(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】動力工具のためのアクチュエータ構成
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20231204BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B25F5/00 B
G01B7/00 101H
(21)【出願番号】P 2020569985
(86)(22)【出願日】2019-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2019063433
(87)【国際公開番号】W WO2019238388
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ギッセルマン ハンス ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】サクリソン フレデリク カール エミル
(72)【発明者】
【氏名】ボッシ シルヴァ ギレルモ エミリアーノ
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3018959(JP,U)
【文献】特開2006-120466(JP,A)
【文献】特表2003-519372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
G01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ構成を備える手持ち動力工具であって、前記アクチュエータ構成は、可動式トリガー部材(30)及びセンサー構成(40、50、60)を含み、前記可動式トリガー部材は、1つの磁気素子を含み、前記センサー構成は、前記可動式トリガー部材(30)と連動する前記磁気素子の前記センサー構成に対する変位に応答し、前記センサー構成は、
前記磁気素子の位置に比例した信号をもたらすように構成されたアナログ磁場センサー(40)と、
前記磁気素子の位置に応じた第1のデジタルの切り替わり点をもたらすように構成された第1のデジタル磁場センサー(50)と、
前記磁気素子の位置に応じた第2のデジタルの切り替わり点をもたらすように構成された第2のデジタル磁場センサー(60)と、
を含み、
前記磁気素子は、前記アナログ
磁場センサー
(40)、前記第1のデジタル
磁場センサー(50)、及び、前記第2のデジタル
磁場センサー(60)に沿って直線的に移動する、手持ち動力工具。
【請求項2】
前記センサー構成は、
前記アナログ磁場センサー(40)、前記第1のデジタル磁場センサー(50)、及び、前記第2のデジタル磁場センサー(60)が第1の方向に少なくとも連続的に配置されるように配置される、請求項1に記載の手持ち動力工具。
【請求項3】
前記センサー構成に含まれる
前記アナログ磁場センサー(40)、前記第1のデジタル磁場センサー(50)、及び、前記第2のデジタル磁場センサー(60)は、直線的に配置される、請求項1又は2に記載の手持ち動力工具。
【請求項4】
前記アナログ磁場センサーは、前記第1及び前記第2のデジタル磁場センサーの間に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の手持ち動力工具。
【請求項5】
前記可動式トリガー部材(30)は、突出要素(33)を含み、前記磁気素子は、前記突出要素内に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の手持ち動力工具。
【請求項6】
前記突出要素(33)は、凹部(33b)を含み、前記磁気素子は、前記凹部に嵌合される、請求項5に記載の手持ち動力工具。
【請求項7】
前記センサー構成は、回路基板(70)の表面上に配置され、前記突出要素は、前記突出要素に沿って延び、前記回路基板の前記表面に摺動的に当接するようになった支持隆起部(33a)を含み、前記回路基板は、前記突出要素がこれに沿って摺動的に当接することができる支持部分を含む、請求項5又は6に記載の手持ち動力工具。
【請求項8】
前記センサー構成に含まれる
前記アナログ磁場センサー(40)、前記第1のデジタル磁場センサー(50)、及び、前記第2のデジタル磁場センサー(60)のうちの少なくとも1つは、ホール効果センサーである、請求項1から7のいずれか1項に記載の手持ち動力工具。
【請求項9】
ハウジング(11)をさらに備え、前記可動式トリガー部材は、少なくとも部分的に前記ハウジングによって支持され、前記ハウジングに対して移動可能に配置される、請求項1から8のいずれか1項に記載の手持ち動力工具。
【請求項10】
前記可動式トリガー部材は、
組み付け時、第1の平面で前記ハウジングの案内面(11a)に沿って摺動するように構成された第1の案内要素(34)と、
前記可動式トリガー部材が所定の位置に案内されるように、組み付け時、前記第1の平面とは異なる第2の平面で前記ハウジングの第2の案内面(11b)に当接するように構成された第2の案内要素(35)と、
を含む、請求項9に記載の手持ち動力工具。
【請求項11】
前記工具は、手持ち式ドリルである、請求項1から10のいずれか1項に記載の手持ち動力工具。
【請求項12】
手持ち動力工具が備え、かつ、一つの磁気素子を有する可動式トリガー部材(30)を備えたアクチュエータ構成のためのセンサー構成を較正する方法であって、
前記センサー構成は、前記磁気素子の位置に比例した信号をもたらすように構成された少なくとも第1のアナログ磁場センサー(40)と、
前記磁気素子の位置に応じた第1のデジタルな切り替わり点をもたらすように構成された第1のデジタル磁場センサー(50)と、
前記磁気素子の位置に応じた第2のデジタルな切り替わり点をもたらすように構成された第2のデジタル磁場センサーと、を備え、
前記方法は、
前記可動式トリガー部材(30)が備える前記磁気素子を前記可動式トリガー部材の押し下げによって前記センサー構成に沿って変位させ、前記磁気素子を前記アナログ
磁場センサー、前記第1のデジタル
磁場センサー(50)、及び、前記第2のデジタル
磁場センサー(60)に沿って直線的に移動するステップと、
前記第1のアナログ磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第1のデジタル磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第2のデジタル磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第1のデジタル磁場センサー及び前記第2のデジタル磁場センサーのうちの少なくとも一方の切り替わり点を特定するステップと、
前記特定された切り替わり点を前記アナログ磁場センサーの開始点の固定基準として使用して、トリガーストロークがいつ開始すべきかを特定するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記可動式トリガー部材(30)の完全な押し下げによって、前記トリガーストロークが終了すべき時の最大点を特定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項2又は請求項2に従属する請求項3~11の何れか1項に記載の手持ち動力工具を制御するための方法であって、当該方法は、
前記可動式トリガー部材の押し下げによって、前記センサー構成に沿った前記第1の方向に前記可動式トリガー部材(30)を変位させるステップと、
前記第1のアナログ
磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第1のデジタル
磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第2のデジタル
磁場センサーの応答を検索するステップと、
前記第1及び第2のデジタル
磁場センサーの一方が減少する磁場を示し、前記第1及び第2のデジタル
磁場センサーの他方が上昇する磁場を示す場合に、前記工具を作動状態に設定するステップ、または、両方のデジタル磁場センサーが上昇する磁場を示した場合、前記工具を動作不能状態に設定するステップと、を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、動力工具に関し、より詳細には、可動式トリガー部材及びセンサー構成を備えるアクチュエータ構成を有する動力工具、及びこのような構成を較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力工具、例えば、手持ち式動力工具は、一般に作動機構部を含み、これによって、オペレータは、工具をオン又はオフすること、すなわち、工具を作動及び非作動にすることができる。このような機構の例は、例えば動力工具を始動させるためにユーザーが押すことができるトリガーを含むオン/オフボタン及び作動機構を備える。また、単純なオン/オフ機能よりも正確な工具の制御を可能にするトリガーも知られている。1つの例は、摺動接点を備えるトリガー機構であり、接点は、トリガー部材の後退と連係して移動し、結果として、トリガーの移動にわたる制御可能性がもたらされる。しかしながら、このような装置は、従来のトリガーよりも複雑なので高価になる傾向がある。さらに重要なことには、摺動接点の1つの大きな問題は、このような接点は激しい摩耗を受けやすく、従って、所望されるよりも寿命が短くなる傾向がある点である。
【0003】
これらの欠点の一部を軽減するために、すなわち、トリガー部材によって寿命が短いという欠点を伴うことなく動力工具の挙動の正確な制御を得るために、非接触センサが提案されている。このようなセンサーの1つの例は、いわゆる磁場センサーである。このようなセンサーを利用する場合、可動式トリガー内に配置された磁気素子の磁場は、磁場センサーによって検知することができる。しかしながら、これらのセンサーは、様々な欠点と関連しており、例えば、センサー間の挙動の散らばりは、このようなトリガー構成の精度及び外部干渉磁場に対するセンサーの感度を低下させる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、このようなセンサー構成を有する動力工具の分野を改善する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、改良されたアクチュエータ構成を備える動力工具を提供することが望ましいであろう。特に、動力工具に対して改良された制御及び機能をもたらす磁場センサーを含むアクチュエータ構成を備える動力工具を提供することが望ましいであろう。これらの関心事項の1又は2以上により良好に対処するために、独立請求項で定義するようなアクチュエータ構成を備える動力工具及び対応する方法を提供する。好ましい実施形態は、従属請求項で定義する。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、アクチュエータ構成を備える動力工具が提供され、アクチュエータ構成は、可動式トリガー部材及びセンサー構成を備える、トリガー部材は、少なくとも1つの磁気素子を備え、センサー構成は、可動式トリガー部材と連動する磁気素子のセンサー構成に対する変位に応答し、センサー構成は、アナログ磁場センサー、第1のデジタル磁場センサー、及び第2のデジタル磁場センサーを備える。
【0007】
第1の態様によれば、動力工具は、複数の磁場センサーと、可動式トリガー部材が備えるか又はこれに配置された磁気素子とを包含する設計によって、上述の関心事項に対する発明性がある解決策を提供する。より詳細には、磁場強度に比例した信号を供給するアナログ磁場センサー(線形磁場センサーと呼ばれる場合もある)と、各々が規定の別個の切り替わり点を提供する2つのデジタルセンサーとの発明性のある組み合わせによって、アクチュエータ構成、従って動力工具の制御及び精度のレベルを大幅に向上させることができる。アナログセンサーは、可動式トリガー部材と連動する磁気素子がセンサー構成に対して変位する場合に磁場が変わる磁気素子(例えば、永久磁石であるか又は永久磁石を構成することができる)によって生成された磁場に比例した信号を提供し、従って、トリガー部材による正確な制御が得られる。他方で、デジタルセンサーは、この構成に対して改良された制御及び精度を提供するので、結果として、例えばアナログセンサー間の応答の散らばり関係する公知の問題が大幅に低減される。これは、例えば、規定された切り替わり点を提供することによって行われ、これによりアナログセンサーをある意味で較正することができ、又は、少なくともデジタルセンサーの一方又は両方の特定された切り替わり点を固定基準として使用することによって線形センサーの開始点を特定できることによって行われる。これにより、非接触アナログ磁場センサーを使用する利点を利用することができるが、例えば、センサー間の散らばり関係する公知の問題を回避すると又は少なくとも緩和することができる。従って、工具のアクチュエータ構成がトリガー押下によって作業プロセスを制御するユーザー正確な制御をもたらすので、実行された作業の品質並びに工具の取り扱いは、本技術分野で知られているものに比べて著しく助長することができる。
【0008】
従って、一部の実施形態において、トリガー部材は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能と説明することができ、第1の位置と第2の位置との間のトリガー部材及び磁気素子の移動は、センサー構成によって検知することができる。換言すると、アナログ磁場センサー、第1のデジタル磁場センサー、及び第2のデジタル磁場センサーの各々は、磁気素子のセンサー構成に対する変位を検知するように構成することができる。すなわち、センサーの各々は、可動式トリガー部材と連動する磁気素子の変位に起因して、磁気素子によって生成された磁場の変化に応答することができる。さらに、アナログセンサー要素は、磁場に比例した出力信号を生成するように構成することができる。完全を期して、用語「アナログ磁場センサー」及び「線形磁場センサー」は、本明細書では同義とみなされ、磁気素子によって生成された磁場に比例した出力信号(すなわち出力電圧)をもたらすセンサーを指す。他方で、デジタルセンサー要素は、出力信号又は磁場強度が特定の予め規定されたレベルに達したことを示すデジタルセンサー応答(すなわち切り替わり)の形態の応答を生成するようにさらに構成することができる。完全を期して、磁気素子は、本明細書では、トリガー部材内に配置され、トリガー部材と一緒に移動可能であると説明されるが、さらなる実施形態を考えることができ、代わりに、センサー構成は可動式トリガー部材内に配置され、磁気素子は固定される。しかしながら、これは、少なくとも実際上の理由から、妥当ではないか又は好都合ではない。
【0009】
上記の形式のセンサーは、存在する何らかの外部磁場を含む、存在する全ての磁場を検知することができ、これは、工具がこのような外部磁場によって起動される可能性がある点で安全上の問題を引き起こす可能性がある。しかしながら、 2つのデジタル磁場センサーを組み込む本発明の設計は、2つのセンサーがこのような外部磁場の存在を検出するために使用することができるという点においても好都合であり、その結果、工具の安全が向上する。例えば、一部の実施形態において、デジタルセンサーは、トリガー部材の通常作動時、トリガー部材の押し下げ時に磁気素子によって生成された磁場がセンサー要素に沿って通過する際に、デジタルセンサーのうちの一方は、磁場の上昇を示し(スイッチによって)、他方は磁場の低下又は減少を示す(スイッチによって)必要があるように物理的に配置することができる。これにより、通常作動を推定することができ、工具を起動することができる。しかしながら、外部磁場が存在する場合、両方のセンサーは磁場の上昇を示し、警告又は工具のロックを開始して工具の何らかの作動が防止することができる。本発明の設計の1つの別の利点は、潜在的に危険な外部磁場を識別する上記の機能性に加えて、本発明のアナログセンサーは、検知された磁場の実際の強度に関係する情報をさらに提供することができるが、デジタルセンサーは、特定のレベルに達したことを示す切り替わり点を単に提示できる点である。従って、工具の偶発的な起動を防止する初期保護は、作動が許可されるために磁場強度があるべき予め規定された境界の使用によって提供することができる。
【0010】
一部の実施形態において、上記の機能性は、制御ユニット又は類似のものによって実行することができる。他の実施形態において、センサー構成は、このようなソフトウェアが特定の予め定義された期間内に機能性を実行しない場合、工具を停止する/切り替える機能性を提供するように構成することができる。従って、一部の実施形態において、動力工具は、動力工具を上述したように制御するように構成された回路及び/又は制御ユニットをさらに備える。より詳細には、一部の実施形態において、このような制御ユニットは、センサー構成が備えるセンサーのうちの少なくとも1つからの出力に基づいて、トリガー部材の移動に応答して動力工具を制御するように動作することができる。複数の実施形態を考えることができ、外部の動力工具制御装置は、上記に従って動力工具を制御するように構成される。
【0011】
使用時、オペレータがトリガーを押し下げて、例えば工具を作動させる際に、可動式トリガー部材、従って、磁気素子は、センサー構成に沿って移動し、磁気素子によって生成された磁場は、構成の異なるセンサーによって検知することができるようになっている。それに応答してセンサーは出力をもたらし、デジタル磁場センサーの各々は、デジタルの切り替わり点をもたらすが、他方のアナログセンサーは、磁場に比例した、従ってトリガー部材の位置、すなわち押し下げの程度に比例した応答をもたらす。従って、工具の出力は、第1のすなわち初期開始点から第2のすなわち最終位置までトリガー部材を動かすことによってユーザーが制御することができる。オペレータが工具を停止/非作動としたい場合、トリガーから指を離すことができる。トリガーが第1の位置と第2の位置との間で押し下げられた場合に線形センサーによって制御される工具の挙動に関して、様々な戦略を採用することができ、例としては、線形挙動、漸進挙動、及び様々な形式の増減又は類似の挙動を挙げることができる。さらに、例えば、多層材料そ穿孔する場合、二段(多段)制御を利用することができる。一部の実施形態において、線形磁場センサーによる制御は、例えば、オペレータ制御のスロースタートをもたらす運転の初期フェーズのみに限定することができる。さらに、定められた範囲の中で追加の機能を考えることもできる。例えば、一部の実施形態において、動力工具は、例えば、工作物を照明するように構成されたLED灯などの照明を備えることができる。このような照明の強さ/強度は、請求項1のアクチュエータ構成によって変えることができる。一部の実施形態において、動力工具は、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)などのユーザーインターフェースを備えることもでき、この構成のトリガー部材は、従来の方法でメニューをナビゲートするいことができる。例えば、トリガーを大きく押し下げるほど、GUIに提示されたメニュー、リスト、又は同様のもの内を素早くスクロールすることができる。
【0012】
1つの実施形態によれば、工具は、手持ち式工具である。動力工具は一部の実施形態において、電動工具とすることができ、例示的な実施形態において、この工具は、バッテリ式工具とすることができる。1つの好都合な実施形態において、動力工具は、例えば、バッテリ式ドリルなどのドリルである。このような工具に関して、所謂「スロースタート」の改善が行われると、例えば、穴開けの初期フェーズを制御する可能性が向上する。しかしながら、当業者は、本発明の範囲内で何らかの他の形式の動力工具を考え得ることを認識している。さらに、当業者は、本発明は、動力工具と共に使用される独立型(すなわち、別個の)アクチュエータ構成、すなわち、動力工具に装着される、もしくは動力工具上に又は動力工具内に配置されるように構成されたアクチュエータ構成として実現することもできることも認識している。
【0013】
1つの実施形態によれば、センサー構成は、この構成が備えるセンサーが少なくとも第1の方向に連続的に(すなわち、相次いで)配列されるように配置される。例えば、この範囲内で、センサーは、第1の方向に延びる軸線に沿って連続した位置に配置することができる。さらに、センサーの位置は、第1の方向に対して垂直な第2の方向に延びる第2の軸線に沿って連続する又は均等とすることができる。これによって、センサーは、例えば、第1の方向に延びる軸線の異なる側に配置することができる。一部の実施形態において、第1及び第2のデジタルセンサーは、単に連続的に配置することができる。各軸線に沿ったセンサーの順序は、いずれの場合でも随意的である。
【0014】
1つの実施形態によれば、センサー構成が備えるセンサーは、直線的に配置される。例えば、センサーは、上記の第1の方向に延びる軸線又は仮想線に沿って直線的に配置することができる。このような構成は、センサーの各々によって検知されるような磁気素子によって生成された磁場を強化できるので好都合である。1つの実施形態によれば、アナログセンサーは、第1及び第2のデジタル磁場センサー間に配置される。例えば、センサーは、第1のアナログセンサーが第1及び第2のデジタルセンサー間に軸線に沿って配置されるように、上記の軸線に沿って直線的に配置することができる。これは、例えば、センサーの精度がさらに恩恵をもたらすことができるので好都合である。1つの実施形態によれば、第1の方向は、可動式トリガー要素の移動方向と一致する、すなわち、トリガー要素は、トリガーの押し下げ時に仮想線に沿って又はこれに少なくとも平行に移動する。
【0015】
センサー間の距離は、主として人間工学的考察に基づいて、すなわち所望のストローク長に基づいて決定される。これは、結果として、磁場、センサーの形式、及び磁気素子の極性に基づいてセンサーの構成をもたらす。例えば、1つの実施形態において、センサーは軸線に沿って直線的に配置することができ、アナログセンサーは、第1及び第2のデジタル磁場センサーの間に配置することができ、第1のデジタルセンサーとアナログセンサーとの間の距離は、第2のデジタルセンサーとアナログセンサーとの間の距離よりも小さい。例えば、1つの実施形態において、第1のデジタルセンサーとアナログセンサーとの間の距離は、1~5mm、好ましくは1~3mmのおよその間隔にあるが、第2のデジタルセンサーとアナログセンサーとの間の距離は、5~12mm、好ましくは7~10mmのおおよその間隔にある。全ての距離は、隣接した端部の間の距離を指し、センサーが直線的に配置される軸線に沿って測定される。
【0016】
1つの実施形態によれば、可動式トリガー部材は、突出要素を含み、磁気素子は、突出要素内に配置される。さらに、一部の実施形態において、突出要素は、トリガーが押し下げられた際に上記の仮想線に沿って移動するように構成される。1つの実施形態によれば、突出要素は、凹部を含み、磁気素子は、凹部に嵌合される。これは、このような突出要素の特有の利点であり、この点において、磁気素子の取り付けが容易になり、また、センサーの位置が明確に定められるので工具間のばらつきが低減される。一部の実施形態において、磁気素子は凹部に圧入することができる。他の実施形態において、磁気素子は、凹部に接着することができる。1つの実施形態によれば、磁気素子は、突出要素の第1の端部に配置される。
【0017】
1つの実施形態によれば、センサー構成は、回路基板の表面上に配置され、突出要素は、突出要素に沿って延び、回路基板の表面に摺動的に当接するようになった支持隆起部を備え、回路基板は、突出要素がこれに沿って摺動的に当接することができる支持部分を備える。これは、支持隆起部によってもたらされる機械的案内が、突出要素がセンサーに損傷を与えるか又はこれを遊離させるのを防止するので、可動部分、すなわちトリガー部材、従ってトリガー部材が備える突出要素を磁場センサーにできるだけ接近して配置することができる設計を可能にするので特に好都合である。一部の実施形態において、支持部分は第1の方向に少なくとも平行に延びる。さらに、一部の実施形態において、回路基板の支持部分は、構成要素がない部分である。
【0018】
1つの実施形態によれば、センサー構成が備えるセンサーのうちの少なくとも1つは、ホール効果センサーである。
【0019】
1つの実施形態によれば、工具は、ハウジングをさらに備え、トリガー部材は、少なくとも部分的にハウジングによって支持され、ハウジングに対して移動可能に配置される。一部の実施形態において、動力工具は、ハウジング内に配置されたモーター及びモーターに連結された出力軸をさらに備えることができ、モーター及び/又は出力軸のrpmは、ハウジングに対するトリガー部材の移動、すなわちトリガー部材の押し下げによって制御することができる。一部の実施形態において、動力工具は、押し下げ段階で指を離した場合にトリガー部材がこの初期位置に戻るように、トリガー部材を第1の位置に、例えば開始位置又は初期位置に付勢するように構成されたばね要素をさらに備えることができる。さらに、1つの実施形態によれば、センサー構成は、ハウジング内に配置される。このようなセンサー構成は、ハウジング内で回路基板上に配置することができる。
【0020】
1つの実施形態によれば、可動式トリガー要素は、組み付け時、第1の平面でハウジングの案内面に沿って摺動するように構成された第1の案内要素と、組み付け時、トリガー要素が所定の位置に案内されるように、第1の平面とは異なる第2の平面でハウジングの第2の案内面に当接するように構成された第2の案内要素とを備える。これにより、組み付け時に明確に定義された経路に沿ってトイガー部材を所定の位置に摺動させることができるような案内が可能になり、さらに、組み付け時にトリガーが偶発的に、例えばより好ましくない角度で所定位置に押し込まれて、部材自体及び/又は工具の電子構成要素などの近くに配置された構成要素に損傷を与えないようにする。これは、トリガー部材は、組み付け時の正確な経路に起因して、磁気センサー要素の非常に近くで磁気素子が移動するように配置することができ、より強い磁場をセンサー要素の位置で得ることができるので特に好都合である。他の実施形態において、トリガー部材は、例えば、トリガー部材を押し下げる指を支持するように構成された支持部分を備えることができ、支持部分は、トリガー部材の移動方向に沿って延びる。この部分は好都合であり、動力工具の重量の少なくとも一部は、工具ハウジングに沿って摺動する指の代わりにトリガー部材と連動して移動する支持部分によって支持することができ、従って、オペレータの指が工具とトリガーとの間で挟まれることに関係する公知の問題が軽減される。従って、トリガー及び工具の人間工学が改善される。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、動力工具が備えるアクチュエータ構成のためのセンサー構成を較正する方法が提供され、センサー構成は、少なくともアナログ磁場センサー及び第1のデジタル磁場センサーを備え、この方法は、トリガー要素が備える磁気素子をトリガー部材の押し下げによってセンサー構成に沿って変位させるステップと、第1のアナログ磁気センサの応答を検索する(又は監視する)ステップと、第1のデジタル磁気センサーの応答を検索する(又は監視する)ステップと、第1のデジタルセンサの切り替わり点を特定するステップと、特定された切り替わり点をアナログ磁気センサーの開始点の固定基準として使用して、トリガーストロークがいつ開始すべきかを特定するステップとを含む。換言すると、デジタルセンサーを使用して、規定された切り替え点を提示することができ、これによって線形センサーを較正することができ、開始点は、デジタルセンサーの特定された切り替わり点を用いて固定基準として特定することができる。
【0022】
1つの実施形態において、このような方法を実行する際に、組み立てられた工具を最初に較正状態に設定することができる。これは、適切なスイッチ、ボタンなどによって実行することができる。トリガーは、最初に初期段階で保持され、トリガーが押し下げられると、センサー出力を適切なサンプリング周波数を用いて監視する。より詳細には、線形アナログセンサーの値を、具体的には、デジタルセンサーが反応した時点で、すなわち、デジタルセンサーの切り替わり点で監視する。これによって、トリガーストロークの開始点を特定し、線形センサーの応答の散らばりに関係する何らかの誤差発生源を排除し、従って、異なる工具間の挙動を一致させることができる。さらに、一部の実施形態において、1又は複数のセンサーの出力を比較することができる所定の基準値又は間隔を設定する。このことは、この基準とは異なる値が欠陥のある組立体又は欠陥のある構成要素などの問題の指標として利用することができるので好都合である。
【0023】
本発明の第2の態様の1つの実施形態によれば、センサー構成は、第2のデジタル磁気センサーをさらに備え、この方法は、第2のデジタルセンサーの切り替わり点を特定するステップと、特定された切り替わり点をアナログ磁気センサーの開始点の固定基準として使用して、トリガーストロークがいつ開始すべきかを特定するステップとを、さらに含む。これは、冗長性及び改善された精度を方法にもたらすことができるので好都合であろう。さらに、上述のように、2つのデジタルセンサーを使用することは、外部磁場に起因する工具の偶発的な起動を防止するのにも好都合である。
【0024】
第2の態様の1つの実施形態によれば、この方法は、トリガーストロークがトリガー要素の完全な押し下げによって終了すべき時に最大点を特定するステップをさらに含む。例えば、1つの実施形態によれば、最大点は、最大rpmに達する位置とすることができる。この位置は、一部の実施形態において、最大押し下げの前に所定の距離で到達する位置とすることができる。
【0025】
本発明のさらなる目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な開示、図面、及び特許請求の範囲を検討すると明らかになるはずである。当業者は、本発明の様々な特徴を組み合わせて、以下で説明するもの以外の実施形態を作り出し得ることを認識している。
【0026】
本発明は、添付図面を参照して好ましい実施形態の以下の例示的かつ非限定的な詳細な説明を通してより良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】1つの実施形態によるボルト締結工具のハウジング内に配置されたトリガー部材の斜視図である。
【
図2】本発明の1つの実施形態によるボルト締結工具のトリガー部材の斜視図である。
【
図3】例示的な実施形態によるセンサー構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全ての図は、必ずしも縮尺通りではなく概略的であり、一般に、本発明を説明するために必要な部品のみを示し、他の部品は省略されるか又は単に示唆される場合がある。
【0029】
1つの実施形態によるアクチュエータ構成20を備える動力工具10は、
図1において準断面図で示され、可動式トリガー部材30は、動力工具のハウジング11内に配置して示されている。トリガー部材は、ハウジングに対して第1の方向D1に移動可能であり、第1の方向に延びる上部伸長部31と、実質的に第1の方向D1に対して垂直な第2の方向D2に延び、工具1を制御するためにオペレータによって押圧されるように構成される下部押下部32とを備える。上部伸長部31は、オペレータの指の上に載るように構成され、トリガー部材30は、指との何らかの干渉又は指の怪我の危険性なしでハウジング11に対して自由に摺動することができ、さらにユーザーが工具10の重量の一部を支持することもできるようになっている。また、
図1には、トリガー部材の突出要素33、第1の案内要素34、及び第2の案内要素35が示されている。これらの特徴部は、以下に
図2を参照してより詳細に説明する。ハウジング11は、
図1において二つ割りで示されており、可動式トリガー部材30を支持するように構成されており、従って、特に、トリガー部材とトリガー部材30の突起部33が貫通して延在する穴を有する追加の案内構造体14との取り付を容易にするようになっている、案内面11a及び第2の案内面11bを備える。
【0030】
図2を参照すると、トリガー部材30が斜視図で示されており、突出要素33を詳細に見ることができる。第1の端部33aにおいて突出要素は、磁気素子(図示せず)、例えば永久磁石が配置される凹部33bを備える。この突出要素の第1の端部は、半円形の断面を有する。これによって、突出要素は、回路基板又は類似のもの及びその上に配置された構成部品にごく接近して動くことができる。また、特に、この相互作用を助けるために、突出要素33は、突出要素に沿って延び、例えば、上記の回路基板に対して摺動的に当接するようになっている支持隆起部33cを備える。
【0031】
案内要素34及び35に関して、第1の案内要素34は、トリガー部材30の中心線からわずかにオフセットして配置され、組み付け時にハウジングの表面の11aに沿って摺動するように構成されており、結果として、トリガー部材30を所定の位置に案内して、特に突出要素から回路基板上の構成要素へ何らかの損傷を与えるのを防止する。しかしながら、トリガー部材30が組み付け位置に接近すると、案内舌状部34は、正しい最終位置に嵌まり込み、トリガー部材30の適切な位置決め並びにトリガー部材30の所定位置への固定が保証される。同様の機能により、第2の案内要素35は、ハウジング11bの表面13に当接するようになっており、結果として、組み付け時、トリガー部材30の傾きが防止される。
【0032】
図3を参照すると、センサー構成の例示的な実施形態が示されている。図示の実施形態において、アナログホール効果センサー40と、第1及び第2のデジタルホール効果センサー50、60とは、回路基板70の表面上にラインL-Lに沿って直線的に配置されている。アナログセンサー40は、第1のデジタルセンサー50と第2のデジタルセンサー60との間に配置されている。トリガー部材30が押し下げられると、突出要素33の凹部内に配置された磁気素子は、直線的に配置されたセンサー50、40、60に沿って移動することになり、従って、磁石によって生成された磁場は、センサー50、40、60の各々を影響を与えることになる。センサー間の距離、例えば、センサー50と60の間の距離は、上述したように、主として人間工学的考察に基づいて決定される。
図3に示す実施形態において、第1のデジタルセンサー50とアナログセンサー40との間の距離は約2mmであり、第2のデジタルセンサー60とアナログセンサー40との間の距離は約10mmである。
【0033】
本発明は図面及び前述の説明において詳細に例示され説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は実例であり制限的ではないものとみなされ、本発明は、開示された実施形態に限定されない。当業者であれば、多くの変更例、変形例、及び変更例が特許請求の範囲に定義される範囲で考えられることを理解できる。加えて、開示された実施形態の変形例は、図面、明細書、及び特許請求の範囲を考察することで、クレームされた発明を実施する際に当業者が理解して実施することができる。特許請求の範囲において、用語「備える」は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを利益をもたらすために用いることができないことを示すものではない。特許請求の範囲の何らかの参照符号は、特許請求の範囲の範囲を制限すると解釈するべきではない。
【符号の説明】
【0034】
30 トリガー部材
33 突出要素
33a 第1の端部
33b 凹部
33c 支持隆起部
34 第1の案内要素
35 第2の案内要素