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  • 特許-インフレータ用大口径ピアスピン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】インフレータ用大口径ピアスピン
(51)【国際特許分類】
   B63C 9/19 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
B63C9/19
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021507560
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 US2019046552
(87)【国際公開番号】W WO2020037068
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】62/718,915
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513044256
【氏名又は名称】ハルキー-ロバーツ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Halkey-Roberts Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ライマン・フォーセット
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154726(JP,A)
【文献】特開2015-223962(JP,A)
【文献】米国特許第6089403(US,A)
【文献】米国特許第7178547(US,B2)
【文献】米国特許第9517976(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/19
B65D 83/38
B65D 83/22
B65D 83/66
B65D 83/68
B65D 25/08
F16K 17/14
B60R 21/274
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスカートリッジのフランジブルシールに穿孔するためのインフレータ用ピアスピンであって、
リムを有する先端を有するチューブ部材を形成する軸方向穴を有するシャフトと、
前記リムを横切って、前記先端に前記チューブ部材内の適切な深さまでタブを形成するよう形成された一対のスロットであって、前記タブは、前記一対のスロットの形成後に前記軸方向穴に内側に向かって曲げられる、一対のスロットと、
を備え、
前記タブは、前記フランジブルシールを貫通しない、
ピアスピン。
【請求項2】
前記シャフトは、概して円形の円筒状である、
請求項1に記載のピアスピン。
【請求項3】
前記軸方向穴は、概して円形の円筒状である、
請求項2に記載のピアスピン。
【請求項4】
前記リムは、概して円形の円筒状である、
請求項3に記載のピアスピン。
【請求項5】
前記一対のスロットは、前記シャフトの軸方向に垂直な断面において前記リムの弦に沿って形成される、
請求項4に記載のピアスピン。
【請求項6】
前記タブは、前記リムの劣弧により画定され、前記タブの長さは、前記劣弧の中心角の大きさに基づいて画定される
請求項5に記載のピアスピン。
【請求項7】
前記軸方向穴の直径は、前記インフレータの前記ガスカートリッジから漏れ出るガスの所望の流速を達成する、
請求項6に記載のピアスピン。
【請求項8】
前記チューブ部材のルーメンおよび外表面は、概して同心であり、前記軸方向穴の前記ルーメンから前記チューブ部材の前記外表面に延びる壁の厚さは、概して均一である、
請求項7に記載のピアスピン。
【請求項9】
前記先端は、均一な厚さの概して円形の円筒状リムを備える、
請求項8に記載のピアスピン。
【請求項10】
前記一対のスロットは、整列している、
請求項9に記載のピアスピン。
【請求項11】
前記一対のスロットは、同一平面上にある、
請求項10に記載のピアスピン。
【請求項12】
劣弧セグメントを画定する前記タブを内側に曲げた後、前記先端の前記リムは、尖っていない優弧リムを備える、
請求項11に記載のピアスピン。
【請求項13】
前記先端が前記ガスカートリッジの前記フランジブルシールに衝突すると、前記優弧リムが、前記ガスカートリッジの前記フランジブルシールに弓形の穴を強制的に打ち抜き、前記弓形の穴は、前記優弧リムと同じ優弧寸法を有し、それにより、前記ガスカートリッジの前記フランジブルシールの打ち抜かれた部分からコアリングされた優弧スラグを定義し、前記コアリングされたスラグは、前記優弧リムと同じ寸法を有する、
請求項12に記載のピアスピン。
【請求項14】
前記フランジブルシールの前記コアリングされたスラグは、前記タブの長さに沿って前記フランジブルシールに付着したままである、
請求項13に記載のピアスピン。
【請求項15】
前記コアリングされたスラグは、前記フランジブルシールから分離することが妨げられる、
請求項14に記載のピアスピン。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2018年8月14日に出願された米国仮出願番号第62/718,915号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明はインフレータに関する。より詳細には、本発明は、ライフラフト(life raft:救命いかだ)等の空気注入式の物品を膨らませるために使用される圧縮ガスシリンダ用のインフレーションバルブに関する。
【背景技術】
【0003】
現在、圧縮ガスシリンダなどと組み合わせて使用するよう設計された多くの種類のインフレーションバルブが存在する。その最も単純な形態では、インフレーションバルブはノブまたはハンドルを有し、ノブまたはハンドルを回すことで圧縮ガスのシリンダが開いて空気注入式の物品を膨らませる。しかし、さらに普及しているのは、密閉されたフランジブルシール(frangible seal)を有する密閉ガスシリンダ用の、インフレータが螺合されたインフレーションバルブである。この種のインフレーションバルブは、ジャークハンドル(jerk handle)およびランヤードコード(lanyard cord)を用いて操作可能であり、それにより、ピアスピンがガスシリンダのフランジブルシールを破り、ハンドルの単純な引っ張り(jerking)によって空気注入式の物品を素早く膨らませることができる。これにより、その中の圧縮ガスがガスシリンダから流出して、空気注入式の物品を膨らませることができる。
【0004】
特に、大きなガスカートリッジからの膨張を必要とするラフトインフレータでは、従来のガスシリンダのフランジブルシールを破るためには大きな力が必要である。このため、より近年のインフレーションバルブの設計では、シアー(sear)を用いてその上向き位置(cocked position)に保持される強力な発射スプリングが採用されている。ユーザがジャークハンドルを引くと、シアーが解放されて、強力なスプリングによりピアスピンがガスシリンダのフランジブルシールに強制的に押し込まれる。シリンダからのガスは、ピアスピンの穴を通り、インフレータのインフレーションマニホールドを通り、空気注入式の物品の内部容積に流入する。
【0005】
空気注入式の物品には、非常に大きな容積の迅速な充填を必要とするものがある。例えば、航空機業界におけるラフトインフレータは、墜落した航空機から脱出するために空気注入式の緊急スライドを備えている。したがって、航空機のラフトインフレータは、スライドの非常に大きな容積を迅速に充填することができなければならず、それにより、乗客がスライドを滑り降りて航空機から迅速に避難することができる。避難後、完全に膨張したスライドは航空機から切り離され、避難した乗客のためのライフラフトとして使用することができる。高容量の空気注入式ラフトの急速充填のために設計されたインフレータに関する代表的な特許は、米国特許第6,089,403号、米国特許第7,178,547号、および米国特許第9,517,976号に開示され、それぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
したがって、ラフトインフレータは、一般的に、ガスシリンダのフランジブルシールを通して強制的に駆動される大口径ピアスピンを採用し、ピアスピンの口径は、発射後に所望の充填速度を得るために十分な直径を有する。しかし、残念ながら、大口径ピアスピンは、ガスカートリッジのフランジブルシールのコアリングを引き起こし、高圧ガスによりインフレータに吹き戻されてガスカートリッジからインフレータに流れる浮遊物または「スラグ(slug)」を生成することがある。浮遊スラグは、インフレータのインフレーションマニホールドを閉塞させて、ラフトインフレータの充填速度を大幅に低下させることがある。
【0007】
したがって、本発明の目的は、先行技術の装置の上述の欠点を克服し、インフレータの技術分野における進歩に対する重要な貢献である改善点を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、インフレータの所望の充填速度を達成することのできる内径を有する大口径ピアスピンを備えるインフレータを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、穿孔中にガスカートリッジのフランジブルシールがコアリングされることを防止する大口径ピアスピンを備えるインフレータを提供することであり、それにより、自由に浮遊しているコアリングされたスラグがインフレータ内に吹き戻され、インフレータへのガスの流れを妨害する可能性を排除することである。
【0010】
上記は、本発明の関連する目的のいくつかを概説したものである。これらの目的は、意図された発明のより顕著な特徴および用途のいくつかの例示に過ぎないと解釈されるべきである。異なる方法で開示された発明を適用すること、または開示の範囲内で発明を変更することにより、多くの他の有益な結果を達成することができる。したがって、添付の図面と併せて理解される特許請求の範囲によって定義される発明の範囲に加えて、発明の概要および好ましい実施の形態の詳細な説明を参照することにより、他の目的および発明のより十分な理解を得ることができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明を要約すると、本発明は、航空会社の緊急ラフトなどの空気注入式の装置に流体的に接続されたインフレータ用の大口径ピアスピンを備える。インフレータが作動すると、ピアスピンはインフレータに接続されたガスカートリッジのフランジブルシールを穿孔する。その結果、ガスカートリッジから漏れ出たガスがインフレータを通って所望の流速で空気注入式の装置に流入し、空気注入式の装置を迅速に充填することができる。ピアスピンは、内側に延びるタブを有する。内側に延びるタブは、ガスカートリッジのフランジブルシールからコアリングされた自由に浮遊するスラグが、穿孔中にインフレータに吹き戻され、空気注入式の装置へのガスの流れを妨害する可能性を最小限に抑える。
【0012】
上記は、以下に続く本発明の詳細な説明がより良く理解されるように、本発明のより関連性のある重要な特徴を非常に広範囲に概説しているため、当該技術分野に対する現在の貢献をより完全に理解することができる。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明のさらなる特徴を以下に説明する。開示された概念および具体的な実施の形態が、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を変更または設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者によって理解されるべきである。そのような同等の構成が添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神および範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【0013】
本発明の本質および目的の十分な理解のために、添付の図面に関連して理解される以下の詳細な説明を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一般的なバラスト(ballasted)ピアスピンアセンブリに組み込まれた本発明のピアスピンの斜視図
図2】本発明のピアスピンの拡大斜視図
図3】製造時に内側にタブを曲げる前のピアスピンの先端の横断面図
図4】製造時に内側にタブを曲げた後のピアスピンの先端の横断面図
図5図4の内側に曲がったタブの線5-5に沿った縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
同様の参照符号は、図面のいくつかのビューを通して同様の部分を参照する。
【0016】
図1は、一般的なピアスピンアセンブリ1に組み込まれた本発明のピアスピン10の斜視図である。本発明のピアスピン10は、様々な種類のピアスピンアセンブリ1に組み込むことができ、したがって、ピアスピンアセンブリ1はファントム(phantom)として示されている。
【0017】
本発明のピアスピン10は、チューブ部材16を形成する円形の円柱軸方向穴14を有する概して円形の円筒シャフト12を備える。軸方向穴14の直径はインフレータのガスカートリッジから漏れ出るガスの所望の流速を達成するよう設計されている。ルーメン(lumen)18とチューブ部材16の外表面20は、概して同心であり、軸方向穴14のルーメン18からチューブ部材16の外表面20に延びる壁の厚さは概して均一である。それに応じて、ピアスピンの先端22は、均一な厚さの概して円形の円筒リム24を有する。
【0018】
一対の整列したスロット26A、26Bは、リム24の弦(すなわち、直径ではない)を横切って、先端22にチューブ部材16内の適切な深さDまでフライス加工(milled)されて、「劣弧(minor arc)」セグメントまたはタブ28を画定する。「劣弧」セグメントまたはタブ28は、その弦の角度により画定される。それにより、タブ28の弧の中心からそのベースの中心(すなわち、矢(sagitta))への距離が定義される。整列したスロット26A、26Bは、製造時にエンドミルにより同時に形成されるよう、同一平面上にあるのが好ましい。
【0019】
図3図4とを比較すると、製造時に、弓形タブ28は、軸方向穴14に向かって内側に曲げられる。弓形タブ28が内側に曲げられた後、ピアスピン10の先端22のリム24は、劣弧セグメントまたはタブ28が内側に曲げられることにより、尖っていない「優弧(great arc)」リム24を有する。
【0020】
インフレータを作動させてガスカートリッジのフランジブルシールに向かってピアスピン10を駆動させると、優弧リム24は、ガスカートリッジのフランジブルシールに衝突する。衝突時に、優弧リム24は、ガスカートリッジのフランジブルシールに弓形の穴を強制的に打ち抜き、弓形の穴は優弧リム24と同じ優弧寸法を有する。それにより、ガスカートリッジのフランジブルシールの穴を打ち抜かれた部分からコアリングされた優弧スラグを定義する。コアリングされたスラグは、優弧リム24と同じ寸法を有する。しかし、劣弧タブ28が製造時に内側に曲げられるため、ガスカートリッジのフランジブルシールにピアスピンが衝突する間、劣弧タブ28がフランジブルシールを貫通することはなく、むしろ、コアリングされたスラグは、劣弧タブ28の長さに沿ってガスカートリッジのフランジブルシールに付着したままである。したがって、穿孔中に、コアリングされたスラグがフランジブルシールから分離して自由に浮遊した状態になり、潜在的にインフレータに吹き戻されて空気注入式の装置へのガスの流れを妨害することを防止する。
【0021】
本発明は、上述の説明と同様に、添付の特許請求の範囲に記載されているものを含む。本明細書は、ある程度の特定性をもってその好ましい形態を説明したが、本開示の好ましい態様は、単なる例示であり、その一部の構成、組み合わせ、または配置の詳細については、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能であることを理解するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5