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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】生体電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/291 20210101AFI20231204BHJP
   A61B 5/268 20210101ALI20231204BHJP
   A61B 5/265 20210101ALI20231204BHJP
【FI】
A61B5/291
A61B5/268
A61B5/265
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021575675
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(86)【国際出願番号】 JP2021000648
(87)【国際公開番号】W WO2021157287
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2020019690
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】久保 真之
(72)【発明者】
【氏名】二嶋 諒
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230445(WO,A1)
【文献】特開2017-074370(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0135596(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体に接触させる複数の電極部を有する導電性ゴム製の電極部材を含み、
前記複数の電極部は、前記電極部材の電極部形成面に突出形成されているとともに前記電極部形成面上に円状又は同心円状に配置され、
前記複数の電極部のそれぞれは、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなり且つ前記複数の電極部の配置中心から見て前記先端部の横断面の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されており、
前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記基端部の横断面の中心と前記先端部の横断面の中心とを結ぶ仮想直線は、前記基端部から前記先端部に向かうほど前記配置中心を通る前記電極部形成面の垂線から離れるように傾斜しており、
前記複数の電極部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有し、
前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記配置中心から最も離れた位置にある母線は前記電極部形成面に垂直である、
生体電極。
【請求項2】
前記複数の電極部のそれぞれは、前記電極部形成面上の一つの仮想円又は複数の仮想同心円の円周上に位置するように配置されている、請求項1に記載の生体電極。
【請求項3】
支持部材と、
前記支持部材に支持される被支持部と、前記被支持部から前記支持部材とは反対側に突出して設けられて被験者の身体に接触させる複数の電極部と、を有する導電性ゴム製の電極部材と、
前記電極部材を外部と電気的に接続するためのコネクタであって、一部が前記電極部材の前記被支持部に埋設されるとともに前記支持部材を貫通して延びて前記支持部材の前記電極部材とは反対側の面上に外部との接続部が位置するように構成されている前記コネクタと、
を含み、
前記複数の電極部は、前記被支持部の電極部形成面上に円状又は同心円状に配置され、
前記複数の電極部のそれぞれは、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなり且つ前記複数の電極部の配置中心から見て前記先端部の横断面の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されており、
前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記基端部の横断面の中心と前記先端部の横断面の中心とを結ぶ仮想直線は、前記基端部から前記先端部に向かうほど前記配置中心を通る前記電極部形成面の垂線から離れるように傾斜しており、
前記複数の電極部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有し、
前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記配置中心から最も離れた位置にある母線は前記電極部形成面に垂直である、
生体電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電極に関し、特に脳波の検出に好適に用いられ得る生体電極に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の生体電極の一例として特許文献1に記載された生体電極が知られている。特許文献1に記載された生体電極は、被験者の身体に接触する電極部材と、前記電極部材を支持する導電性の支持部材と、を有し、少なくとも電極部材がシリコーンゴムと銀粉とを含む導電性ゴムからなる。特許文献1に記載された生体電極においては、複数の電極部材が支持部材からブラシ状に突出するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/230445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の脳波検出用の生体電極の多くは、複数の電極部(特許文献1における電極部材に相当する)を有し、各電極部の先端側部分が被験者の毛髪を掻き分けて被験者の頭皮に接触することによって脳波の検出を可能とする。
【0005】
ここで、例えば毛髪の多い被験者の脳波を検出する場合、毛髪による生体電極の浮き上がりを防止して各電極部の先端側部分と被験者の頭皮とを接触させるため、生体電極に強い押し付け力を加える必要が生じる。このような強い押し付け力が生体電極に繰り返し加えられると、各電極部の先端側部分が変形するおそれがある。特に電極部の先端側部分が広がる方向とは逆方向(内側)に曲がってしまうと、電極部の先端側部分を被験者の頭皮に安定して接触させることが困難となり、脳波の検出に支障をきたすおそれがある。
【0006】
なお、このようなおそれは、脳波を検出する場合に限られるものではなく、電極部の先端側部分を被験者の身体(皮膚)に接触させて生体信号を検出する場合に広く共通するものである。
【0007】
そこで、本発明は、被験者の身体に接触させる電極部の先端側部分が広がる方向とは逆方向(内側)に曲がってしまうことを抑制できる生体電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、生体電極は、被験者の身体に接触させる複数の電極部を有する導電性ゴム製の電極部材を含む。前記複数の電極部は、前記電極部材の電極部形成面に突出形成されているとともに前記電極部形成面上に円状又は同心円状に配置されている。また、前記複数の電極部のそれぞれは、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなり且つ前記複数の電極部の配置中心から見て前記先端部の横断面の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されており、前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記基端部の横断面の中心と前記先端部の横断面の中心とを結ぶ仮想直線は、前記基端部から前記先端部に向かうほど前記配置中心を通る前記電極部形成面の垂線から離れるように傾斜しており、前記複数の電極部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有し、前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記配置中心から最も離れた位置にある母線は前記電極部形成面に垂直である
【0009】
本発明の他の側面によると、生体電極は、支持部材と、導電性ゴム製の電極部材と、前記電極部材を外部と電気的に接続するためのコネクタと、を含む。前記電極部材は、前記支持部材に支持される被支持部と、前記被支持部から前記支持部材とは反対側に突出して設けられて被験者の身体に接触させる複数の電極部と、を有する。前記コネクタは、一部が前記電極部材の前記被支持部に埋設されているとともに前記支持部材を貫通して延びて前記支持部材の前記電極部材とは反対側の面上に外部との接続部が位置するように構成されている。前記複数の電極部は、前記被支持部の電極部形成面上に円状又は同心円状に配置されている。また、前記複数の電極部のそれぞれは、基端部から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなり且つ前記複数の電極部の配置中心から見て前記先端部の横断面の中心が前記基端部の横断面の中心よりも径方向外側に位置するように形成されており、前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記基端部の横断面の中心と前記先端部の横断面の中心とを結ぶ仮想直線は、前記基端部から前記先端部に向かうほど前記配置中心を通る前記電極部形成面の垂線から離れるように傾斜しており、前記複数の電極部のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有し、前記複数の電極部のそれぞれにおいて、前記配置中心から最も離れた位置にある母線は前記電極部形成面に垂直である
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被験者の身体に接触させる電極部の先端側部分が広がる方向とは逆方向(内側)に曲がってしまうことを抑制できる生体電極を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る生体電極の正面図である。
図2】生体電極の底面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4】生体電極の電極部の縦断面図(拡大図)である。
図5】本発明の他の実施形態に係る生体電極を示す図であり、(a)は、正面図であり、(b)は、底面図である。
図6】生体電極の電極部の他の形状を示す図(図4に相当する図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る生体電極1の正面図であり、図2は、生体電極1の底面図であり、図3は、図1のA-A断面図である。図1図3に示されるように、実施形態に係る生体電極1は、支持部材10と、支持部材10に支持される導電性ゴム製の電極部材20と、電極部材20を外部と電気的に接続するためのコネクタ30と、を含む。電極部材20は、支持部材10に支持される被支持部21と、被支持部21から支持部材10とは反対側に突出する複数の電極部22と、を有している。
【0014】
生体電極1は、電極部材20の複数の電極部22の先端側部分を被験者の身体(皮膚)に接触させることによってコネクタ30を介して当該被験者の生体信号を検出する(取り出す)ことを可能にする。生体電極1は、例えば、脳波測定用の生体電極として用いられる。この場合、生体電極1は、複数の電極部22の先端側部分が被験者の頭皮に接触するように被験者の頭部に取り付けられる。但し、これに限られるものではない。生体電極1は、脳波以外の生体信号を検出するためにも用いられ得る。
【0015】
生体電極1において、支持部材10は、電気絶縁性の材料(例えば、シリコーンゴム)で形成されている。本実施形態において、支持部材10は、円板状に形成されている。支持部材10は、電極部材20を支持する支持面10aと、支持面10aとは反対側の背面10bと、を有する。また、支持部材10の中心部には、支持部材10を厚さ方向に貫通する(すなわち、支持面10aから背面10bまでを貫通する)貫通孔10cが形成されている(図3参照)。
【0016】
なお、支持部材10は、支持面10a、背面10b及び貫通孔10cに相当する構成を有していればよく、必ずしも円板状に形成される必要はない。
【0017】
生体電極1において、電極部材20は、導電性ゴムで形成されており、上述のように、支持部材10に支持される被支持部21と、被支持部21から支持部材10とは反対側に突出する複数の電極部22と、を有する。本実施形態において、導電性ゴムは、シリコーンゴムと金属粒子とを含むいわゆる導電性シリコーンゴムである。シリコーンゴムは、例えば、室温硬化型の液状シリコーンゴムであり、金属粒子は、例えば、銀粒子である。室温硬化型の液状シリコーンゴムとは、硬化前には液状又はペースト状であり、20℃~100℃で硬化反応が進行してゴム弾性体となるシリコーンゴムのことである。銀粒子は、複数の銀粒子(一次粒子)がくっついた状態の凝集粒子(凝集体)やフレーク状の銀粒子を含み得る。
【0018】
なお、電極部材20を形成する導電性ゴムは、銀粒子に代えて、導電性を有する他の金属粒子や炭素系材料粒子(カーボンブラックやカーボンナノチューブ等)などを含むことができ、また、補強材、充填剤及び種々の添加剤などを適宜含むことができる。
【0019】
電極部材20の被支持部21は、支持部材10と同様の形状を有している。すなわち、本実施形態において、被支持部21は、円板状に形成されている。被支持部21は、支持部材10の支持面10aに支持される被支持面21aと、被支持面21aとは反対側の電極部形成面21bと、を有する。
【0020】
複数の電極部22は、被支持部21の電極部形成面21bに突出形成されている。複数の電極部22は、電極部形成面21bに同心円状に配置されている。具体的には、複数の電極部22のそれぞれは、電極部形成面21b上における二つの仮想同心円(以下単に「同心円」という)23,24の円周上に位置するように配置されている。また、複数の電極部22のそれぞれは、基端部(根元部)から先端部に向かって、換言すれば、電極部形成面21bから離れるにしたがって横断面積が徐々に小さくなるように形成されている。
【0021】
具体的には、本実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、円形の横断面を有しており、基端部から先端部に向かって徐々に縮径している。そして、複数の電極部22のそれぞれの基端部の横断面の中心C1が同心円23,24のいずれかの円周上に位置する(厳密に円周上に位置する必要はなく、概ね円周上に位置していればよい)ように配置されている。
【0022】
複数の電極部22のそれぞれの先端部は、半球状に形成されている。また、複数の電極部22のそれぞれは、複数の電極部22の配置中心(すなわち、同心円23,24の中心)Oから見て、先端部の中心(先端部の横断面の中心ともいう)C2が基端部の横断面の中心C1よりも径方向外側に位置するように形成されている。つまり、本実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有している。なお、図3中の符号OLは、同心円23,24の中心線であり、配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線を示している。
【0023】
さらに、本実施形態において、複数の電極部22は、周方向に等間隔(厳密に等間隔である必要はなく、概ね等間隔であればよい)で配置されている。具体的には、複数の電極部22のそれぞれは、同心円23,24のいずれかの円周上において等間隔で配置されている。
【0024】
図4は、配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線(すなわち、同心円23,24の中心線)OLを含む平面で切断した電極部22の縦断面図(拡大図)である。図4に示されるように、複数の電極部22のそれぞれにおいて、基端部の横断面の中心C1と先端部の横断面の中心C2とを結ぶ仮想直線Xは、基端部から先端部に向かうほど、配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線(同心円23,24の中心線)OLから離れるように傾斜している。
【0025】
また、本実施形態では、複数の電極部22のそれぞれにおいて、配置中心Oから最も離れた位置にある母線B1は、電極部形成面21bに垂直である。一方、複数の電極部22の配置中心Oに最も近い位置にある母線B2は、基端部から先端部に向かうほど、配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線OLから離れるように傾斜している。ここで、本明細書における「垂直」とは、厳密な意味での垂直ではなく、±3°程度の傾斜が許容され得る。
【0026】
生体電極1において、コネクタ30は、スナップボタン型コネクタとして形成されている。より具体的には、コネクタ30は、スナップボタン型コネクタにおけるオス側コネクタとして形成されている。本実施形態において、コネクタ30は、互いに嵌合された第1導電部材40と第2導電部材50とを含む(図3参照)。
【0027】
第1導電部材40及び第2導電部材50は、例えば、ステンレス鋼で形成されている。第1導電部材40は、一端側が電極部材20の被支持部21に埋設されるとともに支持部材10を貫通して延びて他端側が支持部材10の背面10bから突出している。第2導電部材50は、第1導電部材40の前記他端側に嵌合された状態で、支持部材10の背面10b上に配置されている。そして、スナップボタン型コネクタにおける図示省略のメス側コネクタが第2導電部材50に装着(嵌合)されることにより、生体電極1の電極部材20が外部と電気的に接続されるようになっている。すなわち、コネクタ30は、一部が電極部材20の被支持部21に埋設されているととともに支持部材10を貫通して延びて支持部材10の背面10b上に外部との接続部が位置するように構成されている。
【0028】
例えば、測定装置のリード線の先端に取り付けられているメス側コネクタが第2導電部材50に装着(嵌合)されることにより、生体電極1の電極部材20が測定装置に電気的に接続される。測定装置は、生体電極1の電極部材20の複数の電極部22によって検出される生体
信号を入力し、入力された生体信号の加工、表示及び/又は解析などを行うための装置であり、特に制限されないが、例えば、脳波測定装置、ウエアラブル情報機器及び健康モニタリング機器が該当する。
【0029】
図3を参照して第1導電部材40及び第2導電部材50について具体的に説明する。本実施形態において、第1導電部材40及び第2導電部材50は、フランジ付き有底円筒状に形成されている。
【0030】
第1導電部材40は、一端に開口端41aを有するとともに他端に閉塞端(底部)41bを有する第1有底円筒部41と、第1有底円筒部41の開口端41aから径方向外側に延在する第1フランジ部42と、を有する。第1有底円筒部41の外径は、支持部材10の貫通孔10cの径とほぼ同じ設定されている。第1有底円筒部41の外周面における閉塞端41bの近傍の部位には、径方向に凹んだ嵌合部43が形成されている。第1フランジ部42は、径方向の内側よりも外側の方が第1有底円筒部41の閉塞端41b側に位置するように僅かに傾斜している。
【0031】
第1導電部材40は、主に第1フランジ部42の第1有底円筒部41側とは反対側の面42aが電極部材20の被支持部21に埋設され、第1有底円筒部41が支持部材10の貫通孔10cに挿通されており(すなわち、支持部材10を貫通して延びており)、第1有底円筒部41の閉塞端41b側の部位(嵌合部43を含む)が支持部材10の背面10bから突出している。なお、以下では、第1フランジ部42の第1有底円筒部41側とは反対側の面42aを「埋設面」という。
【0032】
第2導電部材50は、一端に開口端51aを有するとともに他端に閉塞端(底部)51bを有する第2有底円筒部51と、第2有底円筒部51の開口端51aから径方向外側に延在する第2フランジ部52と、を有する。第2有底円筒部51は、開口端51aから閉塞端51bに向かうほど内径が大きくなるように形成されている。第2有底円筒部51の開口端51aの内径は、第1導電部材40の第1有底円筒部41の外周面に形成された嵌合部43の外径とほぼ同じに設定されている。なお、第2有底円筒部51の側面と底面とは滑らかな曲面で接続されている。第2フランジ部52は、径方向の内側よりも外側の方が第2有底円筒部51の閉塞端51bから離れるように傾斜した傾斜部を有している。
【0033】
第2導電部材50は、カシメなどにより、第2有底円筒部51の開口端51aが第1導電部材40の第1有底円筒部41の嵌合部43に嵌合固定されており、これにより、生体電極1のコネクタ30が形成されている。
【0034】
ここで、生体電極1の製造方法の一例を簡単に説明する。なお、以下の説明において、コネクタ30はあらかじめ支持部材10に取り付けられているものとする。具体的には、第1導電部材40の第1有底円筒部41が閉塞端41b側から支持部材10の貫通孔10cに挿通され、支持部材10の背面10bから突出する第1導電部材40の第1有底円筒部41の嵌合部43に第2導電部材50の第2有底円筒部51の開口端51aが嵌合されており、これによって、支持部材10とコネクタ30との組立体が事前に形成されているものとする。つまり、本実施形態において、コネクタ30は、支持部材10側に設けられる部材である。
【0035】
生体電極1の製造においては、まず、シリコーンゴムと金属粒子とを含む液状又はペースト状の導電性ゴムを攪拌し、攪拌された導電性ゴムを電極部材20の形状を有した成形型(キャビティ)に注入する。これにより、成形型内で導電性ゴムが電極部材20の形状に形成される。
【0036】
次に、コネクタ30が取り付けられた支持部材10、すなわち、支持部材10とコネクタ30との組立体を支持部材10の支持面10aを下向きにして成形型内の導電性ゴム上に載置する。これにより、支持部材10の支持面10aが、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムの被支持部21の被支持面21aに相当する部位に載置される。また、第1導電部材40の第1フランジ部42の埋設面42aが、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムの被支持部21に相当する部位に埋設される。
【0037】
次に、支持部材10とコネクタ30との組立体が載置された状態で電極部材20の形状に成形された導電性ゴムを架橋する。これにより、電極部材20の形状に形成された導電性ゴムが硬化して、第1導電部材40と電極部材20とが一体化される。すなわち、コネクタ30と電極部材20(の被支持部21)とが一体に成型される。さらに言えば、支持部材10、電極部材20及びコネクタ30が一体化される。その後、一体化された支持部材10、電極部材20及びコネクタ30は、成形型から取り出され(脱型され)、必要に応じて後処理が施されて生体電極1が完成する。
【0038】
上述のように、実施形態に係る生体電極1は、被験者の身体に接触させる複数の電極部22を有する導電性ゴム製の電極部材20を含む。複数の電極部22は、電極部材20の被支持部21の電極部形成面21bに突出形成されているとともに電極部形成面21b上に同心円状に配置されている。また、複数の電極部22のそれぞれは、基端部(根元部)から先端部に向かって横断面積が徐々に小さくなり且つ複数の電極部22の配置中心Oから見て先端部の横断面の中心C2が基端部の横断面の中心C1よりも径方向外側に位置するように形成されている。
【0039】
さらに言えば、複数の電極部22のそれぞれにおいて、基端部の横断面の中心C1と先端部の横断面の中心C2とを結ぶ仮想直線Xは、基端部から先端部に向かうほど配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線OLから離れるように傾斜している。
【0040】
このため、各電極部22の柔軟性及び弾力性を確保しつつ、各電極部22の形状を各電極部22が広がる方向とは逆方向(内側ともいい、ここでは複数の電極部22の配置中心Oに向かう方向のことをいう)に曲がり難い(倒れ難い)形状とすることができる。換言すれば、従来技術に比べて、各電極部22の形状を、外側斜め方向から先端側に入力される荷重(図4中の破線矢印を参照)の影響を受け難く且つ当該荷重に対する剛性を高めた形状とすることができる。したがって、比較的強い押し付け力が生体電極1に繰り返し加えられた場合であっても、各電極部22の先端側部分が広がる方向とは逆方向に曲がってしまうことが抑制され、被験者の身体に対する複数の電極部22の安定した接触が維持され得る。
【0041】
また、複数の電極部22は、周方向に等間隔で配置されている。このため、生体電極1に押し付け力が加えられたときに一部の電極部22に応力が偏って作用することが抑制される。したがって、一部の電極部22が残りの電極部22に比べて大きく変形して被験者の身体に安定して接触できなくなってしまうことも抑制され得る。
【0042】
また、本実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有している。このため、各電極部22が広がる方向とは逆方向に曲がってしまうことが効果的に抑制され得るとともに、被験者に不快感をほとんど与えることなく、複数の電極部22の先端側部分を被験者の身体に安定して接触させることが可能である。
【0043】
また、本実施形態においては、複数の電極部22のそれぞれにおいて、複数の電極部22の配置中心Oから最も離れた位置にある母線B1が、電極部形成面21bに垂直(上述のように、±3°程度の傾斜は許容される)になっている。このため、アンダーカット部の発生を抑制して脱型時の作業性の低下を防止しつつ、各電極部22の形状を、外側斜め方向から先端側に入力される荷重の影響を受け難く且つ外側斜め方向から入力される荷重に対する剛性を高めた形状とすることができる。
【0044】
なお、上述の実施形態において、複数の電極部22は、電極部形成面21bに同心円状に配置されている。しかし、これに限られるものではない。図5に示されるように、複数の電極部22が円状に配置されてもよい。この場合、複数の電極部22のそれぞれは、電極部形成面21b上における仮想円25の円周上に位置するように配置される。図5においても、符号Oは複数の電極部22の配置中心(仮想円25の中心)を示し、符号OLは配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線(仮想円25の中心線)を示している。
【0045】
また、上述の実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、電極部材20の被支持部21の電極部形成面21b上における二つの仮想同心円23、24の円周上に位置するように配置されている。しかし、これに限られるものではない。複数の電極部22のそれぞれが三つ以上の仮想同心円の円周上に位置するように配置されてもよい。
【0046】
ここで、図示は省略するが、生体電極1は、必要に応じて、複数の電極部22の他にも被験者の身体に接触させる任意の形状の追加の電極部を有することができる。
【0047】
また、上述の実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、円形の横断面を有している。しかし、これに限られるものではない。例えば、複数の電極部22のそれぞれが円形以外の形状(例えば、角丸多角形)の横断面を有してもよい。
【0048】
また、上述の実施形態において、複数の電極部22のそれぞれは、頂点が丸められた斜円錐状の形状を有し、複数の電極部22のそれぞれにおいて、複数の電極部22の配置中心Oから最も離れた位置にある母線B1が電極部形成面21bに垂直になっている。しかし、これに限られるものではない。配置中心Oから見て先端部の横断面の中心C2が基端部の横断面の中心C1よりも径方向外側に位置していればよい。例えば、図6に示されるように、配置中心Oから最も離れた位置にある母線B1が、最も近い位置にある母線B2と同様に、基端部から先端部に向かうほど配置中心Oを通る電極部形成面21bの垂線OLから離れるように傾斜していてもよい。但し、脱型時の作業性を考慮すると、複数の電極部22のそれぞれは、上述の実施形態の形状を有するのが好ましい。
【0049】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:生体電極10:支持部材10a:支持面10b:背面10c:貫通孔20:電極部材21:被支持部21a:被支持面21b:電極部形成面22:電極部23,24:仮想同心円25:仮想円30:コネクタ40:第1導電部材50:第2導電部材C1:電極部の基端部の横断面の中心C2:電極部の先端部の中心O:複数の電極部の配置中心OL:配置中心を通る電極部形成面の垂線
図1
図2
図3
図4
図5
図6