(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】バリアフィルム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 23/06 20060101AFI20231204BHJP
B29C 48/10 20190101ALI20231204BHJP
B29C 48/92 20190101ALI20231204BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231204BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C08L23/06
B29C48/10
B29C48/92
C08J5/18 CES
C08K5/098
(21)【出願番号】P 2021526687
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 IB2019059500
(87)【国際公開番号】W WO2020099981
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】513269848
【氏名又は名称】ノヴァ ケミカルズ(アンテルナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワシーレンコ、デレク
(72)【発明者】
【氏名】ライトボディ、オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ティクイシス、トニー
(72)【発明者】
【氏名】チゾム、ピー.スコット
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-526314(JP,A)
【文献】特表2010-510333(JP,A)
【文献】特表2018-501127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0227900(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/06
B29C 48/10
B29C 48/92
C08J 5/18
C08K 5/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの押出ポリエチレン層を含むバリアフィルムであって、
当該少なくとも1つの押出ポリエチレン層は、
I)亜鉛グリセロラートと、
II)高密度ポリエチレンブレンド組成物であって、
II-i)5~60重量%の、高いメルトインデックスI
2を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分a);及び
II-ii)95~40重量%の、低いメルトインデックスI
2’
(ただし、I
2
’はI
2
より小さい)を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分b)、を含み、ここで:
a)前記亜鉛グリセロラートは、前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の重量に基づいて、
200~2000ppmの量で添加され;
b)前記ブレンド成分a)及びブレンド成分b)は、それぞれ、0.950~0.975g/ccの密度を有し;
c)前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の
高いメルトインデックスI
2は、0.5~10グラム/10分であり;
d)前記
I
2
を前記I
2
’で割ることによって得られるI
2比が、10/1より大きい、
高密度ポリエチレンブレンド組成物と、
III)相乗剤であって、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムの混合物を含み、前記亜鉛グリセロラートの重量の30~70重量%の量で存在する、相乗剤と、
を含む、
上記バリアフィルム。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレンブレンド組成物が、10~40重量%の前記成分a)、及び90~60重量%の前記成分b)、を含む、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記高密度ポリエチレンブレンド組成物が、20~40重量%の前記成分a)、及び80~60重量%の前記成分b)、を含む、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記ブレンド成分a)が、2~4の分子量分布Mw/Mnを有することをさらに特徴とする、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項5】
前記高密度ポリエチレンブレンド組成物が、0.955~0.965g/ccの密度を有する、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項6】
前記高密度ポリエチレンブレンド組成物が、0.8~8グラム/10分のメルトインデックスI
2を有する、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項7】
前記高密度ブレンド組成物が、6~12の分子量分布Mw/Mnを有する、請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項8】
食品包装用のバリアフィルムを調製する方法であって、
当該方法は、
I)亜鉛グリセロラートと、
II)高密度ポリエチレンブレンド組成物であって、
II-i)5~60重量%の、高いメルトインデックスI
2を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分a);及び
II-ii)95~40重量%の、低いメルトインデックスI
2’
(ただし、I
2
’はI
2
より小さい)を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分b)、を含み、ここで:
a)前記亜鉛グリセロラートは、前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の重量に基づいて、
200~2000ppmの量で添加され;
b)前記ブレンド成分a)及びブレンド成分b)は、それぞれ、0.950~0.975g/ccの密度を有し;
c)前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の
高いメルトインデックスI
2は、0.5~10グラム/10分であり;
d)前記
I
2
を前記I
2
’で割ることによって得られるI
2比が、10/1より大きい、
高密度ポリエチレンブレンド組成物と、
III)相乗剤であって、
ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムの混合物を含み、前記亜鉛グリセロラートの重量の30~70重量%の量で存在する、相乗剤と、
を含む組成物を、フィルム押出することを含む、
上記方法。
【請求項9】
前記高密度ポリエチレンブレンド組成物が、10~40重量%の前記成分a)、及び90~60重量%の前記成分b)、を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレンド成分a)が、2~4の分子量分布Mw/Mnを有することをさらに特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
1.5/1から4/1のブローアップ比で行われる、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記バリアフィルムが、前記相乗剤の非存在下で調製される対照フィルムの水蒸気透過率よりも15~40%低い水蒸気透過率を有する、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの高密度ポリエチレン(hdpe)樹脂、亜鉛グリセロラート、及び分散助剤/相乗剤のブレンドから調製されるバリアフィルムに関する。これらのフィルムは、クラッカーや朝食シリアルなどの乾燥食品の包装を調製するために使用される。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンは、2つの広範なファミリーに分類することができる。すなわち、「ランダム」(このポリエチレンは、非常に高いエチレン圧力を使用することを特徴とする重合条件下で、フリーラジカルを用いて開始することによって商業的に調製される)と「直鎖状」(このポリエチレンは、遷移金属触媒、例えば「チーグラー・ナッタ」触媒、「クロム」触媒、シングルサイト触媒、又は「メタロセン触媒」などを用いて商業的に調製される)に分類することができる。
【0003】
商業的に販売されているほとんどの「ランダム」ポリエチレンは、ホモポリマーポリエチレンである。このタイプのポリエチレンは、ランダムなポリマー構造がより低いポリマー密度を生成するので、「高圧低密度ポリエチレン」としても知られている。これに対して、商業的に販売されているほとんどの「直鎖状」ポリエチレンは、エチレンと少なくとも1つのアルファオレフィン(特にブテン、ヘキセン、又はオクテン)とのコポリマーである。コモノマーを直鎖状ポリエチレンに組み込むことにより、得られるコポリマーの密度が低下する。例えば、直鎖状エチレンホモポリマーは、一般に、非常に高い密度(典型的には、0.955グラム/立方センチメートル(g/cc)を超える)であるが、少量のコモノマーを組み込むと、いわゆる「高密度ポリエチレン」(又は「hdpe」、典型的には、0.935g/ccを超える密度を有する)が生成され、さらにコモノマーを組み込むと、いわゆる「直鎖状低密度ポリエチレン」(又は「lldpe」、典型的には、約0.905g/cc~0.935g/ccの密度を有する)が生成される。
【0004】
一部のプラスチックフィルムは、hdpeから作製される。ある特定のタイプのhdpeフィルムは、「バリア特性」を備えた食品包装を調製するために使用される。すなわち、このフィルムは水蒸気透過に対する「バリア」として機能する。このようないわゆる「バリアフィルム」は、朝食シリアル、クラッカー、及びその他の乾燥食品のパッケージ(又は段ボール包装用のライナー)を調製するために使用される。
【0005】
最近、核形成剤を添加することによって、hdpeフィルムのバリア特性が改善され得ることが発見された。
【0006】
我々は、優れたバリア特性を備えたHDPEフィルムを、1)実質的に互いに異なるメルトインデックスを有する2つのhdpe樹脂のブレンド;2)亜鉛グリセロラート;3)分散助剤/相乗剤、を使用して生成し得ることを発見した。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、本発明は以下を提供する:
I)亜鉛グリセロラートと、
II)高密度ポリエチレンブレンド組成物であって、
II-i)5~60重量%の、高いメルトインデックスI2を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分a);及び
II-ii)95~40重量%の、低いメルトインデックスI2’を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分b)、を含み、ここで:
a)前記有機バリア核形成剤は、前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の重量に基づいて、100~3000ppmの量で添加され;
b)前記ブレンド成分a)及びブレンド成分b)は、それぞれ、0.950~0.975g/ccの密度を有し;
c)前記ブレンド組成物のメルトインデックスI2は、0.5~10グラム/10分であり;
d)前記ブレンド成分a)のI2値を前記ブレンド成分b)のI2’値で割ることによって得られるI2比が、10/1より大きい、
高密度ポリエチレンブレンド組成物と、
III)相乗剤。
【0008】
一実施形態では、分散助剤は、脂肪酸のカルシウム塩若しくは亜鉛塩(例えば、ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛)又はこれらの塩の混合物を含む。別の実施形態では、本発明は、食品包装用のバリアフィルムを調製するための方法を提供し、当該方法は、
I)亜鉛グリセロラートと、
II)高密度ポリエチレンブレンド組成物であって、
II-i)5~60重量%の、高いメルトインデックスI2を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分a);及び
II-ii)95~40重量%の、低いメルトインデックスI2’を有する、少なくとも1つの高密度ポリエチレンブレンド成分b)、を含み、ここで:
a)前記亜鉛グリセロラートは、前記高密度ポリエチレンブレンド組成物の重量に基づいて、100~3000ppmの量で添加され;
b)前記ブレンド成分a)及びブレンド成分b)は、それぞれ、0.950~0.975g/ccの密度を有し;
c)前記高密度ポリエチレンブレンド組成物のメルトインデックスI2は、0.5~10グラム/10分であり;
d)前記ブレンド成分a)のI2値を前記ブレンド成分b)のI2’値で割ることによって得られるI2比が、10/1より大きい、
高密度ポリエチレンブレンド組成物と、
III)相乗剤であって、カルシウム及び亜鉛からなる群から選択される金属の少なくとも1つの脂肪酸塩を含む、相乗剤と、
を含む組成物を、フィルム押出することを含む。
【0009】
別の実施形態では、この方法によって作製されるフィルムのWVTRは、相乗剤の非存在下で調製される対照フィルムのWVTRよりも15~40%低い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<発明を実施するための最良の形態>
<バリアフィルム及び食品包装>
プラスチックフィルムは、食品の包装材料として広く使用されている。多層フィルムを含むフレキシブルフィルムは、バッグ、包装材、パウチ、及びその他の熱成形材料を調製するために使用される。
【0011】
これらのプラスチックフィルムのガス(特に酸素)と水分に対する透過性は、適切な食品包装を設計する際の重要な考慮事項である。
【0012】
熱可塑性エチレン-ビニルアルコール(「EVOH」)コポリマーから調製されたフィルムは、一般に、酸素バリアとして、及び/又は耐油性のために使用される。ただし、EVOHフィルムは水分に対して非常に透過性である。
【0013】
逆に、ポリオレフィン、特に高密度ポリエチレンは、水分透過に対して耐性があるが、酸素に対して比較的透過性である。
【0014】
直鎖状ポリエチレンフィルムの水分に対する透過性は、典型的には、「水蒸気透過率」(又は「WVTR」)で表される。特定の用途では、ある程度の蒸気透過が望ましく、これは例えば、生産物を含む包装から水分を排出できるようにするためである。この目的には、炭酸カルシウムを充填できる(蒸気透過率をさらに高めるための)直鎖状低密度ポリエチレン(「lldpe」)の使用が一般的である。
【0015】
逆に、朝食シリアルやクラッカーなどのサクサクした食品を含む包装の場合、食品の新鮮さが損なわれるのを防ぐために、WVTRを非常に低いレベルに制限することが望ましい。この目的には、hdpeを使用して「バリアフィルム」を調製するのが一般的である。プラスチックフィルムとWVTRの挙動のレビューは、米国特許(USP)6,777,520号(McLeod他)に記載されている。
【0016】
本発明は、hdpeから調製された「バリアフィルム」、すなわち、低いWVTRを有するフィルムに関する。EVOHフィルムの上記の説明から理解されるように、水分及び酸素に対して耐性である構造を生成するために多層バリアフィルムを調製することも知られている。多層構造には、包装の品質を向上させるために追加の層を含めることもでき、例えば、耐衝撃性やシール性を提供するために追加の層を含めることができる。「構造」層間の接着を改善するために「タイ層(tie layers)」を使用してよいことも当業者には理解されるであろう。そのような多層構造では、hdpeバリア層は、内部(「コア」)層又は外部(「スキン」)層のいずれかとして使用することができる。
【0017】
プラスチック樹脂からの「バリア」食品包装の製造には、2つの基本的な操作が含まれる。
【0018】
第1の操作には、プラスチック樹脂からプラスチックフィルムを製造することが含まれる。ほとんどの「バリアフィルム」は、プラスチックが押出機内で溶融され、次いで環状ダイを通して強制的に押し出される「インフレーションフィルム(blown film)」押出によって調製される。環状ダイからの押出物は、吹き付けられた空気にさらされ、これにより、プラスチックの気泡が形成される。複数の押出機及び同心のダイを使用することにより、多層構造を、インフレーションフィルムプロセスによって共押出することができる。この操作から得られた「生成物」が「バリアフィルム」であり、ロール上に集められて、食品包装の製造業者に出荷される。
【0019】
食品包装の製造業者は、一般に、インフレーションフィルムのロールを、包装された食品に変換する。これには、典型的に、次の3つの基本的な工程が含まれる。
1)包装を形成する工程;
2)包装に充填する工程;
3)完成した包装内に食品をシーリングする工程。
【0020】
具体的な詳細は製造業者によって異なるが、食品包装に適したフィルムであるために、物理的特性のバランスが必要であることは容易に理解されるであろう。低いWVTRに加えて、フィルムが、良好に「シール」し、包装の取り扱いを容易にするのに十分な衝撃強度及び剛性(又はフィルム「弾性率」)を有することが望ましい。多層共押出は、この特性のバランスを達成するためにしばしば使用され、3層及び5層の共押出がよく知られている。シーラント層は、エチレン酢酸ビニル(EVA)アイオノマー(例えば、E.I.DuPontによってSURLYN(登録商標)の商標で販売されているものなど)、非常に低い密度のポリエチレン(密度が0.910グラム/立方センチメートル未満のポリエチレンコポリマー)及び少量のポリブテンとのブレンドを用いて調製することができる。共押出の両方の「スキン」層又はスキン層の一方のみに、シーラント組成物を使用することが知られている。
【0021】
<HDPEブレンド成分及び全体的な組成物>
本発明のバリアフィルムに使用されるプラスチックは、高密度ポリエチレン(hdpe)である。具体的には、hdpeは、ASTM D1505によって決定されるように、少なくとも0.950グラム/立方センチメートル(「g/cc」)の密度を有していなければならない。好ましいhdpeは、0.955g/ccを超える密度を有し、最も好ましいhdpeは、エチレンのホモポリマーである。
【0022】
<ブレンド成分>
<ブレンド成分a)>
本発明で使用されるポリエチレン組成物のブレンド成分a)は、比較的高いメルトインデックスを有するhdpeを含む。本明細書で使用される場合、「メルトインデックス」という用語は、ASTM D1238(2.16kgの荷重を用いて、190℃で行われる場合)によって得られる値を指すことを意味する。この用語は、本明細書では「I2」(10分間の試験期間中に流れるポリエチレンのグラム、又は「グラム/10分」で表される)とも称される。当業者によって認識されるように、メルトインデックスI2は、一般に、分子量に反比例する。したがって、本発明のブレンド成分a)は、ブレンド成分b)と比較して、比較的高いメルトインデックス(又は、換言すると、比較的低い分子量)を有する。
【0023】
ブレンド成分a)のI2の絶対値は、好ましくは5グラム/10分よりも大きい。しかし、ブレンド成分a)のI2の「相対値」は重要であり、ブレンド成分b)のI2値よりも少なくとも10倍高くなければならない[本明細書では、ブレンド成分b)のI2値を、I2’と称する]。したがって、例示すると、ブレンド成分b)のI2値が、1グラム/10分である場合、ブレンド成分a)のI2値は、少なくとも10グラム/10分でなければならない。
【0024】
ブレンド成分a)は、さらに、以下のことを特徴とする。
i)密度: 0.950~0.975g/ccの密度を有していなければならない。
ii)ポリエチレン組成物全体の重量%: 全hdpe組成物の5~60重量%の量で存在しなければならず(全ポリエチレンの残部は、ブレンド成分b)である)、10~40の量、特に20~40重量%の量が好ましい。複数の高密度ポリエチレンを使用して、ブレンド成分a)を形成することが可能である。
【0025】
成分a)の分子量分布[これは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割ることによって決定され、Mw及びMnは、ASTM D6474-99に従って、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される]は、好ましくは2~20、特に2~4である。理論に縛られることを望まないが、成分a)の低いMw/Mn値(2~4)は、本発明の方法に従って調製したインフレーションフィルムの核形成速度及び全体的なバリア性能を改善し得ると考えられる。
【0026】
<ブレンド成分b)>
ブレンド成分b)もまた、0.950~0.970g/cc(好ましくは0.955~0.965g/cc)の密度を有する高密度ポリエチレンである。
【0027】
ブレンド成分b)のメルトインデックスも、2.16kgの荷重を用いて、190℃でASTM D1238によって決定される。ブレンド成分b)のメルトインデックス値(本明細書では、I2’と称する)は、ブレンド成分a)のメルトインデックス値よりも低く、これは、ブレンド成分b)が、比較的高い分子量を有することを示している。I2’の絶対値は、好ましくは0.1~2グラム/10分である。
【0028】
成分b)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の成功には重要ではないが、2~4のMw/Mnが、成分b)にとって好ましい。
【0029】
上記のように、成分b)のメルトインデックスを、成分a)のメルトインデックスで割った比は、10/1より大きくなければならない。
【0030】
ブレンド成分b)も、複数のhdpe樹脂を含有し得る。例えば、ブレンド成分b)は、250,000~2,000,000の分子量Mwを有するHDPEを、少量(HDPE組成物全体に基づいて、5重量未満、特に3重量%未満)含有し得る。
【0031】
<全体的なHDPE組成物>
本発明で使用される全体的な(overall)高密度ブレンド組成物は、ブレンド成分a)をブレンド成分b)と一緒にブレンディングすることによって形成される。この全体的なhdpe組成物は、0.5~10グラム/10分(好ましくは0.8~8グラム/10分)のメルトインデックス(ASTM D1238、2.16kgの荷重を用いて190℃で測定)を有しなければならない。
【0032】
ブレンドは、任意のブレンディングプロセスによって作製することができ、それは、例えば、1)粒状樹脂の物理的ブレンディング;2)異なるhdpe樹脂の共通の押出機への同時供給;3)(任意の従来のポリマー混合装置における)溶融混合;4)溶液ブレンディング;又は5)2つ以上の反応器を利用する重合プロセスである。
【0033】
1つの好ましいhdpeブレンド組成物は、以下の2種のブレンド成分を押出機内で溶融ブレンディングすることによって調製することができる:
10~30重量%の成分a):成分a)は、15~30グラム/10分のメルトインデックスI2、及び0.950~0.960g/ccの密度を有する従来のhdpe樹脂である、並びに
90~70重量%の成分b):成分b)は、0.8~2グラム/10分のメルトインデックスI2、及び0.955~0.965g/ccの密度を有する従来のhdpe樹脂である。
【0034】
成分a)に適した市販のhdpe樹脂の例は、SCLAIR(登録商標)79Fの商標で販売されており、これは、エチレンを、従来のチーグラー・ナッタ触媒で単独重合することによって調製されたhdpe樹脂である。それは、典型的なメルトインデックスが18グラム/10分、典型的な密度が0.963g/cc、及び典型的な分子量分布が約2.7である。それは、18グラム/10分の典型的なメルトインデックスと0.963g/ccの典型的な密度と約2.7の典型的な分子量分布を有している。
【0035】
ブレンド成分b)に適した市販のhdpe樹脂の例には、次のものが含まれる(典型的なメルトインデックス及び密度の値を括弧内に示す):
SCLAIR(登録商標)19G(メルトインデックス=1.2グラム/10分、密度=0.962g/cc);
MARFLEX(登録商標)9659(Chevron Phillipsから入手可能、メルトインデックス=1グラム/10分、密度=0.962g/cc);
ALATHON(登録商標)L5885(Equistarから入手可能、メルトインデックス=0.9グラム/10分、密度=0.958g/cc)。
【0036】
非常に好ましいHDPEブレンド組成物は、異なる重合条件下で操作する2つの反応器を使用して、溶液重合プロセスによって調製される。これにより、hdpeブレンド成分の均一なブレンドが、その場で(in situ)提供される。このプロセスの例は、米国特許出願公開第20060047078号(Swabey他)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。全体的なHDPEブレンド組成物は、好ましくは3~20、特に6~12のMWD(Mw/Mn)と、10,000~40,000のMwとを有する。
【0037】
<亜鉛グリセロレート>
亜鉛グリセロレート(CAS登録番号16754-68-0)は、BASFからIRGASTAB(登録商標)NA-287の商標で市販されている。一実施形態では、これを、HDPEブレンド組成物の総重量に基づいて、100~3000ppm、特に200~2000ppmの量で使用する。
【0038】
<分散助剤/相乗剤>
本発明のHDPEブレンド組成物は、非常に異なる分子量を有する2つのブレンド成分を含有しなければならない(一方のブレンド成分のメルトインデックスI2は、もう一方のブレンド成分のメルトインデックスの少なくとも10倍高いという要件によって証明されるように)。
【0039】
我々は、このHDPEブレンド組成物に、亜鉛グリセロラートを均一に分散させることが困難であることを観察した。
【0040】
我々はまた、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛を使用すると、本発明のHDPEブレンド組成物及び亜鉛グリセロラートから作製したフィルムのWVTRが改善されることも観察した(ここでは、亜鉛グリセロラートは用いたが、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛なしで作製した「対照フィルム」と比較した)。これは、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛が(単独で)、HDPEフィルムのWVTRを改善することを、我々は観察したことがない、という意味での相乗効果である。理論に縛られることなしで、我々は、ステアリン酸カルシウム及び/又はステアリン酸亜鉛が亜鉛グリセロラートの分散を改善すると考えている。一実施形態では、相乗剤は、相乗剤なしで(ただし、同じHDPEブレンド組成物及び亜鉛グリセロラートを用いて)作製した対照フィルムと比較して、フィルムのWVTRを15~40%改善/低下させる。
【0041】
<ステアリン酸カルシウム及びステアリン酸亜鉛の組成物>
「ステアリン酸亜鉛」及び「ステアリン酸カルシウム」は、これらの生成物が「純粋な」又は単一の分子であることを意味し得る用語であり、一般的に使用されている。しかし、当業者によって認識されるように、これらの生成物を(商業的に)作製するために使用される脂肪酸は、一般に、様々な脂肪酸の混合物を典型的に含有する動物及び/又は植物材料から供給され、それらの大部分には、典型的に16~18個の炭素原子が含まれている。
【0042】
したがって、より確実にするために、本明細書で使用される「ステアリン酸亜鉛」及び「ステアリン酸カルシウム」という用語は、単一の/純粋な分子に限定されることを意図するものではない。その代わりに、これらの用語は、脂肪酸の混合物の亜鉛塩(又はカルシウム塩)である市販のステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウム生成物も説明することを意図している。
【0043】
ステアリン酸亜鉛とステアリン酸カルシウムの組合せを、相乗剤として使用することも本発明の範囲内である。
【0044】
<相乗剤の量>
我々の実験は、相乗剤の最適なレベルがあることを示している。すなわち、本発明のHDPEブレンドの準最適な(sub-optimal)核形成を提供するには、相乗剤が多すぎるか又は少なすぎるかのいずれかが観察されている。理論に縛られることを望まないが、我々は、これが相乗作用のさらなる証拠を提供すると考えている(ステアリン酸塩が「多すぎる」と、準最適な核形成を生じる可能性があるという意味で)。したがって、一実施形態では、相乗剤の量は、亜鉛グリセロラートの重量の20~90重量%、特に30~70重量%である。したがって、例えば、(HDPE組成物の総重量に基づいて)1000重量百万分率(ppm)の亜鉛グリセロラートの使用は、200~900(特に300~700)ppmのステアリン酸金属を伴うことができる。
【0045】
<マスターバッチ>
一実施形態では、「マスターバッチ」は、HDPE組成物、亜鉛グリセロラート、及び相乗剤を、2~30重量%の亜鉛グリセロラートと、(ステアリン酸)相乗剤の重量に基づいて、1/3から1/1の重量比の(ステアリン酸)相乗剤と、HDPE組成物を含む残部とを含有するマスターバッチへと、溶融混合することによって調製される。このマスターバッチは、部分的に混合されているが、それでも比較的「濃縮された」形態の亜鉛グリセロラート及び相乗剤を提供する。次いで、100~2000ppmの亜鉛グリセロラートを含有する完成したHDPEバリア組成物を生成するために、マスターバッチを、さらなる量のHDPE組成物と(典型的には、押出機内で)溶融混合する。
【0046】
このタイプのマスターバッチ技術の使用は、当業者に一般に知られており、ポリマー組成物中の添加剤の分散/混合を改善するために使用されることもある。例えば、米国特許第7,491,762号(Wolters他)は、ポリオレフィン;ヘキサヒドロフタル酸の金属塩(核形成剤);親水性シリカ;ハイドロタルサイト;及びステアリン酸亜鉛を含有するマスターバッチを用いて、ポリエチレン中の核形成剤の分散を教示している。
【0047】
<他の添加剤>
hdpeはまた、他の従来の添加剤を含有してもよく、特に(1)一次酸化防止剤(例えば、ビタミンEを含むヒンダードフェノールなど);(2)二次酸化防止剤(特にホスファイト及びホスホナイト);(3)加工助剤(特にフルオロエラストマー及び/又はポリエチレングリコール結合加工助剤)を含有してもよい。
【0048】
<フィルム押出プロセス>
<インフレーションフィルムプロセス>
押出インフレーションフィルムプロセスは、プラスチックフィルムを調製するための周知のプロセスである。このプロセスでは、溶融プラスチックを加熱、溶融、搬送し、環状ダイに押し込む押出機を採用している。典型的な押出温度は330~500°F、特に350~460°Fである。
【0049】
ポリエチレンフィルムは、ダイから引き出されてチューブ形状に成形され、最終的に一対のドローローラー又はニップローラーを通過する。次いで、内部の圧縮空気がマンドレルから導入され、チューブの直径が大きくなり、所望のサイズの「気泡(bubble)」が形成される。このようにして、インフレーションフィルムは2つの方向に延伸される。すなわち、(気泡の直径を「吹き出す(blows out)」強制空気の使用によって)軸方向に延伸され、且つ、(機械を介して気泡を引っ張る巻き取り要素の作用によって)気泡の長手方向に延伸される。外部空気も気泡の周囲に導入され、溶融物がダイを出るときに溶融物を冷却する。フィルムの幅は、気泡に多かれ少なかれ内部空気を導入することによって変化し、それにより、気泡のサイズが増加し又は減少する。フィルム厚さは、主にドローロール又はニップロールの速度を増減してドローダウン速度を制御することによって制御される。
【0050】
次に、気泡は、ドローロール又はニップロールを通過した直後に、フィルムの2つの二重層内で崩壊する。冷却されたフィルムは、次いで、切断又はシールすることによってさらに処理され、種々の消費者製品を生産することができる。理論に縛られることを望まないが、一般に、インフレーションフィルムを製造する当業者は、完成したフィルムの物理的特性が、ポリエチレンの分子構造及び加工条件の両方によって影響を受けると考えられている。例えば、加工条件は、分子配向の程度(機械方向と軸方向又は交差方向の両方)に影響を及ぼすと考えられている。
【0051】
機械方向」(「MD」)と「横方向」(「TD」、MDに垂直である)の分子配向のバランスが、一般に、本発明に関連する重要な特性(例えば、ダート衝撃強度、機械方向及び横方向の引裂特性)にとって最も望ましいと考えられている。
【0052】
したがって、「気泡(bubble)」に対するこれらの延伸力は、完成したフィルムの物理的特性に影響を及ぼし得ることが認識されている。特に、「ブローアップ比」(すなわち、吹き出された気泡の直径と環状ダイの直径との比)は、完成したフィルムのダート衝撃強度及び引裂強度に大きな影響を及ぼし得ることが知られている。
【0053】
上記の説明は、単層フィルムの調製に関する。多層フィルムは、1)溶融ポリマーの複数の流れを環状ダイに導入して多層フィルム膜をもたらすことを可能にする「共押出」プロセス、又は2)フィルム層が一緒に積層される積層プロセス、を使用することによって調製することができる。本発明のフィルムは、好ましくは上記のインフレーションフィルムプロセスを使用して調製される。
【0054】
代替プロセスは、いわゆるキャストフィルムプロセスであり、このプロセスでは、ポリエチレンを押出機内で溶融し、次いで線形スリットダイに通し、それによって薄い平坦なフィルムを「キャスティング(casting)」する。キャストフィルムの押出温度は、典型的には、インフレーションフィルムプロセスで使用される温度よりもいくらか高温である(典型的には、450~550°Fの操作温度を用いる)。一般に、キャストフィルムは、インフレーションフィルムよりも急速に冷却(急冷)される。
【0055】
さらなる詳細は、以下の実施例において提供される。
【実施例】
【0056】
これらの実施例で使用されたHDPEブレンド組成物は、米国特許出願公開第20060047078号(Swabey他)の開示に従って、二重反応器溶液重合プロセスで調製した。そのHDPEブレンド組成物は、メルトインデックスI2が1.2グラム/10分、密度が0.967g/cc、分子量分布Mw/Mnが8.9であった。そのHDPEブレンド組成物には、分子量に応じて変化する2つの異なる画分を有していた。低分子量画分(又は成分a))は、全組成物の約55重量%であり、メルトインデックスI2が、5000グラム/10分を超えると推定された。高分子量画分は、全組成物の約45重量%であり、メルトインデックスが0.1グラム/10分未満であると推定された。
【0057】
上記のように、メルトインデックス(I2)は、一般に、ポリエチレン樹脂の分子量に反比例する。これは、log(I2)対log(重量平均分子量Mw)のプロットを作成することによって、分子量分布が狭い(3未満)ホモポリマーhdpe樹脂について確認された。このプロットを作成するために、15種類以上のホモポリマーhdpe樹脂のメルトインデックス(I2)と重量平均分子量(Mw)を測定した。これらのホモポリマーhdpe樹脂は、分子量分布が狭い(3未満)ものの、異なるMwを有しており、Mwは約30,000~150,000の範囲であった。(当業者には理解されるように、この範囲外の分子量を有するポリエチレン樹脂について再現可能なI2値を得ることは困難である)。
【0058】
これらのI2値とMw値の両対数プロットを用いて、そのようなホモポリマーhdpe樹脂についてのI2とMwの間の以下の関係を計算した。
I2=(1.774×10-19)×(Mw-3.86)。
【0059】
(上記の関係に基づく)外挿を用いて、HDPE樹脂の成分a)及び成分b)のI2値を推定した。すなわち、成分a)及び成分b)の分子量を測定し、Mw値を用いてI2値を推定した。(これらのhdpeブレンド成分の粘度が非常に異なるため)これらのhdpeブレンド成分を物理的にブレンドすることが困難であり得ることは、当業者には理解されるであろう。したがって、溶液ブレンディング又はその場ブレンディング(すなわち、重合プロセスによって調製される)は、そのようなHDPEブレンド組成物を調製するための好ましい方法である。
【0060】
水蒸気透過率(「WVTR」、これは、特定のフィルム厚さ(ミル)における1日当り100平方インチのフィルム当りに透過する水蒸気のグラム、又は、g/100インチ2/日で表される)は、ASTM F1249-90に従って、Modern Controls Inc.によって開発されたMOCON PERMATRON(登録商標)を用いて、100°F(37.8℃)及び100%相対湿度の条件にて測定した。
【0061】
[例1] スクリーニング検討
理論に縛られることを望まないが、いくつかの核形成剤は、フィルム中のHDPEの結晶構造を変えることによって、HDPE樹脂から作製されたフィルムのWVTRを改善すると考えられる。したがって、スクリーニング検討を行って、亜鉛グリセロラートも含むHDPEブレンド組成物のピーク融点(Tm)に対するさまざまなレベルのステアリン酸亜鉛の添加の影響を調査した。ピーク融点は、HDPE樹脂組成物の結晶部分の核形成のタイプ/レベルの指標であると見なされる。結果を表1に示す。
【0062】
第1の比較実験(1-C)は、HDPEブレンド組成物のTmが132.7℃であることを示し、1000~1500ppmの亜鉛グリセロラートを添加すると、実際にTmがわずかに132.5℃に低下することを示している(比較実験2-C及び比較実験3-C参照)。本発明の組成物は、実験4~実験7に示されている。ステアリン酸亜鉛と亜鉛グリセロラートの組合せは、Tmを132.9~133.1℃の間に増加させることが示されている。表1に示す最良の結果は、1500ppmの亜鉛グリセロラートと500ppmのステアリン酸亜鉛を使用した場合に観察された(実験6、Tm=133.1)。興味深いことに、(亜鉛グリセロラートのレベルを1500ppmに維持しながら)ステアリン酸亜鉛のレベルが1000ppmに増加すると、Tmは実際にいくらか減少し、Tmは132.9℃に低下した(ただし、これは、比較実験3-Cにおいて、1500ppmの亜鉛グリセロラートのみを使用して観察されたTmよりも優れている)。Tm測定は、従来の示差走査熱量測定(DSC)装置を使用して行った。
【0063】
(すべての試料に同じ機器と試験方法が用いられている場合)特定のDSC機器、又は特定の試験方法を用いてTmを測定することは特に重要ではない。なぜなら、我々は、測定されたTm値の相対的な違いが、このスクリーニング試験で組成物をランク付けするのに役立つと考えているからである。
【0064】
表1と残りの表では、「ZnSt」はステアリン酸亜鉛を意味し、「Zn Gly」は亜鉛グリセロラートを意味する。
【0065】
【0066】
[例2]
<インフレーションフィルムの検討>
表2に示す配合物を、MacroEngineeringによって製造された従来のインフレーションフィルムラインで、インフレーションフィルムに変換した。押出機は、35ミルのダイギャップを有する環状ダイを備えていた。このラインを、以下の条件を用いて操作した(「照準点(aiming points)」を示す)。
1)質量流量=40ポンド/時間(18.2キログラム/時間);
2)ブローアップ比(BUR)=2/1;
3)フィルム厚さ=1.5ミル;
4)フロストラインの高さ(FLH)=7インチ(15.4センチメートル)。
【0067】
フィルムのWVTRを、ASTM F1249-90に従って測定した。
【0068】
対照フィルム(表2には示されていない)を、このインフレーションフィルムラインで調製した。対照フィルムの調製には、同じHDPEブレンド組成物を使用したが、亜鉛グリセロラート又はステアリン酸亜鉛のいずれも含まれていない。その結果、1.5ミルのフィルム厚さで約0.16g/100平方インチ/日のWVTRを有することが観察された。
【0069】
表2に示すように、(ステアリン酸亜鉛の非存在下で)1600ppmの亜鉛グリセロラートを添加すると、フィルムのWVTRがある程度改善し、0.118g/100平方インチ/日で測定された(実験2.1-C)。
【0070】
本発明のフィルム2.2iは、0.0821g/100平方インチ/日のWVTRを有し、これは0.035gのさらなる改善であり、又は、換言すると、相乗剤なしで作製した対照フィルム(2.2c)と比較して30.4%の改善/減少であった。
【0071】
【0072】
[例3]
<インフレーションフィルムの検討>
第2のインフレーションフィルムの検討を、Gloucester Engineeringによって製造された、より大きな容量のインフレーションフィルムラインで行った。このラインの押出機は、35ミルの環状ギャップを有するダイも備えていた。このラインを、以下の条件を用いて操作した(「照準点(aiming points)」を示す)。
1)質量流量=100ポンド/時間(45.5キログラム/時間);
2)ブローアップ比(BUR)=2/1;
3)フィルム厚さ=1.5ミル;
4)フロストラインの高さ(FLH)=14インチ(35.6センチメートル)。
【0073】
この検討では、2つの本発明のフィルムを調製した。1つにはステアリン酸亜鉛を用い、もう1つにはステアリン酸カルシウムを用いた。これらのフィルムの実際のフィルム厚さは、照準点よりも厚く(第1の例のフィルムの厚さよりも厚く)、WVTR値もより良好であった(表3参照)。
【0074】
【産業上の利用可能性】
【0075】
核形成剤として分散相乗剤を使用することにより、核形成された高密度ポリエチレンから作製したフィルムのバリア性能が強化される。バリアフィルムは、シリアルやクラッカーなどの乾燥食品の包装を調製するのに適している。