(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】シート収納装置、シート給送装置及びシート排出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/14 20060101AFI20231204BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231204BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B65H1/14 322B
G03G15/00 402
B65H7/14
(21)【出願番号】P 2019239068
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金親 大介
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254385(JP,A)
【文献】特開昭61-090927(JP,A)
【文献】特開2008-007283(JP,A)
【文献】特開2015-202912(JP,A)
【文献】実開昭58-034832(JP,U)
【文献】特開2001-310829(JP,A)
【文献】特開2017-218272(JP,A)
【文献】特開2008-184300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/14
G03G 15/00
B65H 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載される積載部材を有し、前記シートを収納する開閉可能な収納庫と、
前記積載部材を昇降させる昇降機構と、
前記昇降機構に、前記積載部材を上昇させるための第1駆動力及び前記積載部材を下降させるための第2駆動力を供給する駆動源と、
前記収納庫が閉じている状態で前記駆動源から前記昇降機構に前記第1駆動力を伝達する第1伝達経路、及び、前記収納庫が閉じている状態及び前記収納庫が開いている状態で前記駆動源から前記昇降機構に前記第2駆動力を伝達する第2伝達経路、を含む駆動伝達機構と、
を有し、
前記駆動伝達機構は、前記収納庫が閉じている状態で前記第1伝達経路を連結し、前記収納庫が開いている状態で前記第1伝達経路を遮断する遮断手段を備えている、
ことを特徴とするシート収納装置。
【請求項2】
前記収納庫は、前記シート収納装置の筐体に対して挿入及び引き出しされることで開閉され、
前記駆動源は、前記収納庫に配置されており、
前記収納庫が閉じている状態及び前記収納庫が開いている状態で前記駆動源に電力を供給する供給手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のシート収納装置。
【請求項3】
前記遮断手段は、
前記収納庫に設けられ、前記第1伝達経路を連結して前記第1駆動力を伝達する連結位置と前記第1伝達経路を遮断する遮断位置との間で移動可能な補助伝達部材と、
前記補助伝達部材を前記連結位置から前記遮断位置に向けて付勢する付勢手段と、
を含み、
前記補助伝達部材は、前記収納庫が前記筐体に挿入された場合に、前記筐体に設けられた当接部に当接して前記遮断位置から前記連結位置へ移動し、前記収納庫が前記筐体から引き出された場合に、前記当接部から離間し、前記付勢手段に付勢されて前記連結位置から前記遮断位置へ移動する、
ことを特徴とする請求項2に記載のシート収納装置。
【請求項4】
前記駆動伝達機構は、
回転軸上に配置され、前記駆動源から前記第1駆動力を受けて第1方向に回転し、前記駆動源から前記第2駆動力を受けて前記第1方向とは反対の第2方向に回転する第1回転部材と、
前記回転軸上に配置され、前記昇降機構に連結された第2回転部材と、
前記第2伝達経路を構成し、前記第1回転部材の前記第2方向の回転を前記第2回転部材に伝達し、前記第1回転部材の前記第1方向の回転を前記第2回転部材に伝達しないワンウェイクラッチと、
をさらに有し、
前記補助伝達部材は、前記回転軸上において軸線方向に移動可能に設けられ、前記連結位置にある場合に前記第1回転部材及び前記第2回転部材を連結して前記第1方向の回転を前記第1回転部材から前記第2回転部材に伝達し、前記遮断位置にある場合に前記第1回転部材と前記第2回転部材の連結を解除する、
ことを特徴とする請求項3に記載のシート収納装置。
【請求項5】
前記収納庫が前記筐体から引き出されたことを検知する検知手段と、
前記収納庫が前記筐体から引き出されたことを前記検知手段が検知した場合に、前記駆動源に前記第2駆動力を所定時間の間出力させる処理を実行する制御手段と、をさらに有する、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載のシート収納装置。
【請求項6】
前記収納庫が開いている状態で前記遮断手段が前記第1駆動力を伝達可能な状態であるとき、前記昇降機構への前記第1駆動力の伝達を抑制する負荷を発生させる負荷手段をさらに有し、
前記負荷手段は、前記収納庫が閉じている状態では前記駆動伝達機構に接続されておらず、前記収納庫を開く動作に伴って前記駆動伝達機構に接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシート収納装置。
【請求項7】
前記駆動源は、正転及び逆転が可能なパルスモータである、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシート収納装置。
【請求項8】
前記昇降機構は、前記積載部材を吊り下げて支持するワイヤーと、前記駆動源から供給される駆動力により前記ワイヤーの巻き取り及び繰り出しを行う巻き取り軸と、を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のシート収納装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート収納装置と、
前記シート収納装置に収納されているシートを給送するシート給送手段と、を備える、
ことを特徴とするシート給送装置。
【請求項10】
シートを排出する排出手段と、
前記排出手段によって排出されたシートを収納する請求項1乃至8のいずれか1項に記載のシート収納装置と、を備える、
ことを特徴とするシート排出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを収納するシート収納装置、シートを給送するシート給送装置及びシートを排出するシート排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機及び複合機等の画像形成装置では、記録媒体として用いるシートを収納する目的や画像が記録されたシートを収納する目的で、シート収納装置が用いられている。シート収納装置は、画像形成装置の本体や画像形成装置の本体に連結される大容量給送装置の本体に対して開閉可能な収納庫(カセット又はデッキと呼ばれる場合がある)と、収納庫内で昇降可能な積載部材と、を備えている。
【0003】
特許文献1には、装置本体から収納庫を引き出すとワイヤーに吊り下げられたシート積載部が重力で下降する構成において、回転式ダンパを用いてシート積載部の下降速度を抑制することが記載されている。この文献によると、ワイヤーの巻き取りドラムを回転駆動する駆動源が装置本体に設けられており、収納庫を引き出すと駆動源と巻き取りドラムとの接続が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献とは異なり、収納庫が開いている状態でも、モータ等の駆動源が供給する駆動力によって積載部材を下降させる場合がある。例えば、駆動源としてパルスモータ(ステッピングモータ)を用いる場合、駆動パルス数をカウントしながら積載部材を下降させることで積載部材の位置制御の精度やシート残量管理の精度を高めることができる。そこで、駆動源又は駆動源の制御回路等に異常が発生した場合に収納庫が開いている状態で積載部材が予期せず上昇することを防ぐ機能を、簡易な構成で実現することが求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な構成で、収納庫が開いている状態で積載部材が上昇することを防ぐことが可能なシート収納装置、シート給送装置及びシート排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、シートが積載される積載部材を有し、前記シートを収納する開閉可能な収納庫と、前記積載部材を昇降させる昇降機構と、前記昇降機構に、前記積載部材を上昇させるための第1駆動力及び前記積載部材を下降させるための第2駆動力を供給する駆動源と、前記収納庫が閉じている状態で前記駆動源から前記昇降機構に前記第1駆動力を伝達する第1伝達経路、及び、前記収納庫が閉じている状態及び前記収納庫が開いている状態で前記駆動源から前記昇降機構に前記第2駆動力を伝達する第2伝達経路、を含む駆動伝達機構と、を有し、前記駆動伝達機構は、前記収納庫が閉じている状態で前記第1伝達経路を連結し、前記収納庫が開いている状態で前記第1伝達経路を遮断する遮断手段を備えている、ことを特徴とするシート収納装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易な構成で、収納庫が開いている状態で積載部材が上昇することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成システムの概略構成断面図。
【
図3】第1実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す側面図。
【
図4】第1実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す拡大側面図。
【
図5】第1実施形態に係る多段給送装置の収納庫を引き出した状態で示す拡大斜視図。
【
図6】第1実施形態に係る積載トレイの昇降機構を示す斜視図。
【
図8】第1実施形態に係る駆動伝達機構の模式図(a、b)。
【
図9】第1実施形態に係る収納庫を取り外した状態の筐体を正面側から見た図。
【
図10】第1実施形態に係る駆動伝達機構の一部を拡大した斜視図(a、b)。
【
図11】第1実施形態に係る駆動伝達機構の一部を拡大した上面図(a、b)。
【
図12】第1実施形態に係る多段給送装置の制御構成を示すブロック図。
【
図13】第2実施形態に係る駆動伝達機構の模式図(a、b)。
【
図14】第2実施形態に係る負荷機構の模式図(a、b)。
【
図15】第3実施形態に係る多段給送装置の制御方法を表すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための例示的な形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
[画像形成システム]
図1は、本開示の第1実施形態に係る多段給送装置及び画像形成装置を備える画像形成システムの一例を概略的に示す断面図である。以下の説明では、画像形成部を有する画像形成装置として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステム(以下単にプリンタと呼ぶ)を例に挙げて説明する。なお、画像形成システムを構成する画像形成装置は、プリンタ以外に、複写機、ファクシミリ、複合機などであっても良い。また、画像形成装置は、電子写真方式に関らず、インクジェット方式などの他の方式の構成であっても良い。
【0012】
本実施形態の画像形成システム1000は、画像形成装置100と、この画像形成装置100に接続されたシート給送装置としての多段給送装置200と、長尺給送装置500とを有している。多段給送装置200は、詳しくは後述するように、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫を有しており、各収納庫から画像形成装置100にシートを給送可能である。また、長尺給送装置500も複数枚のシートを収納可能な収納庫を有しており、シート搬送方向に関して、多段給送装置200の上流側に配置されている。長尺給送装置500から給送されるシートは、多段給送装置200に設けられた中継搬送装置400を介して画像形成装置100に搬送される。なお、シートとしては、普通紙、薄紙、厚紙などの紙、プラスチックシートなどが挙げられる。また、長尺給送装置500は、例えばA3長辺長さを超えるようなシート搬送方向に長いシート(長尺シート)を収納して画像形成装置100へ向けて給送することができる。
【0013】
画像形成装置100は、画像形成装置本体101に接続された原稿読み取り装置102又は画像形成装置本体101に対し通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器からの画像信号に応じてトナー像(画像)をシートに形成する。本実施形態の場合、原稿読み取り装置102は、画像形成装置本体101の上側に配置されている。
【0014】
原稿読み取り装置102は、原稿を読み取る際には、プラテンガラス103の上に載置された原稿に走査光学系光源によって光を照射すると共に、反射光をCCDに入力することにより原稿画像を読み取るようにしている。また、原稿読み取り装置102は、自動原稿搬送装置(ADF)104を備えており、トレイ105上に載置された原稿をADF104により自動的に原稿読み取り装置102の読み取り部に搬送して、原稿画像を読み取ることも可能である。そして、読み取った原稿画像は電気信号に変換されて、後述する画像形成部110のレーザスキャナ113に伝送される。なお、レーザスキャナ113は、上述したようにパーソナルコンピュータ等から送信されてくる画像データが入力される場合もある。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成部110、複数のシート給送装置120、シート搬送装置130等を備える。画像形成装置100は、制御部140により各部が制御される。制御部140は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0016】
複数のシート給送装置120は、それぞれシートSを収納するカセット121と、ピックアップローラ122と、フィードローラ123及びリタードローラ124から構成される分離搬送ローラ対125とを備えている。カセット121内に収納されたシートSは、所定のタイミングで昇降動作して回転するピックアップローラ122と分離搬送ローラ対125とによって1枚ずつ分離されて給送される。
【0017】
シート搬送装置130は、搬送ローラ対131、レジストローラ対133を備えている。シート給送装置120から給送されたシートSは、搬送ローラ対131によりシート搬送路134を通過させられた後、レジストローラ対133に導かれる。この後、シートSは、レジストローラ対133によって、所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0018】
なお、後述する多段給送装置200や長尺給送装置500から搬送ローラ対201を介して搬送されるシートは、画像形成装置100との接続経路202を介して画像形成装置100内に搬送される。そして、多段給送装置200や長尺給送装置500から画像形成装置100内に搬送されたシートは、レジストローラ対133を介して所定のタイミングで画像形成部110に送り込まれる。
【0019】
画像形成部110は、感光ドラム111、帯電器112、レーザスキャナ113、現像器114、転写装置115、クリーナ117等を備えている。画像形成時には、感光ドラム111が図中時計回り方向に回転駆動され、まず、帯電器112により感光ドラム111の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて変調されるレーザスキャナ113からのレーザ光が帯電された感光ドラム111に照射されることで、感光ドラム111上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム111上に形成された静電潜像は、この後、現像器114によってトナー像として顕像化される。
【0020】
この後、感光ドラム111上のトナー像は、転写部116において転写装置115によりシートSに転写される。さらに、このようにトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送されてトナー像の定着が行われ、この後、排出ローラ151によって機外の排出トレイ152に排出される。
【0021】
シートSの裏面にトナー像を形成する場合には、定着装置150から排出されたシートSを反転搬送路160に搬送する。そして、反転搬送路160により表裏を反転した状態で、シートSを再度、画像形成部110の転写部116に搬送する。裏面にトナー像が転写されたシートSは、定着装置150に搬送され、トナー像の定着が行われた後、排出ローラ151により排出トレイ152に排出される。なお、転写後に感光ドラム111上に残った転写残トナーは、クリーナ117により除去される。
【0022】
[多段給送装置の概要]
引き続き
図1を用いて多段給送装置200の概要について説明する。多段給送装置200は、複数の収納庫210a~210c、中継搬送装置400等を備える。本実施形態では、3つの収納庫210a~210cを上下に3段並べており、一番下の収納庫210cと上から2番目の収納庫210bとの間に中継搬送装置400を配置している。
【0023】
一番上の収納庫210aから給送されたシートは、搬送経路212に搬送され、上から2番目の収納庫210bから給送されたシートは、搬送経路213に搬送され、一番下の収納庫210cから給送されたシートは、搬送経路214に搬送される。また、中継搬送装置400から搬送されたシートは、搬送経路215に搬送される。搬送経路213は、途中で搬送経路212に合流している。また、搬送経路212、214、215は、合流点216で合流し、搬送経路217を通って搬送ローラ対201に搬送され、接続経路202を介して画像形成装置100に搬送される。
【0024】
また、搬送経路213と合流後の搬送経路212、中継搬送装置400、搬送経路214には、それぞれシートの重送を検知する重送検知センサが配置されている。そして、重送検知センサにより重送が検知されたシートは、搬送経路217まで搬送される。搬送経路217の下方には、重送が検知されたシートを収容する重送シート収容部(エスケープトレイ)218が配置されている。重送が検知され、搬送経路217に搬送されたシートは、搬送経路217に設けられた切換部材219により搬送経路が切り換えられることで、重送シート収容部に搬送される。
【0025】
図2は、多段給送装置200の正面図である。
図2に示すように、多段給送装置200は、それぞれが複数枚のシートを収納可能な複数の収納庫210a~210cを有する。収納庫210a~210cは、鉛直方向に複数段に並べて配置されている。収納庫210a~210cは、それぞれ多段給送装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入を行うことで開閉可能である。
【0026】
収納庫210a~210cから給送されるシートは、搬送経路212,213,214を経由して接続経路202(
図1参照)に搬送される。また、多段給送装置200は、制御部203(
図1参照)により各部が制御される。制御部203は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を有している(
図12参照)。本実施形態の制御手段である制御部203は、CPUがRAMを作業領域としてROMから制御プログラムを読み出して実行することで、多段給送装置200の各部の動作を制御する。例えば、制御部203は、画像形成装置100の制御部140と通信可能であり、制御部140と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0027】
多段給送装置200は、収納庫210a~210cの引き出し動作を行うための操作部としてのボタン205a~205cを有する。ボタン205a~205cは、収納庫210a~210cのそれぞれの前面に設けられている。例えば、操作者がボタン205aを押すと、収納庫210aを装着位置にロックしていたロック機構が解除され、不図示のバネにより収納庫210aが筐体204から押し出される。これにより、操作者が収納庫210aを、
図3~
図5に示すように、シートを収納可能な位置まで引き出すことができる。なお、ボタン205a~205cを押すことで、モータなどにより収納庫210a~210cが自動でシートを収納可能な位置まで移動する構成であっても良い。
【0028】
「収納庫が開いている状態」とは、収納庫内の収容空間が開放された状態であり、本実施形態では、収納庫210a~210cがユーザがシートの補充や交換を行うことが可能な位置まで筐体204から引き出された状態を指す。「収納庫が閉じている状態」とは、収納空間が閉鎖された状態であり、本実施形態では収納庫210a~210cが筐体204内の所定の装着位置(収納庫内のシートの給送を実行可能な位置)まで挿入された状態を指す。
【0029】
収納庫210a~210cは、収納可能なシートの枚数が異なるだけで基本的な構成は同じである。従って、以下では最上段の収納庫210aを代表例として収納庫の構成を説明するが、同様の構成を他の収納庫210b,210cも備えている。なお、収納庫210a~210cは、収納可能なシートの枚数が互いに等しくなるように構成してもよい。
【0030】
[収納庫]
図4は筐体204から引き出された状態の収納庫210aを示す側面図であり、
図5はその斜視図である。
図4及び
図5に示すように、収納庫210aは、シートSを収納するシート収納部220と、シート収納部220から画像形成装置100に向けてシートSを給送するシート給送部230と、を有する。
【0031】
シート収納部220は、
図5に示すように、シートSが積載される積載部材である積載トレイ221、突き当て部222、後端規制板223、サイド規制板224等を有する。積載トレイ221は、後述の昇降機構により上下方向(略鉛直方向)に昇降可能である。積載トレイ221は、ボタン205aの操作により収納庫210aが開かれると昇降機構により所定位置まで下降するように制御される。また、積載トレイ221は、収納庫210aが筐体204に挿入されると、積載トレイ221に積載されたシートSの上面(最上位シートの上面)がシート給送部230による給送を行うときの高さ位置(給送位置)まで上昇するように制御される。
【0032】
突き当て部222は、シートが収容される収容空間225において、シート搬送方向下流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向下流端(先端)が突き当てられる。後端規制板223は、収容空間225において、シート搬送方向上流側に配置され、積載トレイ221に積載されたシートの搬送方向上流端(後端)に突き当てられることで、シートの後端位置を規制する。後端規制板223は、シート搬送方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの後端規制位置を調整可能である。サイド規制板224は、収容空間225のシート搬送方向と直交する幅方向両側にそれぞれ配置され、シートの幅方向両端位置を規制する。サイド規制板224は、幅方向に移動可能で、シートサイズに合わせてシートの幅方向の規制位置を調整可能である。
【0033】
シート給送部230は、
図5に示すように、シート給送手段(給送ローラ)としてのピックアップローラ231と、搬送ローラ232及びリタードローラから構成される分離搬送ローラ対234と、不図示の搬送ローラ対と、を有する。ピックアップローラ231や分離搬送ローラ対234は、収容空間225の上方のシート搬送方向下流端部で、且つ、幅方向略中央に配置されている。
【0034】
ピックアップローラ231は、積載トレイ221の上方に設けられ、上昇した積載トレイ221に積載されたシートSの最上位シートと当接して最上位シートを給送する。このためにピックアップローラ231は、シート搬送方向に関してシートSの先端部近傍に、積載トレイ221上の最上位シートに適切な当接圧で圧接可能に配置されている。なお、ピックアップローラ231はシート給送手段の一例であり、例えばベルト部材をシートSに圧接させて給送してもよく、通気性のあるベルト部材に対してバキューム機構によってシートを吸着させて給送してもよい。
【0035】
分離搬送ローラ対234は、ピックアップローラ231から2枚以上のシートが重なって給送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。即ち、分離搬送ローラ対234の搬送ローラ232は、ピックアップローラ231と同じ方向に回転し、ピックアップローラ231から送られたシートを搬送する。一方、リタードローラは、シート搬送方向に逆らう方向に回転して、ピックアップローラ231から送られた2枚以上のシートのうち、最上位シート以外のシートを積載トレイ221側に押し戻す。なお、リタードローラには不図示のトルクリミッタが内蔵されており、分離搬送ローラ対234に送られたシートが1枚のみの場合には、搬送ローラ232により搬送されるシートによって連れ回るようになっている。分離搬送ローラ対234によって分離された状態で1枚ずつ搬送されるシートは、上述のように接続経路202(
図1参照)を介して画像形成装置100に搬送される。
【0036】
本実施形態の場合、上述のようにシート給送部230が収納庫210aに設けられている。このため、収納庫210aを多段給送装置200の筐体204に対して引き出し及び挿入する際には、収納庫210aと共に移動する。このように、シート給送部230を収納庫210aと共に引き出せるように構成することで、シート給送部230の各ローラの交換などのメンテナンスを容易にしている。
【0037】
図5に示すように、収納庫210aの両側面には、多段給送装置200の前後方向(正面側と背面側とを結ぶ方向)に延びるレール229が設けられている。一方、筐体204には、レール229を介して収納庫210aを前後方向にスライド可能に支持する支持手段としてのコロ部材15(
図9参照)が設けられている。なお、
図9は、収納庫210aを取り外した状態の筐体204を正面側から見た図である。
【0038】
また、多段給送装置200には収納庫210aの開閉を検知する検知手段として、開閉検知センサ321が配置されている(
図9及び
図12参照)。開閉検知センサ321としては、例えば、筐体204に設置されたフォトインタラプタ321aと、収納庫210aに設けられた遮光部321bと、を含む光学式のセンサ構成を用いることができる。この場合、収納庫210aが装着位置まで挿入されると、遮光部321bがフォトインタラプタ321aの発光部から照射される光を遮り、フォトインタラプタ321aの受光部は光を検出していない状態となる。収納庫210aが装着位置から引き出されると、遮光部321bが移動することでフォトインタラプタ321aの受光部は光を検出している状態となる。従って、多段給送装置200の制御部203はフォトインタラプタ321aの出力信号に基づいて収納庫210aが閉じているか開いているかを判断できる。
【0039】
[積載トレイの昇降機構]
次に、収納庫210aにおける積載トレイ221の昇降機構について説明する。
図6は、積載トレイ221の昇降機構300を示す斜視図である。図中、矢印Fは多段給送装置200の正面方向であり、矢印Rは多段給送装置200の背面方向である。
【0040】
本実施形態の昇降機構300は、積載トレイ221を吊り下げる支持部材である複数本のワイヤー305と、ワイヤー305の巻き取り及び繰り出しを行う巻き取り軸303と、を有するワイヤー式昇降機構である。各ワイヤー305は、収納庫210aの枠体に支持されるガイドプーリを介して配索され、一端を巻き取り軸303に設けられたドラム部304a,304bに固定され、他端を積載トレイ221に接続されている。本実施形態では、積載トレイ221の四隅がワイヤー305によって支持されている。そして、巻き取り軸303の回転に伴ってドラム部304a,304bがワイヤー305の巻き取り又は繰り出しを行うことで、積載トレイ221が略鉛直方向に上昇又は下降する。
【0041】
昇降機構300は、駆動源であるモータMと、モータMの駆動力を巻き取り軸303に伝達する駆動伝達機構301と、を含む駆動ユニットによって駆動される。モータMは、正転及び逆転が可能なモータである。以下、モータMの正転により巻き取り軸303がワイヤー305を巻き取る方向に駆動され、モータMの逆転により巻き取り軸303がワイヤー305を繰り出す方向に駆動されるものとする。即ち、モータMが出力する正転方向の回転力は、本実施形態において積載部材を上昇させるための第1駆動力であり、モータMが出力する逆転方向の回転力は、本実施形態において積載部材を下降させるための第2駆動力である。
【0042】
なお、
図6に示すように、モータM及び駆動伝達機構301は、いずれも収納庫210aに配置されており、モータMは、収納庫210aを筐体204から引き出した状態でも電力を供給されるように構成されている。例えば、
図12に示すように制御部203からの指示に基づいてモータMを駆動するドライバ回路DをモータMの本体と共に収納庫210aに配置し、ケーブルFCを介してドライバ回路Dを筐体204側の電源回路PWに接続する。ケーブルFCとしては、電源回路PWとドライバ回路Dを接続したまま収納庫210aの開閉に追従できる長さを有するフレキシブルケーブルを用いることができる。このようなケーブルFCは、収納庫210aが開いている状態でもモータMに電力を供給する供給手段として機能する。
【0043】
モータMは、パルス駆動されるパルスモータ(ステッピングモータとも呼ばれる)を用いると好適である。モータMとして例えばDCモータを用いることもできるが、その場合、シートの残量を管理したり、積載トレイ221の昇降精度を高めるにはロータリーエンコーダや積載トレイ221の位置を検知するセンサを併用することが好ましい。一方、モータMとしてパルスモータを用いることで、追加部品を使用することなく、モータMに出力した駆動パルスの数をカウントすることでシート残量管理や積載トレイ221の昇降動作の精度を高めることが可能となる。
【0044】
なお、シート残量を管理する方法として、給送位置にシートSの上面があることを検知するセンサを用いる方法が挙げられる。この場合、制御部203は、収納庫210aが開かれた場合に、積載トレイ221を所定位置(例えばシート収納部220における下限位置)に移動させておく。その後、収納庫210aが閉じられた場合に、制御部203は駆動パルス数をカウントしながらモータMを駆動して積載トレイ221の上昇を開始させ、センサがシート上面を検知するとモータMを停止する。また、収納庫210aからシートが給送されることでシート上面が所定位置より低くなると、制御部203は再び駆動パルス数をカウントしながらモータMを駆動して積載トレイ221の上昇を開始させ、センサがシート上面を検知するとモータMを停止する。このような制御を行う場合、制御部203は、収納庫210aが閉じられた時点からの駆動パルス数の累積値に対応する積載トレイ221の高さと、給送位置との差に基づいて、現在のシート残量を算出することができる。
【0045】
[駆動伝達機構]
図7は、本実施形態に係る駆動伝達機構301の斜視図であり、
図8(a、b)は駆動伝達機構301の模式図である。
図7及び
図8(a、b)に示すように、駆動伝達機構301は、ベルト311、入力プーリ302、ワンウェイクラッチ302a、カップリング部材307、解除バネ312、駆動ギア309、アイドラギア308,308、及び巻き取りギア306を含んでいる。
【0046】
入力プーリ302は本実施形態の第1回転部材であり、駆動ギア309は本実施形態の第2回転部材である。また、補助伝達部材としてのカップリング部材307及び付勢手段としての解除バネ312は、本実施形態の遮断手段を構成する。
【0047】
入力プーリ302は、回転軸310上に配置され、ベルト311を介してモータMの出力軸に取り付けられた出力プーリと連結されている。従って、入力プーリ302はモータMの出力軸に常に連動して回転する。モータMが正転するときの入力プーリ302の回転方向を第1方向R1とし、モータMが逆転するときの入力プーリ302の回転方向をその反対の第2方向R2とする。
【0048】
ワンウェイクラッチ302aは、入力プーリ302に内蔵され、入力プーリ302と回転軸310とを連結している。また、駆動ギア309は、回転軸310に相対回転不能に取り付けられている。従って、ワンウェイクラッチ302aは、入力プーリ302の一方向の回転を駆動ギア309に伝達する機能を有する。具体的には、ワンウェイクラッチ302aは、モータMが逆転する場合の入力プーリ302の回転(入力プーリ302の第2方向R2の回転)を回転軸310及び駆動ギア309に伝達する。一方、ワンウェイクラッチ302aは、モータMが正転する場合の入力プーリ302の回転(入力プーリ302の第1方向R1の回転)を回転軸310及び駆動ギア309に伝達しない。
【0049】
カップリング部材307は、回転軸310上に配置され、回転軸310の軸線方向にスライド移動可能である。即ち、入力プーリ302、カップリング部材307及び駆動ギア309は、共通の回転軸310上に設けられている。カップリング部材307は、収納庫210aの挿入及び引き出しに連動して、モータMが正転したときの入力プーリ302から駆動ギア309への駆動伝達を連結及び遮断する機能を有する。カップリング部材307の詳しい構成及び作用については後述する。
【0050】
巻き取りギア306は、上述の巻き取り軸303に取り付けられており、アイドラギア308,308を介して駆動ギア309に常時連結されている。従って、第2回転部材としての駆動ギア309の回転に連動して、巻き取り軸303が回転してワイヤー305の巻き取り又は繰り出しが行われ、積載トレイ221の昇降動作が行われる。
【0051】
なお、収納庫210aは、収納庫210aの枠体を構成するフレーム300aと、フレーム300aにネジ止め等の方法で固定された補助フレーム300bとを有している。モータM及び駆動伝達機構301の構成部材は、フレーム300a及び補助フレーム300bの一方又は両方に支持されることで、収納庫210aに設けられている。
【0052】
また、
図8(a、b)に示すように、駆動伝達機構301には、ワンウェイクラッチ316a及びトルクリミッタ316bを組み合わせた負荷機構を含めることができる。トルクリミッタ316bは、補助フレーム300bに固定された軸部材に取り付けられ、ワンウェイクラッチ316aを介して駆動ギア309と同軸のギア309aに連結されている。ワンウェイクラッチ316aは、駆動ギア309が積載トレイ221を上昇させる方向に回転した場合にトルクリミッタ316bを回転させ、駆動ギア309が積載トレイ221を下降させる方向に回転した場合には空転するように構成される。このため、モータMの正転によって駆動ギア309が回転するときは、トルクリミッタ316bのトルク設定値を上限にトルクリミッタ316bの負荷がモータMに掛かる。一方、モータMの逆転によって駆動ギア309が回転するときは、トルクリミッタ316bの負荷はモータMに掛からない。なお、本実施形態のワンウェイクラッチ316a及びトルクリミッタ316bは省略可能である。
【0053】
[カップリング部材による駆動伝達の遮断]
次に、カップリング部材307の詳しい構成及び作用について説明する。
図10(a、b)は、駆動伝達機構301のカップリング部材307に関する部分を拡大した斜視図であり、
図11(a、b)はその上面図である。
図10(a)及び
図11(a)は、カップリング部材307を介した駆動伝達が行われる状態(連結状態)に対応し、
図10(b)及び
図11(b)は、カップリング部材307を介した駆動伝達が遮断された状態(遮断状態)に対応する。
【0054】
図10及び
図11に示すように、カップリング部材307は、上述した通り回転軸310に対して軸線方向にスライド可能である。このため、カップリング部材307は、軸線方向に関して入力プーリ302に対して接近及び離間するように移動可能である。
【0055】
図10(a、b)に示すように、カップリング部材307には入力プーリ302に係合する複数の係合爪307bが設けられている。カップリング部材307は、係合爪307bを入力プーリ302の係合面302bに押圧されることで、モータMが正転するとき(積載トレイ221を上昇させるとき)の入力プーリ302の回転力を受け取る。また、カップリング部材307は、少なくともモータMが正転するときの入力プーリ302の回転方向(第1方向R1)に関して、回転軸310と一体回転するように構成されている。例えば、カップリング部材307は、キー係合又はスプライン係合により回転軸310に相対回転不能かつ軸線方向にスライド移動可能に支持される。
【0056】
なお、
図10(a、b)に示す係合爪307b及び係合面302bは、噛み合い面とは反対側の面がらせん状に傾斜した面として構成されたラチェット状の形状を有している。これに代えて、例えば
図16に示すように係合爪307c及び係合面302cをドッグクラッチ形状としてもよい。
【0057】
上記の構成により、
図8、
図10及び
図11の各図(a)に示すようにカップリング部材307の各係合爪307bが入力プーリ302から離脱した状態では、モータMが正転してもカップリング部材307は入力プーリ302から回転力を受け取らない。また、モータMが正転するときの入力プーリ302の回転方向(第1方向R1)は上述のワンウェイクラッチ302aが滑る方向である。従って、カップリング部材307が入力プーリ302から離脱した状態でモータMが正転しても、回転軸310は回転せず、昇降機構300の巻き取り軸303は駆動されない。
【0058】
一方、カップリング部材307が入力プーリ302から離脱した状態でモータMが逆転した場合、ワンウェイクラッチ302aによって入力プーリ302と回転軸310が第2方向R2に一体回転する。そのため、巻き取り軸303がワイヤー305を繰り出す方向に駆動され、積載トレイ221は下降する。
【0059】
これに対し、
図8、
図10及び
図11の各図(b)に示すようにカップリング部材307の各係合爪307bが入力プーリ302に係合している状態では、モータMが正転するとカップリング部材307は入力プーリ302と共に第1方向R1に回転する。そして、カップリング部材307及び回転軸310を介して駆動ギア309が第1方向R1に回転することで、巻き取り軸303がワイヤー305を巻き取る方向に駆動され、積載トレイ221は上昇する。
【0060】
一方、カップリング部材307が入力プーリ302に係合している状態でモータMが逆転した場合、ワンウェイクラッチ302aによって入力プーリ302と回転軸310が第2方向R2に一体回転する。そのため、カップリング部材307が入力プーリ302から離脱している場合と同様に、巻き取り軸303がワイヤー305を繰り出す方向に駆動され、積載トレイ221は下降する。
【0061】
このように、本実施形態の駆動伝達機構301は、モータMから入力される駆動力を2つに分岐した経路で伝達するように構成されている。第1伝達経路は、カップリング部材307を経由する経路であり、モータMが正転するときの駆動力(第1駆動力)を伝達する。第2伝達経路は、ワンウェイクラッチ302aを経由する経路であり、モータMが逆転するときの駆動力(第2駆動力)を伝達する。そして、カップリング部材307の位置に応じて第1伝達経路が連結状態と遮断状態とに切り替わる一方で、カップリング部材307の位置によらずに第2伝達経路は常時連結された構成となっている。
【0062】
[収納庫の開閉とカップリング部材の移動]
ここで、カップリング部材307は、収納庫210aの挿入及び引き出しに連動して、連結状態に対応する連結位置(
図8(b))と遮断状態に対応する遮断位置(
図8(a))との間を移動することを説明する。連結位置は、補助伝達部材が第1伝達経路を連結状態とするときの位置であり、遮断位置は、補助伝達部材が第1伝達経路の連結を解除して遮断状態とするときの位置(連結解除位置)である。
【0063】
図8(a、b)に示すように、付勢手段としての解除バネ312は、入力プーリ302とカップリング部材307との間に配置されている。解除バネ312は、カップリング部材307を、入力プーリ302から離間させる方向に(即ち、カップリング部材307の係合爪307b(
図10(a、b))と入力プーリ302の係合面302bの係合を解除する方向に)付勢している。
【0064】
また、
図8(a、b)に示すように、多段給送装置200の筐体204の枠体241には、カップリング部材307に当接してスライドさせることが可能な当接部としての移動部材242が設けられている。本実施形態では、筐体204に収納庫210aを収容する空間(
図9参照)の背面部を構成するフレーム板241aに、ネジ止め等の方法でステー241bを固定している。そして、このステー241bに設けた切り欠き部に移動部材242を嵌め込むことで(
図10(a、b)参照)、筐体204側に移動部材242を固定している。
【0065】
さらに、
図8、
図10及び
図11の各図(a)に示すように、回転軸310の軸線方向に関してカップリング部材307の入力プーリ302とは反対側の端部には、移動部材242に押圧される押圧部307aが設けられている。カップリング部材307は、押圧部307aを移動部材242に押圧されることで、解除バネ312の付勢力に抗して入力プーリ302に向かって移動可能である。
【0066】
以上の構成により、本実施形態の遮断手段を構成するカップリング部材307は、収納庫210aの開閉に連動して上記第1伝達経路を連結状態と遮断状態とに切り替える。
【0067】
即ち、収納庫210aが筐体204に挿入されている状態では、
図8、
図10及び
図11の各図(b)に示すように、移動部材242がカップリング部材307を押圧することでカップリング部材307は連結位置に保持される。このため、駆動伝達機構301の第1伝達経路が連結状態となり、モータMの正転及び逆転に応じて昇降機構300が積載トレイ221を上昇及び下降させる。即ち、本実施形態の駆動伝達機構は、収納庫が閉じている場合に、駆動源から昇降機構に第1駆動力を伝達可能な連結状態となる。
【0068】
これに対し収納庫210aが筐体204から引き出されると、
図8、
図10及び
図11の各図(a)に示すように、カップリング部材307が移動部材242が離間することで、解除バネ312の付勢力によりカップリング部材307が遮断位置に移動する。このため、駆動伝達機構301の第1伝達経路が遮断状態となり、モータMが正転しても昇降機構300が動作せず、モータMの逆転に応じて積載トレイ221の下降のみが可能な状態となる。即ち、本実施形態の駆動伝達機構は、収納庫が開いている場合に、遮断手段によって駆動源から昇降機構への第1駆動力の伝達が遮断された遮断状態となる。
【0069】
従って、収納庫210aを開いた状態でもモータMに給電する構成において、収納庫210aの開閉に連動してカップリング部材307を移動させる構成により、収納庫210aを開いた状態で積載トレイ221が予期せず上昇することを防ぐことができる。言い換えると、収納庫を開いた状態でも駆動源に電力が供給される構成において、機械的な遮断手段を用いる簡易な構成により、収納庫を開いた状態で積載部材が予期せず上昇することを防ぐことができる。
【0070】
また、本実施形態ではモータMとしてパルスモータを用いることで、ロータリーエンコーダ等を追加することなく、制御部203は駆動パルス数をカウントすることで高い精度で積載トレイ221の位置やシート残量を把握することができる。
【0071】
なお、収納庫が開いている状態で積載部材の予期せぬ上昇を防ぐ他の方法として、収納庫の開閉に連動するインターロックスイッチを設けることが考えられる。例えば、モータMとしてDCモータを使用する場合、モータを正転方向(積載トレイ221を上昇させる方向)に回転させる際に電流を供給する回路と、モータを逆転方向に回転させる際に電流を供給する回路とを別々に設けることができる。そして、正転用の回路上に、収納庫を開くと遮断され、収納庫を閉じると接続されるスイッチを設けておく構成である。
【0072】
しかし、この方法ではインターロックスイッチを設けることで制御回路が複雑となる。また、モータMとしてパルスモータを使用する場合、そもそも正転用の回路と逆転用の回路を別々に設けることが難しい場合があった。これに対し、本実施形態では、機械的な遮断手段を用いる簡易な構成により、駆動源の種類によらずに、収納庫を開いた状態で積載部材が予期せず上昇することを防ぐことが可能である。
【0073】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る多段給送装置について、
図13及び
図14を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態のように機械的な遮断手段を設けた場合において、収納庫を開いた際に機械的な異常により遮断手段が作動しなかった場合に機能する負荷手段を設けている点で第1実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と共通の符号を付した要素は第1実施形態と実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0074】
図13(a、b)は駆動伝達機構301の模式図であり、
図14(a、b)は本実施例に係る負荷手段の模式図である。
図13(a)及び
図14(a)は収納庫210aが開いている状態に対応し、
図13(b)及び
図14(b)は収納庫210aが閉じている状態に対応する。
【0075】
図13(a、b)に示すように、第1実施形態と同じく、収納庫210aには、モータMと、モータMの駆動力を昇降機構300の巻き取り軸303に伝達する駆動伝達機構301が設けられている。駆動伝達機構301は、遮断手段を構成する補助伝達部材としてのカップリング部材307及び付勢手段としての解除バネ312を有し、収納庫210aの開閉に連動してカップリング部材307が入力プーリ302に対して移動する。
【0076】
このため、通常は、収納庫210aが閉じている
図13(b)の状態から収納庫210aが開かれると、
図13(a)のように解除バネ312の付勢力によってカップリング部材307が連結状態に対応する連結位置から遮断状態に対応する遮断位置へ移動する。これに対し、機械的な単一故障により駆動伝達機構301の第1伝達経路(積載トレイ221を上昇させるための経路)が遮断状態に切り替わらない可能性が想定される。例えば、ワンウェイクラッチ302aが回転方向によらず常時係合となった状態(噛み付き状態)となるケースや、解除バネ312が劣化又は破損してカップリング部材307が適切に付勢されないケースが考えられる。
【0077】
そこで、本実施形態では更なる安全性向上を図るために負荷機構316を設けている。本実施形態の負荷機構316は、ワンウェイクラッチ316a及びトルクリミッタ316bを含む機構である。トルクリミッタ316bは回転しない軸に取り付けられており、ワンウェイクラッチ316aを介して、駆動ギア309と同軸のギア309aに連結されている。ワンウェイクラッチ316aは、駆動ギア309が積載トレイ221を上昇させる方向に回転した場合にトルクリミッタ316bを回転させ、駆動ギア309が積載トレイ221を下降させる方向に回転した場合には空転するように構成される。トルクリミッタ316bのトルク設定値は、例えば、パルスモータであるモータMを脱調させる程度に大きな値とする。
【0078】
また、本実施形態の負荷機構316は、収納庫210aの開閉に連動してギア309aに対して係合及び離脱するように構成されている。
図14(a、b)に示すように、負荷機構316は収納庫210aの枠体に対して揺動可能なアーム318に保持され、バネ317等の付勢手段でギア309aへ向けて付勢されている。そして、収納庫210aを閉じる動作に伴って、
図13(b)及び
図14(b)に示すように離間手段によってギア309aから離間する。離間手段としては、例えばソレノイド等のアクチュエータやカム機構を用いることができる。また、例えば筐体204に設けた突起部がアーム318を
図14(b)の右方向に押圧する構成を離間手段として用いてもよい。
【0079】
以上の構成により、仮に、収納庫210aを筐体204から引き出した状態で機械的な単一故障により駆動伝達機構301の第1伝達経路が遮断状態に切り替わらなかったとしても、モータMの正転に対して負荷機構316の負荷が作用する。このため、少なくともトルクリミッタ316bのトルク設定値の分、積載トレイ221を上昇させる駆動力が低減されることになり、更なる安全性の向上が可能となる。また、収納庫210aを筐体204から引き出した状態でモータMが逆転する場合、及び収納庫210aを筐体204に挿入した状態でモータMが正転又は逆転する場合は、負荷機構316の負荷が作用しない。そのため、負荷機構316は、これらの場合における駆動伝達効率を低下させることなく、更なる安全性の向上を可能としている。
【0080】
なお、本実施形態では、負荷手段としてトルクリミッタ316bを用いた例を示したが、負荷を発生させる他の機構を用いてもよい。例えば、トルクリミッタ316bに代えてオイルダンパー等のラジアル負荷(回転負荷)を発生させるものを使用することができる。
【0081】
また、例えば、トルクリミッタ316bを介さずに、ワンウェイクラッチ316aを回転しない軸に直接取り付けたものを用いることも考えられる。この場合、負荷機構316がギア309aに係合した状態では、モータMの正転が実質的に規制される。ただし、本実施形態のようにトルクリミッタ316bを介在させることでワンウェイクラッチ316a等に過度な負荷が掛かることを防いで装置の耐久性を向上可能である。
【0082】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る多段給送装置について、
図15を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態のように機械的な遮断手段を設けた場合において、収納庫を開いた際に補助伝達部材の連結位置から遮断位置への移動を助ける動作を実施する点で上記各実施形態と異なっている。以下、第1実施形態と共通の符号を付した要素は第1実施形態と実質的に同じ構成及び作用を有するものとし、第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0083】
まず、第1実施形態の多段給送装置を例に、収納庫を開いた際に補助伝達部材の連結位置から遮断位置への移動が失敗する場合について説明する。
【0084】
図8(a、b)及び
図10(a、b)を用いて説明したように、収納庫210aが閉じている状態では、カップリング部材307は連結位置にあり、カップリング部材307の係合爪307bが入力プーリ302の係合面302bと噛み合っている。収納庫210aが開かれると、カップリング部材307が移動部材242の押圧から解放されるため、通常は解除バネ312の付勢力によってカップリング部材307は連結位置から遮断位置へ移動する(
図8(a))。
【0085】
しかし、カップリング部材307の係合爪307bと入力プーリ302の係合面302bとが強く噛み合っていた場合、噛み合い面の摩擦によってカップリング部材307の移動が妨げられる場合がある。収納庫210aを開いた後もこのような噛み合いによってカップリング部材307と入力プーリ302の係合状態が維持されていると、仮にモータMが正転した場合にカップリング部材307を介した駆動伝達が行われて積載トレイ221が上昇してしまう。
【0086】
そこで、本実施形態では、多段給送装置200の制御部203(
図12)が収納庫210aの引き出しを検知した場合に、カップリング部材307をより確実に入力プーリ302から離間させるための非離間状態防止処理を実施する。以下、
図15のフローチャートに沿って非離間状態防止処理の内容を説明する。なお、本フローの各工程は、制御部203のCPUがROMから制御プログラムを読み出して実行することによって実施されるものとする。
【0087】
制御部203は、開閉検知センサ321の出力信号に基づいて、収納庫210aの開閉が行われた否かを監視している(S11)。開閉検知センサ321が筐体204内の装着位置に収納庫210aがあることを検知している状態(ON)から検知していない状態(OFF)に変化すると、制御部203は所定時間T1待機した後(S12)、モータMを逆転させる(S13)。モータMの逆転が所定時間T2だけ行われると(S14)、制御部203はモータMを停止させる(S15)。即ち、制御部203は、開閉検知センサ321(検知手段)が収納庫210aの引き出しを検知すると、モータMに積載トレイ221を下降させる方向の第2駆動力を所定時間T2の間出力させる処理(S11~S15)を実施する。
【0088】
上記所定時間T1は、通常の引き出し操作における収納庫210aの移動速度で、カップリング部材307の押圧部307a(
図10(a))が筐体204側の移動部材242から離間する所要時間以上の長さとする。通常の引き出し操作における収納庫210aの移動速度とは、例えば、第1実施形態で説明した収納庫210aを筐体204から押し出すバネの付勢力に応じた速度である。所定時間T1は、例えば2.0sec程度に設定される。
【0089】
また、上記所定時間T2は、入力プーリ302がモータMの逆転時の回転方向(第2方向)に回転することでカップリング部材307の係合爪307bと入力プーリ302の係合面302bとの噛み合いを弱めるための短い時間である。所定時間T2は、例えば、モータMの回転角で10度程度の回転量に相当する時間に設定される。
【0090】
このように、収納庫210aの引き出しを検知した際にモータMを短時間逆転させることで、カップリング部材307の係合爪307bと入力プーリ302の係合面302bとの噛み合いが弱まる。このため、解除バネ312の付勢力により、カップリング部材307は円滑に入力プーリ302から離間して、駆動伝達機構301の第1伝達経路が連結状態から遮断状態に切り替わる。従って、本実施形態によれば、収納庫210aが開いている状態で積載トレイ221の上昇が行われる可能性をさらに低減することができる。
【0091】
なお、本実施形態の非離間状態防止処理を実施した後、積載トレイ221を所定位置まで降下させる必要があると判断した場合に、制御部203はモータMをさらに逆転させて積載トレイ221を下降させる。従って、積載トレイ221が既に下限位置にある場合など、積載トレイ221の下降を行う必要がない場合は、非離間状態防止処理のみ実施される。
【0092】
また、本実施形態の非離間状態防止処理は、第2実施形態の多段給送装置にも問題なく適用可能である。
【0093】
<その他の実施形態>
上述した通り、上記の各実施形態で説明した収納庫210aと実質的に同じ構成は、多段給送装置200が備える他の収納庫210b,210cにも適用される。また、各実施形態で説明した収納庫210aの構成は、画像形成システム1000が備える他のシート収納装置(
図1のカセット121や長尺給送装置500)にも適用可能である。
【0094】
さらに、上記の各実施形態で説明した収納庫210aの構成は、シートを給送するシート給送装置に限らず、シートを排出するシート排出装置にも適用可能である。例えば
図17に示すように、シートSを排出手段としての排出ローラ401によって収納庫402に排出して積載するスタッカー410に本技術を適用してもよい。つまり、スタッカー410は、昇降可能な積載トレイ403を有するシート収納装置の例である。また、スタッカー410は、例えば画像形成装置に連結し、画像形成装置で画像が形成されたシートを収納する用途に使用できる。
【0095】
また、積載部材の昇降機構は、ワイヤーによって略水平に積載トレイ221を保持しながら積載トレイ221を昇降させるものに限らない。例えば、積載トレイを収納庫に対して上下に回動可能に接続し、積載トレイの下面を回動部材(リフター板)によって押圧する昇降機構を用いてもよい。この場合、リフター板の回動軸とモータとを上記各実施形態の駆動伝達機構301で接続することで、各実施形態と同様の利点が得られる。
【0096】
また、上記各実施形態では、収納庫を筐体204(装置本体)に対して挿入及び引き出しすることで開閉する構成を説明した。これに代えて、例えば装置本体内に固定された収納庫の上部又は側方にシートの補充をするための開口部を設け、この開口部を覆うカバー部材を開閉可能に設けてもよい。この場合、カバー部材を開く操作により収納庫が開いている状態となり、カバー部材を閉じて開口部が塞がれると収納庫が閉じている状態となる。
【符号の説明】
【0097】
100…画像形成装置/200…シート収納装置、シート給送装置(多段給送装置)/203…制御手段(制御部)/204…筐体/210a,210b,210c,402…収納庫/231…シート給送手段(ピックアップローラ)/242…当接部(移動部材)/300…昇降機構/301…駆動伝達機構/302…第1回転部材(入力プーリ)/302a…ワンウェイクラッチ/303…巻き取り軸/305…ワイヤー/307…遮断手段、補助伝達部材(カップリング部材)/309…第2回転部材(駆動ギア)/310…回転軸/312…遮断手段、付勢手段(解除バネ)/316…負荷手段(負荷機構)/321…検知手段(開閉検知センサ)/401…排出手段(排出ローラ)/410…シート収納装置、シート排出装置(スタッカー)/FC…供給手段(ケーブル)/M…駆動源(モータ)/R1…第1方向/R2…第2方向