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特許7395594波長多重化されたシード源を使用する結合されたレーザアーキテクチャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】波長多重化されたシード源を使用する結合されたレーザアーキテクチャ
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/23 20060101AFI20231204BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20231204BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20231204BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01S3/23
H01S3/067
H01S3/10 D
H01S5/40
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021541035
(86)(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 US2020012679
(87)【国際公開番号】W WO2020185289
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】16/248,487
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】グッドノ,グレゴリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】チェウン,エリク・シー
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-289125(JP,A)
【文献】米国特許第10008821(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0002688(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0128744(US,A1)
【文献】国際公開第2015/164082(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
別々の入力ファイバ上で異なる波長においてシードビームを各々が生成する複数の主発振器と、
前記別々のファイバ上の前記シードビームのすべてを受信し、前記シードビームを共通ファイバ上へとスペクトル的に結合するスペクトルマルチプレクサと、
前記共通ファイバ上の前記結合されたシードビームに応答的な電気光学位相変調器(EOM)であって、前記結合されたシードビームの位相を、RFドライバから印加される電圧に比例するように変化させることにより、前記結合されたシードビームを変調する、EOMと、
前記共通ファイバ上の前記変調および結合されたシードビームに応答的な、ならびに、前記シードビームを別々の出力ファイバ上へとスペクトル的に分ける、スペクトルデマルチプレクサと
を備える、波長分割多重化(WDM)シードビーム源であって、
前記WDMシードビーム源が、スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システムの一部である、
波長分割多重化(WDM)シードビーム源。
【請求項2】
前記スペクトルマルチプレクサおよび前記スペクトルデマルチプレクサは、一連のアドドロップフィルタ、アレイ導波路格子(AWG)、または、多重の切り替え可能な出力ファイバを伴うプログラマブルスペクトルフィルタである、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項3】
複数の帯域通過フィルタをさらに備え、前記帯域通過フィルタのうちの別々の1つは、前記出力ファイバのうちの1つにおいて、前記変調されたシードビームのうちの1つを受信およびフィルタリングする、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項4】
前記EOMから前記共通ファイバ上で前記変調および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームを増幅する前置増幅器をさらに備える、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項5】
前記EOMから前記共通ファイバ上で前記変調および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームの偏光制御を提供する偏光子をさらに備える、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項6】
前記複数の主発振器は、単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器である、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項7】
前記シードビーム源は、前記スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システムにおいてのシードビーム源である、請求項1に記載のシードビーム源。
【請求項8】
前記ファイバレーザ増幅器システムは、各々の出力ファイバ上の前記シードビームを増幅する別々のファイバ増幅器と、前記増幅されたビームを、発散する結合されないビームとして自由空間内へ向ける、前記増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、前記発散する結合されないビームを、コリメートされた結合されないビームとして集束させる、前記発散する結合されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、前記異なる波長においての前記増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、前記コリメートされた結合されないビームを空間的に結合する、前記コリメートされた結合されないビームに応答的なSBC格子とを含む、請求項7に記載のシードビーム源。
【請求項9】
前記複数の主発振器、前記スペクトルマルチプレクサ、前記EOM、および前記スペクトルデマルチプレクサは、前記ファイバレーザ増幅器システムにおいての第1のシードビーム源モジュールとして構成され、前記ファイバレーザ増幅器システムは、複数の主発振器と、スペクトルマルチプレクサと、EOMと、スペクトルデマルチプレクサとを各々が有する複数のシードビームモジュールを含み、前記シードビーム源モジュールのすべてにおいての、前記主発振器のすべては、異なる波長において動作する、請求項8に記載のシードビーム源。
【請求項10】
別々の入力ファイバ上で異なる波長においてシードビームを各々が生成する複数の主発振器と、
前記別々のファイバ上の前記シードビームのすべてを受信し、前記シードビームを共通ファイバ上へとスペクトル的に結合するスペクトルマルチプレクサと、
前記共通ファイバ上の前記結合されたシードビームに応答的な電気光学位相変調器(EOM)であって、前記結合されたシードビームの位相を、RFドライバからの付与される電圧に比例するように変化させることにより、前記結合されたシードビームを変調する、EOMと、
前記EOMから前記共通ファイバ上で前記変調および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームを増幅する前置増幅器と、
前記前置増幅器から前記共通ファイバ上で前記増幅および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームの偏光制御を提供する偏光子と、
前記偏光子からの前記共通ファイバ上の前記偏光制御および結合されたシードビームに応答的な、ならびに、前記シードビームを別々の出力ファイバ上へとスペクトル的に分ける、スペクトルデマルチプレクサと、
複数の帯域通過フィルタであって、前記帯域通過フィルタのうちの別々の1つは、前記出力ファイバのうちの1つにおいて、前記変調されたシードビームのうちの1つを受信およびフィルタリングする、複数の帯域通過フィルタと
を備える、波長分割多重化(WDM)シードビーム源であって、
前記WDMシードビーム源は、スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システムの一部である、
波長分割多重化(WDM)シードビーム源。
【請求項11】
前記スペクトルマルチプレクサおよび前記スペクトルデマルチプレクサは、一連のアドドロップフィルタ、アレイ導波路格子(AWG)、または、多重の切り替え可能な出力ファイバを伴うプログラマブルスペクトルフィルタである、請求項10に記載のシードビーム源。
【請求項12】
前記複数の主発振器は、単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器である、請求項10に記載のシードビーム源。
【請求項13】
前記シードビーム源は、前記スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システムにおいてのシードビーム源である、請求項10に記載のシードビーム源。
【請求項14】
前記ファイバレーザ増幅器システムは、各々の出力ファイバ上の前記シードビームを増幅する別々のファイバ増幅器と、前記増幅されたビームを、発散する結合されないビームとして自由空間内へ向ける、前記増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、前記発散する結合されないビームを、コリメートされた結合されないビームとして集束させる、前記発散する結合されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、前記異なる波長においての前記増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、前記コリメートされた結合されないビームを空間的に結合する、前記コリメートされた結合されないビームに応答的なSBC格子とを含む、請求項13に記載のシードビーム源。
【請求項15】
前記複数の主発振器、前記スペクトルマルチプレクサ、前記EOM、および前記スペクトルデマルチプレクサは、前記ファイバレーザ増幅器システムにおいての第1のシードビーム源モジュールとして構成され、前記ファイバレーザ増幅器システムは、複数の主発振器と、スペクトルマルチプレクサと、EOMと、スペクトルデマルチプレクサとを各々が有する複数のシードビームモジュールを含み、前記シードビーム源モジュールのすべてにおいての、前記主発振器のすべては、異なる波長において動作する、請求項14に記載のシードビーム源。
【請求項16】
スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システムであって、
別々の入力ファイバ上で異なる波長においてシードビームを各々が生成する複数の主発振器と、前記別々のファイバ上の前記シードビームのすべてを受信し、前記シードビームを共通ファイバ上へとスペクトル的に結合するスペクトルマルチプレクサと、前記共通ファイバ上の前記結合されたシードビームに応答的な電気光学位相変調器(EOM)であって、前記結合されたシードビームの位相を、RFドライバからの付与される電圧に比例するように変化させることにより、前記結合されたシードビームを変調する、EOMと、前記共通ファイバ上の前記変調および結合されたシードビームに応答的な、ならびに、前記シードビームを別々の出力ファイバ上へとスペクトル的に分ける、スペクトルデマルチプレクサとを含む、波長分割多重化(WDM)シードビーム源と、
前記出力ファイバのうちの1つにおいての前記変調されたシードビームを各々が増幅する複数のファイバ増幅器と、
前記増幅されたビームを、発散する結合されないビームとして自由空間内へ向ける、前記増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、
前記発散する結合されないビームを、コリメートされた結合されないビームとして集束させる、前記発散する結合されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、
前記異なる波長においての前記増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、前記コリメートされた結合されないビームを空間的に結合する、前記コリメートされた結合されないビームに応答的なSBC格子と
を備える、スペクトルビーム結合(SBC)ファイバレーザ増幅器システム。
【請求項17】
前記WDMシードビーム源は、複数の主発振器と、スペクトルマルチプレクサと、EOMと、スペクトルデマルチプレクサとを各々が有する複数のモジュール化されたWDMシードビーム源のうちの1つであり、前記複数のモジュール化されたWDMシードビーム源のすべてにおいての、前記主発振器のすべては、異なる波長において動作する、請求項16に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【請求項18】
前記WDMシードビーム源は、複数の帯域通過フィルタをさらに含み、前記帯域通過フィルタのうちの別々の1つは、前記出力ファイバのうちの1つにおいて、前記変調されたシードビームのうちの1つを受信およびフィルタリングする、請求項16に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【請求項19】
前記WDMシードビーム源は、前記EOMから前記共通ファイバ上で前記変調および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームを増幅する前置増幅器をさらに含む、請求項16に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【請求項20】
前記WDMシードビーム源は、前記EOMから前記共通ファイバ上で前記変調および結合されたシードビームを受信し、前記結合されたシードビームの偏光制御を提供する偏光子をさらに含む、請求項16に記載のSBCファイバレーザ増幅器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、一般的には、スペクトルビーム結合(SBC:spectral beam combining)により結合される異なる波長においての増幅されたビームを生成する複数のビームチャネルを用いるファイバレーザ増幅器システムに対する波長分割多重化(WDM)シードビーム源に関し、より詳しくは、SBCにより結合される異なる波長においての増幅されたビームを生成する複数のビームチャネルを用いるファイバレーザ増幅器システムに対するWDMシードビーム源であって、シードビームのすべてを単一ファイバ上へと多重化するためのマルチプレクサと、ファイバ上の結合されたシードビームを変調する電気光学変調器(EOM)と、変調されたシードビームのすべてを別々のファイバ上へと分けることを、シードビームが増幅されスペクトル的に結合される前に行うためのデマルチプレクサとを含む、シードビーム源に関する。
【背景技術】
【0002】
論考
[0002]高パワーレーザ増幅器は、工業、商業、軍事、その他を含む、多くの用途を有する。高パワーレーザに対する1つの具体的な例は、レーザ兵器システムである。レーザ増幅器の設計者は、これらおよび他の用途に対するレーザ増幅器のパワーを増大するための手立てを継続的に研究している。1つの知られているタイプのレーザ増幅器は、シードビームと、シードビームを増幅し、レーザ出力ビームを生成するためのポンプビームとを受信する、添加ファイバを用いるファイバレーザ増幅器であり、ファイバは、典型的には、約10~20μmの有効芯直径を有する。
【0003】
[0003]ファイバレーザ増幅器設計においての改善が、ファイバ増幅器の出力パワーを、そのファイバ増幅器の現実的なパワーおよびビーム品質限界に近付くように増大した。出力パワーをさらに増大するために、一部のファイバレーザシステムは、増幅されたビームを何らかの方式で結合して、より高いパワーを生成する、多重ファイバレーザ増幅器を用いる。このタイプのファイバレーザ増幅器システムに対する設計難題は、複数のファイバ増幅器からのビームを結合することを、それらのビームが、ビーム直径にわたって一様な位相を有する単一ビーム出力を提供し、そのことによって、ビームが、小さい焦点スポットに集束させられ得るような様式で行うことである。結合されたビームを、長い距離(遠方界)において小さいスポットに集束させることが、ビームの品質を明確にする。
【0004】
[0004]スペクトルビーム結合(SBC)として知られている1つの多重ファイバレーザ増幅器設計において、複数の主発振器(MO)が、異なる波長において複数のファイバシードビームを生成し、各々のファイバシードビームは増幅される。増幅されたファイバシードビームは、次いで、異なる波長ファイバビームを単一出力ビームへと結合する、回折格子、または他の波長選択素子に向けられる。回折格子は、素子内へと形成される周期的構造を有し、そのことによって、わずかに異なる波長および角度方向を各々が有する個々のファイバビームが、周期的構造により方向を変えられるとき、ビームのすべてが、同じ方向において回折格子から回折する。しかしながら、スペクトル輝度に関する制限が、波長合成され得るシードビームの数を制限し、かくして、レーザの出力パワーを制限する。
【0005】
[0005]SBCは、レーザ源を、例えば100kWレベルより大である兵器クラス輝度にスケーリングするための1つの方法である。述べられたように、SBCレーザ兵器システムは、典型的には、Yb添加ファイバ増幅器(YDFA)などの、多重高パワーレーザチャネルからのビームを結合する、回折格子などの分散光学素子を用いるが、任意のレーザ素子が使用され得る。レージング利得媒体の制限される利得帯域幅(例えば、YDFAに対する約40nmアクセス可能利得帯域幅)のため、レーザビーム源チャネルは、良好な結合されたビーム品質を維持しながら、SBCシステムを高パワーにスケーリングするために、高スペクトル輝度(kW/nm)を提供するように構成されなければならず、その結合されたビーム品質は、格子からの角度分散に起因して、チャネル線幅が相対的に狭くないならば悪化させられることになる。
【0006】
[0006]YDFAからの高スペクトル輝度を達成するために、低パワー、狭線幅光によって増幅器をシードすることが必要である。しかしながら、YDFAにおいての2つの非線形劣化が、シードビーム特性を制約する。第1に、誘導ブリルアン散乱(SBS)は、シードビーム線幅が、そのシードビームのコヒーレンス長さを減少し、かくして、SBSパワーしきい値を増大するように拡幅されるということを要する。第2に、カー非線形性は、シードビームが、YDFAにおいての自己位相変調(SPM)または相互位相変調(XPM)による、望まれない非線形スペクトル拡幅を防止するように、低い相対強度雑音(RIN)を呈するという要件を課す。
【0007】
[0007]これらの2つの非線形劣化は、典型的には、複数のチャネルを有するSBCシステムアーキテクチャを要し、各々のレーザチャネルは、低パワー主発振器フロントエンドアセンブリ(MOFEA:master oscillator front end assembly)と、高パワーYDFA(または、YDFAのチェーン)とを含み、そのYDFAの出力ビームが、ビーム結合光学素子を使用して、単一ビームへと結合される。各々のMOFEAは、電気光学変調器(EOM)により後に続かれる、典型的には単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器である主発振器(MO)を含む。EOMは、付与される電圧に比例して、シードビームの位相を変化させる。高パワーを伴う無線周波数(RF)源をEOMに付与することにより、出力ビームは、入力シードビームと比較して相当に拡幅された、その出力ビームの線幅を有することになる。SBS劣化を伴わずにkWクラスYDFAをシードするのに適した線幅拡幅に対する典型的な値は、約10GHz/kWの程度である。線幅を拡幅されたシードビームは、その位相のみが変調され、その振幅は変調されないので、理想的にはゼロRINを呈することになる。このことは、YDFAにおいてのSPMまたはXPMを回避することにより、スペクトル拡幅を、および、結合されたSBCビームのビーム品質の、結果としての損失を防止する。
【0008】
[0008]特に空中および陸上プラットフォームに対して、ファイバレーザシステムのサイズ、重量、およびパワー(SWaP:size, weight and power)は、配備および使用を制限する主要な要因である。特に、MOFEAは、高部品総数、および、結果としての高コストという難点がある。構成要素の、よりコンパクトなパッケージングおよび経路設定に対する機会が確かに存するが、多重チャネルに対する並列高パワーRF源およびEOMに対する要件が、SWaP、および、MOFEAのコストの両方に対する重大な一因である。SWaP、および、SBCレーザビーム源に対して使用されるMOFEAのコストの低減を可能にすることになる、アーキテクチャ的および構成要素改善に対する必要性が存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本開示は、異なる波長においてシードビームを生成するいくつかの主発振器と、シードビームのすべてを単一ファイバ上へと多重化するスペクトルマルチプレクサとを含む、ファイバレーザ増幅器システムに対するWDMシードビーム源を論考および説明する。単一電気光学変調器(EOM)が、単一ファイバ上の結合されたシードビームを変調し、スペクトルデマルチプレクサが、次いで、変調されたシードビームを、別々のファイバ上のそれらのシードビームの成分たる波長へと分けることを、シードビームが増幅されスペクトル的に結合される前に行う。ファイバレーザ増幅器システムは、分けられたシードビームを増幅する別々のファイバ増幅器と、増幅されたビームを、発散する結合されないビームとして自由空間内へ向ける、別々の増幅されたビームのすべてに応答的なエミッタアレイと、発散する結合されないビームを、コリメートされた結合されないビームとして集束させる、発散する結合されないビームに応答的なビームコリメーティング光学素子と、異なる波長においての増幅されたビームのすべてが、出力ビームとして同じ方向に向けられるように、コリメートされた結合されないビームを空間的に結合する、コリメートされた結合されないビームに応答的なSBC格子とを含む。
【0010】
[0010]本開示の追加的な特徴は、添付図面と連関して取り上げられて、後に続く説明、および、添付される特許請求の範囲から明らかになることになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】多重波長チャネルを含む知られているSBCファイバレーザ増幅器システムの概略線図である。
図2図1において示されるSBCファイバレーザ増幅器システムにおいてのチャネルのうちの1つにおいてのシードビーム源の概略ブロック線図である。
図3図1において示されるタイプのSBCファイバレーザ増幅器システムに対して要される、図2において示されるタイプのシードビーム源のすべてを置き換えることができるWDMシードビーム源の概略ブロック線図である。
図4図3において示されるタイプの多重のモジュール化されたWDMシードビーム源を含むSBCファイバレーザ増幅器システムの概略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0015]スペクトルビーム結合(SBC)を用いるファイバレーザ増幅器システムに対する波長分割多重化(WDM)シードビーム源に向けられた、本開示の実施形態の、後に続く論考は、本来はただ単に例示的なものであり、本開示、または、本開示の用途もしくは使用を限定することを決して意図されない。
【0013】
[0016]図1は、個別の波長λにおいてファイバ16上で提供されるシードビームを生成するシードビーム源14を各々が有する、N個の数の波長チャネル12を含む、知られているSBCファイバレーザ増幅器システム10の概略ブロック線図であり、各々のシードビーム源14は、異なるビーム波長λ~λを生成する。ファイバ16上のシードビームの各々は、Yb添加ファイバ増幅器などのファイバ増幅器20に送出され、増幅器20は、典型的には、光学ポンプビーム(図示せず)を受信する、ファイバ16の添加増幅部分であることになる。増幅されたビームのすべては、発散する増幅されたビームのセットを自由空間内へと出力する光学エミッタアレイ22に向けられ、個々のビーム波長λ~λは、わずかに異なるエミッタ位置から伝搬している。発散するビームは、発散するビームをコリメートし、それらの発散するビームをスペクトルビーム結合(SBC)格子26上へ向ける、コリメーティング光学素子24に関して去るように反射させられ、そのことによって、個々のビームのすべてが、格子26に衝突し、同じフットプリント上に重なる。格子26は、個々のビーム波長λを空間的に回折させ、個々の増幅されたビームを、結合された出力ビーム28として同じ方向に向ける。
【0014】
[0017]図2は、チャネル12のうちの1つに対するシードビーム源14のうちの1つの概略ブロック線図であり、構成要素の他の変形形態を有する他のシードビーム源が、さらには使用され得る。各々のシードビーム源14は、個別のチャネル12の波長λを有する連続波単一周波数ビームを生成する主発振器(MO)30を含む。1つの実施形態において、MO30は、単一縦モード分布帰還(DFB)ダイオードレーザ発振器であり得る。MO30により生成されるシードビームは、シードビームの位相を、高パワーを伴う増幅された無線周波数(RF)電気ドライバ34により提供される、付与される電圧に比例するように変化させる、電気光学変調器(EOM)32に送出され、そのことによって、出力シードビームは、入力シードビームと比較して相当に拡幅される線幅を有し、そのことは、下流の高パワーファイバ増幅器20においての誘導ブリルアン散乱を抑制する。増幅器ドライバ38により駆動される、1つまたは複数の低パワー(典型的には、約10~100mW)前置増幅器36が、拡幅されたシードビームを受信し、前置増幅器36は、高パワーファイバ増幅器20をシードするのに適したレベルにビームパワーを高めるように、半導体光学増幅器(SOA)またはファイバ増幅器のいずれかであり得る。1つまたは複数のクリーンアップ偏光子40が、高偏光消光比(PER)を確実にするために、上流の構成要素においての不完全性によりもたらされる偏光解消されたパワーをフィルタリング除去する。光学帯域通過ファルタ42は、MO30からの、および/または、前置増幅器36からの拡幅された誘導放出を低減する。
【0015】
[0018]上記で論考されたように、とりわけ空中および陸上レーザシステムプラットフォームに対して、レーザシステムのサイズ、重量、およびパワー(SWaP)は、配備および使用を制限する主要な要因である。並列シードビーム源14のすべては、図2において示される構成要素のすべてを含むので、システムは、高部品総数、および、結果としての高コストという難点がある。並列高パワーRF源およびEOMに対する要件が、SWaP、および、シード源のコストの両方に対する重大な一因である。
【0016】
[0019]図3は、図1において示されるタイプのSBCファイバレーザ増幅器システムに対する、図2において示されるタイプのシードビーム源14のすべてを置き換えることができる、異なる波長λ~λにおいての多重シードビームを提供する波長分割多重化(WDM)シードビーム源50の概略ブロック線図であり、シードビーム源14に対する同類の要素は、同じ参照番号により識別される。シードビーム源50において、MO30のすべてからのN個のビームチャネル波長λ~λが、1つのEOM32と、1つのRFドライバ34と、1つの前置増幅器36と、1つの増幅器ドライバ38と、1つの偏光子40とを有する単一変調チャネル52内で結合される。このことを成し遂げるために、MO30のすべてからのシードビームは、シードビームの波長λ~λのすべてを単一ファイバ56上へと多重化するスペクトルマルチプレクサ54に送出され、結合されたシードビームは、次いで、上記で論考された様式で変調されるようにEOM32に送出され、次いで、前置増幅器36により増幅され、次いで、偏光子40により偏光フィルタリングされる。偏光子40からの結合されたシードビームは、異なる波長λ~λシードビームを別々のファイバ60内へと分けることを、帯域通過フィルタ42に、および次いで、ファイバ増幅器20に送出される前に行うスペクトルデマルチプレクサ58に送出される。かくして、N-1個のEOM、雑音ドライバ、前置増幅器、増幅器ドライバ、および偏光子が、知られている設計から除かれ得る。
【0017】
[0020]スペクトルマルチプレクサ54およびスペクトルデマルチプレクサ58は、本明細書において論考される目的のための任意の適した波長分割デバイスであり得る。1つの技法は、安価であり、市販で入手可能であるファイバスプリッタを単純に使用することである。しかしながら、ファイバスプリッタは、入力パワーの1/Nのみが出力チャネル内へと成功裏に伝送されることになるので、非常に有損失である。その上、シードビーム源のデマルチプレクサ端部において、スプリッタの使用は、高パワー増幅器20により課されるクロストーク要件を満たすために、近接する波長の約-50dB遮断の、帯域通過フィルタ42への厳しい要件を課す。高損失に起因して、より高いパワー増幅器が、単一前置増幅器36に代わって使用されることを必要とし得る。より低い損失を伴う代替の手法は、波長依存素子を使用することであり得る。例えば、この素子は、ファイバブラッグ格子に基づく一連のアドドロップフィルタ、または、アレイ導波路格子(AWG)、または、多重の切り替え可能な出力ファイバを伴うプログラマブルスペクトルフィルタを備え得る。これらは、テレコム波長帯域(約1550nm)においての一般によくある解決策である。スペクトルフィルタはプログラマブルであるので、そのフィルタは、チャネルチューニングおよび構成において、大である柔軟性を提供する。そのフィルタは、各々の信号通過帯域の近くで随意に、増幅された誘導放出を排除するように構成され得る。そのフィルタは、さらには、単一構成要素を使用してすべてのチャネルをスペクトル的に形状設定する能力を提供し、そのことは、FM-AM変換の前置補償に対する有用性を加え得る。
【0018】
[0021]WDMシードビーム源を、各々M個のチャネルのN/M個の群へとモジュール化して、N個の高パワーチャネルのセットをシードすることが有益であり得る。WDMシードビーム源をモジュール化することは、Nチャネルシステムに対する根本のチャネル総数からシード源構成要素パワーを切り離す。モジュールサイズMは、システムチャネル総数Nから独立して選択され得る。この柔軟性は、WDMシードビーム源においてのより低いパワー構成要素の使用を可能にする。
【0019】
[0022]モジュール化されたシードビーム源手法が有益であり得る別の理由は、その手法が、さらには、総体的なレーザシステムに対する波長選択方案においての柔軟性を提供するということである。このことは重要であり得るものであり、なぜならば、N個のチャネルの数が、より高いSBCシステムパワーを可能にするために増大する際、ビームの波長は、増幅器利得帯域幅の範囲内で適合するように、一緒に、より近くで間隔を空けられなければならないからである。しかしながら、波長チャネル間隔が近いほど、低いクロストークを伴いながらシードビームを分けることは困難である。0.25nm(66GHz)のチャネルの間の波長λ間隔に対して、それを超えると各々のチャネルが有意なスペクトルコンテンツを有する、約40~50GHzに対する平坦な通過帯域を維持しながら、近隣波長に対する-50dBクロストークを伴う、帯域通過フィルタを構築することは困難である。WDMシードビーム源をモジュール化することにより、波長は、SBC出力ビーム内では同じ狭いチャネル間隔を保ちながら、同じモジュール内へと、広いチャネル間隔を伴って一緒に群にされ得る。この構成において、チャネル間隔は、N/M倍に、すなわち、離散的なWDMシード源モジュールの数だけ増大され得る。このことは、分離およびクロストーク要件を緩和し、普通の場合に実用可能であることになるより高いチャネル総数へのスケーリングを可能にする。
【0020】
[0023]上記で論考されたモジュール化されたシードビーム源の具体的な例として、1040~1080nmの波長全範囲を伴い、総波長全範囲Dlが40nmである、典型的なSBCレーザシステムを考える。源がN=160個の波長チャネルを含むならば、波長間隔dlは、Dl/N=0.25nmであることになる。モジュールサイズMが8つのチャネルであるならば、システムは、N/M(160/8)すなわち20個のモジュールを有することになる。モジュール出力をスペクトル的にインターリーブすることにより、波長間隔は、各々のモジュールの内部で、N/M*dl=5nmに増大され得る。例えば、第1のモジュールにおいて、波長方案は、{1040、1045、1050、1055、1060、1065、1070、1075}nmであることになる。第2のモジュールにおいて、波長方案は、同じであるが、dlだけ上方に移され、すなわち、{1040.25、1045.25、1050.25、1055.25、1060.25、1065.25、1070.25、1075.25}nmであることになる。この様式で、帯域通過フィルタ42は、0.25nm波長間隔の代わりに5nm波長間隔に対して単に設計されることを必要とする。
【0021】
[0024]図4は、上記で論考されたモジュール式WDMシードビーム源手法を例解するSBCファイバレーザ増幅器システム70の概略線図であり、シードビーム源50およびファイバレーザ増幅器システム10に対する同類の要素は、同じ参照番号により識別される。システム70は、上記で論考されたように、異なる波長において動作するN/M個の数のMO30を各々が含む、M個の数の波長群モジュール72を含む。各々のモジュール72内のシードビームの近接する波長λの間の間隔は、チャネルの間のクロストークが問題点にならないほど十分に隔たって遠い。上記で与えられた例において、その波長λ間隔は、5nmである。しかしながら、異なるモジュール72内のシードビームの波長の間の間隔は、非常に近くあり得るものであり、なぜならば、フィルタ42が、異なるモジュール72内にあり、そのことが、クロストークを防止するからである。上記で与えられた例において、その波長λ間隔は、0.25nmである。かくして、モジュール化されたシステム70を使用することにより、構成要素のN(M-1)/M個の重複セットが、結果としてのSWaPおよびコスト節約を伴って、知られている設計から除かれ得る。
【0022】
[0025]上述の論考は、本開示のただ単に例示的な実施形態を開示および説明するものである。当業者は、様々な変更、修正、および変形が、後に続く特許請求の範囲において定義されるような本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、それらの実施形態においてなされ得るということを、そのような論考から、ならびに、添付図面および特許請求の範囲から、たやすく認識することになる。
図1
図2
図3
図4