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特許7395381挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法。
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20231204BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20231204BHJP
   B23P 19/02 20060101ALI20231204BHJP
   B23P 19/04 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B23P19/00 303B
B25J13/08 Z
B23P19/02 A
B23P19/04 G
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020024770
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021126757
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 匡志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】岳 志江
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152651(JP,A)
【文献】特開2010-221380(JP,A)
【文献】特開2014-143365(JP,A)
【文献】特開2015-160271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00-21/00
B25J 13/08
H05K 3/30;13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定器であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定器は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成され
前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記所定部位の寸法が、前記所定部位の2つの位置で決まる寸法である、挿入良好度判定器。
【請求項2】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定器であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定器は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成され
前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記基準位置が、前記挿入部品の設計データから取得された前記所定部位の位置、又は前記挿入部品が前記孔に挿入されていない状態において前記胴部の延在方向から見た前記所定部位の位置である、挿入良好度判定器。
【請求項3】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、前記頭部の外周及び当該外周に沿って延在する凸部又は凹部によって規定される帯状の部位であり、前記所定部位の寸法分布が、前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布である、請求項1に記載の挿入良好度判定器。
【請求項4】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、周方向に延在する環状で帯状の部位であり、前記所定部位の寸法分布が、前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布である、請求項1に記載の挿入良好度判定器。
【請求項5】
前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布のばらつきに基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成されている、請求項3又は4に記載の挿入良好度判定器。
【請求項6】
前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布の平均値に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成されている、請求項3又は4に記載の挿入良好度判定器。
【請求項7】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法が、前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から撮像した撮像画像における、前記挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法である、請求項1及び3乃至6のいずれかに記載の挿入良好度判定器。
【請求項8】
前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から撮像した撮像画像を表す撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記撮像データ取得部が取得した前記撮像データに基づいて、前記挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法分布を算出し、算出された前記所定部位の寸法分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定する判定部と、を備える、請求項1及び3乃至7のいずれかに記載の挿入良好度判定器。
【請求項9】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、前記頭部の外周又は前記頭部の外周に沿って延在する環状の凸部又は凹部であり、前記所定部位の基準位置が、前記挿入部品の設計データから取得された前記所定部位の位置、又は前記挿入部品が前記孔に挿入されていない状態において前記胴部の延在方向から見た前記所定部位の位置である、請求項2に記載の挿入良好度判定器。
【請求項10】
前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置を表す位置データを取得する位置データ取得部と、
前記基準位置を記憶する記憶部と、
前記位置データ取得部が取得した前記位置データと前記記憶部に記憶された前記基準位置とに基づいて、前記挿入部品の前記頭部の所定部位の位置の基準位置からの偏差を算出し、算出された前記所定部位の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定する判定部と、を備える、請求項2又は9に記載の挿入良好度判定器。
【請求項11】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定器であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定器は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成され、
前記挿入部品が粘弾性体であり、前記胴部が粘弾性的に縮径して前記孔に挿入されることによって、前記頭部が変形する、挿入良好度判定器。
【請求項12】
前記挿入部品が、前記胴部の先端に、当該胴部より太い抜け止め部を有している、請求項11に記載の挿入良好度判定器。
【請求項13】
前記挿入部品が、グロメット又はゴム栓である請求項11又は12に記載の挿入良好度判定器。
【請求項14】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定器であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定器は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成され、
前記孔がネジ孔であり、前記挿入部品がネジ部品である、挿入良好度判定器。
【請求項15】
前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から見た撮像画像を撮像し、撮像された撮像画像を表す撮像データを出力する撮像器と、
請求項1乃至14のいずれかに記載された挿入良好度判定器と、を備え、
前記判定器は、前記撮像器から出力される撮像データに基づいて、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置を取得するように構成されている、挿入良好度判定装置。
【請求項16】
前記挿入部品を前記作業対象の前記孔に挿入するエンドエフェクタを有するロボットアームを備えるロボットと、
請求項15に記載された挿入良好度判定装置と、を備え、
前記撮像器が前記エンドエフェクタ、前記ロボットアーム、又は前記ロボット以外の物体に設置されている、ロボットシステム。
【請求項17】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定方法であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定方法は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定する工程を含み、 前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記所定部位の寸法が、前記所定部位の2つの位置で決まる寸法である、挿入良好度判定方法。
【請求項18】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定方法であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定方法は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定する工程を含み、 前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、
前記基準位置が、前記挿入部品の設計データから取得された前記所定部位の位置、又は前記挿入部品が前記孔に挿入されていない状態において前記胴部の延在方向から見た前記所定部位の位置である、挿入良好度判定方法。
【請求項19】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定方法であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定方法は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定する工程を含み、 前記挿入部品が粘弾性体であり、前記胴部が粘弾性的に縮径して前記孔に挿入されることによって、前記頭部が変形する、挿入良好度判定方法。
【請求項20】
作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定方法であって、
前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定方法は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定する工程を含み、 前記孔がネジ孔であり、前記挿入部品がネジ部品である、挿入良好度判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からロボットによって一方のワークの凹部に他方のワークの凸部を挿入することが知られている。また、この場合に、挿入の良否を判定することが知られている。例えば、特許文献1には、互いに予備篏合された2つの部材をベース部材及び可動部材によって挟んで押圧することによって篏合させ、この篏合状態をベース部材と可動部材との距離の変化情報に基づいて判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2015/181891国際公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術は、例えば、波動歯車装置の組み立てに適用することが想定されており、篏合状態の判定が簡易ではない。一方、作業対象物に設けられた各種の孔にグロメット、ゴム栓、ネジ部品等の挿入部品を挿入して取り付けることが知られている。これらの挿入部品については、その挿入の良好度を簡易に判定することが要請される。
【0005】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することが可能な、挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある形態(aspect)に係る挿入良好度判定器は、作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定器であって、前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、前記判定器は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成されている。ここで、「挿入」は、孔へ部品を、隙間を有して入れること、孔へ部品を篏合すること、孔へ部品を圧入すること、及びネジ孔へネジ部品をネジ込むことを含む。「孔」は、貫通孔及び有底孔の双方を含む。
【0007】
この構成においては、挿入部品が傾いて孔に挿入された場合、グロメット、ゴム栓等の粘弾性部品は、孔の延在方向から見て頭部が歪み、ネジ部品は、頭部が細くなる。また、粘弾性部品では、頭部が浮いた状態で孔に挿入された場合、孔に良好に挿入された場合に比べて、頭部が大きくなる。従って、挿入部品が良好に挿入されなかった場合、孔の延在方向に直交する方向における挿入部品の頭部の特定の部位の位置が、挿入部品が孔に良好に挿入された場合と異なる。よって、この構成のように、孔の延在方向に直交する方向における、孔に挿入された挿入部品の頭部の所定部位の位置に基づいて、挿入の良好度を判定することができる。その結果、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することができる。
【0008】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布、又は当該所定部位の位置の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであってもよい。ここで、「寸法」は、2つの「位置」で決まるので、「位置」の下位概念である。
【0009】
この構成においては、孔の延在方向から見て頭部が歪み、又は頭部が細くなる場合、挿入部品の頭部の所定部位の寸法の分布が、その歪又は細さに応じた分布になる。従って、この構成によれば、頭部の所定部位の寸法の分布のみ基づいて、挿入の良好度を判定することができる。
【0010】
また、孔の延在方向から見て頭部が歪み、又は頭部が細くなる場合、挿入部品の頭部の所定部位の位置の規準位置からの偏差が、その歪又は細さに応じたものになる。従って、この構成によれば、頭部の所定部位の位置の規準位置からの偏差に基づいて、挿入の良好度を判定することができる。
【0011】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、前記頭部の外周及び当該外周に沿って延在する凸部又は凹部によって規定される帯状の部位であり、前記所定部位の寸法分布が、前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布であってもよい。ここで、「頭部の外周及び当該外周に沿って延在する凸部又は凹部によって規定される帯状の部位」とは、孔の延在方向から見て、頭部の外周と頭部の中心とによって区画され、当該外周に沿って延在する帯状の部位と、当該外周及び当該外周に沿って延在する1以上の凸部又は凹部のうちの2つによって区画される帯状の部位と、を意味する。
【0012】
この構成によれば、帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布が、孔の延在方向から見た頭部の歪み又は頭部の細さを強調して反映するので、精度良く挿入の良好度を判定することができる。
【0013】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法の分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、周方向に延在する環状で帯状の部位であり、前記所定部位の寸法分布が、前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布であってもよい。
【0014】
前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布のばらつきに基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成されていてもよい。「幅寸法の分布のばらつき」として、標準偏差、平均偏差等が例示される。
【0015】
前記帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布の平均値に基づいて、前記挿入の良好度を判定するよう構成されていてもよい。
【0016】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法が、前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から撮像した撮像画像における、前記挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法であってもよい。
【0017】
この構成によれば、撮像画像の精細度に応じた良好な寸法精度と実質的に連続した寸法分布を得ることができる。
【0018】
前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から撮像した撮像画像を表す撮像データを取得する撮像データ取得部と、前記撮像データ取得部が取得した前記撮像データに基づいて、前記挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法分布を算出し、算出された前記所定部位の寸法分布に基づいて、前記挿入の良好度を判定する判定部と、を備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、具体的に、挿入部品の頭部の所定部位の寸法分布に基づいて、挿入の良好度を判定することができる。
【0020】
前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定することが、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定することであり、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位が、前記頭部の外周又は前記頭部の外周に沿って延在する環状の凸部又は凹部であり、前記所定部位の基準位置が、前記挿入部品の設計データから取得された前記所定部位の位置、又は前記挿入部品が前記孔に挿入されていない状態において前記胴部の延在方向から見た前記所定部位の位置であってもよい。
【0021】
この構成によれば、頭部の外周又は頭部の外周に沿って延在する環状の凸部又は凹部の位置の、挿入部品の設計データから取得されたこれらの部位の位置又は挿入部品が孔に挿入されていない状態において胴部の延在方向から見たこれらの部位の位置からの偏差が、孔の延在方向から見た頭部の歪み又は頭部の細さを反映するので、的確に挿入の良好度を判定することができる。
【0022】
前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の位置を表す位置データを取得する位置データ取得部と、前記基準位置を記憶する記憶部と、前記位置データ取得部が取得した前記位置データと前記記憶部に記憶された前記基準位置とに基づいて、前記挿入部品の前記頭部の所定部位の基準位置からの偏差を算出し、算出された前記所定部位の基準位置からの偏差に基づいて、前記挿入の良好度を判定する判定部と、を備えてもよい。
【0023】
この構成によれば、具体的に、挿入部品の頭部の所定部位の位置の規準位置からの偏差に基づいて、挿入の良好度を判定することができる。
【0024】
前記挿入部品が粘弾性体であり、前記胴部が粘弾性的に縮径して前記孔に挿入されることによって、前記頭部が変形してもよい。
【0025】
この構成によれば、孔への挿入の良否によって頭部の変形の態様が異なるので、本発明を好適に適用することができる。
【0026】
前記挿入部品が、前記胴部の先端に、当該胴部より太い抜け止め部を有していてもよい。
【0027】
この構成によれば、抜け止め部を有する分、孔に挿入部品を挿入しにくく、挿入不良が発生しやすいので、本発明が顕著な効果を奏する。
【0028】
前記挿入部品が、グロメット又はゴム栓であってもよい。
【0029】
この構成によれば、本発明を好適に適用することができる。
【0030】
前記孔がネジ孔であり、前記挿入部品がネジ部品であってもよい。
【0031】
この構成によれば、ネジ部品がネジ孔に傾いてねじ込まれる場合があるので、本発明を好適に適用することができる。
【0032】
また、本発明の他の形態(aspect)に係る挿入良好度判定装置は、前記孔に挿入された挿入部品を前記孔の延在方向から見た撮像画像を撮像し、撮像された撮像画像を表す撮像データを出力する撮像器と、上記のいずれかの挿入良好度判定器と、を備え、前記判定器は、前記撮像器から出力される撮像データに基づいて、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法又は位置を取得するように構成されている。
【0033】
この構成によれば、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することができる挿入良好度判定装置を提供することができる。
【0034】
また、本発明のさらなる他の形態(aspect)に係るロボットシステムは、前記挿入部品を前記作業対象の前記孔に挿入するエンドエフェクタを有するロボットアームを備えるロボットと、上記挿入良好度判定装置と、を備え、前記撮像器が前記エンドエフェクタ、前記ロボットアーム、又は前記ロボット以外の物体に設置されている。
【0035】
この構成によれば、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することができるロボットシステムを提供することができる。
【0036】
また、本発明のさらなる他の形態(aspect)に係る挿入良好度判定方法は、作業対象物に設けられた孔に挿入された挿入部品の当該孔への挿入の良好度を判定する判定方法であって、前記挿入部品は、少なくとも、前記孔に挿入不可能な大きさを有する頭部と、前記頭部から延伸する、前記孔に挿入可能な太さを有する柱状の胴部と、を有しており、
前記判定方法は、前記孔の延在方向に直交する方向における、前記孔に挿入された挿入部品の前記頭部の所定部位の寸法又は位置に基づいて、前記挿入の良好度を判定する工程を含む。
【0037】
この構成によれば、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することができる挿入良好度判定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明は、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することが可能な、挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る挿入良好度判定装置を備えるロボットシステムの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1の挿入良好度判定器装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、挿入部品が作業対象物の孔へ挿入された状態を示す断面図である。
図4図4は、挿入部品が作業対象物の孔へ傾いて挿入された状態を示す断面図である。
図5図5は、本発明の実施形態2に係る挿入良好度判定器装置の構成を示す機能ブロック図である。
図6図6は、挿入部品の他の例を示す斜視図である。
図7図7(a)~(f)は、各種の粘弾性部品である挿入部品が良好に挿入された場合における頭部の所定部位の孔の延在方向から見た形状を模式的に示す模式図である。
図8図8(a)~(f)は、各種の粘弾性部品である挿入部品が傾いて挿入された場合における頭部の所定部位の孔の延在方向から見た形状を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本発明を説明するための図であるので、本発明に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0041】
(実施形態1)
[構成]
図1は、本発明の実施形態1に係る挿入良好度判定装置を備えるロボットシステムの一例を示す斜視図である。図2は、図1の挿入良好度判定器装置の構成を示す機能ブロック図である。図3は、挿入部品が作業対象物の孔へ挿入された状態を示す断面図である。
【0042】
図1を参照すると、実施形態1に係るロボットシステム200は、挿入良好度判定器1と、位置センサ2と、ロボット3とを備える。挿入良好度判定器1と位置センサ2とが挿入良好度判定装置100を構成する。
【0043】
挿入良好度判定器1は、プロセッサPrとメモリMeとを含む。ロボット3は、エンドエフェクタ31を備える。エンドエフェクタ31は、部品挿入ツール32を有している。エンドエフェクタ31には、位置センサ2が取り付けられている。挿入良好度判定器1とロボット3とは、ケーブルCbによって、電気的に接続されていて、挿入良好度判定器1は、ケーブルCbとロボット3内の配線とを介して、位置センサ2と電気的に接続されている。挿入良好度判定器1と位置センサとが、挿入良好度判定装置100を構成している。
【0044】
図1及び図3を参照すると、ロボット3の近傍には、孔4aが形成された作業対象物4と、挿入部品置き場(不図示)が配置されている。ロボット3は、挿入部品置き場に置かれた挿入部品5(図3参照)をエンドエフェクタ31の部品挿入ツール32によって保持し、保持した挿入部品5を孔4aの延在方向から当該孔4aに挿入する。
【0045】
その後、挿入良好度判定器1が、位置センサ2が検知する位置データに基づいて、挿入部品5の挿入良好度を判定する。
【0046】
以下、ロボットシステム200の構成を、詳しく説明する。
【0047】
<作業対象物4>
作業対象物4は、特に限定されない。作業対象物4として、機器の筐体、車両のボディ、建築物、橋梁等の土木構造体等が例示される。以下では、作業対象物4が、車両のボディに使用される板金である場合が例示される。
【0048】
<孔4a>
挿入部品が挿入される孔4aであればよい。孔4aは、貫通孔及び有底孔のいずれでもよい。孔4aとして、配線が挿通される配線孔、組み立て時の位置決め孔、ネジ孔等が例示される。以下では、孔4aが板金である作業対象物4の位置決め孔である場合が例示される。孔4aは、例えば、各種の断面形状を有する柱状に形成される。孔4aは、ここでは、円柱状に形成されている。
【0049】
<挿入部品5>
図3を参照すると、挿入部品5は、作業対象物5の孔4aに挿入されて取り付けられるものであればよい。挿入部品5は、少なくとも、孔4aに挿入不可能な大きさを有する頭部5aと、頭部5aから延伸する、孔4aに挿入可能な太さを有する柱状の胴部5bと、を有する。挿入部品5は、胴部5bの先端に、当該胴部5bより太い抜け止め部5cを有していてもよい。挿入部品5として、グロメット、ゴム栓、ネジ部品(小ネジ、ビス、ボルト等を含む)等が例示される。
【0050】
グロメット、ゴム栓等の挿入部品5は、粘弾性体であり、胴部5bが粘弾性的に縮径して孔4aに挿入されることによって、頭部5aが後述するように変形する。このような粘弾性体の挿入部品5は、孔4aへの挿入の良否によって頭部5の変形の態様が異なるので、本発明を好適に適用することができる。
【0051】
ここで、「挿入」は、孔4aへ挿入部品5を、隙間を有して入れること、孔4aへ挿入部品5を篏合すること、孔4aへ挿入部品5を圧入すること、及びネジ孔へネジ部品をネジ込むことを含む。
【0052】
以下では、挿入部品5がゴム栓である場合が例示される。このゴム栓である挿入部品5は、図3に示すように、全体として、円柱状に形成されている。具体的には、この挿入部品5は、孔4aへの挿入方向を下方向としたとき、短円柱状の頭部5aと、頭部5aより小径の胴部5bと、頭部5aと略同径の円板状の抜け止め部5cとを有していて、頭部5aは、上面が丸みを帯びるように形成されており、抜け止め部5cは、下面が丸みを帯びるように形成されている。そして、抜け止め部5cの下面の中央部に開口し、頭部の中程まで延びるように円柱状の空孔5dが形成されている。この空孔5dは、挿入部品5が孔4aに挿入されたときに胴部5bを縮径しやすくするために形成されている。この空孔5dの存在により、挿入部品5が孔4aに傾いて挿入されたときに頭部5aが変形しやすくなる。また、抜け止め部5cは、挿入部品5が孔4aに挿入されにくくなる要因となり、ひいては、挿入の良好度を低下させる要因となる。
【0053】
<ロボット3>
ロボット3は、エンドエフェクタ31を装着できるものであればよい。ロボット3として、垂直多関節型ロボット、水平多関節型ロボット、パラレルリンク型ロボット、直角座標型ロボット、極座標型ロボット等が例示される。
【0054】
以下では、ロボット3は、ここでは、垂直多関節型ロボットであり、手首にエンドエフェクタ31が装着され。
【0055】
ロボット3は、制御プログラムによって自動で動作してもよく、操作者の操作によって手動で動作してもよい。以下では、ロボット3が制御プログラムによって自動で動作する場合が例示される。
【0056】
<エンドエフェクタ31>
図1を参照すると、エンドエフェクタ31は、挿入部品5を保持し、それを孔4aに挿入可能なものであればよい。ここでは、エンドエフェクタ31は、部品挿入ツール32を備える。部品挿入ツール32は、例えば、柱状に形成され、先端に挿入部品5の頭部の上面の形状に対応する形状の凹部が形成されている。部品挿入ツール32は、内部に空気吸入経路が形成されていて、先端に挿入部品5を吸着できるように構成されている。エンドエフェクタ31は、ロボット3の手首3aの捩じり軸に平行に方向に延在するように設けられている。エンドエフェクタ31は、部品挿入ツール32の先端に挿入部品5を吸着して保持し、それを、作業対象物4の孔4に、孔4aの延在方向(軸方向)において挿入する。
【0057】
<位置センサ2>
位置センサ2は、例えば、ロボット3のエンドエフェクタ31、ロボットアーム、又は、ロボット3以外の物体に取り付けられる。位置センサ2は、ここでは、ロボット3のエンドエフェクタ31に取り付けられている。位置センサ2は、ここでは、位置検知方向が手首3aの捩じり軸に平行になるように設けられている。
【0058】
位置センサ2として、非接触式変位センサ、画像センサ、撮像器(カメラ)等が例示される。実施形態1では、位置センサ2が、レーザ式変位センサである場合が例示される。位置センサ2は、後述する挿入部品5の頭部の、孔4aの延在方向に直交する方向における所定部位の位置を検知し。検知した位置を表す位置データを出力する。
【0059】
<挿入良好度判定器1>
図1を参照すると、挿入良好度判定器1は、位置センサ2が検知する位置データに基づいて、挿入部品5の挿入良好度を判定するよう構成されている。挿入良好度判定器1は、プロセッサPrとメモリMeとを備える。
【0060】
図2を参照すると、挿入良好度判定器1は、入力部12と、記憶部13と、位置データ取得部14と、判定部15と、出力部16と、を含む。記憶部13と、位置データ取得部14と、判定部15とが、プロセッサPr及びメモリMe含む演算器11で構成される。演算器は、例えば、コンピュータ、マイクロコントローラで構成される。プロセッサPrは、例えば、CPU、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で構成される。メモリMeは、例えば、ROM、RAM、外部記憶装置(ハードディスク)等で構成される。位置データ取得部14及び判定部15は、メモリMeに格納された所定の解析プログラムをプロセッサPrが読み出して実行することにより実現される機能ブロックである。記憶部13は、メモリMeによって構成される。入力部12及び出力部16は、例えば、コンピュータの周辺機器で構成される。入力部12は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク等で構成される。出力部16は、例えば、ディスプレイ、プリンタ、モデム、スピーカー等で構成される。
【0061】
入力部12は、ここでは、例えば、ロボット3の操作者が、後述する所定部位の基準位置を入力するのに用いられる。記憶部は、ここでは、入力部12から入力された基準位置を記憶する。ここで、所定部位の基準位置は、例えば、挿入部品5の設計データから取得された所定部位の位置、又は挿入部品5が孔4aに挿入されていない状態において胴部5bの延在方向から見た所定部位の位置である。
【0062】
位置データ取得部14は、位置センサ2から出力される位置データを取得する。
【0063】
判定部15は、位置データ取得部14で取得された位置データと記憶部13から読み出した基準位置との偏差に基づいて挿入部品5の挿入良好度を判定する。ここでは、挿入良好度として、「良好(合格又は正常)」と「不良(不合格又は異常)」とを判定するが、挿入良好度を、3以上のランクで表して、該当するランクを判定してもよい。
【0064】
出力部16は、この判定結果を出力する。
【0065】
[動作]
次に以上のように構成されたロボットシステム200の動作(挿入良好度判定方法)を説明する。図7(a)~(f)は、各種の粘弾性部品である挿入部品が良好に挿入された場合における頭部の所定部位の孔の延在方向から見た形状を模式的に示す模式図である。図8(a)~(f)は、各種の粘弾性部品である挿入部品が傾いて挿入された場合における頭部の所定部位の孔の延在方向から見た形状を模式的に示す模式図である。
【0066】
図1図4を参照すると、ロボット3は、エンドエフェクタ31の部品挿入ツール32に挿入部品5を保持し、それを作業対象物4の孔4aに、当該孔4aの延在方向において挿入する。
【0067】
図3を参照すると、挿入部品5が良好に(正常に)挿入された場合、挿入部品5は、胴部5bの延在方向が孔4の延在方向に一致するように作業対象物4に取り付けられる。この場合、孔4aの延在方向から見た挿入部品5の頭部5aの形状は、図7(a)に示すように、挿入部品5が孔4aに挿入されていない状態又は設計データ上の頭部の形状と相似形になる。図7(a)において、P1~P4は頭部5aの所定部位を示す。なお、このように挿入部品5が粘弾性体である場合、挿入部品が良好に挿入されると、頭部5aは、元の状態より小さくなる。従って、挿入部品5が、全体的に浮いた状態に挿入されると、頭部5aは、元の状態よりあまり小さくならない。
【0068】
一方、図4を参照すると、挿入部品5が傾いて(不良に(異常に))挿入された場合、挿入部品5は、頭部5aが孔4の延在方向に対して傾いて作業対象物4に取り付けられる。この場合、孔4aの延在方向から見た挿入部品5の頭部5aの形状は、図8(a)に示すように、挿入部品5が孔4aに挿入されていない状態又は設計データ上の頭部の形状から歪んだ形状になる。図8(a)において、P1~P4は頭部5aの所定部位を示す。
【0069】
次いで、ロボット3は、例えば、孔4aの延在方向において当該孔4aから離れた所定位置において、位置センサ2を、孔4aの中心において互いに直交する2つの直径方向に動かす。この2つの直径方向は、例えば、図7(a)及び図8(a)において、所定部位P1と所定部位P3とを結ぶ方向及び所定部位P1と所定部位P4とを結ぶ方向であると仮定する。
【0070】
位置センサ2は、自身と、挿入部品5が挿入された作業対象物4との距離(作業対象物4の表面の高さ)を、順次、一連の位置データとして出力する。
【0071】
位置データ取得部14は、位置センサ2から順次出力されるこの一連の位置データを取得する。
【0072】
判定部15は、この一連の位置データにおける、位置センサ2と作業対象物4との距離(作業対象物4の表面の高さ)の変化から、所定部位P1~P4を抽出し、その位置を特定する。この所定部位P1~P4の位置は、例えば、位置センサ2の位置(ロボット3の座標系で特定できる)と位置センサ2と所定部位P1~P4のそれぞれとの距離に基づいて特定する。
【0073】
次いで、判定部15は、所定部位P1~P4と、所定部位P1~P4の基準位置との偏差を算出する。この偏差は、挿入部品5が良好に挿入された場合には、一定の程度小さくなり、挿入部品5が傾いて(不良に)挿入された場合には、大きくなる。また、挿入部品5が、全体的に浮いた状態で挿入されると、この偏差はあまり小さくならない。
【0074】
そこで、判定部15は、この偏差が、所定の範囲内にある場合に、挿入良好度が良好(正常)であると判定し、この偏差が所定の範囲から外れる場合に、挿入良好度が不良(異常)であると判定する。
【0075】
なお、上記では、所定部位として、頭部5aの外周上の特定部位を用いたが、図6(a)及び(b)に示すような挿入部品5の頭部5aの外周に沿って延在する環状の凸部5e又は凹部5d上の特定部位を用いてもよい。また、挿入部品5がネジ部品であってもよい。
【0076】
以上に説明したように、実施形態1によれば、頭部5aの外周又は頭部5の外周に沿って延在する環状の凸部又は凹部の位置の、挿入部品5の設計データから取得されたこれらの部位の位置又は挿入部品5が孔4aに挿入されていない状態において胴部5bの延在方向から見たこれらの部位の位置からの偏差が、孔4aの延在方向から見た頭部5aの歪み又は頭部5aの細さを反映するので、的確に挿入の良好度を判定することができる。
【0077】
また、簡易に挿入良好度を判定することができる。
【0078】
(実施形態2)
本発明の実施形態2は、位置センサ2が撮像器2Aであり、判定部15が、頭部5aの所定部位の寸法分布に基づいて、挿入良好度を判定する点で実施形態1と相違し、これ以外の点は、実施形態1と同様である。以下、この相違点を説明する。
図5は、本発明の実施形態2に係る挿入良好度判定器装置の構成を示す機能ブロック図である。
【0079】
図2を参照すると、実施形態2の挿入良好度判定装置100A、は、位置センサとしての撮像器2Aと挿入良好度判定器1Aとで構成される。
【0080】
撮像器2Aは、例えば、単眼カメラ又は立体カメラで構成される。撮像器2Aは、作業対象物4の孔4a挿入された挿入部品5を孔4aの延在方向から撮像し、撮像した撮像画像を表す撮像データを出力する。
【0081】
撮像データ取得部14Aは、この撮像データを取得する。
判定部15は、撮像データ取得部14Aが取得した撮像データに基づいて、挿入部品5の頭部5aの所定部位の寸法分布を算出し、算出された所定部位の寸法分布に基づいて、挿入の良好度を判定する。
【0082】
以下、これを詳しく説明する。図6は、挿入部品5の他の例を示す斜視図である。図6(a)は、グロメット5を示す。グロメット5は、全体として図3のゴム栓5と同様の形状を有している。但し、このグロメット5は、中心部に、配線が挿通される貫通孔5dを有している。グロメット5を胴部5bの延在方向から見た場合(以下、平面視という)、頭部5aの外周と貫通孔5dの外周との間に環状(ここでは円環状)の帯状の部位が存在する。
【0083】
図6(b)は、膜付きグロメットを示す。この膜付きグロメット5は、頭部5aに環状の凸部5eを有している。この凸部5eの内側の部分は膜部5fであり、膜付きグロメット5が作業対象物4に取り付けられた後、膜部5fを除去して配線等が挿通される。この膜付きグロメット5を平面視した場合、頭部5aの外周と凸部5fの外周との間に環状(ここでは円環状)の帯状の部位が存在する。
【0084】
ここで、図7(a)~(f)は、挿入部品5が良好に挿入された場合に、頭部5aの平面視形状を模式的に示すが、以下、便宜的にこれらの図を利用して、各種の挿入部品5の頭部の平面視形状を説明する。
【0085】
実施形態2では、この帯状の部位が所定部位である。また、図3に示すゴム栓5の場合、平面視における頭部5aの形状は、図7(a)に示すように、円形であるが、実施形態2では、これを頭部5aの外周と頭部5aの中心との間に周方向に延在する帯状の部位として扱う。この場合、図7(a)に矢印で示すように、半径がこの帯状の部位の幅寸法になる。
【0086】
図7(b)は、上述のグロメット5及び膜付きグロメット5の帯状の部位の概念図を示す。
【0087】
孔4aは、種々の断面形状を有するが、グロメット5、膜付きグロメット、及びゴム栓5は、孔4aの種々の断面形状に概ね相似する平面視形状の頭部5aを有する。図7(c)~(f)にこれらの孔4aの種々の断面形状に概ね相似する頭部5aの平面視形状を示す。
【0088】
以上の説明を一般化すると、実施形態2では、孔4aに挿入された挿入部品5の頭部5の所定部位が、頭部5aの外周及び当該外周に沿って延在する凸部又は凹部によって規定される帯状の部位であり、所定部位の寸法分布が、この帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布である。ここで、「頭部5aの外周及び当該外周に沿って延在する凸部又は凹部によって規定される帯状の部位」とは、孔4aの延在方向から見て、頭部5aの外周と頭部5aの中心とによって区画され、当該外周に沿って延在する帯状の部位と、当該外周及び当該外周に沿って延在する1以上の凸部又は凹部のうちの2つによって区画される帯状の部位と、を意味する。
【0089】
図8(a)~(f)は、各種の粘弾性部品である挿入部品5が傾いて挿入された場合における頭部5aの帯状の部位の平面視形状を模式的に示す模式図である。図8(a)~(f)は、それぞれ、図7(a)~(f)に対応している。なお、図7(a)~(f)及び図8(a)~(f)において、矢印は幅寸法を示す。
【0090】
図6(a)及び(b)に示すように、挿入部品5の頭部5aの帯状の部位の幅寸法は、その延在方向において概ね均一である。従って、粘弾性部品である挿入部品5が傾いて挿入された場合、孔の延在方向から見て頭部が歪む。又、ネジ部品の場合には、頭部が細くなる。この場合、帯状の部位の延在方向における幅寸法の分布は、延在方向から見た頭部5の歪み又は頭部の細さを強調して反映するので、精度良く挿入の良好度を判定することができる。しかも、孔4aの延在方向から見て頭部が歪み、又は頭部が細くなる場合、挿入部品5の頭部5aの帯状の部位の寸法の分布が、その歪又は細さに応じた分布になる。従って、頭部5aの帯状の部位の寸法の分布のみ基づいて、挿入の良好度を判定することができる。
【0091】
具体的には、判定部15は、例えば、画像処理によって撮像データから帯状の部位を抽出し、抽出した帯状の部位の延在方向において所定の間隔で複数の幅寸法を算出し、この複数の幅寸法の平均値及び標準偏差を算出する。挿入部品5が傾いて挿入された場合は、この標準偏差が大きくなるので、判定部15は、標準偏差が所定の閾値標準偏差より大きい場合は、挿入良好度判定が不良(異常)であると判定し、そうでない場合は、挿入良好度が良好(正常)であると判定する。
【0092】
一方、挿入部品5が浮いて挿入された場合は、この平均値が大きくなるので、判定部15は、平均値が所定の閾値平均値より大きい場合は、挿入良好度判定が不良(異常)であると判定し、そうでない場合は、挿入良好度が良好(正常)であると判定する。所定の閾値標準偏差及び所定の閾値平均値は、実験、シミュレータ、計算等によって決定される。
【0093】
なお、挿入部品5がネジ部品であってもよい。この場合も上記と同様にして、挿入良好度を判定することができる。
【0094】
以上に説明したように、実施形態2によれば、簡易に挿入良好度を判定することができる。
【0095】
(その他の実施形態)
実施形態1において、挿入部品がグロメット、膜付きグロメットであってもよい。
【0096】
実施形態2において、幅寸法の閾値標準偏差に代えて、幅寸法のばらつきを用いてもよい。例えば、幅寸法の平均偏差を用いてもよい。
【0097】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法は、挿入部品の被挿入孔への挿入の良好度を簡易に判定することが可能な、挿入良好度判定器、挿入良好度判定装置、ロボットシステム、及び挿入良好度判定方法として有用である。
【符号の説明】
【0099】
1 挿入良好度判定器
2 位置センサ
3 ロボット
3a 手首
4 作業対象物
4a 孔
5 挿入部品
5a 頭部
5b 胴部
5c 抜け止め部
5d 空孔(凹部、貫通孔)
5e 凸部
5f 膜部
11 演算器
12入力部
13 記憶部
14 位置データ取得部
14A 撮像データ取得部
15 判定部
16出力部
31 エンドエフェクタ
32 部品挿入ツール
100、100A 挿入良好度判定装置
200 ロボットシステム
Pr プロセッサ
Me メモリ
P1~P4 所定部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8