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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】光学装置および3次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/40 20210101AFI20231204BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231204BHJP
   G02B 26/10 20060101ALN20231204BHJP
【FI】
B22F12/40
G03F7/20 505
G02B26/10 104Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068194
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165769
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】水野 博文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 佳三
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 泰充
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-294939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111318(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 10/00,12/00,12/40
B23K 26/34
B29C 64/264
G03F 7/20
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物上の照射面に変調ビームを照射する光学装置であって、
レーザ光を長軸方向に長い線状の平行ビームに整形する照明光学系と、
前記平行ビームを変調ビームに変調する光変調器と、
前記変調ビームを対象物の照射面に導く投影光学系と、
を備え、
前記照明光学系は、前記レーザ光の短軸方向および前記長軸方向における強度分布をガウス分布から変換して、前記光変調器の変調面における前記平行ビームの前記短軸方向および前記長軸方向の強度分布をトップハット分布とするビームシェイパを備え、
前記投影光学系は、
第1レンズと、
前記第1レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第2レンズと、
前記第1レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第3レンズと、
前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記第3レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第4レンズと、
を備え、
前記長軸方向について、前記第3レンズおよび前記第4レンズにより前記変調面と前記照射面とが光学的に共役とされ、
前記短軸方向について、前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記第3レンズにより、前記変調面と前記第4レンズの前側焦点位置とが光学的に共役とされ、前記第4レンズは、前記前側焦点位置におけるトップハット分布のビームを前記照射面に集光させることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置であって、
前記第3レンズは前記第2レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置することを特徴とする光学装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学装置であって、
前記投影光学系は、
前記第3レンズと前記第4レンズとの間に位置し、前記光変調器からの長軸側の非0次回折光を遮る長軸側遮光部と、
前記第1レンズと前記第2レンズおよび前記第3レンズとの間に位置し、前記光変調器からの短軸側の非0次回折光を遮る短軸側遮光部と、
をさらに備えることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光学装置であって、
前記光変調器は、2次元配列された複数の変調素子を備えることを特徴とする光学装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学装置であって、
前記光変調器はPLVであることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
3次元造形装置であって、
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学装置と、
前記光学装置へと前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
前記光学装置からの前記変調ビームが照射される前記対象物であり、前記変調ビームを造形材料上で走査する走査部と、
を備えることを特徴とする3次元造形装置。
【請求項7】
請求項6に記載の3次元造形装置であって、
前記走査部は、回転することによって前記変調ビームの進行方向を変更するガルバノミラーを備えることを特徴とする3次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物上の照射面に変調ビームを照射する光学装置、および、当該光学装置を備える3次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属粉末等の造形材料に変調されたレーザ光を照射し、造形材料を焼結させることにより3次元造形を行うSLS(Selective Laser Sintering)式の3次元造形装置が使用されている。当該3次元造形装置では、生産性の向上が求められており、造形材料に照射されるレーザ光のパワー密度(すなわち、単位面積当たりの光強度)を増大させることが検討されている。ただし、レーザ光を変調して照射する光学装置において、光変調器に入射するレーザ光のパワー密度を増大させると、強度分布がガウス分布であるレーザ光のピーク強度(すなわち、最大強度)が過大となり、光変調器が損傷するおそれがある。
【0003】
一方、特許文献1では、ステージ照明やヘッドライト等に使用される発光装置において、レーザダイオードやLEDから出射された第1波長の光(例えば、青色光)を、空間的に平坦な強度分布を有するビームへと再分布させるトップハットビームシェイパを設けることにより、光変換部材において第1波長の光を第2波長の光(例えば、黄色光)に変換する際の効率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2018-521478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の光学装置において、光変調器に入射するレーザ光の強度分布をトップハットビームシェイパによって平坦に整形することにより、光変調器を損傷させることなく、光変調器への投入光量を増大させることが考えられる。
【0006】
この場合、トップハットビームシェイパにより整形されたレーザ光の強度分布は、光変調器の変調面ではトップハット分布となり、光路上の他の位置では乱れた状態となっている。したがって、対象物上にレーザ光を集光させる集光レンズの前側焦点位置においても、レーザ光の強度分布は乱れているため、後側焦点位置(すなわち、対象物上の照射面)でレーザ光の強度分布に主たるピークが生じず、レーザ光を好適に集光できない、という問題が考えられる。なお、光変調器から出射されるレーザ光の強度分布がガウス分布である場合は、集光レンズの前側焦点位置における強度分布もガウス分布であるため、後焦点位置での強度分布もガウス分布となり、好適に集光が行われる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、対象物上の照射面に変調ビームを照射する光学装置において、光変調器への投入光量を増大させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、対象物上の照射面に変調ビームを照射する光学装置であって、レーザ光を長軸方向に長い線状の平行ビームに整形する照明光学系と、前記平行ビームを変調ビームに変調する光変調器と、前記変調ビームを対象物の照射面に導く投影光学系とを備え、前記照明光学系は、前記レーザ光の短軸方向および前記長軸方向における強度分布をガウス分布から変換して、前記光変調器の変調面における前記平行ビームの前記短軸方向および前記長軸方向の強度分布をトップハット分布とするビームシェイパを備え、前記投影光学系は、第1レンズと、前記第1レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第2レンズと、前記第1レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第3レンズと、前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記第3レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する第4レンズとを備え、前記長軸方向について、前記第3レンズおよび前記第4レンズにより前記変調面と前記照射面とが光学的に共役とされ、前記短軸方向について、前記第1レンズ、前記第2レンズおよび前記第3レンズにより、前記変調面と前記第4レンズの前側焦点位置とが光学的に共役とされ、前記第4レンズは、前記前側焦点位置におけるトップハット分布のビームを前記照射面に集光させる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光学装置であって、前記第3レンズは前記第2レンズよりも前記変調ビームの進行方向に位置する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光学装置であって、前記投影光学系は、前記第3レンズと前記第4レンズとの間に位置し、前記光変調器からの長軸側の非0次回折光を遮る長軸側遮光部と、前記第1レンズと前記第2レンズおよび前記第3レンズとの間に位置し、前記光変調器からの短軸側の非0次回折光を遮る短軸側遮光部とをさらに備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光学装置であって、前記光変調器は、2次元配列された複数の変調素子を備える。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の光学装置であって、前記光変調器はPLVである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、3次元造形装置であって、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光学装置と、前記光学装置へと前記レーザ光を出射するレーザ光源と、前記光学装置からの前記変調ビームが照射される前記対象物であり、前記変調ビームを造形材料上で走査する走査部とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の3次元造形装置であって、前記走査部は、回転することによって前記変調ビームの進行方向を変更するガルバノミラーを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、光変調器への投入光量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施の形態に係る3次元造形装置の構成を示す図である。
図2】光変調器の構造を示す図である。
図3】光学装置の構造および光学装置における光路を示す図である。
図4】光学装置の構造および光学装置における光路を示す図である。
図5】短軸側遮光部を示す斜視図である。
図6】長軸側遮光部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る3次元造形装置1の構成を示す図である。3次元造形装置1は、粉末状またはペースト状の造形材料に変調されたレーザ光を照射し、造形材料を焼結または溶融させることにより3次元造形を行うSLS(Selective Laser Sintering)式の3次元造形装置である。造形材料は、例えば、金属、エンジニアリングプラスチック、セラミックスまたは合成樹脂等である。当該造形材料は、複数種類の材料を含んでいてもよい。
【0018】
3次元造形装置1は、レーザ光源11と、光学装置12と、走査部13と、材料供給機構14とを備える。3次元造形装置1では、レーザ光源11から出射されたレーザ光L31は、光学装置12により走査部13へと導かれ、走査部13により、材料供給機構14の造形空間140内の造形材料91上にて走査される。これにより、造形材料91のうち、レーザ光が照射された部位が焼結する。そして、造形空間140への造形材料91の供給、および、造形材料91上におけるレーザ光の走査が繰り返されることにより、3次元造形物が形成される。図1では、図の理解を容易にするために、光学装置12の各構成を二点鎖線にて囲む。
【0019】
3次元造形装置1では、製造される予定の3次元造形物の設計データ(例えば、CADデータ)等に基づいて、レーザ光源11、光学装置12(例えば、後述する光変調器22)、走査部13および材料供給機構14等の構成が、図示省略の制御部により制御される。当該制御部は、例えば、プロセッサと、メモリと、入出力部と、バスとを備える通常のコンピュータである。
【0020】
レーザ光源11は、光学装置12へとレーザ光L31を出射する。レーザ光源11は、例えば、ファイバレーザ光源である。レーザ光L31の波長は、例えば1.070μmである。
【0021】
光学装置12は、レーザ光源11からのレーザ光L31を変調ビームL33に変調し、走査部13へと照射する。光学装置12は、照明光学系21と、光変調器22と、投影光学系23とを備える。照明光学系21および投影光学系23はそれぞれ、後述するように、レンズ等の光学素子を複数備える。
【0022】
照明光学系21は、レーザ光源11からのレーザ光L31を、一の方向(以下、「長軸方向」と呼ぶ。)に長い略線状の平行ビームL32に整形して光変調器22へと導く。換言すれば、平行ビームL32の断面形状は、長軸方向に長く、長軸方向に垂直な短軸方向に短い略線状である。平行ビームL32の断面形状とは、平行ビームL32の進行方向に対して垂直な面における平行ビームL32の形状である。以下の説明において、光の断面とは、上記と同様に、当該光の進行方向に対して垂直な面における当該光の断面を意味する。平行ビームL32の断面形状は、略矩形状と捉えることもできる。平行ビームL32の断面の大きさは、平行ビームL32の進行方向のいずれの位置においても同じである。光変調器22上における平行ビームL32の照射領域の形状は、例えば、長軸方向の長さが28mm、短軸方向の長さが1mmの略線状(または略矩形状)である。
【0023】
光変調器22は、照明光学系21からの平行ビームL32を、変調ビームL33に変調して投影光学系23へと導く。光変調器22としては、例えば、PLV(Planar Light Valve)、GLV(Grating Light Valve)(登録商標)またはDMD(Digital Micromirror Device)等が利用可能である。本実施の形態では、光変調器22はPLVの一種であるLPLV(Liner Planar Light Valve)である。
【0024】
図2は、光変調器22(すなわち、LPLV)の構造を簡素化して示す図である。光変調器22は、図示省略の基板上に隣接してマトリクス状に配置された(すなわち、2次元配列された)複数の略矩形状のピクセル221を備える。光変調器22では、当該複数のピクセル221の表面が変調面となる。図2に示す例では、図中の縦方向にM個かつ横方向にN個のピクセル221が配置される。図2中の横方向は、平行ビームL32(図1参照)の長軸方向に対応し、図2中の縦方向は、平行ビームL32の短軸方向に対応する。
【0025】
各ピクセル221は、固定部材222と、可動部材223とを備えた変調素子である。固定部材222は、上記基板に固定された平面状の略矩形の部材であり、中央に略円形の開口が設けられる。可動部材223は、固定部材222の当該開口に設けられる略円形の部材である。固定部材222の上面(すなわち、図2中の紙面に垂直な方向における手前側の面)には、固定反射面が設けられる。可動部材223の上面には、可動反射面が設けられる。可動部材223は、図2中の紙面に垂直な方向に移動可能である。
【0026】
各ピクセル221では、固定部材222と可動部材223との相対位置が変更されることにより、ピクセル221からの反射光が、0次光(すなわち、正反射光)と非0次回折光との間で切り替えられる。換言すれば、ピクセル221では、可動部材223が固定部材222に対して相対移動することにより、回折格子を利用した光変調が行われる。光変調器22から出射された0次光は、投影光学系23(図1参照)により走査部13へと導かれる。また、光変調器22から出射された非0次回折光(主として、1次回折光)は、投影光学系23により走査部13とは異なる方向へと導かれ、遮光される。
【0027】
投影光学系23では、図2中の縦方向に1列に並ぶM個のピクセル221(以下、「ピクセル列」とも呼ぶ。)からの反射光が積算されて、変調ビームL33として走査部13へと照射される。これにより、走査部13から造形材料91へと照射される変調ビームL33のパワー密度を増大させることができる。光変調器22では、1つのピクセル列のM個のピクセル221(すなわち、M個の変調素子)を、1つの単位空間に対応する1つの変調要素と捉えることもできる。光変調器22は、光変調器22上における平行ビームL32の長軸方向に1列に並ぶN個の変調要素を備える光変調器として機能する。
【0028】
図1に示す投影光学系23は、光変調器22からの変調ビームL33を集光しつつ走査部13へと導く。換言すれば、走査部13は、光学装置12により変調ビームL33が導かれる対象物である。変調ビームL33は、走査部13の照射面131上に照射される。
【0029】
走査部13は、光学装置12の投影光学系23からの変調ビームL33を反射し、材料供給機構14の造形空間140内の造形材料91上で走査する。走査部13としては、例えば、ガルバノスキャナまたはポリゴンレーザスキャナ等が利用可能である。本実施の形態では、走査部13は、ガルバノミラー132およびガルバノモータ(図示省略)を備えるガルバノスキャナであり、ガルバノミラー132の反射面が上述の照射面131となる。走査部13では、ガルバノモータによってガルバノミラー132が回転することにより、ガルバノミラー132により反射される変調ビームL33の進行方向が変更される。その結果、造形材料91上に照射された変調ビームL33が、変調ビームL33の短軸方向に対応する走査方向に走査される。
【0030】
材料供給機構14は、造形部141と、供給部142とを備える。造形部141は、第1シリンダ143と、第1ピストン144とを備える。第1シリンダ143は、上下方向に延びる筒状の部材である。第1シリンダ143の内部空間の平面視における形状は、例えば略矩形である。第1ピストン144は、第1シリンダ143の内部空間に収容される略平板状または略柱状の部材であり、平面視における形状は、第1シリンダ143の内部空間と略同じである。第1ピストン144は、第1シリンダ143の内部空間において、上下方向に移動可能である。造形部141では、第1シリンダ143の内側面と第1ピストン144の上面とにより囲まれる3次元空間が、変調ビームL33による3次元造形が行われる造形空間140となる。
【0031】
供給部142は、第2シリンダ145と、第2ピストン146と、スキージ147とを備える。第2シリンダ145は、上下方向に延びる筒状の部材であり、第1シリンダ143の側方に隣接して配置される。第2シリンダ145の内部空間の平面視における形状は、例えば略矩形である。第2ピストン146は、第2シリンダ145の内部空間に収容される略平板状または略柱状の部材であり、平面視における形状は、第2シリンダ145の内部空間と略同じである。第2ピストン146は、第2シリンダ145の内部空間において、上下方向に移動可能である。供給部142では、第2シリンダ145の内側面と第2ピストン146の上面とにより囲まれる3次元空間が、造形部141に供給される予定の造形材料91が貯溜される貯溜空間となる。スキージ147は、第2シリンダ145の上部開口を横断して水平方向に延びる棒状(例えば、略円柱状)の部材である。スキージ147は、第2シリンダ145の上端面に沿って水平方向に移動可能である。
【0032】
供給部142では、第2ピストン146が所定距離だけ上昇し、第2シリンダ145内の造形材料91が上方へと持ち上げられる。そして、スキージ147が第2シリンダ145上から第1シリンダ143上へと移動することにより、第2シリンダ145の上端面よりも上側に突出する造形材料91が、造形部141の造形空間140内に供給される。造形空間140内に保持された造形材料91の上面は、所定の高さ(例えば、第1シリンダ143の上端面と同じ高さ)に位置する。
【0033】
3次元造形装置1では、造形空間140内の造形材料91に対して、上述の変調ビームL33の走査が行われる。これにより、造形空間140内の造形材料91の表層部において、変調ビームL33が照射された部位が焼結し、3次元造形物を上下方向に積層される複数の層に分割した場合の1つの層に相当する部位が形成される。造形空間140内の造形材料91に対する上述の変調ビームL33の走査が終了すると、第1ピストン143が所定距離だけ下降する。その後、上述のように、供給部142から造形空間140への造形材料91の供給が行われ、変調ビームL33の走査が行われる。3次元造形装置1では、造形空間140に対する造形材料91の供給と、造形空間140内の造形材料91に対する変調ビームL33の走査とが繰り返されることにより、造形空間140内に3次元造形物が形成される。
【0034】
次に、光学装置12の詳細な構造について、図3および図4を参照しつつ説明する。図3では、平行ビームL32および変調ビームL33の短軸方向が、紙面に垂直な方向と一致するように、平行ビームL32および変調ビームL33の光路を示す。図3では、平行ビームL32および変調ビームL33の長軸方向は、図中の上下方向と一致する。また、図4では、平行ビームL32および変調ビームL33の長軸方向が、紙面に垂直な方向と一致するように、平行ビームL32および変調ビームL33の光路を示す。図4では、平行ビームL32および変調ビームL33の短軸方向は、図中の上下方向と一致する。
【0035】
光学装置12の照明光学系21は、コリメートレンズ211と、ビームシェイパ213と、シリンダーレンズ214,215とを備える。コリメートレンズ211、ビームシェイパ213およびシリンダーレンズ214,215は、レーザ光源11から光変調器22へと向かう進行方向において、この順番で配列される。コリメートレンズ211は、例えば、シリンドリカルレンズである。なお、図3および図4に示す例では、コリメートレンズ211は1枚であるが、コリメートレンズ211の枚数は2枚以上であってもよい。また、コリメートレンズ211は、平行光を生成できればよく、レンズ形状は球面であっても、非球面であっても、シリンドリカルであってもよい。
【0036】
ビームシェイパ213は、平行ビームL32の断面における短軸方向および長軸方向の光強度の分布(以下、単に「強度分布」とも呼ぶ。)を、ガウス分布から、最大強度の領域の幅が広い(すなわち、上部が略平坦な)トップハット分布へと変換するトップハットビームシェイパである。
【0037】
シリンダーレンズ214,215は、ビームシェイパ213を通過することで生成された矩形像を、短軸および長軸のそれぞれの方向に異なる倍率で、後述する光変調器22の変調面に結像させる。シリンダーレンズ214は、長軸方向にトップハット分布を拡大するためのシリンダーレンズ214aおよびシリンダーレンズ214bを備える。また、シリンダーレンズ215は、短軸方向にトップハット分布を拡大するためのシリンダーレンズ215aおよびシリンダーレンズ215bを備える。図3および図4に示す例では、シリンダーレンズ214a、シリンダーレンズ215a、シリンダーレンズ214bおよびシリンダーレンズ215bは、レーザ光源11から光変調器22へと向かう進行方向において、この順番で配列される。
【0038】
なお、照明光学系21では、上記以外の光学素子が追加されてもよい。また、照明光学系21では、シリンダーレンズ214,215は必ずしも設けられる必要はなく、例えば、光変調器22の変調面に所望の大きさの矩形像を形成するビームシェイパ213が用いられてもよい。
【0039】
照明光学系21は、上述のように、レーザ光源11から出射されるレーザ光L31を平行ビームL32に変換して光変調器22へと導く。照明光学系21に入射するレーザ光L31の断面における短軸方向および長軸方向の強度分布は、それぞれガウス分布である。実際には、これらの強度分布は、厳密なガウス分布ではなく、ガウス関数に近似した形状の分布である場合もあるが、以下の説明では、厳密なガウス分布、および、ガウス分布に近似した分布をまとめて「ガウス分布」と呼ぶ。
【0040】
照明光学系21では、レーザ光源11から出射されたレーザ光L31は、コリメートレンズ211を通過することにより、短軸方向および長軸方向において平行光とされ、平行ビームL32となる。平行ビームL32は、ビームシェイパ213およびシリンダーレンズ214,215を通過して光変調器22へと導かれる。ビームシェイパ213に入射する前の平行ビームL32の強度分布は、図3および図4の光路図の下側に矩形枠で囲んで示すように、長軸方向においてガウス分布であり、短軸方向においてもガウス分布である。
【0041】
平行ビームL32の短軸方向および長軸方向における強度分布は、ビームシェイパ213を通過することにより、図3および図4の光路図の下側に矩形枠で囲んで示すように、ガウス分布からトップハット分布(矩形分布とも呼ばれる。)に変換される。したがって、ビームシェイパ213を通過して光変調器22に入射した平行ビームL32の強度分布(すなわち、光変調器22の変調面における平行ビームL32の強度分布)は、短軸方向および長軸方向のそれぞれにおいてトップハット分布である。
【0042】
投影光学系23は、第1レンズ231と、第2レンズ232と、第3レンズ233と、第4レンズ234と、長軸側遮光部235と、短軸側遮光部236とを備える。第1レンズ231および第2レンズ232は、例えば、シリンドリカル凸レンズである。第3レンズ233および第4レンズ234は、例えば、球面凸レンズである。長軸側遮光部235は、例えば、短軸方向に平行に延びる矩形状の開口235aが中央部に設けられた平板部材である。短軸側遮光部236は、例えば、長軸方向に平行に延びる矩形状の開口236aが中央部に設けられた平板部材である。長軸側遮光部235および短軸側遮光部236の材料は、例えば、ステンレス鋼等の金属やセラミックス等である。
【0043】
第2レンズ232および第3レンズ233は、第1レンズ231よりも変調ビームL33の進行方向(すなわち、光変調器22から走査部13へと向かう変調ビームL33が進行する側)に位置する。換言すれば、第2レンズ232および第3レンズ233は、変調ビームL33の光路上において、第1レンズ231よりも走査部13に近い側に位置する。図3および図4に示す例では、第3レンズ233は、第2レンズ232よりも変調ビームL33の進行方向に位置する。第3レンズ233は、第1レンズ231と第2レンズ232との間に配置されてもよい。第4レンズ234は、第1レンズ231、第2レンズ232および第3レンズ233よりも、変調ビームL33の進行方向に位置する。
【0044】
投影光学系23では、第1レンズ231の短軸側の前側焦点位置(すなわち、光変調器22側の焦点位置)と、光変調器22の変調面とが一致していることが好ましい。このように、光変調器22と第1レンズ231との間隔を、第1レンズ231の前側焦点距離以下(好ましくは、当該前側焦点距離未満)としておくことで、第1レンズ231を通過した後に生じる0次回折光と1次回折光との集光点間隔が広がる。その結果、0次回折光を1次回折光等の非0次回折光から容易に分離することができる。また、第3レンズ233の前側焦点位置と、光変調器22の変調面とが一致している。第1レンズ231の短軸側の後側焦点位置(すなわち、走査部13側の焦点位置)は、第2レンズ232および第3レンズ233の短軸側の前側合成焦点位置と一致する。第3レンズ233の後側焦点位置は、第4レンズ234の前側焦点位置と一致しており。第4レンズ234の後側焦点位置は、走査部13の照射面131と一致している。
【0045】
投影光学系23では、第3レンズ233および第4レンズ234により、光変調器22の変調面と、走査部13の照射面131とが、長軸方向について光学的に共役とされる。また、短軸方向について、第1レンズ231、第2レンズ232および第3レンズ233により、光変調器22の変調面と、第4レンズ234の前側焦点位置とが光学的に共役とされる。第4レンズ234は、短軸方向について、変調ビームL33を集光して走査部13の照射面131に集光させる。走査部13の照射面131は、第2レンズ232、第3レンズ233および第4レンズ234により、第1レンズ231の後側焦点位置と短軸方向について光学的に共役である。
【0046】
図3および図4に示す例では、第1レンズ231、短軸側遮光部236、第2レンズ232、第3レンズ233、長軸側遮光部235および第4レンズ234は、光変調器22から走査部13へと向かう進行方向において、この順番で配列される。短軸側遮光部236は、第1レンズ231と第2レンズ232との間に位置する。なお、第3レンズ233が第1レンズ231と第2レンズ232との間に配置される場合、短軸側遮光部236は、第1レンズ231と第3レンズ233との間に位置する。すなわち、短軸側遮光部236は、第1レンズ231と、第2レンズ232および第3レンズ233との間において、変調ビームL33の短軸方向の集光位置近傍に配置される。短軸側遮光部236は、例えば、第1レンズ231の短軸側の後側焦点位置に配置される。また、長軸側遮光部235は、第3レンズ233と第4レンズ234との間において、変調ビームL33の長軸方向の集光位置近傍に配置される。長軸側遮光部235は、例えば、第3レンズ233の後側焦点位置に配置される。
【0047】
なお、投影光学系23では、第1レンズ231、第2レンズ232、第3レンズ233および第4レンズ234の種類は様々に変更されてよく、上記以外の光学素子が追加されてもよい。また、長軸側遮光部235および短軸側遮光部236の材料、形状および構造も様々に変更されてよい。
【0048】
投影光学系23は、上述のように、光変調器22からの変調ビームL33を走査部13へと導く。詳細には、光変調器22にて生成された平行光である変調ビームL33は、第1レンズ231を通過することにより、短軸方向において、第1レンズ231の後側焦点位置(すなわち、第2レンズ232および第3レンズ233の前側合成焦点位置)に集光される。変調ビームL33は、長軸方向に関しては、第1レンズ231の通過時に屈折しない。
【0049】
第1レンズ231を通過した変調ビームL33は、第1レンズ231の短軸側の後側焦点位置に位置する短軸側遮光部236の開口236aを通過する。詳細には、光変調器22にて反射された反射光のうち、0次光および長軸側の非0次回折光が短軸側遮光部236の矩形状の開口236aを通過し、短軸側の非0次回折光(主として、1次回折光(すなわち、(+1)次回折光および(-1)次回折光))は短軸側遮光部236により遮られる。短軸側の非0次回折光は、図5に示すように、短軸側遮光部236の開口236aよりも上側および下側(すなわち、開口236aの短軸方向両側)の部位において、長軸方向に延びる略線状の照射領域81に照射される。
【0050】
短軸側遮光部236の開口236aを通過した変調ビームL33の断面は、進行方向に進行するにしたがって、短軸方向において広がる。短軸側遮光部236を通過した変調ビームL33は、第2レンズ232および第3レンズ233を通過することにより、短軸方向において平行光となる。変調ビームL33は、長軸方向において、第2レンズ232の通過時には屈折せず、第3レンズ233を通過することにより第3レンズ233の後側焦点位置(すなわち、第4レンズ234の前側焦点位置)に集光される。
【0051】
第2レンズ232および第3レンズ233を通過した変調ビームL33は、第3レンズ233の後側焦点位置に位置する長軸側遮光部235の開口235aを通過する。詳細には、光変調器22にて反射された反射光のうち、0次光が長軸側遮光部235の矩形状の開口235aを通過し、長軸側の非0次回折光(主として、1次回折光)は長軸側遮光部235により遮られる。長軸側の非0次回折光は、図6に示すように、長軸側遮光部235の開口235aよりも図中の左側および右側(すなわち、開口235aの長軸方向両側)の部位において、短軸方向に延びる略線状の照射領域82に照射される。
【0052】
長軸側遮光部235の開口235aを通過した変調ビームL33の断面は、進行方向に進行するにしたがって、長軸方向において広がる。長軸側遮光部235を通過した変調ビームL33は、第4レンズ234を通過することにより、長軸方向において平行光となって走査部13の照射面131に入射する。また、短軸方向において平行光として第4レンズ234に入射した変調ビームL33は、第4レンズ234を通過することにより、第4レンズ234の後側焦点位置に位置する走査部13の照射面131上に、短軸方向において集光される。
【0053】
上述のように、長軸方向について、光変調器22の変調面と、走査部13の照射面131とは光学的に共役である。また、光変調器22の変調面における平行ビームL32の長軸方向の強度分布は、図3の矩形枠中に示すようにトップハット分布である。したがって、走査部13の照射面131上における変調ビームL33の長軸方向の強度分布も、トップハット分布となる。
【0054】
また、短軸方向について、光変調器22の変調面と第4レンズ234の前側焦点位置(すなわち、第3レンズ233の後側焦点位置)とは光学的に共役である。また、光変調器22の変調面における平行ビームL32の短軸方向の強度分布は、ビームシェイパ213により、図4の矩形枠中に示すように、トップハット分布に変換されている。したがって、第3レンズ233を通過した変調ビームL33の短軸方向の強度分布は、第4レンズ234の前側焦点位置においてトップハット分布となる。このため、第4レンズ234によるフーリエ変換作用により、走査部13の照射面131上の集光点における変調ビームL33の短軸方向の強度分布はsinc分布となる。実際には、変調ビームL33の短軸方向における強度分布は、厳密なsinc分布ではなく、sinc関数に近似した形状の分布である場合もあるが、以下の説明では、厳密なsinc分布、および、sinc分布に近似した分布をまとめて「sinc分布」と呼ぶ。sinc分布は、ガウス分布と略同様に、主たるピークを有する分布であるため、走査部13の照射面131上に変調ビームL33を好適に集光することができる。
【0055】
走査部13の照射面131上における変調ビームL33の大きさは、以下のように求められる。例えば、レーザ光L31の波長λは1.070μmであり、光変調器22の変調面上における照射領域は、長軸方向の長さLが28mm、短軸方向の長さLが1mmの略線状(または略矩形状)であるものとする。第1レンズ231および第2レンズ232の短軸側の焦点距離f,fはそれぞれ、40mmおよび400mmであり、第3レンズ233および第4レンズ234の焦点距離f,fはそれぞれ、240mmおよび60mmであるものとする。第2レンズ232と第3レンズ233との間隔dは50mmであるものとする。この場合、第2レンズ232および第3レンズ233の短軸側の合成焦点距離f23は、約163mmとなる。
【0056】
短軸方向については、上述のように、第1レンズ231の後側焦点位置に変調ビームL33が集光される。第1レンズ231の後側焦点位置における変調ビームL33の短軸方向の集光径(すなわち、sinc関数の暗環径)φS1は、2.44xλxf/L≒104μmとなる。第1レンズ231の後側焦点位置は、短軸方向について、走査部13の照射面131と光学的に共役である。したがって、照射面131上における変調ビームL33の短軸方向の集光径は、104μmxf/f23≒33μmとなる。
【0057】
長軸方向については、上述のように、第3レンズ233の後側焦点位置に変調ビームL33が集光される。第3レンズ233の後側焦点位置における変調ビームL33の長軸方向の集光径φL3は、2.44xλxf/L≒22μmとなる。なお、第3レンズ233の後側焦点位置における変調ビームL33の短軸方向の長さLは、Lxf23/f=4mmとなる。長軸方向については、光変調器22の変調面と走査部13の照射面131とが光学的に共役である。したがって、照射面131上における変調ビームL33の長軸方向の長さは、Lxf/f=7mmとなる。
【0058】
上述のように、短軸側遮光部236は、第1レンズ231の後側焦点位置に配置されるため、短軸側遮光部236の開口236aの短軸方向両側に照射される1次回折光(すなわち、(+1)次回折光および(-1)次回折光))の照射領域81(図5参照)は、長軸方向がL=28mmであり、短軸方向がφS1≒104μmである略線状となる。また、長軸側遮光部235は、第3レンズ233の後側焦点位置に配置されるため、長軸側遮光部235の開口235aの長軸方向両側に照射される1次回折光の照射領域82(図6参照)は、長軸方向がφL3≒22μmであり、短軸方向がL=4mmである略線状となる。
【0059】
一方、変調ビームL33が、長軸方向および短軸方向の双方において、1枚の凸レンズにより光路上の同じ位置(すなわち、当該凸レンズの後側焦点位置)に集光される光学装置(以下、「比較例の光学装置」と呼ぶ。)を想定すると、当該後側焦点位置に配置された遮光部上において、1次回折光が点状の照射領域に照射される。例えば、当該凸レンズの焦点距離を240mmとした場合、当該遮光部上における1次回折光の照射領域の直径は約326μmとなる。
【0060】
したがって、本実施の形態に係る光学装置12では、比較例の光学装置に比べて、短軸側遮光部236上における1次回折光のパワー密度、および、長軸側遮光部235上における1次回折光のパワー密度が、1/10以下まで低減される。
【0061】
3次元造形装置1では、上述のように、照射面131上に好適に集光された変調ビームL33が、走査部13により造形空間140内の造形材料91上にて走査される。そして、造形空間140への造形材料91の供給、および、造形材料91上におけるレーザ光の走査が繰り返されることにより、3次元造形物が形成される。
【0062】
以上に説明したように、光学装置12は、対象物上の照射面(上述の例では、走査部13の照射面131)に変調ビームL33を照射する装置である。光学装置12は、照明光学系21と、光変調器22と、投影光学系23とを備える。照明光学系21は、レーザ光L31を長軸方向に長い線状の平行ビームL32に整形する。光変調器22は、平行ビームL32を変調ビームL33に変調する。投影光学系23は、変調ビームL33を対象物の照射面に導く。照明光学系21は、ビームシェイパ213を備える。ビームシェイパ213は、レーザ光L31の短軸方向および長軸方向における強度分布をガウス分布から変換して、光変調器22の変調面における平行ビームL32の短軸方向および長軸方向の強度分布をトップハット分布とする。
【0063】
投影光学系23は、第1レンズ231と、第2レンズ232と、第3レンズ233と、第4レンズ234とを備える。第2レンズ232は、第1レンズ231よりも変調ビームL33の進行方向に位置する。第3レンズ233は、第1レンズ231よりも変調ビームL33の進行方向に位置する。第4レンズ234は、第1レンズ231、第2レンズ232および第3レンズ233よりも変調ビームL33の進行方向に位置する。長軸方向について、第3レンズ233および第4レンズ234により、上記変調面と上記照射面とが光学的に共役とされる。また、短軸方向について、第1レンズ231、第2レンズ232および第3レンズ233により、当該変調面と第4レンズ234の前側焦点位置とが光学的に共役とされる。第4レンズ234は、当該前側焦点位置におけるトップハット分布のビームを照射面131に集光させる。
【0064】
このように、レーザ光L31の短軸方向および長軸方向の強度分布をビームシェイパ213によってトップハット分布とすることにより、光変調器22に入射する平行ビームL32の最大パワー密度を低下させつつ投入総光量を増大させることができる。したがって、光変調器22の損傷リスクを低減しつつ、光変調器22への投入光量を増大させることができる。また、投影光学系23を上記構成とすることにより、光変調器22にトップハット分布(短軸方向および長軸方向)にて入射した平行ビームL32を、主たるピークを有するsinc分布(短軸方向)の変調ビームL33として対象物上に好適に集光することができる。その結果、対象物に照射される変調ビームL33のパワー密度を好適に増大させることができる。
【0065】
投影光学系23では、第3レンズ233は、第2レンズ232よりも変調ビームL33の進行方向に位置することが好ましい。換言すれば、第3レンズ233は、第2レンズ232と第4レンズ234との間に配置されることが好ましい。仮に、第2レンズ232が第3レンズ233よりも変調ビームL33の進行方向に位置すると、長軸方向において光変調器22の各位置から出射される主光線が、異なる角度で第2レンズ232に入射するため、収差が生じる可能性がある。一方、上述のように、第3レンズ233を第2レンズ232よりも変調ビームL33の進行方向に配置することにより、長軸方向において光変調器22の各位置から出射される主光線が、第2レンズ232に対して略垂直に入射するため、収差の発生を低減することができる。
【0066】
上述のように、投影光学系23は、長軸側遮光部235と、短軸側遮光部236とをさらに備えることが好ましい。長軸側遮光部235は、第3レンズ233と第4レンズ234との間に位置し、光変調器22からの長軸側の非0次回折光を遮る。短軸側遮光部236は、第1レンズ231と第2レンズ232および第3レンズ233との間に位置し、光変調器22からの短軸側の非0次回折光を遮る。このように、光学装置12では、投影光学系23の光路上における変調ビームL33の集光位置を長軸方向と短軸方向とで異ならせ、当該異なる集光位置にて、長軸側および短軸側の非0次回折光をそれぞれ遮光することにより、上述のように、長軸側遮光部235および短軸側遮光部236上において1次回折光が略線状の照射領域81,82に照射される。このため、上記比較例のように1次回折光が点状の照射領域に照射される場合に比べて、長軸側遮光部235および短軸側遮光部236上における1次回折光のパワー密度を大幅に低減することができる。これにより、長軸側遮光部235および短軸側遮光部236が1次回折光等の非0次回折光により損傷するリスクを低減することができ、長軸側遮光部235および短軸側遮光部236の構造を簡素化(例えば、板状部材の薄型化)を実現することができる。
【0067】
上述のように、長軸側遮光部235は、第3レンズ233の後側焦点位置に位置することが好ましい。これにより、長軸側遮光部235上における1次回折光等の非0次回折光の照射領域を小さくすることができるため、長軸側遮光部235による遮光面積を小型化することができる。また、短軸側遮光部236は、第1レンズ231の後側焦点位置に位置することが好ましい。これにより、短軸側遮光部236上における1次回折光等の非0次回折光の照射領域を小さくすることができるため、短軸側遮光部236による遮光面積を小型化することができる。
【0068】
一方、長軸側遮光部235は、第3レンズ233の後側焦点位置を避けて配置されることも好ましい。これにより、長軸側遮光部235上における1次回折光等の非0次回折光のパワー密度を低減することができるため、非0次回折光による長軸側遮光部235の損傷リスクをさらに低減することができる。また、短軸側遮光部236は、第1レンズ231の後側焦点位置を避けて配置されることも好ましい。これにより、短軸側遮光部236上における1次回折光等の非0次回折光のパワー密度を低減することができるため、非0次回折光による短軸側遮光部236の損傷リスクをさらに低減することができる。
【0069】
上述のように、光変調器22は、2次元配列された複数の変調素子(すなわち、ピクセル221)を備えることが好ましい。これにより、照明光学系21からの平行ビームL32を光変調器22上に面状に照射することができるため、光変調器22への投入総光量を増大させつつ、光変調器22上の照射領域における平行ビームL32の最大パワー密度を低減することができる。その結果、光変調器22の損傷リスクをさらに低減することができる。
【0070】
上述のように、光変調器22はPLVであることが好ましい。PLVは耐パワー性能が高いため、投入光量の増大が求められる光変調器22に特に適している。
【0071】
3次元造形装置1は、上述の光学装置12と、レーザ光源11と、走査部13とを備える。レーザ光源11は、光学装置12へとレーザ光L31を出射する。走査部13は、光学装置12からの変調ビームL33が照射される上記対象物であり、変調ビームL33を造形材料91上で走査する。光学装置12では、上述のように、対象物(すなわち、走査部13)に照射される変調ビームL33のパワー密度を好適に増大させることができるため、3次元造形装置1において、造形材料91に照射される変調ビームL33のパワー密度も好適に増大させることができる。その結果、3次元造形装置1における造形物の造形速度を増大させることができ、生産性を向上することができる。
【0072】
上述のように、走査部13は、回転することによって前記変調ビームの進行方向を変更するガルバノミラー132を備えることが好ましい。これにより、光学装置12からの変調ビームL33の走査を高精度かつ高速に行うことができる。
【0073】
3次元造形装置1では、上述のように、走査部13による変調ビームL33の走査方向は、変調ビームL33の短軸方向に対応する方向であることが好ましい。造形材料91上では、変調ビームL33の短軸方向における強度分布は上述のsinc分布であるため、集光点の周囲に明環が存在し、当該集光点よりも走査方向(すなわち、短軸方向)前側の領域が当該明環により予熱される。このため、予熱された当該領域を変調ビームL33で走査した際に、当該領域の加熱時間を短縮することができる。その結果、3次元造形装置1の生産性をさらに向上することができる。
【0074】
上述の光学装置12および3次元造形装置1では、様々な変更が可能である。
【0075】
例えば、光学装置12の光変調器22は、上述のPLV、GLVまたはDMDには限定されず、様々に変更されてよい。また、光変調器22は、必ずしも2次元配列された複数の変調素子を備える必要はなく、例えば、直線状に配列された複数の変調素子を備えるものであってもよい。
【0076】
投影光学系23では、例えば、上述の収差が許容範囲である場合、あるいは、当該収差を補正する光学素子が追加される場合等、第2レンズ232が第3レンズ233よりも変調ビームL33の進行方向に配置されてもよい。
【0077】
3次元造形装置1の走査部13は、必ずしもガルバノミラー132を備える必要はなく、上述のように、ポリゴンレーザスキャナ等、他の構造を有するものであってもよい。あるいは、走査部13は、投影光学系23からの変調ビームL33の進行方向を変更するものには限定されず、例えば、変調ビームL33の照射位置が固定された状態で造形材料91を保持する造形部141を水平方向に移動させるリニアモータ等の移動機構であってもよい。
【0078】
光学装置12は、必ずしも3次元造形装置1に設けられる必要はなく、例えば、レーザーマーキング装置等のレーザ加工機にて使用されてもよい。
【0079】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0080】
1 3次元造形装置
11 レーザ光源
12 光学装置
13 走査部
21 照明光学系
22 光変調器
23 投影光学系
91 造形材料
131 照射面
132 ガルバノミラー
213 ビームシェイパ
221 ピクセル
231 第1レンズ
232 第2レンズ
233 第3レンズ
234 第4レンズ
235 長軸側遮光部
236 短軸側遮光部
L31 レーザ光
L32 平行ビーム
L33 変調ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6