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特許7395387流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法
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  • 特許-流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法 図1
  • 特許-流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法 図2
  • 特許-流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20231204BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
G01N35/08 B
G01N37/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020038743
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021139794
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誠一郎
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-044678(JP,A)
【文献】特表2014-518768(JP,A)
【文献】特開2003-181255(JP,A)
【文献】特開2009-166039(JP,A)
【文献】特開2010-139491(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0353963(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/08
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1粘度の第1液体を流すための第1液体流路と、
前記第1粘度よりも高い粘度の第2粘度の第2液体を流すための第2液体流路と、
前記第1液体流路と、前記第2液体流路とが接続され、前記第1液体および前記第2液体を合流させるための合流部と、
搬送流体を流すための第1搬送流体流路と、
前記搬送流体を流すための第2搬送流体流路と、
前記合流部と、前記第1搬送流体流路と、前記第2搬送流体流路とが接続され、前記第1液体および前記第2液体を前記搬送流体で区画して前記第1液体および前記第2液体の液滴が前記搬送流体中に分散した液滴含有液を生成するための生成部と、
前記生成部に接続され、前記液滴含有液を流すための液滴流路と、
を有し、
前記第1液体流路および前記第1搬送流体流路は、前記合流部および前記生成部を通る直線で流体取扱装置を2つに区分けした場合に一方の側に配置されており、
前記第2液体流路および前記第2搬送流体流路は、前記合流部および前記生成部を通る直線で流体取扱装置を2つに区分けした場合に他方の側に配置されており、
前記第1搬送流体流路および前記第2搬送流体流路は、前記液滴含有液を生成するときに前記第2搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量が前記第1搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量よりも多くなるように構成されている、
流体取扱装置。
【請求項2】
前記第1液体流路の上流端に接続された第1液体導入部と、
前記第2液体流路の上流端に接続された第2液体導入部と、
前記第1搬送流体流路の上流端に接続された第1搬送流体導入部と、
前記第2搬送流体流路の上流端に接続された第2搬送流体導入部と、
前記液滴流路の下流端に接続された液滴回収部と、
をさらに有する、
請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体取扱装置と、
前記第1液体流路内の前記第1液体と、前記第2液体流路内の前記第2液体と、前記第1搬送流体流路内の前記搬送流体と、前記第2搬送流体流路内の前記搬送流体とを前記液滴流路に向かって移動させる移動装置と、
を有する、
流体取扱システム。
【請求項4】
前記移動装置は、前記液滴流路の内部を負圧にすることにより、前記第1液体流路内の前記第1液体と、前記第液体流路内の前記第2液体と、前記第1搬送流体流路内の前記搬送流体と、前記第2搬送流体流路内の前記搬送流体とを前記液滴流路に向かって移動させる減圧装置である、請求項3に記載の流体取扱システム。
【請求項5】
前記移動装置は、前記第1液体流路、前記第2液体流路、前記第1搬送流体流路および前記第2搬送流体流路の内部を加圧することにより、前記第1液体流路内の前記第1液体と、前記第2液体流路内の前記第2液体と、前記第1搬送流体流路内の前記搬送流体と、前記第2搬送流体流路内の前記搬送流体とを前記液滴流路に向かって移動させる加圧装置である、請求項3に記載の流体取扱システム。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の流体取扱装置を使用した、前記第1液体および前記第2液体を前記搬送流体で区画して前記第1液体および前記第2液体の液滴が前記搬送流体中に分散した液滴含有液の製造方法であって、
前記液滴含有液を生成するときに、前記第2搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量が前記第1搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量よりも多くなるように前記搬送流体を送液する、
液滴含有液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床検査、食物検査、環境検査などでは、細胞、タンパク質、核酸などの微量な被分析物の高精度な分析が要求されることがある。微量な被分析物の分析を行う手法の一つとして、被分析物を含む液体から、直径が0.1~1000μmの微小な液滴(「ドロップレット」ともいう)を生成し、これを観察したり分析したりする手法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、サンプルが流れるための分散相供給チャンネルと、オイルが流れるための第1のマイクロチャンネルと、オイルが流れるための第2のマイクロチャンネルとを有する、微小液滴の製造装置が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載の微小液滴の製造装置では、流れるサンプルに対してオイルを挟み込むように流して、流れるサンプルを分断することにより微小液滴を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2002/068104号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載の微小液滴の製造装置で、粘度の異なる2種類の液体を用いて液滴を製造することが考えられる。この場合、溶液が流路の内壁に接触してしまい、サンプルの液滴を適切に製造できなくなることがある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、粘度の異なる2種類の液体を用いても、搬送流体に液体の液滴が分散した液滴含有液を安定に製造できる流体取扱装置を提供することである。また、本発明の別の目的は、当該流体取扱装置を有する流体取扱システムを提供することである。さらに、本発明の別の目的は、流体取扱装置または流体取扱システムを用いた液滴含有液の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流体取扱装置は、第1粘度の第1液体を流すための第1液体流路と、前記第1粘度と異なる粘度の第2粘度の第2液体を流すための第2液体流路と、前記第1液体流路と、前記第2液体流路とが接続され、前記第1液体および前記第2液体を合流させるための合流部と、搬送流体を流すための第1搬送流体流路と、前記搬送流体を流すための第2搬送流体流路と、前記合流部と、前記第1搬送流体流路と、前記第2搬送流体流路とが接続され、前記第1液体および前記第2液体を前記搬送流体で区画して前記第1液体および前記第2液体の液滴が前記搬送流体中に分散した液滴含有液を生成するための生成部と、前記生成部に接続され、前記液滴含有液を流すための液滴流路と、を有し、前記第1液体流路および前記第1搬送流体流路は、前記合流部および前記生成部を通る直線で流体取扱装置を2つに区分けした場合に一方の側に配置されており、前記第2液体流路および前記第2搬送流体流路は、前記合流部および前記生成部を通る直線で流体取扱装置を2つに区分けした場合に他方の側に配置されており、前記第1搬送流体流路および前記第2搬送流体流路は、前記液滴含有液を生成するときに前記第2搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量が前記第1搬送流体流路を流れる前記搬送流体の流量よりも多くなるように構成されている。
【0009】
本発明の流体取扱システムは、本発明の流体取扱装置と、前記第1液体流路内の前記第1液体と、前記第2液体流路内の前記第2液体と、前記第1搬送流体流路内の前記搬送流体と、前記第2搬送流体流路内の前記搬送流体とを前記液滴流路に向かって移動させる移動装置と、を有する。
【0010】
本発明の液滴の製造方法は、本発明の流体取扱装置を使用した、第1液体および第2液体を搬送流体で区画して前記第1液体および前記第2液体の液滴が前記搬送流体中に分散した液滴含有液の製造方法であって、前記液滴含有液を生成するときに、第2搬送流体流路を流れる搬送流体の流量が第1搬送流体流路を流れる搬送流体の流量よりも多くなるように前記搬送流体を送液する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体取扱装置は、粘度の異なる2種類の液体を用いても、安定して液滴含有液を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る流体取扱システムの構成を示す図である。
図2図2A、Bは、流体取扱装置および基板の構成を示す図である。
図3図3A、Bは、本実施の形態に係る流体取扱システムの効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る流体取扱装置、流体取扱システムおよび液滴含有液の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(流体取扱システムおよび流体取扱装置の構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る流体取扱システム100の構成を示す模式図である。なお、図1では、流体取扱装置110は断面で示している。図2A、Bは、流体取扱装置110および基板112の構成を示す図である。図2Aは、流体取扱装置110の平面図であり、図2Bは、基板112の底面図である。
【0015】
図1に示されるように、流体取扱システム100は、流体取扱装置110と、送液装置160とを有する。
【0016】
流体取扱装置110は、フィルム111および基板112から構成されており、基板112の一方の面にフィルム111が接合されている。フィルム111および基板112で囲まれた領域は、第1液体、第2液体、搬送流体、液滴含有液などを流すための流路となる。流体取扱装置110は、第1液体導入部121と、第1液体流路122と、第2液体導入部123と、第2液体流路124と、合流部125と、第1搬送流体導入部126と、第1搬送流体流路127と、第2搬送流体導入部128と、第2搬送流体流路129と、生成部130と、液滴流路131と、液滴回収部132とを有する。第1液体流路122および第1搬送流体流路127は、合流部125および生成部130を通る直線で流体取扱装置110を2つに区分けした場合に一方の側に配置されており、第2液体流路124および第2搬送流体流路129は、合流部125および生成部130を通る直線で流体取扱装置110を2つに区分けした場合に他方の側に配置されている。
【0017】
第1液体は、液滴として選別したい液体、または、液滴内に封入して選別したい被選別物を含む液体である。第1液体の例には、細胞、タンパク質、または核酸などを含む液体が含まれる。また、第1液体は、上記の細胞、タンパク質、または核酸などなどの被選別物を分散させるための分散溶媒を含んでいてもよい。第1液体の第1粘度は、特に限定されない。第1液体の25℃で落急式粘度計(ヘップラーの落球原理に基づく方法)にて測定される第1粘度は、1.0~3.0mPa・s程度である。
【0018】
第2液体は、第1粘度よりも高い第2粘度である。第2液体は、第1液体とともに液滴として選別したい液体、または、液滴内に封入して選別したい被選別物を含む液体である。第2液体の例には、磁性ビーズ、界面活性剤、密度調整液、細胞、核酸、などを含む液体が含まれる。また、第2液体は、磁性ビーズ、蛍光ビーズ、など被選別物を分散させるための分散溶媒を含んでいてもよい。第2液体の第2粘度は、第1粘度よりも高ければ、特に限定されない。第2液体の25℃で落急式粘度計(ヘップラーの落球原理に基づく方法)にて測定される第2粘度は、1.5~3.0mPa・s程度である。
【0019】
搬送流体は、サンプルに衝突することでサンプルを区画する。搬送流体の例には、オイルが含まれる。オイルの例には、鉱物油やシリコーンオイルなどの常温で液状の各種オイルが含まれる。
【0020】
基板112は、透明な略矩形の樹脂基板である。基板112の厚さは、特に限定されないが、例えば1~10mmである。基板112の材料は、特に限定されず、公知の樹脂およびガラスから適宜選択されうる。基板112の材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレンおよび、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーが含まれる。
【0021】
基板112には、複数の流路溝と、複数の貫通孔が形成されている。基板112には、第1貫通孔141と、第1液体流路溝142と、第2貫通孔143と、第2液体流路溝144と、合流部溝145と、第3貫通孔146と、第1搬送流体流路溝147と、第4貫通孔148と、第2搬送流体流路溝149と、生成溝150と、液滴流路溝151と、第5貫通孔152とが形成されている。基板112の第1液体流路溝142と、第2液体流路溝144と、合流部溝145と、第1搬送流体流路溝147と、第2搬送流体流路溝149と、生成溝150と、液滴流路溝151とが形成されている面には、フィルム111が接合されている。基板112にフィルム111が接合されることにより、第1貫通孔141は第1液体導入部121となり、第1液体流路溝142は第1液体流路122となり、第2貫通孔143は第2液体導入部123となり、第2液体流路溝144は第2液体流路124となり、第3貫通孔146は第1搬送流体導入部126となり、第1搬送流体流路溝147は第1搬送流体流路127となり、第4貫通孔148は第2搬送流体導入部128となり、第2搬送流体流路溝149は第2搬送流体流路129となり、生成溝150は生成部130となり、液滴流路溝151は液滴流路131となり、第5貫通孔152は液滴回収部132となる。
【0022】
フィルム111は、透明な略矩形の樹脂製のフィルムである。フィルム111の厚みは、例えば30μm以上300μm以下である。また、フィルム111の材料も、特に限定されない。フィルム111の材料は、公知の樹脂から適宜選択されうる。フィルム111の材料の例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテル、ポリエチレン及び、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどが含まれる。フィルム111は、例えば熱圧着やレーザ溶着、接着剤などにより基板112に接合される。
【0023】
第1液体導入部121は、第1液体流路122の上流端に接続されており、かつ外部に開放された有底の凹部である。第1液体導入部121は、基板112に形成されている第1貫通孔141と、第1貫通孔141の一方の開口部を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第1液体導入部121の形状および大きさは、特に限定されず、必要に応じて適宜設計されうる。本実施の形態では、第1液体導入部121の形状は、略円柱形状である。また、本実施の形態では、第1液体導入部121の直径は、2mm程度である。
【0024】
第1液体流路122は、第1液体導入部121と合流部125とを繋ぐ流路である。第1液体流路122は、基板112に形成されている第1液体流路溝142と、第1液体流路溝142を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第1液体流路122の構造は、第1液体を適切に流すことができれば特に制限されない。
【0025】
第1液体流路122の断面の形状は、特に制限されず、半円状や矩形状、円形状など、いずれの形状でもよい。第1液体流路122の断面の大きさも、特に制限されない。「流路の断面」とは、流路の流れ方向に直交する向きの断面を意味する。本実施の形態では、第1液体流路122は、幅が0.055mmであり、流路深さが0.05mmであり、流路長さが13mmである。
【0026】
第2液体導入部123は、第2液体流路124の上流端に接続されており、かつ外部に開放された有底の凹部である。第2液体導入部123は、基板112に形成されている第2貫通孔143と、第2貫通孔143の一方の開口部を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第2液体導入部123の形状および大きさなどは、第1液体導入部と同じであるため、その説明を省略する。
【0027】
第2液体流路124は、第2液体導入部123と合流部125とを繋ぐ流路である。第2液体流路124は、基板112に形成されている第2液体流路溝144と、第2液体流路溝144を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第2液体流路124の構造は、第2液体を適切に流すことができれば特に制限されない。本実施の形態では、第2液体流路124は、幅が0.055mmであり、流路深さが0.05mmであり、流路長さが13mmである。
【0028】
合流部125は、第1液体流路122および第2液体流路124の下流端が接続されており、第1液体および第2液体を合流させ、合流した液体を生成部130に送る。合流部125は、基板112に形成されている合流部溝145と、合流部溝145の開口部を覆うように配置されたフィルム111とから構成されている。合流部125の下流端は、生成部130に接続されている。
【0029】
第1搬送流体導入部126は、第1搬送流体流路127の上流端に接続され、かつ外部に開放された有底の凹部である。第1搬送流体導入部126は、搬送流体を流体取扱装置110内に導入するための導入口である。第1搬送流体導入部126は、基板112に形成されている第3貫通孔146と、第3貫通孔146の一方の開口部を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第1搬送流体導入部126の形状および大きさは、特に限定されず、必要に応じて適宜設計されうる。本実施の形態では、第1搬送流体導入部126の形状は、略円柱形状である。また、本実施の形態では、第1搬送流体導入部126の直径は、2mm程度である。
【0030】
第1搬送流体流路127は、第1搬送流体導入部126と生成部130とを繋ぎ、第1搬送流体導入部126に導入された搬送流体を流すための流路である。第1搬送流体流路127は、基板112に形成されている第1搬送流体流路溝147と、第1搬送流体流路溝147を閉塞しているフィルム111とから構成されている。本実施の形態では、第1搬送流体流路127は、幅が0.1mmであり、流路深さが0.05mmであり、流路長さが40mmである。
【0031】
第2搬送流体導入部128は、第2搬送流体流路129の上流端に接続され、かつ外部に開放された有底の凹部である。第2搬送流体導入部128は、搬送流体を流体取扱装置110内に導入するための導入口である。第2搬送流体導入部128は、基板112に形成されている第4貫通孔148と、第4貫通孔148の一方の開口部を閉塞しているフィルム111とから構成されている。第2搬送流体導入部128の形状および大きさは、第1搬送流体導入部126と同じであるため、その説明を省略する。
【0032】
第2搬送流体流路129は、第2搬送流体導入部128と生成部130とを繋ぎ、第2搬送流体導入部128に導入された搬送流体を流すための流路である。第2搬送流体流路129は、基板112に形成されている第2搬送流体流路溝149と、第2搬送流体流路溝149を閉塞しているフィルム111とから構成されている。本実施の形態では、第2搬送流体流路129は、幅が0.1mmであり、流路深さが0.05mmであり、流路長さが36mmである。第2搬送流体流路129は、第1搬送流体流路127より、流量が10%増量した場合の設計値とした。
【0033】
生成部130は、搬送流体中に第1液体および第2液体の液滴を生成するための領域である。生成部130は、合流部125と、第1液体流路122と、第2液体流路124と、第1搬送流体流路127と、第2搬送流体流路129と、液滴流路131とを接続するように配置されている。生成部130では、合流部125で合流した第1液体および第2液体が、第1搬送流体流路127および第2搬送流体流路129から流入する搬送流体によって液滴状に区画され液滴含有液が生成される。生成された液滴含有液は、液滴流路131に送られる。
【0034】
液滴流路131は、生成部130の下流端と液滴回収部132とを繋ぎ、生成された液滴含有液を流す流路である。液滴流路131の液滴含有液が流れる方向に直交する方向における断面積は、液滴の大きさよりも大きければ特に限定されない。液滴流路131を流れる液滴含有液は、液滴回収部132に送られる。
【0035】
液滴回収部132は、液滴流路131の下流端に接続されており、かつ外部に開放された有底の凹部である。液滴回収部132は、基板112に形成されている第5貫通孔152と、第5貫通孔152の一方の開口部を閉塞しているフィルム111とから構成されている。液滴回収部132の形状および大きさは、特に限定されず、必要に応じて適宜設計されうる。本実施の形態では、液滴回収部132の形状は、略円柱形状である。また、本実施の形態では、液滴回収部132の幅は、2mm程度である。液滴回収部132には、送液装置160が接続されている。
【0036】
送液装置160は、第1液体流路122に流れる第1液体と、第2液体流路124に流れる第2液体と、第1搬送流体流路127に流れる搬送流体と、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体とを液滴流路131に向かって移動させる装置である。送液装置160は、いわゆる減圧装置でもよいし、加圧装置でもよい。送液装置160が減圧装置の場合、液滴流路131を負圧にすることにより、第1液体流路122に流れる第1液体と、第2液体流路124に流れる第2液体と、第1搬送流体流路127に流れる搬送流体と、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体とを液滴流路131に向かって移動させる。送液装置160が加圧装置の場合、第1液体流路122と、第2液体流路124と、第1搬送流体流路127と、第2搬送流体流路129とを加圧にすることにより、第1液体流路122に流れる第1液体と、第2液体流路124に流れる第2液体と、第1搬送流体流路127に流れる搬送流体と、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体とを液滴流路131に向かって移動させる。本実施の形態では、送液装置160は、減圧装置である。送液装置160は、蓋部161と、接続管162と、吸引ポンプ163とを有する。
【0037】
蓋部161は、液滴回収部132に接続されており、液滴回収部132の開口部を塞ぐ。蓋部161には接続管162が接続されている。
【0038】
接続管162は、蓋部161と、吸引ポンプ163とを接続する。接続管162の上流端には蓋部161が接続されており、下流端には吸引ポンプ163が接続されている。
【0039】
吸引ポンプ163は、液滴回収部132内を負圧に制御する。吸引ポンプ163の構成は、上記の発揮できれば特に限定されない。吸引ポンプ163は、例えばシリンジポンプである。
【0040】
(流体取扱システムの使用方法)
ここで、上述した流体取扱システム100の使用方法について説明する。まず、流体取扱装置110の第1液体導入部121に第1液体を導入し、第2液体導入部123に第2液体を導入し、第1搬送流体導入部126に搬送流体を導入し、第2搬送流体導入部128に搬送流体を導入する。このとき、第1液体導入部121、第2液体導入部123、第1搬送流体導入部126および第2搬送流体導入部128は開放されているが、第1液体流路122の上流端は第1液体により塞がれており、第2液体流路124の上流端は第2液体により塞がれており、第1搬送流体流路127の上流端は搬送流体により塞がれており、第2搬送流体流路129の上流端は搬送流体により塞がれている。次いで、液滴回収部132を蓋部161で閉塞する。これにより、流体取扱装置110内の流路を密閉する。最後に、吸引ポンプ163を駆動させて、液滴流路131の内部を負圧にする。第1液体が第1液体流路122を流れるとともに、第2液体が第2液体流路124を流れる。さらに、搬送流体が第1搬送流体流路127を流れるとともに、搬送流体が第2搬送流体流路129を流れる。これにより、第1液体および第2液体が生成部130に流れ込むとともに、搬送流体が生成部130に流れ込む。そして、生成部130で搬送流体に第1液体および第2液体の液滴が分散された液滴含有液が生成される。生成された液滴含有液は、液滴流路131を流れ、液滴回収部132に流れ込む。
【0041】
図3A、Bは、本実施の形態に係る流体取扱システムの効果を説明するための図である。図3Aは、液滴含有液が適切に生成されなかった場合の模式図であり、図3Bは、液滴含有液が適切に生成された場合の模式図である。前述したように、第1液体の第1粘度と第2液体の第2粘度とが異なる(本実施の形態では、第2粘度が第1粘度よりも高いため、第1搬送流体流路127から生成部130に流れ込む搬送流体の流量と、第2搬送流体流路129から生成部130に流れ込む搬送流体の流量とが同じ場合、粘度の高い第2液体が流路の内壁に接触してしまい、液体の液滴が適切に生成されないことがある(図3A参照)。本実施の形態では、このとき、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体の流量は、第1搬送流体流路127を流れる搬送流体の流量より多くなるように設定されている。なお、本実施の形態では、送液装置160が減圧装置であるため、第1搬送流体流路127の断面積を、第2搬送流体流路129の断面積よりも大きくして、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体の流量が第1搬送流体流路127を流れる搬送流体の流量より多くなるようにしている。これにより、第2搬送流体流路129を流れる搬送流体が第2液体および第1液体を流路の側壁から離すように流れるため、安定して液滴含有液を生成できる(図3B参照)。
【0042】
なお、送液装置160が加圧装置の場合には、第1搬送流体流路127の下流端の断面積および第2搬送流体流路129の下流端の断面積が同じであっても、第2搬送流体流路129の内部の圧力を第1搬送流体流路127の内部の圧力よりも高くすることで、第2搬送流体流路129に流れる搬送流体の流量を、第1搬送流体流路127を流れる搬送流体の流量より多くなるようにできる。
【0043】
(効果)
以上のように本発明によれば、粘度の異なる2種類の液体を用いても、サンプルを搬送流体で分断してサンプルの液滴が搬送流体中に分散した液滴含有液を安定して製造できる。
【0044】
なお、本実施の形態では、合流部125が生成部130に接続している形態を記載したが、合流部125および生成部130が一体として形成されていてもよい。この場合、生成部130には、第1液体流路122と、第2液体流路124と、第1搬送流体流路127と、第2搬送流体流路129と、液滴流路131とが接続される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の流体取扱装置、および流体取扱方法は、例えば、臨床検査や食物検査、環境検査等に適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
100 流体取扱システム
110 流体取扱装置
111 フィルム
112 基板
121 第1液体導入部
122 第1液体流路
123 第2液体導入部
124 第2液体流路
125 合流部
126 第1搬送流体導入部
127 第1搬送流体流路
128 第2搬送流体導入部
129 第2搬送流体流路
130 生成部
131 液滴流路
132 液滴回収部
141 第1貫通孔
142 第1液体流路溝
143 第2貫通孔
144 第2液体流路溝
145 合流部溝
146 第3貫通孔
147 第1搬送流体流路溝
148 第4貫通孔
149 第2搬送流体流路溝
150 生成溝
151 液滴流路溝
152 第5貫通孔
160 送液装置
161 蓋部
162 接続管
163 吸引ポンプ
図1
図2
図3