(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】基地局装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/07 20100101AFI20231204BHJP
G01S 19/43 20100101ALN20231204BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/43
(21)【出願番号】P 2020025717
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】岡村 信行
(72)【発明者】
【氏名】船山 正行
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0011570(US,A1)
【文献】特開2007-267023(JP,A)
【文献】特開2018-105707(JP,A)
【文献】特開2018-025924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の設置地点を基準点として移動局の測定位置を補正する補正情報を生成する基地局装置であって、
前記基地局装置の傾斜角度を取得する傾斜取得部と、
前記取得された傾斜角度が予め設定された角度閾値以上である場合、前記補正情報による測定位置の補正を停止させる停止情報を前記移動局へ送信する変動処理部と
を備える基地局装置。
【請求項2】
前記基地局装置の移動距離を取得する移動距離取得部を更に備え、
前記変動処理部は、前記取得された移動距離が予め設定された距離閾値以上である場合、前記補正情報による測定位置の補正を停止させる停止情報を前記移動局に送信することを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記補正情報を前記移動局へ送信する送信部を更に備え、
前記変動処理部は、前記傾斜角度が前記角度閾値以上である場合、または前記移動距離が前記距離閾値以上である場合、前記移動局への前記補正情報の送信を前記送信部に停止させることを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記変動処理部は、前記傾斜角度が前記角度閾値以上である場合、または前記移動距離が前記距離閾値以上である場合、前記基地局装置の電源を切断することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記傾斜取得部は、前記基地局装置に設けられた加速度センサの検出値に基づいて算出された前記基地局装置の傾斜角度を取得することを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記移動距離取得部は、前記基地局装置に設けられた加速度センサの検出値に基づいて算出された前記基地局装置の移動距離を取得することを特徴とする請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の基地局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、GNSS(Global Navigation Satellite System)による測定位置を補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GNSSによって測定された移動体の測定位置の精度を向上させる技術としてRTK(RealTime Kinematic)‐GNSSが知られている。このRTK-GNSSは、移動体に備えられたGNSS受信機である移動局と、移動体と通信可能な地点に設置された基地局(固定局)とを備え、基地局において生成された補正情報を用いて移動局による測定位置を補正するシステムである。
【0003】
なお、関連する技術として、移動局との間で無線通信を行う通信用アンテナと、測位衛星から測位信号を受信する測位用アンテナと、測位用アンテナ及び通信用アンテナの作動を制御する制御ユニットとを備えた基準局装置であって、制御ユニット及び測位用アンテナが取り付けられた基準局本体と、通信用アンテナを基準局本体よりも上方に支持する通信用アンテナ支持体と、基準局本体に対して通信用アンテナ支持体を着脱自在に取り付ける通信用アンテナ取付部とを備えた基地局装置、が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RTK-GNSSにおいて基地局として機能する基地局装置では、補正情報の生成に先立って、自位置の測定位置が基準点として算出されるが、移動局の位置を高い精度で補正する補正情報を生成するためには、まず基準点としての測定位置を高い精度で算出する必要がある。
【0006】
基地局装置が測定位置の算出や補正情報の生成を高い精度で行うためには、基地局装置が移動体と通信可能な地点に、支持体となる三脚やポール等に固定され、その地点から動くことがないようにされている必要がある。そのため、傾斜または移動などの不所望な変動が基地局装置に生じた場合には、変動した基準点における補正情報が算出されることとなり、これによって移動局において誤作動が生じる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するために為されたものであり、基準点の変動による移動局の誤作動を防止することができる基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本実施形態の基地局装置は、所定の設置地点を基準点として移動局の測定位置を補正する補正情報を生成する基地局装置であって、前記基地局装置の傾斜角度を取得する傾斜取得部と、前記取得された傾斜角度が予め設定された角度閾値以上である場合、前記補正情報による測定位置の補正を停止させる停止情報を前記移動局へ送信する変動処理部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基準点の変動による移動局の誤作動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る基地局装置の構成を示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る基地局装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る基地局装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】変動対応処理の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(基地局装置のハードウェア構成)
まず、本実施形態に係る基地局装置のハードウェア構成について説明する。
図1は、基地局装置の構成を示す概略図である。
図2は、基地局装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る基地局装置1は、RTKにおける基地局(固定局)として機能する装置であり、GNSS信号(測位信号)に基づいて生成した補正情報を移動局に送信する機能を有し、支持体2により所定の地点に支持される。支持体2は、長尺のポールとして形成されており、上端側が基地局装置1を固定的に接続可能に構成されており、下端側を設置面に突き刺すことによって、基地局装置1を所定の地点に支持する。
【0014】
基地局装置1は、
図2に示すように、ハードウェアとして、MPU(Micro Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、記憶装置13、無線通信部14、GNSS受信機15、加速度センサ16を備える。MPU11及びRAM12は、協働して後述する各種機能を実行し、記憶装置13は各種機能により実行される処理に用いられる各種データを記憶する。GNSS受信機15はGNSS衛星群から送出されたGNSS信号を受信する。無線通信部14は移動局へ補正情報を送信する。加速度センサ16は、例えば略水平面に平行して直交する2軸方向の加速度を検知するように設けられた2軸加速度センサや、1軸が基地局装置1の鉛直方向を向くように設けられた3軸加速度センサであり、検出された加速度に基づいて基地局装置1の傾斜や移動を算出する。なお、ここでの傾斜とは、基地局装置1の鉛直方向に対する傾斜とする。
【0015】
(基地局装置の機能構成)
基地局装置の機能構成について説明する。
図3は、基地局装置の機能構成を示すブロック図である。
【0016】
図3に示すように、基地局装置1は、機能として、信号取得部101、算出部102、生成部103、送信部104、傾斜取得部105、移動距離取得部106、変動処理部107を備える。
【0017】
信号取得部101は、GNSS受信機15により受信されたGNSS信号を取得する。算出部102は、信号取得部101により取得されたGNSS信号に基づいて測位座標を算出する。生成部103は、算出部102により算出された測位座標に基づいて、移動局における測定位置を補正するための補正情報を生成する。送信部104は、生成部103により生成された補正情報を無線通信部14により移動局へ送信する。
【0018】
傾斜取得部105は、加速度センサ16により検出された検出値に基づいて基地局装置1の傾斜角度を算出して取得する。移動距離取得部106は、加速度センサ16により検出された検出値に基づいて基地局装置1の移動距離を算出して取得する。
【0019】
変動処理部107は、傾斜取得部105が取得した基地局装置1の傾斜角度と、移動距離取得部106が取得した基地局装置1の移動距離とに応じて、送信部104を介して移動局へ補正情報による測定位置の補正を停止させる停止情報を送信し、送信部104に補正情報の送信を停止させ、基地局装置1の電源を切断する。
【0020】
(基地局装置の補正情報生成に係る動作)
基地局装置の動作について説明する。ここではまず、基地局装置の補正情報生成に係る動作について説明する。なお、GNSS信号は必要に応じて取得されているものとする。
【0021】
まず、算出部102は、信号取得部101により取得されたGNSS信号に基づいて測位座標を算出し、次に、生成部103は、算出部102により算出された測位座標を基準点とした補正情報を生成する。そして、送信部104は、生成部103により生成された補正情報を移動局へ送信する。
【0022】
(変動対応処理)
次に、変動対応処理の動作について説明する。
図4は、変動対応処理の動作を示すフローチャートである。なお、この変動対応処理は周期的に実行されるものとする。
【0023】
まず、傾斜取得部105は、加速度センサ16により検出された検出値に基づいて基地局装置1の傾斜角度を算出して取得する(S101)。次に、移動距離取得部106は、加速度センサ16により検出された検出値に基づいて基地局装置1の移動距離を算出して取得する(S102)。
【0024】
次に、変動処理部107は、傾斜取得部105により取得された基地局装置1の傾斜角度が予め設定された角度閾値以上であるか否かを判定する(S103)。
【0025】
基地局装置1の傾斜角度が角度閾値以上である場合(S103,YES)、変動処理部107は、送信部104を介して移動局へ停止情報を送信し(S105)、送信部104に補正情報の送信を停止させ(S106)、基地局装置1の電源を切断する(S107)。
【0026】
一方、基地局装置1の傾斜角度が角度閾値以上ではない場合(S103,NO)、変動処理部107は、移動距離取得部106により取得された基地局装置1の移動距離が予め設定された距離閾値を超えているか否かを判定する(S104)。
【0027】
基地局装置1の移動距離が距離閾値以上である場合(S104,YES)、変動処理部107は、送信部104を介して移動局へ停止情報を送信し(S105)、送信部104に補正情報の送信を停止させ(S106)、基地局装置1の電源を切断する(S107)。
【0028】
一方、基地局装置1の移動距離が距離閾値以上ではない場合(S104,NO)、変動対応処理が終了される。
【0029】
このように、基地局装置1が傾斜または移動した際に、移動局への停止情報の送信、補正情報の送信の停止、または、基地局装置1の電源の切断を行うことによって、変動が生じた基地局装置1により送信される補正情報に基づいて移動局が誤作動を起こすことを防止することができる。
【0030】
また、RTKの運用終了時に基地局装置1を支持体2から引き抜いたり、基地局装置1を傾斜させたりするだけで基地局装置1の電源が切れるため、基地局装置1の電源の切り忘れを防止でき、更には迅速に作業を終了することができる。
【0031】
また、基地局装置1の運搬中に電源スイッチが誤って押されても、基地局装置1がすぐに自己の傾斜や移動を検出して電源を自動的に切るため、基地局装置1のバッテリを不必要に消耗したり、基地局装置1から不要な電波が発されたりすることを防止できる。
【0032】
なお、本実施形態では基地局装置1の傾斜角度の検出や移動距離の取得に加速度センサを用いているが、代わりに傾斜スイッチ等を用いて、基地局装置1の傾斜角度が角度閾値を超えた場合にその傾斜スイッチ等が切り替わるようにし、変動処理部107がその傾斜スイッチ等が切り替わった場合に送信部104を介して移動局へ停止情報を送信し、送信部104に補正情報の送信を停止させ、基地局装置1の電源を切断するようにすることによっても、基地局装置1が傾斜した際の移動局の誤作動を防止することができる。
【0033】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 基地局装置
105 傾斜取得部
106 移動距離取得部
107 変動処理部