(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】プラスチックを強化するためのポリビニルアルコールでサイジング処理されたフィラー
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20231204BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20231204BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20231204BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08L25/04
C08K7/02
C08J5/06
D06M15/333
(21)【出願番号】P 2020530417
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 US2018042677
(87)【国際公開番号】W WO2018176067
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520047510
【氏名又は名称】ゾルテック コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エフ.チュー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エル.シェル
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エム.コービン
(72)【発明者】
【氏名】イワサワ シゲオ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-186248(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069507(WO,A1)
【文献】特開昭60-038743(JP,A)
【文献】米国特許第03224993(US,A)
【文献】米国特許第04185138(US,A)
【文献】米国特許第05085938(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0046045(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286999(US,A1)
【文献】特表2002-505216(JP,A)
【文献】特開2013-194338(JP,A)
【文献】特開平09-227172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08J 5/00-5/24
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性(コ)ポリマー、および
(b)少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラー
を含むポリマー複合材料であって、
熱可塑性(コ)ポリマーが
、スチレン無水マレイン酸(SMA)と耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)とのブレン
ドを含み、
少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーがフィラーとフィラーの少なくとも一部に配置されたサイジング剤とを含み、サイジング剤が、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコール、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールの少なくとも1種を含む、ポリマー複合材料。
【請求項2】
熱可塑性(コ)ポリマーが、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー、からなる群から選ばれるポリマーを含む、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項3】
熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそれらの任意の誘導体、コポリマーおよび/または組み合わせからなる群から選ばれるポリオレフィンである、請求項2に記載のポリマー複合材料。
【請求項4】
混合物のポリオレフィン含有量が、混合物の総質量を基準として、50質量%よりも多
い、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項5】
少なくとも1種のポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項4に記載のポリマー複合材料。
【請求項6】
ポリマー複合材料がさらに少なくとも1種のカップリング剤を含む、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項7】
少なくとも1種のカップリング剤が、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる、請求項6に記載のポリマー複合材料。
【請求項8】
少なくとも1種のカップリング剤が、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン、無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項6に記載のポリマー複合材料。
【請求項9】
架橋されたサイジング剤でサイジング処理されたフィラーをさらに含む請求項6に記載のポリマー複合材料であって、架橋されたサイジング剤が、少なくとも1種のカップリング剤で架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む、ポリマー複合材料。
【請求項10】
少なくとも1種のカップリング剤が無水物をグラフトされたポリオレフィンであり、架橋されたサイジング剤が、無水物をグラフトされたポリオレフィンで架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤を含む、請求項9に記載のポリマー複合材料。
【請求項11】
熱可塑性ポリマーがポリプロピレンであり、少なくとも1種のカップリング剤が、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン、無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項6に記載のポリマー複合材料。
【請求項12】
少なくとも1種のカップリング剤が無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンである、請求項11に記載のポリマー複合材料。
【請求項13】
フィラーが、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる繊維である、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項14】
少なくとも1種の繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、炭化珪素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項13に記載のポリマー複合材料。
【請求項15】
フィラーが顔料および固体添加剤からなる群から選ばれる粒子である、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項16】
粒子が、タルク、雲母、クレー、ナノクレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選ばれる、請求項15に記載のポリマー複合材料。
【請求項17】
サイジング剤がポリビニルアルコールを含む、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項18】
ポリビニルアルコールが、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、中程度に加水分解されたポリビニルアルコール、完全に加水分解されたポリビニルアルコールまたは超完全に加水分解されたポリビニルアルコールである、請求項17に記載のポリマー複合材料。
【請求項19】
フィラーがガラス繊維である、請求項14に記載のポリマー複合材料。
【請求項20】
ガラス繊維が、C、D、E、修正E、RおよびSからなる群から選ばれるグレードを有するガラスから作られたものである、請求項19に記載のポリマー複合材料。
【請求項21】
フィラーが炭素繊維である、請求項14に記載のポリマー複合材料。
【請求項22】
炭素繊維が、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維および超高弾性率炭素繊維からなる群から選ばれる、請求項21に記載のポリマー複合材料。
【請求項23】
サイジング剤が少なくとも1種の付加的な被膜形成剤をさらに含む、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項24】
少なくとも1種の付加的な被膜形成剤が、ポリプロピレン分散液、ポリウレタン分散液、エポキシ分散液、ポリエステル分散液、ポリ酢酸ビニル分散液、フェノキシ溶液、ナイロン分散液、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項23に記載のポリマー複合材料。
【請求項25】
少なくとも1種の付加的な被膜形成剤は、サイジング剤の総質量を基準として50質量%以下の量でサイジング剤中に存在する、請求項24に記載のポリマー複合材料。
【請求項26】
少なくとも1種のカップリング剤および/または少なくとも1種の加工助剤をさらに含む請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項27】
少なくとも1種のカップリング剤がメタクリル酸クロム(III)、シラン、チタン酸塩およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、少なくとも1種の加工助剤が潤滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、請求項26に記載のポリマー複合材料。
【請求項28】
少なくとも1種の陽イオン潤滑剤および少なくとも1種の帯電防止剤をさらに含む請求項27に記載のポリマー複合材料。
【請求項29】
ポリマー複合材料中のサイジング処理された強化用フィラーの含有量がポリマー複合材料の総質量を基準として1~80質量%の範囲内にある、請求項1に記載のポリマー複合材料。
【請求項30】
請求項1に記載のポリマー複合材料を含む物品。
【請求項31】
物品が、短繊維コンパウンド、一方向強化熱可塑性テープ、ランダム化連続マット、長いチョップトマット、ペレット化された長いコンパウンドおよび押し出された長いロッグからなる群から選ばれる、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
部品が、自動車、器具および電子アセンブリーの1つ以上に使用するために構成されている、請求項30に記載の物品を含む部品。
【請求項33】
物品が、自動車ドアライナー、フロントエンドモジュール、空気吸込マニホールド、バンパービーム、モーターバイクブーツ、自動車冷却ファンブレード、エアコンファンブレード、ポンプハウジング、自動車ボディパネル、ダッシュボードキャリヤー、多重翼インペラー、リフトゲート、トラックライナー、自動車バーティカルパネル、計器盤キャリヤー、ドアパネル構造、座席構造、アンダーフードコンポーネント、ガソリンドア、ミラーハウジング、フロントエンドキャリヤー、ダッシュボードキャリヤー、ドアベースプレート、アンダーボディカバー、フロントアンダートレイ、洗濯槽、エアバッグハウジング、ビジネスマシン、エレクトロニクスパッケージングおよびハードディスクドライブからなる群から選ばれる、請求項31に記載の物品。
【請求項34】
フィラーが、連続繊維、ミルドファイバーまたはチョップトファイバーを含む繊維、粒子、またはそれらの任意の組み合わせである請求項26に記載のポリマー複合材料。
【請求項35】
フィラーがロービングの形をしている連続繊維であり、複合材料が長繊維熱可塑性複合材料である、請求項34に記載のポリマー複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2017年8月7日に提出された米国仮出願No.62/541,834の優先権を主張し、その開示全体が、あたかも全部記述されているかのように、参照によってここに含まれる。
【0002】
本開示は、概して、フィラーとフィラーの少なくとも一部に配置されたサイジング剤とを含むサイジング処理された強化用フィラーであって、サイジング剤は、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1種を含む、強化用フィラーに関する。本開示は、また、概して、少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーで強化されたポリマー複合材料(ただし、少なくとも1種のサイジング処理されたフィラーはフィラーおよび上記に開示されたようなサイジング剤を含み、強化用フィラーは連続繊維、ミルドファイバーまたはチョップトファイバーを含む繊維、粒子、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。)ならびにそのようなポリマー複合材料を含む物品、成形品および製品にも関する。
【背景技術】
【0003】
サイジング剤組成物は、強化用繊維または強化用粒子のような強化用フィラーに適用されたとき、プラスチック複合材料の機械的性質を改善することを目的としている。そのため、ポリマー樹脂を強化するのに有用な改善されたサイジング処理されたフィラーの持続的なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
ガラス繊維はプラスチックのための有力な強化材である。例えば炭素、玄武岩、石英、アルミナ、炭化ケイ素、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、アクリルなどのような他の繊維も、そのようなキャパシティーにおいて使用することができる。例えば大麻、ジュートなどのような多くの天然繊維が、「グリーン」の強化プラスチック複合材料の製造に使用することができる。しかし、強化材として使用される繊維の種類にかかわらず、一般に、製造工程中にそれを保護し、かつ繊維とプラスチック樹脂の間の結合を増強するために、繊維上のサイジング剤またはバインダーが必要である。
【0005】
主要な2つのカテゴリーのマトリックス樹脂、すなわち熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を使用することができる。ポリ酢酸ビニル、エポキシ、ポリエステル、フェノール、フェノキシまたはポリウレタン分散体を、熱硬化性樹脂を強化するために使用される繊維用のサイジング剤として使用してもよい。熱可塑性樹脂を強化するために使用される繊維をサイジング処理するために、なかでも、ポリウレタン、エポキシ、フェノキシ、ポリプロピレンおよびアクリル分散体を使用することができる。ナイロンおよび熱可塑性ポリエステル樹脂が熱可塑性複合材料の大半を占める。ポリウレタンはナイロン樹脂強化用繊維をサイジング処理するために使用することができ、一方、エポキシサイジング剤は熱可塑性ポリエステルの繊維強化材をサイジング処理するために使用することができる。
【0006】
強化用繊維(例えばEガラスおよび他の種類の一般的なガラス繊維)をサイジング処理するための配合物は、次の3つの一般的なカテゴリーの成分からなることができる。(1)カップリング剤(例えばメタクリル酸クロム(III)(Zaclon有限責任会社からVolan(登録商標)として入手可能)、シラン、チタン酸塩など)、(2)被膜形成剤(例えばポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタンなど)、および(3)加工助剤(例えば潤滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせ)。サイジング剤配合物の50~90%は被膜形成剤から構成されていてもよく、被膜形成剤は、摩耗から繊維を保護し、繊維と樹脂を架橋する際に重大な役割を果たす。
【0007】
ポリオレフィン樹脂(例えばポリエチレンおよびポリプロピレンなど)はそれらが繊維と樹脂を結合するためにナイロンおよび熱可塑性ポリエステル複合材料において使用されるものとは異なったサイジング剤を必要とするかもしれない。ポリオレフィン樹脂の無極性の性質により、ナイロンおよびポリエステル樹脂と共に使用されたときに観察されるのと比較して、被膜形成剤としてポリウレタンまたはエポキシ分散体を使用して同程度の親和力または反応性を達成するのは難しいかもしれない。したがって、ポリエチレンまたはポリプロピレン分散体を、ポリオレフィン強化用繊維に使用するためのサイジング剤として選んでもよく、酸または無水マレイン酸をグラフトされたポリエチレンまたはポリプロピレン分散体が好ましい。これらのポリエチレンおよびポリプロピレン分散体は、繊維とポリオレフィン樹脂の間のいくらかの結合を提供することができる。
【0008】
本発明の1つの側面は、強化用繊維または強化用粒子のような強化用フィラーに適用されたときに、プラスチック複合材料において良好な機械的性質を有するサイジング処理された強化用フィラーをもたらすサイジング剤組成物を提供する。特に、そのような組成物でサイジング処理された強化用フィラーは、ポリオレフィン樹脂系複合材料において使用されたときに、優れた機械的性質を示すであろう。
【0009】
本発明のもう1つの側面は、サイジング剤組成物が固体状であることができ、したがって40~70質量%の水を含む水性分散体と比較して、輸送するのに非常に費用効率が高いということである。
【0010】
本発明のもう1つの側面は、他の成分の添加に起因する広いpH範囲を許容することができる水溶液としてサイジング剤組成物を調製することができるということである。これは、本来多くは陰イオン性でpHが高い、したがって酸性の成分とは相容れないかもしれない強化フィラーをコーティングするために使用されるポリプロピレン分散体に関する改良を提供する。
【0011】
本発明のもう1つの側面は、非常に限定された貯蔵寿命を有する大抵の水性分散体と比較して、そのサイジング剤組成物は長く有用な貯蔵寿命を有することができるということである。
【0012】
本発明のもう1つの側面は、それを廃棄するのに高額の廃棄費用がかかる大抵の水性分散体と比較して、そのサイジング剤組成物は廃棄されたときに危険ではなく、環境に影響を及ぼさないことが可能であるということである。
【0013】
本発明の追加の側面では、サイジング剤組成物は、特にポリオレフィン系複合材料に関して、熱可塑性複合材料の水耐性を改善することができる。
【0014】
無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン分散体は、強化用繊維の上に被膜形成剤(すなわちサイジング剤)として使用されたときに、最終的に、ポリオレフィン複合材料に黄色の性質を与えるであろう。黄変しないことは器具の用途において重要な製品要求である。したがって、サイジング剤組成物が熱可塑性複合材料の色を改善することができるか、または少なくとも熱可塑性複合材料の色に悪い影響を与えないことが本発明のさらなる側面である。
【0015】
これらの側面およびその他のものは本発明によって達成され、また、先行技術の欠陥は本発明によって克服される。
【0016】
したがって、本発明の1つの実施形態は、フィラーとフィラーの少なくとも一部に配置されたサイジング剤とを含むサイジング処理された強化用フィラーであって、サイジング剤が、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1種を含む、サイジング処理された強化用フィラーである。
【0017】
ある実施形態では、フィラーは、連続繊維、ミルドファイバーまたはチョップトファイバーを含む繊維、粒子、またはそれらの任意の組み合わせの形をしている。ある実施形態では、フィラーは、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる繊維である。ある実施形態では、フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、炭化珪素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、大麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる繊維である。1つの実施形態では、フィラーはナノ繊維である。もう1つの実施形態では、フィラーは植物系天然繊維である。ある他の実施形態では、繊維はガラス繊維である。それらの実施形態のうちのあるものでは、ガラス繊維は、C、D、E、修正E、RおよびSからなる群から選ばれるグレードを有するガラスから作られたものである。ある他の実施形態では、繊維は炭素繊維である。それらの実施形態のうちのあるものでは、炭素繊維は、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維および超高弾性率炭素繊維からなる群から選ばれる。ある実施形態では、フィラーは、顔料および固体添加剤からなる群から選ばれる粒子である。それらの実施形態のうちのあるものでは、粒子は、滑石、雲母、クレー、ナノクレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選ばれる。
【0018】
ある実施形態では、サイジング剤はポリビニルアルコールを含む。それらの実施形態のうちのあるものでは、ポリビニルアルコールは、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、中程度に加水分解されたポリビニルアルコール、完全に加水分解されたポリビニルアルコールまたは超完全に加水分解されたポリビニルアルコールである。あるさらなる実施形態では、サイジング剤はさらに少なくとも1種の付加的な被膜形成剤を含む。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種の付加的な被膜形成剤は、ポリプロピレン分散体、ポリウレタン分散体、エポキシ分散体、ポリエステル分散体、ポリ酢酸ビニル分散体、フェノキシ溶液、ナイロン分散体およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種の付加的な被膜形成剤は、サイジング剤の総質量を基準として50質量%以下の量でサイジング剤中に存在する。
【0019】
ある実施形態では、サイジング処理された強化用フィラーはさらに少なくとも1種のカップリング剤および/または少なくとも1種の加工助剤を含む。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種のカップリング剤はメタクリル酸クロム(III)(Zaclon有限責任会社からVolan(登録商標)として入手可能)、シラン、チタン酸塩およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、少なくとも1種の加工助剤は潤滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。1つの実施形態では、少なくとも1つのカップリング剤は、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる。ある実施形態では、サイジング処理された強化用フィラーはさらに陽イオン潤滑剤および帯電防止剤を含む。
【0020】
サイジング処理された強化用フィラーのある実施形態では、サイジング剤は、架橋されたサイジング剤を形成するために少なくとも1種のカップリング剤で架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む。1つの実施形態では、少なくとも1種のカップリング剤は無水物をグラフトされたポリオレフィンであり、架橋されたサイジング剤は、無水物をグラフトされたポリオレフィンで架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む。
【0021】
ある実施形態では、サイジング処理された強化用フィラーは、スプール、トウ、ロービングまたはマットの形をしているチョップトファイバー、ミルドファイバーまたは連続繊維である。ある他の実施形態では、サイジング処理された強化用フィラーはチョップトファイバーである。それらの実施形態のうちのあるものでは、チョップトファイバーはぬれており、ポリビニルアルコールはぬれたサイジング処理されたチョップトファイバーの総質量を基準として0.5~10質量%の範囲内の量で存在し、チョップトファイバーの長さは0.1~6.0インチの範囲内にある。それらの実施形態のうちのある他のものでは、チョップトファイバーは乾燥しており、ポリビニルアルコールは乾燥したサイジング処理されたチョップトファイバーの総質量を基準として0.1~20質量%の範囲内の量で存在し、チョップトファイバーの長さは0.1~6.0インチの範囲内にある。
【0022】
本発明のもう1つの実施形態は、(a)熱硬化性(コ)ポリマーおよび/または熱可塑性(コ)ポリマーおよびそれらのアロイおよびブレンド、ならびに(b)上に開示されたような本発明の様々な実施形態の少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーを含むポリマー複合材料である。ある実施形態では、強化用フィラーは、連続繊維、ミルドファイバーまたはチョップトファイバーを含む繊維、粒子、またはそれらの任意の組み合わせの形をしている。ある実施形態では、繊維は、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。ある実施形態では、フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、炭化珪素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、大麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる繊維である。ある他の実施形態では、フィラーは、顔料および固体添加剤からなる群から選ばれる粒子である。それらの実施形態のうちのあるものでは、粒子は、滑石、雲母、クレー、ナノクレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選ばれる。
【0023】
ある実施形態では、ポリマー複合材料は、アロイおよびブレンドを含む熱硬化性(コ)ポリマーおよび/または熱可塑性(コ)ポリマーを含む。それらの実施形態のうちのあるものでは、熱硬化性(コ)ポリマーは、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂およびそれらの任意の組み合わせ、コポリマーおよび/または誘導体からなる群から選ばれる。それらの実施形態のうちのある他のものでは、熱可塑性(コ)ポリマーは、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー、およびそれらの任意の組み合わせ、アロイ、ブレンド、コポリマーおよび/または誘導体からなる群から選ばれる。ある実施形態では、熱可塑性(コ)ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそれらの任意の誘導体、コポリマーおよび/または組み合わせからなる群から選ばれるポリオレフィンである。ある実施形態では、熱可塑性ポリマーは、少なくとも1種のポリオレフィンおよび少なくとも1種のポリアミドの混合物である。それらの実施形態のうちのあるものでは、混合物のポリオレフィン含有量は混合物の総質量を基準として50質量%よりも多い。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種のポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0024】
ある実施形態では、ポリマー複合材料のフィラーはロービングの形をした連続繊維であり、複合材料は長繊維熱可塑性樹脂複合材料である。ある他の実施形態では、ポリマー複合材料のフィラーはチョップトファイバーである。それらの実施形態のうちのあるものでは、チョップトファイバーの長さは0.1~6.0インチの範囲内にある。それらの実施形態のある他のものでは、チョップトファイバーの長さは0.1~6.0インチの範囲内にある。ある実施形態では、ポリマー複合材料中のサイジング処理された強化用フィラーの含有量は、ポリマー複合材料の総質量を基準として1~80質量%の範囲内にある。
【0025】
ある実施形態では、ポリマー複合材料はさらに少なくとも1種のカップリング剤を含む。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種のカップリング剤は、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる。それらの実施形態のうちのあるものでは、少なくとも1種のカップリング剤は、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン、無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。1つの実施形態では、少なくとも1種のカップリング剤は無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンである。
【0026】
ある実施形態では、ポリマー複合材料は、少なくとも1種のカップリング剤で架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む架橋されたサイジング剤でサイジング処理されたフィラーをさらに含む。上に開示されたようないかなる適切なカップリング剤も使用することができる。1つの実施形態では、少なくとも1種のカップリング剤は無水物をグラフトされたポリオレフィンであり、架橋されたサイジング剤は、無水物をグラフトされたポリオレフィンで架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む。
【0027】
ポリマー複合材料の1つの実施形態では、サイジング剤はポリビニルアルコールを含む。もう1つの実施形態では、ポリビニルアルコールは、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、中程度に加水分解されたポリビニルアルコール、完全に加水分解されたポリビニルアルコールまたは超完全に加水分解されたポリビニルアルコールである。
【0028】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、上に開示されたような本発明のポリマー複合材料を含む物品である。
【0029】
ある実施形態では、物品は、短繊維コンパウンド、一方向強化熱可塑性テープ、ランダム化された連続マット、長いチョップトマット、ペレット化された長いコンパウンドおよび押し出された長いロッグからなる群から選ばれる。ある他の実施形態では、物品を含む部品は、自動車、器具および電子アセンブリーの1つ以上で使用するために構成される。それらの実施形態のうちのあるものでは、物品は、自動車ドアライナー、フロントエンドモジュール、空気吸込マニホールド、バンパービーム、モーターバイクブーツ、自動車冷却ファンブレード、エアコンファンブレード、ポンプハウジング、自動車ボディパネル、ダッシュボードキャリヤー、多重翼インペラー、リフトゲート、トラックライナー、自動車バーティカルパネル、計器盤キャリヤー、ドアパネル構造、座席構造、アンダーフードコンポーネント、ガソリンドア、ミラーハウジング、フロントエンドキャリヤー、ダッシュボードキャリヤー、ドアベースプレート、アンダーボディカバー、フロントアンダートレイ、洗濯槽、エアバッグハウジング、事務機械、エレクトロニックパッケージングおよびハードディスクドライブからなる群から選ばれる。
【0030】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、本発明のポリマー複合材料から成形された成形品である。
【0031】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、本発明の成形品を含む製品である。
【0032】
もう1つの実施形態では、上に開示された実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラーを形成するために、強化用フィラーの少なくとも一部にサイジング剤を接触させる工程を含むポリマー複合材料を作る方法であって、サイジング剤が、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1種を含む、方法がある。その方法はまた、熱硬化性(コ)ポリマー、熱可塑性(コ)ポリマーならびにそれらのアロイおよびブレンドを含むポリマーにサイジング処理された強化用フィラーを配合する工程をも含む。
【0033】
もう1つの実施形態では、ポリマーにサイジング処理された強化用フィラーを配合する工程は、さらに、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤を配合する工程を含み、少なくとも1種のカップリング剤はサイジング剤と架橋し、それによって、サイジング処理された強化用フィラーの少なくとも一部の上に配置された架橋されたサイジング剤を形成する。
【0034】
さらにもう1つの実施形態では、その方法は、ポリマーにサイジング処理された強化用フィラーを配合する工程の前に、ポリマーに10質量%以下のサイジング剤を添加する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、ポリビニルアルコールの水酸基と無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンの無水マレイン酸部分の間の架橋反応を図式的に描く。
【0036】
【
図2】
図2は、ポリビニルアルコール、ポリウレタンおよびポリプロピレンでサイジング処理された炭素繊維で強化された100%ナイロン、100%ポリプロピレンおよびナイロン50%/ポリプロピレン50%アロイ系複合材料の引張強さの比較をグラフで描く。
【0037】
【
図3】
図3は、ポリビニルアルコール、ポリウレタンおよびポリプロピレンでサイジング処理された炭素繊維で強化された100%ナイロン、100%ポリプロピレンおよびナイロン50%/ポリプロピレン50%アロイ系複合材料のノッチなし衝撃強さの比較をグラフで描く。
【0038】
【
図4】
図4は、未処理炭酸カルシウム(Q3のみ)、ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭酸カルシウム(Q3+PVOHサイジング剤)およびポリプロピレンでサイジング処理された炭酸カルシウム(Q3+PPサイジング剤)で強化された樹脂マトリックスの30℃から180℃までの温度の関数としての貯蔵弾性率の比較をグラフで描く。
【0039】
【
図5】
図5は、30℃から100℃までの温度範囲における
図4の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
繊維は、しばしば、使用する前に、一般にスピン仕上げ、バインダーまたはサイジングと呼ばれる処理を必要とする。織物繊維については、スピン仕上げの目的は、表面潤滑性、帯電防止、染料親和力、湿潤または反湿潤、および耐摩耗性を提供することである。織物繊維がプラスチック強化のために使用される場合は、スピン仕上げまたはバインダーは、強化されるプラスチックとの相容性を増強するために樹脂分散体を含んでもよい。プラスチック強化のために使用される無機繊維については、バインダーまたはサイジング剤は、表面潤滑性、帯電防止、湿潤、酸化防止、耐摩耗性、樹脂結合および相容性を提供する。この原理は、また、植物系天然繊維にも当てはまる。
【0041】
本発明の1つの側面では、本開示は、フィラーとサイジング剤とを含む新規なサイジング処理された強化用フィラーを提供する。ある実施形態では、本発明の強化用フィラーは、繊維、粒子またはそれらの任意の組み合わせの形をしている。ここで使用するときは、用語「繊維」は、連続繊維、チョップトファイバー、ミルドファイバー、ナノチューブ、マイクロファイバーおよびナノ繊維を含む。ここで使用するときは、チョップトファイバーは、新しいまたはリサイクルされたトウを切断することによって作ることができる。チョップトファイバーは、いかなる適切な寸法をも有することができ、例えば、1~12mmの長さを有することができる。ここで使用するときは、ミルドファイバーは、トウの形であることができる生産廃棄物、ばらばらにしたトウ、または切断されたトウから作ることができる。ミルドファイバーは、使用に先立って、サイジング剤を熱的に除く(焼き尽くす)ことができる。ミルドファイバーは、いかなる適切な寸法をも有することができ、例えば、それらは50~200ミクロンに粉砕することができる。ここで使用するときは、用語「粒子」はミクロ粒子およびナノ粒子を含む。
【0042】
本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる繊維は、ポリマー複合材料のような複合材料の強化のために当技術分野で知られているいかなる繊維であってもよい。そのような繊維の具体例としては、限定するものではないが、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、および炭化珪素繊維が挙げられる。ある実施形態では、本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる繊維は、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる。典型的な繊維としては、限定するものではないが、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、炭化珪素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、大麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、繊維はガラス繊維または炭素繊維である。ガラスおよび炭素繊維は、当技術分野において知られているいずれのクラス、タイプまたはグレードのものであってもよい。本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができるガラス繊維のグレードの具体例としては、限定するものではないが、グレードC、グレードD、グレードE(最も一般的)、修正されたグレードE(すなわちホウ素またはフッ素を含まない)、グレードRおよびグレードSが挙げられる。本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる炭素繊維のグレードの具体例としては、限定するものではないが、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維および超高弾性率炭素繊維が挙げられる。本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)またはピッチのいずれに由来するものでもよい。ある実施形態では、本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる粒子は、無機粒子からなる群から選ばれる。
【0043】
本発明のサイジング処理された強化用フィラーを形成するために使用することができる粒子は、ポリマー複合材料のような複合材料の強化のために当技術分野において知られているいかなる粒子(例えば顔料およびその他の固体添加剤)であってもよい。そのような粒子の具体例としては、限定するものではないが、タルク、雲母、クレー(ナノクレーを含む。)、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、およびシリカが挙げられる。
【0044】
本発明のもう1つの側面では、本開示は、熱硬化性(コ)ポリマーおよび/または熱可塑性(コ)ポリマーおよびそれらのアロイおよびブレンドならびに少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーを含む新規なポリマー複合材料であって、少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーがフィラーとフィラーの少なくとも一部に配置されたサイジング剤とを含む、ポリマー複合材料を提供する。サイジング剤は、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1種を含む。ある実施形態では、本発明のポリマー複合材料は、ポリマー複合材料の総質量を基準として、1~80質量%、好ましくは3~70質量%、最も好ましくは5~60質量%の範囲内のサイジング処理された強化用フィラー含有量を有することができる。
【0045】
本発明のポリマー複合材料は、当技術分野において知られているいかなる熱硬化性(コ)ポリマーおよび/または熱可塑性(コ)ポリマーから形成され、そしてそれらを主成分とするものであってもよい。そのような熱硬化性(コ)ポリマーの具体例としては、限定するものではないが、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂およびシリコーン樹脂が挙げられる。そのような熱可塑性(コ)ポリマーの具体例としては、限定するものではないが、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ならびにそれらのアロイおよびブレンドが挙げられる。ある実施形態では、本発明のポリマー複合材料は、少なくとも1種のポリオレフィンと少なくとも1種のポリアミドの混合物から形成され、そしてその混合物を主成分とするものであってもよい。ある実施形態では、この混合物のポリオレフィン含有量は、混合物の総質量を基準として、50質量%を超える。ある他の実施形態では、少なくとも1種のポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0046】
本発明のポリマー複合材料のサイジング処理された強化用フィラーは、ポリマー複合材料のような複合材料の強化用に当技術分野において知られているいかなる繊維(連続繊維、ミルドファイバーまたはチョップトファイバーを含む。)、粒子またはそれらの任意の組み合わせを含むいかなるフィラーからも調製することができる。そのような繊維の具体例としては、限定するものではないが、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。そのような繊維の具体例としては、限定するものではないが、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、スチール繊維、炭化珪素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。そのような粒子の具体例としては、限定するものではないが、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカが挙げられる。ある実施形態では、本発明のポリマー複合材料のサイジング処理された強化用フィラーを調製するために使用される繊維は、ガラス繊維または炭素繊維である。これらのガラスおよび炭素繊維は、当技術分野において知られているいかなるクラス、タイプまたはグレードであってもよく、その具体例は上記のとおりである。
【0047】
本発明によるサイジング処理された強化用フィラーのサイジング剤は、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1種を含む。ポリビニルアルコールは、加水分解の程度に基づいて4つのクラス(部分的、中程度、完全および超完全)に分類される。それゆえ、本発明に使用されるポリビニルアルコールまたはエチレン/ビニルアルコールコポリマーは、部分的に加水分解されていてもよいし、中程度に加水分解されていてもよいし、完全に加水分解されていてもよいし、超完全に加水分解されていてもよい。各クラスの中に、様々な粘度のグレードの数がある。商業上知られている銘柄は、クラレのPOVAL(登録商標)およびELVANOL(登録商標)およびセキスイ(Sekisui)のSelvol(登録商標)である。それらはすべてサイジング剤として本発明に使用することができる。部分的に加水分解されたポリビニルアルコールは室温で水溶液に調製するのがより容易であるが、その一方で完全におよび超完全に加水分解されたポリビニルアルコールは、溶解するのに熱水を必要とする。
【0048】
1つの実施形態では、ポリビニルアルコールはシランをグラフトされたポリビニルアルコールを含む。もう1つの実施形態では、エチレン/ビニルアルコールコポリマーはシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む。
【0049】
サイジング産業は非常に小さく、有用な分散液を作っている会社は世界中で一握りにすぎない。従来の分散液はしばしば30~70質量%の水を含み、そのことがそのような分散液を大陸を横切って輸送するのに費用がかかるものにする。対照的に、ポリビニルアルコールは世界中の隅々で大量生産されており、ポリウレタンやポリプロピレン分散体よりも安価である。しかし、これらの分散体と異なり、ポリビニルアルコールは100%の固体として売られている。それゆえ、ポリビニルアルコールは、従来の分散体に比較して輸送するのにかかる費用が安いという長所を持つ。
【0050】
ある実施形態では、サイジング処理された強化用フィラーは、架橋されたサイジング剤を形成するために少なくとも1種のカップリング剤で架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含むサイジング剤をさらに含む。1つの実施形態では、少なくとも1種のカップリング剤は無水物をグラフトされたポリオレフィンであることができ、架橋されたサイジング剤は、無水物をグラフトされたポリオレフィンで架橋されたポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の少なくとも1種を含む。
【0051】
いくつかの用途においては、より明るい色のフィラーで強化された熱可塑性複合材料が非常に望ましい。ポリプロピレン分散体では、ポリプロピレンは無水マレイン酸でグラフトされ、アミンで中和される。ポリウレタン分散体では、窒素は樹脂の主鎖の中にある。この窒素の存在の結果、両方の分散体は生じる複合材料に黄色さを与える。対照的に、ポリビニルアルコールは無色であり、ポリビニルアルコールでサイジング処理された強化用フィラーで強化された熱可塑性複合材料ははるかに低い黄色度指数を有している。
【0052】
ほとんどのポリウレタンおよびポリプロピレン分散体は、陰イオン性であり、7より高いpHを有する。繊維サイジングに有用な他の多くのタイプの分散体は同じ性質を有する。あいにく、ガラス繊維サイジング用のいくつかのシランならびにより強力な潤滑剤および帯電防止剤のいくつかは、サイジング剤混合物が酸性であることを必要とする。対照的に、ポリビニルアルコールは混合物のpHに影響を及ぼさない。これはサイジング剤の配合に完全な自由を提供する。陽イオン潤滑剤はガラス繊維に最良の潤滑性を提供する。サイジング剤の配合において陽イオン潤滑剤を使用することができることは、連続スプール、トウおよびロービングを作る際に非常に重要であり、特に熱可塑性複合材料用途における長繊維コンパウンディングのためのトウに非常に重要である。
【0053】
サイジング用の従来の分散体は危険である。サイジング廃棄物を処分する費用は高い。対照的に、ポリビニルアルコールは危険ではなく、したがって、処分のための費用ははるかに低い。ポリビニルアルコールペレットは政府規制をすべて満足する。したがって、ポリビニルアルコールでサイジング処理された強化用フィラーから作られた複合材料は、政府規制に適合する可能性が高まる。
【0054】
プラスチック強化のための強化用フィラーをサイジング処理するためのサイジング剤配合物は、典型的には次の3つの成分からなる。(1)カップリング剤、(2)被膜形成剤および(3)加工助剤(すなわち潤滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせ)。サイジング剤配合物は、90%以下のカップリング剤、99%以下または90%以下または50~90%の被膜形成剤、および99%以下の添加剤を含むことができる。
【0055】
すべての商品およびエンジニアリングプラスチックは様々な強化用フィラーによって強化することができる。従来の被膜形成剤は、典型的には、有機樹脂の水系分散体として供給される。熱硬化性樹脂系複合材料用には、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル、フェノール樹脂および熱硬化性ポリウレタンが最も一般に使用される樹脂である。ポリイミド、ビスマレイミド(BMI)、ベンゾオキサジンおよびシリコーンのような他の風変わりな樹脂も使用されるが、それらの高コストのために非常に小さな市場占有率を有する。そのような複合材料用の強化用フィラーをサイジング処理するために一般に使用される被膜形成剤としては、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン、ビニルエステル、エポキシ、フェノキシ、不飽和ポリエステル、飽和ポリエステルおよびポリウレタンが挙げられる。熱可塑性樹脂用には、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP))、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)およびポリスチレン(PS)が、樹脂消費の量を支配する。強化熱可塑性複合材料の中でも、ナイロンは量的割合が最も多く、次いで熱可塑性ポリエステルが多い。ナイロン樹脂を強化するための強化用フィラーをサイジング処理するために、慣例的に使用されている被膜形成剤は、ポリウレタン分散体(PUD)、ポリアミド分散体、エポキシ分散体、アクリルおよび無水マレイン酸をグラフトされたエチレンである。熱可塑性ポリエステル樹脂を強化するためのフィラーをサイジング処理するために、慣例的に使用されている被膜形成剤は、エポキシ分散体、ポリウレタン分散体およびポリエステル分散体である。
【0056】
したがって、本発明に使用されるサイジング剤はさらに少なくとも1種の付加的な被膜形成剤を含んでもよい。そのような被膜形成剤の具体例としては、限定するものではないが、ポリプロピレン分散体、ポリウレタン分散体、エポキシ分散体、ポリエステル分散体、ポリ酢酸ビニル分散体、フェノキシ分散体、ナイロン分散体が挙げられる。少なくとも1種の付加的な被膜形成剤はいかなる量でサイジング剤中に存在してもよい。ある実施形態では、少なくとも1種の付加的な被膜形成剤は、本発明のサイジング処理されたフィラーの上に存在するサイジング剤の総質量に対して、50質量%以下の量でサイジング剤中に存在してもよい。
【0057】
ナイロンおよびポリエステルが熱可塑性複合材料の最大の市場占有率を構成するので、ポリウレタンサイジング剤またはエポキシサイジング剤付きのチョップトファイバーが他のどのものよりも多く市場で入手可能である。ガラス繊維およびその他の繊維をサイジング処理するために、シランカップリング剤が繊維のポリプロピレン樹脂への結合を増強するために使用される。それはPUDおよびエポキシ被膜形成剤を補完する。炭素繊維をサイジング処理するためには、被膜形成剤は炭素繊維とポリプロピレン樹脂の間の界面でかなりの量の応力伝達を伴う。炭素繊維の80%以上は熱硬化性樹脂系複合材料用に使用される。これらの繊維はエポキシサイジング剤を含む。したがって、便宜の理由で、ポリプロピレン調合者は、エポキシまたはポリウレタンサイジング剤付き繊維を使用する。
【0058】
ポリエチレンおよびポリプロピレン分散体のサプライヤーは、これらの製品をコーティング用途に向けている。ポリオレフィン強化用繊維のために、これらの分散体は非常に有用であることが分かる。より具体的には、酸をグラフトされたポリエチレンまたはポリプロピレンおよび無水マレイン酸をグラフトされたポリエチレンまたはポリプロピレンは、サイジング剤配合物によりふさわしい。1つのサプライヤーはマイケルマン(Michelman)(オハイオ州シンシナティ)であり、以下のポリオレフィン分散体の大きなポートフォリオを市場に出している。FGLASS(商標)X35、X48、X70およびX90、Michem(登録商標)エマルション11226、28640、29730、91735および93135M、Michem(登録商標)Prime 2960、4983Rおよび5931、Hydrosize(登録商標)PE1-01、PP2-01、PP235、PP2114、PP247、PP943。
【0059】
本発明のサイジング処理された強化用フィラーは、さらに、少なくとも1種のカップリング剤および/または少なくとも1種の加工助剤を含んでもよい。そのようなカップリング剤の具体例としては、限定するものではないが、メタクリル酸クロム(III)(Zaclon有限責任会社からVolan(登録商標)として入手可能)、シランおよびチタン酸塩が挙げられる。そのような加工助剤の具体例としては、限定するものではないが、潤滑剤、湿潤剤、中和剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。ある実施形態では、本発明のサイジング処理された強化用フィラーは、さらに、陽イオン潤滑剤および帯電防止剤を含んでもよい。
【0060】
ポリオレフィン樹脂(特にポリプロピレン)は、強化複合材料の大規模な市場占有率を構築する。ポリプロピレンを使用する利点は、その低価格、低密度および容易な加工である。しかし、ポリオレフィン樹脂は、さらなる反応のための官能性を有していない。そのため、ポリオレフィン樹脂から複合材料を成形する際に、調合者は、ポリオレフィンを強化用繊維に結合するためにカップリング剤を使用する。したがって、本発明のポリマー複合材料は、さらに、ポリオレフィンとカップリング剤の総質量を基準として10質量%以下または1.5~6質量%または1.5~4.5質量%の量で存在する少なくとも1種のカップリング剤を含んでもよい。そのようなカップリング剤としては、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンを挙げることができる。そのようなカップリング剤の具体例としては、限定するものではないが、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレンおよび無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレンが挙げられる。
【0061】
多くのカップリング剤が商業上入手可能である。1つの銘柄はアディバント(Addivant)によって供給されているPolybond(登録商標)である。酸をグラフトされた高密度ポリエチレン(HDPE)の具体例としてはPolybond(登録商標)1009が挙げられる。無水マレイン酸をグラフトされたHDPEの具体例としては、Polybond(登録商標)3009、Polybond(登録商標)3029およびPolybond(登録商標)3039が挙げられる。酸をグラフトされたポリプロピレンの具体例としては、Polybond(登録商標)1001、Polybond(登録商標)1002およびPolybond(登録商標)1103が挙げられる。無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンの具体例としては、Polybond(登録商標)3000、Polybond(登録商標)3002、Polybond(登録商標)3150およびPolybond(登録商標)3200が挙げられる。酸をグラフトされた低低密度ポリエチレン(LLDPE)の具体例としては、Polybond(登録商標)3149が挙げられる。
【0062】
ポリプロピレンを強化するための無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン分散体でサイジング処理された繊維は、ポリウレタンまたはエポキシでサイジング処理された繊維より優れた機械的性質を提供する。繊維サイジング剤としてそのようなポリプロピレン分散体の使用を開示している代表的な米国特許としては、米国特許第4,283,322号、第5,430,076号、第5,470,658号、第6,207,737号、第6,984,699号および第7,732,047号が挙げられ、それらはその全体が参照によってここに組み入れられる。
【0063】
ある実施形態では、上に開示されたポリマー複合材料は、さらに、少なくとも1種のカップリング剤で架橋されたポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤を含む架橋されたサイジング剤でサイジング処理されたフィラーを含む。上に開示されたいかなる適切なカップリング剤も使用することができる。1つの実施形態では、少なくとも1種のカップリング剤は無水物をグラフトされたポリオレフィンであり、架橋されたサイジング剤は無水物をグラフトされたポリオレフィンで架橋されたポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤を含む。
【0064】
ポリビニルアルコールは、紙のサイジングにおいて広く使用され、かつ製織操作のためのラップサイジング剤として広く使用されている。それは高い被膜強度および優れた耐摩耗性を提供する。それはまた、再湿潤性である。それは洗い落とすことができるので、これがラップサイジング剤として使用される理由である。不織布マットでは、ポリビニルアルコールは分散助剤として使用される。それは、繊維上のサイジング剤の中に配合され、そしてまたウェットレイド操作の間に白濁水の中に配合される。
【0065】
良好な初期の機械的性質に加えて、ポリマー複合材料はすべて良好な耐水性を有していなければならない。多くの重大な用途において、これは主要な要件である。水の吸収が、樹脂のバルク状態において、および強化用フィラーと樹脂の間の界面において生じる。界面の結合の耐水性は、複合材料の耐水性の重大な役割を果たす。ガラス繊維で強化されたナイロンは、自動車産業においてラジエーターエンドキャップおよび空気吸込マニホールドで広く使用されている。実際、これは熱可塑性複合材料の単一の最大の用途である。この用途では、その部品は、不凍液と水の熱い混合物と常に接触している。ナイロンは吸湿性である。したがって、ナイロン複合材料の耐水性はもっぱら界面の結合に由来する。
【0066】
ポリビニルアルコールは、水溶性であり、再湿潤性であり、そして耐水性がない。この理由で、それは、強化用フィラー用サイジング処方における永久反応性サイジング成分としては研究されてこなかった。しかし、無水物をグラフトされたポリオレフィンがポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤の存在下でカップリング剤として使用されると、架橋が観察される。いったん架橋されると、ポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーは水に不溶の半結晶構造を形成する。架橋反応スキームは、
図1に図示される。いったん強化用フィラー表面上のポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーサイジング剤がポリオレフィン上の無水物官能基に架橋すると、界面の結合は複合材料を強く堅くする。界面も不溶性になり、複合材料は顕著な耐水性を有する。
【0067】
本発明のサイジング処理された強化用フィラーは、当技術分野に既知の任意の方法によって製造することができる。本発明のサイジング処理された繊維または粒子の製造に関し、1つの実施形態では、ポリビニルアルコールが、溶液の総質量を基準として0.5~30質量%または1~10質量%または2~8質量%の範囲内の濃度で水に溶かされる。この溶液は、繊維形成プロセスの間もしくは後にまたは粒子が形成された後に、繊維または粒子の表面に塗布することができる。繊維の場合には、一旦連続繊維がポリビニルアルコールでコーティングされれば、それはスプール、ボビン、トウまたはロービングに巻かれることができる。連続繊維は湿潤状態で切断され、湿潤状態で使用されることができる。不連続ポリプロピレンマットを形成するスラリープロセスの具体例は、グッド(Good)らの米国特許出願公開第2017/0037549号に開示され、その全体が参照によってここに組み入れられる。このプロセスでは、サイジング処理された湿潤スプールは、切断されて、ポリプロピレン分散体をも含む成形タンクの中に入れられる。繊維と樹脂は、移動スクリーンの上でランダムマットを形成する。水は排水され、マットは乾燥される。サイジング処理されたスプールはまた乾燥され、長繊維熱可塑性樹脂複合材料(「LFT」)に使用されることができる。LFTは、樹脂を含浸した連続スプールをそのすぐ後のパーツへのスタッキングのためにテープ状に巻いてなる一方向テープの形であることができる。LFTはまた、連続のサイジング処理されたスプールを長いストランドに溶融含浸するプロセスであることができる。その後、ストランドは、パーツへの射出成形用に、典型的には長さが1/4″、1/2″または1″の長いペレットにペレット化される。LFTプロセスのもう1つの変形は押し出し機にサイジング処理された連続繊維を供給することである。繊維は押し出し機の中のスクリューによって砕かれ、押出物は長い不連続の繊維を含む。これは、一般にD-LFTプロセスとして知られている。それゆえ、本発明の連続のサイジング処理された繊維は、スプール、トウ、ロービングまたはマットの形であることができる。ある実施形態では、本発明のポリマー複合材料は、本発明の連続のサイジング処理された繊維を含む長繊維熱可塑性複合材料である。
【0068】
乾燥したサイジング処理されたスプールは、短い繊維に切断されて、売却可能の包装に集められることができる。典型的には、切断された長さは、0.04″、0.1″、1/16″、1/8″、3/16″、1/4″、1/2″、1″、2″、4″またはそれ以上である。ポリビニルアルコールもまた、繊維形成工程の間に繊維表面に塗布され、それに続いて、ライン上で短い繊維に切断されることができる。短い繊維は乾燥され、売却可能の製品に包装される。乾燥したサイジング処理されたスプールもまた、ポリビニルアルコール溶液で上塗りされ、湿潤状態で切断されることができる。短い繊維は乾燥され包装される。
【0069】
本発明のポリマー複合材料は、当技術分野に既知の任意の方法によって製造することができる。ある実施形態では、本発明の切断されたサイジング処理された繊維および/またはサイジング処理された粒子は、熱可塑性樹脂と混合され、パーツに射出成形するOEMのために強化コンパウンドに形成されることができる。押出コンパウンディングは、サイジング処理された繊維および/またはサイジング処理された粒子と樹脂とを混合する典型的なプロセスである。サイジング処理された繊維および/またはサイジング処理された粒子と樹脂は、あらかじめ正しい割合に秤量され、混合され、押出機の端の供給ホッパーに供給されることができる。サイジング処理された繊維および/またはサイジング処理された粒子と樹脂は、別々に、正しい割合で押出機に供給されてもよい。樹脂は、押出機(典型的には二軸押出機)のスロートで樹脂ホッパーの中に計量投入され、次の数バレルの中で溶融される。その後、サイジング処理された繊維および/またはサイジング処理された粒子は、スタッフィングサイドフィーダーを通して溶融した樹脂の中に計量投入される。その後、混合コンパウンドは、ストランドダイを通して押し出され、ペレットにペレット化される。あるいは、連続のトウまたはロービングを押出機の下流に供給することができる。
【0070】
本発明の1つの実施形態では、ポリビニルアルコールサイジング剤は炭素繊維の上に塗布される。固体のポリビニルアルコールペレットは水(水道水でもよいし、蒸留水でもよいし、脱イオン水でもよい。)に加えられる。溶液はポリビニルアルコールを溶かすために一晩撹拌される。溶液の固形分は、溶液の総質量を基準として、0.1~30%、1~15%または2~8質量%の範囲内にあることができる。サイジング処理されていない連続炭素繊維トウは、ポリビニルアルコール溶液を含むサイジング浴の中を通り、続いて、過剰の溶液を絞り出すために1対のパッディングローラーの中を通る。その後、湿潤トウは短い繊維に切断される。切断された長さは、1/16″~2″または1/8″~1″の範囲内にあってもよいし、または1/4″であってもよい。その後、切断されたサイジング処理された炭素繊維は、212~550°F、225~450°Fまたは250~400°Fまでの範囲内の温度で通風オーブンの中で乾燥される。乾燥した切断されたサイジング処理された炭素繊維の含水量は、繊維の総質量を基準として、1質量%未満または0.2質量%未満であるべきである。ぬれたまたは乾燥した切断されたサイジング処理された炭素繊維のサイジング剤含有量は、0.1~20質量%、0.5~10質量%または1~6質量%の範囲内であることができる。
【0071】
本発明のポリビニルアルコールでサイジング処理された短い炭素繊維は、エンジニアリングプラスチックに配合することができる。ポリプロピレン・コンパウンディングの場合には、リヨンデルベーセル(LyondellBasell)から入手可能なPro-fax 6523のようなポリプロピレン樹脂が、アディバント(Addivant)から入手可能なPolybond(登録商標)3200、3100のような無水物をグラフトされたポリプロピレンと様々な濃度で混合される。無水物をグラフトされたポリプロピレンは、ポリプロピレンと無水物をグラフトされたポリプロピレンとを含むコンパウンディング組成物の総質量を基準として、6質量%以下または1.5~6質量%または1.5~4.5質量%の量で存在することができる。コンパウンディングは、コペリオン(Coperion)ZSK 26mm二軸押出機で行われる。試験片は、JSWの85トンの電気射出成形機から成形される。
【0072】
本発明のさらにもう1つの側面では、本開示は、本発明の新規なポリマー複合材料から成形された成形品のような物品ならびにそのような物品を含む製品を提供する。そのような物品としては、短繊維コンパウンド、一方向強化熱可塑性テープ、ランダム化連続マット、長いチョップトマット、ペレット化された長いコンパウンドおよび押し出された長いロッグが挙げられる。1つの実施形態では、上に開示されたような物品を含む部品であって、自動車、器具および電子アセンブリーの1つ以上において使用するために構成されている部品がある。そのような物品の具体例としては、限定するものではないが、自動車ドアライナー、フロントエンドモジュール、空気吸込マニホールド、バンパービーム、モーターバイクブーツ、自動車冷却ファンブレード、エアコンファンブレード、ポンプハウジング、自動車ボディパネル、ダッシュボードキャリヤー、多重翼インペラー、リフトゲート、トラックライナー、自動のバーティカルパネル、計器盤キャリヤー、ドアパネル構造、座席構造、アンダーフードコンポーネント、ガソリンドア、ミラーハウジング、フロントエンドキャリヤー、ダッシュボードキャリヤー、ドアベースプレート、アンダーボディカバー、フロントアンダートレイ、洗濯槽、エアバッグハウジング、ビジネスマシン、エレクトロニクスパッケージングおよびハードディスクドライブが挙げられる。
【0073】
本発明のもう1つの側面では、上に開示した実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラーを形成するために、ポリビニルアルコール、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーの少なくとも1つ、シランをグラフトされたポリビニルアルコールおよびシランをグラフトされたエチレン/ビニルアルコールコポリマーを含むサイジング剤を、強化用フィラーの少なくとも一部と接触させる工程を含むポリマー複合材料を作る方法がある。その方法はまた、サイジング処理された強化用フィラーを、熱硬化性(コ)ポリマー、熱可塑性(コ)ポリマー、ならびにそれらのアロイおよびブレンドを含むポリマーと混合する工程を含む。
【0074】
もう1つの実施形態では、その方法は、さらに酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のカップリング剤と混合する工程を含み、その工程では、少なくとも1種のカップリング剤はサイジング剤と架橋し、それによって、サイジング処理された強化用フィラーの少なくとも一部の上に配置された架橋されたサイジング剤を形成する。
【0075】
さらにもう1つの実施形態では、その方法は、サイジング処理された強化用フィラーをポリマーと混合する工程の前に、10質量%以下のサイジング剤をポリマーに添加する工程をさらに含む。
【0076】
より具体的には、次のリストが発明の特定の実施形態を含む。
1.フィラーとサイジング剤とを含むサイジング処理された強化用フィラーであって、サイジング剤がポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む、サイジング処理された強化用フィラー。
2.フィラーが、繊維、ミルドファイバー、粒子またはそれらの任意の組み合わせの形をしている、実施形態1のサイジング処理された強化用フィラー。
3.フィラーが炭素繊維および無機繊維からなる群から選ばれる繊維である、実施形態1のサイジング処理された強化用フィラー。
4.フィラーが、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維および炭化ケイ素繊維からなる群から選ばれる繊維である、実施形態1のサイジング処理された強化用フィラー。
5.繊維がガラス繊維である、実施形態4のサイジング処理された強化用フィラー。
6.ガラス繊維がC、D、E、修正E、RおよびSからなる群から選ばれるグレードを有するガラスから作られたものである、実施形態5のサイジング処理された強化用フィラー。
7.繊維が炭素繊維である、実施形態4のサイジング処理された強化用フィラー。
8.炭素繊維が、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維および超高弾性率炭素繊維からなる群から選ばれる、実施形態7のサイジング処理された強化用フィラー。
9.フィラーが顔料および固体添加剤からなる群から選ばれる粒子である、実施形態2のサイジング処理された強化用フィラー。
10.粒子が、タルク、雲母、クレー、ナノクレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選ばれる、実施形態9のサイジング処理された強化用フィラー。
11.サイジング剤がポリビニルアルコールを含む、先の実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラー。
12.ポリビニルアルコールが、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、中程度に加水分解されたポリビニルアルコール、完全に加水分解されたポリビニルアルコールまたは超完全に加水分解されたポリビニルアルコールである、実施形態11のサイジング処理された強化用フィラー。
13.サイジング剤が少なくとも1種の付加的な被膜形成剤をさらに含む、実施形態11のサイジング処理された強化用フィラー。
14.少なくとも1種の付加的な被膜形成剤が、ポリプロピレン分散体、ポリウレタン分散体、エポキシ分散体、ポリエステル分散体、ポリ酢酸ビニル分散体、フェノキシ溶液、ナイロン分散体およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態13のサイジング処理された強化用フィラー。
15.少なくとも1種の付加的な被膜形成剤が、サイジング剤の総質量を基準として、50質量%以下の量でサイジング剤中に存在する、実施形態13または14のサイジング処理された強化用フィラー。
16.フィラーがガラス繊維である、実施形態11のサイジング処理された強化用フィラー。
17.フィラーが炭素繊維である、実施形態11のサイジング処理された強化用フィラー。
18.さらに少なくとも1種のカップリング剤および/または少なくとも1種の加工助剤を含む先の実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラー。
19.少なくとも1種のカップリング剤が、Volan(登録商標)、シラン、チタン酸塩およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、少なくとも1種の加工助剤が、潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態18のサイジング処理された強化用フィラー。
20.さらに陽イオン潤滑剤および帯電防止剤を含む実施形態18または19のサイジング処理された強化用フィラー。
21.サイジング処理された強化用フィラーが、スプール、トウ、ロービング、織物またはマットの形をした連続繊維である、先の実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラー。
22.サイジング処理された強化用フィラーがチョップトファイバーである、先の実施形態のいずれか1つのサイジング処理された強化用フィラー。
23.チョップトファイバーがぬれていて、ポリビニルアルコールが0.1~20質量%の範囲内の量で存在し、チョップトファイバーの長さが0.1~6.0インチの範囲内にある、実施形態22のサイジング処理された強化用フィラー。
24.チョップトファイバーが乾燥していて、ポリビニルアルコールが0.1~20質量%の範囲内の量で存在し、チョップトファイバーの長さが0.1~6.0インチの範囲内にある、実施形態22のサイジング処理された強化用フィラー。
25.先の実施形態のいずれか1つの少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーを含むポリマー複合材料であって、少なくとも1種のサイジング処理された強化用フィラーがフィラーおよびサイジング剤を含み、サイジング剤がポリビニルアルコールおよび/またはエチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む、ポリマー複合材料。
26.フィラーが繊維または粒子の形をしている、実施形態25のポリマー複合材料。
27.ポリマー複合材料が熱硬化性(コ)ポリマーおよび/または熱可塑性(コ)ポリマーならびにそれらのアロイおよびブレンドを含む、実施形態25のポリマー複合材料。
28.熱硬化性(コ)ポリマーが、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化性ポリウレタン、ポリイミド、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂ならびにそれらの任意の組み合わせ、コポリマーおよび/または誘導体からなる群から選ばれる、実施形態25~27のいずれかのポリマー複合材料。
29.熱可塑性(コ)ポリマーが、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、スチレン無水マレイン酸、ポリオキシメチレン(アセタール)、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、液晶ポリマー、ならびにそれらの任意の組み合わせ、アロイ、ブレンド、コポリマーおよび/または誘導体からなる群から選ばれる、実施形態28または29のポリマー複合材料。
30.熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレンならびにそれらの任意の誘導体、コポリマーおよび/または組み合わせからなる群から選ばれるポリオレフィンである、実施形態25、26、27または29のいずれか1つのポリマー複合材料。
31.熱可塑性ポリマーが少なくとも1種のポリオレフィンと少なくとも1種のポリアミドの混合物である、実施形態25、26、27または29のいずれか1つのポリマー複合材料。
32.混合物のポリオレフィン含有量が混合物の総質量を基準として50質量%よりも多い、実施形態31のポリマー複合材料。
33.少なくとも1種のポリオレフィンがポリプロピレンである、実施形態32のポリマー複合材料。
34.フィラーが、無機繊維、有機繊維、天然繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる繊維である、実施形態25または26のポリマー複合材料。
35.少なくとも1種の繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、玄武岩繊維、シリカ繊維、石英繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、大麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態34のポリマー複合材料。
36.フィラーが顔料および固体添加剤からなる群から選ばれる粒子である、実施形態25~35のいずれか1つのポリマー複合材料。
37.粒子が、タルク、雲母、クレー、ナノクレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタンおよびシリカからなる群から選ばれる、実施形態36のポリマー複合材料。
38.サイジング剤がポリビニルアルコールを含む、実施形態25~37のいずれか1つのポリマー複合材料。
39.ポリビニルアルコールが、部分的に加水分解されたポリビニルアルコール、中程度に加水分解されたポリビニルアルコール、完全に加水分解されたポリビニルアルコールまたは超完全に加水分解されたポリビニルアルコールである、実施形態38のポリマー複合材料。
40.フィラーがガラス繊維である、実施形態44のポリマー複合材料。
41.ガラス繊維が、C、D、E、修正E、RおよびSからなる群から選ばれるグレードを有するガラスから作られたものである、実施形態49のポリマー複合材料。
42.フィラーが炭素繊維である、実施形態28~48のいずれか1つのポリマー複合材料。
43.炭素繊維が、低弾性率炭素繊維、標準弾性率炭素繊維、中弾性率炭素繊維、高弾性率炭素繊維および超高弾性率炭素繊維からなる群から選ばれる、実施形態51のポリマー複合材料。
44.サイジング剤がさらに少なくとも1種の付加的な被膜形成剤を含む、実施形態25~43のいずれか1つのポリマー複合材料。
45.少なくとも1種の付加的な被膜形成剤が、ポリプロピレン分散体、ポリウレタン分散体、エポキシ分散体、ポリエステル分散体、ポリ酢酸ビニル分散体、フェノキシ溶液、ナイロン分散体およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態44のポリマー複合材料。
46.少なくとも1種の付加的な被膜形成剤が、サイジング剤の総質量を基準として、50質量%以下の量でサイジング剤中に存在する、実施形態44または45のポリマー複合材料。
47.少なくとも1種のカップリング剤および/または少なくとも1種の加工助剤をさらに含む実施形態25~46のいずれか1つのポリマー複合材料。
48.少なくとも1種のカップリング剤がVolan(登録商標)、シラン、チタン酸塩およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれ、少なくとも1種の加工助剤が潤滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、核剤、架橋剤およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態56のポリマー複合材料。
49.少なくとも1種の陽イオン潤滑剤および少なくとも1種の帯電防止剤をさらに含む実施形態25~48のいずれか1つのポリマー複合材料。
50.フィラーが、スプール、トウ、ロービング、織物またはマットの形をしている連続繊維である、実施形態25~49のいずれか1つのポリマー複合材料。
51.フィラーがロービングの形をしている連続繊維であり、複合材料が長繊維熱可塑性複合材料である、実施形態28~58のいずれか1つのポリマー複合材料。
52.フィラーがチョップトファイバーである、実施形態25~51のいずれか1つのポリマー複合材料。
53.チョップトファイバーの長さが0.1~4.0インチの範囲内にある、実施形態52のポリマー複合材料。
54.チョップトファイバーの長さが0.1~2.0インチの範囲内にある、実施形態52のポリマー複合材料。
55.ポリマー複合材料中のサイジング処理された強化用フィラーの含有量が、ポリマー複合材料の総質量を基準として1~80質量%の範囲内にある、実施形態25~54のいずれか1つのポリマー複合材料。
56.ポリマー複合材料がさらに少なくとも1種のカップリング剤を含む、実施形態25~55のいずれか1つのポリマー複合材料。
57.少なくとも1種のカップリング剤が、酸、アルデヒド、酸をグラフトされたポリオレフィンおよび無水物をグラフトされたポリオレフィンからなる群から選ばれる、実施形態56のポリマー複合材料。
58.少なくとも1種のカップリング剤が、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン、無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態56のポリマー複合材料。
59.実施形態25~57のいずれか1つのポリマー複合材料を含む物品。
60.物品が、一方向強化熱可塑性テープ、ランダム化連続マット、長いチョップトマット、ペレット化された長いコンパウンドおよび押し出された長いロッグからなる群から選ばれる、請求項59の物品。
61.物品が、自動車部品、器具部品および電子部品から選ばれる、実施形態60の物品。
62.物品が、自動車ドアライナー、フロントエンドモジュール、空気吸込マニホールド、バンパービーム、モーターバイクブーツ、自動車冷却ファンブレード、エアコンファンブレード、ポンプハウジング、自動車ボディパネル、ダッシュボードキャリヤー、多重翼インペラー、リフトゲート、トラックライナー、自動車バーティカルパネル、計器盤キャリヤー、ドアパネル構造、座席構造、アンダーフードコンポーネント、ガソリンドア、ミラーハウジング、フロントエンドキャリヤー、ダッシュボードキャリヤー、ドアベースプレート、アンダーボディカバー、フロントアンダートレイ、洗濯槽、エアバッグハウジング、ビジネスマシン、エレクトロニックパッケージングおよびハードディスクドライブからなる群から選ばれる、実施形態60の物品。
63.熱可塑性ポリマーがポリプロピレンであり、少なくとも1種のカップリング剤が、(ポリ)アクリル酸、アミド酸、フマル酸、ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、マレイン酸、グルタルアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アクリル酸をグラフトされたポリプロピレン、無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレン、イタコン酸無水物をグラフトされたポリプロピレン、無水コハク酸をグラフトされたポリプロピレンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選ばれる、実施形態56のポリマー複合材料。
64.少なくとも1種のカップリング剤が無水マレイン酸をグラフトされたポリプロピレンである、実施形態63のポリマー複合材料。
【0077】
次の実施例が好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例において開示される技術は、ここに記載された製品、組成物および方法の実施においてよく機能することが発明者によって発見された技術を表わし、したがってその実施のための好ましい形態を構成すると考えることができることが当業者によって評価されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、多くの変更が、開示された具体的な実施形態において行なうことができ、かつ依然として開示の精神および範囲から逸脱せずに、同様なまたは類似の結果を得ることができることを認識するべきである。
【実施例】
【0078】
次の実施例は、PVOHでサイジング処理された繊維で強化された様々な複合材料の機械的性質に対する影響と従来のサイジング処理された繊維で強化されたそれとを比較する。繊維含有率は、すべて、複合材料の総質量を基準として30質量%である。
【0079】
使用された原材料
【0080】
ホモポリマーポリプロピレン(Pro-fax(登録商標)6523)はリヨンデルバセル(Lyondellbasell)から入手した。無水マレイン酸変性ポリプロピレンホモポリマー(例えばPolybond(登録商標)3200:2%の無水物がグラフトされたポリプロピレン;Polybond(登録商標)3150:1.5%の無水物がグラフトされたポリプロピレン)はアディバント(Addivant)から入手した。様々なグレードのポリビニルアルコール(PVOH):POVAL(登録商標)3-85(85%加水分解PVOH)、POVAL(登録商標)4-88(88%加水分解PVOH)およびPOVAL(登録商標)5-98(98%加水分解PVOH)はクラレから入手した。POVAL(登録商標)3-85はPOVAL(登録商標)4-88よりわずかに低い溶液粘度を有する。スチレン無水マレイン酸(Xiran SZ15170)はポリスコープ(Polyscope)から入手した。耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)はチェースプラスチックス(Chase Plastics)から入手した。ナイロン66(Zytel(登録商標)101)はデュポン(DuPont)から入手し、ナイロン6(Ultramid 8202)はビーエーエスエフ(BASF)から入手した。
【0081】
PVOHでサイジング処理された繊維で強化された複合材料または従来のサイジング処理された繊維で強化された複合材料を作る方法
【0082】
サイジング処理されていない炭素繊維トウをサイジング剤を含むサイジング剤組成物に浸漬することにより、サイジング処理されていない炭素繊維トウをポリビニルアルコール(PVOH)または従来のサイジング剤(ポリプロピレン、エポキシまたはポリウレタン分散体)のいずれかでサイジング処理した。サイジング剤(PVOH、PP、エポキシまたはウレタン)は、サイジング剤組成物の総質量を基準として、水の中に4~11%の量で存在した。サイジング処理されたトウは、その後、サイジング処理された連続トウを作るために垂直の塔の中で乾燥した、または切断した後、オーブンの中で乾燥することができる。以下に示す実施例においては、サイジング処理された炭素繊維は切断して乾燥した。
【0083】
熱可塑性複合材料はCoperion 27mm二軸押出機を使用して調製した。押出機は11個のゾーンを有する。熱可塑性樹脂(ポリプロピレン、ナイロン6、ナイロン66、スチレン無水マレイン酸、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))または熱可塑性樹脂の混合物(ポリプロピレンとナイロン6またはナイロン66;スチレン無水マレイン酸と耐衝撃性ポリスチレン(HIPS))を、ゾーン1のホッパーに供給した。サイジング処理された炭素繊維は、ゾーン6において管理された比率で樹脂に計量投入した。押し出されたストランドを、射出成形用にペレット化し乾燥した。射出成形は85トンJSW(日本鉄鋼所)全電気的機械で行い、ISO(国際標準化機構)引張試験片(全長:170mm、ドッグボーン領域:8mm長、10mm幅、および厚さ:4mm)を得た。
【0084】
引張強さ、引張弾性率および破断時伸びについてはASTM法D638を使用して、曲げ強さおよび曲げ弾性率についてはASTM D790を使用して、そしてアイゾット衝撃強さについてはASTM D256を使用して、引張試験片の機械的性質を試験した。
【0085】
例(対照)1-従来のサイジング剤(ポリプロピレン、エポキシまたはウレタン分散体)でサイジング処理された炭素繊維またはガラス繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の機械的性質の比較
【0086】
エポキシおよびポリウレタン分散体が熱可塑性複合材料を強化するための繊維をサイジング処理するために使用されている2つの最も広く使用されている被膜形成剤であるので、これらの分散体でサイジング処理された炭素繊維およびガラス繊維を含むポリプロピレン系複合材料のそれぞれの機械的性質を、ポリプロピレン分散体でサイジング処理された炭素繊維およびガラス繊維のそれと比較する。表1および表2に示されるように、ポリプロピレン分散体でサイジング処理された炭素繊維またはガラス繊維で強化されたポリプロピレン複合材料は、エポキシまたはウレタン分散体でサイジング処理された炭素繊維またはガラス繊維で強化されたものと比較して、引張強さ、引張弾性率、引張伸び、曲げ強さ、曲げ弾性率ならびにノッチ付きおよびノッチなしアイゾット衝撃に関して優れた特性を示す。特に、引張強さ、曲げ強さおよびノッチなし衝撃は、ポリプロピレン系サイジング剤が優れており、ポリプロピレンマトリックス樹脂とポリプロピレンサイジング剤の優れた接着および相容性を示している。
【0087】
【0088】
【0089】
実施例2-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の機械的性質とポリプロピレンでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の機械的性質との比較
【0090】
前に述べたように、ポリプロピレン分散体は繊維生産者の間でポリプロピレン強化に使用される繊維のサイジング処理に選択される現行のサイジング剤である。しかし、表3に示されるように、ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料は、最先端技術のポリプロピレンサイジング剤でサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料を超える優れた機械的性質を示す。引張強さおよび曲げ強さの改善も観察されたが、観察された改善は引張伸びおよび衝撃強さに関して非常に著しい。ポリプロピレン複合材料は、少なくとも10%の引張強さおよび曲げ強さの増加を示したが、驚いたことに、炭素繊維がポリプロピレンでサイジング処理された場合と比較して、炭素繊維がPVAでサイジング処理された場合は、200%を超える衝撃強さの増加を示した。
【0091】
【0092】
実施例3-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の機械的性質に及ぼすポリビニルアルコールの加水分解の程度の影響の測定
【0093】
実施例2においては、クラレからPOVAL(登録商標)4-88として入手可能なポリビニルアルコールが使用され、結果は表3に要約される。しかし、例えばグレードPOVAL(登録商標)3-85およびPOVAL(登録商標)5-98のような、いかなる他の適切なグレードのポリビニルアルコールも使用することができる。表4は、POVAL(登録商標)3-85およびPOVAL(登録商標)5-98を使用したポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の結果を要約し、これらのグレードのポリビニルアルコールがPOVAL(登録商標)4-88と同様の結果をもたらすことを示す。数字「88」は、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基の88%が加水分解されていることを意味する。(もしあれば)機械的性質に及ぼすPVOHの加水分解の影響を決定するために、他の部分的におよび完全に加水分解されたポリビニルアルコール(POVAL(登録商標)3-85およびPOVAL(登録商標)5-98)も試験した。POVAL(登録商標)3-85は、85%加水分解されており、POVAL(登録商標)4-88よりわずかに低い溶液粘度を有する。POVAL(登録商標)5-98は98%加水分解されている。POVAL(登録商標)3-85およびPOVAL(登録商標)5-98は両方とも水溶液にされ、チョップトファイバーをサイジング処理するために使用された。表4に示されるように、強化用炭素繊維をサイジング処理するためのポリビニルアルコールの使用は、再び、ポリプロピレン分散体で強化された炭素繊維で強化されたものより優れた機械的性質を示すポリプロピレン複合材料をもたらす。ポリビニルアルコールの加水分解の程度がポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたそれらの複合材料のそれぞれの機械的性質に軽微な影響を及ぼすこともまた観察された。
【0094】
【0095】
実施例4-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の機械的性質に及ぼすポリビニルアルコール無水マレイン酸部分間の架橋の影響
【0096】
他のサイジング剤を超えるポリビニルアルコールサイジング剤の使用によって観察された改善は、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基とPolybond(登録商標)中の無水物官能基との架橋の結果である。Polybond(登録商標)には、樹脂マトリックス中に無水物官能基が存在する。表5に示されるように、Polybond(登録商標)を含むポリビニルアルコールでサイジング処理された繊維で強化されたポリプロピレン複合材料は、ポリプロピレンでサイジング処理された繊維で強化されたポリプロピレン複合材料より強い。表5はPolybond(登録商標)が1.5~6質量%の範囲内の量でポリプロピレン樹脂中に存在することができることを示すが、ポリプロピレン樹脂中の任意の適切な量のPolybond(登録商標)を使用することができる。表5において、4.5%のPolybond(登録商標)を含むPVOHでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料が、6%のPolybond(登録商標)を含むPVOHでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料と類似した機械的性質を有することは注目すべきである。さらに、Polybond(登録商標)は高価なので、Polybond(登録商標)の量を4.5%から6%に増加させることは、費用対効果分析にまさる追加の意義ある利点を生じなかった。従って、PP樹脂中のPolybond(登録商標)の最適の濃度は6%未満または1.5%~4.5%であることができる。
【0097】
【0098】
実施例5-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の引張強さ、弾性率および伸びの熱水安定性
【0099】
分散体中のポリプロピレン樹脂は、無水マレイン酸のグラフト度が非常に低い。したがって、繊維表面との界面結合は全く最適ではない。サイジング処理において被膜形成剤としてポリビニルアルコールを用いた場合は、繊維の表面はヒドロキシル基で覆われる。その結果、Polybond(登録商標)中の無水物官能基はすべて、ポリビニルアルコールのヒドロキシル基と完全に反応し、より強い界面結合をもたらす。これは、複合材料によって示された優れた耐水性に反映されている。この実験では、多価アルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン系複合材料の引張試験片は、蒸留水の水浴に浸され、4週間の間90℃に保たれた。
【0100】
複合材料は、熱可塑性であろうが熱硬化性であろうが、すべて熱水中で最初の数日後に引張強さを失う。しかし、表6に示されるように、ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維30%で強化されたポリプロピレン複合材料は、熱水の中に2週間浸漬した後も最初の引張強さの100%を保持する。
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
実施例6-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン複合材料の衝撃強さの熱水安定性
【0105】
衝撃試験片は蒸留水の水浴の中に浸し、4週間90℃に保持した。エージングの後、改善された衝撃強さ結果は、上に例証された改善された引張強さを確認した。表9に示されるように、ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン系複合材料は、ポリプロピレンでサイジング処理された炭素繊維で強化されたポリプロピレン系複合材料と比較して、優れた耐水性を示す。
【0106】
【0107】
実施例7-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維で強化されたナイロン66およびナイロン6複合材料の機械的性質とポリウレタンでサイジング処理された炭素繊維で強化されたナイロン66およびナイロン6複合材料の機械的性質との比較
【0108】
PVOHでサイジング処理された炭素繊維は、あらゆるエンジニアリング熱可塑性樹脂に有用である。その高い強さ、靭性および耐熱性のために、ナイロン(すなわちPA、ポリアミド)は熱可塑性複合材料の最大の市場占有率を有する。それは強化熱可塑性樹脂において特に重要である。表10は、30質量%の炭素繊維で強化されたナイロン66およびナイロン6の機械的性質を要約する。樹脂マトリックスは、ナイロン66についてはデュポン(DuPont)Zytel(登録商標)101であり、ナイロン6についてはビーエーエスエフ(BASF)Ultramid(登録商標)8202である。データは、ポリビニルアルコールサイジング剤が、ナイロン用強化繊維のための最も一般的なサイジング剤である、より高価なポリウレタン分散体(PUD)サイジング剤と同等に機能することを実証する。
【0109】
【0110】
実施例8-ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維30%で強化されたナイロン、ポリプロピレンおよびナイロン/ポリプロピレンアロイ複合材料の機械的性質とポリウレタンまたはポリプロピレンでサイジング処理された炭素繊維30%で強化されたナイロン、ポリプロピレンおよびナイロン/ポリプロピレンアロイ複合材料の機械的性質との比較
【0111】
50年以上の間、OEMは、コストおよび質量を低減するためにポリプロピレン(PP)をナイロン66(PA)と混合することを要望してきた。ポリウレタン分散体(PUD)は、ナイロン用繊維のためのサイジング剤として一般に使用されている。しかし、PUDでサイジング処理された繊維は、ポリプロピレンを強化するために使用されたとき、非常に貧弱な特性を示す。一方、ポリプロピレン分散体はPP強化用繊維のための大きなサイジング剤であるが、PPでサイジング処理された繊維は、ナイロンを強化するために使用されたときはうまく機能しない。今まで、PA/PPアロイを強化するために使用される繊維のための最適なサイジング剤は見つかっていない。表11に示されるように、ポリビニルアルコール(PVOH)サイジング剤はすばらしいバランスを提供する。
【0112】
【0113】
ポリビニルアルコールでサイジング処理された炭素繊維30%がPA(ナイロン66)100%、ポリプロピレン(PP)100%およびPA50%/PP50%アロイの機械的性質(特に引張強さおよびノッチなし衝撃強さ)に及ぼす影響とPUDまたはPPでサイジング処理された炭素繊維30%を使用したものとの比較を
図2および
図3に示す。これらのグラフは、アロイのPP含有量が50%を超える場合、PA/PPアロイの機械的性質に及ぼすPVOHサイジング剤の有益な影響がPUDまたはPPサイジング剤のそれより優れていることを実証している。
【0114】
実施例9
ガラス繊維で強化されたスチレン無水マレイン酸(SMA)は、自動車産業に広く使用されている。最も大きな用途の1つは計器盤用である。エポキシ分散体はガラス繊維のサイジングのための最良の選択であった。繊維強化された純粋なSMAは、脆すぎて、加工することができない。コンパウンドでは、ポリスコープ(Polyscope)からのSMA(Xiran SZ15170)は投入樹脂として30%のHIPSと混合される。次表は、SMA複合材料における炭素繊維上のPVOHおよびエポキシサイジング剤の比較を示す。
【0115】
【0116】
表12に示されるように、PVOHでサイジング処理された炭素繊維30%で強化されたSMA複合材料は、エポキシでサイジング処理された炭素繊維で強化されたSMA複合材料と比較して、引張強さ、曲げ強さおよび衝撃強さに優れる。
【0117】
実施例10
鉱物充填ポリオレフィンは、繊維強化ポリオレフィンよりも、コストが低いので、生産量が多い。炭酸カルシウムまたはタルクのような鉱物は粉末である。それはコンパウンドの間、非常にほこりまみれである。加工を容易にするために、粉末を、バインダーまたはサイジング剤と共に、固体ペレットにすることが望ましい。ポリプロピレン分散体はサイジング剤の自然な選択である。炭酸カルシウム(Hubercarb Q3)はフーバー・エンジニアリング・マテリアルズ(Huber Engineering Materials)から入手される。研究所において、Hubercarb Q3から、2つの試料を調製した。1つはポリプロピレン分散体でコーティングし、もう1つはポリビニルアルコール溶液でコーティングする。両方とも通風オーブンの中で125℃で乾燥する。これらの2つの実験試料および未処理のHubercarb Q3を20質量%の含有量でポリプロピレンに混合する。
【0118】
【0119】
ポリオレフィンに鉱物を追加する目的は、耐熱性を改善し、かつ複合材料の剛性を増加させることである。PVOHサイジング剤は、複合材料の剛性を表わす最も高い曲げ弾性率を与える。成型された試験片は、レオメーターによってそれらの捩り弾性率についても試験される。
図4は30℃から180℃までの温度範囲全体の走査である。
図5は30℃と100℃の間の拡大グラフである。これから、PVOHサイジング剤が鉱物充填ポリオレフィン複合材料に優れた剛性改善を提供することが明確に示される。
【0120】
実施例11-熱硬化性エポキシ複合材料におけるPVOHおよびエポキシ分散体でサイジング処理された炭素繊維トウ
【0121】
連続炭素繊維トウを、最初に、PVOH分散体またはエポキシ分散体でサイジング処理した。単一のトウをそれぞれ液体エポキシ-無水物浴に浸漬し、平らなパネルの上に巻き取った。その後、パネルをオーブンの中で80℃で4時間硬化した。硬化後、パネルを、ASTM法D2344に従って、層間剪断強さ(ILSS)の測定用に数片に切断した。ILSSは、強化用繊維と樹脂マトリックスの間の界面強さを測定するために、複合材料産業において最も広く用いられている試験方法である。
【0122】
【0123】
表14に要約されるように、試験結果はエポキシ-無水物熱硬化性複合材料において伝統的なエポキシサイジング処理を超えるPVOHサイジング処理の利点を確認する。熱硬化性エポキシ複合材料では、エポキシのための最も一般的な硬化剤はアミンまたは無水物である。ポリビニルアルコール(PVOH)は無水物を架橋することができるので、PVOHサイジング処理は次には硬化したエポキシ複合材料の架橋密度を増強し、それによってILSSを増強することができる。
【0124】
本発明の範囲または精神から逸脱せずに、本発明の実施において、様々な修正および変更をすることができることは当業者に明白であろう。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書および実施の考察から当業者にとって明白であろう。明細書および実施例は例示にすぎないと見なされ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されると意図される。