(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】炭化水素油の水素化処理触媒、その製造方法、および水素化処理方法
(51)【国際特許分類】
B01J 31/34 20060101AFI20231204BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231204BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231204BHJP
B01J 27/19 20060101ALI20231204BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B01J31/34 M
B01J37/02 101C
B01J37/08
B01J27/19 M
C10G45/08 B
(21)【出願番号】P 2020016842
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田川 和成
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄介
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-513015(JP,A)
【文献】特開2019-177356(JP,A)
【文献】特開2016-203074(JP,A)
【文献】特開平03-089948(JP,A)
【文献】特開昭51-136704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 45/08
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナを主成分とする無機酸化物担体、および前記無機酸化物担体に担持された活性金属成分を含む炭化水素油の水素化処理触媒であって、
前記活性金属成分は、モリブデンである第1金属、コバルト及びニッケルの少なくとも一方である第2金属、ならびに銅及び鉄の少なくとも一方である第3金属を含み、
前記第1金属の含有量は、酸化物換算で15~27質量%であり、第2金属の含有量は、酸化物換算で2~7質量%であり、第3金属の含有量は、酸化物換算で1.0質量%以下であり(ただし、前記無機酸化物担体、ならびに酸化物換算の前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属の含有量の合計を100質量%とする。)、
前記触媒の拡散反射UV-vis-NIRスペクトルに基づく、波長700nmのKubelka-Munk関数(A)の、波長230~350nmの範囲内でのKubelka-Munk関数の最大値(B)に対する比(A/B)が0.5以上である
炭化水素油の水素化処理触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の水素化処理触媒の製造方法であって、
前記無機酸化物担体を準備する第1工程、
前記第1金属の化合物と、前記第2金属の化合物と、前記第3金属の単体と、有機酸と、水とを混合して、前記第3金属が溶解した含浸液を調製する第2工程、および
前記無機酸化物担体に前記含浸液を含浸させ、前記含浸液が含浸された前記無機酸化物担体を乾燥して水素化処理触媒を得る第3工程
を含む、
炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において、さらにリン化合物を混合して前記含浸液を調製する、請求項2に記載の炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の水素化処理触媒の焼成物からなる炭化水素油の水素化処理触媒。
【請求項5】
請求項2に記載の製造方法で製造された水素化処理触媒を焼成する第4工程を含む炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1または4に記載の水素化処理触媒を硫化処理し、硫化処理された前記触媒の存在下で、水素分圧が3~8MPa、温度が300~385℃、液空間速度が0.3~5h
-1の条件で炭化水素油の接触分解を行う、炭化水素油の水素化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素存在下で炭化水素油中の硫黄分を除去するための水素化処理触媒、その製造方法および水素化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素油の水素化処理では、触媒を用いて高温高圧下にて反応を進行させるが、工業的に高い生産性を維持しつつ脱硫活性に優れ、また触媒劣化が少なく長寿命な炭化水素油の水素化処理触媒が望まれている。
【0003】
従来、水素化処理触媒は、無機酸化物からなる担体に活性金属となるモリブデン及びコバルト又はニッケルを含む含浸液を含浸したものを、乾燥、焼成することで得られている。水素化処理としては、この触媒の担持金属を硫黄化合物により硫化し、炭化水素油と高温で反応させることにより水素化、脱硫、脱窒素を行うことが知られている。
この水素化処理触媒の性能をさらに向上させるため、活性金属の担持方法について種々の検討がなされていた。
【0004】
その一例として、金属担持時に高いCo/Mo比とするため、モリブデン酸、炭酸コバルト溶液に金属コバルトを添加することでMoを還元し、溶液を蒸発乾固し、Co7/2PMo12O40・nH2Oを得、再溶解させて触媒に担持することで高活性な触媒が得られている(たとえば特表2000-511820号公報(特許文献1))。
【0005】
特許文献1には、モリブデン酸イオンとコバルトまたはニッケルイオンを含む溶液に第VIII族の金属形態を加えることが記載されており、具体的には、金属コバルトまたは金属ニッケルを加えることでモリブデンを還元し、その溶液の蒸発乾固により、モリブデン種とコバルト又はニッケル種が結合した状態の化学種の固体を得て、続いてその固体を再溶解し、含浸液として担体に含浸し、触媒とすることで、得られる触媒が高い活性を持つと記載されている。
【0006】
さらに、特開2016-203074号公報(特許文献2)には、担体に、活性金属成分として、モリブデンおよびコバルトに加えて、ニッケル、銅、マグネシウムまたは亜鉛を担持させた触媒が、TPR測定における低い還元温度を示し、硫化が進行しやすく、優れた触媒活性を示すと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2000-511820号公報
【文献】特開2016-203074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の水素化処理触媒には、脱硫活性および長寿命化という観点からさらなる改善の余地があった。そこで本発明は、脱硫活性に優れ、また劣化が少なく寿命が長い炭化水素油の水素化処理触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。また、炭化水素油中の硫黄分を高い除去率で除去できる炭化水素油の水素化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究したところ、触媒の活性金属成分に含まれるモリブデンが所定の混合原子価状態にあることにより上記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、
アルミナを主成分とする無機酸化物担体、および前記無機酸化物担体に担持された活性金属成分を含む炭化水素油の水素化処理触媒であって、
前記活性金属成分は、モリブデンである第1金属、コバルト及びニッケルの少なくとも一方である第2金属、ならびに銅及び鉄の少なくとも一方である第3金属を含み、
前記第1金属の含有量は、酸化物換算で15~27質量%であり、第2金属の含有量は、酸化物換算で2~7質量%であり、第3金属の含有量は、酸化物換算で1.0質量%以下であり(ただし、前記無機酸化物担体、ならびに酸化物換算の前記第1金属、前記第2金属および前記第3金属の含有量の合計を100質量%とする。)、
前記触媒の拡散反射UV-vis-NIRスペクトルに基づく、波長700nmのKubelka-Munk関数(A)の、波長230~350nmの範囲内でのKubelka-Munk関数の最大値(B)との比(A/B)が0.5以上である
炭化水素油の水素化処理触媒。
[2]
前記[1]の水素化処理触媒の製造方法であって、
前記無機酸化物担体を準備する第1工程、
前記第1金属の化合物と、前記第2金属の化合物と、前記第3金属の単体と、有機酸と、水とを混合して、前記第3金属が溶解した含浸液を調製する第2工程、および
前記無機酸化物担体に前記含浸液を含浸させ、前記含浸液が含浸された前記無機酸化物担体を乾燥して水素化処理触媒を得る第3工程
を含む炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
[3]
前記第2工程において、さらにリン化合物を混合して前記含浸液を調製する、前記[2]の炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
[4]
前記[1]の水素化処理触媒の焼成物からなる炭化水素油の水素化処理触媒。
[5]
前記[2]の製造方法で製造された水素化処理触媒を焼成する第4工程を含む炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法。
[6]
前記[1]または[4]の水素化処理触媒を硫化処理し、硫化処理された前記触媒の存在下で、水素分圧が3~8MPa、温度が300~385℃、液空間速度が0.3~5h-1の条件で炭化水素油の接触分解を行う、炭化水素油の水素化処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水素化処理触媒は、脱硫活性に優れ、劣化が少なく寿命が長い。また、本発明の水素化処理方法によれば、炭化水素油中の硫黄分を高い除去率で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1で製造された触媒の、Kubelka-Munk変換されたUV-vis-NIRスペクトルである。
【
図2】
図2は、実施例2で製造された触媒の、Kubelka-Munk変換されたUV-vis-NIRスペクトルである。
【
図3】
図3は、比較例1で製造された触媒の、Kubelka-Munk変換されたUV-vis-NIRスペクトルである。
【
図4】
図4は、比較例2で製造された触媒の、Kubelka-Munk変換されたUV-vis-NIRスペクトルである。
【
図5】
図5は、比較例3で製造された触媒の、Kubelka-Munk変換されたUV-vis-NIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[炭化水素油の水素化処理触媒]
本発明の炭化水素油の水素化処理触媒は、アルミナを主成分とする無機酸化物担体と、前記無機酸化物担体に担持された活性金属成分とを含み、所定の性状を有している。
<無機酸化物担体>
前記無機酸化物担体は、アルミナを主成分とし、すなわちアルミニウムを酸化物(Al2O3)に換算して通常60~100質量%含む。アルミナの結晶状態はγ-アルミナに分類できる状態である。
【0013】
担体がアルミナ以外の無機酸化物成分を含む場合には、その例としては五酸化二リン、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリア、マグネシア等から選ばれる少なくとも1種の酸化物が挙げられる。言い換えれば、前記無機酸化物は、リン、ケイ素、チタニウム、ジルコニウム、ホウ素およびマグネシウムから選ばれる少なくとも1種以上の元素と、アルミニウムとを含む。無機酸化物の具体例としては、SiO2/Al2O3、ゼオライト、Al2O3/TiO2、Al2O3/P2O5、Al2O3/B2O3、Al2O3/MgO、Al2O3/ZrO2、Al2O3/TiO2/P2O5が挙げられるが、前記無機酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0014】
前記無機酸化物担体の性状および形状は、担持する金属成分の種類や組成等の種々の条件および触媒の用途に応じて、適宜選択される。
前記無機酸化物担体として、炭化水素油の水素化処理触媒に使用される公知の担体、例えば特開2017-136588号公報または特開2017-196550号公報に記載の担体を用いてもよい。
【0015】
前記活性金属成分を担体に高分散状態に有効に担持して触媒活性を十分に確保するためには、前記無機酸化物担体としては、通常、多孔質の担体が使用され、細孔径500Å以下の比較的小さな細孔を有するものが好適に使用される。また、担体あるいは触媒の機械的強度、耐熱性等の物性を制御するために、担体あるいは触媒の形成に際して適当なバインダー成分や添加剤を含有させることもできる。
【0016】
<活性金属成分>
前記活性金属成分は、無機酸化物担体上に担持されている。
前記活性金属成分は、モリブデンである第1金属、コバルト及びニッケルの少なくとも一方である第2金属、および銅及び鉄の少なくとも一方である第3金属を含む。
本発明の水素化処理触媒の、第1金属、すなわちモリブデンの含有量(担持量)は、酸化物(MoO3)換算として15~27質量%である。
【0017】
第1金属の含有量(酸化物換算。以下同様。)が15質量%より過度に小さいと、水素化処理触媒が炭化水素の水素化処理に必要な脱硫活性を確保できないおそれがあり、27質量%より過度に大きいと、第1金属を含む成分が凝集しやすくなり、担体上での第1金属を含む成分の分散性が阻害されるおそれがある。
【0018】
第2金属は、コバルトであっても、ニッケルであっても、コバルト及びニッケルの両方であってもよい。第2金属は、第1金属に対して助触媒として働く。
本発明の水素化処理触媒の、第2金属の含有量(担持量)は、酸化物(CoO、NiO)換算として2~10質量%であり、好ましくは2~8質量%である。第2金属を含む成分の含有量(酸化物換算。以下同様)が2質量%よりも過度に少ないと、第1金属及び第2金属が適切な構造を保つことが困難になり、含有量が7質量%を過度に越えると、第2金属を含む成分の凝集が進みやすくなり、触媒性能が低下する。
【0019】
第3金属は、銅であっても、鉄であっても、銅及び鉄の両方であってもよい。第3金属の含有量(担持量)は、酸化物(CuO、Fe2O3)換算で1.0質量%以下である。
本発明の水素化処理触媒を硫化処理すると、第3金属は、第1金属および第2金属の硫化物の活性種である結晶に結合し、その結晶のさらなる成長を阻害する効果を有すると考えられる。このような観点から、第3金属の含有量(担持量)は、酸化物(CuO、Fe2O3)換算で好ましくは0.05質量%以上である。水素化処理触媒を硫化処理した際に、第2金属は、第1金属と硫黄からなる硫化物の結晶のエッジ部に結合することで活性の高い活性点となる一方、第3金属の活性は高くない。第3金属の含有量(酸化物換算)が1.0質量%よりも過度に高くなると、第3金属を含む成分の凝集が進みやすくなり、触媒性能が低下する。
本発明の触媒は、さらに後述する製造方法で使用される有機酸、リン化合物等に由来する成分を含んでいてもよい。
【0020】
<触媒の性状>
本発明の触媒のBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で測定した比表面積(SA)は、好ましくは180~350m2/g、より好ましくは200~330m2/gである。比表面積(SA)が前記下限値以上であると、活性金属成分の凝集を抑制し、触媒は、優れた脱硫性能を発揮することができる。一方、比表面積(SA)が前記上限値以下であると、平均細孔径や細孔容積が小さくなり、触媒は、優れた脱硫活性を発揮することができる。
【0021】
本発明の触媒の平均細孔径は、好ましくは50~110Å、より好ましくは60~100Åである。平均細孔径は、水銀圧入法(水銀の接触角:130度、表面張力:480dyn/cm)により測定した値であり、全細孔容積の50%に相当する細孔直径を表す。なお、細孔容積は細孔直径41Å以上の細孔直径を有する細孔の容積を表す。平均細孔径が前記下限値以上であると、本発明の触媒は優れた脱硫性能を発揮することができる。平均細孔径が前記上限値以下であると、本発明の触媒は高い強度を有する。
【0022】
本発明の触媒の拡散反射UV-vis-NIRスペクトルには、波長700nm付近に、例えば後述する比較例1などには観測されない吸収帯が強く発現する。リンモリブデン酸イオンのUV-visスペクトルにおいて波長700nm付近にMo(V)からMo(VI)への遷移に帰属される混合原子価吸収帯が発現することから(例えば、Edward A. et al., Analytica Chimica Acta, 2015, 890, 60-82)、本発明の触媒においてはモリブデンが混合原子価状態にあることが示唆される。
【0023】
本発明の触媒の拡散反射UV-vis-NIRスペクトルに基づく、波長700nmでのKubelka-Munk関数(A)の、波長230~350nmの範囲内でのKubelka-Munk関数の最大値(B)に対する比(A/B)は0.5以上、好ましくは0.6以上である。波長230~350nm付近の吸収は、モリブデン酸イオンないしリンモリブデン酸イオンによる吸収である(例えば、Edward A. et al., Analytica Chimica Acta, 2015, 890, 60-82)。
【0024】
前記比(A/B)が前記下限値以上である本発明の触媒は、活性点構造が制御される、すなわち硫化処理により生成した硫化物結晶のエッジ部に多くの活性点が結合していると推定され、長い触媒寿命を有する。
【0025】
また、前記比(A/B)は、たとえば2.0以下であってもよい。
前記比(A/B)の値は、例えば前記第3金属の割合を高めることにより、増大させることができる。
本発明の触媒の、後述する実施例で採用された方法で測定される強熱減量(loss on ignition;LOI)は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0026】
後述する実施例で採用された条件で測定される、本発明の触媒の硫化処理後の一酸化窒素の吸着量は、好ましくは8.0ml/g以上、より好ましくは8.5ml/g以上である。一酸化窒素分子吸着量に基づき、触媒の反応活性点を計測することができる。一酸化窒素の吸着量が前記下限値以上であると、本発明の触媒は多くの反応活性点を有し、水素化処理性能に優れる。
【0027】
[焼成された炭化水素油の水素化処理触媒]
本発明の別の態様の、炭化水素油の水素化処理触媒(以下「焼成触媒」とも記載する。)は、上述した本発明の水素化処理触媒(以下「乾燥触媒」とも記載する。)の焼成物からなる。前記乾燥触媒を焼成する際の条件の詳細については、後述する「第4工程」を参照することができる。
【0028】
[炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法]
次に、本発明の炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法について説明する。
本発明に係る炭化水素油の水素化処理触媒(乾燥触媒および焼成触媒のうちの乾燥触媒である。)の製造方法は、
前記無機酸化物担体を準備する第1工程、
前記第1金属の化合物と、前記第2金属の化合物と、前記第3金属の単体と、有機酸と、水とを混合して、前記第3金属が溶解した含浸液を調製する第2工程、および
前記無機酸化物担体に前記含浸液を含浸させ、前記含浸液が含浸された前記無機酸化物担体を乾燥して水素化処理触媒を得る第3工程と
を含むことを特徴とする。
以下、各工程について説明する。
【0029】
<第1工程>
第1工程では、前記無機酸化物担体を準備する。前記無機酸化物担体の詳細は上述のとおりであり、この担体は、市販品であってもよく、特開2017-136588号公報、特開2017-196550号公報等の記載を参照して製造してもよい。以下に、前記無機酸化物担体の製造方法の一例を挙げる。
【0030】
先ず塩基性金属塩水溶液と酸性金属塩の水溶液を、混合して無機酸化物前駆体(水和物)を得る。塩基性アルミニウム塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウムなどが好適に使用される。また、酸性アルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどが好適に使用される。複合酸化物の前駆体の調製の場合、シリカ源としては珪酸アルカリとして珪酸ナトリウム水溶液や珪酸ナトリウムのヒドロゲルが、リン酸塩源としては亜リン酸イオンを包含し、リン酸アンモニア、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸、亜リン酸などの水中でリン酸イオンを生じるリン酸化合物が使用可能である。また、チタン鉱酸塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタンなどが例示され、特に硫酸チタン、硫酸チタニルは安価であるので好適に使用される。
【0031】
その後、スラリーの脱水処理を行った後、温水、例えば濃度0.3質量%のアンモニア水溶液でスラリーを洗浄する。そして洗浄後のケーキ状スラリーに対してイオン交換水を加えてスラリー化し、熟成工程を行う。熟成工程では、例えば得られたスラリーにアンモニア水を添加して、例えばpH9.5~10.5に調製し、還流器付の熟成タンク内において、撹拌しながら30℃以上、好ましくは80~100℃で、例えば1~20時間、好ましくは2~10時間加熱熟成する。
【0032】
前記熟成工程で得られた熟成物をスチームジャケット付双腕式ニーダーに入れて加熱捏和して成型可能な捏和物を得た後、押し出し成型などにより所望の形状に成型する。得られた成型物を、次いで例えば70~150℃、好ましくは90~130℃で加熱乾燥し、好ましくは更に例えば400~800℃、好ましくは400~600℃で、例えば0.5~10時間、好ましくは2~5時間焼成してアルミナを主成分とした無機酸化物担体を得る。
【0033】
<第2工程>
第2工程では、所定の成分を混合して含浸液を調製する。
前記第1金属の化合物としては、酸化数が+6である第1金属の化合物、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウムが好ましい。本発明の効果が損なわれない範囲で、第1金属の化合物としてモリブデンの化合物に換えて、またはモリブデンの化合物と共に、タングステンの化合物、例えば三酸化タングステン、パラタングステン酸アンモニウムを用いてもよい。
【0034】
前記第2金属の化合物としては、酸化数が+2である第2金属の化合物、例えば、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸コバルト、炭酸コバルトが好ましい。
前記第3金属の単体は、銅又は鉄である。その形状は、酸性水溶液中に溶解させ易いという観点からは、好ましくは粉末である。
【0035】
前記第1金属の化合物、前記第2金属の化合物および前記第3金属の単体の配合量は、製造される水素化触媒中での第1金属、第2金属および第3金属の量が上述した範囲内となるように、かつ前記比(A/B)が上述した範囲内となるように設定される。
前記含浸液を調製する際には、前記第3金属の単体等と共に水および有機酸を混合することにより、前記第3金属を水中に溶解させる。前記有機酸としては、溶解した第3金属の析出を防ぐ観点から、含浸液のpHを4以下にし得る有機酸が好ましい。前記有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)が使用でき、特に、クエン酸、リンゴ酸が好適に用いられる。
【0036】
また、前記含浸液を調製する際には、これらの成分と共に有機添加剤を添加してもよい。前記有機添加剤としては、糖類(単糖類、二糖類、多糖類等)が挙げられ、具体例としては、ブドウ糖(グルコース;C6H12O6)、果糖(フルクトース;C6H12O6)、麦芽糖(マルトース;C12H22O11)、乳糖(ラクトース;C12H22O11)、ショ糖(スクロース;C12H22O11)が挙げられる。
【0037】
前記含浸液を調製する際には、これらの成分と共にリン化合物を混合してもよい。前記リン化合物の例としては、オルトリン酸(以下、単に「リン酸」ともいう)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、トリメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸が挙げられる。
各成分の配合順序は、特に制限されない。
【0038】
溶解した前記第3金属は、前記第1金属の少なくとも一部を還元すると考えられる。これは、第3金属を配合して調製した含浸液を用いて製造された実施例の水素化処理触媒の拡散反射UV-vis-NIRスペクトルにおいて、波長700nm付近に、第3金属を配合せずに調製した含浸液を用いて製造された水素化処理触媒においては発現しない、モリブデンの混合原子価吸収帯が発現することにより裏付けられる。
【0039】
<第3工程>
第3工程では、まず、第1工程で準備された前記無機酸化物担体に、第2工程で調製された含浸液を含浸させる。
次いで、前記含浸液が含浸された前記無機酸化物担体を、例えば50~200℃、好ましくは50~150℃、より好ましくは80~110℃の温度(以下「乾燥温度」とも記載する。)下に、例えば0.5~10時間、好ましくは1~8時間静置して乾燥させることにより、本発明の水素化処理触媒を製造する。
【0040】
[焼成された炭化水素油の水素化処理触媒の製造方法]
本発明の別の態様の、炭化水素油の水素化処理触媒、すなわち前記焼成触媒の製造方法は、前記第3工程で得られた本発明の乾燥触媒を焼成する第4工程を含んでいる。この焼成は、本発明の乾燥触媒を例えば前記乾燥温度を超え800℃以下、好ましくは400~800℃、より好ましくは400~600℃で、例えば0.5~10時間、好ましくは2~5時間熱処理することにより行われる。
【0041】
[炭化水素油の水素化処理方法]
本発明の炭化水素油の水素化処理方法は、
本発明の水素化処理触媒を硫化処理し、硫化処理された前記触媒の存在下で、水素分圧が3~8MPa、温度が300~385℃、液空間速度が0.3~5h-1の条件で炭化水素油の接触分解を行うことを特徴としている。
【0042】
本発明の水素化処理触媒により脱硫化を図る対象となる炭化水素油としては、例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油または直留軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油または減圧重質軽油、脱硫重油を接触分解して得られる接触分解灯油または接触分解軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を水素化分解して得られる水素化分解灯油または水素化分解軽油、コーカー等の熱分解装置から得られる熱分解灯油または熱分解軽油等が挙げられ、沸点が180~390℃の留分を80容量%以上含んだ留分である。該触媒を使用した水素化処理は、固定床反応装置に触媒を充填して水素雰囲気下、高温高圧条件、例えば、水素分圧が3~8MPa、温度が300~385℃、液空間速度が0.3~5h-1の条件で行なわれる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
[測定方法]
後述する実施例及び比較例で製造された水素化処理触媒について、以下の方法で測定した。
<担体成分(アルミニウム、リン)および活性金属成分(モリブデン、コバルト、ニッケル、リン、銅、鉄)の含有量>
測定試料3gを、容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、加熱処理(200℃で20分間、次いで700℃で5分間)した。得られた熱処理物を、2gのNa2O2および1gのNaOHを加えて加熱し、15分間融解させた。融解物を、放冷後、10mlの濃硫酸および10mLの純水で調製した硫酸水溶液、および200mlの純水を加えて溶解させたのち、純水で500mlになるよう希釈して試料を得た。得られた試料について、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS-8100、解析ソフトウェアICPS-8000)を用いて、各成分の含有量を酸化物換算基準(Al2O3、P2O5、MoO3、NiO、CoO,CuO,Fe2O3)で測定した。
【0044】
<炭素の含有量>
炭素の含有量は、測定試料(触媒)を炭素分析装置(HORIBA(株)社製、EMIA-320V)の高周波炉で燃焼することにより測定した。
【0045】
<比表面積>
測定試料を磁製ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、300℃で2時間熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得た。次に、このサンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積をBET法により測定した。
【0046】
<強熱減量(LOI)>
測定試料である触媒を空気中で570℃で2時間焼成し、焼成による質量減少量から強熱減量(焼成による質量減少量/焼成前の質量)を算出した。
【0047】
<拡散反射UV-vis-NIRスペクトル>
ISN-723積分球ユニットを装着した、日本分光(株)製のV-670型紫外可視近赤外分光光度計により、測定試料のスペクトルデータを取得し、VWST-774計算プログラムにてKM変換を行った。また、測定におけるベースラインはアルミナ白板、測定範囲1200-200nm、データ取り込み間隔1nm、バンド幅5.0nm(UV-vis-NIR)、20nm(NIR)、レスポンスMedium、走査速度:1000nm/min、光源切換:340nm、回折格子切換:850nm、光源:D2/WI、フィルタ切換-ステップの条件で測定した。
【0048】
[水素化処理触媒等の製造]
無機酸化物担体の調製例と、含浸液の調製例と、各無機酸化物担体及び含浸液を用いた本発明の実施例である水素化処理触媒の調製例と、各無機酸化物担体及び含浸液を用いた比較例である水素化処理触媒の調製例について以下に記載する。
<原料>
使用された原料の詳細は以下のとおりである。
・三酸化モリブデン:Climax社製、MoO3濃度99質量%
・炭酸コバルト:塩基性炭酸コバルト、(株)田中化学研究所製、CoO濃度61質量%
・リン酸:関東化学(株)製、P2O5濃度62質量%
・炭酸ニッケル:塩基性炭酸ニッケル、正同化学工業(株)製、NiO濃度55質量%
・クエン酸:関東化学(株)製、純度99.9質量%
・リン酸ナトリウム溶液:リン酸三ナトリウム12水、富士フイルム和光純薬(株)製、純度98.0+質量%
(リン酸ナトリウム溶液は、リン酸三ナトリウム12水(611g)をイオン交換水(3.9kg)で希釈することで調製した。)
・金属銅:還元銅、粒状、粒径150~250μm、富士フイルム和光純薬(株)製:純度99.5+質量%
・金属鉄:アトマイズ鉄粉、粒径180μm、富士フイルム和光純薬(株)製、純度99.5+質量%
・硫酸銅:硫酸銅(II)五水和物、富士フイルム和光純薬(株)製:純度99.0+質量%
・硝酸鉄:硝酸鉄(III)九水和物、富士フイルム和光純薬(株)製:純度99.0+質量%
【0049】
<調製例1:無機酸化物担体の調製>
まず無機酸化物担体の調製例について記載する。
容量が100L(リットル)のスチームジャケット付のタンクに、アルミニウム濃度がAl2O3濃度換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7.23kgを入れ、イオン交換水39.8kgで希釈後、リン濃度がP2O5濃度換算で2.5質量%のリン酸ナトリウム溶液4.5kgを攪拌しながら添加し、これらを攪拌しながら60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩混合水溶液を作製した。また、アルミニウム濃度がAl2O3濃度換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液11.37kgをイオン交換水20.46kgで希釈し、60℃に加温して、硫酸アルミニウム水溶液を調製した。
【0050】
次に、前記塩基性アルミニウム塩混合水溶液をタンク内で攪拌しながら、ここに加温された前記硫酸アルミニウム水溶液を、ローラーポンプを用いて一定速度で10分間かけて添加し、P2O5及びAl2O3を含有する水和物スラリーを調製した。この水和物スラリーを、60℃で60分間攪拌することにより熟成させた。
熟成した前記水和物スラリーを、脱水した後、濃度0.3質量%のアンモニア水溶液120Lで洗浄した。
【0051】
洗浄されたケーキ状の前記スラリーを、アルミニウム濃度がAl2O3換算で10質量%になるようにイオン交換水で希釈してスラリー化した後、濃度15質量%のアンモニア水を添加してpH10.3に調整し、95℃で10時間攪拌することにより熟成させた。
熟成終了後のスラリーを、脱水し、スチームジャケット付双腕式ニーダーにて練りながら加温し所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物をスクリュー式押し出し機で直径が1.6mmの円柱状に成型した。
【0052】
得られた成型物を、110℃で12時間乾燥した後、500℃で3時間焼成して無機酸化物担体(以下「担体A」と記載する。)を得た。
担体Aのアルミニウム含量(Al2O3換算)は97質量%、リン含量(P2O5換算)は3質量%、比表面積は300m2/g、平均細孔径は100Åであった。
【0053】
<調製例2:含浸液の調製>
次に含浸液の調製例について記載する。
<調製例2a:含浸液aの調製>
三酸化モリブデン310gと炭酸コバルト115gを、イオン交換水700mlに懸濁させ、この懸濁液を90℃で1時間、液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸46gとクエン酸118gを加えて溶解させ、銅5gを添加し、更に5時間90℃で攪拌した。得られた溶液を、放冷後、濾過することにより含浸液aを得た。
<調製例2b:含浸液bの調製>
銅の添加量を10gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液bを得た。
<調製例2c:含浸液cの調製>
銅の添加量を0.6gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液cを得た。
<調製例2d:含浸液dの調製>
銅の添加量を15gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液dを得た。
<調製例2e:含浸液eの調製>
銅の添加量を0.3gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液eを得た。
<調製例2f:含浸液fの調製>
銅5gを鉄4gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液fを得た。
<調製例2g:含浸液gの調製>
鉄の添加量を9gに変更したこと以外は調製例2fと同様にして、含浸液gを得た。
<調製例2h:含浸液hの調製>
鉄の添加量を0.5gに変更したこと以外は調製例2fと同様にして、含浸液hを得た。
<調製例2i:含浸液iの調製>
鉄の添加量を14gに変更したこと以外は調製例2fと同様にして、含浸液iを得た。
<調製例2j:含浸液jの調製>
鉄の添加量を0.4gに変更したこと以外は調製例2fと同様にして、含浸液jを得た。
<調製例2k:含浸液kの調製>
銅を添加しなかったこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液kを得た。
<調製例2l:含浸液lの調製>
銅5gを硫酸銅(II)四水和物17.8gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液lを得た。
<調製例2m:含浸液mの調製>
銅5gを硝酸鉄(III)九水和物28.7gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液mを得た。
<調製例2n:含浸液nの調製>
三酸化モリブデン310gと炭酸コバルト115gを、イオン交換水700mlに懸濁させ、この懸濁液を90℃で1時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸46gとクエン酸118gを加えて溶解させ、金属銅22.8gを添加し、更に24時間90℃で攪拌した。放冷後、溶液を濾過することにより含浸液nを得た。
<調製例2o:含浸液oの調製>
三酸化モリブデン310gと炭酸コバルト115gを、イオン交換水700mlに懸濁させ、この懸濁液を90℃で1時間液容量が減少しないように適当な還流装置を施して加熱した後、リン酸46gとクエン酸118gを加えて溶解させ、金属鉄20.0gを添加し、更に24時間90℃で攪拌した。放冷後、溶液を濾過することにより含浸液oを得た。
<調製例2p:含浸液pの調製>
炭酸コバルト115gを炭酸ニッケル128gに変更したこと以外は調製例2aと同様にして、含浸液pを得た。
<調製例2q:含浸液qの調製>
銅を添加しなかったこと以外は調製例2pと同様にして、含浸液qを得た。
【0054】
<実施例1:水素化処理触媒1の調製>
1000gの担体Aに含浸液aを全量噴霧し含浸させた後、100℃で1時間乾燥して水素化処理触媒1(以下、単に「触媒1」ともいう。以下の実施例についても同様である。)を得た。
【0055】
<実施例2~7、比較例1~10:水素化処理触媒2~17の調製>
含浸液の種類を表1に記載されたものに変更したこと以外は実施例1と同様にして、水素化処理触媒2~17を得た。
次に参考例について記載する。
【0056】
<実施例8:水素化処理触媒18の調製>
実施例1の触媒1をマッフル炉内で、空気中、500℃で1時間焼成することで水素化処理触媒18を得た。
【0057】
<比較例11:水素化処理触媒19の調製>
比較例6の触媒13をマッフル炉内で、空気中、500℃で1時間焼成することで水素化処理触媒19を得た。
以上のよう調製して得られた各実施例及び比較例における担体の性状、触媒の性状を表1に示す。表1において、比表面積は、触媒の比表面積を表している。また、炭素量(質量%)は触媒全体の量を100質量%とした場合で量であり、金属量は担体および酸化物換算の金属の含有量の合計を100質量%とした場合の量である。
【0058】
【0059】
<触媒の評価>
(評価のための確認試験)
実施例1~8及び比較例1~11の各触媒について、触媒性能および触媒再生性能を評価した。
触媒性能の評価のための確認試験(1):
各触媒を固定床反応装置に充填し、触媒に含まれている酸素原子を脱離させて触媒を活性化するために、予備硫化処理した。この処理は、硫黄化合物を含む液体または気体を200℃~400℃の温度、常圧~100MPaの水素圧雰囲気下の管理された反応容器中で触媒を流通させることによって行われる。
【0060】
次いで、固定床流通式反応装置内に、直留軽油(15℃における密度0.8468g/cm3、硫黄分1.13質量%、窒素分0.083質量%)を150ml/時間の速度で供給して水素化処理処理を行い、水素化精製を行なった。その際の反応条件は、水素分圧が4.5MPa、液空間速度が1.0h-1、水素油比が250Nm3/klである。そして反応温度を300~385℃の範囲で変化させ、各温度における精製油中の硫黄分析を行い、精製油中の硫黄分が10ppmになる温度をそれぞれ求めた。
【0061】
触媒再生性能の評価のための確認試験(2):
触媒性能の評価のための確認試験(1)の後に生成油中の硫黄分が10ppmとなる温度にて運転を30日間行った。その後に反応温度を300~385℃の範囲で変化させ、各温度における生成油中の硫黄分析を行い、精製油中の硫黄分が10ppmになる温度をそれぞれ求めた。
【0062】
触媒寿命の評価:
前記確認試験(1)で作成したアレニウスプロットより340℃における反応速度定数(Kn0)を求め、前記確認試験(2)で作成したアレニウスプロットより340℃における反応速度定数(Kn)を求め、(Kn/Kn0)×100[%]を相対残存活性とした。
反応速度定数=LHSV×1/(n-1)×(1/Sn-1-1/S0
n-1)
ここで、
n:脱硫反応速度が原料油の硫黄濃度の何乗に比例するか(直留軽油では1.3)
S:処理油中の硫黄濃度(%)
S0:原料油中の硫黄濃度(%)
LHSV:液空間速度(hr-1)
である。
以上の確認試験の結果を表2に示す。
【0063】
【0064】
(触媒の性状及び確認試験の評価結果)
実施例1~8は、触媒性能の指標である、精製油中の硫黄分が10ppmになる温度が345℃未満であり、触媒寿命の指標である上記の相対残存活性が80%以上であった。これに対して比較例では、精製油中の硫黄分が10ppmになる温度が345℃以上であり、触媒寿命の指標である上記の相対残存活性が80%未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の水素化処理触媒は、炭化水素油を高度に水素化処理することができるため産業上極めて有用である。