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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】レーザ記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/475 20060101AFI20231204BHJP
   B41J 2/447 20060101ALI20231204BHJP
   B41J 2/455 20060101ALI20231204BHJP
   B41J 2/46 20060101ALI20231204BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20231204BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20231204BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B41J2/475 Z
B41J2/447 101C
B41J2/455
B41J2/46
B41M5/46 210
B41M5/40 213
B41M5/42 220
B41M5/42 211
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020053195
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021151745
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 伸樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕一
(72)【発明者】
【氏名】門倉 悠真
(72)【発明者】
【氏名】三原 直人
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-220240(JP,A)
【文献】特開2017-140833(JP,A)
【文献】特開平06-168862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0111877(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0160221(US,A1)
【文献】特開2017-052261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/475
B41J 2/447
B41J 2/455
B41J 2/46
B41M 5/46
B41M 5/40
B41M 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記感熱記録媒体は、前記少なくとも1つの発色層として色毎に分かれて積層された三原色の発色層を備え、
前記感熱記録媒体は、前記三原色の発色層のうちで発色閾値が最も高い1つが、1種の光熱変換材料を含む光熱変換層を兼ねる、レーザ記録装置。
【請求項2】
前記感熱記録媒体は、前記三原色の発色層は互いに発色の閾値が異なり、発色の閾値温度が高いものほど、前記光熱変換層の近くに配置される、請求項1に記載のレーザ記録装置。
【請求項3】
前記複数のレーザ光源と前記複数の出射部とは、複数の光ファイバーを介してそれぞれ接続される、請求項1に記載のレーザ記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドは、前記複数のレーザ光源と前記複数の出射部とをそれぞれ接続するために前記複数の光ファイバーの中間に挿入された複数のコネクタを備える、請求項3に記載のレーザ記録装置。
【請求項5】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記記録コントローラは、前記複数のレーザ光源に対して目的別に異なる記録制御を行うように構成され、
前記複数のレーザ光源は、プレヒート用レーザ光源を含み、前記記録制御は、前記プレヒート用レーザ光源からのレーザ光によって前記感熱記録媒体をプレヒートすることを含む、レーザ記録装置。
【請求項6】
前記複数のレーザ光源は、各々前記少なくとも1つの発色層のうちの1つに割り当てられる発色用レーザ光源を含む、請求項に記載のレーザ記録装置。
【請求項7】
前記発色用レーザ光源は、割り当てられた前記発色層毎に異なる定格出力に設定される、請求項に記載のレーザ記録装置。
【請求項8】
前記発色用レーザ光源の前記出射部は、割り当てられた前記発色層毎に異なるスポット径を生じるように構成される、請求項に記載のレーザ記録装置。
【請求項9】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記記録コントローラは、前記複数のレーザ光源に対して目的別に異なる記録制御を行うように構成され、
前記複数のレーザ光源は、照射開始位置マーカ用可視光レーザ光源を含み、
前記記録制御は、可視光レーザ光源からのレーザ光によって照射開始位置をマークすることを含む、レーザ記録装置。
【請求項10】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記記録コントローラは、前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御において、記録画素の前後に配置される複数の画素の記録データに基づいて制御パラメータを変更するように構成される、レーザ記録装置。
【請求項11】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記記録コントローラは、前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御において、前記感熱記録媒体をプレヒートするためのレーザ光照射を前記感熱記録媒体に情報を記録するためのレーザ光照射に先行して行うように構成され、前記プレヒートするためのレーザ光照射は、前記記録するためのレーザ照射のときよりも大きなスポット径で行われる、レーザ記録装置。
【請求項12】
熱によって発色する少なくとも1つの発色層と前記少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層される感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、
複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、
前記複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、前記複数の出射部からのレーザ光を前記感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備え、
前記記録コントローラは、前記複数の出射部のうちの隣り合う出射部から同時にレーザ光を出射させない前記複数のレーザ光源の制御をするように構成される、レーザ記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーザ記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザでフルカラー記録を施す従来の手法には、大きく分けて以下の二つがあった。
【0003】
第1の手法は、閾値温度の異なる三原色の発色層を積層した媒体に対し、レーザでエネルギーを与えて三原色の発色層を選択的に発色させる手法である。
【0004】
第2の手法は、三原色を担う各層が互いに異なる波長に吸収特性を持ち、各色を記録するために三種類の波長のレーザを用いる手法である。
【0005】
例えば、少なくとも1層のレーザ感応性材料を含む層を備えた多層体を備え、各色を記録するためにレーザ光を吸収して発色ないし、脱色することによってフルカラー記録を完成させる手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-138558号公報
【文献】特許第3509246号公報
【文献】特許第4411394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、第1の手法では、三原色の発色層を表層から基材側に向かって閾値が小さくなるように積層した媒体を用いるため、低温発色層に伝熱するために一定の時間を要するため、トータルの印刷時間も長くなる虞があった。また、第2の手法では、互いに異なる3種の波長のレーザを用い高コストになる虞があった。
【0008】
本発明の実施形態は、上記に鑑みてなされたものであって、簡略化された構成でコストを抑制しながらカラー画像記録を迅速化することが可能なレーザ記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態のレーザ記録装置は、熱によって発色する少なくとも1つの発色層と少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層され感熱記録媒体のためのレーザ記録装置であって、複数のレーザ光源からのレーザ光を出射する複数の出射部を並べた記録ヘッドと、複数のレーザ光源を各々独立に発光させる制御を並列処理し、複数の出射部からのレーザ光を感熱記録媒体に導く記録コントローラとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態のレーザ記録装置に使用される感熱記録媒体の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
図2図2は、感熱記録媒体の構成例の断面図である。
図3図3は、感熱記録媒体の厚みおよび熱伝導率比の説明図である。
図4図4は、光熱変換層の光吸収特性の一例の説明図である。
図5図5は、レーザ記録装置の概要構成ブロック図である。
図6図6は、レーザ記録装置の動作処理フローチャートである。
図7図7は、レーザ記録装置における記録ヘッドの構成例の正面図および上面図である。
図8図8は、レーザ光源ユニットにおける記録ヘッドの出射ピッチと記録解像度との関係の説明図である。
図9図9は、記録ヘッドの変形例の正面図および上面図である。
図10図10は、レーザ記録装置の記録ヘッドに対する記録コントローラの機能の説明図である。
図11図11は、光吸収発色層が省略された感熱記録媒体の構成例の断面図である。
図12図12は、光吸収発色層が省略された感熱記録媒体の別の構成例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
[一実施形態]
まず、一実施形態のレーザ記録装置に使用される感熱記録媒体(偽変造防止媒体)10について説明する。
図1は、感熱記録媒体10の情報記録がなされた状態における外観正面図である。
【0012】
情報記録がなされた感熱記録媒体10は、大別すると、証明写真等のフルカラー画像を記録するフルカラー画像形成領域ARCと、ID情報、氏名、発行日などの特定情報がモノクロで記録されたモノクロ画像形成領域ARMと、を備えている。
【0013】
図2は、感熱記録媒体10の構成例の断面図である。
図3は、感熱記録媒体10の厚みおよび熱伝導率比の説明図である。
【0014】
感熱記録媒体10は、熱によって発色する少なくとも1つの発色層と少なくとも1つの発色層の発色により得られた記録情報を保護する保護層とが積層された記録媒体である。この記録媒体は、記録前において光透過性である。
【0015】
具体例として、感熱記録媒体10は、図1に示すように、基材11上に、接着層12、光熱変換層13、高温感熱Y(イエロー)発色層14Y、中間層15、中温感熱M(マゼンタ)発色層14M、中間層16、低温感熱C(シアン)発色層14C、光吸収発色層14K、接着層17、および保護/機能層18がこの順番で積層された構造である。光吸収発色層14Kは、黒(K)発色層として設けられる。発色層14Y、発色層14M、発色層14C、および発色層14Kは、発色層群14を構成する。尚、発色層14Y、発色層14M、および発色層14Cの混色によって黒を発色させる場合には、光吸収発色層14Kを省略してもよい。
【0016】
ここで、発色層14Y、発色層14Mおよび発色層14Cは、 イエロー、マゼンタ、シアンの三原色で画像記録を行うための感熱記録層として機能している。
また、中間層15および中間層16は、伝熱量を調整し、伝熱を抑制する断熱層として機能している。
【0017】
また、基材11は、接着層12、光熱変換層13、高温感熱Y発色層14Y、中間層15、中温感熱M発色層14M、中間層16、低温感熱C発色層14C、光吸収発色層14K、接着層17、および保護/機能層18を保持する。
【0018】
ここで、基材11の厚みは、例えば、100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~5.00W/m/Kとされる。
【0019】
光熱変換層13は、所定波長の記録光(記録レーザ光)を吸収して光/熱変換を行って発色層14Y、発色層14Mおよび発色層14Cのうち、少なくともいずれかの感熱発色層を発色させるための熱を生成し、伝達する層である。
ここで、光熱変換層13の厚みは、例えば、0.5~30μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0020】
接着層12は、基材11と光熱変換層13とを結合しつつ保持する層である。
ここで、接着層12の厚みは、例えば、0.5~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0021】
発色層14Yは、その温度が第1閾値温度T1以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、発色層14Yの厚みは、例えば、1~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~10W/m/Kとされる。
【0022】
発色層14Mは、その温度が第2閾値温度T2(<T1)以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、発色層14Mの厚みは、例えば、1~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.1~10W/m/Kとされる。
【0023】
発色層14Cは、その温度が第2閾値温度T3(<T2<T1)以上となると発色する感熱材料としての示温材料を含む層である。
ここで、発色層14Cの厚みは、例えば、1~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.1~10W/m/Kとされる。
【0024】
中間層15は、発色層14Yの発色時に熱的障壁を与え、発色層14C側からの発色層14Mおよび発色層14Cへの伝熱を抑制する層である。
ここで、中間層15の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0025】
中間層16は、発色層14Mの発色時に熱的障壁を与え、発色層14M側からの発色層14Cへの伝熱を抑制する層である。
ここで、中間層16の厚みは、例えば、7~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0026】
光吸収発色層14Kは、顔料粒子を含み、顔料粒子が記録光であるレーザ光を吸収して炭化することにより不可逆的に発色する層である。
ここで、光吸収発色層14Kの厚みは、例えば、1~200μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0027】
接着層17は、光吸収発色層14Kと保護/機能層18とを結合しつつ保持する層である。
ここで、接着層17の厚みは、例えば、0.5~100μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~50W/m/Kとされる。
【0028】
保護/機能層18は、接着層17、光吸収発色層14K、発色層14C、中間層16、発色層14M、中間層15、発色層14Y、光熱変換層13、接着層12を保護するとともに、ホログラム、レンチキュラーレンズ、マイクロアレイレンズ、紫外励起型の蛍光インク等の偽造防止アイテムの配置、紫外線カット層など内部保護アイテムの挿入、またはそれら両方の機能等を用いるために設けられる層である。
ここで、保護/機能層18の厚みは、例えば、0.5~10μmとされ、その熱伝導率比は、0.01~1W/m/Kとされる。
【0029】
図4は、光熱変換層の光吸収特性の一例の説明図である。
図4に示すように、光熱変換層13は、近赤外線に属する波長λ(例えば、λ=1064nm)に吸収ピークを有する赤外線吸収特性を有している。
【0030】
一方、接着層12、発色層14Y、中間層15、発色層14M、中間層16、および発色層14C、接着層17、および保護/機能層18は、近赤外線に属する波長λを有する光(近赤外光)を透過する材料で形成されている。基材11については、少なくとも一部が近赤外光を透過する材料で形成されている。これは、光吸収発色層14Kあるいは光熱変換層13が吸収可能な波長λを有する光(近赤外光)を到達させるためだからである。
【0031】
したがって、基材11側から波長λ(例えば、λ=1064nm)を有する近赤外光が入射された場合には、フルカラー画像形成領域ARCにおいては、基材11→接着層12の順番で各層を透過し、光熱変換層13にほとんど吸収されて、光熱変換され、発色層14Y、発色層14Mあるいは発色層14Cを発色させることとなる。
【0032】
一方、モノクロ画像形成領域ARMにおいては、保護/機能層18→接着層17の順番で各層を透過し、光吸収発色層14Kにほとんど吸収されて、光吸収発色層14Kを発色させることとなる。
【0033】
保護/機能層18は、必要に応じて設ければ良く、具体的な機能としては、ホログラム、レンチキュラーレンズ、マイクロアレイレンズ、紫外励起型の蛍光インク等の偽造防止アイテムの挿入、紫外線カット層など内部保護アイテムの挿入、またはそれら両方などを用いることができる。保護/機能層18の下に記録されるカラー記録やモノクロ記録を記録終了後に視認する必要があるため、無色透明が好ましい。
【0034】
感熱記録媒体10の例では、高温感熱Y発色層14Yと光熱変換層13とが独立な層とし積層されいるが、別の例として、1種の光熱変換材料を高温感熱Y発色層14Yに混合することで、高温感熱Y発色層14Yが光熱変換層を兼ねることができる。
【0035】
次に一実施形態のレーザ記録装置について説明する。
【0036】
図5は、一実施形態のレーザ記録装置の概要構成ブロック図である。
【0037】
一実施形態のレーザ記録装置30は、少なくとも近赤外レーザ光NIR(=波長λ)を出力するレーザ光源ユニット31と、近赤外レーザ光NIRのビーム径を拡大するビームエキスパンダ32と、近赤外レーザ光NIRを反射する第1方向スキャンミラー33を駆動し、第1方向に近赤外レーザ光NIRを走査するために第1方向スキャンミラー33を駆動する第1モータ34を備えた第1方向走査ユニット35と、近赤外レーザ光NIRを反射する第2方向スキャンミラー36を駆動し、第1方向と直交する第2方向に近赤外レーザ光NIRを走査するために第2方向スキャンミラー37を駆動する第2モータ38を備えた第2方向走査ユニット39と、第1方向走査ユニット35および第2方向走査ユニット39を介して導かれた近赤外レーザ光NIRを感熱記録媒体10に集光する集光レンズ(F・θレンズ)40と、感熱記録媒体10を所定位置に搬送し、保持するステージ41と、入力された入力画像データGDに基づいて、遠赤外レーザ光LFIRの照射位置および照射強度を算出するとともに、レーザ記録装置30全体を制御する制御部42と、制御部42の算出結果に基づいてレーザ光源ユニット31のレーザ出力を制御する出力制御部43と、制御部42の算出結果に基づいて第1モータ34および第2モータ38を制御し、近赤外レーザ光NIRの感熱記録媒体10への照射位置を制御する照射位置制御部44と、を備えている。
【0038】
上記構成において、レーザ光源ユニット31は、近赤外領域のレーザである半導体レーザ、ファイバーレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ等を用いることが可能である。
【0039】
次にレーザ記録装置30における感熱記録媒体10への記録処理について説明する。
【0040】
図6は、レーザ記録装置の動作処理フローチャートである。
【0041】
まず、レーザ記録装置30の制御部42は、図示しない搬送装置を介して感熱記録媒体10を記録位置まで搬入する(ステップS11)。
【0042】
続いてレーザ記録装置30の制御部42は、図示しないセンサにより搬入された感熱記録媒体10を検知し(ステップS12)、所定の搬入位置において感熱記録媒体10を図示しない固定装置により固定する(ステップS13)。
【0043】
続いて、レーザ記録装置30の制御部42は、RGBデータとしての入力画像データGDが入力されると(ステップS14)、入力画像データGDを解析し、ピクセル毎の色データ(CMYKデータ)に変換する(ステップS15)。
【0044】
続いて、制御部42は、ピクセル毎の色データに基づいて、発色させる層の組合せに応じて、色データをレーザ照射パラメータ値に変換する(ステップS16)。
【0045】
ここで、レーザ照射パラメータ値は、具体的には、パワー設定値、走査速度設定値、パルス幅設定値、照射繰返数設定値、走査ピッチ設定値等である。
【0046】
続いて、制御部42は、出力制御部43および照射位置制御部44を制御し、ステップS13で設定されたレーザ照射パラメータ値に基づいて、近赤外レーザ光NIRを用いて、高温感熱Y発色層14Y、中温感熱M発色層14Mおよび低温感熱C発色層14Cの発色を行わせるためフルカラー画像形成領域ARCに対する画像記録を行う(ステップS17)。
【0047】
ここで、フルカラー画像形成領域ARCにおける発色制御について説明する。
【0048】
フルカラー画像形成領域ARCにおいては、レーザ記録装置30は、高温感熱Y発色層14Y、中温感熱M発色層14Mおよび低温感熱C発色層14Cを用いて発色を行う。
【0049】
上述したように、高温感熱Y発色層14Yは、その温度が第1閾値温度T1以上となると発色し、中温感熱M発色層14Mは、その温度が第2閾値温度T2(<T1)以上となると発色し、低温感熱C発色層14Cは、その温度が第3閾値温度T3(<T2<T1)以上となると発色する。
【0050】
より具体的には、例えば、高温感熱Y発色層14Yに対応する第1閾値温度T1=150~270℃、中温感熱M発色層14Mに対応する第2閾値温度T2=100~200℃、低温感熱C発色層14Cに対応する第3閾値温度T3=60~140℃の範囲とし、上記関係を満たすように設定する。
【0051】
次にモノクロ画像形成領域ARMにおける発色制御について説明する。
【0052】
フルカラー画像形成領域ARCにおける記録が終了すると、制御部42は、出力制御部43及び照射位置制御部44を制御し、ステップS13で設定されたレーザ照射パラメータ値に基づいて、近赤外レーザ光NIRを用いて、光吸収発色層14Kを発色させることとなる。
【0053】
続いてレーザ記録装置30制御部42は、図示しない固定装置による記録媒体10の固定を解除し(ステップS19)、図示しない搬送装置を介して記録媒体10を所定の搬出位置まで搬出して処理を終了する(ステップS20)。
【0054】
以上の説明のように、一実施形態によれば、単一波長のレーザ光源を用いてフルカラー/モノクロの画像記録を行うことができる。さらに一実施形態によれば、サーマルヘッドなどを用いて追記を行うことができず、記録媒体の改竄を防止することができ、セキュリティの向上が図れる。
【0055】
次に、レーザ光源ユニット31の構成についてさらに説明する。
図7は、レーザ記録装置におけるレーザ光源ユニットの構成例の正面図および上面図である。
【0056】
レーザ光源ユニット31は、図7に示すような記録ヘッド20を備える。一例として、記録ヘッド20は、マルチレーザ光源(LD)ヘッドとして、複数の出射部21と、複数のレーザ光源22を備える。複数の出射部21は1列に並ぶようにアレイされる。複数の出射部21と複数のレーザ光源22は複数の光ファイバー23を介して接続される。複数の光ファイバー23の中間には、複数のコネクタ24が挿入されている。複数の出射部21は、複数のレーザ光源22からのレーザ光をそれぞれ出射させる。複数の出射部21は、光ファイバー23の端部を出射口から突出させた構造である。図7では、複数の出射部21、複数のレーザ光源22、光ファイバー23、および複数のコネクタ24がいずれも6個に設定されている。
【0057】
この構成において、6個のレーザ光源22のうちの4個は、発色層14Y、発色層14M、発色層14C、および発色層14Kにそれぞれ割り当てられたY/M/C/K発色用レーザ光源(LD)である。残りの2個は、感熱記録媒体10のプレヒート用レーザ光源(LD)および照射開始位置マーカ用可視光レーザ光源(LD)である。Y/M/C発色用レーザ光源については、高温用、中温用、低温用パワー比(PH:PM:PL)は100~50:70~10:50~1の範囲で制御され、PH≧PM≧PLの関係が保たれることが好ましい。
【0058】
図8は、レーザ光源ユニットにおける記録ヘッドの出射ピッチと記録解像度との関係の説明図である。複数の出射部21の出射ピッチは、記録解像度ピッチの整数倍(N)に設定される。記録解像度は、レンズ40を図8に示すように動かして光学倍率を変更することにより調整できる。
【0059】
図9は、記録ヘッド20の変形例の正面図および上面図である。ここでは、記録ヘッド20が、複数の出射部21の一部においてファイバー端を突出させた構造にある。この構造により後段の光学系での光学倍率を変更し、シアン、マゼンタ、イエローの発色層毎に異なるスポット径を得ることができる。特に、低い発色温度の発色層に適するように広げられたスポット径を得るために有効である。
【0060】
図10は、レーザ記録装置30の記録ヘッド20に対する記録コントローラ50の機能の説明図である。記録コントローラ50には、制御部42、出力制御部43、照射位置制御部44が含まれ、さらにレーザ光源ユニット31から感熱記録媒体10へレーザ光を導く光学系および光学系の光学倍率を変更する倍率変更機構も含まれる。
【0061】
記録コントローラ50は、6個のレーザ光源22に対して目的別に異なる記録制御を行うように構成される。記録制御は、Y/M/C/K発色用レーザ光源22を割り当てられた発色層毎に異なる定格出力に設定することを含む。記録制御は、Y/M/C/K発色用レーザ光源22からのレーザ光のスポット径を割り当てられた発色層毎に変更することを含む。これにより、シアンの発色時間を短縮できる。記録制御は、履歴制御として隣の点の画素データに応じて、レーザ光源22の出力、照射時間を変更することを含む。記録制御は、各レーザ光源22から出射されたレーザ光をキャプチャしてフィードバックすることにより自動パワー制御を行うことを含む。記録制御は、感熱記録媒体10に情報を記録する、Y/M/C/K発色用レーザ光源22からのレーザ光照射に先行してプレヒート用レーザ光源22からのレーザ光を感熱記録媒体10に照射することを含む。プレヒートするためのレーザ光照射は、プレヒート用レーザ光源22をレンズに寄せて、情報を記録するためのレーザ照射のときよりも大きなスポット径で行われる。記録制御は、可視光レーザ光源22からのレーザ光によって照射開始位置をマークすることを含む。記録制御は、記録画素の前後に配置される複数の画素の記録データに基づいて制御パラメータを変更することを含む。記録制御は、複数の出射部21のうちの隣り合う出射部から同時にレーザ光を出射させないように複数のレーザ光源22の制御をすることを含む。これにより、蓄熱の影響が軽減される。
【0062】
このような一実施形態のレーザ記録装置では、目的の異なる複数のレーザ光源22からのレーザ光を独立かつ並列的に感熱記録媒体10に照射できる。したがって、簡略化された構成でコストを抑制しながらカラー画像記録を迅速化することが可能である。
【0063】
以上の説明においては、同じ波長(λ=1064nm)のレーザ光が記録のために基材11側および保護/機能層18側からそれぞれ光熱変換層13および光吸収発色層14Kに照射されている。
【0064】
これに対し、互いに異なる波長のレーザ光を使用し、光熱変換層13と光吸収発色層14Kの吸収スペクトル特性を異ならせることもできる。この場合、光熱変換層13の吸収スペクトル特性は、レーザ光の吸収ピークが例えば波長λ=800nmになるように設定され、光吸収発色層14Kの吸収スペクトル特性はレーザ光の吸収ピークが波長λ=1064nmになるように設定される。さらに、波長λ=800nmのレーザ光は保護/機能層18に近い光吸収発色層14Kを介して光熱変換層13に向かうため、光吸収発色層14Kは波長(λ=800nm)のレーザ光を透過するような材料を用いる必要がある。これにより、異なる波長のレーザ光の照射をいずれも保護/機能層18側からにすることができる。この場合、基材11は可視光および近赤外光に対して透明である必要がない。
【0065】
また、光熱変換層13と光吸収発色層14Kとの位置関係は逆にすることもできる。この場合、波長λ=1064nmのレーザ光は保護/機能層18に近い光熱変換層13を介して光吸収発色層14Kに向うため、光熱変換層13は波長(λ=1064nm)のレーザ光を透過するような材料を用いる必要がある。これにより、異なる波長のレーザ光の照射をいずれも保護/機能層18側からにすることができる。この場合、基材11は可視光および近赤外光に対して透明である必要がない。
【0066】
図11は、光吸収発色層が省略された感熱記録媒体の構成例の断面図である。図12は、光吸収発色層が省略された感熱記録媒体の別の構成例の断面図である。図11では、光熱変換層13が保護/機能層18の近くに配置され、発色層群14が光熱変換層13と基材11との間に配置される。図12では、発色層群14が保護/機能層18の近くに配置され、光熱変換層13が発色層群14と基材11との間に配置される。図11および図12に示すような構成例であっても、基材11は可視光および近赤外光に対して透明である必要がない。
【0067】
以上の説明においては、記録ヘッド20が複数の出射部21を1ラインの直線状のものとしたが、複数ラインの直線状、千鳥状(45度のスクリーン角、30度のスクリーン角、10~45度の任意のスクリーン角)、に並べた構造にしてもよい。
【0068】
以上の説明においては、発色用レーザ光として近赤外レーザ光を用いていたが、光熱変換層の吸収波長によりレーザ光として近紫外レーザ光および遠紫外レーザ光を用いるように構成することも可能である。
【0069】
以上の説明においては、独立した制御部42、出力制御部43および照射位置制御部44が記録コントローラ50の一部として使用されたが、これらをMPU、ROM、RAM等を有するコンピュータとして構成し、これらの機能をプログラムおよび各種インタフェースを介して実行するように構成することも可能である。
【0070】
この場合において、コンピュータで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、USBメモリなどの半導体記録装置等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されるようにしてもよい。
【0071】
また、コンピュータで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、制御部52で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0072】
また、コンピュータで実行されるプログラムをROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
10 記録媒体
11 基材
12 接着層
13 光熱変換層
14 発色層群
14Y 高温感熱Y発色層
14M 中温感熱M発色層
14C 低温感熱C発色層
14K 光吸収発色層
15 中間層
16 中間層
17 接着層
18 保護/機能層
20 記録ヘッド
21 出射部
22 レーザ光源
23 光ファイバー
24 コネクタ
30 レーザ記録装置
31 レーザ光源ユニット
32 ビームエキスパンダ(光学系)
33 第1方向スキャンミラー(光学系)
34 第1モータ
35 第1方向走査ユニット
37 第2方向スキャンミラー(光学系)
38 第2モータ
39 第2方向走査ユニット
40 集光レンズ(光学系)
41 ステージ
42 制御部
43 出力制御部
44 照射位置制御部
50 記録コントローラ
ARC フルカラー画像形成領域
ARM モノクロ画像形成領域
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図10
図11
図12