(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】履物用センシング装置
(51)【国際特許分類】
G01L 1/16 20060101AFI20231204BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20231204BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231204BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20231204BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20231204BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20231204BHJP
【FI】
G01L1/16 C
A43B13/14 B
A61B5/11 230
H10N30/30
H10N30/857
H10N30/88
(21)【出願番号】P 2020013425
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】田實 佳郎
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103900741(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0299021(US,A1)
【文献】特開2016-209144(JP,A)
【文献】特開2019-138888(JP,A)
【文献】特開2005-156531(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137897(WO,A1)
【文献】米国特許第6505522(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0245504(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0082217(KR,A)
【文献】実開昭55-131707(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105675104(CN,A)
【文献】国際公開第2019/073104(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105092114(CN,A)
【文献】特開昭63-247634(JP,A)
【文献】特開2017-58344(JP,A)
【文献】特開平8-75575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/16,5/00-5/28
A43B 13/14
A61B 5/11
H10N 30/30,30/857,30/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を検出する履物用センシング装置であって、
前記履物用センシング装置は、
前記履物底部の全面に配設される有機圧電センサと、
前記有機圧電センサの押圧時に生ずる信号を検出する信号検出器と、
を少なくとも備え
、
前記有機圧電センサが、
シールド層と、
前記シールド層上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層された第1電極層と、
前記第1電極層上に積層された圧電層と、
前記圧電層上に積層された第2電極層と、
前記第2電極層上に積層された第2絶縁層と、
から成り、
前記シールド層と前記第2絶縁層とで、残りの前記第1絶縁層と前記第1電極層と前記圧電層と前記第2電極層とを挟み込んだ構成であり、
前記シールド層と前記第2絶縁層の外形の範囲と、前記第1絶縁層と前記第1電極層と前記圧電層と前記第2電極層の外形の範囲との間の距離が、1~5mmの範囲内であることを特徴とする履物用センシング装置。
【請求項2】
前記圧電層の材質が、高分子材料であることを特徴とする請求項
1に記載の履物用センシング装置。
【請求項3】
前記圧電層が、
厚さ方向に高い感度を有する圧電フィルムであることを特徴とする請求項
1または2に記載の履物用センシング装置。
【請求項4】
前記有機圧電センサと信号検出器が、前記履物の履物底部と一体化されてなることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の履物用センシング装置。
【請求項5】
前記有機圧電センサと信号検出器が、前記履物の履物底部とは別体として、履物底部上に配設されることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の履物用センシング装置。
【請求項6】
前記信号検出器が、
前記有機圧電センサ上に設けられたクッション層内に配設されていることを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の履物用センシング装置。
【請求項7】
前記クッション層が、多孔体または発泡体であることを特徴とする請求項
6に記載の履物用センシング装置。
【請求項8】
前記有機圧電センサと信号検出器とで得られた圧力に関する信号を受け、再び前記信号検出器へ信号を送る送受信機を備えることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の履物用センシング装置。
【請求項9】
前記信号検出器が、無線により前記送受信機に信号を送るよう構成されていることを特徴とする請求項
8に記載の履物用センシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を検出することのできる履物用センシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、履物の中敷きに感圧センサを設け、履物を履いた際に足によって加えられる圧力を検知する履物用センシング装置が知られている(例えば特許文献1)。
このような履物用センシング装置で用いられる感圧センサとしては、小型の面状センサを必要箇所に配設したもの、大型の電気抵抗変化式センサを履物底部の全面に配設したものなどがある。
【0003】
これらの履物用センシング装置は、スポーツ選手が効率的な走り方を検討する際に用いたり、高齢者の足の運び方を検知することで躓きを防止したり、居場所を特定するなどを目的としたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、小型の面状センサを必要箇所に配設した場合には、面状センサが配設されていない箇所は検出がなされないこととなる。人の足は、人それぞれに足裏と中敷きとの接する箇所が異なるため、場合によっては思うような検出ができない場合がある。
【0006】
また、大型の電気抵抗変化式センサを履物底部の全面に配設した場合には、履物の全面で圧力を検出できるものの、センサを駆動させるための電力が必要となる。
特に高齢者は、履物に対する普段とは異なる僅かな違いを違和感として感じ取り、違和感があればその履物を履かなくなってしまう、または今までの履物とは異なる充電などの作業を生ずることについて煩わしさを感ずるなどの場合がある。このため、特に高齢者が違和感を感ずることなく普段履いている靴やスリッパなどの履物と同じように履くことのできる、履物用として好適な履物用センシング装置が求められている。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであって、履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を広範囲にわたって確実に検知することができ、圧力の検出に要する電力が僅かで済む履物用センシング装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらには特に高齢者が足裏への違和感を生ずることなく使用することのできる履物用センシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述した従来技術における問題点を解決するために発明されたものであり、
本発明の履物用センシング装置は、
履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を検出する履物用センシング装置であって、
前記履物用センシング装置は、
前記履物底部の全面に配設される有機圧電センサと、
前記有機圧電センサの押圧時に生ずる信号を検出する信号検出器と、
を少なくとも備え、
前記有機圧電センサが、
シールド層と、
前記シールド層上に積層された第1絶縁層と、
前記第1絶縁層上に積層された第1電極層と、
前記第1電極層上に積層された圧電層と、
前記圧電層上に積層された第2電極層と、
前記第2電極層上に積層された第2絶縁層と、
から成り、
前記シールド層と前記第2絶縁層とで、残りの前記第1絶縁層と前記第1電極層と前記圧電層と前記第2電極層とを挟み込んだ構成であり、
前記シールド層と前記第2絶縁層の外形の範囲と、前記第1絶縁層と前記第1電極層と前記圧電層と前記第2電極層の外形の範囲との間の距離が、1~5mmの範囲内であることを特徴とする。
【0010】
このように履物底部の全面に配設される有機圧電センサであれば、圧力を生じた際に電荷が生じるので、有機圧電センサへの電力供給の必要がなく、押圧時に生ずる信号を信号検出器で検知するだけで良いので、履物用センシング装置を簡素化することができる。このため、足裏への違和感を生ずるような構造がなく特に高齢者が無理なく用いることができる。
【0011】
さらに有機圧電センサは、履物底部の全面に配設されており、電極による信号はどの位置でどのくらい圧力が生じているかを検知することができるため、履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を広範囲にわたって確実に検知することができ、高齢者であれば、例えば立ち上がっているのか、座っているのかなどを細かく検知することができる。
【0012】
また、このような多層構造であれば、有機圧電センサを薄く構成することができ、足裏への違和感を生ずることのない有機圧電センサとすることができる。
【0013】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記シールド層が、金属製テープから成ることが好ましい。
特にこのように金属製テープであれば、市販品を用いることができ、入手が容易であるとともに厚さが薄いため、足裏への違和感を生ずることなく、本発明の履物用センシング装置に好適である。
なお金属製テープの材質の例としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、錫を挙げることができる。
【0014】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記第1絶縁層と第2絶縁層の材質が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂であることが好ましい。
特にこのような材質であれば、確実に絶縁がなされるため、本発明の履物用センシング装置に好適である。
【0015】
なお、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の例としては、ゴム、プラスチックを挙げることができ、具体例としては、シリコンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ふっ素ゴム、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ふっ素樹脂を挙げることができる。
【0016】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記第1電極層と第2電極層が、金属製テープから成ることが好ましい。
特にこのように金属製テープであれば、市販品を用いることができ、入手が容易であるとともに厚さが薄いため、足裏への違和感を生ずることなく、本発明の履物用センシング装置に好適である。
なお金属製テープの材質の例としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、錫を挙げることができる。
【0017】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記圧電層の材質が、高分子材料であることが好ましい。
特にこのような材質であれば、厚さ方向に対する圧電特性が高く、履物の中敷きとして使用した場合には耐湿性に優れるため、本発明の履物用センシング装置に好適である。
高分子材料の具体的な例としては、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)やその共重合体、ポリ乳酸、多孔質性樹脂からなるフィルムまたはシートを挙げることができる。
【0018】
ここで上記した圧電層は、厚さ方向に対する圧電特性が高い多孔質性樹脂フィルムからなるシートであることが好ましい。
例えば、ポリプロプレン多孔体やふっ素樹脂多孔体があり、履物の中敷きとして使用した場合の耐湿性を考慮すると、ふっ素樹脂多孔体が好ましい。
【0019】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記圧電層が、
厚さ方向に高い感度を有する圧電フィルムであることが好ましい。
【0020】
このように厚さ方向に高い感度を有する圧電フィルムであれば、精度良く足の僅かな動きや圧力を検知することができ、特に高齢者であれば、高齢者が立ち上がっているのか、座っているのかなどを細かく検知することができる。
【0021】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記有機圧電センサと信号検出器が、前記履物の履物底部と一体化されてなることが好ましい。
【0022】
このように履物底部と一体化されていれば、履物に足を入れた際に違和感なく履物を履くことができる。したがって、高齢者に気持ち良く履物用センシング装置を用いてもらうことができる。
【0023】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記有機圧電センサと信号検出器が、前記履物の履物底部とは別体として、履物底部上に配設されることが好ましい。
【0024】
このように履物底部とは別体であれば、様々な履物に履物用センシング装置を用いることができる。すなわち中敷きとして色々な履物に本履物用センシング装置を配設することができるので、汎用性を高めることができる。
【0025】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記信号検出器が、
前記有機圧電センサ上に設けられたクッション層内に配設されていることが好ましい。
【0026】
このように信号検出器がクッション層内に配設されていれば、履物に足を入れた際に違和感なく履物を履くことができる。したがって、高齢者に気持ち良く履物用センシング装置を用いてもらうことができる。
【0027】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記クッション層が、多孔体または発泡体であることが好ましい。
このようにクッション層が、多孔体または発泡体であれば、履物に足を入れた際に足裏に違和感なく履物を履くことができる。したがって、高齢者に気持ち良く履物用センシング装置を用いてもらうことができる。
【0028】
なおクッション層の材質としては、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、またはそれらを複合化させたものであることが好ましい。
上記したクッション層の形態および材質を鑑みると、ウレタンフォームが好適である。
【0029】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記有機圧電センサと信号検出器とで得られた圧力に関する信号を受け、再び前記信号検出器へ信号を送る送受信機を備えることが好ましい。
【0030】
このように送受信機を備えれば、例えば体重の異なる高齢者に合わせた感度設定に関する信号を信号検出器へ送ることができ、それぞれの高齢者に合わせて感度調整を行ったうえで本履物用センシング装置を用いることができる。
【0031】
また本発明の履物用センシング装置は、
前記信号検出器が、無線により前記送受信機に信号を送るよう構成されていることが好ましい。
【0032】
このように無線であれば、信号検出器と送受信機との間を物理的に切り離すことができ、履物へは、有機圧電センサと信号検出器のみを配設すれば良いように構成することができる。このため、履物内へ配設すべき機器を最小化することができ、履物に足を入れた際に足裏に違和感なく履物を履くことができる。
【0033】
さらに無線であれば、例えば遠方の家族に高齢者の位置を知らせたり、介護士が別の作業中にも介護担当の高齢者が立ち上がっているのか、座っているのかなどの見守りをすることができ、さらには躓きが生じそうな際にも事前に補助することができ、怪我を防止することもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の履物用センシング装置によれば、履物底部の全面に有機圧電センサが配設されているので履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を広範囲にわたって検知することができるとともに、有機圧電センサや信号検出器を薄く構成することができ、圧力の検出に要する電力を僅かにできるので、履物に足を入れた際に足裏に違和感なく履物を履くことができ、特に高齢者に気持ち良く使用してもらうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における履物用センシング装置の概略図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1に示した履物用センシング装置のA-A線による断面図であり、
図2(b)は
図2(a)の丸で囲った部分の拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態における履物用センシング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づきより詳細に説明する。
【0037】
<<履物用センシング装置10>>
本発明の第1の実施形態における履物用センシング装置10は、履物を履いた際に足によって履物底部に加えられる圧力を確実に検出するためのものであり、
図1および
図2(a)に示したように、履物底部の全面に配設される有機圧電センサ20と、この有機圧電センサ20の押圧時に生ずる信号を検出する信号検出器50と、を備えてなるものである。
【0038】
<有機圧電センサ20>
有機圧電センサ20は、
図2(a)および
図2(b)に示したように、最下層に位置するシールド層22と、シールド層22上に積層された第1絶縁層24と、第1絶縁層24上に積層された第1電極層26と、第1電極層26上に積層された圧電層28と、圧電層28上に積層された第2電極層30と、第2電極層30上に積層された最上層に位置する第2絶縁層32と、の合計6層から構成されたものである。
【0039】
そして最下層に位置するシールド層22と最上層に位置する第2絶縁層32の2層で、残りの4層(第1絶縁層24,第1電極層26,圧電層28,第2電極層30)を挟み込んで成るようになっている。すなわち、
図1において実線で示した外形線がシールド層22と第2絶縁層32のものであり、破線で示した外形線が第1絶縁層24と第1電極層26と圧電層28と第2電極層30のものである。なお、破線で示した外形線の中が、実際に圧力を検知できる範囲となるため、この破線で示した外形線の位置については、できるだけ実線で示した外形線に近づけることが好ましい。実際には、足のサイズよりも履物底部は広いため、実線で示した外形線と破線で示した外形線との間の距離は、1~5mmの範囲内とすることが好ましい。
【0040】
このように4層(第1絶縁層24,第1電極層26,圧電層28,第2電極層30)が2層(シールド層22,第2絶縁層32)にすっぽりと覆われたような構成とすることにより、4層(第1絶縁層24,第1電極層26,圧電層28,第2電極層30)の欠損などを生じ難くすることができ、また外見上からは単なる中敷きのように見せることができる。
【0041】
また、シールド層22と第2電極層30とは電気的に接続されており、これにより有機圧電センサ20が足によって圧力を受けた際、第1電極層26によって生ずるノイズを低減させることができる。
【0042】
なお、有機圧電センサ20の全体の厚さとしては特に限定されるものではないが、好ましくは0.1~10mmの範囲内、より好ましくは0.5~5.0mmの範囲内、さらに好ましくは0.5~1.0mmの範囲内に設定すれば、履物に足を入れた際に足裏に違和感なく履物を履くことができ好ましい。
【0043】
また本発明で用いられる有機圧電センサ20は、加圧した際に電荷が生ずるため、特に有機圧電センサ20自体に電力を要するものでは無いものである。
ここで有機圧電センサ20を構成する各層の材質としては、次のものを用いることができる。
【0044】
[シールド層22]
シールド層22としてはシールド機能を持つ公知の材質を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば市販されている金属製テープを用いれば、入手がし易く安価であり、厚さが薄いので好ましい。金属製テープの材質の例としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、錫を挙げることができる。
【0045】
[第1絶縁層24と第2絶縁層32]
第1絶縁層24と第2絶縁層32としては電気的絶縁機能を有する公知の材質を用いることができ、特に限定されるものではなく、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の例としては、ゴム、プラスチックを挙げることができ、具体的にはシリコンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、ふっ素ゴム、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド、ふっ素樹脂を挙げることができる。
【0046】
[第1電極層26と第2電極層30]
第1電極層26と第2電極層30としては電気的接続機能を有する公知の材質を用いることができ、特に限定されるものではないが、シールド層22の場合と同じように例えば市販されている金属製テープを用いれば、入手がし易く安価であり、厚さが薄いので好ましい。金属製テープの材質の例としては、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、錫を挙げることができる。
【0047】
[圧電層28]
圧電層28としては圧力を加えた際に電荷を生ずる機能を有する公知の材質を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば国際公開第2017/138542号に記載の高分子材料を用いることが好ましい。
【0048】
高分子材料の具体的な例としては、ポリふっ化ビニリデン(PVDF)やその共重合体、ポリ乳酸、多孔質性樹脂からなるフィルムまたはシートを挙げることができる。
ここで上記した圧電層28は、厚さ方向に対する圧電特性が高い多孔質性樹脂フィルムからなるシートであることが好ましい。
【0049】
例えば、ポリプロプレン多孔体やふっ素樹脂多孔体があり、履物の中敷きとして使用した場合の耐湿性を考慮すると、ふっ素樹脂多孔体が好ましい。
さらに、圧電層28の厚さ方向の圧力を検知することで圧力検知能により優れる有機圧電センサ20が得られる点から、圧電定数d33が、好ましくは20×10-12C/N以上であり、より好ましくは100×10-12C/N以上であることが望ましい。
このようにしてなる有機圧電センサ20の上には、クッション層60が設けられ、クッション層60の一部に信号検出器50が配設されている。
【0050】
<クッション層60>
クッション層60としては、例えば多孔体または発泡体を用いることができる。なお、クッション層60は、履物に足を入れた際に信号検出器50が足裏に違和感なく感じられるようにさせるためのものである。
【0051】
クッション層60の材質としては、市販の履物の中敷きに用いられる材質であれば特に限定されるものではないが、例えばポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、またはそれらを複合化させたものであることが好ましい。
上記したクッション層60の形態および材質を鑑みると、ウレタンフォームが好適である。
【0052】
<信号検出器50>
一方、信号検出器50は、有機圧電センサ20の第1電極層26と第2電極層30とに電気的に接続されており、圧電層28が受けた圧力および圧力の強度による信号を検出する役目を成している。この信号を信号検出器50のメモリーに保存し、後に保存されたデータを別途取り出して解析することで、圧電層28のどの位置でどのくらいの強さの圧力が加わったかを検出することができる。
【0053】
信号検出器50としては、特に限定されるものではなく、省電力化された電力源として薄型ボタン電池を使用したような市販品を用いることが好ましい。中でもフレキシブル基板から成る信号検出器50のように、薄いシート状の信号検出器50であれば、履物に足を入れた際に違和感なく履物を履くことができる。さらに薄いシート状の信号検出器50であれば、場合によってはクッション層60を用いなくとも、有機圧電センサ20に直接信号検出器50を配設することもでき好ましい。クッション層60の有無については、用いる信号検出器50がどのような形態、素材であるかなどによって適宜選択することが好ましい。
【0054】
このように本発明の履物用センシング装置10では、有機圧電センサ20への電力供給の必要がなく、足で圧力が加わった際に生ずる信号を信号検出器50で検知するときにだけ僅かに電力を要するのみであり、信号検出器50のための僅かな電力さえあれば、履物用センシング装置10を機能させることができるものである。
【0055】
そして、有機圧電センサ20と信号検出器50は薄膜化されており、簡素化されているため、これを履物の中敷きとして用いた場合には、足裏への違和感を生ずるような構造がなく、特に高齢者が無理なく用いることができる。
【0056】
さらに履物用センシング装置10に用いられる有機圧電センサ20は、履物底部の全面に配設されるため、信号検出器50のメモリーに保存されたデータを解析すれば、高齢者が立ち上がった状態であるか、座った状態であるか、または躓きはどのような要因で生ずるかなどについても細かく検知することができる。
【0057】
次いで、本発明の履物用センシング装置10の第2の実施形態について、
図3を用いて説明する。
図3に示した履物用センシング装置10は、
図1および
図2に示した第1の実施形態の履物用センシング装置10と基本的に同じ構成であるので、同じ構成部材には同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0058】
図3に示した履物用センシング装置10は、有機圧電センサ20と信号検出器50とで得られた圧力に関する信号を受け、再び信号検出器50へ信号を送る送受信機70を備える点で、第1の実施形態の履物用センシング装置10と異なっている。
【0059】
このように送受信機70を備える場合には、信号検出器50において、圧電層28が受けた圧力による信号をメモリーに保存する必要がなく、直接送受信機70に信号を送信するようにすることができ、第1の実施形態の場合によりも、さらに信号検出器50を簡素化させることができる。
【0060】
また、送受信機70で受信した圧力に関する信号を解析して、例えば信号検出器50側へ信号を送信することで、例えば圧力の位置や強度の検知の際の閾値などを調整することもできるようになる。送受信機70と信号検出器50とは、無線により送受信が可能なようにしておくことが好ましい。
【0061】
このように無線であれば、信号検出器50を簡素化させることができる。また信号検出器50と送受信機70との間を物理的に切り離すことができ、履物へは、有機圧電センサ20と信号検出器50のみを配設すれば良いようにすることができる。このため、履物内へ配設すべき機器を最小化することができ、履物に足を入れた際に足裏へ違和感なく履物を履くことができる。
【0062】
さらに無線であれば、例えば遠方の家族に高齢者の位置を知らせたり、介護士が別の作業中にも介護担当の高齢者が立ち上がっているのか、座っているのかなどの見守りをすることもできる。
【0063】
以上、本発明の履物用センシング装置10について第1の実施形態と第2の実施形態を用いて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば本実施形態では、履物用センシング装置10は片足分のみ図示されているが、当然、左右一対での使用を想定したものである。なお、左右で履物用センシング装置10の感度を同じくして用いても、感度を左右で変えて用いても良く、使用される状況や使用者によって調整して用いても良いものである。
【0064】
さらには上述したようにクッション層60を設けず、有機圧電センサ20上に直接信号検出器50を設ける形態でも良いものである。
また、第1の実施形態と第2の実施形態では、本発明の履物用センシング装置10は履物の中敷きのような形態、すなわち履物の履物底部と別体とした場合を想定して説明しているが、履物の履物底部と一体化されていても良いなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0065】
10 履物用センシング装置
20 有機圧電センサ
22 シールド層
24 第1絶縁層
26 第1電極層
28 圧電層
30 第2電極層
32 第2絶縁層
50 信号検出器
60 クッション層
70 送受信機