(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】農業機械
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
A01C15/00 H
(21)【出願番号】P 2020219855
(22)【出願日】2020-12-29
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】石見 憲一
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-150909(JP,A)
【文献】特開2020-054277(JP,A)
【文献】特開2020-103233(JP,A)
【文献】特開2015-077117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01C 3/00 - 3/08
A01C 15/00 - 23/04
A01M 1/00 - 99/00
B05B 1/00 - 3/18
B05B 7/00 - 9/08
B05B 12/00 - 13/06
B05B 17/00 - 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体を走行可能に支持する走行装置と、
前記機体と共に移動して散布物を散布する散布部と、
前記機体の走行速度を検出する速度センサと、
前記散布部により散布される散布物の量を制御する制御装置と、
表示装置と、
前記散布部による散布幅と、単位面積当たりに必要な散布量の計画値である散布計画値と、を含む入力要素を入力する入力部と、
前記散布部による散布量を変更するために動作する駆動装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記速度センサにより検出された現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに基づいて、前記最大速度値に対する前記現在速度値の余裕度を算出して前記表示装置に表示
するとともに、前記速度センサにより検出された現在速度値と、前記入力部から入力された前記散布幅及び前記散布計画値とに基づいて、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を演算し、前記散布能力を満たすように前記駆動装置を駆動し、
前記散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリア毎に個別に設定され、
前記制御装置は、前記複数のエリア毎に個別に設定される前記散布計画値を前記入力要素として使用し、前記複数のエリア毎に前記最大速度値を算出する農業機械。
【請求項2】
機体と、
前記機体を走行可能に支持する走行装置と、
前記機体と共に移動して散布物を散布する散布部と、
前記機体の走行速度を検出する速度センサと、
前記散布部により散布される散布物の量を制御する制御装置と、
表示装置と、
前記散布部による散布幅と、単位面積当たりに必要な散布量の計画値である散布計画値と、を含む入力要素を入力する入力部と、
前記散布部による散布量を変更するために動作する駆動装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記速度センサにより検出された現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに基づいて、前記最大速度値に対する前記現在速度値の余裕度を算出して前記表示装置に表示
するとともに、前記速度センサにより検出された現在速度値と、前記入力部から入力された前記散布幅及び前記散布計画値とに基づいて、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を演算し、前記散布能力を満たすように前記駆動装置を駆動し、
前記散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリア毎に個別に設定され、
前記制御装置は、前記複数のエリア毎に個別に設定される前記散布計画値のうち最大の散布計画値を前記入力要素として使用して前記最大速度値を算出する農業機械。
【請求項3】
前記表示装置は、前記余裕度を図形で表す余裕度ゲージを表示可能であり、
前記余裕度ゲージは、前記余裕度を、前記最大速度値を示す図形の面積又は長さに対する前記現在速度値を示す図形の面積又は長さで表し、
前記表示装置は、前記余裕度ゲージと、前記散布部からの散布状況を表す図形と、前記散布部から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチとを、同じ表示画面に表示する請求項
1又は2に記載の農業機械
。
【請求項4】
前記制御装置は、前記最大速度値に対する前記最大速度値と前記現在速度値との差の割合を前記余裕度として算出して前記表示装置に表示する請求項1
~3のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項5】
前記入力部に入力される入力要素は、
前記散布部から一定時間に散布される散布量を示す調量値と、
前記駆動装置であるモータの最高回転数を含むモータ仕様値と、
前記調量値と前記散布能力に基づいて前記モータの回転数を算出するための算出関数と、
前記散布計画値と、
を含み、
前記制御装置は、前記入力要素に基づいて前記最大速度値を算出する請求項
1~4のいずれか1項に記載の農業機械。
【請求項6】
前記制御装置は、前記入力要素として、前記散布計画値に代えて現在の散布量を示す現在散布値を使用して前記最大速度値を算出する請求項
5に記載の農業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、散布物を散布する農業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場に薬剤等の散布物を散布する農業機械として、特許文献1に示す散布装置が知られている。特許文献1に記載の散布装置は、移動農機の走行速度に応じて薬剤の散布圧力あるいはポンプの吐出量を制御して、単位面積当たりの薬剤散布量を略一定に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の散布装置では、作業者は、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に対して現在の走行速度がどの程度の余裕をもっているのかを把握することができない。そのため、走行速度が速すぎて必要な散布量での散布ができなかったり、走行速度が遅すぎて作業効率が低下したりするという問題が生じる。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に対して現在の走行速度がどの程度の余裕をもっているのかを把握することが可能な農業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
農業機械は、機体と、前記機体を走行可能に支持する走行装置と、前記機体と共に移動して散布物を散布する散布部と、前記機体の走行速度を検出する速度センサと、前記散布部により散布される散布物の量を制御する制御装置と、表示装置と、前記散布部による散布幅と、単位面積当たりに必要な散布量の計画値である散布計画値と、を含む入力要素を入力する入力部と、前記散布部による散布量を変更するために動作する駆動装置と、を備え、前記制御装置は、前記速度センサにより検出された現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに
基づいて、前記最大速度値に対する前記現在速度値の余裕度を算出して前記表示装置に表示するとともに、前記速度センサにより検出された現在速度値と、前記入力部から入力された前記散布幅及び前記散布計画値とに基づいて、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を演算し、前記散布能力を満たすように前記駆動装置を駆動し、前記散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリア毎に個別に設定され、前記制御装置は、前記複数のエリア毎に個別に設定される前記散布計画値を前記入力要素として使用し、前記複数のエリア毎に前記最大速度値を算出する。
【0006】
農業機械は、機体と、前記機体を走行可能に支持する走行装置と、前記機体と共に移動して散布物を散布する散布部と、前記機体の走行速度を検出する速度センサと、前記散布部により散布される散布物の量を制御する制御装置と、表示装置と、前記散布部による散布幅と、単位面積当たりに必要な散布量の計画値である散布計画値と、を含む入力要素を入力する入力部と、前記散布部による散布量を変更するために動作する駆動装置と、を備え、前記制御装置は、前記速度センサにより検出された現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに基づいて、前記最大速度値に対する前記現在速度値の余裕度を算出して前記表示装置に表示するとともに、前記速度センサにより検出された現在速度値と、前記入力部から入力された前記散布幅及び前記散布計画値とに基づいて、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を演算し、前記散布能力を満たすように前記駆動装置を駆動し、前記散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリア毎に個別に設定され、前記制御装置は、前記複数のエリア毎に個別に設定される前記散布計画値のうち最大の散布計画値を前記入力要素として使用して前記最大速度値を算出する。
【0007】
好ましくは、前記表示装置は、前記余裕度を図形で表す余裕度ゲージを表示可能であり、前記余裕度ゲージは、前記余裕度を、前記最大速度値を示す図形の面積又は長さに対する前記現在速度値を示す図形の面積又は長さで表し、前記表示装置は、前記余裕度ゲージと、前記散布部からの散布状況を表す図形と、前記散布部から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチとを、同じ表示画面に表示する。
好ましくは、前記制御装置は、前記最大速度値に対する前記最大速度値と前記現在速度値との差の割合を前記余裕度として算出して前記表示装置に表示する。
【0008】
好ましくは、前記入力部に入力される入力要素は、前記散布部から一定時間に散布される散布量を示す調量値と、前記駆動装置であるモータの最高回転数を含むモータ仕様値と、前記調量値と前記散布能力に基づいて前記モータの回転数を算出するための算出関数と、前記散布計画値と、を含み、前記制御装置は、前記入力要素に基づいて前記最大速度値を算出する。
【0009】
前記制御装置は、前記入力要素として、前記散布計画値に代えて現在の散布量を示す現在散布値を使用して前記最大速度値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に対して現在の走行速度がどの程度の余裕をもっているのかを表示装置の表示によって把握することできるため、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に近い速度での走行が可能となり、散布不足や作業効率の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】送風機から散布部に至る系統を示す図である。
【
図6】被覆板が第2位置にある状態を示す図である。
【
図7】被覆板が第1位置にある状態を示す図である。
【
図10】計画記憶部に記憶された散布計画の一例を示す図である。
【
図11A】農業機械がエリアQn内に位置する場合の第1散布量Fnと第2散布量Rnとの関係を示す図である。
【
図11B】農業機械がエリアQnの境界を位置し且つ第1管が左側のエリア、第2管が右側のエリアに位置する場合の第1散布量Fnと第2散布量Rnとの関係を示す図である。
【
図11C】
図11Bとは異なる第1散布量Fnと第2散布量Rnとの関係を示す図である。
【
図12】送風機を駆動するモータの回転数と、送風機の単位時間当たりの送風量との関係を規定する複数の規定ラインの一例を示す図である。
【
図13】表示部に表示される表示画面の一例であって、複数の規定ラインから1つの規定ラインを選択するための選択メニューが表示された画面である。
【
図14】表示部に表示される表示画面の一例であって、散布部から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチ、散布部からの散布状況を表す図形、余裕度ゲージが表示された画面である。
【
図15】表示画面から操作スイッチのみを抽出して示した図である。
【
図17】操作スイッチの別の変更形態を示す図である。
【
図18】それぞれ異なる余裕度を示す余裕度ゲージを示す図である。
【
図19】余裕度を算出する農業機械のシステム構成と処理動作の流れの一例を示す図である。
【
図26】支持ブラケット、支持板、測位装置の斜視図である。
【
図27】支持ブラケット、支持板、測位装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明に係る農業機械1の外観図である。農業機械1は、圃場等を走行して農作業を行う機械である。この実施形態の農業機械1は、散布物を散布することが可能である。散布物は、例えば、粒状の肥料、播子、除草剤等であって、固体物である。
本実施形態の場合、農業機械1は散布物を散布可能な乗用農業機械(例えば、乗用管理機)である。但し、農業機械1は、乗用農業機械には限定されず、例えばトラクタに散布装置等の作業装置(インプルメント)を装着したもの等であってもよい。
【0013】
図1~3に示すように、農業機械1は、機体(車体)2と、走行装置3と、原動機4とを備えている。走行装置3は、機体2を走行可能に支持している。以下、機体2と走行装置3とを合わせて走行車体8という場合がある。走行装置3は、機体2の前部の車軸に回転自在に支持された前輪3Fと、機体2の後部の車軸に回転自在に支持された後輪3Rとを有する車輪型の装置である。なお、走行装置3は、クローラ式の走行装置であってもよい。
【0014】
原動機4は、機体2に設けられていて、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、モータ、モータ・ジェネレータ等の回転電機である。原動機4は、内燃機関及び回転電機の両方であってもよい。この実施形態では、原動機4は、内燃機関である。
機体2には、運転席5と、走行装置3の操舵を行うステアリングハンドル等の操舵装置6と、原動機4の動力が伝達されるトランスミッション等の変速装置7とが設けられている。変速装置7は、運転席5の周囲に配置された操作部材の操作によって、変速段が変更し、機体2の速度(車速)が変速段に応じて変更される。なお、変速装置7は、無段変速の変速装置であってもよい。また、変速装置7には、原動機4の動力によって回転するPTO軸が設けられている。
【0015】
農業機械1には、散布物を収容する複数の収容器10が設けられている。複数の収容器10は、機体2の幅方向に並んでいて、当該機体2に支持されている。複数の収容器10は、機体2の一方側(左側)に設けられた左収容器10Lと、機体2の他方側(右側)に設けられた右収容器10Rとを含む。複数の収容器10、即ち、左収容器10L及び右収容器10Rのそれぞれには、散布物の散布量を調整して排出する散布量調整装置11L、11Rが設けられている。以降、説明の便宜上、散布量調整装置11Lのことを、「第1散布量調整装置11L」、散布量調整装置11Rのことを、「第2散布量調整装置11R」ということがある。
【0016】
第1散布量調整装置11Lは、左収容器10Lの散布物が導入されるケース12Lと、散布物を排出する散布排出機構13と、散布排出機構13を駆動する第1電動モータ14Lを有している。散布排出機構13は、ロールを回転することによりケース12Lの散布物を排出するロール式の機構、又は、シャッタを開閉してケース12Lの下部の排出口の開口面積を変更することにより散布物を排出するシャッタ式の機構である。この実施形態では、散布排出機構13は、ケース12Lに回転自在に支持された繰り出しローラ13Lを含んでいる。
【0017】
ケース12Lの上端には、散布物が導入される導入口(入口)が形成され、ケース12Lの下端には、散布物を排出する出口(排出口)が形成されている。繰り出しローラ13Lの回転によって左収容器10Lに収容された散布物が排出される。繰り出しローラ13Lの周壁には、散布物が入る凹部が形成されていて、凹部に散布物が入ることによって、散布量を計量する。
図8に示すように、第1電動モータ14Lは、制御装置60の制御信号によって駆動する。第1電動モータ14Lは、制御装置60から出力された制御信号によって、繰り出しローラ13Lの回転数(回転速度)等を制御し、繰り出しローラ13Lの回転数によって、第1散布量調整装置11Lから排出される散布物の散布量(排出散布量)を調整することができる。なお、第1電動モータ14Lは、散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタの開度を制御し、シャッタの開度によって第1散布量調整装置11Lから排出される散布物の散布量(排出散布量)を調整することができる。
【0018】
第2散布量調整装置11Rは、右収容器10Rの散布物が導入されるケース12Rと、散布物を排出する散布排出機構13と、散布排出機構13を駆動する第1電動モータ14Rを有している。この実施形態では、散布排出機構13は、第1散布量調整装置11Lと同様に、ケース12Rに回転自在に支持された繰り出しローラ13Rを含んでいる。
ケース12Rの上端には、ケース12Lと同様に、導入口が形成され、ケース12Rの下端には、排出口が形成されている。繰り出しローラ13Rの回転によって左収容器10Lに収容された散布物が排出される。繰り出しローラ13Rの周壁には、繰り出しローラ13Lと同様に、散布物が入る凹部が形成されていて、凹部に散布物が入ることによって、散布量を計量する。第1電動モータ14Rは、制御装置60の制御信号によって駆動する。第1電動モータ14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、繰り出しローラ13Rの回転数(回転速度)等が制御され、繰り出しローラ13Rの回転数によって、第2散布量調整装置11Rから排出される散布物の散布量(排出散布量)を調整することができる。なお、第1電動モータ14Rは、散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタの開度を制御し、シャッタの開度によって第2散布量調整装置11Rから排出される散布物の散布量(排出散布量)を調整することができる。
【0019】
農業機械1は、散布物が流通する搬送管15を備えている。搬送管15は、第1散布量調整装置11L及び第2散布量調整装置11Rのそれぞれから排出された散布物を流通する管である。搬送管15は、機体2の幅方向に延設可能なパイプであって、延設状態において機体2の一方側(左側)に延びる第1管15Lと、延設状態において機体2の他方側(右側)に延びる第2管15Rとを含んでいる。
【0020】
第1管15Lは、機体2から左方に延びる第1ブーム18Lに支持され、第1ブーム18Lの基端部から先端部に向けて延びている。第2管15Rは、機体2から右方に延びる第2ブーム18Rに支持され、第2ブーム18Rの基端部から先端部に向けて延びている。
図3に示すように、第1ブーム18L及び第2ブーム18Rは、先端部が機体2の後方に位置する退避状態と、先端部が機体2の幅方向に位置する散布状態とに折れ曲がり可能(起伏可能)である。第1ブーム18Lは、散布状態である場合に機体2の左方に延びる。第1ブーム18L及び第2ブーム18Rが散布状態であるとき、第1管15Lが機体2の左方に延び、第2管15Rが機体2の右方に延びる。
【0021】
尚、第1ブーム18L及び第2ブーム18Rは、伸縮可能な構成としてもよい。伸縮可能な構成は、例えば、後述する2つの円筒25、26(
図4A,
図4B参照)を伸縮自在に接合することによって実現される。この場合、第1ブーム18Lは、左方に延びる長さが短い短縮状態と、短縮状態よりも左方に延びる長さが長い伸長状態とに変更することができる。第2ブーム18Rは、右方に延びる長さが短い短縮状態と、短縮状態よりも右方に延びる長さが長い伸長状態とに変更することができる。つまり、第1ブーム18Lは左方に向けて伸長することができ、第2ブーム18Rは右方に向けて伸長することができる。
【0022】
第1ブーム18L及び第2ブーム18Rの起伏動作や伸縮動作は、モータやシリンダ等のアクチュエータによって行うことができる。アクチュエータの動作は、後述する制御装置60によって制御することができる。
図1に示すように、第1管15Lの基端部側には、接続部19Lが形成されていて、接続部19Lが第1散布量調整装置11Lのケース12Lの排出口に接続されている。第2管15Rの基端部側には、接続部19Rが形成されていて、接続部19Rが第2散布量調整装置11Rのケース12Rの排出口に接続されている。
【0023】
図4Aに示すように、第1管15Lの周壁には、基端部側から先端部側にかけて複数の散布口21Lが所定の間隔形成されている。複数の散布口21Lは、散布物を外部に散布する孔である。複数の散布口21Lのそれぞれに対応する位置には、複数の散布部22が取り付けられている。これにより、第1ブーム18Lには、複数の散布部22が設けられている。複数の散布部22は第1ブーム18Lに沿って設けられている。以下、第1ブーム18Lに設けられた複数の散布部22を纏めて「第1散布部221」という場合がある。複数の散布部22のそれぞれは、散布口21Lの開口と略同じ外径である筒体22Aと、筒体22Aに設けられたデフレクタ22Bとを含んでいる。複数の筒体22Aの内径は同じである。
【0024】
また、第1管15Lの先端部には、軸方向に開口する開口部23が形成されており、当該開口部23も散布口21Lとして機能する。なお、開口部23には、当該開口部23の開口を調整する開口板24が設けられている。
第1管15Lにおいて、第1散布量調整装置11L側(基端部側)の内径Raは、基端部とは反対側の先端部の内径Rbよりも大きくなっている。具体的には、第1管15Lは、少なくとも2つの円筒25、26を伸縮自在に接合することによって構成されていて、基端部側の円筒25の内径Raは、先端側の円筒26の内径Rbよりも大きい。
【0025】
図4Bに示すように、第2管15Rの周壁にも、第1管15Lと同様に複数の散布口21Rが形成され、複数の散布口21Rのそれぞれに対応する位置には、複数の散布部22が取り付けられている。これにより、第2ブーム18Rにも、複数の散布部22が設けられている。複数の散布部22は第2ブーム18Rに沿って設けられている。以下、第2ブーム18Rに設けられた複数の散布部22を纏めて「第2散布部222」という場合がある。また、第2管15Rの先端部にも、開口部23が形成され、当該開口部23も散布口21Rとして機能する。なお、第2管15Rの開口部23にも開口板24が設けられている。
【0026】
第2管15Rにおいて、第2散布量調整装置11R側(基端部側)の内径Raは、先端部の内径Rbよりも大きくなっている。具体的には、第2管15Rも、第1管15Lと同様に、2つの円筒25、26を伸縮自在に接合することによって構成されていて、基端部側の円筒25の内径Raは、先端側の円筒26の内径Rbよりも大きい。
図1、
図2、
図4A、
図4B及び
図5、
図6、
図7に示すように、搬送管15は、散布物を搬送させる媒体、液体又は気体等の搬送用の媒体が流れる供給管29を有している。供給管29の基端部は、機体2の後部に配置されており、後述する送風機201の送り出し口201bに接続されている。供給管29は、独立した2つの管(第3管29Lと第4管29R)から構成されていてもよいし、基端部が1つの管であって中途部で2つの管(第3管29Lと第4管29R)に分岐していてもよい。第3管29Lと第4管29Rは、機体2の側方に支持されて前方に延びている。第3管29Lの先端側は第1管15Lに接続され、第4管29Rの先端側は第2管15Rに接続されている。
【0027】
農業機械1は、散布物を搬送する媒体の量を調整する搬送調整装置を備えている。この実施形態では、
図2及び
図3に示すように、搬送調整装置は、媒体として気体の量、即ち、散布物を搬送するための搬送風を生成する送風機201と、送風機201の送風量を調整可能な調整装置202である。送風機201は、機体2の後部に取り付けられている。
本実施形態の場合、機体2に取り付けられた送風機201の数は1つであるが、2つ以上の送風機201を機体2に取り付ける構成としてもよい。例えば、1つの送風機201を機体2に取り付ける場合、供給管29として、基端部が1つの管であって中途部で2つの管(第3管29Lと第4管29R)に分岐したものを使用することができる。2つの送風機201を機体2に取り付ける場合、供給管29を独立した2つの管(第3管29Lと第4管29R)から構成し、一方の送風機を一方の供給管(第3管29L)と接続し、他方の送風機を他方の供給管(第4管29R)と接続することができる。2つ以上の送風機201を機体2に取り付ける場合、それぞれの送風機201に対して送風量を調整可能な調整装置202が設けられる。この場合、2つ以上の送風機201及び2つ以上の調整装置202は、それぞれ前後方向に並んで配置することができる。
【0028】
図6、
図7に示すように、送風機201は、外気(空気)を吸い込む吸い込み口201aと、吸い込み口201aから吸い込んだ外気を搬送管15に送り出す送り出し口201bとを有している。本実施形態の場合、送風機201はブロワファン(シロッコファン)であるが、他の種類のファン(例えば、遠心ファン、軸流ファン等)であってもよい。吸い込み口201a及び送り出し口201bは円筒状に形成されており、吸い込み口201a及び送り出し口201bの開口形状は円形である。但し、吸い込み口201a及び送り出し口201bの開口形状は円形に限定されず、他の形状(四角形等)であってもよい。
【0029】
調整装置202は、第2電動モータ35と、送風機201の吸い込み口201aを被覆可能な被覆板203と、第2電動モータ35の出力軸と被覆板203とを連携する連携機構204とを有している。連携機構204は、第2電動モータ35の動力を被覆板203に伝達する機構であり、第2電動モータ35の出力軸の回転を被覆板203の移動(揺動)に変換する。
【0030】
第2電動モータ35は、制御装置60により出力軸の回転(回転方向、回転数)が制御される。第2電動モータ35の出力軸は、連携機構204を介して被覆板203と接続されている。第2電動モータ35の出力軸と連携機構204との間には、必要に応じて減速装置等が介在される。被覆板203は、第2電動モータ35の出力軸の回転に伴って移動する。被覆板203は、枢支部207を支点として円弧状に揺動することにより第1位置P1(
図7参照)と第2位置P2(
図6参照)との間で位置を変更する。
【0031】
このように、被覆板203が第1位置P1と第2位置P2との間で位置を変更することにより、被覆板203が吸い込み口201aを覆う領域の面積が0%から100%の間で変化するため、送風機201の風量(搬送風の量)を制御することができる。また、送風機201の回転数を一定とした状態で、被覆板203が吸い込み口201aを覆う領域の面積を変化させることによって、送風機201の風量(搬送風の量)を制御することができる。そのため、送風機201の回転数を変化させるための制御を行うことなく、送風機201の風量を制御することができる。
【0032】
図8は、農業機械の制御ブロック図を示している。農業機械1は、制御装置60と、表示装置61と、通信装置62、測位装置63とを備えている。制御装置60は、農業機械1の様々な制御を行う装置であって、散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)、搬送調整装置(送風機201、調整装置202)等を制御する。制御装置60は、散布部22から散布される散布物の量及び搬送風の送風量を制御することができる。
【0033】
制御装置60には、繰り出しローラ13Lの回転数を検出する回転センサ91と、繰り出しローラ13Rの回転数を検出する回転センサ92と、被覆板203の作動量(回動量)を検出する作動センサ93とが接続されている。制御装置60は、繰り出しローラ13L及び繰り出しローラ13Rのそれぞれの回転数を制御する場合に、回転センサ91、92によって検出されたそれぞれの実回転数が目標回転数に一致するように、第1電動モータ14L、14Rのそれぞれの回転数を設定する。
【0034】
制御装置60は、被覆板203が吸い込み口201aを覆う領域の面積を変化させる場合に、作動センサ93によって検出された作動量(回動量)が目標の作動量に一致するように第2電動モータ35の出力軸の回動(回動角度)を設定する。
表示装置61は、農業機械1に関する様々な情報を表示する装置であって、液晶パネル、有機ELパネル等を含む装置である。
図8に示すように、表示装置61は、制御部61aと、記憶部61bと、表示部61cとを有している。制御部61aは、CPU等から構成されており、表示装置61に関する様々な制御(表示の制御等)を行う。記憶部61bは、不揮発性のメモリ等であって、農業機械1に関する様々な情報やプログラム(アプリケーションソフトウェア)等を記憶している。制御部61aは、記憶部61bに記憶された情報やプログラム等に基づいて制御を行うことができる。表示部61cは、表示及び入力を行うことができるタッチパネルである。
【0035】
通信装置62は、様々なデータの農業機械1の外部への送信や、外部のデータの農業機械1への取り込みを行う装置である。通信装置62は、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)等による無線通信や、携帯電話通信網、データ通信網、携帯電話通信網等による無線通信を行う装置である。
測位装置63は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。測位装置63は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて、農業機械1の位置(例えば、緯度、経度)、即ち、車体位置を検出する。即ち、測位装置63は、測位衛星からの信号に基づいて走行車体8の位置を検出する。測位装置63は、受信装置63aと、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)63bとを有している。受信装置63aは、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する装置である。この実施形態では、受信装置63aは、機体2に取付けられている。なお、受信装置63aの取付箇所は、実施形態に限定されない。慣性計測装置63bは、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。慣性計測装置63bも、機体2に取付けられ、慣性計測装置63bによって、機体2のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。
【0036】
制御装置60は、測位装置63で検出した検出情報に基づいて、走行車体8の操舵を自動制御する自動操舵制御を行う。
自動操舵制御を行うに際しては、まず、走行基準ラインを設定し、走行基準ラインの設定後に、当該走行基準ラインに平行な走行予定ラインの設定を行うことによって自動操舵制御を行うことができる。
【0037】
自動操舵制御では、測位装置63によって測定された車体位置と走行予定ラインとが一致するように、農業機械1(走行車体8)の進行方向の操舵を自動的に行う。具体的には、自動操舵制御を行う前に農業機械1(走行車体8)を圃場内の所定位置に移動させ、所定位置にてオペレータが農業機械1に設けられた操舵切換スイッチ(登録スイッチ)の操作を行うと、測位装置63によって測定された車体位置が走行基準ラインの始点に設定される。また、農業機械1(走行車体8)を走行基準ラインの始点から移動させ、所定の位置でオペレータが操舵切換スイッチの操作を行うと、測位装置63によって測定された車体位置が走行基準ラインの終点に設定される。始点と終点とを結ぶ直線が走行基準ラインとして設定される。
【0038】
走行基準ラインの設定後、例えば、農業機械1(走行車体8)を、走行基準ラインを設定した場所とは異なる場所に移動させ、オペレータが操舵切換スイッチの操作を行うと、走行基準ラインに平行な直線である走行予定ラインが設定される。走行予定ラインの設定後、自動操舵制御が開始され、農業機械1(走行車体8)の進行方向が走行予定ラインに沿うように変更される。
【0039】
また、制御装置60は、所定位置に設定された設定散布量に基づいて、散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)の制御を行う。この実施形態では、設定散布量は、外部機器によって設定する。外部機器は、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ等の固定型のコンピュータ、又はスマートフォン、タブレット等の携帯型のコンピュータ(携帯端末)である。
【0040】
図8を用いて、外部機器であるPC(固定端末という)75及びサーバ70によって、設定散布量を設定する場合について説明する。なお、設定散布量は、農業機械1に設けられた内部機器、例えば、表示装置61によって設定されていてもよく限定されない。
サーバ70は、圃場マップを記憶する圃場記憶部71と、設定散布量を含む散布計画を設定(作成)する計画作成部72、散布計画を記憶する計画記憶部73とを有している。圃場記憶部71及び計画記憶部73は、不揮発性のメモリ等から構成されている。圃場記憶部71は、予め作成された複数の圃場マップが記憶されている。計画作成部72は、サーバ70に設けられた電気電子部品、コンピュータプログラム等から構成されている。設定散布量が表示装置61によって設定される場合、表示装置61が、圃場記憶部71、計画作成部72、計画記憶部73を有する。
【0041】
固定端末75がサーバ70に接続して、所定の操作を行うと、
図9に示すように、サーバ70の計画作成部72は、固定端末75の表示部に、計画画面M1を表示する。計画画面M1は、圃場を選択する圃場選択取得部100と、圃場マップを表示する圃場表示部101と、時間を入力する時間入力部102を含んでいる。圃場選択取得部100は、上述したように圃場記憶部71に記憶された圃場マップの一覧表が表示され、一覧表の中から1つの圃場マップが選択されると、圃場表示部101は、圃場選択取得部100で選択された圃場(選択圃場)を表示する。時間入力部102において、時間(月、日、時刻)が入力されると、選択圃場において散布物の散布を行う時間が設定される。
【0042】
計画作成部72は、圃場選択取得部100にて選択された選択圃場の外形(輪郭LK)を圃場表示部101に表示する。圃場表示部101において、圃場を描写するフィールドは、位置(緯度、経度)が割り割り当てられている。また、圃場表示部101におけるフィールドは、複数のエリアQn(n=1,2,3・・・n)に区切られていて、区画されたエリアQnのそれぞれに散布物の設定散布量Wnを設定可能である。
【0043】
計画作成部72は、例えば、所定の操作を行うと、圃場表示部101に選択するポインタ106を表示する。また、計画作成部72は、ポインタ106で任意のエリアQnを選択すると、計画画面M1に、選択されたエリアQnに対応する設定散布量Wnを入力する散布入力部107を表示する。計画作成部72は、散布入力部107に設定散布量が入力されると、入力された設定散布量(入力散布量)を選択されたエリアQnの設定散布量Wnに設定する。なお、ポインタ106において、複数のエリアQnを選択した場合も、計画作成部72は、散布入力部107に入力された設定散布量を、複数のエリアQnにおける設定散布量Wnに設定する。
【0044】
以上のように、計画作成部72によって、エリアQn毎の設定散布量Wnの設定、即ち、所定位置(エリアQn)毎における設定散布量Wnの設定を行うことができる。
図10に示すように、エリアQn毎に設定された設定散布量Wn、圃場選択取得部100にて選択された選択圃場の圃場識別情報、時間入力部102に入力された時間(時間情報)を含む散布計画は、計画記憶部73に記憶される。
【0045】
計画記憶部73に記憶された散布計画は、農業機械1が取得することが可能である。例えば、農業機械1の通信装置62がサーバ70に接続して、当該サーバ70に対して散布計画の送信を要求すると、要求した散布計画が通信装置62に送信される。或いは、サーバ70が携帯端末に散布計画を転送し、転送された散布計画を携帯端末が通信装置62に送信する。なお、USBメモリ、SDカード等の電子記憶媒体に散布計画を記憶し、電子記憶媒体を農業機械1の入力インタフェースに接続することによって、農業機械1側が散布計画を取得してもよい。農業機械1側が散布計画を取得すると、当該農業機械1に設けられた計画記憶部78に散布計画が記憶される。
【0046】
図8に示すように、制御装置60は、散布物の散布を行う場合に、農業機械1側が取得した散布計画を取得する散布量取得部81を有している。散布量取得部81は、制御装置60に設けられた電気電子部品、コンピュータプログラム等から構成されている。農業機械1において、所定の動作が行われると、散布量取得部81は、計画記憶部78に記憶されている散布計画の一覧表を表示装置61に表示し、作業者等の操作によって、表示された散布計画の一覧表の中から所定の散布計画が選択されると、選択された散布計画を取得する。或いは、農業機械1において、散布物を散布する散布作業の開始の指令が行われると、散布量取得部81は、測位装置63が検出した車体位置に対応する圃場の散布計画を計画記憶部78から割り出して、割り出した散布計画を取得する。つまり、散布量取得部81は、散布作業を行う前に、少なくとも外部機器で作成された所定位置毎の設定散布量Wnを取得することが可能である。
【0047】
制御装置60は、散布演算部82と散布制御部83とを有している。散布演算部82及び散布制御部83は、制御装置60に設けられた電気電子部品、コンピュータプログラム等から構成されている。
散布演算部82は、散布量取得部81が取得した設定散布量Wnに基づいて、第1散布量調整装置11Lから第1管15Lに排出される散布物の第1散布量Fnと、第2散布量調整装置11Rから第2管15Rに排出される散布物の第2散布量Rnとの演算を行う。
【0048】
図11Aに示すように、農業機械1の第1管15L、第2管15Rが平面視でエリアQn内に位置している場合、散布演算部82は、第1散布量Fnと第2散布量Rnとの合計Zn(Zn=Fn+Rn、n=1,2,3・・・)が、設定散布量Wnに一致するように、第1散布量Fnと第2散布量Rnとの設定を行う。例えば、エリアQnに対して、農業機械1が略中央部である場合、農業機械1の進行方向に対してエリアQnの左半分は、第1管15L側で散布を行い、エリアQnにおいて右半分は、第2管15R側で散布を行う。散布演算部82は、設定散布量Wnの半分を、第1散布量Fn及び第2散布量Rnに設定する(Fn=Wn/2、Rn=Wn/2)。
【0049】
図11Bに示すように、農業機械1の第1管15L、第2管15Rが平面視でエリアQnの境界に位置し且つ、第1管15L及び第2管15Rの先端部が略エリアQnに跨っている場合、散布演算部82は、第1管15Lが位置するエリアQnの設定散布量Wnを第1散布量Fnに設定し、第2管15Rが位置するエリアQnの設定散布量Wnを第2散布量Rnに設定する。
【0050】
図11Cに示すように、農業機械1の第1管15L、第2管15Rが平面視でエリアQnの境界に位置し且つ、第1管15L及び第2管15Rの先端部が略エリアQnの半分の位置(中央部の位置)である場合、散布演算部82は、第1管15Lが位置するエリアQnの設定散布量Wnの半分(1/2)を第1散布量Fnに設定し、第2管15Rが位置するエリアQnの設定散布量Wnの半分(1/2)を第2散布量Rnに設定する。
【0051】
なお、
図11Aに示すように、第1管15Lの先端部の位置及び第2管15Rの先端部の位置は、農業機械1の現在の車体位置に、測位装置63から第1管15L及び第2管15Rの先端部までのそれぞれの位置情報ΔL(ΔX、ΔY)を加算することによって把握することができる。第1管15L及び第2管15Rの長さ、位置等に関する管材情報、位置情報ΔLは、制御装置60に記憶されている。
【0052】
散布制御部83は、測位装置63が検出した車体位置が所定位置である場合に、散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)から排出される排出散布量(第1散布量Fn、第2散布量Rn)を設定散布量Wnに調整する散布調整制御を行う。具体的には、散布調整制御では、散布制御部83は、散布演算部82が演算(設定)した第1散布量Fnに基づいて第1散布量調整装置11Lを制御し、且つ、第2散布量Rnに基づいて第2散布量調整装置11Rを制御する。
【0053】
図11Aに示すように、エリアQ1の設定散布量W1が2.0kg/10aである場合、エリアQ1における第1散布量F1は1.0kg/10aであり、エリアQ1における第2散布量R1は1.0kg/10aである。散布制御部83は、エリアQ1を通過する間に、第1散布量調整装置11Lの第1散布量F1が1.0kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Lの回転数(第1電動モータ14Lの回転数)を設定し、且つ、第2散布量調整装置11Rの第2散布量R1が1.0kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Rの回転数(第1電動モータ14Rの回転数)を設定する。
【0054】
図11Bに示すように、エリアQ2の設定散布量W2が3.0kg/10aであり、エリアQ9の設定散布量W9が5.0kg/10aである場合、エリアQ2における第1散布量F5は3.0kg/10aであり、エリアQ9における第2散布量R9は5.0kg/10aである。散布制御部83は、エリアQ2、Q9を通過する間に、第1散布量調整装置11Lの第1散布量F5が3.0kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Lの回転数(第1電動モータ14Lの回転数)の回転数を設定し、且つ、第2散布量調整装置11Rの第2散布量R9が5.0kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Rの回転数(第1電動モータ14Rの回転数)の回転数を設定する。
【0055】
図11Cに示すように、エリアQ9の設定散布量W9が5.0kg/10aであり、エリアQ12の設定散布量W12が4.0kg/10aである場合、エリアQ9における第1散布量F9は2.5kg/10aであり、エリアQ12における第2散布量R12は2.0kg/10aである。散布制御部83は、エリアQ9、Q12を通過する間に、第1散布量調整装置11Lの第1散布量F1が2.5kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Lの回転数(第1電動モータ14Lの回転数)を設定し、且つ、第2散布量調整装置11Rの第2散布量R12が2.0kg/10aとなるように、繰り出しローラ13Rの回転数(第1電動モータ14Rの回転数)の回転数を設定する。
【0056】
また、制御装置60は、上述したように、散布調整制御だけでなく、搬送調整装置(送風機201、調整装置202)における搬送力を調整する搬送調整制御を行う。即ち、制御装置60は、散布制御部83だけでなく、搬送調整制御を行う搬送制御部84を有している。搬送制御部84は、制御装置60に設けられた電気電子部品、コンピュータプログラム等から構成されている。
【0057】
制御装置60(搬送制御部84)は、散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)の散布量(第1散布量Fn、第2散布量Rn)に基づいて、搬送調整制御の制御として、搬送風の送風量の調整を行う。
以上によれば、第1管15Lの基端部から先端部に亘って当該第1管15Lの複数の散布部22のそれぞれから排出される散布物の量を略同じにすることができる。また、第2管15Rの基端部から先端部に亘って当該第2管15Rの複数の散布部22のそれぞれから排出される散布物の量を略同じにすることができる。
【0058】
また、第1管15Lから排出される散布物の散布量(第1散布量Fn)と、第2管15Rから排出される散布物の散布量(第2散布量Rn)とが同じである場合においては、第1管15Lに設けた複数の散布部22から排出した量と、第2管15Rに設けた複数の散布部22から排出した量とを略同じにすることができる。
<散布量の制御>
上述したように、制御装置60は、散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)を制御することによって、散布部22からの散布量を制御することができる。また、制御装置60は、搬送調整装置(送風機201、調整装置202)を制御することによって、搬送風の送風量を制御することができる。
【0059】
制御装置60は、CPUやメモリ等を備えたコンピュータであって、
図8に示すように、記憶部85、選択取得部86、設定部87を有している。記憶部85は、不揮発性のメモリ等であって、散布量の制御に使用する様々な情報やプログラム等を記憶している。選択取得部86及び設定部87は、制御装置60に設けられた電気電子部品、プログラム等から構成されている。選択取得部86及び設定部87は、記憶部85に記憶された情報やプログラム等に基づいて、散布量の制御に関する動作(選択を取得する動作、設定を行う動作)を実行する。
【0060】
尚、
図8に示す実施形態では、表示装置61とは別に設けられた制御装置60が、記憶部85、選択取得部86、設定部87を備えているが、表示装置61が記憶部85、選択取得部86、設定部87を備えるように構成してもよい。この場合、表示装置61が記憶部85、選択取得部86、設定部87を有する制御装置として機能する。また、表示装置61は、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末で構成されていてもよい。
【0061】
記憶部85には、第1散布量調整装置11L(第2散布量調整装置11R)の散布量を調整する繰り出しローラ13R(第1電動モータ14R)の回転数と、送風機201の単位時間当たりの送風量との関係を規定する複数の規定ラインが記憶されている。
図12は、記憶部85に記憶された複数の規定ラインL1~L9を示している。複数の規定ラインの数は、2本以上であればよいが、好ましくは3本以上、より好ましくは5本以上である。本実施形態の場合、複数の規定ラインの数は9本である。送風機201の単位時間当たりの送風量は、送風機201の吸い込み口201aに設けた風量調整シャッタ(被覆板203)が吸い込み口201aを覆う領域の面積を変化させることで調整することができる。
【0062】
規定ラインL1~L9は、第1散布量調整装置11L(第2散布量調整装置11R)から排出される散布物の散布量を調整する繰り出しローラ13R(第1電動モータ14R)の回転数(以下、「散布モータ回転数」という)と送風機201の単位時間当たりの送風量(以下、「体積風量」という)との関係を示す関数を、横軸を散布モータ回転数(rpm)、縦軸を送風量(体積風量)(m3/sec)としてグラフ化したものであって、散布物の散布量と体積風量との関係を示している。
【0063】
つまり、散布物の散布量は散布モータ回転数により定まるため、散布モータ回転数と体積風量との関係を示すグラフは、散布物の散布量と体積風量との関係を示すグラフでもある。従って、散布モータ回転数と体積風量との関係に基づいて規定される規定ラインL1~L9は、散布量調整装置11L,11Rから排出される散布物の散布量と体積風量との関係を規定する規定ラインということができる。
【0064】
複数の規定ラインL1~L9は、上述した風量調整シャッタの複数の開度に基づいてそれぞれ規定されている。1つの規定ラインは、風量調整シャッタの1つの開度に対応している。従って、複数の規定ラインL1~L9は、風量調整シャッタの異なる複数(9つ)の開度にそれぞれ対応している。
例えば、規定ラインL1は、送風機201の吸い込み口201aに設けた被覆板203の開度が「A%」である場合の体積風量と散布モータ回転数との関係を示す関数をグラフ化したものである。規定ラインL2は、送風機201の吸い込み口201aに設けた被覆板203の開度が「B%(B>A)」である場合の体積風量と散布モータ回転数との関係を示す関数をグラフ化したものである。同様に、規定ラインL3は開度が「C%(C>B)」である場合、規定ラインL4は開度が「D%(D>C)」である場合、規定ラインL5は開度が「E%(E>D)」である場合、規定ラインL6は開度が「F%(F>E)」である場合、規定ラインL7は開度が「G%(G>F)」である場合、規定ラインL8は開度が「H%(H>G)」である場合、規定ラインL9は開度が「I%(I>H)」である場合の体積風量と散布モータ回転数との関係を示す関数をグラフ化したものである。
【0065】
複数の規定ラインL1~L9は、風量調整シャッタ(被覆板203)の開度を複数段階に設定し、それぞれの開度設定において体積風量の変化を測定し、測定結果に基づいて体積風量と散布モータ回転数(第1散布量調整装置11L(第2散布量調整装置11R)から排出される散布物の散布量)との関係を示す関数を算出してグラフ化することによって得ることができる。つまり、複数の規定ラインL1~L9は、実測により導出することができる。但し、複数の規定ラインL1~L9は、全てを実測により導出せずともよく、複数の規定ラインのうちの幾つかを基準規定ラインとして実測により導出し、残りの規定ラインを導出した基準規定ラインを表す関数に補正係数を掛けることにより導出してもよい。また、複数の規定ラインL1~L9は、実測以外の方法、例えばシミュレーション等により導出してもよい。
【0066】
風量調整シャッタが被覆板203である場合、風量調整シャッタ(被覆板203)は、送風機201の吸い込み口201aの開口面積を変更することにより、送風量(体積風量)を調整する。即ち、風量調整シャッタ(被覆板203)は、開度を変更することによって、送風機201の吸い込み口201aの開口面積を変更し、被覆板203が送風機201の吸い込み口201aを覆う領域の面積を変化することで、送風機201の風量(搬送風の量)を制御することができる。また、送風機201の回転数を一定とした状態で、被覆板203が吸い込み口201aを覆う領域の面積を変化させることによって、送風機201の風量(搬送風の量)を制御することができる。そのため、送風機201の回転数を変化させるための制御を行うことなく、送風機201の風量を制御することができる。これによって送風量(体積風量)を調整する。この場合、複数の規定ラインL1~L9は、風量調整シャッタの複数の開度に基づいて規定される。この場合、「体積風量」は、第3管(第1搬送管)29Lと第4管(第2搬送管)29Rの両方を流通する搬送風の合計量となる。
【0067】
選択取得部86は、記憶部85に記憶された複数の規定ラインL1~L9から選択された1つの規定ラインを取得する。選択取得部86は、複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを選択する操作を可能とする選択メニューを表示部61cに表示する。選択メニューは、表示部61cがタッチパネルである場合、複数の選択ボタンとして画面に表示される。作業者は、表示部61cに表示された選択メニューから選択ボタンを押圧する等の方法で1つの規定ラインを選択することができる。選択取得部86は、選択された1つの規定ライン(規定ラインを表す関数の情報)を取得する。
【0068】
設定部87は、選択取得部86により取得された規定ラインに基づいて散布モータ回転数と体積風量との関係を設定する。例えば、規定ラインL1が選択されて取得された場合、規定ラインL1に基づいて散布モータ回転数と体積風量との関係を設定する。具体的には、風量調整シャッタ(被覆板203)の開度を、規定ラインL1を規定したときの開度に設定する。
【0069】
上述した実施形態では、送風機201の吸い込み口201aを覆う被覆板203の位置を調整することによって、搬送風の送風量を変更していたが、送風機201の出力(送風ファンの回転数)を調整することによって、搬送風の送風量を調整してもよい。
上述した実施形態では、送風機201の吸い込み口201aに風量調整シャッタ(被覆板203)を設けた構成としていたが、供給管29に風量調整シャッタを設けて送風量を調整する構成としてもよい。
【0070】
以下、制御装置60の制御に基づいて散布部22からの散布量を調整する方法の一例について説明する。
先ず、制御装置60の選択取得部86は、複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを選択する操作を可能とする選択メニューを表示装置61の表示部61cに表示する。
図13は、表示部61cに表示される表示画面M2の一例を示している。この表示画面M2には、選択メニューが表示されている。
図13では、選択メニューとして、1~9の数字がそれぞれ付された選択ボタンE1~E9が表示されている。選択ボタンE1~E9は。それぞれ規定ラインL1~L9に対応している。例えば、選択ボタンE1を押圧すると、規定ラインL1が選択される。
【0071】
作業者は、選択取得部86により表示された選択メニューに基づいて、複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを仮選択する操作を行う(第1ステップ)。この仮選択の操作は、選択ボタンE1~E9のいずれかを押圧することにより行うことができる。仮選択は、作業者が散布しようとする散布物の種類に応じて行うことが好ましい。
例えば、作業者が散布しようとする散布物が、風で飛びにくいもの(例えば、重量又は比重が大きいもの、粒径が大きいもの等)である場合は、散布モータ回転数に対する体積風量が多い規定ライン(例えば、L7~L9のいずれか)を選択する。作業者が散布しようとする散布物が、風で飛びやすいもの(例えば、重量又は比重が小さいもの、粒径が小さいもの等)である場合は、散布モータ回転数に対する体積風量が少ない規定ライン(例えば、L1~L3のいずれか)を選択する。作業者が散布しようとする散布物が、標準的なものである場合は、散布モータ回転数に対する体積風量が標準的な規定ライン(例えば、L4~L6のいずれか)を選択する。
【0072】
作業者が1つの規定ラインを仮選択すると、選択取得部86は選択された1つの規定ラインを取得する。設定部87は、選択取得部86により仮選択されて取得された規定ラインに基づいて散布モータ回転数と体積風量との関係を仮設定する(第2ステップ)。例えば、規定ラインL5が仮選択されて取得された場合、規定ラインL5に基づいて散布モータ回転数と体積風量との関係を仮設定する。具体的には、風量調整シャッタ(被覆板203)の開度を、規定ラインL5を規定したときの開度に仮設定する。
【0073】
次いで、作業者は、仮設定に基づいて散布部22により散布物の仮散布を行い、散布量を測定する(第3ステップ)。この仮散布は、作業者が表示部61cに表示された「散布開始」ボタンE10(
図13参照)を押圧することにより行うことができる。仮設定のキャンセルは、表示部61cに表示された「キャンセル」ボタンE11(
図13参照)を押圧することにより行うことができる。
【0074】
仮散布は、散布モータ回転数を1つの特定の回転数(例えば、標準的な回転数)に設定して一定時間(例えば、30秒間)行う。散布モータ回転数の設定は、予め定められた回転数に自動的に設定されるようにしてもよいし、作業者が表示部61cの表示画面から選択できるようにしてもよい。「散布開始」ボタンを押圧すると、仮散布が開始され、一定時間経過後に自動的に仮散布が終了する。
【0075】
散布量の測定は、複数の散布部22の散布口21L,21Rの全て又は一部に散布物の回収袋を取り付けて散布物を回収し、回収した散布物の重量を測定する等の方法により行う。回収した散布物の重量の測定は、作業者が表示部61cの表示画面に表示された「計量」ボタンを押圧することによって農業機械1に設けられた計量装置が測定するように構成してもよいし、作業者が計量装置を用いて測定してもよい。
【0076】
仮散布により散布された散布物の重量測定が終了すると、測定された仮散布による散布量を予定散布量と比較する(第4ステップ)。予定散布量は、作業者が予定(計画)していた散布量(例えば、農作物にとって標準的な肥料散布量)である。予定散布量は、予め作業者によって入力されて記憶部85に記憶されている。予定散布量は、例えば、上述した設定散布量Wnであるが、これに限定されない。制御装置60は、仮散布による散布量を入力する操作を可能とする画面を表示部61cに表示する。作業者は、表示部61cに表示された画面から仮散布による散布量を入力することができる。尚、仮散布による散布量を農業機械1に設けられた計量装置が測定する場合、制御装置60が当該計量装置による測定値を読み取るように構成して、作業者の入力を不要としてもよい。
【0077】
制御装置60は、仮散布による散布量を予定散布量と比較し、両者の差が予め定められて記憶部85に記憶された所定量以内であるか否かを判定する。制御装置60は、両者の差が所定量を超える場合には、仮散布による散布量が予定散布量よりも多いか少ないかを判定する。この比較及び判定は、制御装置60が行うことが好ましいが、作業者が行ってもよい。
【0078】
仮散布による散布量と予定散布量との差が所定量以内である場合は、作業者が希望する散布が実行されていることになるため、仮設定を維持する。つまり、仮設定を最終設定として設定を終了する。設定の終了操作は、例えば、制御装置60が表示部61cの表示画面に「設定終了」と「設定変更」のボタンを表示し、作業者が「設定終了」ボタンを押圧することによって行うことができる。
【0079】
仮散布による散布量と予定散布量との差が所定量を超える場合は、作業者は「設定変更」のボタンを押圧する。すると、選択取得部86は、再び複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを選択する操作を可能とする選択メニューを表示部61cに表示する。作業者は、表示部61cに表示された選択メニューから仮選択された規定ライン(例えば、規定ラインL5)とは異なる規定ラインを選択する。例えば、仮散布による散布量が予定散布量よりも多い場合、規定ラインL5よりも下方にある規定ライン(規定ラインL1~L4)のいずれかを選択する。仮散布による散布量が予定散布量よりも少ない場合、規定ラインL5よりも上方にある規定ライン(規定ラインL5~L9)のいずれかを選択する。そして、仮散布による散布量と予定散布量との差が所定量以内となるまで第1ステップから第4ステップを繰り返し、差が所定量以内となったときの設定を最終設定として設定を終了する。
【0080】
以上の動作によって、予め設定された複数の規定ラインの中から、作業者が散布する散布物の種類等に応じて最適な規定ラインを選択することができ、選択された規定ラインに基づいて最適な散布量を実現することができる。
次に、複数の散布部22のうちブーム(第1ブーム18L、第2ブーム18R)の基端側にある散布部22から散布される散布量と、先端側にある散布部22から散布される散布量とを均一化するための方法について説明する。
【0081】
この方法では、上記第1ステップ及び第2ステップの後、第3ステップとして、上述した仮散布を行った後、複数の散布部22のうちブーム(第1ブーム18L、第2ブーム18R)の基端側にある散布部22から散布された散布量と、先端側にある散布部22から散布された散布量とを測定する。散布量の測定は、複数の散布部22の散布口21L,21Rのうち、ブームの先端側の散布口と基端側の散布口に散布物の回収袋を取り付けて散布物を回収し、回収した散布物の重量を測定することにより行う。回収した散布物の重量の測定は、作業者が表示部61cの表示画面に表示された「計量」ボタンを押圧することによって農業機械1に設けられた計量装置が測定するように構成してもよいし、作業者が計量装置を用いて測定してもよい。
【0082】
基端側と先端側にある散布部22から散布された散布物の重量測定が終了すると、第4ステップとして、基端側の散布量と先端側の散布量との差を算出し、算出された差が予め定められた所定値以内であるかを判定する。制御装置60は、基端側の散布量と先端側の散布量を入力する操作を可能とする画面を表示部61cに表示する。作業者は、表示部61cに表示された画面から基端側の散布量と先端側の散布量を入力することができる。尚、基端側の散布量と先端側の散布量を農業機械1に設けられた計量装置が測定する場合、制御装置60が当該計量装置による測定値を読み取るように構成して、作業者の入力を不要としてもよい。制御装置60は、基端側の散布量と先端側の散布量との差を算出し、算出された差が予め定められて記憶部85に記憶された所定値以内であるかを判定する。この比較及び判定は、制御装置60が行うことが好ましいが、作業者が行ってもよい。
【0083】
基端側の散布量と先端側の散布量との差が予め定められた所定値以内である場合、仮設定を維持する。つまり、仮設定を最終設定として設定を終了する。設定の終了操作は、例えば、制御装置60が表示部61cの表示画面に「設定終了」と「設定変更」のボタンを表示し、作業者が「設定終了」ボタンを押圧することによって行うことができる。
基端側の散布量と先端側の散布量との差が所定値を超えている場合は、作業者は「設定変更」のボタンを押圧する。すると、選択取得部86は、再び複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを選択する操作を可能とする選択メニューを表示部61cに表示する。作業者は、表示部61cに表示された選択メニューから仮選択された規定ライン(例えば、規定ラインL5)とは異なる規定ラインを選択する。基端側の散布量が先端側の散布量よりも少ない場合、規定ラインL5よりも下方にある規定ライン(規定ラインL1~L4)のいずれかを選択する。基端側の散布量が先端側の散布量よりも多い場合、規定ラインL5よりも上方にある規定ライン(規定ラインL5~L9)のいずれかを選択する。そして、基端側の散布量と先端側の散布量との差が予め定められた所定値以内となるまで第1ステップから第4ステップを繰り返し、差が所定量以内となったときの設定を最終設定として設定を終了する。
【0084】
これにより、予め設定された複数の規定ラインの中から、作業者が選択する散布物の種類等に応じて均等な散布を実現するために最適な規定ラインを選択することができ、選択された規定ラインに基づいて複数の散布部から散布する散布量を均等化する散布を実現することができる。
<操作スイッチの形状>
表示装置61の表示部61cには、操作に対応して複数の画面が表示される。
図14は、表示部61cに表示される表示画面M3の一例を示している。表示画面M3は、記憶部85に記憶された農作業支援のアプリケーションソフトウェア(以下、「アプリ」ともいう)の起動後に表示可能な画面の一例である。農作業支援のアプリとは、農業機械1の走行や作業(散布)の状態を表示することによって、農業機械1による農作業を支援するアプリである。即ち、表示装置61は、アプリ起動後は、農作業を支援する支援装置として作動する。
【0085】
図14に示すように、表示画面M3の右上には、散布部22から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチ110が表示されている。
図15は、表示画面M3から操作スイッチ110のみを抽出して示している。
操作スイッチ110は、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114を有している。第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、押圧又は接触(以下、「押圧等」という)により操作される。具体的には、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、表示部61cを構成するタッチパネルに表示される。作業者は、タッチパネルに表示された第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114への押圧等により、各操作部を操作することができる。
【0086】
第1操作部111は、第1散布部221から散布物を散布する操作を行うための操作部である。第2操作部112は、第2散布部222から散布物を散布する操作を行うための操作部である。第3操作部113は、第1散布部221及び第2散布部222から散布物を散布する操作を行うための操作部である。第4操作部114は、第1散布部221と第2散布部222からの散布物の散布を停止する操作を行うための操作部である。
【0087】
図15に示すように、第1操作部111には「左」を意味する表示がある。第2操作部112には「右」を意味する表示がある。第3操作部113には「両方」を示す表示がある。第4操作部114には「停止」を意味する表示がある。第4操作部114の一部又は全体の色は、目立たせて緊急時に対応できるように他の操作部の色と異ならせることができる。
【0088】
操作スイッチ110は、操作に基づく動作(散布又は停止)が実行されている状態の操作部の色が、操作が行われていない状態の操作部の色と異なる色に変化する。例えば、第1操作部111の操作によって第1散布部221から散布物が散布されている状態では、第1操作部111の色が他の操作部の色と異なる色に変化する。第4操作部114の操作によって散布物の散布が停止されている状態では、第4操作部114の色が他の操作部の色と異なる色に変化する。
【0089】
第1操作部111の操作が行われると、制御装置60は、第1電動モータ14Lに制御信号を送信する。第1電動モータ14Lは、制御装置60から出力された制御信号によって、散布排出機構13の繰り出しローラ13Lを回転させることにより、第1散布部221から散布物を散布する。散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、第1電動モータ14Lは、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタを開くことにより、第1散布部221から散布物を散布する。
【0090】
第2操作部112の操作が行われると、制御装置60は、第1電動モータ14Rに制御信号を送信する。第1電動モータ14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、散布排出機構13の繰り出しローラ13Rを回転させることにより、第2散布部222から散布物を散布する。散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、第1電動モータ14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタを開くことにより、第2散布部222から散布物を散布する。
【0091】
第3操作部113の操作が行われると、制御装置60は、第1電動モータ14L,14Rに制御信号を送信する。第1電動モータ14L,14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、散布排出機構13の繰り出しローラ13L,13Rを回転させることにより、第1散布部221及び第2散布部222から散布物を散布する。散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、第1電動モータ14L,14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタを開くことにより、第1散布部221及び第2散布部222から散布物を散布する。
【0092】
第4操作部114の操作が行われると、制御装置60は、第1電動モータ14L,14Rに制御信号を送信する。第1電動モータ14L,14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、散布排出機構13の繰り出しローラ13L,13Rの回転を停止させることにより、第1散布部221及び第2散布部222からの散布物の散布を停止する。散布排出機構13がシャッタ式の機構である場合は、第1電動モータ14L,14Rは、制御装置60から出力された制御信号によって、シャッタを閉じることにより、第1散布部221及び第2散布部222からの散布物の散布を停止する。
【0093】
制御装置60は、第4操作部114の操作が行われたとき、第1散布部221と第2散布部222から散布物が散布されている場合は第1散布部221と第2散布部222からの散布物の散布を停止し、第1散布部221のみから散布物が散布されている場合は第1散布部221からの散布物の散布を停止し、第2散布部222のみから散布物が散布されている場合は第2散布部222からの散布物の散布を停止する。
【0094】
次に、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114の配置について説明する。以下の表示部61cに関する説明において、上、下、左、右の方向は、表示部61cの画面に対して垂直方向から見た場合の方向である。
図15に示すように、第1操作部111は、第1ブーム18Lに対応する側(左側)である操作スイッチ110の左部に配置されている。第2操作部112は、第2ブーム18Rに対応する側(右側)である操作スイッチ110の右部に配置されている。第4操作部114は、第1操作部111と第2操作部112との間に配置されている。第3操作部113は、第4操作部114の下方に配置されている。つまり、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、全体としてT字形に配置されている。
【0095】
図1に示すように、農業機械1において、第1ブーム18Lは機体2から左方に延びており、第2ブーム18Rは機体2から右方に延びている。つまり、農業機械1は、ブームを左右に延ばした状態(即ち、散布している状態)において、正面視にてT字形を呈している。そのため、全体としてT字形である操作スイッチ110は、農業機械1の正面視の形状を想起させる。そして、第1散布部221は第1ブーム18Lに設けられており、第2散布部222は第2ブーム18Rに設けられている。そのため、操作スイッチ110の左部に配置された第1操作部111は第1散布部221を想起させ、操作スイッチ110の右部に配置された第2操作部112は第2散布部222を想起させる。
【0096】
また、農業機械1において、第1散布部221及び第2散布部222からの散布物の散布方向は下方である。操作スイッチ110の下部に配置された第3操作部113は、散布物の散布方向に対応する方向(下方)への配置であるため、散布物を散布している状態を想起させる。一方、第3操作部113の上方に配置された第4操作部114は、散布方向と逆方向(上方)への配置であるため、散布物の散布を停止している状態を想起させる。
【0097】
上記したように、各操作部の配置が散布部の位置や散布方向を想起させるため、作業者は、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114の配置から直感的に各操作部の機能を把握することができる。そのため、各操作部を押し間違えることなく迅速に操作して正確に散布作業を行うことが可能となる。
図16は、操作スイッチ110の変更形態を示す図である。
【0098】
この変更形態の操作スイッチ110も、
図15に示す実施形態の操作スイッチ110と同様に、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、全体としてT字形に配置されている。この変更形態の操作スイッチ110が、
図15に示す実施形態の操作スイッチ110と異なる点は、第3操作部113と第4操作部114の配置が逆である点である。つまり、変更形態の操作スイッチ110は、第3操作部113が第1操作部111と第2操作部112との間に配置され、第4操作部114が第3操作部113の下方に配置されている。
【0099】
図15及び
図16に示すように、本発明に係る操作スイッチ110は、第3操作部113と第4操作部114のいずれか一方の操作部は第1操作部111と第2操作部112との間に配置され、第3操作部113と第4操作部114のいずれか他方の操作部は前記一方の操作部の下方に配置される。
図17は、操作スイッチ110の別の変更形態を示す図である。
【0100】
この別の変更形態の操作スイッチ110が、
図15に示す実施形態の操作スイッチ110と異なる点は、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114に加えて、第5操作部115と第6操作部116を有する点である。この別の変更形態の操作スイッチ110は、第1ブーム18L及び第2ブーム18Rが伸縮可能に構成されている場合に使用される。
【0101】
第5操作部115は、第1ブーム18Lを伸縮させる操作を行うための操作部である。第6操作部116は、第2ブーム18Rを伸縮させる操作を行うための操作部である。
第5操作部115の操作が行われると、制御装置60は、第1ブーム18Lを動作させるアクチュエータに制御信号を送信する。アクチュエータは、制御装置60から出力された制御信号によって、第1ブーム18Lを伸縮させる。具体的には、第1ブーム18Lが短縮している場合には伸長させ、第1ブーム18Lが伸長している場合には短縮させる。
【0102】
第6操作部116の操作が行われると、制御装置60は、第2ブーム18Rを動作させるアクチュエータに制御信号を送信する。アクチュエータは、制御装置60から出力された制御信号によって、第2ブーム18Rを伸縮させる。具体的には、第2ブーム18Rが短縮している場合には伸長させ、第2ブーム18Rが伸長している場合には短縮させる。
図17に示すように、第5操作部115は、第1操作部111の左側に配置されている。第6操作部116は、第2操作部112の右側に配置されている。つまり、第5操作部115は操作スイッチ110の最も左側に配置されており、第6操作部116は操作スイッチ110の最も右側に配置されている。第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114、第5操作部115、第6操作部116は、全体としてT字形に配置されている。
【0103】
上述したように、農業機械1において、第1ブーム18Lは機体2から左方に延びており、第2ブーム18Rは機体2から右方に延びている。そのため、全体としてT字形である操作スイッチ110は、農業機械1の正面視の形状を想起させる。そして、第1ブーム18Lの伸長方向は左方であり、第2ブーム18Rの伸長方向は右方である。そのため、操作スイッチ110の最も左側に配置された第5操作部115は第1ブーム18Lの伸長を想起させ、操作スイッチ110の最も右側に配置された第6操作部116は第2ブーム18Rの伸長を想起させる。
【0104】
このように、第5操作部115と第6操作部116の配置が第1ブーム18L及び第2ブーム18Rの伸長を想起させるため、作業者は、第5操作部115及び第6操作部116の配置から直感的に各操作部の機能を把握することができる。そのため、各操作部を押し間違えることなく迅速に操作して正確にブームを伸縮させることが可能となる。
尚、
図17に示す別の変更形態の操作スイッチ110は、第1ブーム18L及び第2ブーム18Rが折れ曲がり可能(起伏可能)に構成されている場合に使用してもよい。この場合、第5操作部115は、第1ブーム18Lを起伏させる操作を行うための操作部となる。第6操作部116は、第2ブーム18Rを起伏させる操作を行うための操作部となる。
【0105】
<農業機械の作業状況(散布状況)の表示>
図14に示すように、表示装置61の表示部61cの表示画面M3には、散布部22からの散布状況を表す図形が表示される。表示部61cは、フィールド表示部190、車体表示部191、散布部表示部192を含む。表示装置61の制御部61aは、測位装置63から走行車体8の位置を取得可能であって且つ表示部61c(フィールド表示部190、車体表示部191、散布部表示部192)の制御を行う。
【0106】
フィールド表示部190は、走行車体8が走行するフィールド(圃場等)を仮想的に表す図形Z1を表示する部分である。走行車体8が走行するフィールドを表す図形Z1は、水平線Z11と、横線Z12と縦線Z13とから構成される格子(メッシュ)とを含む。フィールドの奥行き(立体感)を表すために、隣り合う縦線Z13同士の間隔は、水平線Z11に近づくにつれて狭くなっている。
【0107】
フィールド表示部190には、車体表示部191が示されている。車体表示部191は、走行車体8の位置を表す図形Z2により走行車体8を仮想的に示している。走行車体8の位置を表す図形Z2は、走行車体8の進行方向に向けて尖った三角形の図形として表示されている、また、走行車体8の位置を表す図形Z2に重ねて、進行方向を表す矢印Y1が表示されている。フィールド表示部190に対する車体表示部191の表示位置は固定である。また、車体表示部191の中心位置が、フィールド表示部190上における現在の走行車体8の位置である。
【0108】
したがって、走行車体8を実際に走行させた場合、フィールド表示部190の走行車体8の表示位置は固定のままで、測位装置63によって検出された走行車体8の位置の変化に伴って、フィールド表示部190に示された仮想的なフィールド(フィールド画像)がスクロールしたり回転したりする。
散布部表示部192は、散布部22を表す図形Z3を表示する部分である。散布部表示部192は、第1散布部表示部192Aと第2散布部表示部192Bを有している。第1散布部表示部192Aは、第1ブーム18Lに対応する側である左部に第1散布部221を表す図形Z31を表示する。第2散布部表示部192Bは、第2ブーム18Rに対応する側である右部に第2散布部222を表す図形Z32を表示する。
【0109】
散布部22を表す図形Z3は、走行車体8に対する散布部22の方向に対応する側に表示される。具体的には、第1散布部221は走行車体8に対して左方に延びる第1ブーム18Lに設けられているため、第1散布部221を表す図形Z31は車体表示部191の左方に延びるように表示されている。第2散布部222は走行車体8に対して右方に延びる第2ブーム18Rに設けられているため、第2散布部222を表す図形Z32は車体表示部191の右方に延びるように表示されている。これにより、作業者は、第1散布部221及び第2散布部222を表す図形Z31、Z32の意味を直感的に把握することができる。
【0110】
第1散布部221を表す図形Z31は、走行車体8の位置を表す図形Z2の幅方向中心から左方に向けて間隔をあけて並んだ複数の小図形Z31aを含む。第2散布部222を表す図形Z32は、走行車体8の位置を表す図形Z2の幅方向中心から右方に向けて間隔をあけて並んだ複数の小図形Z32aを含む。これらの小図形Z31a,Z32aは、第1ブーム18Lに設けられた複数の散布部22と、第2ブーム18Rに設けられた複数の散布部22と、を想起させる図形である。本実施形態の場合、小図形Z31a,Z32aは、円形であるが、他の形(四角形等)でもよい。また、第1散布部221を表す図形Z31を走行車体8の位置を表す図形Z2の幅方向中心から左方に延びる棒状の図形とし、第2散布部222を表す図形Z32を走行車体8の位置を表す図形Z2の幅方向中心から右方に延びる棒状の図形としてもよい。また、第1散布部221を表す図形Z31及び第2散布部222を表す図形Z32を、棒状の図形の下部に沿って円形等の小図形を並べた図形としてもよい。また、散布部22を表す図形Z3は、走行車体8の位置を表す図形Z2の一部としてもよい。また、走行車体8の位置を表す図形Z2が散布部22を表す図形Z3を兼ねるようにしてもよい。
【0111】
散布部表示部192は、散布部22から散布物を散布している散布状態と、散布部22からの散布物の散布を停止している停止状態とを表示する部分である。制御部61aは、散布部表示部192に、散布部22から散布物を散布している散布状態と、散布部22からの散布物の散布を停止している停止状態とを異なる表示形態で表示させる。
第1散布部表示部192Aは、第1操作部111が操作されたとき、第1散布部221から散布物を散布している散布状態であることを表示する。第2散布部表示部192Bは、第2操作部112が操作されたとき、第2散布部222から散布物を散布している散布状態であることを表示する。また、第3操作部113が操作されたとき、第1散布部表示部192Aが第1散布部221から散布物を散布している散布状態であることを表示し、第2散布部表示部192Bが第2散布部222から散布物を散布している散布状態であることを表示する。第4操作部114が操作されたとき、散布状態の表示が停止状態の表示に変わる。このように、操作スイッチ110の操作と散布部表示部192の表示とは連動している。
【0112】
制御部61aは、第1散布部表示部192Aに、第1散布部221の散布状態と停止状態とを異なる表示形態で表示させる。そのため、第1散布部表示部192Aは、第1散布部221の散布状態と停止状態とを異なる表示形態で表示する。制御部61aは、第2散布部表示部192Bに、第2散布部222の散布状態と停止状態とを異なる表示形態で表示させる。そのため、第2散布部表示部192Bは、第2散布部222の散布状態と停止状態とを異なる表示形態で表示する。
【0113】
制御部61aは、散布部表示部192に、散布状態にあるときの表示色と、停止状態にあるときの表示色とが異なるように表示させる。そのため、散布部表示部192は、散布状態にあるときの表示色と、停止状態にあるときの表示色とが異なる。
図14は、第1散布部221が散布状態にあり、第2散布部222が停止状態にある場合の散布部表示部192の表示を示している。この場合、第1散布部表示部192Aの表示色と、第2散布部表示部192Bの表示色とは異なる。
【0114】
例えば、散布部表示部192は、散布状態にあるときの表示色が黄色であり、停止状態にあるときの表示色が黒色である。このように、散布状態にあるときの表示色の明度又は彩度を、停止状態にあるときの表示色の明度又は彩度よりも高くすることが好ましい。これによって、作業者は、散布部表示部192の表示色から、散布部22が散布状態にあるか停止状態にあるのかを直感的に把握することができる。
【0115】
図14に示すように、表示部61cは、軌跡表示部193を含む。軌跡表示部193は、散布部22による散布物の散布軌跡を表す図形Z4をフィールド表示部190に重ねて表示する部分である。制御部61aは、軌跡表示部193に、散布状態にある散布部22の移動軌跡に沿って散布軌跡を表す図形Z4をフィールド表示部190と重ねて表示させる。散布部22の移動軌跡は、測位装置63から取得した走行車体8の位置と予め記憶された走行車体8と散布部22との位置関係に基づいて算出することができる。
【0116】
軌跡表示部193は、第1軌跡表示部193Aと第2軌跡表示部193Bとを有している。第1軌跡表示部193Aは、第1ブーム18Lに対応する側である左部に第1散布部221による散布軌跡を表す図形Z41を表示する。第2軌跡表示部193Bは、第2ブーム18Rに対応する側である右部に第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z42を表示する。
【0117】
制御部61aは、第1軌跡表示部193Aに、散布状態にある第1散布部221の移動軌跡に沿って散布軌跡を表す図形Z41をフィールド表示部190と重ねて表示させる。制御部61aは、第2軌跡表示部193Bに、散布状態にある第2散布部222の移動軌跡に沿って散布軌跡を表す図形Z42をフィールド表示部190と重ねて表示させる。
散布部22による散布物の散布軌跡を表す図形Z4は、帯状の図形であって、散布部22を表す図形Z3に対して走行車体8と反対側(表示画面M3の下側)に延びるように表示される。第1散布部221による散布軌跡を表す図形Z41は、第1散布部221を表す図形Z31に対して走行車体8の位置を表す図形Z2と反対側(表示画面M3の下側)に延びるように表示される。第1散布部221による散布軌跡を表す図形Z41は、第1散布部221を表す図形Z31の表示幅と同じ幅で表示される。第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z42は、第2散布部222を表す図形Z32に対して走行車体8の位置を表す図形Z2と反対側(表示画面M3の下側)に延びるように表示される。第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z42は、第2散布部222を表す図形Z32の表示幅と同じ幅で表示される。
【0118】
このように、軌跡表示部193によって、散布部22による散布物の散布軌跡を表す図形Z4がフィールド表示部190と重ねて表示されることにより、フィールドのどの部分に散布物の散布が行われたのかを表示画面M3で把握することができる。また、第1散布部221を表す図形Z31と、第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z32とが、フィールド表示部190に表示されることにより、第1散布部221によって散布物の散布が行われた領域と、第2散布部222によって散布物の散布が行われた領域と、第1散布部221と第2散布部222によって散布物の散布が行われた領域を表示画面M3で把握することができる。
【0119】
図14に示す表示画面M3では、第1散布部221による散布軌跡を表す図形Z41のみが表示された第1領域RG1と、第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z42のみが表示された第2領域RG2と、第1散布部221と第2散布部222による散布軌跡を表す図形Z41,Z42が表示された第3領域RG3とが存在している。作業者は、この表示画面M3を見ることによって、第1領域RG1では第1散布部221のみによる散布が行われ、第2領域RG2では第2散布部222のみによる散布が行われ、第3領域RG3では第1散布部221と第2散布部222による散布が行われたことを把握することができる。
【0120】
図14では、散布部22からの散布状況を表す図形(Z1~Z4)と、散布部から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチ110とが同じ表示画面M3に表示されているが、それぞれ異なる表示画面に表示されるように構成してもよい。
また、本発明においては、散布部表示部192が操作スイッチ110の機能を有するように構成してもよい。例えば、第1散布部表示部192Aに表示された図形Z31を押圧等することによって第1散布部221からの散布の開始又は停止を実行し、第2散布部表示部192Bに表示された図形Z32を押圧等することによって第2散布部222からの散布の開始又は停止を実行するように構成することができる。この場合、第1散布部表示部192Aは第1操作部111及び第4操作部114の機能を有し、第2散布部表示部192Bは第2操作部112及び第4操作部114の機能を有する。
【0121】
制御部61aは、記憶部61bに散布軌跡を記憶することができる。具体的には、第1散布部221からの散布の開始又は停止が実行された場合、第2散布部222からの散布の開始又は停止が実行された場合、第1散布部221、第2散布部222の散布の開始、停止の散布情報と測位衛星からの信号に基づく散布の位置情報とを散布軌跡の履歴情報として記憶部61bに記憶する。記憶された散布軌跡の履歴情報は、表示装置61や外部機器(固定端末75など)で表示することができる。これにより、圃場内の落下物等を避けるなど、何らかの原因で第1散布部221あるいは第2散布部222を停止した場合であっても、実際の散布状況を確認することができる。
【0122】
尚、上述した表示装置61の構成は、農業機械1が散布物を散布する散布部22を備えたものだけでなく、散布以外の農作業を行う農業機械1に適用することが可能である。つまり、上述した表示装置61の構成は、散布作業に限定されない農作業を行う農作業部を備えた農業機械1に適用することが可能である。
従って、上記説明(<農業機械の作業状況の表示>の項の説明)における「散布」を「作業」又は「農作業」と読み替えることができる。そのため、「散布部」、「第1散布部」、「第2散布部」を、それぞれ「農作業部」、「第1農作業部」、「第2農作業部」と読み替えることができる。第1農作業部は走行車体8の左部又は左方で作業を行い、第2農作業部は走行車体の右部又は右方で作業を行う。また、「散布部表示部」、「第1散布部表示部」、「第2散布部表示部」を、それぞれ「農作業部表示部」、「第1農作業部表示部」、「第2農作業部表示部」と読み替えることができる。また、「散布状況」、「散布状態」、「散布物の散布」、「散布物の散布軌跡」を、それぞれ「作業状況」、「作業状態」、「作業」、「作業軌跡」と読み替えることができる。
【0123】
上述した表示装置61を適用することが可能な農業機械1としては、例えば、農作業として草刈り作業を行う農業機械(例えば、モア、オフセットモア、ブームモア等)を例示することができる。この場合、農作業部は、草刈り部である。
農業機械1が通常のモア(草刈り部が左右に揺動しないモア)である場合、農作業部は、走行車体から左方に位置する第1草刈り部と、走行車体から右方に位置する第2草刈り部と、を含む。この場合、第1農作業表示部は、第1草刈り部が走行車体の左方で作業をする作業状態を示し、第2農作業表示部は、第2草刈り部が走行車体の右方で作業をする作業状態を示す。
【0124】
農業機械1がオフセットモアやブームモアの場合、草刈り部は走行車体に対して左右に揺動する。この場合、第1農作業表示部は、草刈り部が走行車体の左方で作業をする作業状態を示し、第2農作業表示部は、草刈り部が走行車体の右方で作業をする作業状態を示す。
<散布能力に対する走行速度の余裕度表示>
図8に示すように、農業機械1は、機体2(走行車体8)の走行速度を検出する速度センサ63cを備えている。速度センサ63cは、検出された機体2の走行速度に関する情報(速度値)を制御装置60に送信可能である。
図8に示す例では、速度センサ63cは測位装置63に備えられているが、測位装置63とは別に速度センサ63cを設けてもよい。例えば、速度センサ63cは前輪3F又は後輪3Rの回転数(回転速度)から機体2(走行車体8)の走行速度を算出するものであってもよい。
【0125】
農業機械1における単位時間当たりの散布量(散布能力)は、散布計画値(散布したい量)、機体2の走行速度(現在速度値)、散布幅によって一意に決まる。例えば、単位時間当たりの散布量の単位は「kg/sec」、散布計画値の単位は「kg/a」、機体2の走行速度の単位は「m/sec」、散布幅の単位は「m」である。散布計画値は、単位時間当たりに必要な散布量の計画値であり、例えば上述した散布入力部107に入力された設定散布量Wnである。散布幅は、第1管15Lの長さ及び第2管15Rの長さから算出することができる。上述した通り、第1管15Lの長さ及び第2管15Rは制御装置60に記憶されている。そのため、制御装置60は、記憶されている第1管15Lの長さ及び第2管15Rに基づいて散布幅を算出することができる。
【0126】
制御装置60は、速度センサ63cにより検出された現在速度値と、散布計画値と、散布幅とから、現時点で必要な単位時間当たりの散布量(散布能力)を演算し、当該散布量(散布能力)を実現するように、散布部22による散布量を変更するために動作する駆動装置を駆動する。本実施形態の場合、散布部22による散布量を変更するために動作する駆動装置は、第1電動モータ14L,14Rである。但し、散布部22による散布量を変更するために動作する駆動装置は、第1電動モータ14L,14Rには限定されず、上述した他の駆動装置(例えば、第2電動モータ35等)であってもよい。以下の説明では、駆動装置が第1電動モータ14L,14Rであるとして説明する。
【0127】
制御装置60は、速度センサ63cにより検出された現在速度値と、散布計画値と、散布幅とから、現時点で必要な単位時間当たりの散布量(散布能力)を演算し、当該散布量(散布能力)を実現するように、第1電動モータ14L,14Rを駆動する。しかし、第1電動モータ14L,14Rは、仕様上の最高回転数が設定されているため、現在速度値と散布計画値との組み合わせによっては、対応できない閾値(上限)が存在する。
【0128】
より詳しく説明すると、現在速度値が増加した場合、現時点で必要な単位時間当たりの散布量(散布能力)を実現するためには、第1電動モータ14L,14Rの回転数を増加させる必要がある。しかし、現在速度値が大きくなり過ぎると、モータの仕様上、回転数の増加が不可能となる。従って、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度には、閾値(上限)が存在する。以下、この閾値を「最大速度値」という。
【0129】
制御装置60は、速度センサ63cにより検出された機体2の現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに基づいて、最大速度値に対する現在速度値の余裕度(最大速度値に対して現在速度値がどの程度余裕があるかを示す数値)を算出して表示装置61に表示する。
図8に示すように、農業機械1は、余裕度を算出するために使用される要素(以下、「入力要素」という)を入力するための入力部61dを備えている。
図8においては、入力部が表示装置61に設けられている例を示しているが、入力部61dは外部機器(固定端末75又はサーバ70)に設けられていてもよい。入力部61dは、表示装置61の表示部61c(固定端末75又はサーバ70の表示部でもよい)の表示画面に入力要素を入力可能な部分(入力欄)として表示されるものであってもよいし、USBメモリやSDカード等の記憶媒体に記憶された入力要素を読み取る読み取り装置であってもよいし、両者を併用して入力要素の種類に応じて使い分けてもよい。
【0130】
制御装置60は、入力部61dに入力される入力要素に基づいて最大速度値を演算して算出する。入力部61dに入力される入力要素は、上述した散布幅及び散布計画値を含む。また、入力要素は、散布部22から一定時間に散布される散布量を示す調量値と、駆動装置であるモータ(第1電動モータ14L,14R)の最高回転数を含むモータ仕様値と、調量値と散布能力(現時点で必要な単位時間当たりの散布量)に基づいてモータ(第1電動モータ14L,14R)の回転数(rpm)を算出するための算出関数(回転数算出曲線)と、散布計画値とを含む。
【0131】
調量値は、算出関数を用いて散布能力からモータの回転数を算出するために使用される。調量値は、実測により算出することができる。例えば、散布部22から一定時間(例えば60秒)散布物の散布を行い、このときの散布量を測定して調量値とすることができる。
算出関数(回転数算出曲線)は、調量値と、現時点で必要な単位時間当たりの散布量(散布能力)とを変数として、モータの回転数を算出するための関数(関係式)である。
【0132】
散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリア毎に個別に設定される。このエリアは、上述した複数のエリアQn(n=1,2,3・・・n)と対応している。この場合、制御装置60は、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値を入力要素として使用し、複数のエリア毎に最大速度値を算出する。複数のエリアQnにそれぞれ異なる散布計画値が設定されている場合、エリア毎に異なる最大速度値が算出される。全てのエリアQnに同じ散布計画値が設定されている場合、全てのエリアQnに対して同じ最大速度値が算出される。
【0133】
また、制御装置60は、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値のうち最大の散布計画値を入力要素として使用して最大速度値を算出してもよい。例えば、エリアQ1の散布計画値(設定散布量)が2.0kg/10a、エリアQ2の散布計画値(設定散布量)が3.0kg/10aであって、他のエリアQn(n≧3)の散布計画値(設定散布量)が1.0kg/10aである場合、制御装置60は、エリアQ2に設定される散布計画値を入力要素として使用して最大速度値を算出する。
【0134】
また、制御装置60は、入力要素として、散布計画値に代えて現在の散布量を示す現在散布値を使用して最大速度値を算出してもよい。現在散布値は、例えば、制御装置60による散布量調整装置(第1散布量調整装置11L、第2散布量調整装置11R)の現在の設定に基づいて算出することができる。
制御装置60は、入力要素に基づいて算出された最大速度値に対する最大速度値と現在速度値との差の割合を余裕度として算出する。つまり、余裕度=(最大速度値-現在速度値)/最大速度値である。例えば、最大速度値が5(m/sec)であって、現在速度値が4(m/sec)である場合。余裕度は(5-4)/5=0.2、即ち20%として算出される。この余裕度は、現在速度値が最高速度値に対して20%の余裕があることを意味する。つまり、現在の速度値よりも走行速度を20%上げても、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能であることを意味する。この場合、作業者は、農業機械1の走行速度を上げて散布作業を行うことができ、これにより、作業効率が向上し、短時間で作業を完了させることができる。また、例えば、最大速度値が5(m/sec)であって、現在速度値が5(m/sec)である場合。余裕度は(5-5)/5=0、即ち0%として算出される。この余裕度は、現在速度値が最高速度値に対して余裕がないことを意味する。つまり、現在の速度値よりも走行速度を上げると、必要な単位時間当たりの散布量が実現不能となることを意味する。この場合、作業者は、農業機械1の走行速度を上げると必要な散布量が得られなくなるため、走行速度をそのまま維持して散布作業を行う。
【0135】
制御装置60は、算出した余裕度を表示装置61に表示する。表示装置61に表示される余裕度は、数値(例えば「20%」等)で表示してもよいが、余裕度を図形で表す余裕度ゲージとして表示することが好ましい。
図14は、余裕度ゲージYGが表示された表示装置61の表示画面M3を示している。余裕度ゲージYGは、余裕度を、最大速度値を示す図形Z10の面積又は長さに対する現在速度値を示す図形Z20の面積又は長さで表すことができる。余裕度ゲージYGは、棒グラフとして表示されている。最大速度値を示す図形Z10の色と、現在速度値を示す図形Z20の色とは異なっている。
図14では、最大速度値を示す図形Z10が縦長の長方形として表示され、現在速度値を示す図形Z20が最大速度値を示す図形Z10の内部の一部を塗り潰して表示されている。
図14に示す余裕度ゲージYGの場合、全体が最大速度値を表す図形Z10であり、図形Z10の中の塗り潰されている部分(異なる色の部分)が現在速度値を示す図形Z20であり、図形Z10の中の塗り潰されていない部分Z30が「余裕度」を表す。
【0136】
最大速度値を示す図形Z10の面積(又は長さ)に対する現在速度値を示す図形Z20の面積(又は長さ)の割合は、最大速度値に対する現在速度値の割合に設定されている。例えば、最大速度値が5(m/sec)であって、現在速度値が4(m/sec)である場合(余裕度が20%の場合)、最大速度値を示す図形Z10の面積(又は長さ)を100とすると、現在速度値を示す図形Z20の面積(又は長さ)は80である。
【0137】
図14には、余裕度が80%の場合の余裕度ゲージYGを示している。
図18は、(a)が余裕度=60%の場合の余裕度ゲージYGを示し、(b)が余裕度=20%の場合の余裕度ゲージYGを示し、(c)が余裕度=5%の場合の余裕度ゲージYGを示している。このように、余裕度ゲージYGは、余裕度が小さくなるに従って、最大速度値を示す図形Z10の面積又は長さに対する現在速度値を示す図形Z20の面積又は長さが大きくなる。このように、余裕度ゲージYGに余裕度を表示することによって、余裕度が視覚的に分かり易く表示されるため、作業者は余裕度を容易に且つ正確に把握することができる。
【0138】
図14に示すように、余裕度ゲージYGは、散布部22からの散布状況を表す図形(Z1~Z4)と同じ表示画面M3に表示されることが好ましい。
図14では、散布部から散布物を散布する操作を行うための操作スイッチ110と、散布部22からの散布状況を表す図形(Z1~Z4)と、余裕度ゲージYGとが同じ表示画面M3に表示されている。
図8に示すように、農業機械1は、余裕度が所定値以下になったときに、余裕度が所定値以下になったことを作業者に報知する報知部61eを備えている。所定値は、例えば、余裕度=5%である。この場合、報知部61eは、余裕度が5%以下となったときに、余裕度が5%以下となったことを作業者に報知する。
図8に示す例では、報知部61eは表示装置61に設けられているが、報知部61eは表示装置61とは異なる機器に設けられていてもよい。
【0139】
報知部61eは、例えば、音や音声によって報知する音発生装置(ブザー、スピーカ等)、光の点灯又は点滅によって報知する光発生装置(LED等)である。また、報知部61eは、表示装置61の表示部61cの表示画面への表示(文字、図形等)によって報知を行うものであってもよい。制御装置60は、余裕度が所定値を超えたときに、報知部61eに制御信号を送信する。報知部61eは、制御信号を受信すると、余裕度が所定値を超えたことを、音、光、表示等の方法によって作業者に報知する。これにより、作業者は、余裕度が所定値以下になったことを知ることができるため、走行速度を減少させる(又は増加させない)等の対応を採ることが可能となる。これにより、作業者が最大速度値を超えた速度で走行することが回避され、速度の出し過ぎによる散布量不足を防ぐことができる。
【0140】
図19は、上述した余裕度を算出する農業機械1のシステム構成と処理動作の流れの一例を示している。
図19に示すシステムの場合、測位装置63が速度センサ63cを備えている。制御装置60は、例えば、モータ(第1電動モータ14L,14R)を制御するモータコントローラのECU(Electric Control Unit)から構成されている。測位装置63の速度センサ63cにより検出された現在速度値は、制御装置60に送信される。また、測位装置63は、農業機械1の位置(緯度、経度)、即ち走行車体8の位置を表示装置61に送信する。表示装置61は、散布計画値と調量値とを制御装置60に送信する。散布計画値及び調量値は、入力部61dから入力される。制御装置60は、表示装置61から送信された散布計画値、調量値、モータ仕様値、算出関数、散布幅に基づいて、最大速度値を算出する。
【0141】
最大速度値を算出するにあたって、制御装置60は、散布計画値として、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値を使用して複数のエリア毎に最大速度値を算出してもよいし、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値のうち最大の散布計画値を使用して最大速度値を算出してもよい。また、制御装置60は、散布計画値に代えて現在の散布量を示す現在散布値を使用して最大速度値を算出してもよい。
【0142】
制御装置60は、測位装置63から送信された現在速度値と算出した最大速度値とに基づいて余裕度を算出し、算出した余裕度を表示装置61に送信する。表示装置61は、受信した余裕度を余裕度ゲージYG等の形態で表示部61cに表示する(
図14参照)。また、表示装置61の制御部61aは、余裕度が所定値以下になった場合、報知部61eを作動させて作業者に余裕度が所定値以下になったことを報知する。尚、表示装置61が報知部61eを作動させる構成に代えて、制御装置60が報知部61eを作動させる構成としてもよい。
【0143】
制御装置60は、第1電動モータ14L,14Rのモータドライバに制御信号を送信する。第1電動モータ14L,14Rは、受信した制御信号に基づいて散布排出機構13を駆動し、散布部22から散布物が散布される、
図19に示すシステムにおいて、制御装置60は、表示装置61の制御部61aから構成されていてもよいし、モータコントローラのECUと表示装置61の制御部61aの両方から構成されていてもよい。制御装置60を表示装置61の制御部61aから構成した場合、表示装置61において最大速度値を算出して表示することができるため、システム構成を簡略化することができる。制御装置60の全部又は一部が表示装置61の制御部61aから構成される場合、速度センサ63cにより検出された現在速度値を表示装置61に送信することができる。また、制御装置60から現在速度値と最大速度値とを表示装置61に送信し、表示装置61の制御部61aにより余裕度を算出することもできる。
【0144】
<測位装置の取り付け構造>
図1、
図2に示すように、農業機械1は、走行車体8に搭載されたキャビン9を備えている。キャビン9は、上部にルーフ150を有している。
図20はキャビン9の上部を示す正面図、
図21はキャビンの前上部を示す側面図である。ルーフ150は、上板151と鍔部152とを有している。上板151は、ルーフ150の上部に位置している。
図21に示すように、鍔部152は、上板151の下方において上板151の前縁よりも前方に突出している。ルーフ150の上面は、上板151の上面と鍔部152の上面とを含む。
【0145】
図20に示すように、キャビン9は、フロントピラー153L,153Rを有している。フロントピラー153Lは、キャビン9の左前部に設けられている。フロントピラー153Lは、キャビン9の右前部に設けられている。フロントピラー153Lとフロントピラー153Rとの間にフロントガラス154が設けられている。フロントピラー153Lの上部とフロントピラー153Rの上部とは、フロントアッパフレーム155によって連結されている。
【0146】
フロントピラー153L及びフロントピラー153Rの後方には、それぞれリアピラー(図示略)が設けられている。フロントピラー153L,153Rとリアピラーとは、サイドアッパフレーム156(
図21参照)によって連結されている。フロントピラー153L,153Rとリアピラーとの間には、サイドガラス157が設けられる。
図20、
図21に示すように、測位装置63は、支持ブラケット160によりルーフ150上に支持されている。
図22~
図25に示すように、支持ブラケット160は、ベース板161と、左脚部162と、右脚部163と、前脚部166とを有している。
【0147】
ベース板161は、測位装置63が載置される載置部161aと、載置部161aから左方に延伸する左延部161bと、載置部161aから右方に延伸する右延部161cと、を有している。載置部161a、左延部161b、右延部161cは、連続する平面状に形成されている。
左脚部162は、左傾斜部161dを含む。左傾斜部161dは、ベース板161の左端から左下方に向けて延びている。右脚部163は、右傾斜部161eを含む。右傾斜部161eは、ベース板161の右端から右下方に向けて延びている。
【0148】
ベース板161は、長手方向がルーフ150の幅方向(機体2の幅方向)を向くように配置される。載置部161aは、ベース板161の長手方向の中央に位置している。
図20に示すように、ベース板161は、ルーフ150の幅方向(機体2の幅方向)の全長にわたって延びている。
図27に示すように、ベース板161の前後方向の長さは、当該ベース板161の長手方向(ルーフ150の幅方向)の長さの半分以上にわたって、測位装置63の前後方向の長さの半分以上の長さに設定されている。
【0149】
左脚部162の下部は、左傾斜部161dの下端からさらに下方に延伸されている。左脚部162は、キャビン9の左部又は走行車体8の左部に取り付けられる。本実施形態の場合、左脚部162は、キャビン9のフロントピラー153L又は左側のサイドアッパフレーム156に取り付けられる。左脚部162には、貫通孔164Lが設けられている。フロントピラー153L又は左側のサイドアッパフレーム156Lには、取付片165Lが取り付けられている。貫通孔164LにボルトBL1を挿通し、当該ボルトBL1を取付片165Lに形成されたねじ孔に螺合することによって、左脚部162がフロントピラー153L又は左側のサイドアッパフレーム156Lに取り付けられる。尚、左脚部162は、左側のサイドミラー158Lを取り付けるためのブラケット159Lに取り付けてもよい。
【0150】
右脚部163の下部は、右傾斜部161eの下端からさらに下方に延伸されている。右脚部163は、キャビン9の左部又は走行車体8の左部に取り付けられる。本実施形態の場合、右脚部163は、キャビン9のフロントピラー153R又は右側のサイドアッパフレーム156Rに取り付けられる。右脚部163には、貫通孔164Rが設けられている。フロントピラー153R又は左側のサイドアッパフレーム156には、取付片165Rが取り付けられている。貫通孔164RにボルトBL2を挿通し、当該ボルトBL2を取付片165Rに形成されたねじ孔に螺合することによって、右脚部163がフロントピラー153R又は右側のサイドアッパフレーム156Rに取り付けられる。尚、右脚部163は、右側のサイドミラー158Rを取り付けるためのブラケット159Rに取り付けてもよい。
【0151】
図22、
図23、
図25等に示すように、前脚部166は、ベース板161の前部(前縁部)から下方に延伸されている。前脚部166は、左前脚部166Lと右前脚部166Rとを含む。左前脚部166Lは、ベース板161の左前部(左前縁部)から下方に延伸されている。右前脚部166Rは、ベース板161の右前部(右前縁部)から下方に延伸されている。
【0152】
前脚部166(左前脚部166L、右前脚部166R)は、当接部167と、左連結部168と、右連結部169とを有している。当接部167は、ベース板161よりも下方に設けられて鍔部152の上面に当接する。左連結部168は、当接部167から左斜め上方に延びてベース板161に繋がっている。右連結部169は、当接部167から右斜め上方に延びてベース板161に繋がっている。
図23に示すように、左連結部168及び右連結部169は、正面視にてV字状に形成されている。
【0153】
前脚部166(左前脚部166L、右前脚部166R)には、後述する支軸170を支持する軸支持部171が設けられている。軸支持部171は、左前脚部166Lに設けられた一対の軸支持片172Lと、右前脚部166Rに設けられた一対の軸支持片172Rと、を有している。一対の軸支持片172Lは、ルーフ150の幅方向に間隔をあけて対向配置されており、左前脚部166Lの右連結部169の上部から前方に延びている。一対の軸支持片172Rは、ルーフ150の幅方向に間隔をあけて対向配置されており、右前脚部166Rの左連結部168の上部から前方に延びている。軸支持部171(軸支持片172L、軸支持片172R)には、貫通孔171aが形成されている。
図23に示すように、一対の軸支持片172Lの一方と、一対の軸支持片172Rの一方には、ナットNT1が固着されている。
【0154】
支持ブラケット160は、ルーフ150に載置される状態で走行車体8に取り付けられている。
図20、
図21に示すように、前脚部166はルーフ150の上面のうち鍔部152の上面に載置される。
図24、
図27に示すように、当接部167には貫通孔167aが設けられている。前脚部166が鍔部152に載置された状態で、当接部167は鍔部152の上面に当接する。この状態で、貫通孔167aにボルトBL3を挿通し、当該ボルトBL3を鍔部152に形成したねじ孔に螺合する。これにより、当接部167が鍔部152の上面に固定され、前脚部166が鍔部152に固定される。
図24に示すように、当接部167は、上面視において、ベース板161に形成された切り欠き161fと重なる位置にある。
【0155】
図20に仮想線で示すように、左脚部162と右脚部163にルーフ150の上面に当接する当接部177を設けてもよい。当接部177は、ルーフ150の上面のうち、鍔部152の上面に当接する。当接部177と鍔部152とはボルト等の固定具(図示略)により固定することができる。この場合、前脚部166、左脚部162、右脚部163がルーフ150の上面(鍔部152の上面)に固定される。この場合、左脚部162は、フロントピラー153L又は左側のサイドアッパフレーム156に取り付けなくてもよいが、取り付けてもよい。また、右脚部163は、フロントピラー153R又は右側のサイドアッパフレーム156に取り付けなくてもよいが、取り付けてもよい。
【0156】
図26に示すように、測位装置63とベース板161との間には、支持板179が介装される。測位装置63は、支持板179の上面にボルト等によって固定される。支持板179は、ベース板161の載置部161a上に配置される。支持板179は、軸支持部171に対して枢支される枢支片180を有している。枢支片180は、第1片181、第2片182、第3片183、第4片184を含む。第1片181は、支持板179の前縁の左部から前方に延びている。第2片182は、支持板179の前縁の右部から前方に延びている。第3片183及び第4片184は、支持板179の前縁の中央から前下方に延びる前下片185に設けられている。第3片183は、前下片185の左下部から後方に延びている。第4片184は、前下片185の右下部から後方に延びている。枢支片180(第1片181、第2片182、第3片183、第4片184)には、貫通孔180aが形成されている。
【0157】
第1片181は、一対の軸支持片172Lの一方と重なるように配置される。第2片182は、一対の軸支持片172Lの他方と重なるように配置される。第3片183は、一対の軸支持片172Rの一方と重なるように配置される。第4片184は、一対の軸支持片172Rの他方と重なるように配置される。
軸支持部171に形成された貫通孔171a及び枢支片180に形成された貫通孔180aには、支軸170が挿通される。支軸170は、例えばボルトから構成され、当該ボルトはナットNT1に螺合される。支軸170は、測位装置63を前方に向けて回動可能に支持する。支持板179は支軸170回りに前方に向けて回動可能である。そのため、測位装置63も支軸170回りに前方に向けて回動することができる。
【0158】
図21において、測位装置63を支持板179と共に支軸170回りに前方に向けて回動させたときの測位装置63の位置を示している。
図21に示すように、測位装置63の一部は、前方に向けて回動したとき、ルーフ150の上面よりも高い位置にある。
図26、
図27に示すように、ベース板161と支持板179とはボルトBL4によって固定することができる。ベース板161と支持板179とをボルトBL4によって固定した場合、測位装置63は前方に向けて回動不能となる。ボルトBL4を取り外した場合、測位装置63は前方に向けて回動可能となる。
【0159】
<まとめ>
上述したように、農業機械1は、機体2と、機体2に設けられ且つ散布物を収容する収容器10と、収容器10に収容されている散布物の散布量を調整して排出する散布量調整装置11と、散布量調整装置11から排出された散布物を搬送風と共に流通する搬送管15と、搬送管15に設けられ且つ、散布物を散布する複数の散布部22と、搬送管15を流通する搬送風を生成する送風機201と、散布部22からの散布量を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、散布量調整装置11から排出される散布物の散布量と、送風機201の単位時間当たりの送風量との関係を規定する複数の規定ラインL1~L9が記憶された記憶部61bと、複数の規定ラインL1~L9から選択された1つの規定ラインを取得する選択取得部60bと、選択取得部60bにより取得された規定ラインに基づいて散布量と送風量との関係を設定する設定部60cと、を有している。
【0160】
この構成によれば、予め設定された複数の規定ラインの中から、散布する散布物の種類等に応じて複数の散布部から均等な散布を実現するために最適な規定ラインを選択することができ、選択された規定ラインに基づいて複数の散布部から散布する散布量を均等化する散布を実現することができる。特に、複数の散布部がブームに沿って設けられている場合、ブームの基端から先端にわたって均等な散布を実現することができる。
【0161】
また、農業機械1は、送風機201の送風量を調整する風量調整シャッタ(被覆板203)を備え、風量調整シャッタは、開度を変更することによって送風量を調整可能であり、複数の規定ラインL1~L9は、風量調整シャッタの複数の開度に基づいてそれぞれ規定されている。
この構成によれば、複数の規定ラインL1~L9から1つの規定ラインを設定することで、散布量と送風機201の単位時間当たりの送風量との関係が設定されるため、所望の散布量を実現するために必要な送風量をより確実に設定することが可能である。
【0162】
また、風量調整シャッタ(被覆板203)は、送風機201の外気(空気)の吸い込み口201aの開口面積を変化させることで送風量を調整する。
この構成によれば、風量調整シャッタによる送風量の調整を容易に行うことができる。
また、農業機械1は、収容器10に収容された散布物を回転により排出する繰り出しローラ13L,13Rを備え、散布量調整装置11は、繰り出しローラ13L,13Rの回転数を制御することによって、散布量調整装置11から排出される散布物の散布量を調整し、規定ラインL1~L9は、繰り出しローラ13L,13Rの回転数と送風機201の単位時間当たりの送風量との関係に基づいて規定される。
【0163】
この構成によれば、規定ラインL1~L9が繰り出しローラ13L,13Rの回転数と送風機201の単位時間当たりの送風量との関係に基づいて規定されるため、散布する散布物の種類等に応じて複数の散布部から均等な散布を実現するために最適な規定ラインを確実に選択することができる。
また、農業機械1は、機体2と、機体2を走行可能に支持する走行装置3と、機体2から左方に延びる第1ブーム18Lに設けられた第1散布部221と、機体2から右方に延びる第2ブーム18Rに設けられた第2散布部222と、第1散布部221及び第2散布部222からの散布物の散布を操作する操作スイッチ110と、を備え、操作スイッチ110は、第1散布部221から散布物を散布する操作を行う第1操作部111と、第2散布部222から散布物を散布する操作を行う第2操作部112と、第1散布部221と第2散布部222から散布物を散布する操作を行う第3操作部113と、第1散布部221と第2散布部222からの散布物の散布を停止する操作を行う第4操作部114と、を有し、第1操作部111は、第1ブーム18Lに対応する側である操作スイッチ110の左部に配置され、第2操作部112は、第2ブーム18Rに対応する側である操作スイッチ110の右部に配置され、第3操作部113と第4操作部114のいずれか一方の操作部は、第1操作部111と第2操作部112との間に配置され、第3操作部113と第4操作部114のいずれか他方の操作部は、一方の操作部の下方に配置されている。
【0164】
この構成によれば、第1操作部111が第1ブーム18Lに対応する側に配置され、第2操作部112が第2ブーム18Rに対応する側に配置されているため、第1操作部111の操作によって行われる作業と第2操作部112の操作によって行われる作業とをブームの配置と関連付けて把握することができる。そのため、作業者は、操作部の配置に基づいて操作により行われる作業の内容を直感的に把握することが可能となる。
【0165】
また、第4操作部114は、第1操作部111と第2操作部112との間に配置され、第3操作部113は、第4操作部114の下方に配置されている。
この構成によれば、散布物の散布方向に対応する方向(下方)に配置された第3操作部113は、散布物を散布している状態を想起させる。散布方向と逆方向(上方)に配置された第4操作部114は、散布物の散布を停止している状態を想起させる。そのため、第3操作部113と第4操作部114の機能を直感的に把握することが可能となる。
【0166】
また、第3操作部113は、第1操作部111と第2操作部112との間に配置され、第4操作部114は、第3操作部113の下方に配置されていてもよい。
この構成によれば、第1操作部111又は第2操作部112を操作する際に、誤って第4操作部114を操作するリスクを低減することができるため、散布していない領域が生じることを防止できる。
【0167】
また、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、全体としてT字形に配置されている。
この構成によれば、操作スイッチ110がブーム18L,18Rを左右に延ばした状態(即ち、散布している状態)の農業機械1の正面視の形状を想起させる。そのため、作業者は、操作部の配置に基づいて操作により行われる作業の内容を直感的に把握することが可能となる。
【0168】
また、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、押圧又は接触により操作される。
この構成によれば、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114の操作を容易に行うことができる。
また、農業機械1は、操作スイッチ110が表示されるタッチパネル(表示部61c)を備え、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114は、タッチパネルに表示される。
【0169】
この構成によれば、タッチパネルへの押圧又は接触によって、第1操作部111、第2操作部112、第3操作部113、第4操作部114を操作することができるため、操作性に優れるとともに、操作スイッチを構成する装置を設置する必要がない。
また、第1ブーム18L及び第2ブーム18Rは、伸縮可能に構成され、操作スイッチ110は、第1ブーム18Lを伸縮させる第5操作部115と、第2ブームを18R伸縮させる第6操作部116とを有し、第5操作部115は、第1操作部111の左側に配置され、第6操作部116は、第2操作部112の右側に配置されている。
【0170】
この構成によれば、第5操作部115と第6操作部116の配置が第1ブーム18L及び第2ブーム18Rの伸長を想起させるため、第5操作部115及び第6操作部116の配置から直感的に各操作部の機能(伸縮)を把握することができる。
また、農業機械1は、機体2と、機体2を走行可能に支持する走行装置3と、機体2と共に移動して散布物を散布する散布部22と、機体2の走行速度を検出する速度センサ63cと、散布部22により散布される散布物の量を制御する制御装置60と、表示装置61と、を備え、制御装置60は、速度センサ63cにより検出された現在の走行速度である現在速度値と、必要な単位時間当たりの散布量を実現可能な走行速度の最大値である最大速度値とに基づいて、最大速度値に対する現在速度値の余裕度を算出して表示装置61に表示する。
【0171】
この構成によれば、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に対して現在の走行速度がどの程度の余裕をもっているのかを表示装置61の表示によって把握することできるため、必要な散布量を実現可能な最大の走行速度に近い速度での走行が可能となり、散布不足や作業効率の低下を防止することができる。
また、制御装置60は、最大速度値に対する最大速度値と現在速度値との差の割合を余裕度として算出して表示装置61に表示する。
【0172】
この構成によれば、表示装置61に表示された余裕度から、現在速度値が最大速度値に対してどの程度余裕があるのかを容易に把握できる。
また、表示装置61は、余裕度を図形で表す余裕度ゲージYGを表示可能であり、余裕度ゲージYGは、余裕度を、最大速度値を示す図形Z10の面積又は長さに対する現在速度値を示す図形Z20の面積又は長さで表す。
【0173】
この構成によれば、余裕度ゲージYGを見ることによって、余裕度を図形として把握することができる。そのため、余裕度を直感的に容易に把握することができる。
また、農業機械1は、散布部22による散布幅と、単位面積当たりに必要な散布量の計画値である散布計画値と、を含む入力要素を入力する入力部61dと、散布部による散布量を変更するために動作する駆動装置(第1電動モータ14L,14R)と、を備え、制御装置60は、速度センサ63cにより検出された現在速度値と、入力部61dから入力された散布幅及び散布計画値とに基づいて、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を演算し、散布能力を満たすように駆動装置を駆動する。
【0174】
この構成によれば、現時点で必要な単位時間当たりの散布能力を満たすように、駆動装置によって散布部による散布量を変更することができるため、散布不足を防止することができる。
また、入力部61dに入力される入力要素は、散布部22から一定時間に散布される散布量を示す調量値と、駆動装置であるモータ(第1電動モータ14L,14R)の最高回転数を含むモータ仕様値と、調量値と散布能力に基づいてモータの回転数を算出するための算出関数と、散布計画値と、を含み、制御装置60は、入力要素に基づいて最大速度値を算出する。
【0175】
この構成によれば、入力要素に基づいて散布計画値に基づいた最大速度値を正確に算出することができる。
また、制御装置60は、入力要素として、散布計画値に代えて現在の散布量を示す現在散布値を使用して最大速度値を算出してもよい。
この構成によれば、入力要素に基づいて現在散布量に基づいた最大速度値を正確に算出することができる。
【0176】
また、散布計画値は、圃場を区画して形成された複数のエリアQn毎に個別に設定される。
この構成によれば、複数のエリアQn毎に個別に設定された散布計画値に基づいて最大速度値を算出することができる。
また、制御装置60は、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値を入力要素として使用し、複数のエリアQn毎に最大速度値を算出してもよい。
【0177】
この構成によれば、複数のエリア毎に個別に散布計画値が設定される場合において、複数のエリアQn毎に最大速度値を算出することができる。そのため、算出された最大速度値に基づいてエリア毎に現在速度値を設定することで、エリア毎に最適な散布量を実現することができる。
また、制御装置60は、複数のエリアQn毎に個別に設定される散布計画値のうち最大の散布計画値を入力要素として使用して最大速度値を算出してもよい。
【0178】
この構成によれば、複数のエリア毎に個別に散布計画値が設定される場合において、設定された散布計画値のうちの最大の散布計画値に基づいて最大速度値を算出することができる。これにより、散布量が過少になるリスクを確実に回避することができる。
また、表示装置61は、農作業を行う農作業部22を有する走行車体8の農作業部22からの作業状況を表す図形を表示する表示部61cと、表示部61cの制御を行う制御部61aと、を備えた表示装置であって、表示部61cは、走行車体8が走行するフィールドを表す図形Z1を表示するフィールド表示部190と、走行車体8の位置を表す図形をフィールド表示部190に表示する車体表示部191と、農作業部22を表す図形Z3を、車体表示部191の走行車体8に対する農作業部22の方向に対応する側に表示する農作業部表示部192と、を含み、制御部61aは、農作業部表示部192に、農作業部22が作業を行っている作業状態と、農作業部22が作業を停止している停止状態とを異なる表示形態で表示させる。
【0179】
この構成によれば、表示装置61の農作業部表示部192の表示によって農作業部22からの作業状況を明確に把握することができるため、圃場を走行しながら農作業部22からの農作業の状況を明確に把握することができる。
また、制御部61aは、農作業部表示部192に、作業状態にあるときの表示色と、停止状態にあるときの表示色とが異なるように表示させる。
【0180】
この構成によれば、農作業部表示部192の表示によって、農作業部22が作業状態にあるか停止状態にあるかを容易に且つ確実に把握することができる。
また、農作業部表示部22は、走行車体8の左部で作業を行う第1農作業部221の作業状態を表示する第1農作業部表示部192Aと、走行車体8の右部で作業を行う第2農作業部222の作業状態を表示する第2農作業部表示部192Bを有している。
【0181】
この構成によれば、第1農作業部221と第1農作業部表示部192Aとの配置が対応付けられており、第2農作業部222と第2農作業部表示部192Bとの配置が対応付けられているため、第1農作業部表示部192A及び第2農作業部表示部192Bの表示によって、第1農作業部221と第2農作業部222の作業状況を直感的に把握することができる。
【0182】
また、制御部61aは、第1農作業部表示部192Aに第1農作業部221の作業状態と停止状態とを異なる表示形態で表示させ、第2農作業部表示部192Bに第2農作業部222の作業状態と停止状態とを異なる表示形態で表示させる。
この構成によれば、第1農作業部221及び第2農作業部222が作業状態にあるか停止状態にあるかを容易に且つ確実に把握することができる。
【0183】
また、表示部61cは、農作業部22による作業の作業軌跡を表す図形Z4をフィールド表示部190に表示する軌跡表示部193を含み、制御部61aは、軌跡表示部193に、作業状態にある農作業部22の作業軌跡に沿って作業軌跡を表す図形Z4をフィールド表示部190と重ねて表示させる。
この構成によれば、農作業部22による作業軌跡を表す図形Z4がフィールド表示部190に表示されることにより、フィールドのどの部分に作業が行われたのかを表示部61cを見て把握することができる。
【0184】
また、軌跡表示部193は、走行車体8の左部で作業を行う第1農作業部221による作業軌跡を表す図形Z41を表示する第1軌跡表示部193Aと、走行車体8の右部で作業を行う第2農作業部222による作業軌跡を表す図形Z42を表示する第2軌跡表示部193Bを有し、制御部61aは、第1軌跡表示部193Aに作業状態にある第1農作業部221の移動軌跡に沿って第1農作業部221による作業軌跡を表す図形Z41をフィールド表示部190と重ねて表示させ、第2軌跡表示部193Bに作業状態にある第2農作業部222の移動軌跡に沿って第2農作業部222による作業軌跡を表す図形Z42をフィールド表示部190と重ねて表示させる。
【0185】
この構成によれば、第1農作業部221によって散布物の散布が行われた領域と、第2農作業部222によって作業が行われた領域と、第1農作業部221と第2農作業部222によって作業が行われた領域とを、表示部61cを見て把握することができる。
また、農業機械1は、作業軌跡を記憶する記憶部61bを備え、制御部61aは、作業軌跡を記憶部61bに記憶する。
【0186】
この構成によれば、圃場内の落下物等を避けるなど、何らかの原因で第1農作業部221又は第2農作業部222が停止した場合であっても、実際の作業状況を記憶部61bに記憶された作業軌跡により確認することができる。
また、農作業は散布物を散布する散布作業であって、農作業部22は、走行車体8から左方に延びる第1ブーム18Lに設けられた第1散布部221と、走行車体8から右方に延びる第2ブーム18Rに設けられた第2散布部222と、を含む。
【0187】
また、農業機械1は、農作業を行う農作業部22を有する走行車体8と、農作業部22からの作業状況を表す図形を表示する表示部61cを有する表示装置61と、を備え、表示装置61は上述した作業状態を表示する表示装置である。
この構成によれば、圃場を走行しながら農作業部22からの作業状況を明確に把握することができる農業機械1を得ることができる。
【0188】
また、農業機械1は、走行車体8と、走行車体8に搭載され且つ上部にルーフ150を有するキャビン9と、測位衛星からの信号に基づいて走行車体8の位置を検出する測位装置63と、測位装置63をルーフ150上に支持する支持ブラケット90と、を備え、支持ブラケット90は、測位装置63が載置される載置部161aと、載置部161aから左方に延伸する左延部161bと、載置部161aから右方に延伸する右延部161cと、を有するベース板161と、ベース板161の前部から下方に延伸する前脚部166と、を有し、支持ブラケット90は、前脚部166がルーフ150の上面に当接する当接部167を備え、ルーフ150に載置される状態で走行車体8に取り付けられている.
この構成によれば、広い面積のベース板161を確保できる支持ブラケット160を安定的にルーフ150上に取り付けることができ、これによって、測位装置63を安定的に支持することが可能となる。
【0189】
また、支持ブラケット90は、ベース板161の左部から下方に延伸される左脚部162と、ベース板161の右部から下方に延伸される右脚部163と、を有し、左脚部162及び右脚部163は、ルーフ150の上面に当接する当接部177を有し、ルーフ150に載置される状態で走行車体8に取り付けられている。
この構成によれば、左脚部162及び右脚部163をルーフ150の上面に当接させることによって、支持ブラケット160を安定的にルーフ150上に取り付けることができる。
【0190】
また、ベース板161の左部から下方に延伸されてキャビン9又は走行車体8の左部に取り付けられる左脚部162と、ベース板161の右部から下方に延伸されてキャビン9又は走行車体8の右部に取り付けられる右脚部163と、有している。
この構成によれば、左延部161bおよび右延部161cがキャビン9又は走行車体8に取り付けられることによって、支持ブラケット160を安定的にルーフ150上に取り付けることができ、測位装置63を安定的に支持することが可能となる。
【0191】
また、ルーフ150は、ルーフ150の上部に位置する上板151と、上板151の下方において上板151の前縁よりも前方に突出する鍔部152と、を有し、ルーフ150の上面は上板151の上面と鍔部152の上面とを含み、当接部167は鍔部152の上面に当接する。
この構成によれば、支持ブラケット160の前脚部166の当接部167がルーフ150の鍔部152の上面に当接することにより、支持ブラケット160をルーフ150上に安定的に支持することができる。
【0192】
また、ベース板161は、上板151に載置されるようにしてもよい。
この構成によれば、支持ブラケット160の前脚部166がルーフ150の鍔部152に載置され、且つベース板161が上板151に載置されることにより、支持ブラケット160をルーフ150上に安定的に支持することができる。
また、ベース板161は、ルーフ150の幅方向の全長にわたって延びている。
【0193】
この構成によれば、ベース板161上に測位装置63を安定的に支持することができる。
また、ベース板161の前後方向の長さは、ルーフ150の幅方向の長さの半分以上にわたって、測位装置63の前後方向の長さの半分以上の長さに設定されている。
この構成によれば、ベース板161が幅広に形成されることで、ベース板161の強度が向上し、ベース板161上に測位装置63を安定的に支持することができる。
【0194】
また、前脚部166は、ベース板161の左前部から下方に延伸された左前脚部166Lと、ベース板161の右前部から下方に延伸された右前脚部166Rとを有している。
この構成によれば、左前脚部166Lと右前脚部166Rによって、ベース板161の前部を確実に支持することができるとともに、ベース板161が傾いたり変形したりすることも防止できる。
【0195】
また、前脚部166は、当接部167から左斜め上方に延びてベース板161に繋がる左連結部168と、当接部167から右斜め上方に延びてベース板161に繋がる右連結部169と、を有している。
この構成によれば、前脚部166が逆三角形状に形成されるため、前脚部166の剛性が向上する。
【0196】
また、農業機械1は、測位装置63を前方に向けて回動可能に支持する支軸170を有し、前脚部166には、支軸170を支持する軸支持部171が設けられている。
この構成によれば、測位装置63を前方に向けて回動させることで、農業機械1の高さを低くすることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0197】
1 農業機械
2 機体
3 走行装置
14L,14R 駆動装置(第1電動モータ)
22 散布部
63c 速度センサ
60 制御装置
61 表示装置
61d 入力部
Qn エリア
YG 余裕度ゲージ
Z10 最大速度値を示す図形
Z20 現在速度値を示す図形