(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】熱可塑性マトリックスを有する複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20231204BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20231204BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20231204BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08J5/04 CEW
C08J5/04 CEY
B32B5/28 A
B32B27/34
B32B27/30 D
(21)【出願番号】P 2021514403
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075171
(87)【国際公開番号】W WO2020058403
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-06-01
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン フラノッシュ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス スツェンチバンニ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス リース
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト ベイヤー
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-111309(JP,A)
【文献】特開平07-266474(JP,A)
【文献】特開2006-116958(JP,A)
【文献】特開2016-172448(JP,A)
【文献】特開昭57-185338(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207446(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16
B29B 15/08-15/14
B29C 70/00-70/88
B32B 1/00-43/00
C08J 5/04-5/10;5/24
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料であり、
前記ポリマーマトリックスが、以下の成分:
a)主成分としての、すなわち少なくとも50重量部程度の低粘度PVDF、
前記低粘度PVDFは、230℃で2.16kg使用され、かつASTM D1238-13に準拠してメルトフローインデックス(MFI)を測定する場合に、MFIが18~50g/10分であり、および
b)1重量部~50重量部のアクリレートコポリマーであり、無水カルボン酸単位を有する単位を1重量%~30重量%含むアクリレートコポリマーを含み、前記成分a)および成分b)の重量部の合計が100である混合物を、少なくとも80重量%程度含み、
前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率が
10%~80%であり、
前記ポリマーマトリックスの百分率又は重量部が前記複合材料の総重量に対するものであり、前記連続繊維の百分率が前記複合材料の総体積に対するものである、複合材料。
【請求項2】
前記PVDFがホモポリマーまたはコポリマーであることを特徴とする、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
前記アクリレートコポリマーが以下の単位:
I.14重量%~80重量%の下記式のエステル単位、
【化1】
(式中、Rはメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、R
1は水素またはメチルである。)
II.10重量%~75重量%の下記式のイミド単位、
【化2】
(式中、R
4は、独立して、1~8個の炭素原子を有する、好ましくは1~4個の炭素原子を有する、より好ましく水素またはメチルを有する脂肪族または脂環式ラジカルであり、R
3は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはフェニルであり、mは0または1である。)
III.1重量%~20重量%の下記式の酸単位、
【化3】
(式中、R
2は水素またはメチルである。)
IV.1重量%~30重量%の下記式の酸無水物単位
【化4】
(式中、R
5は、独立して、1~8個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式ラジカルであり、nは0または1である。)
を含み、
前記単位I、II、IIIおよびIVは、合計で100重量%になることを特徴とする、請求項1記載の複合材料。
【請求項4】
一方向に連続する繊維強化テープであることを特徴とする、請求項1記載の複合材料。
【請求項5】
請求項1記載の複合材料をストランド形に切断することによって製造される、長さ4mm~60mmの長細繊維強化ペレット。
【請求項6】
内側から外側に向かって、以下の構成要素:
I.外面がポリアミド成形材料またはPVDF成形材料で構成される、単層または複数層の管状ライナーと、
II.ポリマーマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料で構成される補強プライであり、前記ポリマーマトリックスが、以下の成分:
a)50重量部~99重量部のPVDF、および
b)1重量部~50重量部のアクリレートコポリマーであり、カルボン酸無水物基を有する単位を1重量%~30重量%含むアクリレートコポリマー
を含み、かつ前記成分a)および成分b)の重量部の合計が100である混合物を、少なくとも80重量%程度含み、前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率が
10%~80%であり、
前記ポリマーマトリックスの百分率又は重量部が、前記複合材料の総重量に対するものであり、前記連続繊維の百分率が前記複合材料の総体積に対するものである補強プライ
を含み、
III.任意で、ポリアミドマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料で構成されるさらなる補強プライであり、前記ポリアミドマトリックスがポリアミドを少なくとも80重量%程度含み、前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率がさらに10%~80%であり、前記ポリアミドマトリックスと前記連続繊維の百分率が、それぞれ、前記補強プライの総
重量または総体積に対するものである補強プライを含んでよく、
IV.任意で、ポリマー材料からなる外側カバー層を含んでよい
熱可塑性複合パイプ(TCP)。
【請求項7】
TCPの構造が以下の群:
a)ポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミド成形材料のカバープライ、
b)PVDF成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
c)PVDF成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミド成形材料のカバープライ、
d)ポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
e)ポリアミド成形材料の内層とPVDFの外層を有する2層ライナー/アクリレートコポリマーブレンド/本発明のPVDF複合層/PVDF層/アクリレートコポリマーブレンド/ポリアミド成形材料のカバープライ
f)ポリアミド成形材料の内層とPVDFの外層を有する2層ライナー/アクリレートコポリマーブレンド/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
g)PVDFまたはポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミドマトリックスを有する複合層/PVDFまたはポリアミド成形材料のカバープライ
から選択されることを特徴とする、請求項6記載の熱可塑性複合パイプ。
【請求項8】
前記TCPがアンビリカル、ライザー、ジャンパーライン、フローライン、介入ライン、ダウンライン、注入ライン、または圧力ラインであることを特徴とする、請求項6記載の熱可塑性複合パイプ。
【請求項9】
原油、粗ガス、三相混合物、加工油、加工ガス、ガソリン、軽油、噴射媒体、作動油の輸送のための、請求項6記載の熱可塑性複合パイプの使用。
【請求項10】
前記アクリレートコポリマーが以下の単位であり、
Rはメチル、R
1は水素であり、
R
4は、独立して、1~4個の炭素原子を有する脂肪族または脂環式ラジカルである請
求項3に記載の複合材料。
【請求項11】
前記アクリレートコポリマーが以下の単位であり、
Rはメチル、R
1はメチルであり、
R
4は、水素又はメチルである請求項3に記載の複合材料。
【請求項12】
前記アクリレートコポリマーが以下の単位であり、
Rはメチル、R
1は水素であり、
R
4は、水素である請求項3に記載の複合材料。
【請求項13】
前記TCPがアンビリカル、ライザー、ジャンパーライン、フローライン、介入ライン
、ダウンライン、注入ライン、または圧力ラインであることを特徴とする、請求項7記載
の熱可塑性複合パイプ。
【請求項14】
原油、粗ガス、三相混合物、加工油、加工ガス、ガソリン、軽油、噴射媒体、作動油の
輸送のための、請求項7記載の熱可塑性複合パイプの使用。
【請求項15】
原油、粗ガス、三相混合物、加工油、加工ガス、ガソリン、軽油、噴射媒体、作動油の
輸送のための、請求項8記載の熱可塑性複合パイプの使用。
【請求項16】
一方向に連続する繊維強化テープであることを特徴とする、請求項2記載の複合材料。
【請求項17】
一方向に連続する繊維強化テープであることを特徴とする、請求項3記載の複合材料。
【請求項18】
請求項2記載の複合材料をストランド形に切断することによって製造される、長さ4m
m~60mmの長細繊維強化ペレット。
【請求項19】
請求項3記載の複合材料をストランド形に切断することによって製造される、長さ4m
m~60mmの長細繊維強化ペレット。
【請求項20】
請求項4記載の複合材料をストランド形に切断することによって製造される、長さ4m
m~60mmの長細繊維強化ペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性PVDFのマトリックスを有する連続繊維強化複合材料に関する。前記複合材料は、半製品、あるいはそれから製造された製品もしくは完成部品であってもよい。本発明による製品は、ペレット化された長繊維材料であり、本発明による完成部品は、特に熱可塑性複合パイプである。
【背景技術】
【0002】
PVDFマトリックスを有する複合材料は公知である。ガラス繊維または炭素繊維強化材を使用した対応するタイプの複合材料が市販されている。しかし、繊維とPVDFマトリックス間の接着が不十分であり、これは、不十分な機械特性につながる。さらなる欠点は、複合材料と当該複合材料に含まれる構成要素とを直接接着できない点である。特許文献1および特許文献2には、PVDFと不飽和モノマーとの混合物を準備し、それを高エネルギー放射で照射し、次いで前記不飽和モノマーの未反応部分を除去することによって生成される、PVDFマトリックスを有する複合材料が記載されている。しかし、この生成方法は不便かつ高価であり、簡単に生産規模に移行することができない。
【0003】
根本的な課題の1つは、PVDFマトリックスと繊維-マトリックス間の良好な接着性とを備え、かつより簡単に製造できる複合材料を提供することである。
【0004】
この種の複合材料は、PVDFの難燃効果のために、航空機や自動車の製造などで非常に関心を持たれている。それらは、ポリアミドマトリックスを有する複合材料よりも、自然環境や運ばれた媒体から炭化水素、水、またはメタノールを吸収することが少なく、そして、特に、そのような物質の存在下でより高い熱ストレスにさらされることもできるので、熱可塑性複合パイプ(TCP)の補強プライとしての使用にも特に関心を寄せられている。ポリオレフィンマトリックスを有する複合材料と比較して状況が似ている。
【0005】
可撓性のある熱可塑性複合パイプは、少なくとも熱可塑性ポリマーの内側ライナーパイプ、それに適用された連続繊維テープの多層巻きプライ、熱可塑性マトリックスで含浸された連続繊維テープ、および熱可塑性材料の外側保護層からなる。これらの層が互いに密接に接着している場合、これは、接着複合フレキシブルパイプとも呼ばれる。このようなパイプは通常、海底石油の生産に使用される。特に、水深が深い場所で使用するためだけでなく、そのようなパイプを各接続要素(例えば、エンドフィッティング)に確実に接続するため、そして組み立てと敷設作業のために、前述したすべての層を互いに密接に接着することは非常に有益である。
【0006】
TCPは、例えば、特許文献3および特許文献4に記載されている。その製造は、特許文献5~特許文献9にさらに開示されている。既存のTCPでは、巻きプライ同士の、さらに、巻きプライのライナーおよび保護層への、非常に良好な合着および接着を達成できるようにするために、内側ライナーパイプの材料(または、多層ライナーの場合は外側ライナー層の材料)、テープのマトリックス材料、および外側保護層の材料(「ジャケット」または「カバーシート」)は、一般に同一のポリマーから構成される。最大使用温度と用途に応じて、これらは通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはPA12/PA11をベースとするTCPである。低使用温度(例えば、50℃未満)では、一般にポリオレフィンが使用され、それを超えるとPA11またはPA12が使用される。ガイドされるべき流体の温度が80℃を超える用途では、PVDFホモポリマーまたはPVDFコポリマーが一般にライナーとして最大約135℃の温度で使用される。ポリマー内層の使用が操作温度によってではなく、ポリマーの化学的安定性によって制限される場合は、流体に対して安定で厚みのない内側保護層のみが一般にはライナーとして十分であり、これは同様にPVDFホモ-またはコポリマーから構成されていてもよい。
【0007】
現在開発中のTCPでは、好ましくは、PA12またはPEEKの単層ライナーが使用され、これらと組み合わせて、同一ポリマーのマトリックスを有するガラスまたは炭素繊維テープが使用される。しかし、PEEKは、その特異性質と高額な材料費のために、熱的安定性と化学的安定性に非常に高い要求が課せられる場合にのみ使用される。中程度の温度範囲では、PVDFまたはPA12からなるライナー、およびPA12マトリックスを有するテープが使用される。しかし、PA12テープは、必要な接着力をもってPVDFライナーに接着することが難しい。この課題は、例えば、PVDFの内層、接着促進剤層、および外側PA12層を有する多層ライナーを製造することによって解決されることができる。ただし、このような構造の場合、3層間の境界面(PVDF/接着促進剤、接着促進剤/PA12、PA12/テープ)が形成され、極端な操作条件下においては弱点部となる可能性がある(特に、DNV-GL リコメンデド・プラクティス RP F119「熱可塑性複合パイプ」)。したがって、そのようなTCPにおける重要層の境界面の数を最小限に抑えることが目的といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許公開公報第2011/0166278号
【文献】国際公開公報第2016/142630号
【文献】国際公開公報第1995/007428号
【文献】国際公開公報第1999/067561号
【文献】国際公開公報第2002/095281号
【文献】国際公開公報第2006/107196号
【文献】国際公開公報第2012/118378号
【文献】国際公開公報第2012/118379号
【文献】国際公開公報第2013/188644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、根底にある課題のさらなる一面は、PVDFマトリックスと繊維-マトリックス間の良好な接着性とを有し、かつ容易に製造される複合材料からなる1つまたは複数の補強プライを有し、かつ層界面が最小限である熱可塑性複合パイプを提供することである。
【0010】
本発明による複合材料、本発明による成形体(例えば、本発明による複合材料からなる熱可塑性複合パイプ(TCP))、および本発明による使用は、以下に例として記載されるが、本発明がこれらの例示的な実施形態に限定されることを意図するものではない。範囲、一般式、または化合物群を以下に規定する場合、これらは、明示的に言及された対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を除くことによって得られるすべての部分範囲および部分化合物群を包含するものとする。本明細書の文脈内で文献が引用される場合、その全内容は、本発明の開示内容の一部を成すものであると考えられる。以下に百分率の数値が示されている場合、特に明記しない限り、これらは重量%での数値である。組成物の場合、百分率の数値は、特に明記しない限り、組成物全体に対する数値である。以下に平均値が示されている場合、特に明記しない限り、これらは質量平均(重量平均)である。以下に測定値が示されている場合、特に明記しない限り、これらの測定値は、101,325Paの圧力かつ25℃の温度で測定されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
根底にある課題の第1面は、本出願の主題である、ポリマーマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料であり、
前記ポリマーマトリックスが、以下の成分:
a)主成分としての、すなわち少なくとも50重量部程度の低粘度PVDF、および
b)1重量部~50重量部、好ましくは1.5重量部~40重量部、より好ましくは2重量部~30重量部、特に好ましくは2.5重量部~20重量部、とりわけ好ましくは3重量部~10重量部のアクリレートコポリマーであり、無水カルボン酸単位を有する単位を1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~25重量%、より好ましくは4重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~15重量%含むアクリレートコポリマー
を含み、前記成分a)およびb)の重量部の合計が100である混合物を、少なくとも80重量%程度、好ましくは少なくとも85重量%程度、より好ましくは少なくとも90重量%程度、特に好ましくは少なくとも95重量%程度含み、
前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率がさらに10%~80%、好ましくは15%~75%、より好ましくは20%~70%、よりいっそう好ましくは25%~65%、特に好ましくは30%~60%、とりわけ好ましくは35%~55%であり、
前記ポリマーマトリックスの百分率又は重量部が前記複合材料の総重量に対するものであり、前記連続繊維の百分率が前記複合材料の総体積に対するものである、複合材料
によって解決される。
【0012】
欧州特許公開公報第0673762号(米国特許公開公報第5554426号)には、PVDFとアクリレートコポリマーは、互いに相溶性を有し、かつ互いに均一に混和し、ブレンドとして、ポリアミド層への良好な接着性を有することが開示されている。この成形材料を、特にカーボンブラック、炭素繊維などを添加することによって、導電性にすることができることもその中で言及されている。導電性添加剤は補強には役立たない;実施例ではカーボンブラックのみが使用されている。繊維-マトリックス接着性の開示はない。したがって、欧州特許公開公報第0673762号において議論されている層は、本発明において意味する複合材料ではない。
【0013】
本発明による複合材料は、半製品の形であってもよい繊維複合材料、あるいはそれから製造された完成部品である。製造直後の半製品は、任意の形状のストランドの形をしている。それは、例えば、シート、テープ、プレート、円形プロファイル、長方形プロファイル、または複雑なプロファイルであってもよい。
【0014】
連続繊維とは、長さが50mmを超える繊維のことである。一般に、それらは極めて長い。本明細書の文脈において、それらは、ロービングまたはウィーブの形で使用される。原理上、適切な繊維は、マトリックス成形材料の処理温度である約250℃を超える軟化温度と熱安定性を有する、十分な長さのすべての繊維である;無機繊維、ポリマー繊維、天然繊維、そしてそれらの組み合わせを使用することが可能である。適切な繊維の例として、金属繊維、ガラス繊維(好ましくは、S1ガラス、S2ガラスのガラス繊維)、炭素繊維、金属化炭素繊維、ホウ素繊維、セラミック繊維(例えば、Al2O3またはSiO2)、玄武岩繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステルの繊維、ポリアクリロニトリル繊維、およびポリマー(ポリイミド、ポリエーテルイミド、硫化ポリフェニレン、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなど)の繊維がある。ガラス繊維は、PVDFの自己触媒分解を生じる可能性があるという理由につき、酸化ホウ素または二酸化チタンを含まないことが好ましい。同様の特性を持つ物質を含むガラス繊維は、同じく除外されることが好ましい。
【0015】
繊維の断面は、例えば、円形、長方形、卵形、楕円形、または繭形であってよい。直径は、好ましくは5μm~25μmである。直径5mm~25mmの円形断面を有する繊維が特に好ましい。
【0016】
断面が円形から逸脱した繊維(例えば、平らなガラス繊維)を使用すると、完成部品における繊維の充填レベルがより高くなり、したがってより高い強度を実現することができる。市販の繊維は、通常、その表面にポリマーマトリックスに結合するための官能基を提供するサイズを有する。本発明の目的のために、サイズは有用であるが、原則として必須ではない。サイズされた繊維を使用することが好ましい。サイズは、より好ましくはポリマーマトリックスに対して反応性である。炭素繊維が好ましい;サイズされた炭素繊維がより好ましい。特に好ましいサイズされた炭素繊維は、サイズがエポキシ基を含むものである。
【0017】
より好ましくは、複合材料は、当該複合材料に対し、炭素繊維を20体積%~60体積%、特に好ましくは30体積%~55体積%、とりわけ好ましくは40体積%~50体積%含む。よりいっそう好ましくは、複合材料は、当該複合材料に対し、エポキシサイズを有する炭素繊維を30体積%~55体積%含む。
【0018】
PVDFは、ポリフッ化ビニリデンとして当業者に知られており、多くの種類が市販されている。PVDFは、ホモポリマーまたはコポリマーであってよい。本発明によれば、使用されるポリフッ化ビニリデンは、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロペン、およびヘキサフルオロプロペンのモノマーに由来する単位を最大40重量%含むフッ化ビニリデンをベースとするコポリマーであってよい。好ましくは、ポリフッ化ビニリデンは、フッ化ビニリデンのホモポリマーである。
【0019】
PVDFは、好ましくは、低粘度PVDFである;低粘度PVDFは、(230℃で)2.16kg使用され、かつASTM D1238-13に準拠してメルトフローインデックス(MFI)を測定する場合に、MFIが18~50g/10分、好ましくは20~45g/10分であることが好ましい。
【0020】
MFIが低いPVDFは、繊維材料の含浸が不十分になり、ポリマーマトリックスのポロシティが増加する。さらに、複合材料中の繊維材料の割合が小さくなる。したがって、全体的にみれば、MFIが低いと、複合材料の機械特性が低下する。これらの特性は、例えば、ASTM D2344-16を使用して測定されることができる。
【0021】
アクリレートコポリマーb)は、好ましくは、以下の単位:
I.14重量%~80重量%、好ましくは20重量%~70重量%、より好ましくは30重量%~65重量%、特に好ましくは40重量%~60重量%の下記式のエステル単位、
【化1】
(式中、Rはメチル、エチル、プロピルまたはブチルであり、R
1は水素またはメチルである。)
II.10重量%~75重量%、好ましくは20重量%~65重量%、より好ましくは25重量%~50重量%、特に好ましくは30重量%~40重量%の下記式のイミド単位、
【化2】
(式中、R
4は、独立して、1~8個の炭素原子を有する、好ましくは1~4個の炭素原子を有する、より好ましく水素またはメチルを有する脂肪族または脂環式ラジカルであり、R
3は、独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたはフェニルであり、mは0または1である。)
III.1重量%~20重量%、より好ましくは1.5重量%~15重量%、特に好ましくは2重量%~5重量%の下記式の酸単位、
【化3】
(式中、R
2は水素またはメチルである。)
IV.1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~25重量%、より好ましくは4重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~15重量%の下記式の酸無水物単位
【化4】
(式中、R
5は、独立して、1~8個の炭素原子を有する、好ましくは1~4個の炭素原子を有する、より好ましくは水素またはメチルを有する脂肪族または脂環式ラジカルであり、nは0または1である。)
を含み、前記単位I、II、IIIおよびIVは、合計で100重量%になる。
【0022】
アクリレートコポリマーb)は、さらに、さらなる単位、例えば、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、イタコン酸エステル、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、塩化ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレンまたはエテンに由来する単位を含んでいてもよいが、ただし、これがPVDFとの相溶性と所望の接着促進効果を著しく損なうことはない。
【0023】
置換基R1、R2、R4、およびR5の鎖長が制限される理由は、アルキルラジカルが長くなるとガラス転移温度が低下し、その結果、耐熱変形性が低下するためである。これは、個々のケースで容認されてよい;そのような実施形態は、少なくとも本発明の均等性の範囲内である。
【0024】
エステル単位Iは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n-プロピル、またはメタクリル酸i-ブチルに由来し、好ましくはメタクリル酸メチルに由来する。
【0025】
イミド単位IIは、m=0の場合、マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、またはN-メチルシトラコンイミドなどの任意に置換されたマレイミドに由来する。m=1の場合、それらは、ポリマー内で隣接する式IまたはIIIの2つの単位とアンモニアまたは一級アミンとの反応に由来し、イミドを形成する。
【0026】
酸単位IIIは、アクリル酸またはメタクリル酸に由来する。
【0027】
無水物単位IVは、(n=0の場合)好ましくは、無水マレイン酸、無水メタクリル酸、および無水アクリル酸などの不飽和ジカルボン酸無水物に由来し、より好ましくは無水メタクリル酸に由来する。n=1の場合、それらは、閉環したポリマー内で隣接する2つの単位IIIからの水の除去に由来する。
【0028】
さらなる無水物単位は、イタコン酸無水物およびアコニット酸に由来していてもよい。
【0029】
より好ましくは、アクリレートコポリマーb)は、もっぱら単位I、II、III、およびIVを有する。
【0030】
好ましくは、アクリレートコポリマー内のR1、R2、R4、およびR5ラジカルはすべて同じであり、より好ましくはすべてメチルである。
【0031】
単位IIが存在するために、そのようなコポリマーは、ポリアクリルイミドもしくはポリメタクリルイミド、または時にはポリグルタルイミドとも呼ばれる。これらは、2つの隣接するカルボン酸基が環状酸イミドに転化されたポリアルキルアクリレートまたはポリアルキルメタクリレートから生じる生成物である。イミドの形成は、好ましくは、水の存在下で、アンモニアまたは第一級アミン(例えば、メチルアミン)を用いて行われ、同時に、加水分解によって単位IIIおよびIVも形成される。
【0032】
生成物とその調製は既知である(ハンス R.クリッヒェルドルフ、ポリマー合成のハンドブック、パートA、出版社 Marcel Dekker Inc.、ニューヨーク-バーゼル-香港、233頁;H.G.エリアス、高分子、出版社 Huthig und Wepf バーゼル-ハイデルベルク-ニューヨーク;US 2 146 209、US 4 246 374)。
【0033】
アクリレートコポリマーは、好ましくは、単位Iを40重量%~60重量%、単位IIを30重量%~40重量%、単位IIIを2重量%~5重量%、および単位IVを5重量%~15重量%を有する。
【0034】
ポリマーマトリックスは、好ましくは、低粘度PVDFと、前記ポリマーマトリックスに対し2重量%~30重量%、より好ましくは2.5重量%~20重量%、特に好ましくは3重量%~10重量%のアクリレートコポリマーと、を含み、前記アクリレートコポリマーは、単位Iを40重量%~60重量%、単位IIを30重量%~40重量%、単位IIIを2重量%~5重量%、および単位IVを5重量%~15重量%含み、単位I、II、III、およびIVの合計は100である。
【0035】
好ましくは、本発明による複合材料は、当該複合材料に対し30体積%~55体積%の、低粘度ホモPVDFからなるポリマーマトリックス中にエポキシ樹脂サイズを有する炭素繊維と、前記ポリマーマトリックスに対し5重量%~10重量%のアクリレートコポリマーと、を含み、前記アクリレートコポリマーは、単位Iを40重量%~60重量%、単位IIを30重量%~40重量%、単位IIIを2重量%~5重量%、および単位IVを5重量%~15重量%含み、単位I、II、III、およびIVの合計は100である。
【0036】
ポリマーマトリックスは、低粘度PVDFとアクリレートコポリマーだけでなく、通常の助剤および添加剤、例えば、耐衝撃性改良剤(例えば、アクリルゴム)、難燃剤、安定剤、可塑剤、加工助剤、染料、顔料なども含んでいてよい。言及された添加剤の量は、所望の特性、特に、繊維材料のマトリックスへ接着に関する特性が著しく損なわれないように添加されなければならない。
【0037】
ポリマーマトリックスは、成分の溶融物を、効率的な混練混合ユニット(例えば、二軸押出機)において、該成分の融点によって導かれる温度(一般に、200~300℃)で混合することにより、慣例的かつ既知の方法によって製造される。
【0038】
本発明による複合材料は、従来技術の方法によって製造されることができる。 一方向に連続する繊維強化テープの製造は、例えば、欧州特許公開公報第0056703A1号、米国特許公報第5002712A号、米国特許公報第4883625A号、米国特許公開公報第2014/0191437A1号、米国特許公開公報第2013/0333788A1号、および国際公開公報第2014/140025A1号に詳細に記載されている。ロービングまたはウィーブから実施し得る製造方法は、例えば、溶融塗布、ポリマー溶液の含浸とその溶媒の除去、フィルム含浸、または粉末含浸である(米国特許公開公報第2018/001516A1号、国際公開公報第2016/156222A1号、国際公開公報第2016/173886A1号)。
【0039】
このようにして得られた複合材料は、適切な形で、すでに最終製品であってもよい。その他の場合では、それは、完成部品を得るために適切な成形方法を用いてさらに加工され得る半製品である。例示的な完成部品としては、航空機、ロケットまたは自動車の構成部品、あるいは補強プライとしてそのような複合材料を含む熱可塑性複合パイプがある。
【0040】
さらに、ストランドとして得られた複合材料を切断して、長さ4mm~60mm、好ましくは5mm~50mm、特に好ましくは6mm~40mm、とりわけ好ましくは5mm~30mm、極めてとりわけ好ましくは6mm~25mmの長細繊維強化ペレットを得ることができる。これらの長細繊維強化ペレットでは、強化繊維は軸方向に配置され、第1切断面から第2切断面まで延びている。
【0041】
次いで、これらのペレットを使用して、射出成形、押出成形、圧縮成形、またはその他の身近な成形方法によって成形品を製造することができ、成形品の特に優れた特性は、穏やかな処理方法によって実現される。本明細書の文脈において、「穏やかな」の語は、特に、過度の繊維破損とそれに伴う繊維長の大幅な減少が大いに回避されることを意味すると理解されるべきである。射出成形の場合、これは、大径で圧縮比の低いスクリュー、そして、寸法の大きなノズルチャネルおよびゲートチャネルを使用することが好ましいことを意味する。保証されるべき補足条件は、長細ペレットを高シリンダー温度(接触加熱)によって急速に溶融させることと、必要以上のレベルのせん断によって繊維が過度に粉砕されないことである。これらの測定値を観察すると、得られた成形品の平均繊維長は、短繊維強化成形材料から製造された類似成形品よりも長くなっている。これにより、特性、特に引張弾性率、極限引張強さ、およびノッチ付き耐衝撃性が大幅に向上する。
【0042】
好ましい半製品はテープである;これらは、連続繊維で一方向に強化されていることが好ましい。好ましくは、テープは、5mm~600mmの幅、好ましくは8mm~300mmの幅を有し、一方、厚みは、通常0.05mm~2mmの範囲、好ましくは0.1mm~1mmの範囲、より好ましくは0.125mm~0.5mmの範囲、特に好ましくは0.15mm~0.35mmの範囲である。
【0043】
好ましい複合材料は、1個~100個、より好ましくは5個~90個の個々の層を有する連続繊維強化テープ層からなり、前記複合材料は、圧力と高温の適用によって、より好ましくは圧密によって、実施例に示されているように形成され、前記個々の層は、任意の所望の繊維配向を有していてよい。
【0044】
根底にある課題の第2面は、本発明の主題のさらなる一部分である、内側から外側に向かって以下の構成要素:
I.外面がポリアミド成形材料またはPVDF成形材料で構成される、単層または複数層の管状ライナーと、
II.ポリマーマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料で構成される補強プライであり、前記ポリマーマトリックスが、以下の成分:
a)主成分として、すなわち少なくとも50重量部程度の低粘度PVDF、および
b)1重量部~50重量部、好ましくは1.5重量部~40重量部、より好ましくは2重量部~30重量部、特に好ましくは2.5重量部~20重量部、とりわけ好ましくは3重量部~10重量部のアクリレートコポリマーであり、カルボン酸無水物基を有する単位を1重量%~30重量%、好ましくは2重量%~25重量%、より好ましくは4重量%~20重量%、特に好ましくは5重量%~15重量%含むアクリレートコポリマー
を含み、かつ前記成分a)および成分b)の重量部の合計が100である混合物を、少なくとも80重量%程度、好ましくは少なくとも85重量%程度、より好ましくは少なくとも90重量%程度、特に好ましくは少なくとも95重量%程度含み、前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率がさらに10%~80%、好ましくは15%~75%、より好ましくは20%~70%、よりいっそう好ましくは25%~65%、特に好ましくは30%~60%、とりわけ好ましくは35%~55%であり、前記ポリマーマトリックスの百分率又は重量部が、前記複合材料の総重量に対するものであり、前記連続繊維の百分率が前記複合材料の総体積に対するものである補強プライを含み、
III.任意で、ポリアミドマトリックスとその中に埋め込まれた連続繊維からなる複合材料のさらなる補強プライであり、前記ポリアミドマトリックスがポリアミドを少なくとも80重量%程度、好ましくは少なくとも85重量%程度、より好ましくは少なくとも90重量%程度、特に好ましくは少なくとも95重量%程度含み、前記複合材料中の前記連続繊維の体積比率がさらに10%~80%、好ましくは15%~75%、より好ましくは20%~70%、よりいっそう好ましくは25%~65%、特に好ましくは30%~60%、とりわけ好ましくは35%~55%であり、前記ポリアミドマトリックスと前記連続繊維の百分率が、それぞれ、前記補強プライの総重量または総体積に対するものである補強プライを含んでよく、
IV.任意で、ポリマー材料からなる外側カバー層を含んでよい
熱可塑性複合パイプ(TCP)によって解決される。
【0045】
好ましくは、層IIは、上記の本発明による複合材料から構成される補強プライである。
【0046】
管状ライナーは、一般に10mm~500mmの範囲、好ましくは12mm~425mmの範囲、より好ましくは15mm~300mmの範囲の内径を有する。その壁厚は、一般に2mm~40mmの範囲、好ましくは2.5mm~30mmの範囲、より好ましくは3mm~20mmの範囲である。ライナーは、単一の層または複数の層を有していてもよい。
【0047】
TCPの製造において、テープの形になった本発明による複合材料は、接触圧力によってライナーの外面に適用される。必要な接触圧力は、巻繊張力または接触体によって達成され得る。一実施形態では、2つの接触面は、例えば、赤外線照射、熱風、熱ガス、レーザー照射、マイクロ波照射によって、あるいは直接接触加熱によって、その表面が溶融される。その後、部分的に溶融した接触面が互いに押し付けられる。その後、溶融領域が固化するまで接触圧力を維持しなければならない。さらなる実施形態では、テープを巻きあげ、次いで、間接的に、あるいは加熱可能な接触体によって直接的に、外側から溶融される。ライナーの外面も溶け始めるように、加熱出力を較正する必要がある。その後、溶融領域が固化するまで接触圧力を維持する。テープの巻きあげとさらなるテーププライの巻きあげは従来技術である。同じ方法で、ポリアミドマトリックスを有する1つまたは複数のテーププライを、必要に応じて、こうして得られた構造に適用することができる。TCPの外側領域は、運搬対象の媒体とその温度にあまりさらされないため、状況によってはこれは得策である。このようにして、材料費を低く抑えることができ、パイプ全体が軽量になる。ポリアミドは、非常に耐衝撃性の高いポリマーとして当業者に知られており、したがって、外界の影響からのより優れた付加的な保護を提供する;加えて、ポリアミドは、PVDFよりも密度が低い。
【0048】
複合プライ全体(すなわち、すべてのテーププライの合計)は、1mm~100mmの範囲、好ましくは5mm~90mmの範囲、より好ましくは10mm~80mmの範囲である。異なるテーププライに対して、異なるテープ形状寸法と巻き角度を用いることが可能である。使用されるテープは、任意の適切な断面を有していてもよい。
【0049】
外側テーププライを保護するために、ポリマー材料の外側カバープライを最終的に適用することが必要に応じて可能である。これは、熱可塑性成形材料、または熱可塑性もしくは架橋可能なもしくは架橋したエラストマーのいずれかである。カバープライは、外側のテーププライにしっかりと接着することが好ましい。この場合、カバープライは、例えば、クロスヘッド押出ダイによって適用されてもよく、したがって、テーププライに密接に接着してよい。接着力は、架橋可能なエラストマーの架橋によっても得られ得る。
【0050】
本発明によるTCPの特定の構造は、以下のとおりである。
a)ポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミド成形材料のカバープライ、
b)PVDF成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
c)PVDF成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミド成形材料のカバープライ、
d)ポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
e)ポリアミド成形材料の内層とPVDFの外層を有する2層ライナー/アクリレートコポリマーブレンド/本発明のPVDF複合層/PVDF層/アクリレートコポリマーブレンド/ポリアミド成形材料のカバープライ
f)ポリアミド成形材料の内層とPVDFの外層を有する2層ライナー/アクリレートコポリマーブレンド/本発明のPVDF複合層/PVDF成形材料のカバープライ、
g)PVDFまたはポリアミド成形材料のライナー/本発明のPVDF複合層/ポリアミドマトリックスを有する複合層/PVDFまたはポリアミド成形材料のカバープライ。
【0051】
設計e)とf)のアクリレートコポリマーは、本発明による複合材料のアクリレートコポリマーb)と同じ組成を有する。
【0052】
適切なポリアミドは、例えば、PA6、PA66、PA610、PA88、PA8、PA612、PA810、PA108、PA9、PA613、PA614、PA812、PA128、PA1010、PA10、PA814、PA148、PA1012、PA11、PA1014、PA1212およびPA12、またはこれらのポリアミドをベースとするポリエーテルアミドもしくはポリエーテルエステルアミド、またはポリフタルアミド、例えば、PA66/6T、PA6/6T、PA6T/MPMDT(MPMDとは、2-メチルペンタメチレンジアミンの略である)、PA9T、PA10T、PA11T、PA12T、PA14T、PA6T/6I、PA6T/10T、PA6T/12、PA10T/11、PA10T/12もしくはPA612/6Tである。
【0053】
本発明による複合材料から構成される強化材を有する本発明によるTCPの利点は、ポリオレフィンまたはポリアミドのマトリックスと比較して、炭化水素、水、またはメタノールを吸収した後のポリマーマトリックスの軟化の程度がより少ないことである。したがって、本発明によるTCPは、ポリオレフィンまたはポリアミドで作製された類似のパイプと比較して、外部圧縮強度がより高い。繊維-マトリックスの良好な接着性はさらに特筆すべき利点であり、これは補強の強さと寿命の長さに大きく貢献する。繊維-マトリックス接着性の尺度は、実施例で説明されているように、ASTM D2344-16に準拠した3点曲げ試験であると見なされる。
【0054】
本発明によるTCPのさらなる利点は、本発明によるPVDF複合プライと存在する任意のポリアミド層との間の接着にさらなるテコ入れが必要とされない点である。
【0055】
本発明によるTCPは、石油またはガス生産におけるオフショア用途、例えば、輸送管(特にアンビリカル)、ライザー、ジャンパーライン、フローライン、介入ライン、ダウンライン、注入ライン、または圧力ラインとしての、プラットフォームへの生成物の輸送、スチール管への接続に特に適する。それは、加圧され得る炭化水素またはそれらの混合物(原油、粗ガス、三相混合物(すなわち、油/ガス/水混合物)、(海底ですでに部分的に処理された)処理油、処理ガス、ガソリン、または軽油など)の輸送、噴射媒体((例えば、空洞内の圧力を維持するための)水、油田化学品、メタノール、またはCO2など)の輸送、そして(例えば、海底のアクチュエーター用の)作動油の誘導に使用されることができる。さらに、本発明によるTCPは、オンショア部門または他の産業用途(特に、パイプと接続部品の間のフォースフィッティング接着性を用いて、比較的大きな力をパイプの軸方向に伝達しなければならない用途)における圧力伝達ラインとしても適切である。
【実施例】
【0056】
低粘度ホモPVDF(Solef 1006)(95重量%)と、10.1重量%の酸無水物(IV)、2.9重量%の酸基(III)、35重量%のアミド基(II)、および52重量%のメタクリレート基(I)を含み、さらなる添加物を含まないアクリレートコポリマー(5重量%)と、を混合して作製されたポリマーマトリックス中に、炭素繊維(Grafil 34-700 D)を45体積%含むテープ。
上記テープの一方向プライ(8個)を圧密し、半製品を得た後(10バール、240℃、保持時間5分)、平面試験片での、ASTM D2344-16に準拠して測定された層間せん断強度は、59MPaであることがわかった。
規定値に至るまで、前記試験片では、炭素繊維からのマトリックスの剥離は観察されなかった;したがって、本試験は、マトリックスと連続繊維の接着状態を示す。
比較のために、アクリレートコポリマーは使用せずに、実施例と同様にして半製品を作製した。半製品を同等に圧密した後、ASTM D2344-16に準拠して測定された層間せん断強度は、17MPaであることがわかった。