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特許7395481低い焼付け温度で繊維複合パネルをコーティングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】低い焼付け温度で繊維複合パネルをコーティングする方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20231204BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20231204BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231204BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20231204BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/00 D
B05D7/00 K
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020540263
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019051284
(87)【国際公開番号】W WO2019141823
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】18152318.4
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ドナルド エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ウェード、コリン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/125705(WO,A1)
【文献】特開2012-096213(JP,A)
【文献】特開2004-351389(JP,A)
【文献】特開2007-084801(JP,A)
【文献】特開2009-173861(JP,A)
【文献】特表2017-513963(JP,A)
【文献】特開平01-030680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D、B05D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i. 繊維強化複合材料上にプライマー組成物を施与してプライマー層を形成し、プライマー層を少なくとも部分的に乾燥させる工程
ii. 前記プライマー層上にベースコート組成物を施与してベースコート層を形成し、前記ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程、
iii.(a)前記ベースコート層上に第1のクリアコート組成物1を施与して第1のクリアコート層1を形成し、工程i.、ii.で形成された層および前記第1のクリアコート層を少なくとも80℃の温度で硬化させ、その後このように硬化させた層上に第2のクリアコート組成物2を施与してクリアコート層2を形成し、クリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させる工程、または
(b)前記ベースコート層上に前記クリアコート組成物2を直接施与して単一のクリアコート層2を形成し、前記単一のクリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させた後、プライマー、ベースコート、クリアコート層2を少なくとも80℃の温度で硬化させる工程
を含み、
クリアコート組成物2がマスターバッチおよび硬化剤を含み、前記マスターバッチがポリマーポリオールを含み、前記硬化剤がイソシアナト基含有種を含み、
前記ポリマーポリオールが、ポリ(メタ)アクリレートポリオールからなる群から選択され、および前記イソシアナト基含有種が、ジイソシアネートのビウレット二量体とウレトジオン二量体とを含むジイソシアネートと、イソシアヌレート三量体およびジイソシアネートのイミノオキサジアジンジオン三量体を含むポリイソシアネートとからなる群から選択される、繊維強化複合材料上に多層コーティングを製造するための方法。
【請求項2】
前記繊維強化複合材料が、ポリマーマトリックスおよび繊維を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プライマー組成物が1液型コーティング組成物または2液型コーティング組成物である、および/または前記ベースコート組成物が1液型コーティング組成物である、および/またはクリアコート組成物1が1液型コーティング組成物または2液型コーティング組成物である、および/またはクリアコート組成物2が2液型コーティング組成物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プライマー組成物が溶媒系または水系コーティング組成物であり、前記クリアコート組成物1および2が溶媒系コーティング組成物であり、および/または前記ベースコート組成物が溶媒系または水系コーティング組成物であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程iii.(a)におけるクリアコート層1の硬化後に、研摩工程などの機械的粗化工程が要求されないことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
該方法の如何なる工程においてもまたは後でも、研摩工程などの機械的粗化工程が要求されないことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程iii.(a)に続き、第2の硬化を少なくとも80℃の温度で10~40分間行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程iii.(b)で、前記単一のクリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させた後、かつプライマー、ベースコート、クリアコート層2を少なくとも80℃の温度で硬化させる前に、コーティングした繊維強化複合材料を23℃からクリアコート層2の硬化温度未満までの範囲の温度に冷却する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
クリアコート層2を30~55℃の範囲の温度で15~35分間、または35~55℃の範囲の温度で20~30分間硬化させることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プライマー組成物が、水系2液型組成物または溶媒系1液型組成物であり、
前記ベースコート組成物が、水系または溶媒系1液型組成物であり、および
前記クリアコート組成物1および2が、溶媒系2液型組成物であることを特徴とする、請求項3または4のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記プライマー組成物および前記ベースコート組成物が1種以上のポリマーポリオールおよび1種以上のアミノプラスト樹脂を含み、および/または前記クリアコート組成物1が1種以上のポリマーポリオールおよび1種以上のイソシアナト基含有種を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーポリオールがゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して1,000~20,000g/モルの質量平均分子量Mwを有し、および/または-100℃~100℃の範囲の理論的ガラス転移温度を呈し、および/または60~250mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を呈し、および/または前記イソシアナト基含有種の1個以上のイソシアナト基を反応させて前記イソシアナト基含有種内に1個以上の加水分解性シラン基を導入する、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合材料上に多層コーティングを製造する方法に関し、優れた表面外観および良好な接着性の達成を目的とする。本発明はさらに、多層コーティングでコーティングした繊維強化複合材料に関する。このようにコーティングした繊維強化複合材料は、この方法で得ることができる。
【背景技術】
【0002】
繊維複合パネル、特に炭素繊維を使用したものは、軽量および強度が要求される分野で有用である。これには、スポーツ用品、風力エネルギー、および排出量とエネルギー消費とを削減するための軽量自動車エンジニアリングへの関心の高まりが含まれる。このような複合材料を外部ボディパネルとして用いるには、この複合材料がトップコート施与後にクラスAの表面外観を達成できなければならない。
【0003】
しかしながら、使用において要求される必須の接着性および耐久性を実現するには、自動車のトップコートを80~140℃で焼付けなければならないので、クラスAの表面達成は難しい。トップコートを施与した複合パネルは焼付け後に冷却されるので、樹脂と繊維(例えば炭素またはガラス)と樹脂マトリックス(例えばエポキシ、ポリアミド、ポリプロピレンなど)との間の熱膨張係数の違いにより、基材の表面トポグラフィーが、焼付け温度でその位置から変形する。この変化は、今度はトップコート表面のゆがみと外観の損失とをもたらす。この変化は、基材内の繊維の分布に位置付けることができる。この現象は、Polymer Composites 2000年8月、第630~635頁、Neitzelらによる、記事「Surface quality characterization of textile-reinforced thermoplastics」に記載されている。
【0004】
或る場合では、低CTEガラスまたは炭素に代わってポリエステルまたはポリアミドなどのポリマー繊維が使用されている(US2006/0263529A1)。しかしながら、これらの有機繊維は、軽量化に要求される必須の曲げ弾性率の増加を提供しない。この表面トポグラフィーの変化は、150~200ミクロンの厚さのポリマー層を、複数の手段のうちの任意により複合材の表面に施与することによって、低減することができる。
【0005】
或る場合では、例えばWO2009/147633A1において、複合材料が型(オートクレーブまたは圧縮成形)内に置かれる場合では、型を閉じる前にクラスA側に樹脂製の「ベール(veil)」を置くことが可能である。しかしながら、この表面が複雑な特徴を有する場合、この層は圧縮中に変形および浸透する可能性がある。さらに、このような技術は、熱可塑性ポリマーまたは樹脂トランスファー成形(RTM)で使用されるような射出成形部品には適用できない。
【0006】
他には、この層を埋戻し成形適用による部品の成形後に施与している場合がある(Plastics Today,Internet Newsletter、2013年10月16日)。パネルが平坦な場合には、型面を200ミクロン後退させ、同じ種類または異なる種類の第2の樹脂を注入して硬化させることができる。しかしながら、パネルが複雑な特徴を有する場合には、均一な厚さを達成するためにすべての寸法において200ミクロン大きい第2の型が要求される。この第2の型は、資本コストを増加させる。
【0007】
あるいは、EP2643394A1に記載されているように、成形が完了した後に厚い積層膜を施与することができる。施与中に膜のしわが発生する可能性があり、膜を端でトリミングしなければならず、さらに別の工程が追加されて、プロセスに無駄が加わる。
【0008】
さらに、前述したすべての余分なプロセスからは、適切なカラーコートとクリアコートとでトップコートを施与するための基材しか用意されない。未改善の繊維複合基材に対する現在のコーティング方法は複数のコートを伴い、コート間で労働集約的な研摩(sanding)を行う。しかしながら、連続的なコーティングによって十分な層厚を達成することができる。この場合、200ミクロンのさらなる厚さを追加すると、部品厚さが10~20%の増加を呈する。これは、軽量化の目標に対して逆効果である。
【0009】
従って、厚い膜または研摩プロセスを必要とせずにクラスAの表面外観を提供するトップコート組成物および方法を提供する必要性が残っている。さらに、このトップコートは、自動車用コーティングの接着性および耐久性の要件をすべて満たすことができなければならない。
【0010】
この影響を低減または排除する1つの手段は、トップコート系の焼付け温度を下げることである。コーティングプレポリマーの分子量を構築する架橋反応を促進し、最終的には、水または有機材料で膨潤した場合でも良好な接着性および凝集性を有する架橋ネットワークを提供するために、焼付けが要求される。要求される生産性を達成するために、この硬化はコーティング適用後30~40分以内に行わなければならない。
【0011】
業界では、2液型(two-pack)クリアコートを使用するのが一般的である。ここで、架橋化学の反応性を非常に速くして、その結果、比較的低温で1時間未満で架橋が達成できるようにすることができる。しかしながら、カラーコートまたはベースコート層については、10~30色を正確に測量および混合しなければならない場合は複雑となるので、2液型系は一般的ではない。この1液型(one-pack)のベースコートは、適切な在庫管理およびサプライチェーン管理のために、反応性に対して数か月間安定でなければならない。このようなコーティングは、そのより低い反応性が理由で、硬化のために最低で80℃を必要とする。
【0012】
さらに、ポリプロピレンなどのいくつかのプラスチックについては、基材が特定の軟化温度に到達して、プライマー層中のポリマーが火炎処理なしで適切な接着性を達成することが要求される。この軟化も、80~90℃を必要とする。この繊維強化基材が80℃から室温に冷却されるときの表面トポグラフィーの変化は、トップコートの外観を損なうのに十分である。
【0013】
さらに、自動車のボディパネルが、暗色での使用中に、暑く、日が射す環境で80℃に達することも一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】US2006/0263529A1
【文献】WO2009/147633A1
【文献】EP2643394A1
【非特許文献】
【0015】
【文献】Polymer Composites 2000年8月、第630~635頁、Neitzelらによる、記事「Surface quality characterization of textile-reinforced thermoplastics」
【文献】Plastics Today,Internet Newsletter、2013年10月16日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
よって、本発明が解決する課題は、優れた外観、耐久性、引掻および傷耐性を有し、特に優れたレベリング特性を呈すると同時に、許容可能な多層厚を全体的に有する繊維強化複合材料上に、クラスA多層コーティングを製造するための効果的な方法を提供し、軽量の層組成物を提供することである。この方法において、良好な層間接着性を達成するために、多層コーティングの層間の表面の機械的粗化、例えば研摩などは、必要とするべきではない。さらに、硬化した多層コーティングを得るための時間枠は、短いプロセス時間が可能となるように十分に短くなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、本発明の目的は、
i. 繊維強化複合材料上にプライマー組成物を施与してプライマー層を形成し、プライマー層を少なくとも部分的に乾燥させる工程、
ii. プライマー層上にベースコート組成物を施与してベースコート層を形成し、ベースコート層を少なくとも部分的に乾燥させる工程、
iii. (a)ベースコート層上に第1のクリアコート組成物1を施与して第1のクリアコート層1を形成し、工程i.、ii.で形成された層および第1のクリアコート層を少なくとも80℃の温度で硬化させ、その後このように硬化させた層上に第2のクリアコート組成物2を施与してクリアコート層2を形成し、クリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させる工程、または
(b)ベースコート層上にクリアコート組成物2を直接施与して単一のクリアコート層2を形成し、単一のクリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させた後、プライマー、ベースコート、クリアコート層2を少なくとも80℃の温度で硬化させる工程
を含む、繊維強化複合材料上に多層コーティングを製造するための方法を提供することによって、達成されることが見出された。
【0018】
以下では、上記の方法を「本発明による方法」または「本発明の方法」と称する。
【0019】
工程iii.(a)において、さらなるクリアコート組成物1をベースコート層に施与し、ベースコート層と第2のクリアコート層2との間に第1のクリアコート層1を形成する。この場合、クリアコート組成物2を施与してクリアコート層2を形成する前に、プライマー層、ベースコート層、および第1のクリアコート層1を、少なくとも80℃の温度で硬化させる。
【0020】
代替の工程iii.(b)において、クリアコート組成物1は施与されず、そしてクリアコート層1は形成されない。代わりに、工程iii.(a)で使用するクリアコート組成物2をベースコート層に直接施与して、単一のクリアコート層2を唯一のクリアコート層として形成させる。最後に、このようにして製造した多層組成物を少なくとも80℃の温度で硬化させて、未硬化のまたは不完全に硬化した層を硬化させる。
【0021】
両方の選択肢において、クリアコート層2を25℃を超え60℃未満の温度で10~40分間硬化させるが、これは本発明の実験の項で示すように、本発明の重要な工程である。
【0022】
工程iii.(a)では、プライマー層およびベースコート層が既に硬化しているので、第2の後続の硬化工程で少なくとも80℃の温度でクリアコート層2を硬化させることは任意である。しかしながら、そのような第2の硬化工程は、多層コーティングの外観に有害ではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
繊維強化複合材料
上記で説明したように、繊維強化複合材料のポリマーマトリックスとそこに含有される繊維との間の熱膨張係数の違いにより、基材の表面トポグラフィーが、その位置から焼付け温度の位置でゆがみを起こし、これが今度はトップコート表面のゆがみと外観の損失とをもたらし、表面のレベリングが不十分となる。この影響は、ポリマーマトリックスと繊維との間の熱膨張係数の違いが大きい場合、特に顕著である。このような種類の繊維強化複合材料の場合、本発明による方法の値が最も良い。
【0024】
従って、本発明の方法では、ポリマー材料と無機繊維とを含む繊維強化複合材料を使用することが好ましい。
【0025】
ポリマーマトリックス材料は、好ましくは、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリエステル、例えば硬化した不飽和ポリエステル樹脂またはポリブチレンテレフタレート、ビニルエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレンおよびポリプロピレンからなる群から選択される。エポキシ樹脂、硬化した不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミドおよびポリプロピレンが最も好ましい。
【0026】
繊維は有機または無機繊維であることができ、無機繊維が好ましい。炭素繊維およびガラス繊維は、複合材料に優れた機械的特性を提供すると同時に、得られる機械的特性に対して比較的低い質量を呈するので、特に好ましい。しかしながら、ポリマーマトリックスとそのような無機繊維との間の熱膨張係数の違いは比較的大きく、ポリマーマトリックスと無機繊維とのそのような組み合わせにとっては、本発明の方法が特に価値があるものとなる。
【0027】
ポリマーマトリックス材料としてのポリアミドと、ガラス繊維および/または炭素繊維、さらにより好ましくは炭素繊維との組み合わせが、特に好ましい。
【0028】
繊維は、繊維または繊維複合材の1つ以上の層から形成されたプリプレグの形態であることができる。特に、繊維は任意の形態であることができ、例えば、ウェブ、織られた材料、例えば織物および布または不織マット、細断繊維、ストランドなどであることができる。
【0029】
本発明による方法を行う前に、繊維強化複合材料の表面を洗浄する必要があり得る。繊維強化複合材は通常、型を使用して製造されるので、多くの場合、繊維強化複合材料の製造前に、型を離型剤でコーティングする必要がある。このような離型剤は、多くの場合、施与するプライマーコーティング材料に対する複合材料の接着性を妨害することが知られているので、繊維強化複合材の洗浄、例えば湿らせた布を含む洗浄剤で拭くことによる洗浄が、推奨される。
【0030】
さらに、例えば火炎処理、プラズマ処理および/またはコロナ処理によって活性化させた活性化繊維強化複合材料を使用することが可能である。
【0031】
プライマー組成物
本発明による方法の大きな利点のうちの1つは、トップコートに良好なレベリング特性、特に、ウェーブスキャン機器で測定する低い長波および短波値を提供するために、高い層厚で施与しなければならない特別なプライマーコーティング組成物を選択する必要がないことである。
【0032】
従って、当業者に知られているように、任意の従来のプライマー組成物を使用することができる。繊維強化複合材のポリマーマトリックスの特定の化学組成に合わせて調整された多くの利用可能なプライマー組成物がある。
【0033】
プライマー組成物は、溶媒系組成物または水系組成物であることができる。さらに、プライマー組成物は、次の段落に記載するような1液型組成物、またはさらに下で定義するような2液型組成物であることができる。
【0034】
「水系コーティング組成物」という用語は、コーティング組成物の揮発分の50質量%より多くが水であるコーティング組成物を意味し、一方で「溶媒系コーティング組成物」という用語は、コーティング組成物の揮発分の最大で50質量%までが水とは異なる、好ましくはコーティング組成物の揮発分の最大で50質量%までが1種以上の有機溶媒であるコーティング組成物を意味する。前述の定義は、すべてのプライマー、ベースコート、クリアコートの各組成物にも同様に適用される。揮発分は、コーティング組成物1gを120℃で90分間乾燥させることにより測定することができる。質量損失は、コーティング組成物それぞれの揮発分に等しい。揮発分は、コールドトラップに収集して、当業者に知られている従来の方法によって分析することができる。含水量は、例えば、カールフィッシャー滴定によって測定することができる。実際におよび好ましくは本明細書において「溶媒系コーティング組成物」とは、コーティング組成物の総質量に基づいて、5質量%未満、より好ましくは3質量%未満、および最も好ましくは1質量%未満の水を含有する。実際におよび好ましくは本明細書において「水系コーティング組成物」とは、コーティング組成物の揮発分に基づいて、25質量%未満、より好ましくは20質量%未満、および最も好ましくは15質量%未満の有機溶媒を含有する。
【0035】
好ましくは、本発明による方法では溶媒系プライマー組成物を使用する。溶媒系1液型プライマー組成物が、より好ましい。
【0036】
「1液型コーティング組成物」とは、教本「Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben」、Thieme、1998年に定義されているように、以下に記載する2液型コーティング組成物とは対照的に、成分間の早まった反応なしで、1つの組成物中にベース樹脂と硬化剤とを含有するように製造され供給されるコーティング組成物である。反応は、好ましくは、加熱/焼付けまたは空気水分との反応のどれかによって引き起こされる。この定義は、プライマー組成物、ベースコート組成物、またはクリアコート組成物であるかどうかに関わりなく、本明細書に記載するすべての1液型コーティング組成物について有効である。
【0037】
1液型溶媒系プライマー組成物を使用すると、通常、基材の前処理が不要になるという利点がある。しかしながら、好ましくは、接着促進剤が組成物に含有される。
【0038】
2液型水系プライマー組成物を使用すると、高い溶媒蒸発が回避されるという利点がある。しかしながら、ほとんどの場合、基材は、以下に記載するように、例えば火炎処理によって前処理されなければならない。2液型水系プライマー組成物の使用は、好ましくは乾燥工程の後に硬化工程を伴う。しかしながら、いくらかの部分的な硬化は、乾燥工程中にすでに起こる可能性がある。典型的な2液型水系プライマー組成物は、BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033から、CombiBloc(登録商標)の名称で市販されている。
【0039】
典型的には、プライマー組成物中に使用する溶媒は、脂肪族および/または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso100またはHydrosol(登録商標)(ARAL社から得ることができる)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンおよび/またはメチルアミルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテートまたはエチル3-エトキシプロピオネート、エーテル、または前述の溶媒の混合物である。芳香族炭化水素およびケトンが最も好ましい。
【0040】
好ましくは、プライマー組成物中に使用するベース樹脂は、ポリエステルポリオールおよび/またはポリ(メタ)アクリレートポリオールである。本明細書全体を通して使用する「(メタ)アクリレート」という用語は、例えば「ポリ(メタ)アクリレート」におけるように、「アクリレート」と「メタクリレート」との両方を意味する。従って「ポリ(メタ)アクリレート」とは、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマーまたはその両方を、重合した形態で含有することができる。しかしながら、「ポリ(メタ)アクリレート」とは、必ずしも前述のモノマーからなる必要はなく、例えばビニル芳香族炭化水素などの非(メタ)アクリレートモノマーをさらに含有することができる。
【0041】
そのような溶媒系1液型ベースコート組成物は、好ましくは硬化剤としていわゆるアミノプラスト樹脂を含有する。特に好ましいアミノプラスト樹脂は、高度にメトキシメチル化されたメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、例えばヘキサメトキシメチルメラミンホルムアルデヒド樹脂(HMMM)である。
【0042】
本発明による方法で使用するプライマー組成物は、好ましくは、慣用の充填剤および顔料を含む。
【0043】
適した有機および無機充填剤の例は、チョーク、カルシウムサルフェート、バリウムサルフェート、シリケート、例えばタルク、マイカまたはカオリン、シリカ、例えばAerosil(登録商標)製品(Evonik社から得ることができる)、酸化物、例えば水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム、または有機充填剤、例えばポリマー粉末、特にポリアミドまたはポリアクリロニトリルのものである。最も好ましいのは、無機充填剤および特にシリカである。
【0044】
適した無機着色顔料の例は、白色顔料、例えば二酸化チタン(例えば、The Chemour Company TT社から得ることができるTi-Pure(登録商標)製品)、亜鉛ホワイト、亜鉛スルフィドまたはリトポン、黒色顔料、例えばカーボンブラック、鉄マンガンブラック又はスピネルブラック、着色顔料、例えば酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーンまたはウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルーまたはマンガンブルー、ウルトラマリンバイオレットまたはコバルトバイオレットおよびマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、スルホセレン化カドミウム、モリブデートレッドまたはウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合褐色、スピネル相およびコランダム相またはクロムオレンジ、または黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、カドミウムスルフィド、カドミウム亜鉛スルフィド、クロムイエローまたはビスマスバナデートである。最も好ましい顔料は、二酸化チタンおよびカーボンブラックである。
【0045】
さらに、本発明のコーティング材料は、他の着色顔料および/または導電性または磁気遮蔽顔料および/または可溶性染料を含んでもよい。
【0046】
適した有機着色顔料の例は、アゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダンスロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料またはアニリンブラックである。
【0047】
本プライマー組成物中への使用に特に適しているのは、導電性顔料である。従って本発明により使用するプライマー組成物は、好ましくは導電性カーボンブラック、例えばConductex(登録商標)カーボンブラック(Birla Carbon Speciality Blacks社から得ることができる)および/またはPrintex(登録商標)カーボンブラック(The Cary Company社から得ることができる)を含有する。
【0048】
さらに、本発明の方法で使用するプライマー組成物は、添加剤を含んでよい。
【0049】
特に適した添加剤は、接着促進剤、例えば無水マレイン酸でグラフト化された塩素化ポリオレフィン、例えば東洋紡から得ることができるHardlen(登録商標)製品またはベース樹脂と硬化剤との間の反応を促進する触媒、例えばトルエンスルホン酸およびそのアミン塩である。
【0050】
必要ではないが、ベースコート組成物を施与する前に、1種を超えるプライマー組成物を施与して1つを超えるプライマー層を形成することが可能である。しかしながら、1つのプライマー層を形成するために1種のプライマー組成物のみを施与することが好ましい。
【0051】
本発明において、プライマー層の乾燥層の厚さが3~30μm、より好ましくは5~20μm、最も好ましくは6~16μmであることが特に好ましい。本明細書における任意のコーティング層の乾燥層の厚さは、複合基材の横にあるスチールパネルをコーティングして、ASTM D1186-01の方法B、第一鉄ベースに適用される非磁性コーティングの乾燥フィルム厚の非破壊的測定の標準試験方法を使用して、スチールパネル上の各層の厚さを測定することによって測定される。コーティング層の数に等しい複数のテープストリップを、コーティングの前にスチールパネルに施与し、各層を噴霧した後に引っ張る。これによって、各層の厚さを個別に測定できる。
【0052】
ベースコート組成物
本発明の方法では、水系ベースコート組成物および溶媒系ベースコート組成物を使用することができる。水系ベースコート組成物が好ましい。
【0053】
ベースコート組成物は、好ましくは1液型ベースコート組成物である。
【0054】
好ましい水系1液型ベースコート組成物中のベース樹脂は、好ましくは、水溶性および/または水分散性のポリウレタンベースの樹脂および水溶性および/または水分散性のポリエステル樹脂である。
【0055】
このような水系1液型ベースコート組成物は、好ましくは、ベース樹脂として、ポリウレタン、ポリウレタン修飾ポリアクリレートおよびアクリル化ポリウレタンからなる群から選択される1種以上のポリウレタンベースの樹脂を含有し、ポリウレタン、およびポリウレタン修飾ポリアクリレートが好ましい。このようなポリウレタンベースの樹脂は、例えばUS6,001,915、特に実施例B、CおよびDに開示されている。適したポリエステル樹脂は、US6,001,915にも、特に実施例Aに開示されている。
【0056】
このような水系1液型ベースコート組成物は、好ましくは硬化剤としていわゆるアミノプラスト樹脂を含有する。特に好ましいアミノプラスト樹脂は、好ましくはメラミン樹脂、例えばイミノ型の、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂である。
【0057】
ベースコート組成物は、典型的には顔料、例えばプライマー組成物について既に記載したような顔料を含む。着色のレベルは通常の範囲内であり、顔料の隠蔽力と色の濃さの程度に依存する。
【0058】
ベースコート組成物は、典型的には適したコーティング用添加剤、例えばUV吸収剤、光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサラニリド、遊離ラジカル補足剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、消泡剤、湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびそれらのコポリマー、またはポリウレタン、分散剤、接着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール、流動制御剤、膜形成助剤、例えばセルロース誘導体、および特にレオロジー制御添加剤、例えばフィロシリケート、ウレタンおよびアクリルベースの増粘剤、および/または難燃剤を含有する。
【0059】
適したベースコート材料は、例えば、US6,001,915に記載されている。高固形分ベースコートは、US5,360,644に記載されている。中固形分ベースコートは、「Coating formulation:an international textbook」(著者:Bodo Mueller、Ulrich Poth;Vincenz Network GmbH&Co.KG,Hannover、2006年(Coatings Compendia)、第139~140頁、ISBM3-87870-177-2)、第139~140頁の下記参照に記載されている。
【0060】
施与したベースコート組成物は、好ましくはまず乾燥させる、すなわち、有機溶媒および/または水の少なくともいくらかを、蒸発段階でベースコート膜から剥離(strip)させる。乾燥(すなわちフラッシュオフ)は、好ましくは室温(すなわち23℃)から80℃未満、好ましくは最高で60℃までの温度で、1~30分間、好ましくは2~15分間、およびさらにより好ましくは4~10分間行う。
【0061】
必要ではないが、クリアコート組成物を施与する前に、1種を超えるベースコート組成物を施与して1つを超えるベースコート層を形成することが可能である。ベースコート層の数は、通常、対象とする色標準およびコーティング施設で利用可能な施与プロセスに依存する。しかしながら、1つのベースコート層を形成するために1種のベースコート組成物を施与することが可能であり、好ましい。
【0062】
本発明の方法によれば、乾燥に続き、クリアコート組成物1および2を、またはクリアコート組成物2のみを施与する。
【0063】
クリアコート組成物1
本発明による方法の代替工程iii.(a)でのみ使用するクリアコート組成物1は、80℃以上の温度、例えば最高で160℃、好ましくは最高で140℃の温度で硬化する傾向がある、任意の従来の溶媒系2液型クリアコート組成物でよい。しかしながら、80℃未満で硬化するクリアコート組成物を使用することも可能である。従って、2液型または1液型クリアコートのどちらかを使用することができる。その傑出した流動性およびレベリングから、2液型クリアコートが好ましい。
【0064】
「2液型コーティング組成物」とは、教本「Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben」、Thieme、1998年に定義されているように、2つの成分(マスターバッチ「Stammlack」および硬化剤「Haerter」)を特定の混合比で混合することが作用して硬化する組成物である。成分自体は、それらが膜を形成する傾向がないか、または耐久性のある膜を形成しないので、コーティング組成物ではない。この定義は、プライマー組成物、ベースコート組成物またはクリアコート組成物であるかどうかに関わりなく、本明細書に記載するすべての2液型コーティング組成物について有効である。
【0065】
好ましくは、クリアコート組成物1は、マスターバッチ中に1種以上のポリマーポリオールおよび硬化剤中に1種以上のイソシアナト基含有種を含む、2液型クリアコート組成物である。
【0066】
適した2液型クリアコート組成物1は、例えば、硬化剤としてSC290109を有するEverGloss(登録商標)905(マスターバッチ)であり、両方ともBASF Coatings GmbH社から市販されている。
【0067】
すぐに使用できる2液型クリアコート組成物1を製造するには、ポリマーポリオールを含有するマスターバッチと、イソシアネート基含有種を含有する硬化剤とを混合する。
【0068】
最も好ましいポリマーポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0069】
特に好ましいポリ(メタ)アクリレートポリオールは、一般に、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートおよび非ヒドロキシ官能性モノマーから形成されるコポリマー、特に好ましくは非ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートである。このようなポリ(メタ)アクリレートポリオールおよびこのようなポリ(メタ)アクリレートポリオールを生成するために使用されるモノマーの例は、クリアコート組成物1および2が好ましくは互いに異なっていても、通常、クリアコート組成物2について記載するものと同じである。同じことが、クリアコート組成物2について以下に記載するイソシアナト基含有種にも適用される。しかしながら、クリアコート組成物1中に使用するイソシアナト基含有種は、それらが好ましくはシラン基含有種を含まないという点で、通常、クリアコート組成物2のものとは異なる。
【0070】
混合比は、マスターバッチ中の種のヒドロキシル基含有量および硬化剤中の種のイソシアネート基含有量に依存する。
【0071】
第1のクリアコート組成物1を使用する場合、第2のクリアコート層は、第1のクリアコートの研摩なしで、第1のクリアコート層に容易に接着することが望ましい。この目的のために、マスターバッチ中の種のヒドロキシル基含有量は当量で、硬化剤中のイソシアネート基含有種のイソシアネート基含有量の当量よりも多くなるべきであり、すなわち、硬化剤中のイソシアネート基1個あたり、1個を超えるヒドロキシル基がマスターバッチ中に存在していなければならない。よって、本発明の方法で使用する2液型クリアコート組成物1を製造するためのマスターバッチと硬化剤との混合比は、両成分のOH対NCO比、すなわちモル(OH)対モル(NCO)で最も良く表すことができる。好ましくは、OH対NCO比(モルで表す)は、1:0.65~1:0.98、より好ましくは1:0.70~1:0.95、さらにより好ましくは1:0.75~1:0.90、および最も好ましくは1:0.80~1:90、例えば1:0.85である。
【0072】
OH対NCOのモル比が1:0.65より低い場合、下にある層へのクリアコート層の接着性が低下する。OH対NCOのモル比が1:1またはさらに1:>1である場合、未反応のNCO基がコーティング中に残り、コーティングの表面に望ましくない反応部位が生じる場合がある。
【0073】
クリアコート層1の硬化後に過剰のNCO基を残すために、混合比を定式化することにより、後続の層への良好な接着性を達成することも可能である。しかしながらこの場合、部品が長期間貯蔵されると、残留NCO基は雰囲気中の湿気と反応して失われる可能性がある。このような貯蔵は、クリアコート組成物1およびクリアコート組成物2の施与の間に週末または休日がある場合に生じ得る。残留OH基は、1回目と2回目のクリアコート施与の間のそのような長時間にわたって安定である。
【0074】
クリアコート組成物2
クリアコート組成物2は、低温、すなわち25℃を超え60℃未満の温度、好ましくは30~55℃の範囲の温度、より好ましくは35~55℃の温度で、硬化する傾向がある。最も好ましいクリアコート組成物は、38~52℃または40~50℃の温度で硬化する傾向がある。
【0075】
クリアコート組成物2は、好ましくは溶媒系クリアコート組成物であり、好ましくは非プロトン性有機溶媒を含む。クリアコート組成物2に適した溶媒は、特に、クリアコート組成物の成分に対して化学的に不活性であり、特にコーティング組成物が硬化されているときに他の成分と反応しないものである。このような溶媒の例は、脂肪族および/または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso100またはHydrosol(登録商標)(ARAL社から得ることができる)、パラクロロベンゾトリフルオリド、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトンまたはメチルアミルケトン、エステル、例えばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテートまたはエチル3-エトキシプロピオネート、エーテル、または前述の溶媒の混合物である。非プロトン性溶媒または溶媒混合物は、溶媒に基づいて、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下の含水量を有する。
【0076】
最も好ましくは、クリアコート組成物2は、溶媒系2液型クリアコート組成物である。
【0077】
マスターバッチ中に1種以上のポリマーポリオールおよび硬化剤中に1種以上のイソシアナト基含有種を含む2液型クリアコート組成物が、クリアコート組成物2として特に好ましい。
【0078】
ポリマーポリオール
最も好ましいポリマーポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0079】
特に好ましいポリ(メタ)アクリレートポリオールは、一般に、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレートおよび非ヒドロキシ官能性モノマーから形成されるコポリマー、特に好ましくは非ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートである。
【0080】
使用するヒドロキシル含有モノマー単位は、好ましくはヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば特に2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、および特に4-ヒドロキシブチルアクリレートおよび/または4ヒドロキシ-ブチルメタクリレートである。
【0081】
ポリアクリレートポリオールに使用するさらなるモノマー単位は、好ましくはアルキルメタクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート、例えば、好ましくは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5-トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレートまたはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレートおよび/またはシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、または、特にシクロヘキシルアクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートである。
【0082】
ポリアクリレートポリオールに使用することができるさらなるモノマー単位は、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、アルファ-メチルスチレンまたは特にスチレン、アクリル酸またはメタクリル酸のアミドまたはニトリル、ビニルエステルまたはビニルエーテル、および少量の、および特にアクリル酸および/またはメタクリル酸である。
【0083】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、好ましくは、各場合ともゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、1,000~20,000g/モル、および特に1,500~10,000g/モルの質量平均分子量Mを有する。GPCによりポリマーの分子量を測定するには、ポリマー試料の完全に溶解した分子を多孔質カラム固定相で分画する。0.1モル/lのテトラヒドロフラン(THF)酢酸溶液を溶離液溶媒として使用する。固定相は、Waters StyragelのHR5、HR4、HR3、およびHR2カラムの組み合わせである。5ミリグラムの試料を1.5mLの溶離液溶媒に加え、0.5μmのフィルターでろ過する。ろ過後、100μlのポリマー試料溶液を1.0mL/分の流速でカラムに注入する。分離は、溶離液溶媒中に形成されるポリマーコイルの大きさに応じて起こる。小さな分子は、より頻繁にカラム材料の細孔中に拡散するので、大きな分子よりも遅延する。よって、大きな分子は小さな分子よりも早く溶出する。ポリマー試料の分子量分布、数平均Mおよび質量平均M、および多分散性M/Mは、Polymer Standards Serviceから入手可能な様々な分子量の非分岐ポリスチレン標準の一連を含むEasyValid検証キットで生成された検量線を利用している、クロマトグラフィーソフトウェアを使用して計算する。
【0084】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールの理論的ガラス転移温度(Tg)は、フローリーフォックスの式を使用して、好ましくは-100℃~100℃、特に好ましくは-50℃~80℃である。コポリマーのTg値は、そこに含有されるコモノマーのホモポリマーのTg値から、フローリーフォックスの式を使用して計算する。ホモポリマーのTg値は、Polymer Handbook、第3版、J.Brandup,I.H.Immergut、第6章、第215~225頁から得られる。フローリーフォックスの式は、次のように、各コモノマーの質量割合とその対応するホモポリマーのTgに基づいている:
【0085】
【数1】
=モノマーiの質量割合
Tg=モノマーiのホモポリマーTg[K
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、好ましくは60~250mgKOH/g、より好ましくは70~200KOH/gのヒドロキシル価、および0~30mgKOH/gの酸価を有する。
【0086】
ヒドロキシル価は、1gのポリマーポリオール、好ましくはアセチル化時のポリ(メタ)アクリレートポリオールによって結合された酢酸の量に等しい水酸化カリウムのmg数を示す。測定のために、試料を無水酢酸-ピリジンで沸騰させ、得られた酸を水酸化カリウム溶液で滴定する(DIN EN ISO4629-2:2016-12)。
【0087】
ここでの酸価は、1gのポリマーポリオール、好ましくはポリ(メタ)アクリレートポリオールの中和で消費される水酸化カリウムのmg数を示す(DIN EN ISO2114:2002-06)。
【0088】
イソシアナト基含有種
イソシアネート基含有種は、本発明の方法で使用する2液型クリアコート組成物中の成分として使用する硬化剤中の架橋剤として役立つ。
【0089】
定義によれば、「イソシアナト基含有種」は、1種につき少なくとも1個のイソシアナト基を含有していなければならない。すなわち、種は少なくとも1個の遊離の、すなわちブロックされていないNCO基を含有している必要がある。
【0090】
しかしながら、イソシアナト基含有種がイソシアナト基を1個のみ含有する場合、種は、好ましくはポリマーポリオールの架橋においてまたは自己架橋によって、硬化に関与することができる少なくとも1個のさらなる反応基を含有しなければならない。そのようなさらなる反応基は、好ましくは1個以上の加水分解性シラン基、例えば加水分解性モノ-シリル基および/または加水分解性ビス-シリル基である。加水分解性シラン基は、Si-O-Si結合の形成により、加水分解縮合反応を受けることができる。
【0091】
イソシアナト基含有種は、好ましくは2個のイソシアナト基(ジイソシアネート)、またはさらにより好ましくは2個を超えるイソシアネート基(ポリイソシアネート)、特に好ましくは3個以上のイソシアネート基を含有する。
【0092】
適したジイソシアネートは、例えば、置換または非置換の芳香族、脂肪族、脂環式および/または複素環式ジイソシアネートである。好ましいジイソシアネートの例は以下の通りである:2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばBayer AG社からのDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えばAmerican Cyanamid社からのTMXDI(登録商標))、および前述のポリイソシアネートの混合物。前述のジイソシアネートの中で、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネート、例えばヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートが最も好ましい。さらに、好ましいジイソシアネートは、前述のジイソシアネートのビウレット二量体およびウレトジオン二量体である。
【0093】
特に適したポリイソシアネートは、ジイソシアネートの三量体、特に前述のジイソシアネートの三量体である。最も好ましいジイソシアネートの三量体は、イソシアヌレート三量体およびイミノオキサジアジンジオン三量体であり、中でもイソシアヌレート三量体がさらにより好ましい。脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、例えばヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートのイソシアヌレート三量体が最も好ましい。
【0094】
ジイソシアネートを使用する場合、2個の遊離イソシアナト基のうち1個を式(I)
HX-R-Si(OR(R3-z (I)
のモノ-シランと、
または式(II)
(R3-z(RO)Si-R-NH-R-Si(OR(R3-s (II)
のビス-シランと、反応させることができる。
【0095】
式(I)および(II)において、
X=OまたはNRであり、ここでR=Hまたは1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、または隣接しない酸素、硫黄または第3級アミノ基によって中断されている脂肪族炭化水素ラジカルであり;
およびRは、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキレンまたはシクロアルキレンラジカルであり、
およびRは、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基、3~10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6~20個の炭素原子を有するアリール基または7~20個の炭素原子を有するアラルキル基、または隣接していない酸素、硫黄、または第3級アミノ基によって中断されている脂肪族炭化水素ラジカルであり;
およびRは、互いに独立して、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基またはアセチル基であり、および
zおよびsは、互いに独立して1~3である。
【0096】
好ましくは、式(I)および(II)において、
X=NH;
およびRは、互いに独立して、2~8個、より好ましくは3~6個、および最も好ましくは3個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキレンまたはラジカルであり、
およびRは、互いに独立して、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチルであり、
およびRは、互いに独立して、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはメチルであり、および
zおよびsは、互いに独立して2または3、最も好ましくは3である。
【0097】
式(I)の好ましいモノ-シランは、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4-ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、および4-ヒドロキシブチルトリエトキシシランである。式(I)の特に好ましいモノ-シランは、N-(2-(トリメトキシ-シリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-アルキルアミン、N-(4-(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N-(2-(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミンおよび/またはN-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンが特に好ましい。この種類のアミノシランは、例えばDEGUSSA社からDYNASYLAN(登録商標)またはOSI社からSilquest(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0098】
特に好ましい化合物(II)は、ビス(2-エチルトリメトキシ-シリル)アミン、ビス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4-ブチルトリメトキシ-シリル)アミン、ビス(2-エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3-プロピルトリエトキシ-シリル)アミンおよび/またはビス(4-ブチルトリエトキシシリル)アミンである。ビス(3-プロピルトリメトキシ-シリル)アミンが特に好ましい。この種類のアミノシランは、例えばDEGUSSA社からDYNASYLAN(登録商標)またはOSI社からSilquest(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0099】
特に適したジイソシアネートの三量体、特に前述のジイソシアネートの三量体を使用する場合、イソシアネート基のうち最大で2個までを式(I)のモノ-シランおよび/または式(II)のビス-シランと反応させて、1つの種で少なくとも1個、好ましくは2個の残留NCO基を有することが可能である。上記の種の混合物を使用することも可能であり、非常に好ましい。
【0100】
特に好ましい実施形態では、脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、最も好ましくはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートを、式(I)の1種以上のモノ-シランおよび/または式(II)の1種以上のビス-シランの準化学量論的混合物と反応させて、1個、2個のイソシアネート基を有する、またはすべてのイソシアネート基が残っているイソシアヌレート種と、おそらくイソシアヌレート三量体のすべてのイソシアネート基が式(I)の1種以上のモノ-シランおよび/または式(II)の1種以上のビス-シランと反応する種とを含む混合物を得ることによって、イソシアネート基含有種を得ることができる。
【0101】
クリアコート組成物2のさらなる成分
溶媒系2液型クリアコート組成物2は、好ましくは、ポリマーポリオールのヒドロキシル基およびイソシアネート基含有種の遊離イソシアネート基を架橋するための触媒を含有する。
【0102】
このような触媒の例は、ルイス酸(電子不足化合物)、例えば、スズナフテネート、スズベンゾエート、スズオクトエート、スズブチレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズオキシド、および鉛オクトエート、およびWO-A-2006/042585に記載されている触媒である。加水分解性シリル基の架橋に好ましく使用される触媒は、存在する場合、リン酸またはスルホン酸のアミン付加物(例えば、King Industries社からのNacure(登録商標)製品)である。
【0103】
式(I)および(II)に存在するシリル基も含有するイソシアネート基含有種を使用する場合、好ましくは、リン含有触媒からなる、とりわけリン含有および窒素含有触媒からなる群からの触媒を使用する。これに関連して、2種以上の異なる触媒の混合物を使用することも可能である。適したリン含有触媒の例は、好ましくは非環状ホスホン酸ジエステル、環状ホスホン酸ジエステル、非環状ジホスホン酸ジエステル、および環状ジホスホン酸ジエステルからなる群からの、置換ホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルである。この種類の触媒は、例えばドイツ特許出願公開文書DE-A-102005045228に記載されている。とりわけ、対応する、アミンでブロックされたリン酸エステル、および好ましくはアミンでブロックされたリン酸エチルヘキシルエステルおよびアミンでブロックされたリン酸フェニルエステル、非常に特に好ましくはアミンでブロックされたビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートを使用する。
【0104】
触媒は、クリアコート組成物2の非揮発性構成成分に基づいて、好ましくは0.01質量%~20質量%の割合で、より好ましくは0.1質量%~10質量%の割合で使用する。触媒のより低い活性は、この場合、より高い対応する使用量によって部分的に補償される。
【0105】
適したコーティング添加剤の例は、UV吸収剤、光安定剤、例えばHALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサラニリド、遊離ラジカル補足剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、消泡剤、湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素化合物、カルボン酸モノエステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびそれらのコポリマー、またはポリウレタン、接着促進剤、例えばトリシクロデカンジメタノール、流動制御剤、膜形成助剤、例えばセルロース誘導体、レオロジー制御添加剤、および/または難燃剤である。
【0106】
混合比
すぐに使用できる2液型クリアコート組成物2を製造するには、ポリマーポリオールを含有するマスターバッチと、イソシアネート基含有種を含有する硬化剤とを混合する。
【0107】
混合比は、マスターバッチ中の種のヒドロキシル基含有量および硬化剤中の種のイソシアネート基含有量に依存する。
【0108】
特に層間接着性の観点から、クリアコート組成物1および2のどちらか1つが、1.0以上であるOH対NCOのモル比を有する一方で、他のクリアコート組成物は、1.0以下であるOH対NCOのモル比を有することが、一般に好ましい。
【0109】
クリアコート組成物1が上記のように過剰のOH基を含有するように配合される場合、クリアコート組成物2に高レベルのNCO基を有してこれらを補完し、硬化したクリアコート層1を機械的に粗化する必要なく層間接着性を提供することが望ましい。例えばそのような場合には、1.0~0.9以下のOH対NCOのモル比が好ましいであろう。
【0110】
特にクリアコート層2について考慮すべきさらなる要因は、空気中の水分との反応によるNCO基の損失である。そのような反応は、より低い硬化温度、例えば60℃未満、例えば40~50℃またはさらにより低い例えば23℃または30℃の硬化温度で、より一般的である。NCO基の約10~20質量%は、40~50℃の硬化温度で空気中の水分との反応により失われる可能性があると推定される。
【0111】
これら要因の両方を考慮すると、クリアコート組成物2中に過剰のNCOを有することが望ましい可能性がある。例えば、1.0~1.3の範囲のOH対NCOのモル比である。より好ましくは、クリアコート組成物2中のOH対NCOのモル比は、1.0~1.2の範囲である。
【0112】
一方で、クリアコート組成物1が過剰のNCO基を含有する場合には、クリアコート組成物2が過剰のOH基を含有することが好ましい。しかしながらこれは、先に記載したように、クリアコート1の施与後のプロセスが遅延する場合の実行可能性の観点から、あまり望ましくない。プロセスが遅延する場合、クリアコート層1に存在する過剰のNCO基のうちいくらかが空気中の水分と反応していることがある。それにもかかわらず、本発明の実施例の項に示すように、クリアコート組成物1がOH基よりもモル過剰のNCO基を含有する一方で、クリアコート組成物2がNCO基よりもモル過剰のOH基を含有するクリアコート組成物1および2の組み合わせも、許容可能な層間接着性をもたらす。
【0113】
コーティング組成物の施与条件
本発明による方法で使用するコーティング組成物(プライマー組成物、ベースコート組成物およびクリアコート組成物1および2)は、典型的な施与方法のうちの任意、例えば噴霧、ナイフコーティング、拡散、流し込み、浸漬、含浸、トリクルまたはロールなどによって施与することができる。このような施与の間、コーティングする基材は、それ自体が静止し、施与装置またはユニットが動いていてよい。代替的に、コーティングする基材、特にコイルが動き、基材に対して施与ユニットが静止しているか、または適切に動いてよい。
【0114】
噴霧施与法、例えば、従来のエアガン噴霧、圧縮空気噴霧、例えば高体積低圧または低体積低圧噴霧、エアレス噴霧および静電噴霧施与(ESTA)などを用いることが好ましい。各層について、コーティング組成物は、単一の噴霧パスまたは複数の噴霧パスで噴霧することができる。よって単層は、1回または複数回の噴霧パスによって形成される。
【0115】
「乾燥」または「フラッシュオフ」という用語は、溶媒および/または水の少なくともいくらかが、形成されたコーティング層から蒸発した後に、次のコーティング組成物を施与するおよび/または次の硬化を行うことを意味する。
【0116】
典型的には、溶媒系コーティング組成物層、例えば好ましいプライマー組成物層および好ましいクリアコート組成物層1および2は、周囲温度、好ましくは室温(23℃)で乾燥させ、その後次のコーティング組成物を施与するおよび/または硬化を行う。好ましくは水系ベースコート層は、典型的に高温でフラッシュする。
【0117】
本発明の方法の工程i.で形成されたプライマー層の好ましい乾燥時間は、1~15分、より好ましくは2~10分、および最も好ましくは3~5分である。工程i.で形成されたプライマー層の好ましい乾燥温度範囲は、18~28℃、より好ましくは20~25℃、および最も好ましくは22~23℃である。
【0118】
しかしながら、このようにして得られたプライマー層を乾燥させるのみではなく、プライマー層の乾燥に続いて、かつベースコート組成物の施与前に、プライマー層を既に部分的にまたは完全に硬化させることが可能である。本発明の方法の工程i.で形成されたプライマー層の好ましい硬化時間は、10~40分、より好ましくは15~30分、および最も好ましくは20~25分である。工程i.で形成されたプライマー層の好ましい硬化温度範囲は、70~120℃、より好ましくは80~100℃、および最も好ましくは85~90℃である。
【0119】
本発明の方法の工程ii.で形成された水系ベースコート層の好ましい乾燥時間は、1~30分、より好ましくは2~15分、および最も好ましくは4~10分である。工程ii.で形成されたベースコート層の好ましい乾燥温度範囲は、30~80℃未満、より好ましくは40~70℃、および最も好ましくは50~60℃である。
【0120】
本発明の方法の工程ii.で形成された溶媒系ベースコート層の好ましい乾燥時間は、2~20分、より好ましくは3~15分、および最も好ましくは5~10分である。工程i.で形成されたプライマー層の好ましい乾燥温度範囲は、18~28℃、より好ましくは20~25℃、および最も好ましくは22~23℃である。
【0121】
本発明の方法の工程iii.(a)で形成されたクリアコート層1の好ましい乾燥時間は、5~20分、より好ましくは7~15分、および最も好ましくは8~12分である。工程i.で形成されたプライマー層の好ましい乾燥温度範囲は、18~28℃、より好ましくは20~25℃、および最も好ましくは22~23℃である。
【0122】
代替法A、すなわち工程iii.(a)が本発明による方法で行われる場合、工程i.、ii.で形成された層および第1のクリアコート層1を、少なくとも80℃の温度、好ましくは80~150℃の範囲の、より好ましくは80~140℃の範囲の、および最も好ましくは80~90℃の範囲の温度で、まず硬化させる。工程i.、ii.で形成された層および第1のクリアコート層1の硬化時間は、好ましくは10~40分の範囲、より好ましくは15~35分の範囲、および最も好ましくは20~30分の範囲である。
【0123】
工程i.、ii.で形成された層および第1のクリアコート層1を少なくとも80℃の温度で硬化させた後、クリアコート組成物2を施与する前に、コーティングした基材を好ましくは室温(すなわち23℃)から60℃以下の範囲の温度に冷却する。
【0124】
本明細書に示す硬化の時間および温度はすべて、コーティングした、硬化させる繊維強化複合材料の実際の温度(すなわち、「部分温度」)に関して与えられる。部分の温度を、硬化を行う温度まで上げる時間(すなわち、「上昇時間」)は、「硬化時間」とは見なさない。
【0125】
本明細書に示す乾燥/フラッシュオフの時間および温度はすべて、コーティングした部分を取り囲む温度に関して与えられる。乾燥時間は、乾燥温度までの任意の「上昇乾燥時間」を含む時間である。
【0126】
その後工程iii.(a)において、第2のクリアコート組成物、すなわちクリアコート組成物2を、このように硬化させた層上に施与して、クリアコート層2を形成する。
【0127】
本発明の方法の工程iii.(a)において、クリアコート層2を、25℃を超え60℃未満の温度、好ましくは30~55℃の範囲の温度、より好ましくは35~55℃の温度でまず硬化させ、および最も好ましくはクリアコート組成物2を38~52℃または40~50℃の範囲の温度で硬化させる。クリアコート層2の硬化時間は、10~40分、好ましくは15~35分、および最も好ましくは20~30分の範囲である。
【0128】
工程iii.(a)におけるクリアコート層2のこの最初の硬化の後に、少なくとも80℃の温度、好ましくは80~150℃の範囲の、より好ましくは80~140℃の範囲、および最も好ましくは80~90℃の範囲の温度で、任意の第2の硬化を行う。クリアコート層2の第2の硬化の硬化時間は、好ましくは10~40分、より好ましくは15~35分、および最も好ましくは20~30分の範囲であり、このように代替法Aによる多層コーティングが形成される。このような任意の第2の硬化を行う場合、第2の硬化を行う前に、コーティングした基材を、室温(すなわち23℃)から第1の硬化の硬化温度未満の温度の範囲の温度に冷却する。
【0129】
代替法B、すなわち工程iii.(b)が本発明による方法で行われる場合、第1のクリアコート組成物1を施与しない。代わりに、クリアコート組成物2を、第1のクリアコート組成物2としてベースコート層上に直接施与し、単一のクリアコート層2を形成する。
【0130】
工程iii.(b)において、単一のクリアコート層2を、25℃を超え60℃未満の温度、好ましくは30~55℃の範囲の温度、より好ましくは35~55℃の温度でまず硬化させ、および最も好ましくはクリアコート組成物2を38~52℃または40~50℃の範囲の温度で硬化させる。この低温でのクリアコート層2の硬化時間は、10~40分の範囲、好ましくは15~35分の範囲、および最も好ましくは20~30分の範囲である。
【0131】
工程iii.(b)におけるクリアコート層2のこの最初の硬化の後に、代替法Aにおけるように、少なくとも80℃の温度、好ましくは80~150℃の範囲の、より好ましくは80~140℃の範囲、および最も好ましくは80~90℃の範囲の温度で、第2の硬化を行う。クリアコート層2の第2の硬化の硬化時間は、やはり好ましくは10~40分、より好ましくは15~35分、および最も好ましくは20~30分の範囲であり、このように代替法Bによる多層コーティングが、代替法Aと同じやり方で形成される。
【0132】
本発明による方法の代替法Aは、80℃以上の温度で硬化させた中間クリアコート層1、続いて2段階(まず25~60℃未満の範囲のより低い温度、その後80℃を超える温度、各硬化段階は10~40分間行う)で硬化させた第2のクリアコート層2の形成を使用するが、この代替法Aは、単一のクリアコート層の形成のみを使用する代替法Bと比較して、さらに向上した外観をもたらすことが見出された。
【0133】
本発明の利点の1つは、工程iii.(a)においてクリアコート層1を硬化させた後に、好ましくは研摩工程などの機械的粗化工程がなく、より好ましくは方法の如何なる工程の間または後にも、研摩工程などの機械的粗化工程が不要なことである。
【0134】
多層コーティングでコーティングした繊維強化複合材料
本発明のさらなる主題は、本発明の方法により得ることができる多層コーティングでコーティングした繊維強化複合材料である。本発明の方法により多層コーティングでコーティングした繊維強化複合材料は、先行技術と比較して接着性および外観が明らかに異なるので、そのような多層コーティングでコーティングした繊維強化複合材料は従来技術とは異なる。しかしながら、その違いをうまく説明するには、上記のような多層コーティングでコーティングしたこのような繊維強化複合材料を製造するための方法を参照する他にない。
【0135】
以下に実施例を参照して本発明を説明する。
【実施例
【0136】
実施例1-クリアコート層を1つのみ含む多層コーティングの調製
射出成形により製造した、短炭素繊維20質量%を含有する炭素繊維強化ポリアミド材料を、繊維強化複合材料として使用した(BASF PM Groupから得ることができるUltramid(登録商標)XA3418)。
【0137】
この基材を、1液型溶媒系プライマー組成物(AdPro U04AM062M;BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033から得ることができる;プライマー組成物の総質量に基づいて、ポリ(メタ)アクリレートポリオールとポリエステルポリオールとの混合物の形態のポリマーポリオール14.6質量%;HMMM1.7質量%、マレイン酸で修飾した塩素化ポリオレフィン1.5質量%、アミンで中和したp-トルエンスルホン酸触媒0.2質量%、顔料および充填剤9.1質量%;および芳香族溶媒とケトンとを含む有機溶媒混合物、を含有する)で噴霧コーティングした。プライマー層の乾燥膜厚は、約12.5±2.5μmであった。プライマー層を室温(すなわち23℃)でフラッシュオフした。
【0138】
その後、黒色の水系1液型ベースコート組成物(E211KU015 BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033;組成物の総質量に基づいて、ポリウレタンポリオール(US6,001,915の実施例Bを31.7質量%)、ポリウレタン-アクリルポリオール(US6,001,915の実施例Dを2.5質量%)の混合物;ポリエステルポリオール(US6,001,915の実施例Aを2.2質量%)およびポリエーテルポリオールジオール0.4質量%;イミノ型のメチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂5.9質量%;黒色および黄色の顔料分散剤;ブトキシエタノール6.4質量%;Shell Sol OMS1質量%;増粘剤、消泡剤、アミノ型pH調整剤;および主な揮発性成分としての水、を含有する)をプライマー層上に噴霧施与し、続いて60℃で6分間フラッシュオフした。ベースコート層の乾燥膜厚は12.5±2.5μmであった。
【0139】
その後、2液型溶媒系クリアコート組成物A(すなわち、BASF Coatings GmbH社から得ることができる、マスターバッチとしてのiGloss(登録商標)FF81-0485を、SC81-0905硬化剤と2:1で混合した。クリアコート組成物Aを参照されたい)を、噴霧コーティングで施与した。
【0140】
クリアコート組成物A(マスターバッチおよび硬化剤それぞれの総質量に対する質量%で表す):
マスターバッチ:
ポリ(メタ)アクリルポリオールIが26.3質量%(固形分65質量%;OH価175mgKOH/g;Tg(計算値)-31℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールIIが13.9質量%(固形分60質量%;OH価156mgKOH/g;Tg(計算値)26℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールIIIが14.1質量%(固形分67.5質量%;OH価182mgKOH/g;Tg(計算値)26℃);ブチルアセテート20.5質量%;Aromatic100が17.4質量%;UV吸収剤2.3質量%;光安定剤1.0質量%;湿潤剤0.05質量%;消泡剤0.03質量%;アミンで中和したホスフェート触媒2.2質量%;有機ビスマス触媒0.2質量%;ジ-2-エチルヘキシル酸ホスフェート1.0質量%)。
【0141】
硬化剤:
モノシリル-アミノシラン(Dynasylan(登録商標)1189)とビスシリル-アミノシラン(Dynasylan(登録商標)1124)(両方のシランはEvonik社から得ることができる)の混合物との反応によってNCO基の一部が修飾された、脂肪族HDI-三量体80質量%;ブチルアセテート20質量%。
【0142】
実施例1の多層コーティングの外観測定
【0143】
【表1】
【0144】
単一のクリアコート層を80℃の温度で25分間硬化させると、BYK社Wavescan(登録商標)機器で測定した高い長波および短波の値によって示されるレベリングが、不十分となった。50℃の低い硬化温度で25分、続いてより高い硬化温度の80℃で25分硬化させる二重の硬化手順により、はるかに低い長波および短波の測定値で特徴付けられる外観が、著しく改善された。
【0145】
実施例2-クリアコート層1およびクリアコート層2を含む多層コーティングの調製
射出成形により製造した、短炭素繊維20質量%を含有する炭素繊維強化ポリアミド材料を、繊維強化複合材料として使用した(BASF PM Groupから得ることができるUltramid(登録商標)XA3418)。
【0146】
この基材を、プライマー組成物(AdPro U04AM062M;BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033から得ることができる)で噴霧コーティングした。プライマー層の乾燥膜厚は約7±1μmであった。プライマー層を室温(すなわち23℃)でフラッシュオフした。その後、黒色の水系ベースコート組成物(E211KU015)をプライマー層上に噴霧施与し、続いて60℃で6分間フラッシュオフした。ベースコート層の乾燥膜厚は約16μmであった。
【0147】
その後、BASF Coatings GmbH社から得ることができるEverGloss(登録商標)905JF71-0312と、SC29-0109との3.5:1質量での混合からなる2液型溶媒系クリアコート組成物1を、噴霧コーティングにより施与した(下記クリアコート組成物1を参照されたい)。乾燥膜厚は、約52μmであった。プライマー層、ベースコート層、およびクリアコート層を、80℃で25分焼付けた。このようにして焼付けた多層コーティングを室温まで冷却した。
【0148】
クリアコート組成物1(マスターバッチおよび硬化剤それぞれの総質量に対する質量%で表す):
マスターバッチ:
ポリ(メタ)アクリルポリオールIVが38.9質量%(固形分60質量%;OH価151mgKOH/g;T(計算値)69℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールVが9.0質量%(固形分67質量%;OH価130mgKOH/g;T(計算値)-70℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールVIが15.8質量%(固形分59質量%;OH価104mgKOH/g;T(計算値)4℃);Aromatic100が9.4質量%;キシレン6.4質量%;ブチルアセテート8.5質量%;エチレングリコールブチルエーテルアセテート7.1質量%;ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート1.0質量%;UV吸収剤2.3質量%;光安定剤0.8質量%;レベリング剤および消泡剤0.16質量%;噴霧施与用の導電性添加剤0.1質量%;触媒0.08質量%;安息香酸0.5質量%。
【0149】
硬化剤:
脂肪族HDI-三量体67.5質量%;ブチルアセテート16.25質量%;ソルベントナフサ16.25質量%。
【0150】
その後、このようにコーティングした基材のいくつかを、2液型溶媒系クリアコート組成物B(すなわち、BASF Coatings GmbH社から得ることができるマスターバッチDC5995を、硬化剤DH100およびレジューサーUR50と4:1:1で混合した)で噴霧コーティングし、およびこのようにコーティングした基材の他のいくつかを、2液型クリアコートA、すなわち実施例1で使用したのと同じクリアコート組成物で噴霧コーティングした。クリアコート組成物Aおよびクリアコート組成物Bから形成された両方のクリアコート層の乾燥膜厚は、約75μmであった。このようにコーティングした基材をそれぞれ25分間、それぞれ異なる温度(25℃、40℃、50℃および60℃)で焼付けた。その後、このようにコーティングした基材を室温(すなわち23℃)まで15分間冷却し、それぞれ80℃の温度で25分間の第2の焼付けを行った。
【0151】
クリアコート組成物B(マスターバッチおよび硬化剤それぞれの総質量に対する質量%で表す):
マスターバッチ:
ポリ(メタ)アクリルポリオールVIIが40.4質量%(固形分50質量%;OH価146mgKOH/g;Tg(計算値)75℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールVIIIが16.2質量%(固形分70質量%;OH価141mgKOH/g;Tg(計算値)94℃);ポリ(メタ)アクリルポリオールIXが6.1質量%(固形分43質量%;OH価87mgKOH/g;Tg(計算値)74℃);パラクロルベンゾトリフルオリド(PCBTF)32.48質量%;エチル3-エトキシプロピオネート2.2質量%;エチレングリコールブチルエーテルアセテート0.9質量%;UV吸収剤0.7質量%;光安定剤0.5質量%;レベリング剤および消泡剤0.32質量%;ジブチルスズジラウレート触媒0.04質量%;安息香酸0.2質量%。
【0152】
硬化剤:
脂肪族HDI-三量体55質量%(NCO含有量:NCO21.8質量%);PCBTF45質量%。
【0153】
レジューサーUR50:
n-ブチルアセテート62.1質量%;VM&P Naphtha HT(Shell Chemicals社から入手可能)16.0質量%;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート13.0質量%;HI SOL10(Jamson Labs,Inc.社から入手可能)5.9質量%;エチレングリコールブチルエーテルアセテート3.0質量%。
【0154】
実施例2の多層コーティングの外観測定
【0155】
【表2】
【0156】
* すべてのパネルについて、クリアコート組成物2(CC2外観)の外観測定前に2回目の焼付けを80℃で25分間行った。
【0157】
実施例1で単一のクリアコート組成物を施与したのとは対照的に、実施例2では2つのクリアコート組成物を施与した(第1のクリアコート組成物CC1=BASF Coatings GmbH社からのEverGloss(登録商標);第2のクリアコート組成物A=BASF Coatings GmbH社からのiGlossに基づく(上記参照)、または第2のクリアコート組成物B=BASF Coatings GmbH社からのDiamont DC5995に基づく(上記参照)。外観の結果は、さらに改善された。例えば、クリアコート組成物Aの外観は、50℃で25分、その後80℃で25分の場合、長波値5および短波値19であり、それに対して、単一のクリアコート組成物のみを使用した実施例1では、長波値12および短波値37が検出された。さらに、第2のクリアコートの初回の焼付けを40または50℃の温度で行うと、最良の結果が得られる一方で、より高いおよび低い温度では依然として改善はされるものの、より目立たない改善であることが示された。
【0158】
実施例3-溶媒系および水系ベースコート層上にクリアコート層1およびクリアコート層2を含む多層コーティングの調製
射出成形により製造した、短炭素繊維20質量%を含有する炭素繊維強化ポリアミド材料を、繊維強化複合材料として使用した(BASF PM Groupから得ることができるUltramid(登録商標)XA3418)。
【0159】
この基材を溶媒系プライマー組成物(AdPro U04AM062M;BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033から得ることができる)で噴霧コーティングした。プライマー層の乾燥膜厚は約7±1μmであった。プライマー層を室温(すなわち23℃)でフラッシュオフした。
【0160】
その後、基材のいくつかを黒色の水系ベースコート組成物(E211KU015)でコーティングし、プライマー層上に噴霧施与した後、60℃で6分間フラッシュオフした。ベースコート層の乾燥膜厚は約16μmであった。
【0161】
基材材料の他のいくつかを、黒色の高固形分溶媒系ベースコート(E387KU343C BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033)で、プライマー層にわたって15±2μmの厚さに噴霧コーティングし、室温(すなわち23℃)で10分間フラッシュオフした。
【0162】
その後、基材のいくつかを2液型クリアコート組成物(BASF Coatings GmbH社から得ることができるEverGloss(登録商標)905JF71-0312をSC29-0109と3.5:1質量で混合した)で噴霧コーティングした。乾燥膜厚は約52μmであった。プライマー層、ベースコート層およびクリアコート層を、80℃で25分間焼付けた。
【0163】
他の基材は、高焼付け用に配合した2液型クリアコートで噴霧コーティングした(BASF Corporation、Coatings Division、26701 Telegraph Rd.Southfield,MI48033から入手可能なProGloss2K4、E10CG081GをN52CG081と3:1体積で混合した)。乾燥膜厚は約52μmであった。プライマー層、ベースコート層およびクリアコート層を、140℃で25分間焼付けた。このように焼付けた多層コーティングを、室温まで冷却した。
【0164】
その後、このようにコーティングしたすべての基材を、2液型クリアコートA、すなわち実施例1で使用したのと同じクリアコート組成物で噴霧コーティングした。乾燥膜厚は約55μmであった。このようにコーティングした基材を、50℃で25分間焼付けた。外観を読みとる前に、2回目の焼付けは行わなかった。
【0165】
実施例3の多層コーティングの外観測定
【0166】
【表3】
【0167】
* 黒色水系ベースコート組成物(E211KU015)
** 黒色高固形分溶媒系ベースコート(E387KU343C)
【0168】
表3の最初の結果の行の結果は、表2のクリアコート組成物A、25分/50℃の結果とほぼ同一であった。唯一の違いは、実施例3では80℃で25分間の2回目の焼付けを行わなかったことである。長波値5は同じである一方で、短波値19(2回目の焼付けあり)は、22(2番目の焼付けなし)よりわずかに優れており、高温での2回目の焼付けが本発明の課題を解決するために要求されないことを示す。
【0169】
さらに、実施例3からの外観の結果は、溶媒系および水系ベースコートについて同様の結果を達成する性能を実証している。同様に、最初のクリアコートを高い焼付け温度で焼付けすると、同様の結果が得られる。
【0170】
結果は、本発明の目標が、ベースコートの種類(水系または溶媒系)および第1のクリアコートの硬化条件に関わりなく、第2のクリアコート組成物の低温硬化によって達成されることを明らかに示している。