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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/42 20060101AFI20231204BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20231204BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B41J11/42
B65H5/06 M
B65H29/58 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019214510
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2021084307
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】柴田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】大河原 弥貴
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-189145(JP,A)
【文献】特開2014-101184(JP,A)
【文献】特開2007-050951(JP,A)
【文献】特開2015-164873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/42-11/46
B65H 5/06
B65H 29/58-29/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の搬送方向に配列され、前記媒体搬送する複数の搬送部材と、
前記複数の搬送部材を駆動する複数の駆動部と、
前記搬送方向における下流側の搬送部材を駆動する前記駆動部から上流側の搬送部材を駆動する前記駆動部の順に搬送速度を加速させるように前記複数の駆動部を制御する制御部と
を備え
前記複数の搬送部材は、第1搬送部材と、当該第1搬送部材よりも前記搬送方向における下流側の第2搬送部材と、当該第2搬送部材よりも前記搬送方向における下流側の第3搬送部材とを含み、
前記複数の駆動部は、前記第1搬送部材を駆動する第1駆動部と、前記第2搬送部材を駆動する第2駆動部と、前記第3搬送部材を駆動する第3駆動部とを含み、
前記制御部は、前記第1駆動部、前記第2駆動部、及び前記第3駆動部の電流値が最大となる時間が前記第1駆動部、前記第2駆動部、及び前記第3駆動部のすべてでは重複せず、且つ、前記第3駆動部、前記第2駆動部、前記第1駆動部の順に搬送速度を加速させるように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
第1の搬送経路と、当該第1の搬送経路よりも経路長が短く当該第1の搬送経路と合流する第2の搬送経路とに搬送経路を切り替える搬送経路切替え部を更に備え、
前記複数の搬送部材は、前記搬送経路切替え部によって前記搬送経路が前記第1の搬送経路に切り替えられた前記媒体を搬送し、
前記制御部は、前記媒体が前記第1の搬送経路に搬送される場合と前記第2の搬送経路に搬送される場合とで、前記媒体が前記第1の搬送経路と前記第2の搬送経路との合流経路に到達する時間が同一となるように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記媒体の前記搬送方向における長さ、及び前記複数の搬送部材の配列間隔のうち少なくとも一方に基づいて、前記複数の駆動部の前記搬送速度の加速開始時間を決定する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送速度の加速度を前記搬送方向における下流側の前記搬送部材から上流側の前記搬送部材にいくほど大きくするように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の駆動部の搬送速度の加速終了時間が同一となるように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、媒体を搬送する搬送装置において、搬送ローラ対等の複数の搬送部材のそれぞれを駆動する複数の駆動部の搬送速度を加速させる場合、各駆動部の合計の電流値が大きくなるため、電源に大きな負荷がかかる。そこで、媒体の搬送方向における上流側の搬送部材を駆動するモータから下流側の搬送部材を駆動するモータの順に搬送速度を加速させるモータ駆動制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-343892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送方向における上流側の搬送部材を駆動する駆動部から下流側の搬送部材を駆動する駆動部の順に複数の駆動部の搬送速度を加速させていくと、上流側の搬送部材の搬送速度が下流側の搬送部材の搬送速度よりも速くなるため、媒体に弛みが生じる。これにより、媒体が弛み部分を挟んだ両側で搬送部材に挿入されてZ字状に折りたたまれたり、弛みが解除される際に引っ張り音が生じたり、或いは媒体が搬送ガイドに接触して汚れたりする。このように、搬送方向における上流側の搬送部材を駆動する駆動部から下流側の搬送部材を駆動する駆動部の順に複数の駆動部の搬送速度を加速させていくと、搬送不良が生じることがある。
【0005】
本発明の目的は、搬送速度を加速させる場合の電源の負荷を低減することができるとともに、媒体の搬送不良の発生を低減することができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、搬送装置は、媒体の搬送方向に配列され、前記媒体を搬送する複数の搬送部材と、前記複数の搬送部材を駆動する複数の駆動部と、前記搬送方向における下流側の搬送部材を駆動する駆動部から上流側の搬送部材を駆動する駆動部の順に搬送速度を加速させるように前記複数の駆動部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
前記態様によれば、搬送速度を加速させる場合の電源の負荷を低減することができるとともに、媒体の搬送不良の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態に係る搬送装置の内部構造を示す図である。
図2】一実施の形態に係る搬送装置の制御構成を示す図である。
図3】一実施の形態における第1~第3駆動部の搬送速度及び電流値を説明するための説明図である。
図4】一実施の形態の変形例における第1~第3駆動部の搬送速度及び電流値を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態に係る搬送装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は、一実施の形態に係る搬送装置1の内部構造を示す図である。
【0011】
図2は、一実施の形態に係る搬送装置1の制御構成を示す図である。
【0012】
図1に示すように、搬送装置1は、第1~第7搬送ローラ対11,12,13,14,15,16,17と、反転経路切替え部20と、第1~第3媒体検知センサ31,32,33とを備える。また、図2に示すように、搬送装置1は、第1~第7駆動部41,42,43,44,45,46,47と、制御部51と、記憶部52とを備える。
【0013】
搬送装置1は、媒体を搬送するものであればよいが、例えば、媒体に印刷を行う印刷装置と媒体を排出する媒体排出装置との間、又は2つの印刷装置の間に配置される中継搬送装置である。或いは、搬送装置1は、印刷装置などの装置に一体に組み込まれていてもよい。
【0014】
第1~第7搬送ローラ対11~17は、駆動ローラ11a,12a,13a,14a,15a,16a,17aと、従動ローラ11b,12b,13b,14b,15b,16b,17bとを有する。駆動ローラ11a~17aは、後述する第1~第7駆動部41,42,43,44,45,46,47によって駆動される。
【0015】
第1~第7搬送ローラ対11~17は、媒体の搬送方向Dに配列され、媒体をニップしながら搬送する。第1搬送ローラ対11は、搬送装置1における媒体の挿入口に配置されている。第2~第4搬送ローラ対12~14は、媒体の表裏を反転させる反転経路R1に配置されている。なお、第3搬送ローラ対13は、媒体の表裏を反転させるスイッチバックローラ対として機能し、正逆両方向に媒体を搬送する。第5搬送ローラ対15は、反転経路R1を通過する非反転経路R2に配置されている。第6及び第7搬送ローラ対16,17は、反転経路R1と非反転経路R2とが合流する合流経路R3に配置されている。
【0016】
なお、反転経路R1は、第1の搬送経路の一例である。非反転経路R2は、第1の搬送経路(反転経路R1)よりも経路長が短く第1の搬送経路と合流する第2の搬送経路の一例である。第1の搬送経路及び第2の搬送経路としては、反転経路R1及び非反転経路R2に限られない。
【0017】
搬送ローラ対11~17は、媒体の搬送方向Dに配列され、媒体を搬送する搬送部材の一例である。この搬送部材としては、搬送ベルトなどであってもよい。なお、搬送装置1は、反転経路R1と非反転経路R2とに搬送経路が分岐するものに限られず、単一の搬送経路のみを有するものであってもよい。
【0018】
反転経路切替え部20は、反転経路R1と非反転経路R2とに搬送経路を切り替える。反転経路切替え部20は、第1の搬送経路(反転経路R1)と第2の搬送経路(非反転経路R2)とに搬送経路を切り替える搬送経路切替え部の一例である。
【0019】
第1~第3媒体検知センサ31は、例えば、発光部が照射した検知光を受光部が受光するか否かによって媒体の有無を検知する。第1媒体検知センサ31は、第1搬送ローラ対11の搬送方向Dにおける下流側において第1搬送ローラ対11の近傍に配置されている。第2媒体検知センサ32は、第2搬送ローラ対12の搬送方向Dにおける下流側において第2搬送ローラ対12の近傍に配置されている。第3媒体検知センサ33は、第3搬送ローラ対13の搬送方向D(逆搬送前)における下流側において第3搬送ローラ対13の近傍に配置されている。
【0020】
図2に示す第1~第7駆動部41~47は、第1~第7搬送ローラ対11~17を駆動する。第1~第7駆動部41~47は、例えば、モータ等のアクチュエータである。
【0021】
制御部51は、搬送装置1の各部の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有する。なお、搬送装置1が印刷装置等の他の装置に一体に組み込まれる場合には、他の装置の制御部が制御部51を兼ねてもよい。
【0022】
詳しくは後述するが、制御部51は、搬送方向Dにおける下流側の第3搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43から、上流側の第2搬送ローラ対12を駆動する第2駆動部42、さらに上流側の第1搬送ローラ対11を駆動する第1駆動部41の順に搬送速度を加速させるように第1~第3駆動部41~43を制御する。なお、第4~第7駆動部44~47の搬送速度は、例えば定速である。
【0023】
記憶部52は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などである。
【0024】
以下、第1~第3駆動部41~43の搬送速度及び電流値について、図3を参照しながら説明する。
【0025】
図3(a)は、第1~第3駆動部41~43の搬送速度が同時に加速する場合の例(比較例)であり、図3(b)は、第3駆動部43、第2駆動部42、第1駆動部41の順に搬送速度が加速する場合の例である。
【0026】
図3(a)に示すように、比較例では、制御部51は、第1媒体検知センサ31が媒体を検知すると(時間t1)、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第1~第3駆動部41~43を制御する。なお、速度v1は、ゼロ(駆動が停止した状態)であってもよいが、所定の搬送速度である。
【0027】
制御部51は、媒体が上述の図1に示す反転経路R1に搬送される場合と非反転経路R2に搬送される場合とで媒体が合流経路R3に到達する時間が同一となるように速度v2、加速開始時間、加速度などを決定し、第1~第5駆動部41~45を制御するとよい。
【0028】
第1~第3駆動部41~43の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第1駆動部41~43の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t2)の電流値A3まで上昇し、時間t2から一定時間経過後に電流値A1よりも大きく且つ電流値A3よりも小さい電流値A2で安定する。
【0029】
第1~第3駆動部41~43の合計電流値は、搬送速度の加速開始時(時間t1)の電流値TA1(電流値A1の3倍)から、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t2)の最大の電流値TAmax1(電流値A3の3倍)まで上昇し、その後、電流値TA2(電流値A2の3倍)で安定する。
【0030】
それに対し、図3(b)に示すように、本実施の形態では、制御部51は、第1媒体検知センサ31が媒体を検知すると(時間t1)、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように、まず第3駆動部43を制御する。なお、第3駆動部43の搬送速度の開始時間は、第1媒体検知センサ31が媒体時間t1に限られず、適宜設定されればよい。
【0031】
第3駆動部43の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第3駆動部43の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t2)の電流値A3まで上昇し、時間t2から一定時間経過後に電流値A1よりも大きく且つ電流値A3よりも小さい電流値A2で安定する。
【0032】
制御部51は、例えば、時間t1の数ミリ秒後の時間t2において、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第2駆動部42を制御する。なお、制御部51は、第2駆動部42の搬送速度の加速開始時間(時間t2)及び後述する第3駆動部43の搬送速度の加速開始時間(時間t3)を、媒体の搬送方向Dにおける長さ、及び第1~第3搬送ローラ対11~13の配列間隔のうち少なくとも一方に基づいて決定するとよい。一例ではあるが、制御部51は、媒体の搬送方向Dにおける長さが長いほど、或いは、第1~第3搬送ローラ対11~13の配列間隔が長いほど、時間t2,t3を遅くするとよい。
【0033】
第2駆動部42の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第2駆動部42の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t3)の電流値A3まで上昇し、時間t3から一定時間経過後に電流値A1よりも大きく且つ電流値A3よりも小さい電流値A2で安定する。
【0034】
制御部51は、例えば、時間t2の数ミリ秒後の時間t3において、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第1駆動部41を制御する。
【0035】
第1駆動部41の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第1駆動部41の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t4)の電流値A3まで上昇し、時間t4から一定時間経過後に電流値A1よりも大きく且つ電流値A3よりも小さい電流値A2で安定する。
【0036】
このように、制御部51は、例えば第1媒体検知センサ31が媒体を検知した時間t1において、搬送方向Dにおける下流側の第3搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43から、上流側の第2搬送ローラ対12を駆動する第2駆動部42、さらに上流側の第1搬送ローラ対11を駆動する第1駆動部41の順に搬送速度を加速させるように第1~第3駆動部41~43を制御する。これにより、第1~第3駆動部41~43の搬送速度が速度v1から速度v2まで上昇する。
【0037】
そのため、第1~第3駆動部41~43の電流値が最大となる電流値A3に達する時間が第1~第3駆動部41~43のすべてでは重複しない。これにより、第1~第3駆動部41~43の合計電流値は、第3駆動部43の搬送速度の加速開始時(時間t1)の電流値TA1(電流値A1の3倍)、及び電流値TA2(電流値A2の3倍)については比較例と同一であるが、最大の電流値TAmax2(例えば約7.0A)が比較例の最大の電流値TAmax1(例えば約9.0A)よりも小さくなる。また、第1~第3駆動部41~43の合計電流値が最大の電流値TAmax2の期間は、比較例の最大の電流値TAmax1(電流値A3の3倍)の期間よりも短い。
【0038】
なお、第1~第3駆動部41~43の搬送速度が加速を開始してから、第1~第3駆動部41~43のすべての搬送速度が速度v2に到達するまでは第1~第3駆動部41~43の搬送速度に速度差が生じる。しかしながら、第1~第3駆動部41~43の搬送速度に速度差が生じた状態で媒体の搬送方向Dにおける先端が第2搬送ローラ対12や第3搬送ローラ対13に到達していて複数の搬送ローラ対によって媒体がニップされていても、下流側の第2搬送ローラ対12や第3搬送ローラ対13は、上流側の第1搬送ローラ対11よりも搬送速度が速いため、媒体に弛みは生じない。
【0039】
また、媒体の搬送方向Dにおける後端が第1媒体検知センサ31を抜けた後には第1駆動部41の搬送速度を加速前の速度v1に戻し、媒体の搬送方向Dにおける後端が第2媒体検知センサ32を抜けた後には第2駆動部42の搬送速度を加速前の速度v1に戻すとよい。また、第3搬送ローラ対13がスイッチバックローラ対として機能するため、第3搬送ローラ対13を逆回転させる場合には、第3駆動部43の速度v2を例えば正逆反対方向の速度に加速させるとよい。
【0040】
図4(a)は、第1~第3駆動部41~43の搬送速度が同時に加速し、且つ加速度a1が同一の場合の例(比較例)であり、図4(b)は、第3駆動部43、第2駆動部42、第1駆動部41の順に搬送速度が加速し、且つ加速度が第3駆動部43の加速度a3、第2駆動部42の加速度a2、第1駆動部41の加速度a1の順に上がる場合の例(変形例)である。
【0041】
なお、図4(a)に示す比較例は、図3(a)に示す比較例と同一であるため、説明を省略する。
【0042】
図4(b)に示すように、本変形例では、制御部51は、第1媒体検知センサ31が媒体を検知すると(時間t1)、まず、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第3駆動部43を制御する。このときの加速度は、加速度a3である。
【0043】
第3駆動部43の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第3駆動部43の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t4)よりも早い例えば時間t2において最大の電流値A3aまで上昇する。この最大の電流値A3aは、第3駆動部43の搬送速度の加速度a3が比較例の加速度a1よりも小さいため、比較例の最大の電流値A3よりも小さい。その後、第3駆動部43の電流値は、電流値A1よりも大きく且つ電流値A3aよりも小さい電流値A2で安定する。
【0044】
制御部51は、例えば、時間t1の数ミリ秒後の時間t2において、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第2駆動部42を制御する。このときの加速度は、加速度a2である。
【0045】
第2駆動部42の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第2駆動部42の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t4)よりも早い例えば時間t3において最大の電流値A3bまで上昇する。この最大の電流値A3bは、第2駆動部42の搬送速度の加速度a2が比較例の加速度a1よりも小さいため、比較例の最大の電流値A3よりも小さいが、第3駆動部43の加速度a3よりも大きいため、第3駆動部43の最大の電流値A3aよりも大きい。その後、第2駆動部42の電流値は、電流値A1よりも大きく且つ電流値A3bよりも小さい電流値A2で安定する。
【0046】
制御部51は、例えば、時間t2の数ミリ秒後の時間t3において、搬送速度を速度v1から速度v2まで加速させるように第1駆動部41を制御する。このときの加速度は、加速度a1であり、比較例と同一である。
【0047】
第1駆動部41の電流値は、搬送速度の加速開始とともに電流値A1から上昇する。その後、第1駆動部41の電流値は、搬送速度が速度v2に到達するとき(時間t4)において最大の電流値A3まで上昇する。この最大の電流値A3は、上述のように、加速度a1が第3駆動部43の加速度a3及び第2駆動部42の加速度a2よりも大きいため、電流値A3a及び電流値A3bよりも大きく且つ比較例と同一となる。その後、第1駆動部41の電流値は、電流値A1よりも大きく且つ電流値A3よりも小さい電流値A2で安定する。
【0048】
このように、本変形例においても、制御部51は、搬送方向Dにおける下流側の第3搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43から、上流側の第2搬送ローラ対12を駆動する第2駆動部42、さらに上流側の第1搬送ローラ対11を駆動する第1駆動部41の順に搬送速度を加速させるように第1~第3駆動部41~43を制御する。また、本変形例では、制御部51は、第3駆動部43の搬送速度の加速度a3、第2駆動部42の搬送速度の加速度a2、第1駆動部41の搬送速度の加速度a1の順に加速度を上げ、加速終了時間が同一となるように第1~第3駆動部41~43を制御する。
【0049】
そのため、第1~第3駆動部41~43の電流値が最大となる電流値A3,A3a,A3bに達する時間が第1~第3駆動部41~43のすべてでは重複しない。また、第2駆動部42及び第3駆動部43の電流値A3a,A3bは、比較例や第1駆動部41の電流値A3よりも小さい。これにより、第1~第3駆動部41~43の合計電流値は、第3駆動部43の搬送速度の加速開始時(時間t1)の電流値TA1(電流値A1の3倍)、及び安定後の電流値TA2(電流値A2の3倍)については比較例と同一であるが、最大の電流値TAmax3が比較例の最大の電流値TAmax1よりも小さくなる。また、第1~第3駆動部41~43の合計電流値が最大の電流値TAmax3の期間は、比較例の最大の電流値TAmax1(電流値A3の3倍)の期間よりも短い。
【0050】
以上説明した本実施の形態では、搬送装置1は、媒体の搬送方向Dに配列され、媒体を搬送する複数の搬送部材の一例である第1~第3搬送ローラ対11~13と、これらの第1~第3搬送ローラ対11~13を駆動する複数の駆動部の一例である第1~第3駆動部41~43と、搬送方向Dにおける下流側の搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43から上流側の第2搬送ローラ対12、第1搬送ローラ対11を駆動する第2駆動部42、第1駆動部41の順に搬送速度を加速させるように第1~第3駆動部41~43を制御する制御部51とを備える。
【0051】
これにより、第1~第3駆動部41~43の搬送速度の加速開始を同時にする場合(図3(a)及び図4(a)に示す比較例)と比較して、第1~第3駆動部41~43の合計電流値の最高値を小さくしたり或いは最高値の期間を短くしたりすることができる。また、搬送方向Dにおける上流側の第1搬送ローラ対11を駆動する第1駆動部41から、下流側の第2搬送ローラ対12、第3搬送ローラ対13を駆動する第2駆動部42、第3駆動部43の順に搬送速度を加速させる場合と比較して、下流側の搬送ローラ対を駆動する駆動部の方が上流側の搬送ローラ対を駆動する駆動部よりも搬送速度が遅くならないため、媒体に弛みが生じない。これにより、媒体が弛み部分を挟んだ両側で第2搬送ローラ対12や第3搬送ローラ対13に挿入されてZ字状に折りたたまれたり、弛みが解除される際に引っ張り音が生じたり、或いは媒体が搬送ガイドに接触して汚れたりするのを回避することができる。よって、本実施の形態によれば、搬送速度を加速させる場合の電源の負荷を低減することができるとともに、媒体の搬送不良の発生を低減することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、搬送装置1は、第1の搬送経路の一例である、媒体の表裏を反転させる反転経路R1と、この反転経路R1よりも経路長が短く反転経路R1と合流する第2の搬送経路の一例である非反転経路R2とに搬送経路を切り替える搬送経路切替え部の一例である反転経路切替え部20を更に備える。第1~第3搬送ローラ対11~13は、反転経路切替え部20によって搬送経路が反転経路R1に切り替えられた媒体を搬送し、制御部51は、媒体が反転経路R1に搬送される場合と非反転経路R2に搬送される場合とで、媒体が合流経路R3に到達する時間が同一となるように第1~第5駆動部41~45を制御する。これにより、第1の搬送経路に搬送される媒体、例えば、反転経路R1に搬送され、表裏が反転する媒体と、第2の搬送経路に搬送される媒体、例えば、非反転経路R2に搬送され、表裏が反転しない媒体とが混在して搬送される場合であっても、媒体の搬送を停止させずに合流経路R3において媒体を搬送することができる。したがって、媒体の搬送効率を高めることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、制御部51は、媒体の搬送方向Dにおける長さ、及び第1~第3搬送ローラ対11~13の配列間隔のうち少なくとも一方に基づいて、第1~第3駆動部41~43の搬送速度の加速開始時間(時間t1,t2,t3)を決定する。そのため、搬送装置1の構成や媒体の搬送条件に合わせて、第1~第3駆動部41~43の搬送速度の加速開始時間の間隔を広げることができる。したがって、第1~第3駆動部41~43の合計電流値の最高値を更に小さくしたり或いは最高値の期間を更に短くしたりすることで、電源の負荷をより一層低減することができる。
【0054】
また、本実施の形態の変形例では、制御部51は、搬送速度の加速度を搬送方向Dにおける下流側の搬送部材から上流側の搬送部材にいくほど大きくなるように、すなわち、下流側の第3搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43から上流側の第2搬送ローラ対12、第1搬送ローラ対11を駆動する第2駆動部42、第1駆動部41の順に大きくなるように、第1~第3駆動部41~43を制御する。そのため、搬送速度の加速開始時間が遅い上流側の第1搬送ローラ対11を駆動する第1駆動部41の加速度を、搬送速度の加速開始時間が早い下流側の第3搬送ローラ対13を駆動する第3駆動部43の加速度よりも上げることで、第1~第3駆動部41~43の加速終了時間の差を、加速開始時間の差よりも縮めることができる。そのため、第1~第3駆動部41~43のすべてが加速後の搬送速度に到達する時間を早めることができる。
【0055】
また、本実施の形態の変形例では、制御部51は、第1~第3駆動部41~43の搬送速度の加速終了時間(時間t4)が同一となるように第1~第3駆動部41~43を制御する。これにより、第1~第3駆動部41~43のすべてが加速後の搬送速度に到達する時間を揃えることができる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0057】
[付記1]
媒体の搬送方向に配列され、前記媒体を搬送する複数の搬送部材と、
前記複数の搬送部材を駆動する複数の駆動部と、
前記搬送方向における下流側の搬送部材を駆動する前記駆動部から上流側の搬送部材を駆動する前記駆動部の順に搬送速度を加速させるように前記複数の駆動部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする搬送装置。
【0058】
[付記2]
第1の搬送経路と、当該第1の搬送経路よりも経路長が短く当該第1の搬送経路と合流する第2の搬送経路とに搬送経路を切り替える搬送経路切替え部を更に備え、
前記複数の搬送部材は、前記搬送経路切替え部によって前記搬送経路が前記第1の搬送経路に切り替えられた前記媒体を搬送し、
前記制御部は、前記媒体が前記第1の搬送経路に搬送される場合と前記第2の搬送経路に搬送される場合とで、前記媒体が前記第1の搬送経路と前記第2の搬送経路との合流経路に到達する時間が同一となるように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする付記1記載の搬送装置。
【0059】
[付記3]
前記制御部は、前記媒体の前記搬送方向における長さ、及び前記複数の搬送部材の配列間隔のうち少なくとも一方に基づいて、前記複数の駆動部の前記搬送速度の加速開始時間を決定する
ことを特徴とする付記1又は2記載の搬送装置。
【0060】
[付記4]
前記制御部は、前記搬送速度の加速度を前記搬送方向における下流側の前記搬送部材から上流側の前記搬送部材にいくほど大きくするように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする付記1から3のいずれか記載の搬送装置。
【0061】
[付記5]
前記制御部は、前記複数の駆動部の搬送速度の加速終了時間が同一となるように前記複数の駆動部を制御する
ことを特徴とする付記4記載の搬送装置。
【符号の説明】
【0062】
1 搬送装置
11,12,13,14,15,16,17 第1~第7搬送ローラ対
11a,12a,13a,14a,15a,16a,17a 駆動ローラ
11b,12b,13b,14b,15b,16b,17b 従動ローラ
20 反転経路切替え部
31,32,33 第1~第3媒体検知センサ
41,42,43,44,45,46,47 第1~第7駆動部
51 制御部
52 記憶部
D 搬送方向
R1 反転経路
R2 非反転経路
R3 合流経路
図1
図2
図3
図4