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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】笠木用排水部品
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/15 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
E04D13/15 301Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020069304
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021165492
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】平木 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】戸川 厚
(72)【発明者】
【氏名】油谷 佑己子
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05289662(US,A)
【文献】実開昭55-149034(JP,U)
【文献】実開昭61-131431(JP,U)
【文献】特開2010-185228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/15
E04B 1/62- 1/99
E04H 17/00-17/26
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、
中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、
前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、
前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、
前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設され
前記端部躯体設置部の前記延長部の表面には、笠木用排水部品の長手方向に沿った溝が形成されている
ことを特徴とする笠木用排水部品。
【請求項2】
笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、
中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、
前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、
前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、
前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設され、
前記中央躯体設置部の前記底辺部の幅方向中央部には凸部が形成されている
ことを特徴とする笠木用排水部品。
【請求項3】
笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、
中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、
前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、
前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、
前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設され、
前記中央躯体設置部の前記側壁部の上端部には、段差が形成されている
ことを特徴とする笠木用排水部品。
【請求項4】
笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、
中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、
前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、
前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、
前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設され、
前記底辺部には複数の排水溝が形成されている
ことを特徴とする笠木用排水部品。
【請求項5】
笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、
中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、
前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、
前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、
前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設され、
前記中央躯体設置部および前記端部躯体設置部は、半硬質または硬質の合成樹脂で形成され、
前記塞ぎ部は、軟質の合成樹脂で形成されている
ことを特徴とする笠木用排水部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、笠木用排水部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バルコニーのパラペットの上縁などに設けられる笠木部材のジョイント部の下方に配置される排水部品(水切部材)が開示されている。この排水部品は、パラペットの上面に接着される面形成部と、面形成部の上面に形成される二つの壁形成部とを有しており、前記壁形成部の間に笠木部材の長手方向と交差する方向の排水路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-140791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記排水部品は、パラペットの上面に接着されるため、パラペット上に設けられる手すりユニットの支柱を固定するベースプレートと干渉する。このため、ベースプレートの配置間隔は、排水部品の幅寸法以上に設定しなければならない。ベースプレートの配置間隔が大きくなると、支柱間の間隔も大きくなり、子供のすり抜け落下防止として、支柱間の隙間を塞ぐ格子などの意匠材を取り付ける必要があり、部品数や施工作業が増加する。このため、排水部品を挟んでベースプレートを配置する場合に、ベースプレートの配置間隔を小さくしたいという要望がある。
また、排水部品は面形成部の下面に接着面を形成し、パラペットの上面に接着するため、一度、躯体に取り付けると位置を調整できないという課題もある。
本発明の目的は、ベースプレートの配置間隔を小さくでき、設置時の位置調整も容易な笠木用排水部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の笠木用排水部品は、笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の笠木用排水部品によれば、ベースプレートの配置間隔を小さくでき、設置時の位置調整も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】笠木用排水部品および手すりユニットが取り付けられた躯体上面を示す平面図である。
図2】コーナー部に配置される笠木用排水部品および笠木を示す斜視図である。
図3】直線部に配置される笠木用排水部品および笠木を示す斜視図である。
図4】笠木およびホルダーを示す側面図である。
図5】笠木用排水部品を示す断面図である。
図6】笠木用排水部品を示す断面図である。
図7】笠木の施工手順を示す説明図である。
図8】笠木の施工手順を示す説明図である。
図9】笠木およびホルダーの変形例を示す側面図である。
図10】笠木用排水部品の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態の笠木用排水部品を図面に基づいて説明する。
図1は、バルコニーのパラペット等の躯体1の上面に設置される手すりユニット5や笠木用排水部品30を示す平面図であり、図2は、躯体1のコーナー部に配置される笠木用排水部品30(30A)を示す斜視図であり、図3は、躯体1の直線部に配置される笠木用排水部品30(30B)を示す斜視図である。
図1~3に示すように、パラペット等の躯体1の上縁部には笠木2が設けられ、笠木2の上方には手すりユニット5が配置される。
【0009】
手すりユニット5は、様々なタイプがあるが、例えば、縦格子タイプの手すりユニット5の場合、躯体1にベースプレート51を介して立設される支柱52と、支柱52間に上下に間隔を空けて掛け渡される横桟53と、横桟53間に取り付けられる縦桟54とを備えている。なお、ベースプレート51は、躯体1の上面にねじ止めされる板状のプレート部と、プレート部に立設されて支柱52内に挿入される延長部を備えている。
また、手すりユニット5をバルコニーのコーナー部に配置する場合、バルコニーの各面に設けられる支柱52およびベースプレート51は互いに近接して配置される。
【0010】
笠木2は、図4にも示すように、水平面状の中央部21と、中央部21から左右の端部に向かって下方に傾斜された傾斜面部22と、傾斜面部22の先端から下方に延出された鉛直面部23とを備える平笠木である。鉛直面部23の内面にはビスホール部24が形成されている。そして、躯体1上にネジ61で固定されるホルダー6に笠木2を上方から押し込み、ビスホール部24の上面をホルダー6の端部に係合させることで、笠木2はホルダー6に保持されて躯体1の上縁部に取り付けられる。
笠木2は、コーナー部や直線部においてジョイント部が発生する。例えば、図1に示すように、コーナー部分のジョイント部3Aにおいては、笠木2のコーナー側の端部を笠木2の長手方向に対して45°の角度で切断し、この端部同士を対向配置している。また、直線部分のジョイント部3Bにおいては、笠木2の端部同士を対向配置している。
【0011】
[笠木用排水部品]
笠木2のジョイント部3A、3Bには、笠木用排水部品30が配置されている。笠木用排水部品30は、笠木2のジョイント部3A、3Bに跨がって躯体1の上面に設置されている。
ジョイント部3Aには、笠木2の長手方向に対して45°で切断された笠木2の端面25に沿って延長された笠木用排水部品30(30A)が配置され、ジョイント部3Bには、笠木2の長手方向に対して直交方向に設けられた笠木2の端面25に沿って延長された笠木用排水部品30(30B)が配置されている。
笠木用排水部品30Aおよび笠木用排水部品30Bは、図2、3にも示すように、配置箇所の違いによって長手方向の寸法が異なるが、断面形状は同一の部品であるため、以下の説明では笠木用排水部品30として説明する。
【0012】
笠木用排水部品30は、図5に示すように、中央躯体設置部31と、端部躯体設置部33と、塞ぎ部35とを備える。中央躯体設置部31および端部躯体設置部33は、半硬質樹脂または硬質樹脂、例えば、半硬質のエチレンプロピレンゴム(EPDM)で構成され、塞ぎ部35は、軟質樹脂、例えば、軟質のエチレンプロピレンゴム(EPDM)で構成されている。このため、中央躯体設置部31および端部躯体設置部33はソリッド部であり、塞ぎ部35はスポンジ部となっている。なお、半硬質樹脂、硬質樹脂および軟質樹脂の材料は、EPDMに限定されず、笠木用排水部品30として求められる性能やコストに応じて選択すればよい。
【0013】
中央躯体設置部31は、排水通路部310と、連結片部320とを備える。排水通路部310は、底辺部311および一対の側壁部312によって樋状に構成されてジョイント部3A、3Bの笠木2の端面25に沿って設けられている。なお、本実施形態では、底辺部311の幅方向、つまり笠木用排水部品30の長手方向に直交する方向の左右中央部には、笠木用排水部品30の長手方向に連続する凸部313が形成されている。これにより、排水通路部310には、底辺部311と、凸部313と、左右の側壁部312とで、笠木用排水部品30の長手方向に連続する2本の排水溝314が区画形成されている。
【0014】
排水溝314の幅寸法は、例えば、2.5mmとされ、毛細管現象を促す形状とされている。これにより、排水溝314内に浸入した雨水は、排水溝314内に滞留することなく、笠木用排水部品30の長手方向の端部開口からスムーズに排水される。
なお、本実施形態の笠木用排水部品30では、凸部313の幅寸法は2.5mmであり、側壁部312の幅寸法は2.5mmである。このため、排水通路部310の幅寸法、つまり側壁部312の外面間の幅寸法は12.5mmである。
【0015】
側壁部312の上端部には、段差315が形成されている。段差315は、側壁部312の内面、つまり排水溝314に連続する内側に形成されている。本実施形態では、段差315の底面は、排水溝314の底面から3mmの高さ位置とされ、凸部313の上面と同じ高さレベルに設けられている。また、段差315の側面間の幅寸法は10mmに設定されている。
このため、図5に示すように、段差315の側面に笠木2の端面25を合わせると、ジョイント部3A、3Bにおいて、笠木2の端面25間には10mmの隙間が設定される。
【0016】
連結片部320は、側壁部312の上端から外側に延出されている。連結片部320の上面は、排水溝314に向かって低くなるように傾斜されている。これにより、連結片部320の上面に落下した雨水を、排水溝314にスムーズに流入させることができる。
【0017】
端部躯体設置部33は、連結片部320の先端部から下方に延長された延長部330と、延長部330の下端部から外側に突出された固定片部340とを備える。
延長部330の表面には、ジョイント部3A、3Bの笠木2の端面25に沿った方向つまり笠木用排水部品30の長手方向に沿った溝331が形成されている。溝331は、延長部330の上端部つまり連結片部320との連結部分に形成されている。このため、溝331に沿ってカッターなどで切り欠くと、図6に示すように、端部躯体設置部33を中央躯体設置部31から切り離すことができる。
また、延長部330は、連結片部320の先端部から連続して形成されており、側壁部312から離れた位置に設けられているので、側壁部312との間に溝部332が形成されている。溝部332の幅寸法は、例えば、3.25mmとされ、延長部330の内面間の幅寸法は、例えば20mmである。
このため、端部躯体設置部33を中央躯体設置部31から切り離した場合、図6に示すように、ベースプレート51を溝部332まで差し込むことができる。したがって、ベースプレート51間の最小間隔は、排水通路部310の幅寸法に近い寸法まで小さくでき、支柱52間の間隔も小さくでき、子供のすり抜けを防止できる間隔に設定できる。
【0018】
図5に示すように、固定片部340の下面は、底辺部311の下面と同じ高さレベルとされている。このため、笠木用排水部品30を躯体1の上面に設置した際に、底辺部311つまり中央躯体設置部31の下面と、固定片部340つまり端部躯体設置部33の下面とが躯体1の上面に接するように構成されている。
固定片部340の上面は、外側つまり先端側に向かうにしたがって、低くなるように傾斜されている。このため、笠木用排水部品30を躯体1に設置した際に、固定片部340の先端と、躯体1の上面との段差を小さくできる。
そして、躯体1の上面から固定片部340の上面および延長部330の側面に渡って、片面に粘着層を有する片面テープ40が貼られており、この片面テープ40によって笠木用排水部品30は躯体1に固定されている。
【0019】
塞ぎ部35は、ヒレ状に形成されて連結片部320の先端側の上面から立設されている。塞ぎ部35は、連結片部320の上面に連続する基端部351から上方の先端部352に向かって、外側に湾曲して形成されている。
塞ぎ部35において、笠木2に接触する表面353には、合成樹脂が塗装されて摺動処理が施されている。表面353は、笠木2を上方から押し付けた際に、笠木2に接触する面であり、本実施形態では、少なくとも連結片部320の上面に連続する基端部351から先端部352までの範囲に摺動処理が施されている。塞ぎ部35の表面353に摺動処理が施されているので、笠木2をホルダー6に嵌め込む際に、塞ぎ部35と笠木2との間の摩擦抵抗を小さくできて、笠木2をホルダー6に容易に嵌め込むことができる。なお、摺動処理に用いられる合成樹脂は、塞ぎ部35の摩擦抵抗を低減できるものであればよく、例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等が利用できる。
また、先端部352は、断面略円弧状に形成されており、笠木2に接触した際に先端部352が引っかかって摩擦抵抗が高まることも防止できる。
【0020】
次に、本実施形態の笠木の施工手順について説明する。
作業者は、ホルダー6、笠木用排水部品30、ベースプレート51を配置する躯体1の上面に、位置決め用の線等をそれぞれ罫書きする。
次に、ホルダー6、笠木用排水部品30、ベースプレート51を、躯体1の上面の罫書きされた位置に合わせて固定する。すなわち、ホルダー6およびベースプレート51は、躯体1にねじ止めする。
一方、笠木用排水部品30のうち、ジョイント部3Aに配置される笠木用排水部品30Aは、図2に示すように、ベースプレート51に干渉する端部躯体設置部33部分を、溝部332から切断しておく。
次に、幅方向の中央に位置する凸部313を、躯体1の上面に罫書きされた線に合わせて躯体1の上面に笠木用排水部品30を設置し、片方の端部躯体設置部33および躯体1の上面に跨がって片面テープ40を貼り付けて仮固定する。仮固定後に、再度、前記罫書き線と凸部313との位置合わせを行い、他方の端部躯体設置部33および躯体1の上面に跨がって別の片面テープ40を貼り付けて固定する。
【0021】
次に、笠木2の開口にベースプレート51の延長部を挿通しながら、笠木2を躯体1の上方から押し込み、ホルダー6に係合させる。この際、笠木2の端面25を、笠木用排水部品30の段差315の側面に合わせることで、ジョイント部3A、3Bにおける笠木2の位置合わせを行うことができる。
笠木2を押し込むと、最初に笠木用排水部品30の塞ぎ部35が笠木2の下面に当接する。そして、図7に示すように、笠木2を下方に押し込むのにしたがって、塞ぎ部35は笠木2に接触した状態で湾曲する。このため、笠木2をホルダー6に係合するまで押し込むと、笠木2の端部の開口は、笠木用排水部品30の塞ぎ部35によって塞がれる。
なお、本実施形態の笠木2は、図4図8に示すように、中央部21に対して傾斜面部22が低くなるように傾斜されているので、塞ぎ部35において傾斜面部22に当接する部分は、傾斜面部22に合わせて湾曲される。
以上により、笠木用排水部品30および笠木2の取付け作業が終了し、その後、ベースプレート51の延長部に支柱52を取り付け、これらの支柱52間に、横桟53および縦桟54が組まれた格子ユニットを配置して支柱52に連結することで、手すりユニット5が組み立てられる。
【0022】
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、笠木用排水部品30を中央躯体設置部31および端部躯体設置部33を備えて構成し、中央躯体設置部31および端部躯体設置部33間に溝部332を設けたので、中央躯体設置部31の排水溝314に影響することなく、端部躯体設置部33の一部を中央躯体設置部31から切断できる。したがって、端部躯体設置部33を切断しても、排水溝314による排水機能や、塞ぎ部35による水密性能を維持できる。
また、端部躯体設置部33の一部を中央躯体設置部31から切断することで、笠木用排水部品30の一部は、中央躯体設置部31のみが躯体1の上面に設置される構成とすることができる。このため、端部躯体設置部33を切断した部分では、ベースプレート51を溝部332まで差し込んで配置でき、端部躯体設置部33を挟んで配置されるベースプレート51間の間隔を最小限、例えば約12.5mm程度に設定できる。このため、ベースプレート51に立設される支柱52間の隙間寸法を小さくでき、子供のすり抜け防止用に支柱間に格子状の意匠材を取り付ける必要がない。
【0023】
端部躯体設置部33に溝331を形成したので、端部躯体設置部33を溝331に沿って容易にかつ正確に切断できる。このため、溝部332に連続する空間を確実に形成でき、ベースプレート51を溝部332まで差し込むことができる。
【0024】
中央躯体設置部31の底辺部311の幅方向中央部に凸部313を形成したので、躯体1に罫書きされた線に凸部313を合わせることで容易に位置決めすることができる。
さらに、凸部313は、側壁部312との間に2本の排水溝314を区画形成する中央壁部としても兼用されるため、これらを別々に設ける場合に比べて、笠木用排水部品30の断面形状をシンプルにでき、笠木用排水部品30は押出成形などで容易に製造できる。
【0025】
排水溝314は、表面張力を発生させずに毛細管現象を促す形状になっているので、排水溝314に流入した雨水が滞留せずに、スムーズに排水できる。
【0026】
笠木用排水部品30に端部躯体設置部33を形成し、躯体1および片方の端部躯体設置部33に跨がる片面テープ40で笠木用排水部品30を仮固定しているので、仮固定後に笠木用排水部品30の位置を微調整できる。すなわち、片面テープ40は、伸縮性を有するため、笠木用排水部品30が罫書きされた線から僅かにずれていても、笠木用排水部品30を移動することで位置を調整できる。このため、排水部材の下面全体を接着面とした場合に比べて、笠木用排水部品30を躯体1上に設置した後でも笠木用排水部品30の位置調整が可能であり、さらに、一方の片面テープ40で仮固定した後でも笠木用排水部品30の配置位置の微調整が可能であるため、施工性を向上できる。
【0027】
笠木2を取り付ける際に、笠木2の端面25を段差315の側面に合わせて位置決めすることで、笠木2の端面25間の隙間寸法を段差315の側面間の寸法、前記実施形態では10mmに設定できる。このため、金尺などの工具を用いて、笠木2の端面25間の隙間寸法を測定しながら笠木2の位置決めを行う必要が無く、笠木2の位置決めを容易に行うことができ、施工性を向上できる。
【0028】
ヒレ状の塞ぎ部35の表面353に、合成樹脂を塗布する摺動処理を施して摩擦抵抗を低減させたので、笠木2をホルダー6に嵌める時に、塞ぎ部35の抵抗を軽減できる。このため、笠木2を押し込む際の力も小さくでき、施工性を向上できる。
また、塞ぎ部35は、ヒレ状に形成されて外側に湾曲されているので、笠木2を押し込むにしたがって一層湾曲しながら笠木2との接触状態を維持できる。このため、塞ぎ部35の厚さ寸法を大きくしなくても、笠木2と塞ぎ部35との接触面積を大きくでき、笠木2の端部開口を塞ぎ部35で確実に塞ぐことができる。
さらに、笠木用排水部品30の連結片部320に対する高さ寸法が異なる様々な種類の笠木2を取り付けた場合も、ヒレ状の塞ぎ部35が湾曲することで対応させることができる。
【0029】
中央躯体設置部31および端部躯体設置部33は、半硬質や硬質の合成樹脂で形成し、塞ぎ部35は、軟質の合成樹脂で形成しているので、二色成形で容易に笠木用排水部品30を製造することができる。また、塞ぎ部35を軟質の合成樹脂で形成したので、笠木2に合わせて容易に湾曲させることができ、笠木2の開口を確実に塞ぐことができる。
【0030】
[変形例]
本発明は、以上の各実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では笠木2として平笠木を用いていたが、図9に示すように、内勾配笠木2Bを用いてもよい。内勾配笠木2Bは、バルコニーの外側から内側に向かって低くなるように傾斜された中央部21Bと、中央部21Bの両端から下方に延出された鉛直面部23Bとを備える。なお、内勾配笠木2Bを固定するホルダー6Bも内勾配笠木2Bに合わせた断面形状とされている。
すなわち、笠木の種類は特に限定されず、笠木用排水部品30は、笠木のジョイント部に配置可能であればよい。
【0031】
前記実施形態の笠木用排水部品30は、湾曲されたヒレ状の塞ぎ部35を備えていたが、図10に示すように、直線状に立ち上がる壁状の塞ぎ部35Bを備える笠木用排水部品30Cを用いてもよい。笠木用排水部品30Cは、中央躯体設置部31および端部躯体設置部33は、前記実施形態の笠木用排水部品30と同一であり、塞ぎ部35Bのみが相違する。笠木用排水部品30Cでは、笠木2をホルダー6に係合させるために躯体1上面に向かって押し込むと、塞ぎ部35Bは、笠木2に当接しながら上下方向に圧縮される。このため、笠木用排水部品30と同様に、笠木2の開口を塞ぐことができる。
【0032】
前記実施形態では、延長部330の表面に溝331を形成していたが、溝331の代わりに切断位置を示す線が印刷されていてもよいし、笠木用排水部品30の長手方向に連続する突起が形成されていてもよい。
前記実施形態では、凸部313が形成されていたが、凸部313を設けなくてもよい。例えば、底辺部311の端部に位置決め用のマーカーを印刷して罫書き線に位置合わせできればよい。また、底辺部311および側壁部312で1本の排水溝のみを有する笠木用排水部品とすればよい。
さらに、段差315は必ずしも設けなくてもよい。この場合、側壁部312の内面等に笠木2の端面25を位置合わせすればよい。
【0033】
[発明のまとめ]
本発明の笠木用排水部品は、笠木のジョイント部から浸入する雨水を排水する笠木用排水部品であって、中央躯体設置部と、端部躯体設置部と、塞ぎ部とを備え、前記中央躯体設置部は、底辺部および一対の側壁部によって構成されて前記ジョイント部の笠木の端面に沿って設けられた排水通路部と、前記側壁部の上端から外側に延出された連結片部とを備え、前記端部躯体設置部は、前記連結片部の先端部から下方に延長された延長部と、前記延長部の下端部から外側に突出された固定片部とを備え、前記塞ぎ部は、前記連結片部の上面から立設されていることを特徴とする。
本発明によれば、笠木用排水部品は、排水通路部を備える中央躯体設置部と、端部躯体設置部とを備え、端部躯体設置部は、中央躯体設置部において排水通路部の側壁部の外側に延出された延長部の先端部から下方に延長されて設けられているので、中央躯体設置部および端部躯体設置部間に溝部を設けることができる。このため、中央躯体設置部の排水溝に影響することなく、端部躯体設置部の一部を中央躯体設置部から切断できる。したがって、端部躯体設置部を切断しても、排水溝による排水機能や、塞ぎ部による水密性能を維持できる。
また、端部躯体設置部の一部を中央躯体設置部から切断することで、笠木用排水部品の一部は、中央躯体設置部のみが躯体の上面に設置される構成とすることができる。このため、端部躯体設置部を切断した部分では、ベースプレートを溝部まで差し込んで配置でき、端部躯体設置部を挟んで配置されるベースプレート間の間隔を最小限に設定できる。このため、ベースプレートに立設される支柱間の隙間寸法も小さくでき、子供のすり抜け防止用に支柱間に格子状の意匠材を取り付ける必要がない。
【0034】
本発明の笠木用排水部品において、前記端部躯体設置部の前記延長部の表面には、笠木用排水部品の長手方向に沿った溝が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、端部躯体設置部に溝を形成したので、端部躯体設置部を溝に沿って容易にかつ正確に切断できる。このため、溝部に連続する空間を確実に形成でき、ベースプレートを溝部まで差し込むことができる。
【0035】
本発明の笠木用排水部品において、前記中央躯体設置部の前記底辺部の幅方向中央部には凸部が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、躯体に罫書きされた線に凸部を合わせることで、笠木用排水部品を容易に位置決めすることができる。
【0036】
本発明の笠木用排水部品において、前記中央躯体設置部の前記側壁部の上端部には、段差が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、笠木を取り付ける際に、笠木の端面を段差の側面に合わせて位置決めすることができ、笠木の位置決めを所定の位置で容易に行うことができ、施工性を向上できる。
【0037】
本発明の笠木用排水部品において、前記底辺部には複数の排水溝が形成されていることが好ましい。
本発明によれば、表面張力を発生させずに毛細管現象を促すように、各排水溝の幅寸法を小さくした場合でも、複数の排水溝を形成したので、排水溝に流入した雨水が滞留せずに、スムーズに排水でき、かつ、1本の排水溝のみ形成した場合に比べて排水量を確保できる。
【0038】
本発明の笠木用排水部品において、前記中央躯体設置部および前記端部躯体設置部は、半硬質または硬質の合成樹脂で形成され、前記塞ぎ部は、軟質の合成樹脂で形成されていることが好ましい。
本発明によれば、笠木用排水部品を二色成形で容易に製造することができる。また、塞ぎ部を軟質の合成樹脂で形成したので、笠木に密着して開口を確実に塞ぐことができる。
【符号の説明】
【0039】
1…躯体、2…笠木、2B…内勾配笠木、3A…ジョイント部、3B…ジョイント部、5…手すりユニット、6…ホルダー、6B…ホルダー、21…中央部、21B…中央部、22…傾斜面部、23…鉛直面部、23B…鉛直面部、24…ビスホール部、25…端面、30…笠木用排水部品、30A…笠木用排水部品、30B…笠木用排水部品、30C…笠木用排水部品、31…中央躯体設置部、33…端部躯体設置部、35…塞ぎ部、35B…塞ぎ部、40…片面テープ、51…ベースプレート、52…支柱、53…横桟、54…縦桟、61…ネジ、310…排水通路部、311…底辺部、312…側壁部、313…凸部、314…排水溝、315…段差、320…連結片部、330…延長部、331…溝、332…溝部、340…固定片部、351…基端部、352…先端部、353…表面。
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