(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】発進装置のダンパー
(51)【国際特許分類】
F16H 45/02 20060101AFI20231204BHJP
F16F 15/134 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
F16H45/02 Y
F16H45/02 X
F16F15/134 A
F16F15/134 Z
(21)【出願番号】P 2020562097
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 US2019015681
(87)【国際公開番号】W WO2019148191
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2022-01-21
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520280302
【氏名又は名称】エクセディ グローバルパーツ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ハンジュン
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10061925(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/159776(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056733(WO,A1)
【文献】特開2012-72846(JP,A)
【文献】特開2015-14358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 45/02
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機の回転出力をトランスミッションの回転入力に伝えるための発進装置(10)であって、
前記原動機の
回転出力部材に接続するように構成されたフロントカバー(12)と、
中心軸を規定し、前記トランスミッションの前記回転入力に接続するように構成された出力ハブ(26)と、
前記フロントカバー(12)に接続され、前記フロントカバー(12)と一緒に回転可能なリアカバー(16)と、
前記フロントカバー(12)と前記リアカバー(16)との双方により形成される容器内にのびる複数のインペラブレード(20)を有するインペラ(18)と、
前記容器内に配置されたタービン(22)であって、前記インペラブレード(20)とほぼ向かい合った複数のタービンブレード(24)を、油圧作動油が前記インペラブレード(20)から前記タービンブレード(24)に向かって流れるように含む前記タービン(22)と、
前記発進装置(10)の前記出力ハブ(26)と前記タービン(22)との間に連結されたダンパー(40)と、
前記ダンパー(40)に連結され、前記フロントカバー(12)および前記リアカバー(16)のうちの一方と一緒の回転のために
前記ダンパー(40)を切断可能にロックするように構成されたロックアップクラッチアセンブリ(52)と、
を含み、
前記ロックアップクラッチアセンブリ(52)は、前記
ロックアップクラッチアセンブリ(52)のクラッチドラム(56)と前記ダンパー(40)の複数の入力部材(50)とを統合したクラッチプレート(78)によって前記ダンパー(40)に接続され、
前記クラッチプレート(78)は、前記ダンパー(40)のハブフランジ(44)に対して移動可能であるとともに、前記ハブフランジ(44)によって支持され、
前記クラッチプレート(78)の支持は、前記クラッチプレート(78)に形成された円周方向の複数の溝(80)を通ってのびる複数のストップピン(82)を含み、
前記複数のストップピン(82)は、前記クラッチプレート(78)の一方の側にあるリングプレート(84)を、前記クラッチプレート(78)の他方の側にある前記ハブフランジ(44)で固定し、前記クラッチプレート(78)を案内する、発進装置(10)。
【請求項2】
前記クラッチプレート(78)は単一物であり、前記クラッチドラム(56)を形成する複数の部分が一端に、前記複数の入力部材(50)を形成する複数の部分が他端に取り込まれている、請求項1に記載の発進装置(10)。
【請求項3】
前記クラッチプレート(78)は、前記クラッチドラム(56)と前記複数の入力部材(50)との間で連続している、請求項1または2に記載の発進装置(10)。
【請求項4】
前記クラッチプレート(78)は、前記クラッチドラム(56)と前記複数の入力部材(50)との間で半径方向に連続している、請求項1または2に記載の発進装置(10)。
【請求項5】
前記クラッチドラム(56)と複数の入力部材(50)は軸方向の延長部であり、前記クラッチプレート(78)の半径方向にのびる部分によって接続されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の発進装置(10)。
【請求項6】
前記複数の円周方向にのびる溝(80)が、前記クラッチプレート(78)の前記半径方向にのびる部分に形成されている、請求項5に記載の発進装置(10)。
【請求項7】
前記溝(80)は各々、互いに隣接する前記入力部材(50)の間に配置されている、請求項6に記載の発進装置(10)。
【請求項8】
前記ハブフランジ(44)は、前記出力ハブ(26)を形成する複数の部分を含む、請求項5または6に記載の発進装置(10)。
【請求項9】
前記クラッチプレート(78)は、4つ未満の入力部材(50)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の発進装置(10)。
【請求項10】
前記ダンパー(40)は、4つ未満の円周方向にのびるスプリング(48)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の発進装置(10)。
【請求項11】
前記クラッチドラム(56)から半径方向内側にのびる複数のフリクションプレート(60)を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の発進装置(10)。
【請求項12】
前記クラッチドラム(56)は、前記複数の入力部材(50)の半径方向内側に配置されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の発進装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、自動車のオートマチックトランスミッションと一緒に使用されるトルクコンバーターなどの発進装置に関する。特に、本発明は、そのような発進装置の、ダイナミックダンパーとしても知られるスプリング付き同調質量ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オートマチックトランスミッションを備える車両では、エンジンの出力をオートマチックトランスミッションと接続するのにトルクコンバーターが利用されている。代表的なトルクコンバーターを、
図1に示す。
【0003】
図示のように、トルクコンバーターは、エンジンのフレックスプレート(図示せず)に接続されてフレックスプレートと一緒に回転するフロントカバーを含む。フロントカバーには、バックカバーが接続されている。バックカバーは、インペラと統合され、インペラを回転させる。インペラには、フロントカバーとリアカバーによって形成された容器内で内側にのびる一連のブレードまたは羽根が含まれる。インペラが回転している間、その容器内の油圧作動油が遠心力で半径方向外側に流れた後、ブレードとインペラの形状がゆえに前方(
図1の左側)に向かって流れ、そこで作動油がタービンのブレードにぶつかる。タービンブレードの半径方向外側の部分が、インペラブレードの半径方向外側の部分と向かい合っているため、タービンブレードにはインペラブレードから油圧作動油が送られる。
【0004】
油圧作動油の力とタービンブレードの形状がゆえにタービンが回転し、油圧作動油の流れる方向が半径方向内側(
図1では下方)に変わる。その後、油圧作動油はインペラに向かって戻る。タービンはハブにも取り付けられており、このハブがオートマチックトランスミッションの入力軸に取り付けられている。このため、タービンとハブが回転すると、入力軸とオートマチックトランスミッションも回転する。
【0005】
トルクを増幅できるようにするために、インペラブレードの下部とタービンの下部との間には、ワンウェイクラッチに取り付けられたステータがある。ステータは、インペラの回転を妨げることなく、作動油がインペラに送られるようにタービンからの作動油が流れる方向を変える。この方向転換によって、トルクが増幅される。上記の説明から明らかなように、インペラ、タービンおよびステータは、トルクコンバーターにおける流体力学的カップリングまたは回路を形成する。
【0006】
タービンの前方、タービンとフロントカバーとの間で、トルクコンバーターには、クラッチアセンブリとダイナミックダンパーも含まれる。このうちダイナミックダンパーは、動吸振器と呼ばれることもある。
図1から明らかなように、クラッチアセンブリは、トルクコンバーターの前方すなわちエンジン側に配置され、締結時には、タービンの回転をフロントカバーの回転およびエンジンの出力にロックする。ロックアップがなされている間ならびに、クラッチアセンブリの締結および解放時には、トルクコンバーターを介して、エンジンの回転速度の変動(oscillation)(変動(fluctuation)および変動(variation))が伝わる可能性がある。この振動と、それに伴って生じる騒音(NV)が自動車の操縦者によって感得され、操縦者に聞こえることが多い。操縦者が経験するNVを制限するために、発進装置には、ダイナミックダンパー/動吸振器が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のダンパーは、トルクをドライブプレートに伝達するクラッチドラムを有する。ドライブプレートは、クラッチドラムからトルクを受け、そのトルクをダンパーのスプリングに出力する。スプリングは、トルクをハブフランジに伝達する。ハブフランジは、このハブフランジに設けられた溝と、溝を通って挿入されたストップピンとを介して、ドライブプレートに対してねじり運動可能である。ストップピンは、スプリングを支える支持板も通ってのびている。ハブフランジに溝が設けられていることで、ハブフランジが弱くなり、スプリングが小さくなり、ハブフランジとドライブプレートとの間の角回転が小さくなる。これは、ダンパーレートが上がることを意味する。ハブフランジの溝とストップピンとの間の隙間がゆえ、クラッチプレートが半径方向に移動する可能性があり、そのことがクラッチの動作に悪影響を及ぼす場合がある。さらに、スプリングとドライブプレートとの間の相対的な動きが原因で、大きなヒステリシストルクが生じる可能性があり、支持板は、クラッチで動作するピストンと結果として生じるドライブプレートの動きに対して、軸方向に反応することが求められる。このため、上述したような従来のダンパー構造でのスペースとパッケージングの制約下では、大きなスプリングレートとヒステリシスが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
公知の技術分野における様々な欠点および他の制約を解消するために、本発明は、原動機の回転出力をトランスミッションの回転入力に伝えるための発進装置であって、原動機の回転出力部材に接続するように構成されたフロントカバーと、中心軸を規定し、トランスミッションの回転入力に接続するように構成された出力ハブと、フロントカバーに接続され、フロントカバーと一緒に回転可能なリアカバーと、フロントカバーとリアカバーとの双方により形成される容器内にのびる複数のインペラブレードを有するインペラと、この容器内に配置されたタービンであって、インペラブレードとほぼ向かい合った複数のタービンブレードを、油圧作動油がインペラブレードからタービンブレードに向かって流れるように含むタービンと、発進装置の出力ハブとタービンとの間に連結されたダンパーと、ダンパーに連結され、フロントカバーおよびリアカバーのうちの一方と一緒の回転のためにメインダンパーを切断可能にロックするように構成されたロックアップクラッチと、を含み、クラッチアセンブリが、当該クラッチアセンブリのクラッチドラムとダンパーの複数の入力部材とを統合したクラッチプレートによってダンパーに接続されている、発進装置を提供する。
【0009】
本発明の別の態様では、原動機の回転出力をトランスミッションの回転入力に伝えるための発進装置であって、原動機の回転出力部材に接続するように構成されたフロントカバーと、中心軸を規定し、トランスミッションの回転入力に接続するように構成された出力ハブと、フロントカバーに接続され、フロントカバーと一緒に回転可能なリアカバーと、フロントカバーとリアカバーとの双方により形成される容器内にのびる複数のインペラブレードを有するインペラと、この容器内に配置されたタービンであって、インペラブレードとほぼ向かい合った複数のタービンブレードを、油圧作動油がインペラブレードからタービンブレードに向かって流れるように含むタービンと、発進装置の出力ハブとタービンとの間に連結されたダンパーと、ダンパーに連結され、フロントカバーおよびリアカバーのうちの一方と一緒の回転のためにダンパーを切断可能にロックするように構成されたロックアップクラッチと、クラッチアセンブリをダンパーに接続するクラッチプレートであって、ダンパーの複数の入力部材と一体に形成されたクラッチアセンブリのクラッチドラムを含むクラッチプレートと、を含む、発進装置。
【0010】
別の態様では、クラッチプレートは単一物であり、クラッチドラムを形成する複数の部分が一端に、複数の入力部材を形成する複数の部分が他端に取り込まれている。
【0011】
さらに別の態様では、クラッチプレートは、クラッチドラムと複数の入力部材との間で連続している。
【0012】
さらに別の態様では、クラッチプレートは、クラッチドラムと複数の入力部材との間で半径方向に連続している。
【0013】
追加の態様では、クラッチドラムと複数の入力部材は軸方向の延長部であり、クラッチプレートの半径方向にのびる部分によって接続されている。
【0014】
別の態様では、クラッチプレートの半径方向にのびる部分が、円周方向にのびる複数の溝を含む。
【0015】
別の態様では、溝は各々、互いに隣接する入力部材の間に配置されている。
【0016】
さらに別の態様では、クラッチプレートは、溝を通ってのびるストップピンによってダンパーのハブフランジに移動可能に取り付けられ、ハブフランジは、出力ハブを形成する複数の部分を含む。
【0017】
さらに別の態様では、クラッチプレートはリングプレートとハブフランジとの間に配置され、ストップピンは、リングプレートと噛み合う。
【0018】
追加の態様では、クラッチプレートは、4つ未満の入力部材を含む。
【0019】
さらに別の態様では、ダンパーは、円周方向にのびる4つ未満のスプリングを含む。
【0020】
別の態様では、クラッチドラムから半径方向内側にのびる複数のフリクションプレートを有する。
【0021】
追加の態様では、クラッチドラムは、入力部材の半径方向内側に配置されている。
【0022】
本発明のさらに別の目的、特徴および利点は、本明細書に添付され、本明細書の一部をなす図面および特許請求の範囲を参照して以下の説明を検討した後、当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、トルクコンバーターとして知られた構造で、上述した、そのような装置を軸方向断面で示す部分図である。
【
図2】
図2は、本発明の原理を具体化した発進装置を軸方向に半分にした断面で示す部分図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す発進装置で利用されるクラッチプレートの部分軸方向図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで図面を参照すると、本発明の原理を具体化した発進装置を概略的に
図2に示し、この装置について図面を参照して説明する。以下の説明では、「上」や「下」などの方向を示す用語を使用する場合がある。これらの用語は、図面に示した要素の向きに照らして読むことを意図したものである。したがって、「上」は図の一番上に向かう方向を示し、「下」は図の一番下に向かう方向を示す。「左」および「右」という用語も同様に解釈される。「内側に(inward)」または「内(inner)」および「外側に(outward)」または「外(outer)」という用語は、おおむね言及される部分の中心軸に向かうか中心軸から離れる方向を示し、そのような軸が図面に示されているか否かを問わない。したがって、軸方向の面とは、軸方向に向いている面である。言葉をかえると、軸方向の面は、中心軸に沿う方向を向いている。また、半径方向の面は、おおむね中心軸から離れるか中心軸に向かって半径方向に面することになる。しかしながら、これらの相対的な用語は、説明の便宜上用いるものであり、特定の向きを要求することを意図したものではないことが理解されるであろう。実用上は、本明細書で用いる方向についての言及が、装置の対応するコンポーネントの設置状態や向きと必ずしも対応しない場合がある。
【0025】
「接続された」、「結合された」、「取り付けられた」または「相互接続された」など、取り付けや連結などに関する用語は、複数の構造体同士が、直接または介在する構造体を介して間接的に、互いに固定または取り付けられている関係をいう。これらの取り付けや関係は、特に明記されていない限り、移動可能であってもよいし、固定されていてもよい。「統合」とは、複数の要素が1つのユニットを形成するように互いに接続されていることを意味する。「単一物」とは、要素のすべての部分が一緒に形成される単一のワンピース要素を意味する。したがって、「単一物」という用語は、「統合」という用語と区別されるべきである。
【0026】
ここで
図2を参照すると、本発明の原理を具体化した発進装置が、概略的に符号10で示されている。発進装置10は、複数の取付機構14を有するフロントカバー12を含む。取付機構14は、例えば、フロントカバー12の周囲に間隔をあけて配置され、発進装置10を、モーターなどの原動機(図示せず)のアウトレットまたはフレックスプレートに接続するように構成された、ねじ付きスタッドなどである。モーターなどの原動機としては、内燃機関、電気モーター、他の動力源またはそれらの組み合わせがあげられるが、これらに限定されるものではない。また、その半径方向の周囲において、フロントカバー12は、溶接17または他の適切な手段によってリアカバー16に固定され、液密の容器を形成している。フロントカバー12は発進装置10のエンジン側をなし、リアカバー16は発進装置10のトランスミッション側をなす。フレックスプレートが原動機のクランクシャフト(図示せず)によって回転すると、フロントカバー12とリアカバー16が一緒に回転する。
【0027】
内部的には、リアカバー16には、インペラ18を形成するように一連のブレードまたは羽根20が設けられている。リアカバー16が回転している間、オートマチックトランスミッションから第1の経路に沿って油圧作動油が供給され、インペラ18の回転しているブレード20の遠心力で半径方向外側に流れる。また、ブレード20とリアカバー16の内面がゆえ、油圧作動油の流れが前方すなわちリアカバー16から離れる方向に向けられる。
図2では、作動油の外側に向かう動きは図の一番上に向かい、作動油の前方に向かう動きは図の左側に向かう。
【0028】
インペラ18のすぐ前方において、発進装置10は、同じく一連のブレード24で形成されたタービン22を含む。タービン22は、出力ハブ26に取り付けられている。ハブ26は、自動車のトランスミッションの回転可能な入力軸28に接続されている。
図2から明らかなように、出力ハブ26の内径は、スプライン接続を形成するように構成されている。
【0029】
タービン22のブレード24は、インペラ18からの油圧作動油を受ける向きで配置されている。インペラ18からの油圧作動油の力とタービンのブレード24の形状がゆえ、タービン22は、インペラ18の回転方向と同一の回転方向に駆動される。タービン22まで送られた油圧作動油は下方に流れ、流れが後方に方向転換されてインペラ18のほうに戻る。
【0030】
タービン22のブレード24の半径方向内側部分とインペラ18のブレード20との間に配置されているのは、ステータ30である。ステータ30は、タービン22からインペラ18に向かって戻されている油圧作動油を受ける。ステータ30は、作動油がインペラ18と同じ回転方向になるように、作動油の流れの方向を変える。この方向転換は、作動油が効率的にインペラ18まで送られるとともに、インペラ18の回転を妨げないようになされ、この方向転換によって、発進装置を伝わるトルクを増幅することができる。このフルードカップリングにより、エンジンの出力からの回転が、オートマチックトランスミッションの入力軸28の回転として伝達される。
【0031】
ステータ30と統合されているのは、ステータ30の回転を一方向に制限するワンウェイクラッチアセンブリ32である。ワンウェイクラッチアセンブリ32は、ステータ30を支持する外輪34と、内輪36とを含む。ワンウェイクラッチアセンブリ32の内輪36は、オートマチックトランスミッションの入力に付随する、固定式で回転しない支持軸38に取り付けられている。簡潔にするために、また、ワンウェイクラッチアセンブリは本発明の技術分野でよく知られているため、当業者であればワンウェイクラッチアセンブリ32の構造と動作を容易に理解できるであろうし、よって、アセンブリ32について本明細書でさらに詳細に説明することはしない。
【0032】
発進装置10には、タービン22の前方、タービン22とフロントカバー12との間に、ダンパー40が含まれる。ダンパー40は、出力ハブ26によって支えられている。出力ハブ26は、トランスミッションの入力軸28に取り付けられている。ダンパー40は、フロントカバー12とリアカバー18の回転速度の変動を吸収し、オートマチックトランスミッションの一層円滑な動作を提供するとともに、車両の乗員に振動が伝わるのを抑える。
【0033】
ダンパー40は、出力ハブ26を含むハブフランジ44の一部として形成された出力部材42を含む。
図2から明らかなように、タービン22が、リベット46または別の締結機構によって、ハブフランジ44に接続または固定される。
【0034】
出力部材42と入力部材50との間には、ダンパー40の複数のスプリング48が円周方向に配置されている。スプリング48は、フローティング支持板49によって支持されている。フローティング支持板49は、スプリングの外周の大部分を囲み、以下でさらに説明するように、クラッチプレート78とハブフランジ44との間のねじり運動の間、スプリング48と一緒に動くように構成されている。支持板49の軸方向の動きは、互いに固定された保持板51およびハブフランジ44によって制限される。したがって、入力部材50によって入力されるねじり運動は、スプリング48に伝達され、スプリング48によって、このねじり運動が円周方向に出力部材42および出力ハブ26まで伝達され、出力ハブ26によって、ねじり運動すなわち回転が、トランスミッションの入力軸28に伝達される。
【0035】
ダンパー40とフロントカバー12との間に設けられているのは、ロックアップクラッチアセンブリ52である。締結時、ロックアップクラッチアセンブリ52は、フロントカバーの回転、したがってエンジンの出力を、タービン22および出力ハブ26、したがってトランスミッションの入力軸28にロックする。ロックアップクラッチアセンブリ52は、クラッチハブ54、クラッチドラム56、内側フリクションプレート58および外側フリクションプレート60を含む。クラッチハブ54は、溶接または他の手段によってフロントカバー12に固定され、内側フリクションプレート58を支持する。内側フリクションプレート58は、スプライン嵌合でクラッチハブ54に取り付けられている。外側フリクションプレート60は、内側フリクションプレート58と交互に配置され、クラッチドラム56に支持されている。内側フリクションプレート58と同様に、外側フリクションプレート60も、スプライン嵌合でクラッチドラム56に取り付けられている。
【0036】
クラッチアセンブリ52の締結は、クラッチピストン62と、第1すなわち「オン」圧力容器64および第2すなわち「オフ」圧力容器66とによって制御される。オン圧力容器64は、クラッチピストン62とリアクションプレート68との間に形成されている。リアクションプレート68は、出力ハブ26に取り付けられたフランジ部材70によって、静止状態で支持されている。オフ圧力容器68は、クラッチピストン62とフロントカバー12との間に形成されている。好ましくは油圧作動油によって、第1の流体経路72を介してオン圧力容器64に締結圧がかかると、クラッチピストン62がフロントカバー12のほうに移動し、内側フリクションプレート58が外側フリクションプレート60と噛み合う。同じく好ましくは油圧作動油によって、第2の流体経路74を介してオフ圧力容器66に解放圧がかかると、クラッチピストン62は、フロントカバー12から離れてリアクションプレート68のほうに移動し、内側フリクションプレート58が外側フリクションプレート60から離れる。締結圧が加わると、解放圧が加わることはなく、逆も同様である。また、クラッチピストン62とリアクションプレート68との間には、Oリングなどの流体シール76が設けられ、オン圧力容器64が流体的に密閉されている。流体シール76は、クラッチピストン62がリアクションプレート68に対して移動できるようにしたまま、オン圧力容器64の流体のインテグリティを維持する。
【0037】
回転トルクは、クラッチプレート78によって、クラッチアセンブリ52からダンパー40に伝達される。これは一体に形成され、一端にクラッチドラム56、他端に入力部材50を含む。
【0038】
クラッチプレート78およびハブフランジ44は、ねじり運動のために互いに支持されている。これは、
図3に見られるように、クラッチプレート78に形成された円周方向にのびる溝80によって、ある程度は達成される。ストップピン82が溝80を通ってのび、クラッチプレート78の外側に取り付けられたリングプレート84をハブフランジで固定する。こうして、ストップピン82は、ねじり回転の間、クラッチプレート78を案内するように動作する。
【0039】
従来の発進装置とは異なり、クラッチプレート78は、クラッチドラム56と入力部材50とを単一物のワンピース設計で統合したものである。
図3から明らかなように、溝80は、入力部材50とクラッチドラム56との半径方向の整列から離れた位置にある。このように、円周方向に見れば、溝80は、クラッチプレート78の周囲に半径方向に間隔をあけて設けられた入力部材50間の位置で、クラッチプレート78に形成される。入力部材50とクラッチドラム56との整列から離れた円周上の位置に溝80を配置することにより、単一物のクラッチプレート78の強度が増し、スプリング48を大きくして、スプリング48が対応するねじれ角を長くすることが可能になる。結果として、クラッチアセンブリ32およびダンパー40によって、発進装置10のスプリングレートを小さくし、ダンパーの角移動量を増し、ヒステリシストルクを小さくし、軸方向のパッケージングを削減し、騒音および振動性能を抑えることができる。
図3から明らかなように、本明細書で規定した構造であれば、4つ未満の入力部材50をダンパーの周囲に円周方向に間隔をあけて配置し、これに対応して円周方向に延びる4つ未満のスプリング48を用いて、各々のスプリング48が互いに隣接する入力部材50の間にくるようにして、ダンパーを構成することが可能になる。
【0040】
発進装置10が動作している間、オフ圧力容器66からの作動油は、ダンパー40の周りで半径方向に流れ、円周方向の空間86に流入する。円周方向の空間86は、おおむね、フロントカバー12およびリアカバー16の半径方向の側面とタービン22との間に形成される。そうすると、この作動油の一部が、円周方向の空間68からインペラ18とタービン22との間の流体力学的スペースにも流れ、そこで作動油が発進装置10内でフルードカップリングを形成するように作用する。また、油圧作動油は、フルードカップリングから通路88に入り、通路90を通って発進装置10から出ることができる。一部の作動油は、フルードカップリングから通路92に入り、通路94を通って発進装置10から出ることもある。
【0041】
上述した作動油の流れは、例示した発進装置10に対するものであることに留意されたい。厳密な作動油の流れは、発進装置の具体的な設計基準に基づいて変更可能であり、また変化し、装置10は、例示した3経路構成ではなく、2経路装置または4経路装置で構成されてもよい。
【0042】
当業者が容易に理解するように、上記の説明は、本発明の原理を組み込んだ発進装置の少なくとも1つの実施の例示として意図されている。以下の特許請求の範囲で規定されるように、本発明の精神から逸脱することなく、本発明に対する改変、変形および変更が可能であるため、この説明は、本発明の範囲または用途を限定することを意図するものではない。