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特許7395433かご位置特定装置およびかご位置特定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】かご位置特定装置およびかご位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20231204BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20231204BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B66B3/02 P
B66B5/00 G
B66B3/00 L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020111495
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010769
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森下 真年
(72)【発明者】
【氏名】馬場 理香
(72)【発明者】
【氏名】溝口 崇子
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恭志
(72)【発明者】
【氏名】金 政和
(72)【発明者】
【氏名】西迫 竜一
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149547(JP,A)
【文献】国際公開第2020/031284(WO,A1)
【文献】特開2020-029314(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0017333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 - 3/02
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗りかごに設けられたセンサモジュールでの検出信号に基づいて、前記乗りかごの位置を特定する制御モジュールを備えたかご位置特定装置において、
前記センサモジュールは、磁気センサと、気圧センサと、を有し、
前記制御モジュールは、前記乗りかごの停止中のドアの開閉動作を前記磁気センサの検出信号に基づき検知すると、前記気圧センサの補正を行い、補正後の前記気圧センサのセンサ値を用いて前記乗りかごの停止位置を推定することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記制御モジュールは、前記乗りかごが移動した場合、移動前の前記気圧センサの検出信号から定まる移動前階床位置と、移動前後の前記気圧センサの検出信号から定まる移動方向と、前記磁気センサの検出信号に基づき検知した移動階床数と、を用いて前記乗りかごの移動後階床位置を推定することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項3】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記制御モジュールは、前記乗りかごが移動した場合、移動前後の前記気圧センサの検出信号に基づいて前記気圧センサのドリフト量を計算し、移動後の前記気圧センサの検出信号から前記ドリフト量を減算することで、前記気圧センサの補正を行うことを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記制御モジュールは、補正後の前記気圧センサのセンサ値を、前記乗りかごの昇降路での高さに変換することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記制御モジュールは、推定した前記乗りかごの停止位置が、所定の条件を満たしていない場合には、異常停止であるとして通信回線を介して発報することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項6】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記センサモジュールが、前記乗りかごの上部または前記乗りかごのドアに設けられていることを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項7】
請求項6に記載のかご位置特定装置において、
前記センサモジュールが、前記乗りかごの上部であって、ドア駆動装置から20cm以内の場所に設けられていることを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項8】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記センサモジュールは、さらに加速度センサを有し、
前記制御モジュールは、前記乗りかごが停止中であることを前記加速度センサの検出信号に基づき検知することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項9】
請求項8に記載のかご位置特定装置において、
前記制御モジュールは、前記加速度センサの検出信号に基づき、前記乗りかごの移動方向および異常停止を検知することを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項10】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記乗りかごの停止状態が所定時間経過すると、前記制御モジュールは、前記気圧センサの補正を行うことを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項11】
請求項1に記載のかご位置特定装置において、
前記センサモジュールは、さらにカメラまたは人感センサを有し、
前記乗りかご内に利用者がいないことを検知すると、前記制御モジュールは、前記気圧センサの補正を行うことを特徴とするかご位置特定装置。
【請求項12】
エレベーターの乗りかごに設けられたセンサでの検出信号に基づいて、前記乗りかごの位置を特定するかご位置特定方法において、
前記乗りかごの停止中のドアの開閉動作を磁気センサの検出信号に基づき検知すると、気圧センサの補正を行い、補正後の前記気圧センサのセンサ値を用いて前記乗りかごの停止位置を推定することを特徴とするかご位置特定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのかご位置特定装置およびかご位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの異常を計測する遠隔監視システムは、一般に、エレベーターを制御する制御装置の情報を用いて、乗りかごの位置や速度の異常、閉じ込め故障などを計測し、計測した状態をエレベーターの監視センターや保守を行う作業員に知らせている。しかし、エレベーターによっては、当該エレベーターの制御装置の情報を用いることができない場合があり、その場合に外付けのセンサから得られる情報に基づいて乗りかごの位置を検出する手法が提案されている。
【0003】
また、この外付けのセンサとして、気圧センサを用いる技術も提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術は、気圧データと階床情報とを紐付けて階床データテーブルを予め作成しておき、計測した気圧データに対応する階床を特定するものである。また、この特許文献1には、気圧が気候によって変動するため、乗りかごが基準階に到着したときに出力される気圧センサのデータに基づいて、階床データテーブルに格納される気圧データを補正することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-199347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の気圧センサを用いる方式では、加速度センサから出力される加速度データにより乗りかごの停止有無を判定することが前提となっている。しかし、乗りかご内に利用者がいる場合には、乗りかご内での利用者の動作により、乗りかごの加速度が変化し、乗りかごの運行状況を反映した加速度信号が隠れてしまう可能性がある。このため、乗りかご内に利用者がいない場合にしか正確な気圧データの補正が行えず、結果として、乗りかごの位置の特定精度に影響してしまう。
【0006】
本発明の目的は、乗りかごの位置の特定精度を向上させたかご位置特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、エレベーターの乗りかごに設けられたセンサモジュールでの検出信号に基づいて、前記乗りかごの位置を特定する制御モジュールを備えたかご位置特定装置において、前記センサモジュールは、磁気センサと、気圧センサと、を有し、前記制御モジュールは、前記乗りかごの停止中のドアの開閉動作を前記磁気センサの検出信号に基づき検知すると、前記気圧センサの補正を行い、補正後の前記気圧センサのセンサ値を用いて前記乗りかごの停止位置を推定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗りかごの位置の特定精度を向上させたかご位置特定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るエレベーター監視システムの全体構成図。
図2】本発明の実施形態に係るかご位置特定装置の構成を示すブロック図。
図3】磁気センサで検出される磁気信号の推移の一例を示すグラフ。
図4】乗りかご位置の推定方法を示すフローチャート。
図5】気圧値記憶部に記憶される気圧値の更新方法を示すフローチャート。
図6】磁気センサで検出される磁気信号の推移を示すグラフ。
図7】気圧値の補正を行わなかった場合に、気圧センサが出力する乗りかご高さの推移を示すグラフ。
図8】本実施形態による気圧値の補正を行った場合に、気圧センサが出力する乗りかご高さの推移を示すグラフ。
図9】比較例として、乗りかごに加速度センサを設けた場合に検出される加速度信号の推移の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るエレベーター監視システムの全体構成図である。図1に示すように、本実施形態に係るエレベーター監視システムは、センサモジュール1と、制御モジュール2と、通信回線3と、監視サーバ4と、監視装置5と、端末装置6と、を備える。そして、センサモジュール1および制御モジュール2によって、かご位置特定装置7が構成されている。
【0012】
なお、エレベーターは、図示しないが、乗りかごと、つり合いおもりと、主ロープと、巻上機と、を備えている。主ロープは、乗りかごおよびつり合いおもりを懸架し、巻上機によって駆動されることで、乗りかごやつり合いおもりが昇降路内を移動する。
【0013】
また、センサモジュール1は、エレベーターの乗りかごの上部に設置され、磁気センサ8および気圧センサ9を有している。気圧センサ9は、乗りかごの昇降に伴う高さの変化を検知するために、検出した気圧信号を制御モジュール2に出力する。磁気センサ8は、かごドアの開閉動作や通過階床数を検知するために、検出した磁気信号を制御モジュール2に出力する。ここで、センサモジュール1を、ドア駆動装置から20cm以内の場所に設置することで、センサモジュール1設置時の作業性が良くなるだけでなく、磁気センサ8によるかごドアの開閉操作の検知精度も向上する。また、センサモジュール1を、かごドアの乗場側に設置することで、利用者が直接触れるのを防止しつつ、かごドアの開閉動作の検知精度をより高めることも可能である。
【0014】
制御モジュール2は、センサモジュール1で検出した気圧信号および磁気信号に基づいて、乗りかごの位置を推定し、推定した乗りかごの位置がいずれかの階床に相当する位置にない場合には、監視サーバ4、監視装置5または端末装置6へ送信するものである。また、制御モジュール2は、乗りかごの停止中のかごドアの開閉動作を磁気センサ8の検出信号に基づき検知すると、気圧センサ9の補正(キャリブレーション)を行う。この制御モジュー2ルは、センサモジュール1と一体構成により乗りかごの上部に設置されても良いし、センサモジュール1と別の場所に設置されても良い。この気圧センサ9の補正の具体的な方法については、後述する。
【0015】
監視サーバ4は、制御モジュール2(かご位置特定装置7)と通信回線3を介して接続されており、エレベーターの乗りかごの状態を遠隔で監視する拠点である監視センターなどに設置されている。この監視サーバ4は、かご位置特定装置7からの発報に基づきエレベーターを特定するデータベースを有している。データベースには、保守契約しているエレベーターが設置される建屋の建屋情報やエレベーター情報等が記憶されている。このため、監視サーバ4は、異常停止などの発報を制御モジュール2から受信すると、特定したエレベーターを管轄する営業所の表示装置に対し、建屋情報、エレベーター情報および異常通報内容を送信する。営業所の管理者は、表示装置に表示された内容を確認して、発報があったエレベーターの保守員に指示を行う。
【0016】
監視装置5は、エレベーターが設置される建屋の管理室などに設置され、監視サーバ4と同様に、制御モジュール2と通信回線3を介して接続されているため、エレベーターの異常発報を受けることが可能である。端末装置6は、エレベーターの保守点検などを行う保守員が携帯する装置であり、通信回線3を介して制御モジュールへ接続することにより、保守員が乗りかごの位置情報を確認できるようになっている。
【0017】
図2は、本実施形態に係るかご位置特定装置7の構成を示すブロック図である。ここでは、かご位置特定装置7のうち、制御モジュール2の機能について詳述する。図2に示すように、本実施形態の制御モジュール2は、ドア開閉検知部21と、移動階床数検知部22と、気圧値記憶部23と、移動方向判定部24と、ドリフト量計算部25と、気圧値補正部26と、かご位置推定部27と、異常診断部28と、通信部29と、を備える。
【0018】
ドア開閉検知部21は、磁気センサ8で検出される磁気信号に基づいて、乗りかごのドアの開動作または閉動作を検知するものである。移動階床数検知部22は、磁気センサ8で検出される磁気信号に基づいて、乗りかごが移動した階床の数を検知するものである。気圧値記憶部23は、乗りかごが停止中に気圧センサ9で検出した気圧値を記憶するものである。移動方向判定部24は、乗りかごの移動前と移動後における気圧センサ9の検出信号を比較することで、乗りかごの移動方向(上昇か下降か)を判定するものである。ドリフト量計算部25は、乗りかごの移動前と移動後における気圧センサ9の検出信号に基づいて、気圧センサ9のドリフト量を計算するものである。気圧値補正部26は、ドリフト量計算部25で計算したドリフト量を、移動後の乗りかごの気圧センサ9の検出信号から減算することで、気圧センサ9の補正を行うものである。かご位置推定部27は、補正後の気圧センサ9のセンサ値を用いて、乗りかごの停止位置を推定するものである。異常診断部28は、推定した乗りかごの停止位置が、所定の条件を満たしていない場合に、乗りかごが異常停止したと診断するものである。通信部29は、異常診断部28が異常停止と診断した場合に、通信回線3を介して監視サーバ4等を発報するものである。
【0019】
図3は、磁気センサ8で検出される磁気信号の推移の一例を示すグラフである。ドア開閉検知部21は、下に凸の磁気信号が検出された場合、ドアの開動作または閉動作があったことを検知する。ここで、下に凸の磁気信号とは、平坦な部分(例えば、図3の40msから55msの時間帯)の前後に小さな溝状の部分を挟んで、全体として大きな溝状となった磁気信号を指す。このような下に凸の磁気信号は、ドアの開閉動作に伴って金属部品が移動したために発生したものと考えられる。
【0020】
また、移動階床数検知部22は、スパイク状の磁気信号が検出された場合、そのスパイクの数だけ階床を乗りかごが移動したことを検知する。例えば、図3の60msから70msの時間帯に2つのスパイクがあるため、移動階床数検知部22は、乗りかごが2つの階床を通過(図3の例では3階から1階へ移動)したとみなす。ここで、スパイク状の磁気信号とは、所定時間内に一定以上変化する磁気信号を指す。また、移動階床数は、下に凸の磁気信号によりドアの閉動作を検知してから、次の下に凸の磁気信号によりドアの開動作を検知するまでの間に、スパイク状の磁気信号が何個あるかによって特定される。なお、スパイク状の磁気信号は、各階床にある乗り場ドアを通過するときに発生したものと考えられる。
【0021】
図4は、乗りかご位置の推定方法を示すフローチャートである。図4に示すように、まず、乗りかごが停止した状態において、制御モジュール2のドア開閉検知部21が、磁気センサ8の検出信号に基づいて、かごドアの開閉(ここでは移動開始前のドア閉動作)を検知する(ステップS101)。次に、スパイク状の磁気信号の発生により、乗りかごの移動が検知された(ステップS102)後、再びドア開閉検知部21が、かごドアの開閉(ここでは移動開始後のドア開動作)を検知する(ステップS103)。
【0022】
その後、気圧センサ9が最新の気圧値を取得する(ステップS104)と、制御モジュール2の移動方向判定部24は、乗りかごの移動前に気圧値記憶部23に記憶された前回(移動前)気圧値と、最新(移動後)気圧値と、に基づいて、乗りかごの移動方向を判定する(ステップS105)。さらに、制御モジュール2のかご位置推定部27は、判定した移動方向と、移動階床数検知部22が検知した移動階床数(具体的にはスパイク数)と、移動前の気圧値から定まる移動前階床位置と、を用いて、乗りかごの階床位置を推定する(ステップS106)。
【0023】
一方、上記のステップS104において気圧センサが最新の気圧値を取得すると、ドリフト量計算部25は、前回気圧値と最新気圧値とに基づき、気圧センサ9のドリフト量を例えば一次関数で計算する(ステップS107)。次に、気圧値補正26部は、ドリフト量計算部25で計算したドリフト量を、最新気圧値から減算することにより、気圧センサ9を補正する(ステップS108)。その後、天候フラグが設定されているか否かの判定が行われる(ステップS109)。この天候フラグは、例えば前線や低気圧の通過などに伴う天候の影響で気圧の変動が大きいときには、設定がOFFとなり、気圧センサ9による乗りかごの詳細位置の推定を行わないようにするものである。ステップS109で天候フラグの設定がONの場合は、かご位置推定部27が、気圧値補正部26による補正後の気圧センサ9の気圧値を用いて、乗りかごの詳細位置を推定する(ステップS110)。
【0024】
このとき、かご位置推定部27は、補正後の気圧センサ9のセンサ値を、乗りかごの昇降路での高さに変換する。例えば、ドアが閉じて乗りかごが移動を開始する直前の気圧をP、乗りかごが移動してドアが開いた直後の気圧P、乗りかごが移動中の気温をTとしたとき、乗りかごの移動による高さの変化hは、以下の(式1)で推定される。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、移動中の気温Tは、センサモジュール1に内蔵された温度センサなどにより取得する。また、気圧センサ9のセンサ値は、上記(式1)などの変換式の他に、センサ値と階床高さとの関係を予め定めたテーブルを用いて、乗りかごの位置を推定しても良い。
【0027】
図5は、気圧値記憶部23に記憶される気圧値の更新方法を示すフローチャートである。図5に示すように、まず、気圧値を最後に取得または補正した時点から、乗りかごの停止状態が所定時間(例えば1分)経過したか否かが判定される(ステップS201)。なお、乗りかごの停止状態にあることは、磁気センサ8がスパイク状の磁気信号を検出しないことで検知できる。上記の所定時間が経過すると、気圧センサが気圧値を再取得する(ステップS202)。気圧値を再取得するタイミングとしては、例えば、利用者(エレベーターの呼び)がなく、乗りかごが基準階(1階などの利用者が最も多い階床)に停止してドアが閉じている間に行うことが考えられる。
【0028】
次に、再取得した気圧値と、現時点で気圧値記憶部23に記憶されている(前回)気圧値と、の差が閾値(例えば0.5hPa/分)より大きいか否かが判定される(ステップS203)。上記差が閾値より小さい場合は、天候フラグの設定がONとなった(ステップS204)後、気圧値記憶部23の気圧値が、前回気圧値から再取得した気圧値に更新される(ステップS206)。一方、上記差が閾値より大きい場合は、天候フラグの設定がOFFとなった(ステップS205)後、気圧値記憶部23の気圧値が、前回気圧値から再取得した気圧値に更新される(ステップS206)。
【0029】
以下、乗りかごの停止中のドアの開閉動作を磁気センサの検出信号に基づき検知したタイミングで、気圧センサの補正を行ったことによる効果を、共通の時間軸で表された図6図8のグラフを用いて説明する。図6は、磁気センサで検出される磁気信号の推移を示し、図7は、気圧値の補正を行わなかった場合に、気圧センサが出力する乗りかご高さの推移を示し、図8は、本実施形態による気圧値の補正を行った場合に、気圧センサが出力する乗りかご高さの推移を示す。なお、図7および図8のグラフ中の横線は、建屋の各階床に相当する実際の高さを示している。
【0030】
例えば、図7のように補正前の気圧センサ9の気圧値は、7階の実際の高さからずれているのに対して、図8のように補正後の気圧センサ9の気圧値は、7階の実際の高さとほぼ一致していることが分かる。このように、本実施形態のかご特定装置によれば、乗りかごの位置の特定精度を向上させることができる。
【0031】
図9は、比較例として、乗りかごに加速度センサを設けた場合に検出される加速度信号の推移の一例を示すグラフである。図9に示すように、利用者が乗りかごの乗降を行ったり乗りかご内で動いたりしたときの振動の方が、乗りかご自体の運行に伴う振動よりも大きいことが分かる。このため、乗りかご内に利用者がいる場合、加速度センサだけでは、気圧センサの補正を精度よく行うのが困難である。
【0032】
また、本実施形態における異常診断28部は、かご位置推定部27によって推定した乗りかごの位置(高さ)が、各階床に相当する高さに対応しているか否かを判定し、対応していない場合は、本来停止すべきない位置で乗りかごが停止しているとして、異常停止と診断する。異常診断部28が異常停止と診断した場合、通信部29が通信回線3を介して監視サーバ4等に発報する。異常発報があると、監視センターは、営業所に連絡して保守員を対象のエレベーターへ派遣する。
【0033】
上記のように、本実施形態に係るかご位置特性装置では、乗りかごのドアの開閉動作を磁気センサで検知したタイミングで気圧センサ9の補正を行うため、乗りかご内に利用者がいる場合でも補正できる。したがって、気圧センサ9の補正の頻度を多くでき、乗りかごの位置の正確な特定が可能となり、その結果、異常停止の誤判定を抑制できる。
【0034】
なお、上記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0035】
例えば、上記の実施形態では、磁気センサ8と気圧センサ9でセンサモジュール1を構成したが、さらに加速度センサを設けることを妨げるものではない。センサモジュール1として、さらに加速度センサを設けることで、磁気センサ8が故障した場合にも、乗りかごが停止中であることを加速度センサの検出信号に基づき検知することができる。また、加速度センサを用いれば、乗りかごの移動方向も判定が可能なだけでなく、乗りかごの急停止が検知できるので異常停止を診断する精度が向上する。
【0036】
さらに、センサモジュール1として、さらにカメラや人感センサを設けることにより、乗りかご内に利用者がいないことを検知したときに、制御モジュール2が気圧センサ9の補正を行うようにしても良い。カメラを用いれば、利用者によるボタン操作の有無も判定できる。このように、利用者がおらず、乗りかごが停止中に気圧センサを補正することで、補正の精度をより高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1 センサモジュール
2 制御モジュール
3 通信回線
4 監視サーバ
5 監視装置
6 端末装置
7 かご位置特定装置
8 磁気センサ
9 気圧センサ
21 ドア開閉検知部
22 移動階床数検知部
23 気圧値記憶部
24 移動方向判定部
25 ドリフト量計算部
26 気圧値補正部
27 かご位置推定部
28 異常診断部
29 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9