(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
F21V 5/00 20180101AFI20231204BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20231204BHJP
F21V 19/00 20060101ALI20231204BHJP
F21V 3/02 20060101ALI20231204BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231204BHJP
【FI】
F21V5/00
F21S2/00 230
F21V19/00 170
F21V19/00 150
F21V3/02 400
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020018428
(22)【出願日】2020-02-06
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 泰治
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0063694(US,A1)
【文献】特開2015-032642(JP,A)
【文献】特開2014-157755(JP,A)
【文献】特開2015-165513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 5/00
F21S 2/00
F21V 19/00
F21V 3/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置された
紫外光照射用の光照射装置であって、
前記光源モジュールは、
長尺状の基板と、当該基板の主表面上に配置された
紫外光照射用のLED素子と、前記基板の側部に立設された
長尺状の側壁部および当該側壁部によって支持され前記LED素子上に位置する
長尺状のレンズ部を有する光学素子とを備え、
前記光学素子は、前記側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものであり、
前記基板の線膨張係数が0×10
-6/K~30×10
-6/K、
前記光学素子の線膨張係数が0×10
-6/K~10×10
-6/Kであり、
前記基板の線膨張係数-前記光学素子の線膨張係数で表される線膨張係数の差が0×10
-6/K~25×10
-6/Kである
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光学素子の側壁部が前記基板に接着固定されていない請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記光学素子の側壁
部が前記基板に対し、付勢部材、嵌合溝、嵌合ピンから選ばれる一種以上により固定されている請求項1または請求項2に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット枚葉印刷用のインキとして、紫外光の照射により硬化する紫外線硬化型インキが用いられている。また、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等、FPD(Flat Panel Display)のシール剤として、紫外線硬化樹脂が用いられている。
このような紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂の硬化には、一般に、紫外光を照射する光照射装置が用いられるが、特にオフセット枚葉印刷やFPDのシール用途においては、幅広な矩形形状の照射領域に高い照射強度の紫外光を照射する必要があるため、照射領域に対向して配置した幅広な光源を有する(一般にライン光源等と称される)光照射装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記光照射装置に設けられる紫外光照射用の光源としては、従来、低圧水銀ランプが用いられてきたが、近年、省エネルギー化等に基づく要請から、長手方向にLED素子を配置した基板からなる(LEDパッケージと称される)光源モジュールへの変更が図られるようになっている。
【0004】
図8は、上記LEDパッケージと称される光源モジュールの従来の形態例を説明するための概略図である。
図8に示す従来の光源モジュール111は、長尺状の基板112上に同じく長尺状のLED素子113を配置するとともに、基板112の両側部に長尺状の側壁部材115、115を立設しその上部に長尺状の光学素子(ロッドレンズ)114を配置したものである(図中、LED素子113に通電するための配線および外部電極等は記載を省略している)。
図8に示す例において、側壁部材115は基板112に対して、また光学素子114も側壁部材115に対して、各々任意の接着剤により接着固定されている。
【0005】
ところで、上記光照射装置は、使用目的等に応じてその横幅(照射領域の横幅)が装置毎に異なることから、上記光源モジュールをユニット化して、設置対象となる光照射装置の横幅に対応するように光源モジュールを直列状に複数配置することが考えられる。
【0006】
図9は、
図8に示す光源モジュール111をその長手方向が同一となるように直列状に複数並置した光照射装置(ライン光源)110の形態例を示す概略図である。
図9に示す光照射装置110においては、光源モジュール111を3個直列状に配置しているが、配置数については光照射装置の横幅(光照射装置による照射領域の横幅)に応じて任意に選択されることになる。
図9に示す光照射装置110において、筐体bには、通常、光源モジュール111(LED素子113)へ通電するための配線、光源モジュール111の制御手段、ヒートシンクや空冷ファン等の冷却手段等が内蔵されている。
【0007】
図9に示す光照射装置110の使用時においては、各光源モジュール111を構成するLED素子113に通電され、複数の光学素子114から図の上部方向に光照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記光照射装置においては、光源モジュールの光軸に位置ずれを生じやすいことを見出した。
【0010】
上記技術課題について本発明者がさらに検討したところ、
図9に例示するように複数の光源モジュール111を直列状に配置した光照射装置110においては、運転時にLED素子113が点灯することにより、雰囲気温度や光学素子114の温度が上昇し、熱膨張する結果、LED素子113と光学素子114の位置が設計値からずれたり、隣接する光学素子114同士が接触して変形や傾きを生じたりするために、光軸の位置ずれを生じ易いことが判明した。
また、本発明者の検討によれば、
図9に例示する光照射装置110を構成する光源モジュール111は、基板112、側壁部材115および光学素子114のいずれかが線膨張係数の大きいものである場合や、基板112および側壁部材115間における線膨張係数の差や側壁部材115および光学素子114間における線膨張係数の差が大きい場合に、これ等を接着固定した箇所に熱応力を生じて変形や傾きを生じ同じく光軸の位置ずれを生じ易いことが判明した。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置されたものであるにも拘わらず、光軸の位置ずれを好適に抑制し得る光照射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記知見に基づいて本発明者がさらに検討したところ、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置された光照射装置であって、上記光源モジュールは、長尺状の基板と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子と、前記基板の側部に立設された長尺状の側壁部および当該側壁部によって支持され前記LED素子上に位置する長尺状のレンズ部を有する光学素子とを備え、上記光学素子は、前記側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものであり、上記光源モジュールを構成する基板の線膨張係数、光学素子の線膨張係数および当該基板および光学素子間の線膨張係数差が各々特定範囲内にある光照射装置によって、上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置された光照射装置であって、
前記光源モジュールは、長尺状の基板と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子と、前記基板の側部に立設された長尺状の側壁部および当該側壁部によって支持され前記LED素子上に位置する長尺状のレンズ部を有する光学素子とを備え、
前記光学素子は、前記側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものであり、
前記基板の線膨張係数が0×10-6/K~30×10-6/K、
前記光学素子の線膨張係数が0×10-6/K~10×10-6/Kであり、
前記基板の線膨張係数-前記光学素子の線膨張係数で表される線膨張係数の差が0×10-6/K~25×10-6/Kである
ことを特徴とする光照射装置、
(2)前記光学素子の側壁部が前記基板に接着固定されていない上記(1)に記載の光照射装置、
(3)前記光学素子の側壁部または前記側壁部材が前記基板に対し、付勢部材、嵌合溝、嵌合ピンから選ばれる一種以上により固定されている上記(1)または(2)に記載の光照射装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学素子の線膨張係数が基板の線膨張係数と同じであるかこれより小さいために(光学素子の線膨張係数≦基板の線膨張係数であるために)、隣接する光源モジュールの配置間隔を基板が熱膨張しても接触しない間隔に調整することにより、隣接する光学素子が熱膨張しても光学素子同士が相互に接触することがなく、このために光学素子の変形や傾きを抑制して光軸の位置ずれを好適に抑制することができる。
また、本発明によれば、光源モジュールを構成する基板や光学素子等の各構成部材の線膨張係数および隣接する構成部材間の線膨張係数差を特定範囲内に制御することにより、各構成部材における熱応力の発生を抑制して変形や傾きに基づく光軸の位置ずれを抑制することができる。
このため、本発明によれば、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置されたものであるにも拘わらず、光軸の位置ずれを好適に抑制し得る光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す光源モジュールの側面の概略図である。
【
図4】本発明に係る光照射装置の一形態例における側面の断面を示す概略図である。
【
図5】本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例における側面の概略図である。
【
図6】本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例における側面の概略図である。
【
図7】本発明に係る光照射装置の実施形態例を示す概略図である。
【
図8】本発明の比較対象となる光源モジュール(LEDパッケージ)の形態例を説明するための概略図である。
【
図9】
図8に示す光源モジュールを直列状に複数並置した光照射装置の形態例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光照射装置について説明する。
本発明に係る光照射装置は、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置された光照射装置であって、
前記光源モジュールは、長尺状の基板と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子と、前記基板の側部に立設された長尺状の側壁部および当該側壁部によって支持され前記LED素子上に位置する長尺状のレンズ部を有する光学素子とを備え、
前記光学素子は、前記側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものであり、
前記基板の線膨張係数が0×10-6/K~30×10-6/K、
前記光学素子の線膨張係数が0×10-6/K~10×10-6/Kであり、
前記基板の線膨張係数-前記光学素子の線膨張係数で表される線膨張係数の差が0×10-6/K~25×10-6/Kである
ことを特徴とするものである。
【0017】
以下、本発明に係る光照射装置について、適宜、図面を用いつつ説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例を示す概略図である。
【0019】
本発明に係る光照射装置においては、
図1に例示しているように、光源モジュール11が、長尺状の基板12と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子13と、上記基板12の側部に立設された長尺状の側壁部14b、14bおよび当該側壁部14b、14bによって支持され上記LED素子13上に位置する長尺状のレンズ部14aを有する光学素子14とを備えるものである。
【0020】
図1に例示するように、本発明に係る光照射装置において、光源モジュール11を構成する基板12は、通常、正面視したときに矩形状の長尺形状を有している。
【0021】
本発明に係る光照射装置において、基板の形成材料としては、絶縁性を有するセラミックス材料または金属材料からなるものを挙げることができる。
上記絶縁性を有するセラミックス材料としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素等から選ばれる一種以上のセラミックス材料からなるものを挙げることができる。
また、上記金属材料としては、銅やアルミニウム等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0022】
本発明に係る光照射装置において、基板の線膨張係数は、0×10-6/K~30×10-6/Kであり、0×10-6/K~8×10-6/Kであることが好ましい。
基板の線膨張係数は、基板の形成材料を適宜選択することにより容易に制御することができる。
【0023】
なお、本出願書類において、基板の線膨張係数は、セラミックス材料からなる基板についてはJIS Z1618「ファインセラミックスの線膨張係数の測定方法」の規定に従って測定された値を意味し、金属材料からなる基板については、JIS Z2285「金属材料の線膨張係数の測定方法」の規定に従って測定された値を意味する。
【0024】
本発明に係る光照射装置において、光源モジュールを構成する基板の線膨張係数が上記特定範囲内にあることにより、基板の熱膨張の程度を所望範囲に容易に抑制することができる。
【0025】
本発明に係る光照射装置においては、
図1に例示するように、光源モジュール11を構成する基板12の主表面上に、LED素子13が配置されている。
LED素子は、使用目的に応じて適宜選定すればよく、例えば紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂等の硬化を目的とする場合は、紫外線LEDから適宜選択すればよい。
【0026】
図1に例示するように、基板12の長手方向に沿って複数のLED素子13を配置する場合、複数のLED素子は、一列に配置してもよいし複数列に配置してもよく、この場合、各LED素子間の配置間隔や各LED素子のサイズは任意に選択することができる。
【0027】
図1では記載を省略しているが、各LED素子13は公知の方法により電気的に接続されている。
例えば、上記基板12が絶縁性を有するセラミックス材料からなる場合、LED素子13(発光ダイオード)のカソード端子およびアノード端子が、各々、基板12上に導電性材料を用いて設けられた負極パターンおよび正極パターンに電気的に接続された形態を挙げることができる。
図1に示す形態においては、例えば外部電源から上記電極に通電することにより、LED素子13から紫外光等の出射光を
図1の上部方向に出射することができる。
【0028】
図1に例示するように、本発明に係る光照射装置においては、光学素子14が、基板12の側部に立設された長尺状の側壁部14b、14bと、当該側壁部によって支持されLED素子13上に位置する長尺状のレンズ部14aとを有している。
【0029】
本発明に係る光照射装置において、光学素子の構成材料は、LED光を透過するものであれば特に制限されず、LED素子として、紫外線LEDを採用する場合には、紫外光耐性を有するものが好ましい。
上記光学素子の構成材料として、具体的には、合成石英や溶融石英等の石英や、硬質ガラス等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
硬質ガラスとしては、ホウケイ酸ガラス(Si-B-O系ガラス、軟化点:約800℃)およびアルミノケイ酸ガラス(Si-Al-O系ガラス、軟化点:約900℃)から選ばれる一種以上や、これ等のいずれかにアルカリ土類酸化物、アルカリ酸化物および金属酸化物から選ばれる一種以上を添加したものを挙げることができる。
【0030】
本発明に係る光照射装置において、基板および光学素子の構成材料の好適な組み合わせとしては、以下の(1)~(4)のいずれかの組み合わせが挙げられる。
(1)(基板)窒化アルミ、(光学素子)石英
(2)(基板)アルミナ、(光学素子)石英
(3)(基板)銅、(光学素子)ホウケイ酸ガラス
(4)(基板)アルミ、(光学素子)ホウケイ酸ガラス
【0031】
本発明に係る光照射装置において、光学素子は、側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものである。
【0032】
図2は、
図1に示す光源モジュール11の側面の概略図である。
図2に示すように、光学素子のレンズ部14aの光入射面Linは、平面状であってもよいし、凸面または凹面等の曲面状であってもよい。
また、
図2に示すように、光学素子のレンズ部14aの光出射面Loutは、球面状であってもよいし、凸面または凹面等の曲面状ないし非球面状であってもよい。
図2に示すレンズ部14aの光入射面Linや光出射面Loutは、通常、光学面である。
図2に示すレンズ部14aの側面Lsideは、光学面であることが好ましいが、
図2の上部方向に光出射し得るものであれば、一定程度凹凸を有するものであってもよい。
【0033】
本発明に係る光照射装置において、光学素子の側壁部の高さは、LED素子の高さ以上の高さであれば特に制限されない。
図3は、上記側壁部の高さを説明するための
図2に対応する図であり、
図3に示す長さhが同図に示す光学素子14の側壁部14bの高さに相当する。
【0034】
本発明に係る光照射装置において、光学素子の側壁部の高さとは、基板と、基板に対向する光学素子の光入射面との距離(垂直方向長さ)の最小値を意味する。
上述した
図3に示す例においては、基板12と光入射面Linとの垂直方向長さhが光入射面全体に亘って一定であることから、係る長さhが側壁部14bの高さに相当する。
【0035】
本発明に係る光照射装置において、光学素子は、側壁部およびレンズ部(
図1に示す例における側壁部14bおよびレンズ部14a)が同一の素材により一体成形されてなるものである。
側壁部およびレンズ部が同一素材により一体成形されてなる上記光学素子は、所望形状の側壁部およびレンズ部を有するように、研削・研磨加工されてなるものであってもよいし、射出成形、モールド成形、プレス成形、焼結成形等の各種成形法により成形されてなるものであってもよい。
【0036】
本発明に係る光照射装置において、光学素子が、側壁部およびレンズ部が同一の素材により一体成形されてなるものであることにより、高温下においても側壁部およびレンズ部が各々同程度に膨張するとともに、側壁部およびレンズ部間に界面(接合部)が存在しないことから、熱応力の発生を好適に抑制することができる。
【0037】
本発明に係る光照射装置において、光学素子の側壁部の形態は、基板上にレンズ部を支持し得るように設けられていれば特に制限されない。
本発明に係る光照射装置においては、
図1に例示するように、一対の側壁部14b、14bがレンズ部14aを支持するものであってもよいし、いずれか一方の側壁部14bのみによってレンズ部14aを支持するものであってもよい。
また、本発明に係る光照射装置においては、
図1に例示するように、基板12の長手方向全体に亘って設けられた側壁部14bがレンズ部14aを支持するものであってもよいし、基板12の長手方向の一部にのみ設けられた側壁部によってレンズ部を支持するものであってもよい。
【0038】
本発明に係る光照射装置において、光学素子の線膨張係数は、0×10-6/K~10×10-6/Kであり、0×10-6/K~4×10-6/Kであることが好ましい。
光学素子の線膨張係数は、光学素子の形成材料を適宜選択することにより容易に制御することができる。
【0039】
なお、本出願書類において、光学素子の線膨張係数は、JIS R3102に規定されているガラスの平均線膨張係数の試験方法に従って測定された値を意味する。
【0040】
本発明に係る光照射装置において、光源モジュールを構成する光学素子の線膨張係数が上記特定範囲内にあることにより、光学素子の熱膨張の程度を所望範囲に容易に抑制し、光軸の位置ずれを容易に抑制することができる。
【0041】
本発明に係る光照射装置において、「基板の線膨張係数-光学素子の線膨張係数」で表される線膨張係数の差は、0×10-6/K~25×10-6/Kであり、0×10-6/K~5×10-6/Kであることが好ましい。
上記線膨張係数の差は、基板および光学素子の形成材料を各々適宜選択することにより容易に制御することができる。
【0042】
本発明に係る光照射装置においては、「基板の線膨張係数-光学素子の線膨張係数」で表される線膨張係数の差が「0」または「正の数」であること、すなわち光学素子の線膨張係数が基板の線膨張係数と同じであるかこれより小さいことにより、隣接する光源モジュールの配置間隔を基板が熱膨張しても接触しない間隔に調整すれば、隣接する光学素子が熱膨張しても光学素子同士が接触することがなく、このために光学素子の変形や傾きを容易に抑制して光軸の位置ずれを好適に抑制することができる。
また、本発明に係る光照射装置においては、「基板の線膨張係数-光学素子の線膨張係数」で表される線膨張係数の差が上記範囲内にあることにより、すなわち基板および光学素子間における線膨張係数の差の絶対値を上記範囲内に制御することにより、基板および光学素子における熱応力の発生を抑制し変形や傾きに基づく光軸の位置ずれを好適に抑制することができる。
【0043】
本発明に係る光照射装置においては、光学素子の側壁部が基板に接着固定されていないことが好ましい。
すなわち、
図1に示す形態例においては、光学素子14の側壁部14b、14bが基板12に接着固定されていないことが好ましい。
【0044】
図1に例示するように、本発明に係る光照射装置においては、光照射装置の運転時にLED素子13が発光して雰囲気温度が高温になると、光源モジュール11を構成する基板12および光学素子14が各々熱膨張し、このとき両者が接着固定されていると両者の界面で熱応力を生じて変形や傾きを生じ易くなる。
【0045】
これに対して、本発明に係る光照射装置において、光学素子の側壁部が基板に接着固定されていない場合には、基板および光学素子のいずれか一方または両方が熱膨張した際に基板および光学素子のいずれか一方または両方が両者の界面で摺動するために両者間における熱応力の発生を抑制することができる。
【0046】
また、本発明に係る光照射装置において、一定期間使用された光源モジュールは、LED素子の耐用期限に基づいて定期的に取り外され交換されることになるが、LED素子等に比較して光学素子は耐用期限が長いことから、光学素子については再利用することが望まれる。
この場合、光学素子の側壁部が基板に接着固定されていないことにより、光源モジュールから光学素子を容易に取り外すことができ、光源モジュールの構成部材として容易に再利用することができる。
【0047】
本発明に係る光照射装置においては、光学素子の側壁部が基板に接着固定されていない場合、その配置位置を維持するために、光学素子と基板とが固定具により固定されていることが好ましい。
上記固定具としては、光学素子および基板が両者の界面で一定程度摺動し得るような手段であれば特に制限されない。
上記固定具としては、例えば、付勢部材、嵌合溝、嵌合ピン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0048】
光学素子と基板とが付勢部材により固定されている場合、付勢部材としては、板バネ等を挙げることができる。
図4は、本発明に係る光照射装置の一形態例における側面の断面を示す概略図である。
図4に示す光照射装置10において、光源モジュール11は、基板12と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子13と、基板12の側部に立設された一対の側壁部14bおよび当該側壁部によって支持されLED素子13上に位置するレンズ部14aを有する光学素子14とを備えている。
【0049】
図4に示す形態例において、光源モジュール11を構成する光学素子14および基板12は、板バネsによって図の上部方向に付勢されることにより、板バネsおよび筐体の上部壁面c間に挟持される。
このとき、基板12は板バネsによって図の上部方向に押圧されるとともに、光学素子14は筐体bの上部壁面cによって図の下方に押圧される。
図4に例示するように、光学素子14に対する図の下方側への押圧(基板12側への押圧)を効果的に行う上で、光学素子14は、光学素子14の光出射面の少なくとも一部に基板方向に押圧するための張り出し部14jが設けられてなるものが好ましい。
【0050】
図4に例示するように、光源モジュールを構成する基板に光学素子を接着固定することに代えて付勢部材により固定することにより、基板および光学素子のいずれか一方または両方が熱膨張して、専ら長手方向(
図4に示す例における図の表面から裏面方向)に変形しても、これ等が両者の界面で摺動しつつ変形するために、熱応力の発生を好適に抑制しつつ両者を好適に固定することができる。
【0051】
光学素子および基板が嵌合溝によって固定されている場合、係る嵌合溝は、基板表面に設けられた光学素子の側壁部の底部を嵌め込む溝であることが好ましい。
【0052】
図5は、本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例における側面の概略図である。
図5に示す光源モジュール11は、基板12と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子13と、基板12の側部に立設された側壁部14b、14bおよび当該側壁部によって支持されLED素子13上に位置するレンズ部14aを有する光学素子14とを備えている。
【0053】
図5に示す形態例において、基板12には溝g、gが設けられ、光源モジュール11を構成する光学素子14は、側壁部14b、14bの底部が溝gに嵌め込まれることにより、光学素子14を基板12に固定することができる。
【0054】
図5に例示するように、光源モジュールを構成する基板に光学素子を接着固定することに代えて光源モジュールを構成する光学素子の側壁部の底部を基板に設けられた溝に嵌め込み固定することにより、基板および光学素子のいずれか一方または両方が熱膨張して、専ら長手方向(
図5に示す例における図の表面から裏面方向)に変形しても、これ等が両者の界面で摺動しつつ変形するために、熱応力の発生を好適に抑制しつつ両者を好適に固定することができる。
【0055】
光学素子および基板が嵌合ピンによって固定されている場合、光源モジュールが、LED素子が設けられた主表面とは反対側の基板主表面上にさらにヒートシンクを有し、基板に設けられた貫通孔を介して光学素子の側壁部が上記ヒートシンクに嵌合ピンにより固定されていることが好ましい。
【0056】
図6は、本発明に係る光照射装置を構成する光源モジュールの一形態例における側面の概略図である。
図6に示す光源モジュール11は、基板12と、当該基板の主表面上に配置されたLED素子13と、基板12の側部に立設された側壁部14bおよび当該側壁部によって支持されLED素子13上に位置するレンズ部14aを有する光学素子14とを備え、上記基板12の反対側主表面上にさらにヒートシンクhsを備えている。
【0057】
図6に示す形態例において、基板12には複数の貫通孔が設けられ、係る貫通孔に嵌合ピンpを挿通することにより、貫通孔を介して光学素子の側壁部14bをヒートシンクhsに固定することができる。上記嵌合ピンは、位置決めピン等であってもよい。
【0058】
光学素子および側壁部材が篏合ピンで固定されている場合、両者間の界面での熱応力の発生を抑制するために、例えば両者の長手方向中央部のみが篏合ピンで固定され、両者の長手方向両端部は固定されていないことが好ましい。
【0059】
図6に例示するように、光源モジュールを構成する基板に光学素子を接着固定することに代えて光学素子および基板を嵌合ピンで固定する場合、基板および光学素子のいずれか一方または両方が熱膨張して、専ら長手方向(
図6に示す例における図の表面から裏面方向)に変形しても、上記変形による基板または光学素子の位置ずれの程度は、長手方向の中央部付近で小さく両端部で大きくなる。
このため、光学素子および側壁部材の長手方向中央部のみが篏合ピンで固定されていれば、両者間における熱応力の発生を好適に抑制しつつ基板および光学素子を好適に固定することができる。
【0060】
図4~
図6に例示する態様においては、基板12と光学素子14とが接着固定されていないため、光源モジュール10の交換時に光源モジュール10から光学素子14を容易に取り外し、光源モジュールの構成部材として容易に再利用することもできる。
【0061】
本発明に係る光照射装置は、長尺状の光源モジュールが(その長手方向が同一となるように)直列状に複数配置されたものである。
図7は、本発明に係る光照射装置の実施形態例を示す概略図である。
図7に示す例においては、上述した光源モジュール11が筐体bに対して直列状に4つ固定された光照射装置10を示しているが、本発明において、光照射装置における光源モジュール11の配置数は特に制限されない。
筐体bは、光源モジュール11(LED素子13)へ通電するための配線、光源モジュール11の制御手段、ヒートシンクや空冷ファン等の冷却手段等を内蔵したものであることが好ましい。
【0062】
本発明に係る光照射装置において、複数の光源モジュールの配置間隔は、光照射装置の使用時における雰囲気温度下で基板が熱膨張しても、隣接する基板同士が接触しない間隔であれば特に制限されない。
【0063】
本発明に係る光照射装置において、光源モジュールを構成する基板の(光照射装置運転前における)長手方向長さをL(m)、基板の線膨張係数をα(×10-6/K)、光照射装置の運転時における雰囲気の上昇温度をΔT(K)とした場合、光照射装置の運転時に、基板の長さはL×α×ΔT(m)伸びることになる。
このため、光照射装置の運転時における基板の長さL’は下記式により算出することができる。
L’(m)=L+L×α×ΔT
各基板の長さが隣接する基板に対し(L×α×ΔT)/2(m)ずつ膨張するとすると、隣接する各基板間の配置間隔をL×α×ΔT(m)より大きくすれば、基板同士の接触を抑制することができる。
【0064】
本発明によれば、光学素子の線膨張係数が基板の線膨張係数と同じであるかこれより小さいために(光学素子の線膨張係数≦基板の線膨張係数であるために)、隣接する光源モジュールの配置間隔を基板が熱膨張しても接触しない間隔に調整することにより、隣接する光学素子が熱膨張しても光学素子同士が相互に接触することがなく、このために光学素子の変形や傾きを抑制して光軸の位置ずれを好適に抑制することができる。
また、本発明によれば、光源モジュールを構成する基板や光学素子の線膨張係数および基板および光学素子の線膨張係数差を特定範囲内に制御することにより、基板および光学素子間における熱応力の発生を抑制して変形や傾きに基づく光軸の位置ずれを抑制することができる。
このため、本発明によれば、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置されたものであるにも拘わらず、光軸の位置ずれを好適に抑制し得る光照射装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、長尺状の光源モジュールが直列状に複数配置されたものであるにも拘わらず、光軸の位置ずれを好適に抑制し得る光照射装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0066】
10、110 光照射装置
11、111 光源モジュール
12、112 基板
13、113 LED素子
14、114 光学素子
14a レンズ部
14b 側壁部
15、115 側壁部材
b 筐体
c 上部壁面
s 板ばね
g 溝
p 嵌合ピン
hs ヒートシンク