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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ガイドエクステンションカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/14 20060101AFI20231204BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
A61M25/14 512
A61M25/00 630
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047265
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145807
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】塚本 俊彦
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517320(JP,A)
【文献】米国特許第6306106(US,B1)
【文献】実開昭60-106640(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 - 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドエクステンションカテーテルであって、
長尺状の外形を有するシャフト部と、前記シャフト部の先端側に設けられたシース部と、を有する本体部を備え、
前記本体部の内側には、
前記本体部の長手方向に延びる第1ルーメンであって、前記シース部の先端の第1先端側開口、及び、前記シャフト部の基端の第1基端側開口を介して、それぞれ外部に連通する第1ルーメンと、
前記本体部の長手方向に延びる第2ルーメンであって、前記シース部の先端の第2先端側開口、及び、前記シース部の基端の第2基端側開口を介して、それぞれ外部に連通する第2ルーメンと、が形成されており、
前記シース部の先端面において、前記第1先端側開口は、前記第2先端側開口の周囲を取り囲んでいる、ガイドエクステンションカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドエクステンションカテーテルであって、
前記シャフト部は、U字状に湾曲した横断面を有し、
前記シャフト部の外表面には、前記シャフト部の長手方向に延びる溝部が形成されている、ガイドエクステンションカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドエクステンションカテーテルであって、
前記シャフト部の内側に形成された前記第1ルーメンは、U字状に湾曲した横断面を有する、ガイドエクステンションカテーテル。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のガイドエクステンションカテーテルであって、
前記シャフト部の前記溝部の先端は、前記シース部の前記第2基端側開口に接続されており、
前記溝部と前記第2基端側開口との接続部には、段差を有していない、ガイドエクステンションカテーテル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガイドエクステンションカテーテルであって、
前記シース部の先端面において、前記第2先端側開口の面積は、前記第1先端側開口の面積よりも大きい、ガイドエクステンションカテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のガイドエクステンションカテーテルであって、
前記シース部の剛性は、前記シャフト部の剛性よりも低い、ガイドエクステンションカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドエクステンションカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内に留置されたガイディングカテーテルの内側に挿入され、バルーンやステントのデリバリを補助するガイドエクステンションカテーテルが知られている。ガイドエクステンションカテーテルは、先端側に内腔を有するシースが設けられ、シースの基端側にシャフトが接続された構成を有している(例えば、特許文献1~4)。なお、ガイドエクステンションカテーテルは、ガイド拡張カテーテルとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6130505号公報
【文献】特表平6-502331号公報
【文献】特表2015-526159号公報
【文献】米国特許出願公開第2014/0249508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガイドエクステンションカテーテルを用いてバルーンやステントをデリバリする前には、通常、血管と病変部の状態を確認するためにX線画像が撮像される。X線画像の撮像には、放射線不透過性の造影剤が用いられる。この造影剤は、ガイドエクステンションカテーテルの内腔を通じて、血管内の目的位置まで供給される。ここで、造影剤は、多量に使用された場合に、過敏症や腎機能低下の要因となり得ることが知られている。このため、造影剤の使用量は、可能な限り少なくすることが好ましい。一方で、血管と病変部の状態の鮮明な像を得るためには、造影の目的位置に対して、万遍なく造影剤が行き渡ることが好ましい。
【0005】
この点、特許文献1~3に記載のガイドエクステンションカテーテルでは、内腔の径が大きいため、血管と病変部の状態の鮮明な像を得るために多量の造影剤を用いてしまうという課題があった。また、特許文献4に記載のガイドエクステンションカテーテルでは、造影の目的位置に対して造影剤を行き渡らせることが容易でないという課題があった。なお、このような課題は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入されるガイドエクステンションカテーテルの全般に共通する。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、ガイドエクステンションカテーテルにおいて、造影剤の使用量を低減しつつ、目的位置への造影剤の均一な供給を補助することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、ガイドエクステンションカテーテルが提供される。このガイドエクステンションカテーテルは、長尺状の外形を有するシャフト部と、前記シャフト部の先端側に設けられたシース部と、を有する本体部を備え、前記本体部の内側には、前記本体部の長手方向に延びる第1ルーメンであって、前記シース部の先端の第1先端側開口、及び、前記シャフト部の基端の第1基端側開口を介して、それぞれ外部に連通する第1ルーメンと、前記本体部の長手方向に延びる第2ルーメンであって、前記シース部の先端の第2先端側開口、及び、前記シース部の基端の第2基端側開口を介して、それぞれ外部に連通する第2ルーメンと、が形成されており、前記シース部の先端面において、前記第1先端側開口は、前記第2先端側開口の周囲を取り囲んでいる。
【0009】
この構成によれば、ガイドエクステンションカテーテルは、本体部の長手方向に延びる第1ルーメンを介して、造影剤を生体管腔内の目的位置へと供給でき、本体部の長手方向に延びる第2ルーメンを介して、バルーンカテーテル等の併用デバイスを、生体管腔内の目的位置へとデリバリできる。また、シース部の先端面において、造影剤供給用の第1ルーメンの第1先端側開口は、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメンの第2先端側開口の周囲を取り囲んでいる。このため、目的位置への造影剤の均一な供給を補助できると共に、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメンを用いて造影剤を供給する場合と比較して、造影剤の使用量を低減できる。
【0010】
(2)上記形態のガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記シャフト部は、U字状に湾曲した横断面を有し、前記シャフト部の外表面には、前記シャフト部の長手方向に延びる溝部が形成されていてもよい。
この構成によれば、シャフト部の外表面のうち、U字の内側の外表面に形成された溝部を用いて、バルーンカテーテル等の併用デバイスをデリバリできる。このため、デリバリ時における併用デバイスの脱落(換言すれば、ガイドエクステンションカテーテルから併用デバイスが外れること)を抑制し、併用デバイスを目的位置までスムーズにデリバリできる。
【0011】
(3)上記形態のガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記シャフト部の内側に形成された前記第1ルーメンは、U字状に湾曲した横断面を有していてもよい。
この構成によれば、シャフト部の内側に形成された第1ルーメンはU字状に湾曲した横断面を有するため、第1ルーメンの横断面形状を例えば円形にする場合と比較して、第1ルーメンの体積を大きくすることができる。このような第1ルーメン形状とすることにより、ガイドエクステンションカテーテルは、適量(すなわち、少なすぎず多すぎない、換言すれば、目的位置に均一に供給可能な程度の量)の造影剤を目的位置まで供給できる。
【0012】
(4)上記形態のガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記シャフト部の前記溝部の先端は、前記シース部の前記第2基端側開口に接続されており、前記溝部と前記第2基端側開口との接続部には、段差を有していなくてもよい。
この構成によれば、シャフト部の溝部と、シース部の第2基端側開口との接続部には、段差を有していない。このため、シャフト部の溝部を通じてデリバリされた併用デバイスが、接続部において引っ掛かりを生じることなく、スムーズにシース部の第2基端側開口から第2ルーメン内に導かれる。
【0013】
(5)上記形態のガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記シース部の先端面において、前記第2先端側開口の面積は、前記第1先端側開口の面積よりも大きくてもよい。
この構成によれば、シース部の先端面において、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメンの第2先端側開口の面積は、造影剤供給用の第1ルーメンの第1先端側開口の面積よりも大きいため、造影剤の使用量を低減できる。
【0014】
(6)上記形態のガイドエクステンションカテーテルにおいて、前記シース部の剛性は、前記シャフト部の剛性よりも低くてもよい。
この構成によれば、先端側に設けられたシース部の剛性は、基端側に設けられた前記シャフト部の剛性よりも低いため、ガイドエクステンションカテーテルの先端側を柔軟に形成することができ、安全性を向上できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、ガイドエクステンションカテーテル、ガイドエクステンションカテーテル用のシャフト部材やシース部材、ガイドエクステンションカテーテルを備えるカテーテルシステム、ガイドエクステンションカテーテルの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のガイドエクステンションカテーテルの構成を例示した説明図である。
図2】シース部の構成を例示した説明図である。
図3】シャフト部の構成を例示した説明図である。
図4】ガイドエクステンションカテーテルの使用方法について説明する図である。
図5】使用時のシース部及びシャフト部の先端側の拡大図である。
図6】第2実施形態のガイドエクステンションカテーテルの構成を例示した説明図である。
図7】第2実施形態のシャフト部の構成を例示した説明図である。
図8】使用時のシース部及びシャフト部の先端側の拡大図である。
図9】第3実施形態のガイドエクステンションカテーテルの構成を例示した説明図である。
図10】第3実施形態のシャフト部の構成を例示した説明図である。
図11】第4実施形態のガイドエクステンションカテーテルの先端面の構成を例示した説明図である。
図12】第5実施形態のガイドエクステンションカテーテルの構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1の構成を例示した説明図である。ガイドエクステンションカテーテル1は、生体管腔内に留置されたガイディングカテーテルの内側に挿入して使用され、併用デバイスのデリバリを補助するために用いられるカテーテルである。ここで、生体管腔とは、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった種々の管腔を含む。また、併用デバイスとしては、バルーンカテーテル、ステント、ガイドワイヤ、生体組織の切除、焼灼、アブレーション等が可能なデバイス等の種々のデバイスを利用できる。なお、ガイドエクステンションカテーテル1は、内視鏡下で用いられてもよい。
【0018】
ガイドエクステンションカテーテル1は、本体部10と、コネクタ90とを備えている。図1に示すように、本体部10は、シース部11と、シャフト部12とを有している。
【0019】
図1では、ガイドエクステンションカテーテル1の中心に通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。以降の例では、本体部10の中心を通る軸と、コネクタ90の中心を通る軸とは、いずれも軸線Oと一致する。しかし、本体部10及びコネクタ90の各中心を通る軸は、それぞれ軸線Oとは相違していてもよい。また、図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸は、ガイドエクステンションカテーテル1の長手方向に対応し、Y軸は、ガイドエクステンションカテーテル1の高さ方向に対応し、Z軸は、ガイドエクステンションカテーテル1の幅方向に対応する。図1の左側(-X軸方向)をガイドエクステンションカテーテル1及び各構成部材の「先端側」と呼び、図1の右側(+X軸方向)をガイドエクステンションカテーテル1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。ガイドエクステンションカテーテル1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、図1以降においても共通する。
【0020】
図2は、シース部11の構成を例示した説明図である。図2上段には、シース部11の構成を図示する。図2下段の左側には、A1方向から見たシース部11の構成を図示する。図2下段の中央には、A2-A2線におけるシース部11の横断面構成を図示する。図2下段の右側には、A3方向から見たシース部11の構成を図示する。
【0021】
シース部11は、シャフト部12の先端側に設けられた中空の略円筒形状の部材である。図2上段に示すように、シース部11の先端側の面(以降「先端面」とも呼ぶ)は、YZ軸に平行である。シース部11の基端側の面(以降「基端面」とも呼ぶ)は、YZ軸に対して傾斜している。シース部11の基端面のうち、-Y軸方向の一部分111(以降「接合面111」とも呼ぶ)には、図3で説明するシャフト部12が接合されている。なお、図2及び図3では、シース部11とシャフト部12とが互いに接合される接合面に対して、ドットハッチングを付して表す。シース部11の外径Φ11、及びシース部11の長さは任意に決定できる。図2下段に示すように、シース部11の内側(シース部11の肉厚部)には、第1ルーメン1Lと、第2ルーメン2Lとが形成されている。
【0022】
第2ルーメン2Lは、シース部11の長手方向(X軸方向)に延びる内腔である。図2下段に示すように、第2ルーメン2Lは、先端から基端にかけて略同一(図示の例では略円形状)の横断面を有している。第2ルーメン2Lは、シース部11の先端の第2先端側開口2odと、シース部11の基端の第2基端側開口2opと、を通じてそれぞれ外部に連通している。なお、第2ルーメン2Lの外径Φ2は任意に決定できる。
【0023】
シース部11の第1ルーメン1Lは、第2ルーメン2Lの外側に形成された内腔であり、シース部11の長手方向(X軸方向)に延びる内腔である。図2下段に示すように、シース部11の第1ルーメン1Lは、先端から基端にかけて横断面形状が変化している。具体的には、シース部11の第1ルーメン1Lは、先端においては略円形状の横断面を有し(図2下段の左側)、基端においてはU字状、換言すれば、略円弧形状の横断面を有している(図2下段の右側)。また、先端と基端との間においては、弧の中心角の角度が徐々に小さく変化した略円弧形状の横断面を有している(図2下段の中央)。第1ルーメン1Lは、シース部11の先端の第1先端側開口1odを通じて外部に連通している。また、第1ルーメン1Lは、図3で後述するシャフト部12の第1基端側開口1opを通じて外部に連通している。なお、第1ルーメン1Lの内径及び外径は任意に決定できる。
【0024】
図2下段の左側に示すように、シース部11の先端面において、第1ルーメン1Lに連通する第1先端側開口1odは、第2ルーメン2Lに連通する第2先端側開口2odの周囲を取り囲んでいる。また、図示のように、シース部11の先端面において、第2先端側開口2odの面積は、第1先端側開口1odの面積よりも大きい。
【0025】
図3は、シャフト部12の構成を例示した説明図である。図3上段には、シャフト部12の構成を図示する。図3下段の左側には、B1方向から見たシャフト部12の構成を図示する。図3下段の中央には、B2-B2線におけるシャフト部12の横断面構成を図示する。図3下段の右側には、B3方向から見たシャフト部12の構成を図示する。
【0026】
シャフト部12は、長尺状の外形を有し、シース部11の基端側に設けられた中空の略U字状、換言すれば、略円弧形状の部材である。このため、シャフト部12のU字の内側の外表面12iには、シャフト部12の長手方向(X軸方向)に延びる溝部122が形成されている。図3上段に示すように、シャフト部12の先端側の面(以降「先端面121」とも呼ぶ)は、シース部11の基端面と同様に、YZ軸に対して傾斜している。シャフト部12の基端側の面(以降「基端面」とも呼ぶ)は、YZ軸に平行である。シャフト部12の先端面121には、図2で説明したシース部11の基端面(接合面111)が接合されている。図3下段に示すように、シャフト部12の内側(シャフト部12の肉厚部)には、第1ルーメン1Lが形成されている。
【0027】
シャフト部12の第1ルーメン1Lは、シャフト部12の長手方向(X軸方向)に延びる内腔である。図3下段に示すように、シャフト部12の第1ルーメン1Lは、先端から基端にかけて略同一(図示の例ではU字状、換言すれば、略円弧形状)の横断面を有している。シャフト部12の先端面における第1ルーメン1Lの横断面形状(図3下段の左側)は、シース部11の基端面における第1ルーメン1Lの横断面形状(図2下段の右側)と同じである。このため、シース部11とシャフト部12とを接合した際に、シース部11の第1ルーメン1Lと、シャフト部12の第1ルーメン1Lとが滑らかに接続される。上述の通り、第1ルーメン1Lは、シース部11の先端の第1先端側開口1odと、シャフト部12の第1基端側開口1opと、を通じてそれぞれ外部に連通している。
【0028】
シース部11の基端面のうちの-Y軸方向の接合面111と、シャフト部12の先端面121とは、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだや、エポキシ系接着剤などの接着剤により接合されている。これにより、シャフト部12の溝部122の先端は、シース部11の第2基端側開口2opに接続される。本実施形態では、シャフト部12の外径Φ12は、シース部11の半径(すなわちシース部11の外径Φ11の1/2)と略同一である。シャフト部12の内径Φ121は、シース部11の第2ルーメン2Lの半径(すなわち第2ルーメン2Lの外径Φ2の1/2)と略同一である。このため、シャフト部12の溝部122と、シース部11の第2基端側開口2opとは、段差を有さず滑らかに接続されている。
【0029】
シース部11と、シャフト部12とは、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂材料により形成できる。ここで、本実施形態では、先端側に設けられたシース部11は、基端側に設けられたシャフト部12よりも剛性の低い材料により形成されている。すなわち、シース部11は、シャフト部12よりも剛性が低い。これにより、ガイドエクステンションカテーテル1の先端側を柔軟に形成することができ、安全性を向上できる。なお、シース部11とシャフト部12とは、同一の材料で形成されてもよく、シース部11がシャフト部12よりも剛性の高い材料により形成されてもよい。
【0030】
コネクタ90は、ガイドエクステンションカテーテル1の基端側に配置され、術者によって把持される部材である。コネクタ90は、二股の分岐部91と、供給口92と、一対の羽根部93とを備えている。分岐部91の先端部には、シャフト部12の基端部が挿入された状態で接合されている。分岐部91は、図1において+XY方向に延びる第1枝と、+X軸方向に延びる第2枝との二股に分岐している。第1枝の端部には開口(供給口92)が形成され、第1枝の内腔は、シャフト部12の第1ルーメン1Lに連通している。第2枝の端部には開口90oが形成され、第2枝の内腔は、シャフト部12の溝部122に連通している。コネクタ90の開口90oは、ガイドエクステンションカテーテル1に併用デバイスを出し入れするために用いられる。
【0031】
分岐部91の第2枝の外表面には、羽根部93が接合されている。接合には、エポキシ系接着剤などの任意の接合剤を利用できる。なお、分岐部91と羽根部93とは一体的な構造であってもよい。コネクタ90は、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン等の樹脂材料で形成できる。
【0032】
図4は、ガイドエクステンションカテーテル1の使用方法について説明する図である。図5は、使用時のシース部11及びシャフト部12の先端側の拡大図である。まず、術者は、生体管腔内にガイディングカテーテルを留置する。その後、ガイディングカテーテルの内側にガイドエクステンションカテーテル1を挿入し、ガイドエクステンションカテーテル1の先端部10dを、生体管腔内の目的位置までデリバリする。ここで、目的位置とは、例えば病変部の近傍など、術者が併用デバイス2(例えば、バルーンカテーテル、ステント、ガイドワイヤ、生体組織の切除、焼灼、アブレーション等が可能なデバイス等)によって処置を施すことを意図する部分を意味する。
【0033】
ガイドエクステンションカテーテル1を目的位置までデリバリした後、術者は、造影剤を生体管腔内の目的位置に供給してX線画像を撮像することで、生体管腔と病変部の状態を確認する。具体的には、術者はコネクタ90の供給口92(図4)に対して、造影剤を充填したシリンジを取り付けて、シリンジ内の造影剤を注入する。注入された造影剤は、分岐部91の第1枝の内腔から、シャフト部12の第1ルーメン1Lと、シース部11の第1ルーメン1Lとを経由して、シース部11の第1先端側開口1od(図5)から外部へ吐出される。
【0034】
その後、術者は、ガイドエクステンションカテーテル1を用いて、併用デバイス2を目的位置までデリバリする。具体的には、図4に示すように、術者は併用デバイス2を、コネクタ90の開口90oから挿入し、本体部10の基端側から先端側へと押し進め、本体部10の先端部10dの第2先端側開口2odから突出させる。図5上段に示すように、シャフト部12の溝部122と、シース部11の第2基端側開口2opとは、段差を有さず滑らかに接続されている。このため、図5下段に示すように、併用デバイス2は、シャフト部12とシース部11との接続部において引っ掛かりを生じることなく、滑らかに、シャフト部12の溝部122から、シース部11の第2ルーメン2Lへと進入することができる。
【0035】
以上説明した通り、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1は、本体部10の長手方向(X軸方向)に延びる第1ルーメン1Lを介して、造影剤を生体管腔内の目的位置へと供給でき、本体部10の長手方向(X軸方向)に延びる第2ルーメン2Lを介して、バルーンカテーテル等の併用デバイス2を、生体管腔内の目的位置へとデリバリできる。また、シース部11の先端面において、造影剤供給用の第1ルーメン1Lの第1先端側開口1odは、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメン2Lの第2先端側開口2odの周囲を取り囲んでいる。このため、目的位置への造影剤の均一な供給を補助できると共に、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメン2Lを用いて造影剤を供給する場合と比較して、造影剤の使用量を低減できる。
【0036】
また、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1では、シャフト部12の外表面12iのうち、U字の内側の外表面に形成された溝部122を用いて、バルーンカテーテル等の併用デバイス2をデリバリできる(図5)。このため、デリバリ時における併用デバイス2の脱落(換言すれば、ガイドエクステンションカテーテル1から併用デバイス2が外れること)を抑制し、併用デバイス2を目的位置までスムーズにデリバリできる。
【0037】
さらに、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1では、シャフト部12の内側に形成された第1ルーメン1Lは、U字状に湾曲した横断面を有する(図3)。このため、シャフト部12の第1ルーメン1Lの横断面形状を例えば円形にする場合と比較して、第1ルーメン1Lの体積を大きくすることができる。このような第1ルーメン1Lの形状とすることにより、ガイドエクステンションカテーテル1は、適量(すなわち、少なすぎず多すぎない、換言すれば、目的位置に均一に供給可能な程度の量)の造影剤を目的位置まで供給できる。
【0038】
さらに、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1では、シャフト部12の溝部122と、シース部11の第2基端側開口2opとの接続部には、段差を有していない(図5)。このため、シャフト部12の溝部122を通じてデリバリされた併用デバイス2が、接続部において引っ掛かりを生じることなく、スムーズにシース部11の第2基端側開口2opから第2ルーメン2L内に導かれる。
【0039】
さらに、第1実施形態のガイドエクステンションカテーテル1では、シース部11の先端面において、併用デバイスデリバリ用の第2ルーメン2Lの第2先端側開口2odの面積は、造影剤供給用の第1ルーメン1Lの第1先端側開口1odの面積よりも大きい(図2)。このため、造影剤の使用量を低減できる。
【0040】
<第2実施形態>
図6は、第2実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Aの構成を例示した説明図である。第2実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Aは、第1実施形態の構成において、本体部10に代えて本体部10Aを備える。本体部10Aは、シャフト部12に代えてシャフト部12Aを有している。
【0041】
図7は、第2実施形態のシャフト部12Aの構成を例示した説明図である。図7上段には、シャフト部12Aの構成を図示する。図7下段の左側には、C1方向から見たシャフト部12Aの構成を図示する。図7下段の中央には、C2-C2線におけるシャフト部12Aの横断面構成を図示する。図7下段の右側には、C3方向から見たシャフト部12Aの構成を図示する。シャフト部12Aは、長尺状の外形を有する、中空の略半円形状の部材である。換言すれば、シャフト部12Aには、第1実施形態で説明した溝部122が形成されておらず、シャフト部12Aの内側の外表面12iは平面である。シャフト部12Aには、第1実施形態と同様に、U字状、換言すれば、略円弧形状の横断面を有する第1ルーメン1Lが形成されている。
【0042】
図8は、使用時のシース部11及びシャフト部12Aの先端側の拡大図である。ガイドエクステンションカテーテル1Aでは、併用デバイス2を目的位置までデリバリする際、併用デバイス2は、シャフト部12の外表面12iを進み、その後、シース部11の第2基端側開口2opを経由して、シース部11の第2ルーメン2Lへと進入する。
【0043】
このように、ガイドエクステンションカテーテル1Aの構成は種々の変更が可能であり、溝部122を有さないシャフト部12Aを用いてガイドエクステンションカテーテル1Aを構成してもよい。シャフト部12Aの内側(肉厚部)には、第1ルーメン1L、及び第2ルーメン2Lとは異なる、別途のルーメンが形成されていてもよい。以上のような第2実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Aによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
<第3実施形態>
図9は、第3実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Bの構成を例示した説明図である。第3実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Bは、第1実施形態の構成において、本体部10に代えて本体部10Bを備える。本体部10Bは、シャフト部12に代えてシャフト部12Bを有している。
【0045】
図10は、第3実施形態のシャフト部12Bの構成を例示した説明図である。図10上段には、シャフト部12Bの構成を図示する。図10下段の左側には、D1方向から見たシャフト部12Bの構成を図示する。図10下段の中央には、D2-D2線におけるシャフト部12Bの横断面構成を図示する。図10下段の右側には、D3方向から見たシャフト部12Bの構成を図示する。シャフト部12Bは、長尺状の外形を有し、シース部11の基端側に設けられた中空の略円筒形状の部材である。シャフト部12Bの内側(シャフト部12Bの肉厚部)には、第1実施形態(図2)で説明した第1ルーメン1Lに加えてさらに、第3ルーメン3Lが形成されている。
【0046】
第3ルーメン3Lは、第1ルーメン1Lの内側に形成された内腔であり、シャフト部12Bの長手方向(X軸方向)に延びる内腔である。第3ルーメン3Lは、先端から基端にかけて略同一(図示の例では略円形状)の横断面を有している。第3ルーメン3Lは、シャフト部12Bの先端の開口を通じて、シース部11の第2ルーメン2Lに連通している。また、第3ルーメン3Lは、シャフト部12Bの基端の第3基端側開口3opを通じて外部に連通している(図10下段の右側)。シャフト部12Bの外径Φ122は、シース部11の外径Φ11(図2)と略同一であり、第3ルーメン3Lの外径Φ3(換言すれば、シャフト部12Bの内径)は、シース部11の第2ルーメン2L外径Φ2(図2)と略同一である。
【0047】
第3実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Bの使用方法は、第1実施形態と同様である。第3実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Bでは、コネクタ90の開口90oから挿入された併用デバイス2は、シャフト部12Bの第3ルーメン3Lを通過して、シース部11の第2ルーメン2Lへと進み、シース部11の第2先端側開口2odから突出する。この際、上述のように、第3ルーメン3Lの外径Φ3とシース部11の第2ルーメン2L外径Φ2とが略同一であるため、併用デバイス2は、シャフト部12Bとシース部11との接続部において引っ掛かりを生じることなく、滑らかに、シャフト部12Bの第3ルーメン3Lから、シース部11の第2ルーメン2Lへと進入することができる。
【0048】
このように、ガイドエクステンションカテーテル1Bの構成は種々の変更が可能であり、溝部122に代えて第3ルーメン3Lを有するシャフト部12Bを用いて、ガイドエクステンションカテーテル1Bを構成してもよい。このようにすれば、第1,2実施形態で説明したモノレールタイプとは異なる、オーバーザワイヤタイプのガイドエクステンションカテーテル1Bを実現できる。以上のような第3実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Bによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Cの先端面の構成を例示した説明図である。第4実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Cは、第1実施形態の構成において、本体部10に代えて本体部10Cを備える。本体部10Cは、シース部11に代えてシース部11Cを有している。シース部11Cは、図示する先端面において、第2ルーメン2Lに連通する第2先端側開口2odの面積が、第1ルーメン1Lに連通する第1先端側開口1odの面積よりも小さい。このように、ガイドエクステンションカテーテル1Cの構成は種々の変更が可能であり、シース部11Cの先端面における第2先端側開口2odの面積は、第1先端側開口1odの面積よりも小さくてもよい。また、シース部11Cの先端面における第2先端側開口2odの面積と、第1先端側開口1odの面積とは略同一であってもよい。以上のような第4実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Dは、第1実施形態の構成において、本体部10に代えて本体部10Dを備える。本体部10Dは、マーカー13が形成されたシース部11Dを有する。マーカー13は、シース部11Dの先端部10dにおいて、周方向の全体を取り囲むようにして設けられている。マーカー13は、放射線不透過性を有する樹脂材料や金属材料により形成できる。例えば、樹脂材料を用いる場合、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等に対して、三酸化ビスマス、タングステン、硫酸バリウム等の放射線不透過材料を混ぜて形成できる。例えば、金属材料を用いる場合、放射線不透過材料である金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金ニッケル合金)等で形成できる。マーカー13は、シース部11Dの先端部10d(すなわち、ガイドエクステンションカテーテル1Dの先端部)の位置を表す目印として機能する。
【0051】
このように、ガイドエクステンションカテーテル1Dの構成は種々の変更が可能であり、マーカー13が設けられたシース部11Dを用いて、ガイドエクステンションカテーテル1Aを構成してもよい。マーカー13の形状、位置、数については任意に定めることができる。例えば、マーカー13は、シース部11Dの先端部10dよりも基端側に設けられてもよく、シース部11Dには複数のマーカー13が設けられてもよい。以上のような第5実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第5実施形態のガイドエクステンションカテーテル1Dによれば、術者は、X線画像下において、ガイドエクステンションカテーテル1Dの先端の位置を容易に把握できる。
【0052】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
[変形例1]
上記第1~5実施形態では、ガイドエクステンションカテーテル1,1A~1Dの構成を例示した。しかし、ガイドエクステンションカテーテル1の構成は種々の変更が可能である。例えば、シース部11とシャフト部12とが一体的に形成されていてもよい。例えば、シース部11と、シャフト部12との少なくとも一方が、複数の樹脂層により形成されていてもよい。例えば、シース部11と、シャフト部12との少なくとも一方に、強化プラスチック(PEEK)等の任意の硬質樹脂材料や、金属材料からなる補強部が埋設されていてもよい。例えば、シース部11と、シャフト部12との少なくとも一方が、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、polytetrafluoroethylene)等の樹脂によりコーティングされていてもよい。例えば、シース部11の先端には、他の部材(例えば、先端チップ等)が設けられていてもよい。
【0054】
[変形例2]
上記第1~5実施形態のガイドエクステンションカテーテル1,1A~1Dの構成、及び上記変形例1の各構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態で説明した溝部122を有さないガイドエクステンションカテーテル1において、第4実施形態で説明した第1先端側開口1od及び第2先端側開口2odの面積を採用してもよく、第5実施形態で説明したマーカー13を備える構成を採用してもよい。例えば、第3実施形態のオーバーザワイヤタイプのガイドエクステンションカテーテル1において、第4実施形態で説明した第1先端側開口1od及び第2先端側開口2odの面積を採用してもよく、第5実施形態で説明したマーカー13を備える構成を採用してもよい。
【0055】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A~1D…ガイドエクステンションカテーテル
1L…第1ルーメン
1od…第1先端側開口
1op…第1基端側開口
2…併用デバイス
2L…第2ルーメン
2od…第2先端側開口
2op…第2基端側開口
3L…第3ルーメン
3op…第3基端側開口
10,10A~10D…本体部
11,11C,11D…シース部
12,12A,12B…シャフト部
13…マーカー
90…コネクタ
91…分岐部
92…供給口
93…羽根部
111…接合面
121…先端面
122…溝部
図1
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