(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】集積紙収容箱
(51)【国際特許分類】
B65D 83/08 20060101AFI20231204BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20231204BHJP
B65D 5/54 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B65D83/08 B
B65D5/72 A
B65D5/54 301J
(21)【出願番号】P 2019214434
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】松村 貴史
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0109827(US,A1)
【文献】特開2015-217984(JP,A)
【文献】特開2018-162096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/08
B65D 5/00-5/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、天壁、前壁、後壁、及び2つの側壁を有し、複数枚の紙を重ねた集積紙をU字状に折り曲げた状態でその湾曲の外側を
前記天壁及び
前記前壁の内面に対向させて収容する
、略直方体形状の集積紙収容箱であって、
前記天壁及び
前記前壁が、前記
天壁と前記前壁の間の稜部を介して一つながりの開口部を有
し、
前記開口部のうち前記天壁に設けた第1の開口部分を開閉可能に塞ぐ第1蓋部分、及び前記開口部のうち前記前壁に設けた第2の開口部分を開閉可能に塞ぐ第2蓋部分を、前記稜部を介して折り曲げ可能に連結した1つの蓋部をさらに有し、
前記蓋部は、前記第1蓋部分の前記稜部と反対の端辺を前記第1の開口部分の縁に回動可能に接続したヒンジ部を有し、
前記蓋部の前記ヒンジ部から前記稜部までの長さが、前記天壁の前記ヒンジ部から前記後壁との間の他の稜部までの長さと略等しく、
前記後壁は、前記ヒンジ部を中心に前記蓋部を回動させて前記開口部を開放し、前記第1蓋部分を前記天壁に近接対向させて、前記蓋部の稜部を前記他の稜部に重ねて、前記第2蓋部分を前記後壁に近接対向させた状態で、前記第2蓋部分の前記稜部と反対の端縁を係合させて留める係合部を有する、
集積紙収容箱。
【請求項2】
前記集積紙は、2つ折りにした第1の紙の一方を集積方向の一端に配置し、前記2つ折りにした第1の紙の一方と他方の間に2つ折りにした第2の紙の一方を入れ子状に差し込んで、2つ折りにした第3の紙の一方を前記2つ折りにした第1の紙の他方に重ねて前記2つ折りにした第2の紙の一方と他方の間に差し込んで、2つ折りにした第4の紙の一方を前記2つ折りにした第2の紙の他方に重ねて前記2つ折りにした第3の紙の一方と他方の間に差し込むように、複数枚の紙を交互に入れ子状に重ねたポップアップ式の集積紙である、
請求項1
に記載の集積紙収容箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ティッシュペーパーやクッキングペーパーなどの比較的薄い紙を複数枚重ねた集積紙を収容した集積紙収容箱に関し、集積紙を1枚ずつ取り出すための開口部を備えた集積紙収容箱に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄い紙を複数枚重ねた集積紙として、ティッシュペーパーやクッキングペーパーなどの紙を複数枚重ねたものが知られている。
例えば、ティッシュペーパーは、一般に、2つ折りにした一方を2つ折りにした別のティッシュペーパーの間に挟むとともにもう一方をさらに別のティッシュペーパーの間に挟むように交互に折り重ねた状態(ポップアップ式)で集積される。このように複数枚のティッシュペーパーをポップアップ式に集積させた集積紙は、例えば、扁平なティッシュ箱に収納される。ティッシュ箱の上面には、スリット状の開口部が設けられている。
【0003】
ティッシュ箱の上面に設けた開口部からティッシュペーパーを1枚引き抜くと、その1枚のティッシュペーパーの間に半分だけ挟まった状態の2枚目のティッシュペーパーが1枚目のティッシュペーパーによって連れ出され、2枚目のティッシュペーパーの一部が開口部から引き出される。利用者は、開口部から引き出されたティッシュペーパーの一部をつまんで必要枚数をティッシュ箱から引き出して使用する。
【0004】
また、クッキングペーパーは、上述したポップアップ式に重ねたものの他に、ロール状に巻いた長尺なものが知られている。ロール状のクッキングペーパーは、例えば、クッキングペーパーの軸方向に延設した開口部を有する箱に収容され、必要な長さだけ開口部から引き出して使用される。
【0005】
ロール状のクッキングペーパーは、通常、一定長さ毎にミシン目状の切り込みを有し、この切り込みに沿って切断し易くなっている。利用者は、クッキングペーパーを箱の開口部から必要な長さだけ引き出して、開口部の縁にクッキングペーパーを引っ掛けて、開口部の近くに位置する切り込みに沿ってクッキングペーパーを切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述したポップアップ式に重ねたティッシュペーパーは、使用開始時に1枚目を開口部から引き出す際に、開口部に最も近い重ね方向の最上端の1枚目のティッシュペーパーの一部が開口部から引き出されていない。このため、1枚目のティッシュペーパーをつまみ難く、千切ってしまうことがあり、1枚目のティッシュペーパーを綺麗な状態で引き出すことが難しい。
【0008】
また、上述したロール状のクッキングペーパーは、箱に設けた開口部の縁に引っ掛けて千切るため、ミシン目状の切り込みに沿って綺麗に切断することが難しい。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、薄い紙を複数枚重ねた集積紙から紙を1枚ずつ綺麗に取り出すことができる集積紙収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の集積紙収容箱の一態様は、底壁、天壁、前壁、後壁、及び2つの側壁を有する略直方体形状であり、複数枚の紙を重ねた集積紙をU字状に折り曲げた状態でその湾曲の外側を天壁及び前壁の内面に対向させて収容する。天壁及び前壁は、天壁と前壁の間の稜部を介して一つながりの開口部を有する。集積紙収容箱は、開口部のうち天壁に設けた第1の開口部分を開閉可能に塞ぐ第1蓋部分、及び開口部のうち前壁に設けた第2の開口部分を開閉可能に塞ぐ第2蓋部分を、稜部を介して折り曲げ可能に連結した1つの蓋部を有する。蓋部は、第1蓋部分の稜部と反対の端辺を第1の開口部分の縁に回動可能に接続したヒンジ部を有する。蓋部のヒンジ部から稜部までの長さは、天壁のヒンジ部から後壁との間の他の稜部までの長さと略等しい。後壁は、ヒンジ部を中心に蓋部を回動させて開口部を開放し、第1蓋部分を天壁に近接対向させて、蓋部の稜部を他の稜部に重ねて、第2蓋部分を後壁に近接対向させた状態で、第2蓋部分の稜部と反対の端縁を係合させて留める係合部を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、薄い紙を複数枚重ねた集積紙から紙を1枚ずつ綺麗に取り出すことができる集積紙収容箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る集積紙収容箱を示す外観斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の集積紙収容箱に収容する集積紙Sの一例を示す外観斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の集積紙収容箱にU字状に湾曲させた集積紙を収容した状態を示す
図1のF3-F3に沿った断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の集積紙収容箱の蓋部の回動の先端縁を後壁に係合させた状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1の集積紙収容箱の一方の側壁及び蓋部を開放した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1の集積紙収容箱の開口部の右端から紙を引き出した状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1の集積紙収容箱の開口部の左端から紙を引き出した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態に係る集積紙収容箱10について説明する前に、集積紙収容箱10の中に収容する集積紙Sについて説明する。
図1に示すように、集積紙収容箱10は、比較的薄くて柔らかい複数枚の紙Pを重ねた集積紙Sを収容している。紙Pは、ティッシュペーパーやキッチンペーパーなどの他に、例えば多孔質な炭粒子を漉き込んだ臭い取り紙などであってもよい。紙Pは、例えば、
図2に示すようにポップアップ式に重ねられて集積紙Sにされる。集積紙Sは、
図3に示すように略U字状に湾曲させられて集積紙収容箱10内に挿入配置される。
図3では、後述する蓋部9の図示を省略してある。
【0014】
ここで、一例として、8枚の紙P1~P8をポップアップ式に重ねる方法について、
図2を参照して説明する。集積紙Sは、例えば60枚程度の紙Pを重ねたものであるが、紙Pの枚数に限らず重ね方は同じである。なお、
図2及び
図3においては、図示明瞭化のため、実際より少ない枚数の紙Pを図示してあるが、紙Pの枚数は図示のものに限らない。複数枚の紙Pは、例えば略正方形であり且つ略同じサイズであり、2つ折りにされて入れ子状に交互に重ねられる。
【0015】
具体的には、1枚目の紙P1をその略中心にある折れ線P1cで2つ折りにし、2つ折りにした一方P1aを集積紙Sにおける複数枚の紙Pの集積方向の一端に配置する。次に、2枚目の紙P2をその略中心の折れ線P2cで2つ折りにし、その一方P2aを、上記のように2つ折りにした紙P1の一方P1a(図示下側)と他方P1b(図示上側)の間に差し込む。このとき、紙P2の折れ線P2cから離れた一方P2aの端辺が、2つ折りにした紙P1の折れ線P1cの内側に近い位置まで挿入される。
【0016】
さらに、3枚目の紙P3をその略中心にある折れ線P3cで2つ折りにし、2つ折りにした一方P3aを上記のように2つ折りにした紙P1の他方P1bに重ねるとともに2つ折りにした紙P2の一方P2aと他方P2bの間に差し込む。同様に、4枚目の紙P4を2つ折りにし、その一方P4aを2つ折りにした紙P2の他方P2bに重ねて2つ折りにした紙P3の一方P3aと他方P3bの間に差し込む。以上の手順を紙P5~P8に対しても同様に実施することにより、
図2に示す集積紙Sを形成することができる。
【0017】
次に、上述した集積紙Sを収容する集積紙収容箱10について、
図1及び
図3とともに
図4を参照して説明する。
集積紙収容箱10は、
図4に示す1枚の所定形状のシート材1を複数個所で折り曲げて所定箇所を接着固定することにより組み立てられる。
【0018】
本実施形態の集積紙収容箱10は、
図1及び
図3に示すように、略立方体形状に形成されている。集積紙収容箱10は、鉛直下方の底壁2、鉛直上方で底壁2に対向した天壁
3、利用者から見て手前側の前壁
4、前壁4に対向した後壁5、及び左右2つの側壁6、7を有する。これら6つの壁部2~7は、それぞれ、略正方形である。集積紙収容箱10は、必ずしも
図1の向きで使用する必要はなく、例えば、側壁6または側壁7を下にして使用してもよい。或いは、後壁5を下にして前壁4を上に向けた姿勢で使用してもよい。
【0019】
また、集積紙収容箱10は、本実施形態のように立方体に近い形状に限らず、例えば直方体形状などであってもよく、略直線状の陵部11を介して隣接した互いに略直交する天壁3と前壁4を備えた箱であればよく、例えば底壁2は省略してもよい。或いは、後壁5を無くして、底壁2、天壁3、及び前壁4を3辺とする三角柱状の箱にしてもよい。いずれにしても、集積紙Sの複数枚の紙Pは、集積紙収容箱10の形状やサイズに合わせて形状及びサイズが決められる。
【0020】
なお、上述した集積紙Sは、U字状に折り曲げられて、その湾曲の外側が天壁3と前壁4の内面に対向する向きで、集積紙収容箱10の中に挿入配置される。言い換えると、集積紙Sは、そのU字状に湾曲した外側の面が、天壁3と前壁4に設けた後述する一つながりの開口部8から外部に露出する向きで、集積紙収容箱10の中に挿入配置される。
【0021】
集積紙収容箱10を構成するシート材1は、例えばティッシュ箱の素材と同様のボール紙であり、或いは、樹脂シートや不織布などの他の素材をシート材1として用いることもできる。本実施形態ではボール紙をシート材1として用いた。
【0022】
集積紙収容箱10は、天壁3と前壁4の間に上述した稜部11を有する。天壁3及び前壁4は陵部11を横切るように天壁3と前壁4にわたって設けたミシン目状の切り取り線C(
図4)を有する。切り取り線Cは、天壁3と前壁4を貫通した複数本のスリット状の切り込みを断続的に並べて形成されている。切り取り線Cは、天壁3に両端を有するとともに前壁4に湾曲した中途部を有する略U字状に形成されている。
【0023】
切り取り線Cの複数本の切り込みは、切り取り線Cに沿って断続的に設けられている。このため、集積紙収容箱10の外側から天壁3及び/或いは前壁4に一定の力を加えて切り取り線Cを押圧することで、切り取り線Cに沿って隣接する複数本の切り込みの間の部分が切れ、切り込みがU字状につながる。つまり、集積紙収容箱10の使用を開始する際に、U字状の切り取り線Cに沿って天壁3と前壁4を切り抜く。これにより、天壁3と前壁4にわたって一つながりの開口部8が形成されると同時に、開口部8を開閉可能な蓋部9が形成される。
【0024】
開口部8は、切り取り線Cに沿って天壁3を切り抜くことによって天壁3に形成される略矩形の開口部分3a(第1の開口部分)と、切り取り線Cに沿って前壁4を切り抜くことによって前壁4に形成される略半円形の開口部分4a(第2の開口部分)を、稜部11を介してつなげた形状を有する。このように、集積紙収容箱10の天壁3と前壁4に1つながりの開口部8を設けることで、集積紙収容箱10の中に収容した集積紙Sに対し、上方および前方からアクセスすることができる。
【0025】
蓋部9は、天壁3の開口部分3aを開閉可能に塞ぐ蓋部分9a(第1蓋部分)と、前壁4の開口部分4aを開閉可能に塞ぐ蓋部分9b(第2蓋部分)を、稜部11’を介して折り曲げ可能に連結した形状を有する。言い換えると、蓋部分9aは天壁3の一部であり、蓋部分9bは前壁4の一部である。蓋部9の稜部11’は、切り取り線Cに沿って蓋部9を切り抜く前の集積紙収容箱10の稜部11の一部であり、蓋部9を外面側及び内面側に折り曲げ可能にした部分である。
【0026】
蓋部9は、蓋部分9aの稜部11’と反対の端辺を天壁3の開口部分3aの縁に回動可能に接続したヒンジ部9cを有する。ヒンジ部9cは、U字状の切り取り線Cの両端の間の部分であり、天壁3を単に折り曲げた部分である。つまり、蓋部9は、ヒンジ部9cと陵部11’でそれぞれ表裏に折り曲げ可能となっている。
【0027】
ヒンジ部9cは、稜部11’と平行に天壁3の略中央に設けられている。このため、蓋部9のヒンジ部9c側の蓋部分9aの幅(すなわちヒンジ部9cから稜部11’までの長さ)は、天壁3の前記ヒンジ部9cから後壁5との間の稜部12(他の稜部)までの長さと略等しい。
【0028】
よって、
図1に示すようにヒンジ部9cを中心に蓋部9を回動させて開口部8を全開にした状態で、蓋部9の蓋部分9aの外面と天壁3の外面を近接対向させ、蓋部9の稜部11’を集積紙収容箱10の稜部12に重ね、且つ蓋部9のヒンジ部9cから離れた蓋部分9bの外面を
図5に示すように後壁5の外面に近接対向させることができる。この状態で、蓋部9の回動の先端縁9dは、後壁5に設けた切欠き部5a(係合部)に係合して留められる。
【0029】
以下、上述した集積紙収容箱10の組み立て方法について、主に
図4を参照して説明する。なお、集積紙収容箱10を組み立てる前のシート材1において、天壁3及び前壁4にわたって設けた切り取り線Cは切り抜かれていないものとする。
【0030】
まず、天壁3と前壁4の間の稜部11の位置でシート材1を折り曲げ、天壁3と後壁5の間の稜部12の位置でシート材1を折り曲げ、底壁2と前壁4の間の稜部13の位置でシート材1を折り曲げ、底壁2とグルーフラップ2aとの間の線L1でシート材1を折り曲げる。このとき、4か所11、12、13、L1の折り曲げ方向は同じ方向であり、4か所で同じ側に折り曲げたシート材1は略四角筒状とされる。この状態で、底壁2の稜部13と反対に突設したグルーフラップ2aを後壁5の内面側に対向配置させ、グルーフラップ2aの外面と後壁5の内面を接着する。なお、シート材1を折り曲げる方向は以下の説明において全て同じ方向であり、
図4の紙面手前から奥に向かう方向である。よって、以下の説明では、この方向を内側とする。
【0031】
次に、前壁4の右辺から突設したフラップ4Rを線L2に沿って内側に略直角に折り曲げ、後壁5の右辺から突設したフラップ5Rを線L3に沿って内側に略直角に折り曲げる。そして、底壁2の右辺から突設したグルーフラップ2Rを線L4に沿って内側に略直角に折り曲げて、2つのフラップ4R、5Rの外側に重なるように配置する。さらに、天壁3と側壁7の間の稜部14の位置でシート材1を内側に略直角に折り曲げて、側壁7の内面とグルーフラップ2Rの外面を接着する。この状態で右手側の側壁7が閉じられる。
【0032】
この後、例えば
図2で説明したように複数枚の紙Pをポップアップ式に重ねた集積紙Sを、
図3に示すように略U字状に折り曲げて、側壁6が
図6に示すように開放している左手側から集積紙収容箱10の中に挿入配置する。このとき、集積紙Sは、上述したように、湾曲した外側が天壁3の内面と前壁4の内面に対向する向きで集積紙収容箱10の中に収容配置される。
【0033】
そして、最後に、左手側のもう一方の側壁6を閉じる。つまり、右手側の側壁7を閉じたときと同様に、まずフラップ4L、5Lを線L2、L3でそれぞれ内側に折り曲げて、グルーフラップ2Lを線L4で内側に折り曲げて、側壁6を陵部15の位置で内側に折り曲げる。最後に、側壁6の内面とグルーフラップ2Lの外面を接着する。この状態で左手側の側壁6が閉じられて集積紙Sを収容した集積紙収容箱10が組み立てられる。
【0034】
上記のように組み立てられた集積紙収容箱10を使用する際には、天壁3と前壁4に設けた切り取り線Cに沿って蓋部9を切り抜き、開口部8を開く。開口部8を開いた後の蓋部9は、
図5に示すように天壁3と後壁5に沿う位置に折り返されて、蓋部9の先端縁9dが後壁5の切欠き部5aに係合されて留められる。
【0035】
この状態で、利用者は、天壁3と前壁4にわたって開放された開口部8を介して指を入れ、内部に収容されている集積紙Sから紙Pをつまんで取り出す。このとき、利用者は、例えば、人差し指を天壁3の開口部分3aから挿入するとともに、親指を前壁4の開口部分4aから挿入し、集積紙Sの湾曲した外側の紙Pを2本の指でつまんで引っ張る。
【0036】
以下、上述した実施形態の集積紙収容箱10の機能及び効果について説明する。
本実施形態の集積紙収容箱10は、上述したように、天壁3と前壁4にわたって開口部8を有するため、箱の上面側及び前面側から箱の内部にアクセスすることができる。このため、2本の指を箱の中に入れ易く、U字状に湾曲された集積紙Sの外側の紙Pをつまみ易い。蓋部9を開けて紙Pを使い始めるときには、集積紙Sの湾曲した外側にある重ね方向端部の1枚目の紙Pは、他の紙Pと同様にU字状に湾曲しており、紙の端部が見えない状態となっている。このため、本実施形態のように開口部8を2つの壁3、4に設けて2本の指を入れやすくする構成が有効となる。
【0037】
例えば、前壁4の開口部分4aから挿入した親指で集積紙Sを押えて、天壁3の開口部分3aから挿入した人差し指で外側の1枚目の紙Pの表面をこするように親指に近付ける動作によって、1枚目の紙Pを2枚目の紙Pから部分的に離間させて容易につまむことができる。或いは、天壁3の開口部分3aから挿入した人差し指で集積紙Sを押えて、前壁4の開口部分4aから挿入した親指で外側の1枚目の紙Pの表面をこするように人差し指に近付ける動作によっても、1枚目の紙Pを2枚目の紙Pから部分的に離間させて容易につまむことができる。
【0038】
見方を変えると、集積紙収容箱10に収容する集積紙Sの姿勢は、集積紙収容箱10の流通途中で変わる可能性があるため、天壁3と前壁4にわたる比較的大きな開口部8を設けることで、集積紙Sの向きを所望する向きに変えることもできる。或いは、利用者は、集積紙Sの向きに合わせて外側の紙Pをつまみ易い角度で2本の指を開口部8から挿入することもできる。
【0039】
例えば、使用により紙Pの枚数が減った場合などには、厚みが薄くなった集積紙Sが倒れることが予想される。このような場合、前壁4の開口部分4aから挿入した親指で集積紙Sを起こしながら紙Pをつまむような動作も可能となる。或いは、集積紙収容箱10の流通時の移動に伴う振動によって、集積紙Sの姿勢が変化した場合にも、集積紙Sの姿勢に応じてつまみ易い角度で指を使うことができる。
【0040】
いずれにしても、本実施形態によると、集積紙収容箱10の中に収容した集積紙Sから紙Pを容易に取り出すことができ、取り出し時に紙Pを引き千切ったりする心配がなく、綺麗な状態で紙Pを取り出すことができる。なお、本実施形態の集積紙収容箱10は、上述したように、ポップアップ式に重ねた集積紙Sを収容しているため、使用開始時における1枚目の紙Pを取り出す際に特に有効な構造と言えるが、2枚目以降の紙Pを取り出す際にも紙Pの取り出しを容易にすることができ、綺麗な状態での取り出しが可能となる。
【0041】
つまり、本実施形態のように、集積紙Sをポップアップ式に重ねた場合には、開口部8を介して1枚目の紙Pを取り出した後、2枚目の紙Pが1枚目の紙Pに連れ出されて、その一部が開口部8から突出した状態となり易い。このため、2枚目以降の紙Pは1枚目の紙Pよりさらに取り出し易くなる。
【0042】
また、本実施形態のように、ポップアップ式に重ねた集積紙SをU字状に折り曲げて湾曲した外側を開口部8に対向させて集積紙収容箱10に収容した場合、重ねた紙Pの折れ線Pc1、Pc2、Pc3・・・が、開口部8の右側及び左側に交互に位置することになる。
図7には開口部8の右側に片寄った位置から紙Pの一部が引き出された状態を示し、
図8には開口部8の左側に片寄った位置から紙Pの一部が引き出された状態を示す。このように、本実施形態によると、2枚目以降の紙Pの一部は、開口部8の右側及び左側に片寄った位置から交互に引き出されることになり、開口部8から引き出される紙の形が交互に変化して、集積紙収容箱10の使用時における意匠性を高めることもできる。
【0043】
これに対し、仮に、U字状に折り曲げた集積紙Sの湾曲した外側が一方の側壁6の内面及び前壁4の内面に対向する向きで集積紙Sを集積紙収容箱10内に収容配置した場合、開口部8の上側及び下側から交互に紙Pの一部が引き出されることになる。この場合、開口部8の上側から引き出された紙Pは開口部8から大きく突出しているためつまみ易いが、開口部8の下側から引き出される紙Pは開口部8から部分的に引き出された状態とはならない。このため、集積紙Sをこの向きで収容した場合には、紙Pを取り出す際に千切れたりする可能性があり、綺麗に取り出すことが難しくなる。よって、集積紙Sの向きは、本実施形態のように、開口部8を設けた天壁3及び前壁4に湾曲した外側が対向する向きにすることが重要である。
【0044】
また、本実施形態によると、集積紙SをU字状に折り曲げた状態で集積紙収容箱10に収容するため、
図3に示すように、集積紙SのU字の両端近くで複数枚の紙Pの間が広がり易い。このため、本実施形態のように集積紙SをU字状に折り曲げて集積紙収容箱10内に収容することで、集積した複数枚の紙Pを平置きする場合と比較して、複数枚の紙Pの間の摩擦を低減することができ、複数枚の紙Pを1枚ずつ取り出し易くすることができる。
【0045】
また、本実施形態によると、集積紙SをU字状に折り曲げた状態で集積紙収容箱10に収容するため、集積紙SをU字状に折り曲げない平置きした状態で箱に収容する場合に比べて、箱の設置面積を小さく抑えることができ、狭いスペースでも使用することができる。
【0046】
また、本実施形態のように、天壁3及び前壁4に比較的大きな開口部8を設けることで、比較的厚い紙や比較的腰の強い硬い紙などであっても開口部8を介して容易に引き出すことができる。例えば、紙Pの厚みが25gsm(Grams per Square Meter)以上となる紙や、腰のある紙であってもうまく摘むことができるため、開口部8を介して取り出し易くすることができる。
【0047】
また、本実施形態の集積紙収容箱10は、上述したように色々な姿勢で使用することができ、利便性を高めることができる。例えば、右手側の側壁7を下にして集積紙収容箱10を右側に倒した状態で使用すると、天壁3に設けた開口部分3aが利用者の右手側に位置することになり、右利きの利用者にとって使いやすくなる。或いは、前壁4を上に向けるように集積紙収容箱10を利用者から離れる方向に倒すと、対面する別の利用者が開口部8にアクセスし易くなる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0049】
例えば、上述した実施形態では、蓋部9のヒンジ部9c側の蓋部分9aの幅を天壁3のヒンジ部9cと陵部12との間の幅と同じにしたが、これに限らず、蓋部9の形状やサイズは任意に変更が可能である。しかし、蓋部9の形状及びサイズは、開口部8の形状及びサイズと関係するため、開口部8から紙Pを取り出しやすい形状及びサイズにすることが望ましい。
【0050】
このため、本願の発明者は、紙Pを取り出し易い開口部8の形状及びサイズを調べるため、種々の形状及びサイズの開口部8を有する集積紙収容箱10を用意し、集積紙Sからの紙Pの取り出し易さを比較した。
【0051】
この結果、天壁3の開口部分3aの幅a(
図4)、すなわち蓋部9のヒンジ部9cから陵部11までの長さaが、天壁3の稜部11から稜部12までの幅Aの1/5より小さくなると、紙Pが開口部8から取り出し難くなることがわかった。また、同様に、前壁4の開口部分4aの幅b、すなわち陵部11から稜部13に向かう開口部分4aの長さbが、前壁4の稜部11から稜部13までの幅Bの1/5より小さくなると、紙Pが開口部8から取り出し難くなることがわかった。
【0052】
また、天壁3の開口部分3aの幅aが、天壁3の稜部11から稜部12までの幅Aの3/5より大きくなると、複数枚の紙Pがまとめて開口部8から取り出され易くなることがわかった。また、同様に、前壁4の開口部分4aの幅bが、前壁4の稜部11から稜部13までの幅Bの3/5より大きくなると、複数枚の紙Pがまとめて開口部8から取り出され易くなることがわかった。
【0053】
さらに、稜部11に沿った開口部8の適切な幅cを調べたところ、稜部11の長さCに対する開口部8の幅cが1/2より狭くなると、紙Pを取り出し難くなることがわかった。また、稜部11の長さCに対する開口部8の幅cが9/10より広くなると、稜部11に沿った開口部8の外側における集積紙収容箱10の機械強度が不十分になることがわかった。よって、本実施形態では、開口部分3aの幅aを天壁3の幅Aの1/2とし、開口部分4aの幅bを前壁4の幅Bの1/2とし、稜部11に沿った開口部8の幅cを稜部11の長さCの9/10とした。
【0054】
また、上述した実施形態では、天壁3及び前壁4に形成した開口部8を塞ぐ蓋部9を有する集積紙収容箱10について説明したが、蓋部9は本願発明に必須の構成ではなく、省略することもできる。また、蓋部9を有する場合であっても、本実施形態のようにヒンジ部9cを介して蓋部9を天壁3に対して回動可能に接続する必要はなく、集積紙収容箱と別体の蓋部9を着脱可能に設けてもよい。さらに、上述した実施形態では、蓋部9の回動の先端縁9dを後壁5の切欠き部5aに係合して留める構造について説明したが、この構造も本願発明に必須の構造ではない。
【0055】
さらに、上述した実施形態では、複数枚の紙Pをポップアップ式に重ねてU字状に湾曲させた集積紙Sを集積紙収容箱10に収容した場合について説明したが、これに限らず、複数枚の紙Pを単に重ねてU字状に湾曲させた集積紙を上述した姿勢で集積紙収容箱10に収容した場合においても本発明を適用することができる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
稜部を介して隣接した第1及び第2壁を有し、複数枚の紙を重ねた集積紙をU字状に折り曲げた状態でその湾曲の外側を前記第1及び第2壁の内面に対向させて収容する集積紙収容箱であって、
前記第1及び第2壁が、前記稜部を介して一つながりの開口部を有する、
集積紙収容箱。
[2]
前記開口部のうち前記第1壁に設けた第1の開口部分を開閉可能に塞ぐ第1蓋部分、及び前記開口部のうち前記第2壁に設けた第2の開口部分を開閉可能に塞ぐ第2蓋部分を、前記稜部を介して折り曲げ可能に連結した1つの蓋部をさらに有する、
[1]の集積紙収容箱。
[3]
底壁、天壁、前壁、後壁、及び2つの側壁を有する略直方体形状の[2]の集積紙収容箱であって、
前記天壁が前記第1壁であり、前記前壁が前記第2壁であり、
前記蓋部は、前記第1蓋部分の前記稜部と反対の端辺を前記第1の開口部分の縁に回動可能に接続したヒンジ部を有し、
前記蓋部の前記ヒンジ部から前記稜部までの長さが、前記天壁の前記ヒンジ部から前記後壁との間の他の稜部までの長さと略等しい、
集積紙収容箱。
[4]
前記後壁は、前記ヒンジ部を中心に前記蓋部を回動させて前記開口部を開放し、前記第1蓋部分を前記天壁に近接対向させて、前記蓋部の稜部を前記他の稜部に重ねて、前記第2蓋部分を前記後壁に近接対向させた状態で、前記第2蓋部分の前記稜部と反対の端縁を係合させて留める係合部を有する、
[3]の集積紙収容箱。
[5]
前記集積紙は、2つ折りにした第1の紙の一方を集積方向の一端に配置し、前記2つ折りにした第1の紙の一方と他方の間に2つ折りにした第2の紙の一方を入れ子状に差し込んで、2つ折りにした第3の紙の一方を前記2つ折りにした第1の紙の他方に重ねて前記2つ折りにした第2の紙の一方と他方の間に差し込んで、2つ折りにした第4の紙の一方を前記2つ折りにした第2の紙の他方に重ねて前記2つ折りにした第3の紙の一方と他方の間に差し込むように、複数枚の紙を交互に入れ子状に重ねたポップアップ式の集積紙である、
[1]乃至[4]のいずれか1つの集積紙収容箱。
【符号の説明】
【0056】
1…シート材、 3…天壁、 3a…開口部分、 4…前壁、 4a…開口部分、 8…開口部、 9…蓋部、 9a、9b…蓋部分、 9c…ヒンジ部、 10…集積紙収容箱、 11…陵部、 P…紙、 S…集積紙。