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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 1/08 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
H02N1/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020210828
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097308
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 久幸
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157724(JP,A)
【文献】特開2019-213296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 1/08
H02K 35/00
B06B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子と、
負荷抵抗に接続されると、前記振動発電素子によって生成された電力を前記負荷抵抗に供給する出力部と、
前記振動の加速度に対応する信号に応じて前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部であって、前記入力インピーダンスごとに定められた前記振動の加速度と前記電力との関係に基づいて、前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部を備え
前記信号は、加速度センサによって検出された、前記加速度に関連する検出値を表し、
前記調整部は、
前記加速度が所定閾値よりも小さい第1加速度値から前記所定閾値よりも大きい第2加速度値へ変化すると、前記入力インピーダンスを第1インピーダンス値から前記第1インピーダンス値よりも大きい第2インピーダンス値へ変更し、
前記加速度が前記第2加速度値から前記第1加速度値へ変化すると、前記入力インピーダンスを前記第2インピーダンス値から前記第1インピーダンス値へ変更する、振動発電装置。
【請求項2】
請求項に記載の振動発電装置において、
前記加速度センサは、前記振動発電素子に設置される、振動発電装置。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の振動発電装置において、
前記入力インピーダンスが前記第1インピーダンス値である場合に前記加速度が第3加速度値であるときの前記電力と、前記入力インピーダンスが前記第2インピーダンス値である場合に前記加速度が前記第3加速度値であるときの前記電力とが等しいとき、前記所定閾値は前記第3加速度値に基づいて得られる、振動発電装置。
【請求項4】
電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子と、
負荷抵抗に接続されると、前記振動発電素子によって生成された電力を前記負荷抵抗に供給する出力部と、
前記振動の加速度に対応する信号に応じて前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部であって、前記入力インピーダンスごとに定められた前記振動の加速度と前記電力との関係に基づいて、前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部、を備え、
前記信号は、前記加速度に応じた前記振動を前記電極に生じさせる振動発生装置の出力レベルを表し、
前記調整部は、
前記出力レベルが第1レベルから前記第1レベルよりも大きい第2レベルへ変化すると、前記入力インピーダンスを、第1インピーダンス値から前記第1インピーダンス値よりも大きい第2インピーダンス値へ変更し、前記出力レベルが前記第2レベルから前記第1レベルへ変化すると、前記入力インピーダンスを、前記第2インピーダンス値から前記第1インピーダンス値へ変更する、振動発電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の振動発電装置において、
前記出力部は、
前記振動発電素子から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する第1蓄電回路と、
前記直流電力の電圧を変換して蓄電する第2蓄電回路と、
前記第1蓄電回路から前記第2蓄電回路への電力伝送を開始または停止する切替動作を行うスイッチング回路とを有し、
前記調整部は、前記切替動作が行われる条件を変更することによって、前記入力インピーダンスを調整する、振動発電装置。
【請求項6】
請求項に記載の振動発電装置において、
前記第1蓄電回路に蓄電される前記直流電力の電圧が、所定電圧値を上回る電圧値に上昇したとき、または前記所定電圧値を下回る電圧値に低下したとき、前記スイッチング回路によって前記切替動作が行われ、
前記調整部は、前記所定電圧値を変更することによって、前記切替動作が行われる前記条件を変更する、振動発電装置。
【請求項7】
請求項に記載の振動発電装置において、
前記調整部は、前記切替動作が繰り返し行われることにより得られる、前記電力伝送が開始されてから停止されるまでの時間と、前記電力伝送が停止されてから開始されるまでの時間とに基づくデューティ比を、変更することによって、前記切替動作が行われる前記条件を変更する、振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動発電素子の振動する電極の振幅を制御することによって発電効率を高めた振動発電装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-213296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された振動発電装置によると、振動発電素子の電極の振動の変化次第で、出力される電力の効率が低い場合がある、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によると、振動発電装置は、電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子と、負荷抵抗に接続されると、前記振動発電素子によって生成された電力を前記負荷抵抗に供給する出力部と、前記振動の加速度に対応する信号に応じて前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部であって、前記入力インピーダンスごとに定められた前記振動の加速度と前記電力との関係に基づいて、前記出力部の入力インピーダンスを調整する調整部を備え、前記信号は、加速度センサによって検出された、前記加速度に関連する検出値を表し、前記調整部は、前記加速度が所定閾値よりも小さい第1加速度値から前記所定閾値よりも大きい第2加速度値へ変化すると、前記入力インピーダンスを第1インピーダンス値から前記第1インピーダンス値よりも大きい第2インピーダンス値へ変更し、前記加速度が前記第2加速度値から前記第1加速度値へ変化すると、前記入力インピーダンスを前記第2インピーダンス値から前記第1インピーダンス値へ変更する

【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、振動が変化した場合においても、振動発電装置の発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、給電対象である負荷抵抗に接続された振動発電装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、振動発電素子によって生成された電力の電力値と、振動発生源である振動発生装置の振動加速度との関係を例示する図である。
図3図3は、振動発電装置の調整部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の一例を示す図である。
図4図4は、振動発電装置の調整部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の一例を説明するための図である。
図5図5は、給電対象である負荷抵抗に接続された振動発電装置の構成の変形例を示す図である。
図6図6は、変形例による振動発電装置の調整部によって行われる、振動発電装置の出力部の入力インピーダンスを調整する処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施の形態における振動発電装置100について、図1から図3までを用いて以下に説明する。図1は、給電対象である負荷抵抗200に接続された振動発電装置100の構成の一例を示す図である。振動発電装置100は、振動発生装置の振動で生じる電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子110、電極の振動加速度を検出する加速度センサ115、振動発電素子110により生成された電力を負荷抵抗200に供給する出力部120および調整部130を有する。本実施の形態において、振動発電装置100は、振動発電素子110の電極に振動を生じさせる振動発生源である不図示の振動発生装置300に設置される。振動発電素子110は固定電極と可動電極とを有し、固定電極の振動加速度は、振動発生源である振動発生装置300の振動加速度に応じた値となる。説明を分かりやすくするため、本実施の形態においては、振動発電素子110の固定電極の振動加速度は、振動発生装置300の振動加速度に等しい値であるものとする。図1において、振動発電素子110から出力部120を介して負荷抵抗200へ延びる矢印は、電力供給方向を示す。加速度センサ115および調整部130からそれぞれ延びる矢印は、後述する出力部120の入力インピーダンスを調整するための制御の向きを示している。
【0009】
加速度センサ115は、例えば静電容量検出方式によって構成され、かつ振動発電素子110に設置され、振動発生装置300の振動加速度を検出すると、その検出した振動加速度に対応する信号を、調整部130へ転送する。加速度センサ115から調整部130へ転送される信号は、加速度センサ115によって検出された振動発生装置300の振動加速度を表すのであるから、振動発電素子110の電極の振動加速度に対応する信号ともいえる。したがって、加速度センサ115から調整部130へ転送される信号は、振動発電素子110の電極の振動加速度に関連する検出値を表す。調整部130は、例えば、加速度センサ115から転送された信号を用いて振動発生装置300の振動加速度が所定閾値よりも大きいか否かを判断するコンパレータと、後述するスイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路とを含み、コンパレータによる判断結果に応じて出力部120の入力インピーダンスを調整する。
【0010】
出力部120は、第1蓄電回路121、スイッチング回路122および第2蓄電回路123を含む。第1蓄電回路121は、例えば整流器およびコンデンサで構成され、振動発電素子110から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する。スイッチング回路122は、例えばトランジスタで構成され、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送を開始または停止する切替動作を行う。第2蓄電回路123は、例えばインダクタおよびコンデンサで構成され、第1蓄電回路121からスイッチング回路122を介して伝送される直流電力の電圧を変換して蓄電する。
【0011】
図2は、振動発電素子110によって生成された電力の電力値Pと、振動発生源である振動発生装置300の振動加速度Aとの関係を例示する図である。出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるとき、振動発生装置300の振動加速度Aが0から増加してAxに達するまで、振動発電素子110によって生成された電力Pは振動加速度Aの2乗に比例して増加する。すなわち、比例係数C1を用いて、式(1)のように表される。
P=C1×A (0≦A≦Ax) ・・・(1)
【0012】
出力部120の入力インピーダンスZ=Z1であるとき、式(1)に基づき、振動発生装置300の振動加速度A=Axにおいて、振動発電素子110によって生成された電力P=Pxとなり、図2に変曲点X(Ax,Px)を表すことができる。振動加速度A>Axになると、電力Pが、振動加速度A≦Axにおける振動加速度Aの2乗比例に応じた増加を示す傾向から、変曲点Xにおける電力値Pxからほぼ横ばい、または漸増もしくは漸減を示す傾向へ変化する。
【0013】
出力部120の入力インピーダンスZが、第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であるとき、振動発生装置300の振動加速度Aが0から増加してAyに達するまで、振動発電素子110によって生成された電力Pは振動加速度Aの2乗に比例して増加する。すなわち、比例係数C2を用いて、式(2)のように表される。
P=C2×A (0≦A≦Ay) ・・・(2)
【0014】
出力部120の入力インピーダンスZ=Z2であるとき、式(2)に基づき、振動発生装置300の振動加速度A=Ayにおいて、振動発電素子110によって生成された電力P=Pyとなり、図2に変曲点Y(Ay,Py)を表すことができる。振動加速度A>Ayになると、電力Pが、振動加速度A≦Ayにおける振動加速度Aの2乗比例に応じた増加を示す傾向から、変曲点Yにおける電力値Pyからほぼ横ばい、または漸増もしくは漸減を示す傾向へ変化する。
【0015】
出力部120の入力インピーダンスZの第2インピーダンス値Z2が第1インピーダンス値Z1よりも大きい場合、図2に示すように、式(2)に用いられる比例係数C2は式(1)に用いられる比例係数C1よりも小さく、かつ変曲点Yにおける電力値Pyは変曲点Xにおける電力値Pxよりも大きい。
【0016】
図2に示されるように、振動発生装置300の振動加速度Aが小さいとき、調整部130によって、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値に調整されると、出力部120の入力インピーダンスZが第2インピーダンス値に調整されるときよりも大きな電力Pが得られる。振動発生装置300の振動加速度Aが大きいとき、調整部130によって、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値に調整されると、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値に調整されるときよりも大きな電力Pが得られる。
【0017】
この点に着目し、本実施の形態において調整部130は、次のようにして、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。振動発生装置300の振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さい第1加速度値A1(0≦A1<Ath)であるとき、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを第1インピーダンス値Z1に調整する。振動発電素子110の電極の振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きい第2加速度値A2(A2>Ath)であるとき、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを第2インピーダンス値Z2に調整する。なお、本実施の形態において、所定閾値Athは、図2に示すように、入力インピーダンスZ=Z1であるときの振動加速度Aに対する電力Pのグラフと、入力インピーダンスZ=Z2であるときの振動加速度Aに対する電力Pのグラフとの交点Kにおける振動加速度Aの値である第3加速度値A3に等しい。入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1である場合に振動加速度Aが第3加速度値A3であるときの電力Pと、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2である場合に振動加速度Aが第3加速度値A3であるときの電力Pとは等しく、電力値Pxまたはその近傍値である。
【0018】
すなわち、振動発生装置300の振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さい第1加速度値A1から所定閾値Ath=A3よりも大きい第2加速度値A2へ変化すると、調整部130が、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1から第2インピーダンス値Z2に変更する。これにより、振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きくなった際に、入力インピーダンスZが変更されないと仮定した場合よりも大きな電力Pが得られるようになる。逆に、振動発生装置300の振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きい第2加速度値A2から所定閾値Ath=A3よりも小さい第1加速度値A1へ変化すると、調整部130が、出力部120の入力インピーダンスZを、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1に変更する。これにより、振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さくなった際に、入力インピーダンスZが変更されないと仮定した場合よりも大きな電力Pが得られるようになる。
【0019】
所定閾値Athは、調整部130に含まれるコンパレータに予め設定される。所定閾値Athには、第3加速度値A3に限らず第3加速度値A3近傍の他の値が設定されることとしてもよいし、ヒステリシスが考慮された複数の値が用いられることとしてもよい。
【0020】
なお、出力部120の入力インピーダンスの値の変更は、図4を用いて後述するように、第1蓄電回路121の蓄電電圧に基づく、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を、変更することによって実現される。
【0021】
図3は、振動発電装置100の調整部130によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスを調整する処理の一例を示す図である。この入力インピーダンス調整処理は、例えば、振動発電装置100が負荷抵抗200に電力を供給している間、繰り返し実行される。
【0022】
ステップS310において、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1であるか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1であり、処理は第1インピーダンス値Z1に対応するステップS320へ進められる。否定判定が得られた場合、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1とは異なる第2インピーダンス値Z2であり、処理は第2インピーダンス値Z2に対応するステップS330へ進められる。
【0023】
ステップS320において、調整部130は、振動発生装置300の振動加速度Aが、所定閾値Athよりも大きいか否かを判定する。上述したように、所定閾値Athとして、例えば第3加速度値A3が予め設定されている。ステップS320で肯定判定が得られた場合、すなわち振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きいと判定された場合、ステップS325において、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを調整し、第1インピーダンス値Z1から第2インピーダンス値Z2に変更する。ステップS320で否定判定が得られた場合、すなわち振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きくないと判定された場合、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを変更しない。
【0024】
ステップS330において、調整部130は、振動発生装置300の振動加速度Aが、所定閾値Athよりも小さいか否かを判定する。上述したように、所定閾値Athとして、例えば第3加速度値A3が予め設定されている。ステップS330で肯定判定が得られた場合、すなわち振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さいと判定された場合、ステップS335において、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを調整し、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1に変更する。ステップS330で否定判定が得られた場合、すなわち振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さくないと判定された場合、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを変更しない。
【0025】
図4は、振動発電装置100の調整部130によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZを調整する処理の一例を説明するための図である。上述したように、調整部130は、スイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路を含む。図4(A)に示すように、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを上回る電圧値に上昇すると(V>Vth)、スイッチング回路122は、調整部130による制御にしたがって、電力伝送の切替動作を行う。スイッチング回路122の状態はオフからオンへ変化し、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始される。図4(B)に示すように、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを下回る電圧値に低下すると(V<Vth)、スイッチング回路122は、調整部130による制御にしたがって、電力伝送の切替動作を行う。スイッチング回路122の状態はオンからオフへ変化し、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が停止される。
【0026】
調整部130は、上述したように、入力インピーダンスZを変更する際、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。本実施の形態において、調整部130は、上述した所定電圧値Vthを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。こうした調整部130による出力部120の入力インピーダンスZの調整処理を、図4(C)に示す。
【0027】
図4(C)に示す調整部130による出力部120の入力インピーダンスZの調整処理は、例えば、振動発電装置100が負荷抵抗200に電力を供給している間、繰り返し実行される。ステップS410において、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1に調整するか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、処理はステップS420へ進められ、否定判定が得られた場合、処理はステップS430へ進められる。
【0028】
ステップS420において、調整部130は、所定電圧値Vthを第1電圧値V1に設定する。所定電圧値Vth=V1であるとき、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1となる。ステップS420が完了すると、出力部120の入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0029】
ステップS430において、調整部130は、所定電圧値Vthを第1電圧値V1よりも大きい第2電圧値V2に設定する。所定電圧値Vth=V2であるとき、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値Z2となる。ステップS430が完了すると、出力部120の入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0030】
本実施の形態における振動発電装置100によれば、以下の作用効果が得られる。
【0031】
(1)振動発電装置100は、電極の振動に応じた電力を生成する振動発電素子110と、負荷抵抗200に接続されると、振動発電素子110によって生成された電力を負荷抵抗200に供給する出力部120と、調整部130とを含む。調整部130は、加速度センサ115から転送される信号に応じて出力部120の入力インピーダンスZを調整する。加速度センサ115から調整部130へ転送される信号は、加速度センサ115によって検出された振動発生装置300の振動加速度Aを表す信号であり、すなわち振動発電素子110の電極の振動の振動加速度に対応する信号である。したがって、振動発電装置100の出力部120により負荷抵抗200に供給される電力Pを、振動発電素子110の電極の振動の振動加速度に応じて変化させることが可能となり、振動発電装置100の発電効率を高めることができる、という効果が得られる。
【0032】
(2)振動発電装置100において、加速度センサ115から調整部130へ転送される信号は、加速度センサ115によって検出された、振動発電素子110の電極の振動の振動加速度に関連する検出値を表す。本実施の形態において、その検出値は振動発生装置300の振動加速度Aの値である。調整部130は、振動加速度Aが所定閾値Athよりも小さい第1加速度値A1から所定閾値Athよりも大きい第2加速度値A2へ変化すると、出力部120の入力インピーダンスZを第1インピーダンス値Z1から第1インピーダンス値Z1よりも大きい第2インピーダンス値Z2へ変更する。振動加速度Aが第2加速度値A2から第1加速度値A1へ変化すると、入力インピーダンスZを第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1へ変更する。したがって、振動発電装置100の出力部120により負荷抵抗200に供給される電力Pが、振動発生装置300の振動加速度Aが小さい場合においても、大きい場合においても、より大きな電力値となるように、電力Pを変化させることができる、という効果が得られる。
【0033】
(3)振動発電装置100において、加速度センサ115は、振動発電素子110に設置される。したがって、加速度センサ115から調整部130へ転送される信号が表す振動加速度の精度が高い、という効果が得られる。
【0034】
(4)振動発電装置100において、出力部120の入力インピーダンスZが第1インピーダンス値Z1である場合に電極の振動の振動加速度Aが第3加速度値A3であるときの、出力部120により負荷抵抗200に供給される電力Pと、入力インピーダンスZが第2インピーダンス値Z2である場合に振動加速度Aが第3加速度値A3であるときの電力Pとが等しいとき、所定閾値Athは第3加速度値A3に等しい。したがって、電極の振動の振動加速度Aに応じて、相対的に高い電力Pが、出力部120により負荷抵抗200に供給され得る、という効果が得られる。
【0035】
(5)振動発電装置100において、出力部120は、振動発電素子110から出力される交流電力を直流電力に変換して蓄電する第1蓄電回路121と、その直流電力の電圧を変換して蓄電する第2蓄電回路123と、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送を開始または停止する切替動作を行うスイッチング回路122とを有する。調整部130は、調整部130に含まれる制御回路により制御される電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することによって、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。従来の出力部120の回路構成に特別な変更を加える必要無く、出力部120の入力インピーダンスZを調整することが可能になるという効果が得られる。
【0036】
(6)振動発電装置100において、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vが、所定電圧値Vthを上回る電圧値に上昇したとき、または所定電圧値Vthを下回る電圧値に低下したとき、スイッチング回路122は電力伝送の切替動作を行う。調整部130に含まれる制御回路は、所定電圧値Vthを変更することによって、スイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することができる。この場合、制御回路を比較的簡易な回路で構成することができるという効果が得られる。
【0037】
次のような変形も本発明の範囲内であり、以下に示す変形例の一つ、もしくは複数を上述した実施の形態と組み合わせることも可能である。
【0038】
(1)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の加速度センサ115は、静電容量検出方式によって構成され、振動発電装置100に含まれる振動発電素子110に設置されることとした。加速度センサ115は、静電容量検出方式に限られず他の方式によって構成されるものであってもよいうえ、必ずしも振動発電素子110に設置されない。例えば、加速度センサ115が、振動発電装置100の外部の、振動発電素子110の電極に振動を生じさせる振動発生源である振動発生装置300に、設置されることとしてもよい。加速度センサ115は、振動発電素子110に設置される場合であっても、振動発生装置300に設置される場合であっても、振動発電素子110の電極の振動加速度に対応する信号として、振動発生装置300で生じて振動発電素子110に作用する振動の振動加速度Aを表す信号が用いられることとしてもよい。
【0039】
加速度センサ115によって検出される検出値は、振動発生装置300で生じる振動の振動加速度Aを表すが、振動発生装置300で生じる振動は振動発電素子110の電極の振動に関連するので、その検出値は振動発電素子110の電極の振動加速度に関連する値となる。したがって、振動発電素子110の電極の振動加速度に対応する信号として、加速度センサ115によって検出される、振動発生装置300で生じる振動の振動加速度Aを表す信号が用いられる。
【0040】
(2)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の調整部130は、振動発電素子110の電極の振動加速度に対応する信号として、振動発生装置300で生じる振動の振動加速度Aを表す信号を用いて、出力部120の入力インピーダンスを調整することとした。調整部130は、振動発電素子110の電極に振動を生じさせる振動発生源である振動発生装置300で得られる他の信号に応じて出力部120の入力インピーダンスZを調整することとしてもよい。
【0041】
図5は、給電対象である負荷抵抗200に接続された振動発電装置100の構成の変形例(1)を示す図である。図1に示す例とは異なり、振動発電装置100の調整部120は、加速度センサ115から転送される信号に代え、振動発生装置300で得られる信号に応じて、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。図5に示す例において、振動発生装置300は、例えばコンプレッサを含むものとする。上述した振動発生装置300で得られる信号とは、振動発生装置300の出力レベルを表す信号である。振動発電装置100の調整部120は、例えば、振動発生装置300の出力レベルに応じて動作する不図示の振動スイッチの動作状態、または振動発生装置300の運転を開始もしくは停止させる不図示のタイマの動作状態を参照することにより、振動発生装置300の出力レベルを表す信号を取得することができる。振動発電素子110の電極の振動加速度は、振動発生装置300の出力レベルに依存するため、振動発生装置300の出力レベルを表す信号は、電極の振動加速度に対応する信号である。
【0042】
例えば、振動発生装置300の出力レベルがLOWレベルからLOWレベルよりも高いHIGHレベルへ変化すると、振動発電装置100の調整部120は、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1から第1インピーダンス値Z1よりも大きい第2インピーダンス値Z2へ変更する。振動発生装置300出力レベルがHIGHレベルからLOWレベルへ変化すると、振動発電装置100の調整部120は、出力部120の入力インピーダンスZを、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1へ変更する。
【0043】
振動発生装置300の出力レベルは、振動発生装置300に含まれるコンプレッサの運転状態の変化に基づいて検出されることとしてもよい。例えば、コンプレッサが起動された場合に、振動発生装置300出力レベルがHIGHレベルであることが検出され、コンプレッサが停止された場合に、振動発生装置300出力レベルがLOWレベルであることが検出される。
【0044】
本変形例における振動発電装置100において、調整部130が出力部120の入力インピーダンスZを調整する際に用いる信号は、振動加速度Aに応じた振動を振動発電素子110の電極に生じさせる振動発生装置300の出力レベルを表す。調整部130は、振動発生装置300の出力レベルがLOWレベルからLOWレベルよりも大きいHIGHレベルへ変化すると、入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1から第1インピーダンス値Z1よりも大きい第2インピーダンス値Z2へ変更する。調整部130は、振動発生装置300の出力レベルがHIGHレベルからLOWレベルへ変化すると、入力インピーダンスZを、第2インピーダンス値Z2から第1インピーダンス値Z1へ変更する。したがって、振動発電装置100に加速度センサ115を設ける必要が無く、振動発電装置100を小型化することが可能になるとともに、加速度センサ115の駆動に必要な電力を削減できる、という効果が得られる。
【0045】
(3)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZには、第1インピーダンス値Z1および第2インピーダンス値Z2からなる2種類のインピーダンス値が設定され得ることとした。しかし、出力部120の入力インピーダンスZには、2種類よりも多い複数種類のインピーダンス値が設定され得ることとしてもよい。それら複数種類のインピーダンス値は、連続的に変更可能な設定値であることとしてもよい。
【0046】
(4)上述した一実施の形態において、振動発電装置100の出力部120が有するスイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件は、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vと所定電圧値Vthとの関係に依存し、その所定電圧値Vthを変更することによって、その電力伝送の切替動作が行われる条件が変更されることとした。しかし、スイッチング回路122が電力伝送の切替動作を周期的に繰り返し行うこととし、電力伝送が開始されてから停止されるまでの時間と、電力伝送が停止されてから開始されるまでの時間とに基づくデューティ比を、調整部130に含まれる制御回路が変更することによって、電力伝送の切替動作が行われる条件が変更されることとしてもよい。
【0047】
図6は、変形例(4)による振動発電装置100の調整部130によって行われる、振動発電装置100の出力部120の入力インピーダンスZを調整する処理の一例を説明するための図である。この入力インピーダンス調整処理は、本変形例における振動発電装置100の調整部130によって行われる。上述したように、調整部130は、スイッチング回路122の切替動作を制御する制御回路を含む。図6(A)に示すように、スイッチング回路122は、調整部130による制御にしたがって、時系列上、オフの状態からオンの状態に変化する切替動作と、オンの状態からオフの状態に変化する切替動作とを、周期Tで周期的に繰り返す。スイッチング回路122がオンの状態に変化すると、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始され、スイッチング回路122がオフの状態に変化すると、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が停止される。
【0048】
図6(A)において、当初は、周期Tのうち、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間は第1時間h1であることから、周期Tと第1時間h1とに基づくデューティ比Dは、式(3)により得られる。このデューティ比Dは、調整部130によって演算される。
D=h1/T ・・・(3)
【0049】
次に、図6(A)において、振動発電装置100の調整部130が入力インピーダンスZを変更した場合、その後の期間において、周期Tのうち、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間は第1時間h1よりも小さい第2時間h2であることから、周期Tと第2時間h2とに基づくデューティ比Dは、式(4)により得られる。
D=h2/T ・・・(4)
【0050】
すなわち、調整部130は、第1蓄電回路121から第2蓄電回路123への電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間と、その電力伝送が停止されてから開始されるまでの電力停止時間とに基づくデューティ比Dを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。図6(A)に示すように、デューティ比Dが、式(3)に基づくh1/Tから、これよりも小さな値である式(4)に基づく値h2/Tに変更されることによって、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1から第1インピーダンス値Z1よりも大きな第2インピーダンス値Z2に変更される。
【0051】
図6(B)に示すように、デューティ比Dが、上述した式(4)に基づく値h2/Tから、これよりも大きな値である式(3)に基づく値h1/Tに変更されることによって、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値Z2から第2インピーダンス値Z2よりも小さな第1インピーダンス値Z1に変更される。
【0052】
調整部130は、振動発生装置300の振動加速度Aが所定閾値Athよりも大きいか否かに応じて、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更する。本変形例において、調整部130は、上述したデューティ比Dを変更することによって、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が行われる条件を変更し、その条件を変更することによって、出力部120の入力インピーダンスZを調整する。こうした調整部130による入力インピーダンスZの調整処理を、図6(C)に示す。
【0053】
図6(C)に示す調整部130による入力インピーダンスZの調整処理は、例えば、振動発電装置100が負荷抵抗200に電力を供給している間、繰り返し実行される。図6(C)に示す入力インピーダンスZの調整処理は、図4(C)とは、ステップS410の処理が共通するとともに、その後、ステップS420およびS430の処理に代えて、それぞれステップS620およびS630の処理が行われる点で相違する。ステップS410において、調整部130は、出力部120の入力インピーダンスZを、第1インピーダンス値Z1に調整するか否かを判定する。肯定判定が得られた場合、処理はステップS620へ進められ、否定判定が得られた場合、処理はステップS630へ進められる。
【0054】
ステップS620において、調整部130は、デューティ比Dとして、式(3)を用いて得られる値h1/Tを設定する。デューティ比D=h1/Tであるとき、出力部120の入力インピーダンスZは第1インピーダンス値Z1となる。ステップS620が完了すると、出力部120の入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0055】
ステップS630において、調整部130は、デューティ比Dとして、式(4)を用いて得られる値h2/Tを設定する。デューティ比D=h2/Tであるとき、出力部120の入力インピーダンスZは第2インピーダンス値Z2となる。ステップS630が完了すると、出力部120の入力インピーダンスZの調整処理は終了する。
【0056】
本変形例における振動発電装置100において、調整部130に含まれる制御回路は、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作が繰り返し行われることにより得られる、電力伝送が開始されてから停止されるまでの電力伝送時間と、電力伝送が停止されてから開始されるまでの電力停止時間とに基づくデューティ比Dを、変更することによって、スイッチング回路122により電力伝送の切替動作が行われる条件を変更することができる。この場合、制御回路が、スイッチング回路122による電力伝送の切替動作を制御しやすくなるという効果が得られる。また、第1蓄電回路121に蓄電される直流電力の電圧Vの測定が不要であるため、その測定に伴う電流損失を防止できるという効果が得られる。
【0057】
本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態および各変形例における構成に何ら限定されない。
【符号の説明】
【0058】
100 振動発電装置、110 振動発電素子、115 加速度センサ、
120 出力部、121 第1蓄電回路、122 スイッチング回路、
123 第2蓄電回路、130 調整部、200 負荷抵抗、
300 振動発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6