面側における外部機器と電気的に接合する部分10bの底面及び側面に形成された、錫めっき層13bが露出している。また、錫めっき層13a、13bが形成された電気的に接合する部分10a、10b以外の全面には、陽極酸化膜11が形成されている。
陽極酸化膜11は、酸化第一銅(CuO)と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH))とが混在する単層膜からなり、且つ、単層膜が平均長さ400nm以上の針状結晶構造を備えた、酸化銅の被膜で構成されている。
【0030】
次に、図1のように構成された本実施形態のリードフレームの製造方法について、図2を用いて説明する。
本実施形態の製造方法では、まず、帯状金属材料として銅または銅合金の金属板10をリードフレーム材料として準備する(図2(a)参照)。
次に、金属板10の両面にドライフィルムレジスト等のレジスト層R1を形成する(図2(b)参照)。
次に、上面側のレジスト層R1における、半導体素子と電気的な接続をする部分に対応する部位が開口部となり、下面側のレジスト層R1における、外部機器と電気的な接続をする部分に対応する部位が開口部となるように、夫々対応するパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R1を露光・現像し、エッチング・めっき兼用レジストマスク30を形成する(図2(c)参照)。
次に、金属板10における、エッチング・めっき兼用レジストマスク30から金属板10の面が露出した部分にハーフエッチングを施し、凹部10a、10bを形成する(図2(d)参照)。
次に、金属板10における、エッチング・めっき兼用レジストマスク30の開口部から金属板10の面が露出した凹部10aの底面及び側面に錫めっき層13aを、凹部10bの底面及び側面に錫めっき層13bを夫々形成する(図2(e)参照)。
次に、エッチング・めっき兼用レジストマスク30を除去する(図2(f)参照)。これにより、金属板10の上面側には半導体素子と電気的な接続をする部分に錫めっき層13aが形成され、下面側には外部機器と電気的な接続をする部分に錫めっき層13bが形成され、その他の部分が全面にわたって金属板の面が露出した金属板10となる。
【0031】
次に、錫めっき層13a、13bが形成された金属板10の両面にドライフィルムレジスト等のレジスト層R2を形成する(図2(g)参照)。
次に、所定のリードフレーム形状のパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R2を露光・現像し、エッチング用レジストマスク31を形成する(図2(h)参照)。
次に、エッチング液を用いてエッチング加工を行い、部分的に錫めっき層13a、13bが形成された金属板10を所定のリードフレーム形状に形成する(図2(i)参照)。
次に、エッチング用レジストマスク31を除去する(図2(j)参照)。
【0032】
次に、部分的に錫めっき層13a、13bが形成された金属板(リードフレーム基材)10を黒化処理液に浸漬し、リードフレーム基材10において金属板を陽極として通電することで、リードフレーム基材10における錫めっき層13a、13bが形成された部分を除く全面に陽極酸化膜11を形成する(図2(k)参照)。
これにより、図1に示した、電気的接続が必要な部分10a、10bのみ錫めっき層13a、13bが露出し、それ以外の全面に陽極酸化膜11が形成されたリードフレームが得られる。
【0033】
本実施形態のリードフレームの製造方法によれば、半導体素子と電気的に接合する部分と外部機器と電気的に接合する部分にのみ錫めっき層13a、13bを形成し、次に錫めっき層13a、13bが形成されていないリードフレーム基材10の全面に陽極酸化膜11を形成するようにしたので、本発明者らが本発明導出前の段階で着想した陽極酸化膜形成の際のマスクとして銀めっき層を用いるリードフレームの製造方法と同様、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性が高く、コストを低減して製造することができるという効果が得られる。
【0034】
しかも、本実施形態のリードフレームの製造方法によれば、錫めっき層13a、13bを、陽極酸化膜を形成する際のマスクとして用いるようにしたので、錫が半田に拡散する特性を有しているため、錫めっき層13a、13bを形成したままの状態にすることで、半導体素子を搭載する際に良好な半田付け性を得ることができる。
このため、本実施形態のリードフレームの製造方法によれば、錫めっき層13a、13bを除去して金属板10の面を露出させるための工程を設ける必要がなくなり、その分、上述の陽極酸化膜形成の際のマスクとして銀めっき層を用いるリードフレームの製造方法に比べて、製造工程を効率化することができる。
【0035】
また、本実施形態のリードフレームの製造方法によれば、リードフレーム基材の面における錫めっき層13a、13bを形成する部位に凹部10a、10bを形成しておくようにしたので、上述した効果に加えて、半田が凹部内に留まり易くなる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、電気的接続が必要な部分を除いた全面に陽極酸化膜が形成され、電気的接続が必要な部分に金属材料が露出したリードフレームを、陽極酸化膜を部分的に除去するためのレーザー加工が不要で、生産性良く、コストを低減して製造することができ、更には、良好な半田付け性を得ながら製造工程を効率化することの可能なリードフレームの製造方法が得られる。
なお、本実施形態のリードフレームの製造方法では、金属板10の面における電気的接続が必要な部分にのみ、凹部10a、10bを形成し、凹部10a、10bの底面及び側面に錫めっき層13a、13bを形成したが、凹部10a、10bを形成しないで、錫めっき層13a、13bを形成するようにしてもよい。
また、本実施形態のリードフレームの製造方法では、所定のリードフレーム形状の形成にエッチング加工を用いたが、プレス加工を用いてもよい。
【実施例
【0037】
実施例1
実施例1では、金属板10の面における電気的接続が必要な部分に、凹部10a、10bを形成しないで、錫めっき層13a、13bを形成することによって、リードフレームを製造した。
詳しくは、厚さ0.2mmの帯状銅材からなる金属板10を用いて、両面にドライフィルムレジストをラミネートしてレジスト層R1を形成した(図2(b)参照)。
次に、上面のレジスト層R1において、半導体素子と電気的な接続をする部分としての約φ0.5mmの開口部に対応するパターン、下面のレジスト層R1において外部機器と電気的な接続をする部分としての約φ1.0mmの開口部に対応するパターンが、夫々描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R1を露光・現像し、めっき用レジストマスク30を形成した(図2(c)参照)。
次に、硫酸錫浴からなる、錫濃度30g/Lの錫めっき浴を用いて、電流密度3A/dm2で3分間めっきを行い、金属板10における、めっき用レジストマスク30から露出する銅材に厚さが約0.5μmの錫めっき層13a、13bを形成し(図2(e)参照、但し、実施例1では錫めっき層を形成する面は、凹面ではなく平面)、次いで、めっき用レジストマスク30を除去した(図2(f)参照)。
【0038】
次に、錫めっき層13a、13bが形成された金属板10の両面にドライフィルムレジストをラミネートし第2のレジスト層R2を形成した(図2(g)参照)。
次に、所定のリードフレーム形状のパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層R2を露光・現像し、エッチング用レジストマスク31を形成した(図2(h)参照)。
次に、塩化第二鉄液を用いてスプレーエッチングを行い、部分的に錫めっき層13a、13bが形成された金属板10を所定のリードフレーム形状に形成し(図2(i)参照)、次いで、エッチング用レジストマスク31を除去した(図2(j)参照)。
【0039】
次に、90ml/lの濃度、液温70℃の設定で黒化処理液に、所定のリードフレーム形状に形成された金属板(リードフレーム基材)10を浸漬し、電流密度0.8A/dm、処理時間90秒の設定で、リードフレーム基材10において銅材が露出する部分を陽極として電流を流し、酸化第一銅(CuO)と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH))が混在する単層膜をなし、且つ、単層膜が、平均長さ400nm以上の針状結晶構造となる陽極酸化膜11を、リードフレーム基材10における錫めっき層13a、13bが形成された部分を除く全面に形成した(図2(k)参照)。
これにより、電気的接続が必要な部分のみ形成された錫めっき層が露出し、それ以外の全面に陽極酸化膜11を備えた実施例1のリードフレームを得た。
【0040】
比較例1
厚さ0.2mmの帯状銅材からなる金属板を用いて、両面にドライフィルムレジストをラミネートしてレジスト層を形成した。
次に、所定のリードフレーム形状のパターンが描画されたガラスマスクを用いて、両面のレジスト層を露光・現像し、エッチング用レジストマスクを形成した。
次に、塩化第二鉄液を用いてスプレーエッチングを行い、金属板を所定のリードフレーム形状に形成し、次いで、エッチング用レジストマスクを除去した。
【0041】
次に、90ml/lの濃度、液温70℃の設定で黒化処理液に所定のリードフレーム形状に形成された金属板(リードフレーム基材)を浸漬し、電流密度0.8A/dm、処理時間90秒の設定で、リードフレーム基材の全面を陽極として電流を流し、酸化第一銅(CuO)と酸化第二銅(CuO)と水酸化第二銅(Cu(OH))が混在する単層膜として形成され、且つ、単層膜が、平均長さ400nm以上の針状結晶構造となっている陽極酸化膜を、リードフレーム基材の全面に形成した。
【0042】
次に、レーザー加工機を使用して、リードフレーム基材の上面における、半導体素子と電気的な接続をする部分の陽極酸化膜を約φ0.5mmの開口径で除去して銅材を露出させた開口部を形成するとともに、下面における、外部機器と電気的な接続をする部分を約φ1.0mmの加工径で除去して銅材を露出させた開口部を形成し、比較例1のリードフレームを得た。このとき、レーザーのビーム径は、20μmで、約φ0.5mmの開口部の形成には0.019秒、約φ1.0mmの開口部の形成には0.086秒の処理時間を要した。また、形成した開口部の深さは、0.5μm以下であった。
【0043】
比較例2
厚さ0.2mmの帯状銅材からなる金属板を用いて、実施例1と略同様に、めっき用レジストマスクを形成した。
次に、スルファミン酸ニッケルと塩化ニッケル、ホウ酸からなる、ニッケル濃度80g/Lのニッケルめっき浴を用いて、電流密度2A/dm2で3分45秒間めっきを行い、めっき用レジストマスクから露出する金属板の面に厚さが約2.5μmのニッケルめっき層を形成し、次いで、めっき用レジストマスクを除去した。
【0044】
次に、実施例1と略同様にエッチング用レジストマスクを形成し、塩化第二鉄液を用いてスプレーエッチングを行い、部分的にニッケルめっき層が形成された金属板を所定のリードフレーム形状に形成し、次いで、エッチング用レジストマスクを除去した。
【0045】
次に、実施例1と略同様に、陽極酸化膜を、所定のリードフレーム形状に形成された銅材におけるニッケルめっき層が形成された部分を除く全面に形成した。
次に、ニッケルめっき剥離液を用いて、リードフレーム基材からニッケルめっき層を剥離し、電気的接続が必要な部分のみ銅材が露出し、それ以外の全面に陽極酸化膜を備えた比較例2のリードフレームを得た。
【0046】
評価試験1(半田の濡れ広がり性)
実施例1、比較例1、2の夫々の製造方法で製造されたリードフレームを用いて、半田の濡れ広がり性を試験した。
リードフレームをフラックス(RA)に約2~3秒浸漬し、電気的接続が必要な部分において露出する金属材料(実施例1では錫めっき層13、比較例1、2では銅材10)の面に形成された酸化被膜を溶出させ、半田濡れ性を確保し、次に、350℃の半田坩堝に3秒間浸漬し、その後取り出して試料を得た。
そして、走査型共焦点レーザー顕微鏡を用いて、夫々の試料のリードフレームにおける半田の濡れ広がり状態を、観察した。
その結果、実施例1のリードフレームは、比較例1、2のリードフレームと同様、陽極酸化膜11上には半田は形成されず、電気的接続が必要な部分において露出する錫めっき層13の面にのみ半田が形成された。また、電気的接続が必要な部分において露出する錫めっき層13の面に形成された半田は、陽極酸化膜11が形成されている周辺には広がらないことが確認できた。
【0047】
評価試験2(生産性:製造時間、製造コスト)
実施例1、比較例1、2の夫々の多列型リードフレームの製造方法を用いたリードフレームの製造に要した時間およびコストを比較し、生産性を評価した。生産性の評価に際しては、比較例1のリードフレームの製造方法を用いたリードフレームの製造に要した時間、コストを夫々100としたときの相対的な数値を評価値として用いた。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に示すとおり、比較例2のリードフレームの製造方法は、製造コストが50となり、比較例1のリードフレームの製造方法に比べて、製造コストを大幅に低減できることが認められた。しかし、製造時間が125となり、比較例1のリードフレームの製造方法に比べて、製造時間を短縮できないことが認められた。
これに対し、実施例1のリードフレームの製造方法は、製造コストが25、製造時間が75となり、比較例1のリードフレームの製造方法に比べて、製造時間を大幅に短縮でき、且つ、製造コストを大幅に低減できることが認められ、さらに、比較例2のリードフレームの製造方法に比べても、製造時間を大幅に短縮でき、且つ、製造コストを大幅に低減できることが認められ、生産性が格段に向上することが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のリードフレームの製造方法は、陽極酸化膜を備えたリードフレームを製造する分野に有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 リードフレーム
10 リードフレーム基材(金属板)
10a、10b 凹部
11 陽極酸化膜
13a、13b 錫めっき層
30 めっき用レジストマスク又はエッチング・めっき兼用レジストマスク
31 エッチング用レジストマスク
R1、R2 レジスト層
図1
図2