(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】一酸化窒素に曝される電気化学ガスセンサーの長期の感度変動を補償する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20231204BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20231204BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
G01N27/26 381B
A61M16/00 370Z
G01N27/26 381C
G01N27/26 391Z
G01N27/416 311G
G01N27/416 371G
(21)【出願番号】P 2022064391
(22)【出願日】2022-04-08
(62)【分割の表示】P 2022018441の分割
【原出願日】2015-02-19
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2014-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516160429
【氏名又は名称】マリンクロット ホスピタル プロダクツ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】トルミー,クレイグ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ミルサップ,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】エイカー,ジャロン エム.
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05752504(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0093948(US,A1)
【文献】特開2006-017695(JP,A)
【文献】特開2004-093241(JP,A)
【文献】特開平02-276955(JP,A)
【文献】特開平08-128928(JP,A)
【文献】実開昭60-056263(JP,U)
【文献】特表2017-507329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26 - 27/49
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素供給システムにおけるセンサーの変動を補償する方法であって、
前記一酸化窒素供給システムに接続された記憶部に基準値較正値及び較正スケジュールを保存する手順、
前記一酸化窒素供給システムの起動を開始する手順、
前記起動開始後に基準値較正を実行する手順、
前記基準値較正が完了したことを検証する手順、
使用者により開始された使用前の確認を実行する手順、及び、
前記一酸化窒素供給
システムを介して所定量の一酸化窒素を供給する手順を含み、
前記較正スケジュールは供給される一酸化窒素の前記所定量の変更に基づいて変更され、
較正は、前記較正スケジュールに従って、前記所定量の前記変更が大きいほど、高い頻度で実行される、
方法。
【請求項2】
前記基準値較正が完了していない場合、一酸化窒素の供給を前記基準値較正が完了するまで延期すべきことを前記使用者に通知する手順をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一酸化窒素ガス濃度の測定が非作動であることの通知を表示することによる前記使用者への通知によって前記使用者が次手順へ進むことが防止され、
前記較正の実行後の追加的時間間隔の間通知を表示する手順を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記次手順が、供給及び性能監視試験の実行を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供給及び性能監視試験
がガス監視装置により実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基準値較正が完了したことが検証された場合、前記システムは前記使用者に次手順へ進むことを許可する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記センサーが較正されたことを決定する手順、及び、
記憶部に保存された前記基準値が正しいことを決定する手順、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基準値較正が、
前記使用者が初期設定投与量を入力する前に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基準値較正が、
前記使用者が初期設定投与量を入力する前に完了される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基準値較正が前記基準値較正値をリセットするために実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基準値較正がセンサーの脱飽和を補償するために実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基準値較正が、前記一酸化窒素供給システムの起動時に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基準値較正が、治療の開始に先立って実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
起動時に初期設定の較正を実行する手順をさらに含み、前記初期設定の較正は24時間毎に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
一酸化窒素供給システムにおけるセンサーの変動を補償する方法であって、
前記一酸化窒素供給システムに接続された記憶部に基準値較正値及び較正スケジュールを保存する手順、
前記一酸化窒素供給システムの起動を開始する手順、
前記起動開始後に基準値較正を実行する手順、
前記基準値較正が完了していないことを検証する手順、
基準値較正が完了するまで一酸化窒素の供給を延期すべきこと
を使用者に通知する手順、
前記使用者により開始された使用前の確認を実行する手順、及び、
前記一酸化窒素供給
システムを介して所定量の一酸化窒素を供給する手順を含み、
前記較正スケジュールは供給される一酸化窒素の前記所定量の変更に基づいて変更され、
較正は、前記較正スケジュールに従って、前記所定量の前記変更が大きいほど、高い頻度で実行される、
方法。
【請求項16】
一酸化窒素ガス濃度の測定が非作動であることの通知を表示することによる前記使用者への通知によって、前記使用者が供給及び性能監視試験を実行することが基準値較正の完了まで防止され、
前記較正の実行後の追加的時間間隔の間通知を表示する手順を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記センサーが較正されたことを決定する手順、及び、
記憶部に保存された前記基準値が正しいことを決定する手順、
をさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記基準値較正が、
前記使用者が初期設定投与量を入力する前に開始される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
一酸化窒素供給システムにおけるセンサーの変動を補償する方法であって、
前記一酸化窒素供給システムに接続された記憶部に基準値較正値及び較正スケジュールを保存する手順、
前記一酸化窒素供給システムの起動を開始する手順、
起動の開始後基準値較正を実行する手順、
基準値較正が完了していないことを検証する手順、
基準値較正が完了するまで一酸化窒素の供給を延期すべきこと
を使用者に通知する手順、ここで通知
は一酸化窒素ガス濃度の測定が非作動であることの通知を表示することを含み、前記較正の実行完了後の追加的時間間隔の間通知を表示することを含み、
前記基準値較正が完了するまで使用前の確認の実行を防止する手順、
前記基準値較正が完了した後に前記使用前の確認を実行する手順、及び、
前記一酸化窒素供給
システムを介して所定量の一酸化窒素を供給する手順を含み、
前記較正スケジュールは供給される一酸化窒素の前記所定量の変更に基づいて変更され、
較正は、前記較正スケジュールに従って、前記所定量の前記変更が大きいほど、高い頻度で実行される、
方法。
【請求項20】
前記基準値較正が、前記一酸化窒素供給システムの起動時に実行される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、例えば制御された環境で一酸化窒素に曝される電気化学ガスセンサー
の長期の感度変動を補償するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学のセンサーには様々な種類があり、外観は似ているが機能は大きく異なる。例
えば、一部の電気化学センサーは特定の気体の有無を検出し、他は濃度を検出する。さら
に、一部の電気化学センサーは液体に機能するが、気体には機能しない。電気化学ガスセ
ンサーに的を絞ると、これらセンサーのいくつかはガルバニ反応を、他は触媒反応を利用
する。さらにこれらの一部は電気で作動するが、他は電気を必要とせず、これらのセンサ
ーの中には実際に発電するものもある。さらに、同一の電気的要求事項を有する同じよう
な電気化学ガスセンサーには、セルの機能および/またはセルが反応する気体によって非
常に多くの種類がある。
【0003】
触媒型電気化学ガスセンサーに的を絞ると、これらセンサーは一般に毒性ガスセンサー
として用いられる。毒性ガスセンサー(例えば、煙突からの排出物の監視)として用いる
場合、これらセンサーは、毒性ガスに短時間だけ曝すかあるいは必要時間だけ間欠的に曝
し、同時にあるいはこれに代えて極低濃度の気体(例えば10億分の1(PPB)の範囲
の気体)の検出のみに使用される。しかし、これら触媒型電気化学ガスセンサーを、上記
の毒性ガスセンサーとして用いる方法ではなく、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する
システムに用いて、治療用ガス例えば吸入一酸化窒素(NO)の正確な投与量を確認する
ことができる。触媒型電気化学ガスセンサーを備えるこれら供給システムで気体を連続的
に監視しながら、PPMオーダー(例えば1~80PPM、0.1~80PPM)の投与
量の治療用一酸化窒素を患者に長期間(例えば、数時間、数日、数週間、数ヶ月)供給す
ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、触媒型電気化学ガスセンサーを、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給するシス
テムに用いるこの方式は標準的ではなく、これらセンサーをより標準的な方法で(例えば
一般的な毒性ガスセンサーとして)用いる場合には観察されないいくつかの問題がある。
これらの問題は、センサーの出力に基づき治療薬の投与量を確認する場合がある使用者(
例えば、医者、看護師)には重要である。したがって、少なくとも投与量を適切に確認す
るために、これらの問題を解決する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題の対処法には、例えば、センサーを特定時間間隔で再較正する、稼働状態や較
正結果をメッセージおよび/または表示器で使用者に警告する、センサーを2つ使用して
呼吸回路内の対象ガスの量を測定する、センサーの出力が閾値範囲を越えたかどうかを検
出するなど様々な方法がある。
【0006】
原理および実施形態は一般に、制御された環境で一酸化窒素に曝される電気化学ガスセ
ンサーの出力変動を補償する方法に関し、その方法では、システム制御装置記憶部に保存
されたセンサー再較正スケジュールから較正を実施する時刻を特定することと、較正を実
施する時刻に警報が作動しているか、あるいは所定時間枠内に作動したかを検出し、その
際、上記警報の作動が検出されているかあるいは所定時間枠内に検出されていた場合には
較正を延期し、上記警報の作動が検出されていないかあるいは所定時間枠内に検出されて
いない場合には較正を実行する。
【0007】
実施形態は、システム制御装置内の設定値によって指示されている呼吸回路に供給され
る対象ガスの投与量を決めること、システム制御装置内の設定値の変更を特定すること、
呼吸回路に供給される対象ガスの投与量の変化の大きさを計算すること、対象ガスの投与
量の変化の大きさに合わせて規定されシステム制御装置記憶部に保存されたセンサー再較
正スケジュールを特定すること、および特定されたセンサー再較正スケジュールを実行す
ることにも関する。
【0008】
実施形態は、呼吸回路内の対象ガスの濃度を第1のセンサーで連続的に測定すること、
対象ガスの濃度を表す第1のセンサーの信号を通信経路経由でシステム制御装置に伝える
こと、対象ガスの濃度の変化に対する第1のセンサーによる応答量を決定することにも関
する。
【0009】
実施形態は、対象ガスの濃度の連続測定を、特定されたセンサー再較正スケジュールが
指示するときに中断すること、第1のセンサーを対象ガスの濃度が0の気体に、濃度0を
示す出力値の検出に十分な時間曝すこと、対象ガスの濃度が0の気体に対する第1のセン
サーによる応答量を決定することにも関する。
【0010】
実施形態は、対象ガスの濃度の連続測定の中断と中断の間の所期の間隔を表す一組の値
を含むセンサー再較正スケジュールにも関する。
【0011】
実施形態は、システム制御装置の設定値の変化が小さい場合、所期の間隔は長いことに
も関する。
【0012】
実施形態は、第1のセンサーの、対象ガスの濃度が0の気体に対する応答量をシステム
制御装置記憶部に保存することにも関する。
【0013】
実施形態は、システム制御装置記憶部に保存された前回の較正線の傾きを取得すること
、対象ガスの濃度が0の気体に対する第1のセンサーの保存された応答量および上記前回
の較正線の傾きを用いて、新しい較正線を作成することにも関する。
【0014】
実施形態は、呼吸回路内の対象ガスの濃度を連続的に測定する第1のセンサーの種類を
識別すること、第1のセンサーの種類をシステム制御装置に保存すること、第1のセンサ
ーの種類をセンサー再較正スケジュールの特定に利用することにも関する。
【0015】
実施形態は、3端子型電気化学一酸化窒素ガスセンサーまたは4端子型電気化学一酸化
窒素ガスセンサーである第1のセンサーにも関する。
【0016】
実施形態は、呼吸回路内の対象ガス濃度の連続測定を中断するとき、試料経路を患者呼
吸回路の吸入側から切り離さずに、第1のセンサーに流す外気の供給源を選択することに
も関する。
【0017】
実施形態は、呼吸回路内の対象ガス濃度の連続測定を中断するとき、試料経路を患者呼
吸回路の吸入側から切り離さずに、患者呼吸回路に接続されかつ流体連通状態にある弁を
切り替えて、第1のセンサーに外気を流すことにも関する。
【0018】
実施形態は、弁が切り替えられてセンサーに外気が流れていることを検証することにも
関する。
【0019】
実施形態は、較正の実行を所定時間だけ延期し、所定時間が経過後に、警報が作動して
いるかあるいは所定時間枠内に作動したかを検出することにも関し、その際に、警報の作
動が検出されているかあるいは所定時間枠内に検出されていた場合には較正を延期し、警
報の作動が検出されていないかあるいは所定時間枠内に検出されていなかった場合には較
正を実行する。
【0020】
実施形態は、(i)妨害ガスの有無を検出し、妨害ガスが検出されたら較正実施を所定
時間だけ延期すること、および/または(ii)較正が実施される時刻に使用者が治療用
ガス供給システムを操作しているか、あるいは所定時間枠内に操作したことを検出するこ
とにも関する。
【0021】
実施形態は、第1のセンサーによる呼吸回路内の対象ガスの濃度の測定を中断して較正
を実施するとき、使用者にメッセージを表示することにも関する。
【0022】
実施形態は、第1のセンサーによる呼吸回路内の対象ガスの濃度の測定が中断されると
き、呼吸回路内の対象ガスの濃度を第2のセンサーで測定して、再較正の間に対象ガス濃
度の測定値を使用者に表示することにも関する。
【0023】
実施形態は、第1のセンサーを対象ガスの濃度が0の気体に十分な時間曝して脱飽和す
ること、および/あるいは濃度0を示す出力値を検出した後に、第2のセンサーを対象ガ
スの濃度が0の気体に十分な時間曝して脱飽和すること、および/あるいは濃度0を示す
出力値を検出し、第2のセンサーの出力値を第1のセンサーの出力値と比較して、第1の
センサーと第2のセンサーの間の変動差を判定することにも関する。
【0024】
原理および実施形態は一般に、制御された環境で一酸化窒素に曝される電気化学ガスセ
ンサーの出力変動を補償する方法にも関し、その方法では、システム制御装置記憶部に保
存されたセンサー再較正スケジュールから較正を実施する時刻を特定し、較正実施予定時
刻に、警報が作動しているかあるいは所定時間枠内に作動したかを検出し、上記警報の作
動が検出されているかあるいは所定時間枠内に検出されていた場合には較正を延期し、較
正が実行される時刻に、使用者が治療用ガス供給システムを操作しているかあるいは所定
時間枠内に操作したかを検出し、使用者が治療用ガス供給システムを操作しているかある
いは所定時間枠内に操作した場合には較正を延期し、較正が実行される時刻に、1種以上
の妨害ガスによってセンサー出力が閾値範囲を外れているかあるいは所定時間枠内に範囲
を外れていたか検出し、較正が実行される時刻に、センサー出力が閾値範囲を外れている
かあるいは所定時間枠内に範囲を外れていた場合は較正を延期し、(i)警報の作動が検
出されないかあるいは所定時間枠内に検出されていない場合、(ii)使用者が治療用ガ
ス供給システムを操作していないかあるいは所定時間枠内に操作しなかった場合、および
(iii)センサー出力が範囲を外れてないかあるいは所定時間枠内に範囲を外れなかっ
た場合には、較正を実行する。
【0025】
原理および実施形態は一般に、制御された環境内で一酸化窒素に曝される電気化学ガス
センサーの出力変動を補償する方法にも関し、その方法では、NOを含む治療用ガスを、
それを必要とする患者に供給し、治療用ガスの設定投与量の変更を検出し、設定投与量の
変更に応じて、システム制御装置記憶部に保存されたセンサー再較正スケジュールを選択
し、選択されたセンサー再較正スケジュールから較正を実行する時間を特定し、較正実施
予定時間に、警報が作動しているかあるいは所定時間枠内に作動したかを検出し、警報の
作動が検出されているかあるいは所定時間枠内に検出されていた場合には較正を延期し、
較正が実行される時刻に、使用者が治療用ガス供給システムを操作しているかあるいは所
定時間枠内に操作したかを検出し、使用者が治療用ガス供給システムを操作しているかあ
るいは所定時間枠内に操作した場合には較正を延期し、較正が実行される時刻に、1種以
上の妨害ガスによってセンサー出力が閾値範囲を外れているかあるいは所定時間枠内に範
囲を外れていたかを検出し、較正が実行される時刻に、センサー出力が閾値範囲を外れて
いるかあるいは所定時間枠内に範囲を外れていた場合は較正を延期し、(i)警報の作動
が検出されていないかあるいは所定時間枠内に検出されていなかった場合、(ii)使用
者が治療用ガス供給システムを操作していないかあるいは所定時間枠内に操作しなかった
場合、および(iii)センサー出力が範囲を外れていないかあるいは所定時間枠内に範
囲を外れていなかった場合には較正を実行し、較正の実行時には較正が作動していること
を示すメッセージを使用者に表示し、および/あるいは電子医療記録(electronic medic
al record=EMR)に較正の実施を記録して、使用者にシステムの稼働を知らせる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下の詳細な記述と添付図面を参照することによって、本発明の特徴および利点の理解
がより完全になる。
【
図1A】本発明の例示的実施形態による例示的な触媒型電気化学ガスセンサーを備え、治療用一酸化窒素ガスを、それを必要とする患者に供給する例示的システムの説明図である。
【
図1B】本発明の例示的実施形態による例示的な触媒型電気化学ガスセンサーを備え、治療用一酸化窒素ガスを、それを必要とする患者に供給する例示的システムの説明図である。
【
図2A】本発明の例示的実施形態による例示的な3端子型触媒型電気化学ガスセンサーの説明図である。
【
図2B】本発明の例示的実施形態による例示的な4端子型触媒型電気化学ガスセンサーの説明図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態による例示的な2点線形補間較正線の説明図である。
【
図4】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図5】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図6】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図7】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図8】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図9】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムにおける例示的な触媒型電気化学ガスセンサーの例示的な変動の説明図である。
【
図10】本発明の例示的実施形態による、治療用一酸化窒素ガスを患者に供給する例示的システムに用いる例示的な設定投与量変更応答手順を説明する例示的流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は一般に、治療用一酸化窒素(NO)ガスを患者に供給するシステムなどに使用
され、制御された環境で使用される電気化学ガス濃度センサーの長期の感度変動を補償す
るシステムおよび方法に関する。治療用NOガスを患者に供給するシステムに使用される
電気化学ガスセンサーの長期の感度変動を補償するために、本発明のシステムおよび方法
では、患者に供給されているNOの設定投与量の変更を考慮して較正過程を用いることが
ある。患者に供給されるNOの設定投与量を考慮し、この較正過程では、電気化学ガスセ
ンサーの複数回の基準値較正を開始することができる。基準値較正の頻度は、場合によっ
て設定投与量の濃度変更の大きさ(すなわち最初の設定投与量から最終設定投与量までの
濃度の変化量の絶対値)を基に決まる。このようにして電気化学ガスセンサーの敏感な変
化を補償することになる。
【0028】
この長期の感度変動はセンサーの変則的な使用法に特異的である可能性がある。その理
由は例えば、センサーは実質的に高NO濃度(例えば、一般的な使用時に見られる濃度よ
り1桁高い濃度)に曝される可能性があること、および/あるいはこの暴露は、センサー
がNO吸入治療時に連続稼働する場合など、実質的に長期間になる可能性があること(例
えば、一般的な使用時より数桁長い期間)である。またセンサーは局所的な影響を受ける
ことがあり、いくつか例を挙げれば、温度変化、化学変化、湿度、電解液の伝導性、およ
び/または物理的な内部抵抗の変化などがあるがこれらに限定されない。したがって、本
発明のシステムおよび方法はこの長期変動を、特に複数回の較正過程を使用して補償する
。この長期変動は、変則的な方法で使用されているセンサーに特異的である可能性がある
。
【0029】
さらに本発明のシステムおよび方法は、治療用NOガス供給システムに発生する動作、
および/または基準値較正を実施する前の周囲の環境の状況を考慮に入れることができ、
少なくともいくつかの場合には、適切に対応することができる。少なくともいくつかの場
合には、これによって基準値較正を延期し、および/あるいはセンサーの出力を基準値較
正に使用することで基準値較正は実施しない。
供給および試料採取システムの概要
【0030】
図1A~1Bを参照すると、治療用ガスを患者に供給する例示的治療用ガス供給システ
ム(例えば、このシステムは電気化学ガスセンサーを備える)が図示されている。当然だ
が、本発明の触媒型電気化学ガスセンサーおよび/または任意の教示を、患者への治療用
ガスの供給に適用可能な任意のシステムに用いることができる。例えば、本発明のシステ
ムおよび方法は、米国特許第5,558,083号、発明の名称「NO供給システム」、
および/または米国特許第5,752,504号、発明の名称「較正の間に治療を監視す
るシステム」の供給システムおよび/または他の教示を使用し、変更し、および/または
組み合わせることができ、これら2つの内容を参照によって本明細書に組み入れる。
【0031】
電気化学ガスセンサー、治療用ガスを患者に供給するシステム、ならびに複数のシステ
ムおよび方法は、場合によってNO向けに記述される。例えば電気化学ガスセンサーは、
場合によって一酸化窒素センサー、NOセンサーなどと記述され、治療用ガス供給システ
ムは、場合によっては治療用一酸化窒素供給システム、治療用NO供給システム、一酸化
窒素供給システム、NO供給システムなどと記述され、および/あるいは治療用ガスは、
場合によっては一酸化窒素、NOなどと記述される。これは単に分かり易さのためであり
、これらに限定されない。当然だが本明細書に開示された教示は、適切であれば他の治療
用ガスに用いることができる。
【0032】
例示的実施形態では、治療用ガス供給システム100を用いてNOなどの治療用ガスを
患者102に供給することができる。患者102は、人口呼吸器104などの補助呼吸装
置または他の治療用ガスを患者に導入するために使用する装置、例えば鼻カニューラ、気
管内チューブ、顔面マスクなどを使用していてもよい。簡単のため本発明のシステムおよ
び方法では、人口呼吸器と共に使用されているものとしてしばしば記述する。これは単に
分かり易さを目的としておりこれに限定されない。治療用ガスは治療用ガス源103から
供給することができる。治療用ガス源103は治療用ガスの任意の供給源でよく、例えば
シリンダー(ボンベ)(例えば、NOが入っているシリンダー)に入れられた治療用ガス
、NOガス発生器などである。当然だが、他の治療用ガス供給源を用いることもできる。
【0033】
治療用ガス供給システム100は、特にガス供給サブシステム105および/または気
体試料採取装置106を備えることができる。また治療用ガス供給システム100は、使
用者入力インタフェース107(a)および/または表示器107(b)も備えることが
できる。これらは一体でもよく、表示器とキーボードおよび/またはボタンを備えていて
も、あるいはタッチスクリーン装置でもよい。使用者入力インタフェース107(a)お
よび/または表示器107(b)には使用者が所望の設定値を入力することができる。こ
れらの入力は、患者への処方(mg/kg標準体重、mg/kg/hr、mg/kg/呼
吸、mL/呼吸、シリンダー濃度、供給濃度または設定投与量、時間など)、患者の年齢
、身長、性別、体重などである。少なくとも場合によっては、使用者入力インタフェース
107(a)および/または表示器107(b)を用いて、気体試料採取装置106を用
いて患者に所望の投与(例えば、使用者が入力したPPM単位のNOの所望投与量)が行
われていることを確認することができる。
【0034】
当然だが、システム100の任意の複数要素を組み合わせること、および/あるいはさ
らに分離することができる。簡単のため場合によっては、複数要素は特定のサブシステム
として記述される。これは単に分かり易さのためでありこれに限定されない。
【0035】
少なくとも治療用ガスの所望の設定投与量を患者に供給するために、ならびに/あるい
は患者に供給されている治療用ガスの試料を採取するために、治療用ガス供給システム1
00はシステム制御装置を備えることができる。このシステム制御装置は、演算処理装置
および記憶装置を1台以上備えてもよい。システム制御装置は、例えばコンピューター装
置でも、単一基板のコンピューターでも、1台以上の特定用途用集積回路(ASIC)で
も、あるいはこれらの組み合わせでもよい。演算処理装置は記憶装置と接続することがで
き、この記憶装置は1台以上の入手容易な記憶装置でよく、例えばランダムアクセス型記
憶装置(RAM)、読み取り専用記憶装置(ROM)、不揮発性記憶装置、小型/光学式
ディスク記憶装置、ハードディスク、または他の任意形態のローカルまたは遠隔デジタル
記憶装置などでよい。演算処理装置に補助回路を接続して、演算処理装置、センサー、弁
、試料採取装置、供給装置、使用者入力、表示器、注入モジュール、呼吸装置などを従来
の方法で補助することができる。これら補助回路は、緩衝記憶装置、電源、時計回路、入
/出力回路、アナログ-デジタル変換器および/またはデジタル-アナログ変換器、サブ
システム、電力制御器、信号調整器などを備えることができる。演算処理装置および/ま
たは記憶装置は、センサー、弁、試料採取装置、供給装置、使用者入力、表示器、注入モ
ジュール、呼吸装置などと通信することができる。システム制御装置との通信は通信経路
経由でもよい。通信経路は有線でも無線でもよく、その際、適切なハードウェア、ファー
ムウェア、および/またはソフトウェアを構成して複数の構成要素を互いに接続してもよ
く、および/または通信経路経由で電気的に通信してもよい。
【0036】
時計回路はシステム制御装置の内部にあってもよく、および/または始動、例えば起動
時、からの時間の測定値を提供してもよい。本システムは実際の時間を与える実時間時計
(real-time clock=RTC)を備えてもよい。実時間時計は、時間管理源、例えばネッ
トワークと同期してもよい。記憶装置は、例えばセンサー、ポンプ、弁などから、計算用
および/または他の数値との比較用の数値を取得し、保存するように構成されてもよい。
【0037】
例示的実施形態では、記憶装置は、装置が実行可能な一組の命令(すなわちアルゴリズ
ム)を記憶してもよい。このアルゴリズムが演算処理装置によって実行されると、試料採
取装置および/または供給装置は種々の方法および操作を実行する。例えば供給装置は、
所望の設定投与量(例えばNO濃度、PPM単位のNO)の治療用ガスを、それを必要と
する患者に供給する方法を実行する。この方法では、患者に供給される治療用ガスの、例
えば使用者が入力した所望の設定投与量を取得および/または決定し、患者呼吸回路の吸
気部内の流量を測定し、吸気が流れている間NO含有治療用ガスを患者に供給し、吸気流
量または吸気流量の変化を監視し、その後に吸気流に供給される治療用ガスの量(例えば
、体積または質量)を変える。
【0038】
別の実施例では、試料採取装置は、例えば患者に供給されている対象ガス(例えば、N
O)の濃度を決定する方法を実行することができる。この方法では、試料採取ポンプを作
動させて、および/または気体試料採取弁(例えば3方弁など)を開けて、患者呼吸回路
の吸気部からの気体試料、混合される空気の気体試料、および患者に供給されている治療
用ガス(例えばNO)を採取し、上記気体試料をガスセンサー(例えば、触媒型電気化学
ガスセンサー)に曝し、患者に供給されている対象ガス(例えば、NO、二酸化窒素、酸
素)の濃度を示す情報をセンサーから取得し、対象ガスの濃度を使用者に伝える。
【0039】
別の実施例では、試料採取装置は、例えばガスセンサー(例えば、触媒型センサー、電
気化学ガスセンサー、NOセンサーなど)を較正(例えば基準値較正)する方法を実行す
ることができる。この方法では、試料採取ポンプを作動させて、および/または気体試料
採取弁(例えば3方弁など)を開けて外気(例えば調整された室内空気)の気体試料を採
取し、外気の気体試料をガスセンサー(例えば、触媒型電気化学NOガスセンサー)に曝
し、外気中の対象ガス(例えばNO)の濃度(例えば、NOが0PPM)を示す情報をセ
ンサーから取得し、例えば対象ガスの濃度0(例えば、NOが0PPM)を示す最初の情
報および/または前回の情報を、対象ガスが0PPMであることを示す取得情報で置き換
えて、かつ最初のおよび/または前回の較正線の傾き(例えば、最初の0点とスパン較正
点とを繋いだ最初の較正線の傾き、あるいは前回の0点と前回のスパン較正点とを繋いだ
前回の較正線の傾き)を用いて、新しい較正線を作成および/または既存の較正線を変更
する。装置が実行可能な命令には、本明細書に記述される以外の方法のための任意の命令
が含まれてもよい。
【0040】
別の実施例では、試料採取装置は、例えば対象ガスの濃度が0の気体の供給源を選択す
る方法を実行することができ、この気体は、湿度および温度が呼吸回路の気体のそれらと
実質的に近似の外気でもよい。
供給サブシステムの概要
【0041】
ガス供給サブシステム105は、供給ガス圧力センサー109、供給流制御弁111、
113、115、供給ガス流量センサー117、供給ガス流制限器119、記憶装置14
3、および演算処理装置145を備えてもよいがこれらに限定されない。
【0042】
例示的実施形態では、ガス供給サブシステム105は所望の設定投与量(例えば所望の
濃度)の治療用ガスを患者に供給することができる。例えばガス供給サブシステム105
は、治療用ガス(例えばNOなど)を、人口呼吸器104に接続された呼吸回路126内
の患者が吸入する気体に、ある百分率で乱流混合することができる。少なくとも治療用ガ
ス(例えばNOなど)を患者が吸引する気体に乱流混合するため、ガス供給サブシステム
105はNOを内蔵することおよび/またはNO供給源103から、例えば供給経路12
1経由で取り込むことができる。供給経路121は注入モジュール123と流体連通状態
にすることもでき、ひいては人口呼吸器104に接続された呼吸回路126の吸気部と流
体連通状態にすることができる。
【0043】
本明細書で用いられている「乱流混合比」、「乱流混合する」などは流れの混合に関す
る。本流は非制御(無調整)流であり、乱流と呼ばれる。乱流に取り込まれる成分は本流
に対してある百分率に制御され、一般に本流の流量計の上流(または下流)で混合される
。種々の実施形態では、吸気流は厳密に調整あるいは制御されていない「乱流」でよく、
一酸化窒素は、ある百分率で供給経路から吸気流に供給される配合成分である。
【0044】
人口呼吸器104は、患者呼吸回路126の吸気部127経由で患者102に呼吸ガス
を供給することができ、患者呼気は患者呼吸回路126の呼気部129経由で、場合によ
っては人口呼吸器104まで流れる。呼吸回路126の吸気部127に接続された注入モ
ジュール123によって、NOはガス供給サブシステム105から供給経路121経由で
注入モジュール123に供給される。次にこのNOは注入モジュール123経由で、人口
呼吸器104に接続された患者呼吸回路126の吸気部127に供給される。人口呼吸器
104は呼吸ガスを患者102に供給するために使用される。
【0045】
供給経路121から注入モジュール123、次いで患者102(呼吸ガスを患者呼吸回
路126の吸気部127から取り入れている)へのNO流を調節するために、治療用ガス
供給システム100は1個以上の流量制御弁111、113、115(例えば、比例弁、
二値弁など)を備えることができる。例えば、流量制御弁111、113、および/また
は115を開けて、NOを、供給経路121から注入モジュール123に、次いで患者呼
吸回路126の吸気部127に、そして患者102まで流すことによって、患者102に
供給することができる。
【0046】
少なくとも場合によって、NO供給システム100は1個以上の治療用ガス流量センサ
ー117を備えることができる。治療用ガス流量センサー117は流量制御弁111、1
13、115、および/または供給経路121からの治療用ガスの流量を測定することが
でき、したがって注入モジュール123、次いで患者102への治療用ガスの流量を測定
することができる。さらに、少なくとも場合によって、注入モジュール123は1個以上
の呼吸回路気体(BCG:breathing circuit gas)流量センサー131を備えることが
できる。呼吸回路気体(BCG)流量センサー131は供給装置と連通しており、注入モ
ジュール123から患者102まで通る呼吸回路の吸気経路内の少なくとも患者が吸入す
る気体の質量および/または体積流量率を測定することができる。BCG流量センサー1
31は注入モジュール123に存在するように図に示されているが、その代わりに注入モ
ジュール123の上流など、吸気部121の他の場所に設置することができる。また供給
装置は、人口呼吸器104の呼吸ガスの流量を示す流量情報を、BCG流量センサー13
1ではなく人口呼吸器104から直接取得してもよい。
【0047】
例示的実施形態では、治療用ガス流(例えばNOガス流)を呼吸ガス(例えば空気)流
に比例的(別称レシオメトリック(ratio-metric))に乱流混合して、治療用ガスと呼吸
ガスを混合した治療用ガス(例えばNO)の所望の設定投与量濃度を得ることができる。
例えば、使用者は所望の設定投与量を入力することができ、供給システムはこの設定投与
量を患者102に供給することができる。さらにNO供給システム100は、供給される
濃度を、例えば装置が実行可能な命令を用いて、治療用ガス(例えばNO)の呼吸ガスと
治療用ガスの混合気に、所望の濃度の治療用ガスが入っていることを確認する計算を行う
ことができる。この計算には、既知濃度の治療用ガス供給源103と、BCG流量センサ
ー131および/または人口呼吸器104の情報を用いた患者回路内の呼吸ガス流の量と
、および治療用ガス流量センサー117の情報を用いた、注入モジュール123(次いで
患者102)までの供給経路121内の治療用ガス流の量とを用いる。
【0048】
例示的実施形態では、治療用ガス供給システム100では、使用者による治療用ガス(
例えば、PPM単位のNO)の所望の設定投与量の入力が可能である。また治療用ガス供
給システムは、所望の設定投与量の治療用ガスが患者に供給されていることを、供給濃度
の(例えば上記の)計算によって確認することができる。加えて、治療用ガス供給システ
ムは気体試料採取装置106を用いて、所望の設定投与量の治療用ガス(例えばNO)が
患者に供給されていることを確認することができる。場合によっては、患者に供給されて
いる治療用ガスの投与量をセンサーが正しく報告しないという問題が生じる可能性がある
。
気体試料採取サブシステムの概要
【0049】
気体試料採取装置106は以下を備えることができるがこれらに限定されない。すなわ
ち多数のセンサー(例を挙げると、触媒活性が高くかつセンサーの電気化学反応に適切な
触媒型電極材料を含む電気化学NOガスセンサー108、触媒型電気化学二酸化窒素ガス
センサー110、電流型電気化学酸素ガスセンサー112、ただしこれらに限定されない
)、試料ガス流量センサー114、試料ポンプ116、試料装置弁118、演算処理装置
120、および記憶装置122である。センサー108、110、112は直列および/
あるいは並列におよび/あるいは任意の順序に設置することができる。簡単のため、セン
サー108、110、112は直列で説明されている。これは単に分かり易さを目的とし
ており、これに限定されない。種々の実施形態では、NOセンサーは電解質の薄層で隔て
られた感知電極と対電極の2つの電極を備える電気化学センサーでもよい。
【0050】
例示的実施形態では、気体試料採取サブシステム106は、患者に供給されている種々
の気体の試料を採取し、さらに/あるいはその濃度を測定することができる。患者102
に供給されているNOの濃度の試料を採取し、NOセンサー108に曝し、次いで呼吸ガ
ス中のNOの濃度(例えばPPM単位のNO)を示す情報を出力することができる。例え
ば、患者に供給されている気体の試料を試料経路124から採取することができる。試料
経路124は、呼吸装置104に接続された呼吸回路126の吸気経路127と流体連通
している。吸気経路127の気体試料を、試料経路124からガスセンサー(例えばNO
センサー108)に流すことができ、および/あるいはそこに吸引することができる。試
料経路124内の流れは弁118および/または試料ポンプ116で調節することができ
る。試料経路内の質量または体積流量は、流量センサー114を用いて測定することがで
きる。また試料経路124は気体試料調整器128と流体連通させることも可能で、この
気体試料調整器128によって、例えば液体を除去する、試料を適切な湿度下に置く、試
料から汚染物質を除去するなどして試料ガスを調整してもよく、これに加えて/あるいは
これに代えて試料ガスを任意の他の所望の方法で調整することもできる。
【0051】
例示的実施形態では、気体試料採取装置106は、試料を採取することおよび/あるい
は制御された(例えば、基準値較正、スパン較正などが行われた)試料中の対象ガス濃度
を測定することによって、ガスセンサー(例えば触媒型電気化学ガスセンサー)を較正(
例えば、基準値較正、スパン較正など)することができる。スパン試料は、その濃度が制
御された対象範囲(例えば、10、25、50、80PPMなど)内にある所定の既知濃
度の対象ガス(すなわち一酸化窒素)であり、および/あるいは基準試料は対象ガスの濃
度が0の気体(すなわち一酸化窒素を含まない調整済外気)である。例えば、外気130
および/またはスパンガス132の試料を試料経路134から採取することができる。外
気130および/またはスパンガス132から試料経路134を通ったこの気体試料は、
ガスセンサー(例えばNOセンサー108)に流れ、および/あるいはそこに吸引するこ
とができる。試料経路134内の流れは、弁118(例えば3方弁など)および/または
試料ポンプ116で調整することができる。試料経路の流量は流量センサー114で測定
することができる。
【0052】
例示的実施形態では、試料経路134は気体試料調整器136と流体連通することがで
き、この気体試料調整器136によって、例えば液体を除去する、試料を適切な湿度下に
置く、試料から汚染物質を除去するなどして試料ガスを調整してもよく、および/あるい
は試料ガスを任意の他の所望の方法で調整することもできる。例えば、基準値較正に使用
される外気(例えば外気130)は、洗浄材を用いて何らかの望ましくない気体を除去し
てもよい。例えばこの洗浄材は、外気を洗浄してNOおよびNO2を除去することが可能
な経路中の過マンガン酸カリウム洗浄材でよい。NOおよびNO2を外気から除去すると
、望ましくない気体は除去されて0PPMになるため、洗浄済の空気を0点較正に用いる
ことができる。必要なら、類似の技術(例えば、経路中の洗浄材の使用)をスパンガスに
施すこともできる。
センサーの概要
【0053】
例示的実施形態では、治療用ガス供給システム100に使用されている電気化学ガスセ
ンサーは3端子型触媒型電気化学ガスセンサーおよび/または4端子型触媒型電気化学ガ
スセンサーにすることができる。例示的な3端子型触媒型電気化学ガスセンサー200が
図2Aに、例示的な4端子型触媒型電気化学ガスセンサー200が
図2Bに示されている
。一般に、3端子型および4端子型の触媒型電気化学ガスセンサーは感知電極202(陽
極または作用電極)と対電極206(陰極)を備え、これらは電解質層208で隔てられ
ている。さらにこれらのセンサーは、(例えば感知電極と反応する)気体反応速度の制御
に使用可能な毛細管拡散壁210、および/またはセンサーからの水性液体電解質の漏れ
防止あるいは水分蒸気損失による乾燥防止に使用可能な疎水性壁212も備える。使用時
、センサーに流れ込む気体は毛細管拡散壁210から疎水性壁212内に拡散し、次いで
感知電極202に達してこれと反応する。ガスセンサーは、治療用ガス、外気、および/
またはスパンガスの試料に曝すことができる。
【0054】
感知電極202に達した気体は、酸化または還元作用によって感知電極202の表面で
反応する。これは対象ガス用に特別に選択された電極材料による触媒作用による。別の言
い方をすれば、感知電極202(陽極)で酸化が起きるとき、陽イオンが陰極に、陰イオ
ンが陽極に流れるため、対電極206(陰極)で還元が起き、電流が流れる。電気化学的
に還元可能な酸素、二酸化窒素、塩素などの気体は陰極で感知され、一酸化炭素、NO、
硫化水素など電気化学的に酸化可能な気体は陽極で感知される。抵抗器および/または電
流-電圧増幅器214を電極(感知電極202と対電極206)間に接続すると、ガス濃
度に比例して陽極と陰極(感知電極202と対電極206)の間に電流が流れる。この電
流を測定してガス濃度を決定することができる。この過程で電流が発生することから、こ
れらのセンサーは電流測定式ガスセンサー、マイクロ燃料電池、および/またはその他い
くつかの名称で記述される。
【0055】
場合によって
図2Aに示すように、電気化学センサー200は、基準電極216として
作用する第3の電極を備えることができる(例えば3端子型電気化学センサー)。基準電
極を備える電気化学センサーの場合、感知電極202は、基準電極(電流は流れ出ない)
に対して相対的に固定された電位に維持されるため、基準電極と感知電極を実質的に一定
電位に維持することができる(例えば、対向電流源によって維持される)。この一定の電
位によって、対象ガスの選択性が確保される。すなわち他の非対象ガスに対する交差感度
が抑制される。
【0056】
さらに
図2Bに示すように、電気化学センサー200は、補助電極218として作用す
る第4の電極を備えることができる(例えば4端子型電気化学センサー)。この補助電極
218を用いて、対象ガスの濃度とは無関係の出力感度変化を相殺することができる。こ
の出力感度変化は電気化学センサー200が受ける局所的影響に起因する場合がある。
【0057】
電気化学センサー200は有線でもよく、あるいは適切なソケットに取り付けられてい
てもよい。その場合、結線またはソケットによって電極の数の検出ができてもよい(例え
ば、電極の電圧または電流の有無による検出)。
センサーの変動
【0058】
例示的実施形態では、触媒型電気化学ガスセンサー(例えば、NOセンサー、3端子型
電気化学センサー、4端子型電気化学センサーなど)は測定対象の気体(例えば、対象ガ
ス、NOなど)と反応して作動し、電流を発生させる。一般にこの電流は測定対象の気体
の濃度に比例する。例えば、NOセンサーと反応するNOの濃度が高いほど、センサーに
よって発生する電流は大きい。よってこの比例関係を用い、センサーで発生する電流を利
用して、採取されたおよび/または患者に供給されたNOガスの濃度を決定することがで
きる。
【0059】
治療用NOガスを供給する実施例によれば、NOセンサーの出力を用いてNOの濃度を
決定し、それを例えば表示器で使用者に提供することができる。このようにして使用者は
、実際に設定投与量(例えば、所望の濃度のNO)が患者に供給されていることを確認す
ることができる。上記の様に、患者に供給されている吸入流内の治療用ガス(NO)の濃
度は、例えば供給濃度計算を用いて計算することができる。しかし、治療用ガスのこの計
算濃度は、場合によっては、使用者に表示できないことがある。従って、正しい治療用投
与量が実際に患者に供給されていること、およびNOセンサーの変動が実際に問題になる
かもしれないことを確認するには、NOセンサーの出力が使用者にとって唯一の方法また
は好ましい方法である場合がある。
【0060】
触媒型NOセンサーの従来の使用法(例えば、煙突からの排出物の監視)には無い、治
療用ガス供給に固有の別の課題は、通気治療を妨げないように、呼吸回路の試料流量を最
小(例えば250ml/分未満、この値は電気化学セル製造業者規定の最小値よりも小さ
い場合がある)に保たなければならないことである。気体試料の流量は、通気治療(例え
ば人口呼吸器)から見れば回路内の漏れとして現れる。治療用NOガス監視装置が、試料
を呼吸回路から採取していると、報告される人口呼吸器吸入量(および体積)は測定され
る呼気流量(および体積)よりも大きい。これを吸気/呼気体積不一致といい、患者には
規定の1回換気量が供給されていない場合がある。(例えば、患者の吸入動作を能動的に
検出し補助する)自然換気方式の人口呼吸器の場合、気体試料流量によって、呼吸検出ア
ルゴリズムおよび/または呼吸検出感度が妨害される場合がある。これらの人口呼吸器は
、呼吸を検出するために、吸入流量未満の呼気流量を監視する。気体試料流が呼吸回路の
吸引部から吸引されていると、呼気流量が吸入流量より小さく測定されるという結果にな
る。上記の全ての影響によって、患者の通気治療は影響を受け、介護者は混乱する。
【0061】
図1A、1B、3を参照すると、この(直線比例に近い)比例関係により、センサーの
電気的出力範囲と0PPM濃度を含むガス濃度範囲とが対応した2点直線補間較正線30
0を作ることができる。この較正線は、NOセンサー108を2つの既知の気体源、例え
ば、外気源130のような対象ガスを含まないものおよび既知濃度の対象ガスを含むスパ
ン源132に曝すことによって得られる。簡単のため、外気源130およびスパン源13
2は、試料経路134と流体連通状態にあるものとする。これは単に分かり易さを目的と
しておりこれに限定されない。例えば、外気源130および/またはスパン源132は試
料経路124と流体連通状態にしてもよい。外気源130を用い、(基準電流として知ら
れている)最初の基準信号の較正点302を決定することができる。この較正点302は
、NOセンサー108を外気源130(例えば、NOのPPM濃度が0および/または温
度と湿度が環境と同じに調整された外気源)に曝して、対象ガスの濃度0に対する出力電
流を確定することによって決定される(例えば、0PPMのNOに対して、約4.5マイ
クロアンペア)。スパン源132を用いてスパン較正点304を決定することができる。
このスパン較正点304は、NOセンサー108をスパン源132(例えば較正ガス)に
曝して、対象ガスの他の既知濃度(スパン濃度)に対する出力電流を確定することによっ
て決定する(例えば、50PPMのNOに対して、約17マイクロアンペア)。スパン点
304と0点302を繋いで、このセンサーの直線較正線300を作ることができ、その
ようにすることによって使用者は、NOセンサー108の出力電流に基づいて気体の濃度
を決定することができる。当然だが、同様の技術を用いて複数の追加点を決定することが
でき、および/または他の既知の技術を用いて基準値較正線を作ることができる。このセ
ンサーの種々の較正点の出力値を記憶装置に保存してもよい。
【0062】
直線較正線300は、記憶装置に、0点302の切片および0点とスパン点304で計
算した傾きとして、あるいは種々濃度の複数のスパン点304の値と0点302の組とし
て保存してもよい。
【0063】
しかし長期連続使用の間には、最初の較正線(例えば、最初の基準値較正、基準電流、
最初のスパン較正など)で確定した出力電流が変動する(ずれる)ことがある。とりわけ
触媒型電気化学セルは飽和するため、少なくとも場合によって、変動が発生じることがあ
る。この変動によって、例えば使用者向けに表示器107(b)に表示された出力は不正
確になる。その結果、使用者は、所望の設定投与量が実際に患者に供給されていることを
確認することができない場合がある。これは多くの問題と混乱に繋がる。例えば、表示器
107(b)に不正確な量が示されると、使用者は、表示器107(b)に示された不正
確な濃度が患者に供給されている実際の濃度であると信じる可能性がある。この不正確な
情報を基に、使用者が設定投与量(例えば、NOのPPM)ひいては患者に供給されてい
る濃度(例えばNOの濃度)を調整する可能性がある。その結果、患者へ供給されている
量は所望の設定量であることを表示された投与量が示していても、この新しく調整された
濃度は患者にとって不正確な投与量になる可能性がある。
脱飽和
【0064】
この変動を正すため、外気および/または対象ガスの濃度が0の供給源にセンサーを長
時間(例えば数時間、24時間など)曝し、それよってセンサーを脱飽和することができ
る。センサーがゆっくり脱飽和するとともに、センサーの最初の感度がゆっくり回復する
。多くの場合、脱飽和後は元の較正線が使用でき、場合によっては新規の基準値較正およ
びスパン較正を実施して新しい較正線を作成することもできる。変動の修正にセンサーの
脱飽和を用いてもよいが、センサーの脱飽和は、長い時間を要してその間はセンサーを使
用することができないため、治療用ガス供給システムに用いられるNOセンサーには許容
されない場合がある。
0校正およびスパン較正
【0065】
例示的実施形態では、変動を補償するためにセンサーを脱飽和するのとは異なり、セン
サーがまだ少なくとも不飽和状態のときに、基準値較正および/またはスパン較正を実行
することができる。この基準値較正および/またはスパン較正の出力を用い、センサーが
まだ少なくとも不飽和状態のときに、変動を補償する新しい較正線を作ることができる。
スパン較正を実施するには、スパン源(例えば、既知濃度の対象ガスが入った容器、50
PPMのNOガスの容器など)にセンサーを曝す必要がある。また基準値較正を実施する
には、対象ガスが入っていない供給源(例えば、対象ガスを含まない外気)にセンサーを
曝す必要がある。
【0066】
スパン較正は基準値較正よりも実施に手間が掛かる。なぜならスパン較正は既知濃度の
対象ガスを入れた容器が必要だが、基準値較正は外気(例えば、調整した外気)を使うこ
とができるからである。少なくとも上記のことを踏まえると、とりわけ、システムを単純
化し、システムの設置面積(例えば救急診療が必要になる場合がある場所、設置面積が高
価または関心事である場所など)を縮小し、および/あるいはシステムの使用を容易にす
るためには、基準値較正の実施がより望ましい。したがって、例示的実施形態では、基準
値の変動を補償するために、例えばセンサーが少なくとも不飽和状態のときに、基準値較
正を自動的におよび/または手動で実施して、電気化学センサーの変動を補償する新しい
較正線を作成することができる。
【0067】
例示的実施形態では、新しい基準値較正用センサー出力と、最初のおよび/または前回
の較正線の傾きとを用いて、少なくとも不飽和状態のセンサーの変動を補償する新しい較
正線を作成することができる。センサーの変動は、新しい基準値較正306の出力と、最
初のおよび/または前回の基準値較正302との差とすることができる。一例では、最初
の基準電流302(0PPMのNOに対して4.5マイクロアンペア)から、新しい基準
電流306(0PPMのNOに対して-1.0マイクロアンペア)への変動(ずれ)の量
を、0PPMのNO(例えば、調整した外気)にセンサーを曝したときに決定することが
できる。最初のおよび/または前回の較正線の傾きを新しい基準電流に適用することによ
って、新しい較正線308を作成することができる。その後、変動を補償するこの新しい
較正線を用いて、患者に供給されている対象ガス(NO)の濃度を決定することができる
。
【0068】
例示的実施形態では、(例えば、下記にさらに詳述する較正スケジュールに従って実施
される)較正が実施される時間の短縮は重要である。ガス濃度警報(低/高NO警報、低
/高O2警報、高NO2警報など)の少なくとも一部が停止する可能性がある監視装置の
不動時間が最短になるからである。少なくとも一部の警報を基準値較正の間に停止し、誤
警報および/または邪魔な警報を防止することがある。したがって例示的実施形態では、
基準値較正実行時間および/または非作動時間には、ゼロオフセット値(例えば0PPM
を示す出力、センサーは少なくとも不飽和状態でもよい)を得るのに必要な触媒型電気化
学センサーの応答時間と、設定投与量に戻るための触媒型電気化学センサーの応答時間(
例えば、センサーが設定投与量の対象ガスに再度曝されたときに対象ガスの濃度を出力す
るのに必要な時間)が含まれる。較正の実施中および/あるいは警報が機能していないと
き、使用者に較正が実施されていることおよび/または警報は現在機能していないことを
表示器で知らせ、システムが正しく機能していないという誤った結論を出さないようにし
てもよい。
【0069】
例示的実施形態では、基準(0)の電流出力のこの変動(ずれ)の量を決定することが
できる。この決定は、例えば室内の空気を用いて、センサー(例えばNOセンサー)を既
知の0PPM濃度の対象ガス(例えばNO)に、ある時間(例えば3分)曝すことによっ
て行う。(例えば治療用ガス供給システム較正線内で)再度0を確定するためのこの時間
の範囲は約3~5分でもよい。この暴露(例えば外気への暴露)の時間の後にセンサーは
さらに時間(例えば2分)を必要とし、その時間は、対象ガスに対して安定させるための
約1~2分でもよい。その後、この変動を用いて較正線のオフセットを調整することがで
きる。例えば、最初の基準電流出力(0PPMのNOに対して4.5マイクロアンペア)
のこの変動(ずれ)量を決定するために、センサーを0PPMのNO(外気)に曝して新
しい基準電流306(0PPMのNOに対して-1.0マイクロアンペア)を決定するこ
とができる。新しく分かった基準電流のずれ(例えば、0PPMのNOに対して0から-
1マイクロアンペア)を、最初のおよび/または前回の較正線の傾きとともに利用して実
際のNOガス濃度を報告することができる。種々の実施形態では、較正には約4~7分の
時間がかかる場合があり、および/またはシステムが10分未満作動しない場合がある。
【0070】
例示的実施形態では、既知の0PPM濃度(例えば室内の空気)にセンサーを曝す時間
を、種々の変数を基に決定することができ、その変数には以下のものがあるがこれらに限
定されない。すなわち、対象ガスに対するセンサーの反応速度(例えば、空気、NOなど
に対する反応速度)、システムの物理的な大きさ、セル気体交換速度、周囲環境に対する
熱インピーダンス、湿度、例えば出力信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間に影響する
可能性がある試料ガス流速(例えば二次的)、および/またはこれらの任意の組み合わせ
あるいはさらに分解したものなどである。種々の実施形態では、約5~15秒あるいは約
5~10秒の間、ガスセンサーを気体に曝して測定値を得てもよい。
【0071】
例示的実施形態では、センサーのマイクロアンペア単位でもよい出力を、アナログ-デ
ジタル変換器回路によってデジタル値(カウントと呼ぶ)に変換してもよい。NOセンサ
ーの出力の変化速度を監視し、「安定」と見なされる所定の閾値と比較することができる
。センサー出力が安定状態かどうかを決定するために、センサー出力をある時間監視およ
び/または記録し、監視時間中に観察された平均値、最小値、最大値を比較して、監視時
間および/または記録時間中のセンサー出力の変化量および/または安定性を決定しても
よい。例えば単位時間当たりのADC(Analog to Digital)カウントは10秒あたり1
.5~2.5ADCカウントでもよい。ADCカウントはサンプリングレート(例えば、
1秒当たり測定10回)を有してもよく、ある設定時間(例えば10秒)ADCカウント
をサンプリングしてもよい。例えばマイクロアンペア単位の電流を、1回0.1秒の取得
時間に相当するカウント数に変換し、10秒間に発生したカウントを合計し平均してもよ
い。ある時間に測定されたカウント数を記憶装置に保存してもよい。監視時間中に(例え
ば、マイクロアンペアまたはADCカウントの)センサー出力が安定閾値を外れた場合、
安定閾値内になるまで監視を続けてもよい。安定閾値では例えば、監視時間10秒間の変
動は1ADCカウント以下である。少なくとも場合によって、対象ガス濃度の変化(例え
ば、設定投与量のNOの変化)に対するセンサーの応答は、センサーが新しいほど、およ
び/または濃度の変更の絶対値が小さいほど(例えば、設定投与量の変更の絶対値が小さ
いほど)速い場合があることが分かった。したがって例示的実施形態では、本発明のシス
テムおよび方法をセンサー出力の種々の変化速度に適合させて、非動作時間を最小にする
ことができる。例えば、より詳細に後述する較正スケジュールおよび/または設定投与量
変更応答アルゴリズムでは、センサー出力の種々の変化速度を考慮して、例えば非動作時
間(例えば、NOセンサーの停止時間など)を最小にすることができる。センサー信号は
時間と共に最終値に漸近的に近づいてもよい。監視時間および/または記録時間のセンサ
ー出力の変化を監視することによって、センサー出力が安定閾値内にあるときに較正の結
論を出してもよく、最大信号の99%内の値でもよい。
【0072】
例示的実施形態では、基準値較正実施時に触媒型電気化学センサーが外気に曝される時
間を、少なくとも場合によっては、較正スケジュールの全ての基準値較正に対して同じ時
間にする必要がある。例えば、較正が実行されるごとに同じ時間センサーが気体に曝され
るように、同じ較正スケジュール内の全ての基準値較正を同じ長さの時間で実施する必要
がある。例えば、ガスセンサーの表示値は、各基準値較正の5秒の暴露時間の最後に取得
してもよい。較正を実行する度に同じ暴露時間の表示値を取得することによって、センサ
ーは同じ応答時間で同じ最終値を出力する。発明者等は研究により、センサーを室内の空
気に曝したとき(例えば自動較正を開始する時)、センサーの出力は最初の短時間はかな
り急激に低下し、暴露の最初の約30秒で最終値の90%に近づくことを見出した。この
時間はセンサーの応答性によって変化することがあり、このセンサー出力は暴露の最初の
約1~2分で最終値の90%に近づくことがあり、その後センサー出力は徐々に減少して
(例えば指数関数的に減衰して)、長時間(例えば、数時間、数日、数週間の暴露)の後
に基準値に達する。後者の長時間の低速の減衰を脱飽和に必要な時間とすることができる
。しかし、基準値較正を用いてセンサーの変動を補償することに対し、発明者等は、長時
間のセンサー出力の低下は(例えば、センサー出力の最初のかなり急激な低下よりも)基
準値変動の補償値の決定には重要ではないことを見出した。センサー出力のこの最初の急
激な低下に注目し、例示的実施形態では、センサーを外気に曝す時間(例えば基準0較正
)を、全てあるいは少なくとも一部の基準0較正に対して同じにすることができる。
較正スケジュール(設定投与量変化)
【0073】
基準値較正は変動を補償するために用いられるものであるが、治療用ガス(例えばNO
)を患者に(例えば長時間)供給する治療用ガス供給システムに触媒型電気化学センサー
(例えばNOセンサー)を使用する場合、そのような基準値較正では、電気化学センサー
の信号を非作動にする必要のある場合がある。上記のように、電気化学センサーを非作動
にすると問題になることがある。というのは、例えばセンサーが非作動になると、使用者
(例えば、医者、看護師など)は、NOの供給の監視および/あるいは患者へのNO供給
の変更を行うことができない場合があるためである。また、この「停電」の間、表示値は
、想定される設定投与量と異なる表示値が使用者に表示されるか、あるいは何も表示され
ない場合があり、不安を招き、あるいは混乱に繋がる。逆に、センサーを再度0(例えば
基準値較正)にしなければ、NOの測定濃度は不正確になる可能性がある。これは問題で
ある。何故なら、少なくとも精度の観点では基準値較正を頻繁に実施することが好ましい
場合があるが、少なくとも治療の観点では、電気化学センサーを使用する治療用ガス供給
システムの能力が基準値較正の間に停止するため、頻繁な基準値較正は許容できないから
である。少なくとも一部の実施形態では、電気化学センサーは、基準値較正の間、5~約
10分間あるいは最大10分間停止する場合がある。
【0074】
発明者等は上記に注目して幅広い研究を行い、電気化学ガスセルの感度の変動は治療用
ガスの濃度変更の絶対値(例えば、NO設定投与量の変更の絶対値)に関連すること、そ
の際、変更の絶対値が大きいほど変動が大きいことを見出した。この関係に着目すると、
触媒型電気化学センサー(例えばNOセンサー)に実施する較正(例えば基準値較正など
)の頻度を、患者に供給されているNOの濃度変更の絶対値(例えば、NOの設定投与量
の変更の絶対値)を考慮することによって減らすことができる。よって、患者に供給され
ているNOの濃度変更の絶対値(例えば、NOの設定投与量の濃度変更の絶対値)を考慮
した予定(例えば較正スケジュール)を用いてセンサーが停止する時間および/または回
数を減らしつつ、センサーの高精度を確保することができる。したがって例示的実施形態
では、較正スケジュール内の基準値較正の頻度は、患者に供給されているNOの濃度変更
の絶対値(例えば、設定投与量の変更の絶対値)を基に決定することができ、その場合、
患者に供給されているNOの濃度変更の絶対値(例えば、設定投与量の濃度変更の絶対値
)が大きいほど基準値較正の頻度はより高くてもよく(例えば、基準値較正の間隔が短い
)、および/または患者に供給されているNOの濃度変更の絶対値(例えば、設定投与量
の変更の絶対値)が小さいほど基準値較正の頻度はより低くてもよい(例えば、基準値較
正の間隔が長い)。較正の間隔は設定投与量の変更の絶対値に比例して延びてもよい。室
内の空気による0点較正またはスパン較正の時間は、セルの飽和または脱飽和の変化には
重要ではない。
【0075】
図4~5を参照すると、例示的なグラフによって、時間に対する所望の設定投与量の変
動と基準値較正が説明されている。ここで、設定投与量の変動は、例えば、正確な投与量
のNOが患者に供給されていることを確認するために使用者に表示されているものであり
、基準値較正は、例示的4端子型触媒型電気化学NOガスセンサーの較正であって、例示
的較正スケジュールに用いられる較正であり、時間は、所望の設定投与量を実際に投与さ
れている患者に対する時間である。すなわち、患者は正しい設定投与量を投与されている
はずであるが、使用者に表示された量は不正確な量が供給されていることを示している。
例えば
図4に説明された例示的なグラフは、患者が設定投与量50PPMのNOを投与さ
れている場合の変動と基準値較正を示し、
図5に説明された例示的なグラフは、患者が設
定投与量25PPMのNOを投与されている場合の変動と基準値較正を示す。センサーの
表示値が変動している場合でも(つまり、治療用ガス供給システムの使用者には、異なる
PPMが患者に供給されているように表示されている場合でも)、患者には所望の設定投
与量(例えば、設定投与量50PPMのNO、設定投与量25PPMのNOなど)が投与
され続けている可能性があることがわかる。種々の実施形態では、電気化学ガスセンサー
の種類を記憶装置に入力してもよく、これは例えば使用者による入力でもよく、あるいは
システム制御装置による電気化学ガスセンサーの自動検出による入力でもよい。種々の実
施形態では、電気化学ガスセンサーの種類は、定電位電源の監視と、電極の電圧および/
または電流の変化の検出、および/またはセンサー用に構成されたソケット内の端子にお
ける電流または電圧の有無を検出することによって検出されてもよい。
【0076】
例示的実施形態では、設定投与量の変更に応じて、再較正スケジュールを用いて、場合
によっては自動的に、基準値較正がいつ始まるかおよび/またはいつ実施されるかを決定
することができる。例えば、患者は設定投与量50PPM(例えば使用者が設定)のNO
の投与を開始することができ、それによってNOセンサーは50PPMのNOに曝される
。しかし、図示されているように、センサーは変動し始める(例えば、設定されているお
よび/あるいは実際に患者に供給されているよりも少ないPPM投与量を投与されている
かもしれないということを示す)。この変動を修正するため、センサーの基準値較正を、
所望の時間(例えば、3、4、6時間)のNOへの暴露の後に、実施することができる。
この間隔は、システムまたはシステム制御装置内の内部時計または実時間時計を用いて測
定してもよく、その際、内部時計または実時間時計を用いて較正を実行する時間を決定し
てもよい。基準値較正を実施した後、次にセンサーをNOに再度曝すことができる。その
後、センサーは再度変動し始める場合がある。この変動を修正するために、センサーの基
準値較正を、さらに所望の時間(例えば、6、8、12時間)のNOへの暴露の後に、再
度実施することができる。この間隔を、内部時計を用いて前回の間隔から相対的に測定し
て、あるいは実時間時計を用いて絶対的に測定して、次の較正の時間を決定してもよい。
先行する基準値較正を実施した後、50PPMのNOへのセンサーの暴露を再開すること
ができ、センサーは再度変動し始める場合がある。この変動を修正するために、センサー
の基準値較正を、さらに追加の所望の時間(例えば、12時間)のNOへの暴露の後に、
実施することができる。種々の実施形態では、較正と較正の最大間隔は、1日に最低1回
の較正を行うことになるように24時間でもよい。
【0077】
例示的実施形態では、再較正スケジュールを制御器記憶部に保存してもよい。1つ以上
の再較正スケジュールがあってもよく、再較正スケジュールは、較正実施の1つ以上の間
隔時間を示す1つ以上の値を備える。例えば、再較正スケジュールを計算する一方法は、
150PPM-時間を基にして計算する方法でもよく、150PPMを設定投与量で割っ
て較正実施間隔の時間数を決定することを含んでもよい。例えば、設定投与量50PPM
が3時間経過すると150PPM-時間が累積される。次に、新しく25PPMの新しい
投与量を設定したら、6時間の累積(150PPM-時間)の後で次の基準値較正になる
。その後の較正間隔は、前の間隔の2倍で、最大12時間および/または最大24時間で
もよい。
【0078】
例示的一実施形態では、PPM-時間(例えば、XPPM-時間)を2倍(例えば、2
×XPPM-時間)して2回目の較正までの間隔を計算し、再度2倍して3回目の較正ま
での間隔を計算するというようにして、最大24時間較正に達するまで計算してもよい。
例えば、150PPM-時間を2倍して300PPM-時間にして2回目の較正までの間
隔を計算し、再度2倍して3回目の較正までの間隔を計算するというように、最大24時
間較正に達するまで計算してもよい。例えば、設定投与量の10PPMから60PPMへ
の変更によって50PPMの変更の絶対値が生じ、設定投与量変更と最初の較正の間隔は
150PPM-時間/50PPM=3時間となる。次の間隔は、時計で計測して最初の較
正の後の300PPM-時間/50PPM=6時間となり、その後600PPM-時間/
50PPM=12時間の間隔となる。その次の間隔は1200PPM-時間/50PPM
=24時間後となり、この時間を最大間隔にすることもできるためこれ以上の計算は行わ
ず、その後の較正の間隔は変わらず24時間にすることができる。最大変動量は設定投与
量変更後の最初の24時間の間に発生し、24時間を超えると、濃度がその時間帯で同じ
であれば変動は僅かである。
【0079】
上記のように例示的実施形態では、較正スケジュールは、患者に供給されているNOの
設定投与量の変更の絶対値を考慮することができる。その際、設定投与量の変更の絶対値
が大きいほど、変更の絶対値が小さい場合よりも基準値較正が頻繁に必要となる。例えば
、10PPMの正または負の変更の較正間隔への影響は、50PPMの正または負の変更
の場合よりも小さい。例えば、
図4には、特に、患者に供給されているNOの0PPMか
ら50PPMへの変更の絶対値(およびそれによって、例示的4端子型触媒型電気化学N
Oガスセンサーを50PPMのNOに曝すこと)が図示されており、
図5には、特に、患
者に供給されているNOの0PPMから25PPMへの変更の絶対値(およびそれによっ
て例示的4端子型触媒型電気化学NOガスセンサーを25PPMのNOに曝すこと)が図
示されている。
図4、5から分かるように、NO濃度の変更の絶対値が大きい場合(例え
ば
図4に示す)は変動が大きく、したがって基準値較正の頻度は、NO濃度の変更の絶対
値が小さい場合(例えば、
図5に示す)よりも高くてもよい。種々の実施形態では、PP
M-時間の数値は設置されたおよび/あるいはシステム制御装置で検出されたセンサーの
種類で異なってもよく、あるいは例えば使用者が設定してもよい。一部の実施形態では、
システムは24時間ごとに自動較正する初期設定の予定を有してもよい。
【0080】
150PPM-時間を用いた計算に基づき、
図4に示すように50PPMの変更によっ
て、150PPM/50PPM=3時間の最初の較正間隔が発生する。当然だが、他のP
PM-時間も想定される。例えば、100PPM-時間を用いた計算に基づくとき、
図5
に示すように25PPMの変更によって、100PPM/25=4時間の最初の較正間隔
が発生する。
【0081】
例示的実施形態では、較正スケジュールの基準値較正の頻度は、患者に供給されている
NOの濃度(例えば設定投与量)の変更の絶対値に基づいてもよいが、触媒型電気化学セ
ンサーが3つの端子を有しているかあるいは4つの端子を有しているかによって決めるこ
ともできる。少なくとも場合によっては、4端子型触媒型電気化学センサーは、基準値較
正の間隔が初期は変化しその後固定された較正スケジュールを有してもよい。少なくとも
場合によっては、3端子型触媒型電気化学センサーは、基準値較正間隔が固定された較正
スケジュールを有してもよい。
【0082】
理論に拘束される、あるいは本発明をいずれかの方法に制限する意図はないが、4端子
型触媒型電気化学センサー(例えばNOセンサー)の補助電極の目的は、感知電極に観察
される局所的影響(この局所的影響により、感知電極は対象ガス濃度を示していない出力
(例えば、電流、ADCカウントなど)を出し、および/あるいは出力に影響することが
ある)を相殺することであるが、非標準的に使用されると、補助電極および感知電極への
初期の上記局所的影響が同じではない場合がある、と今のところ考えられている。しかし
、長時間(例えば24時間)同じ濃度のNO(例えば、設定投与量が変わらない)に曝す
と、補助電極と感知電極の間のこの差は無視できるようになる場合がある。別の言い方を
すれば、4端子型触媒型電気化学センサー(例えばNOセンサー)の場合、設定投与量が
変更されると、初期は不安定状態でその後安定する場合がある。一方、3端子型触媒型電
気化学センサー(例えばNOセンサー)にはこの補助電極が無いため、この影響は生じな
い。このことが、同じ絶対値のNOの変更に対して、3端子型触媒型電気化学センサーお
よび4端子型触媒型電気化学センサーで異なる較正スケジュールが必要になる場合がある
ことの理由であると考えられる。これら局所的影響には、装置の初回の基準値較正の実施
からの温度変化、化学的変化、湿度、および/または物理的な内部抵抗の変化(例えば、
センサーの非標準的使用に固有のもの)などいくつかあるがこれらに限定されない。
【0083】
例えば
図4、5に示すように、基準値較正の間隔が設定投与量の変更の絶対値に対して
変化するのに合わせて、4端子型触媒型電気化学センサーの較正スケジュールを初期には
変え、その後は固定することができる。図のように、基準値較正の間隔が設定投与量の変
更の絶対値に対して変わるのに合わせて、較正スケジュールの基準値較正の間隔を、最初
は(例えば、3、6、12時間、4、8、16時間に)変え、その後(例えば、12、1
6時間に)固定することができる。
【0084】
別の実施例では、
図6、7に示すように、基準値較正の間隔が設定投与量の変更の絶対
値に対して変わるのに合わせて、3端子型触媒型電気化学センサーの較正スケジュールを
固定することができる。図のように、基準値較正の間隔が設定投与量の変更の絶対値に対
して変わるのに合わせて、較正スケジュールの基準値較正の間隔を(例えば、3時間、4
時間に)固定することができる。
【0085】
当然だが、患者に供給されるNOの設定投与量の変更の絶対値とは、0PPMのNO(
例えば、治療用NOを患者に供給する前のNO)からNOの最初の設定投与量までの変更
の絶対値、および設定投与量の変更(例えば、治療中の設定投与量の変更)のことを言う
。例示的実施形態では、設定投与量の変更の絶対値を考慮した較正スケジュールでは、初
めて治療を開始するときの設定投与量(例えば最初の設定投与量)の変更の絶対値を、治
療中に行う設定投与量の絶対値の変更と同じように取り扱うことができる。例えば、
図8
に示した、NOの初期設定投与量が25PPM(例えば、NOの設定投与量の変更の絶対
値が25PPM)である4端子型触媒型電気化学センサーの較正スケジュールは、
図9に
示した、NOの設定投与量が40PPMから15PPM(例えば、NOの設定投与量の変
更の絶対値が25PPM)に変更された同じ4端子型触媒型電気化学センサーの較正スケ
ジュールと同じにすることができる。
【0086】
例示的実施形態では、本発明のシステムおよび方法は、設定投与量の変更(例えば、最
初の設定投与量、治療中の設定投与量の変更など)を検出し、設定投与量の変更の絶対値
を決定し、決定した設定投与量の変更の絶対値を基に適切な較正スケジュールを選択およ
び/または実施する。例えば、使用者が最初の設定投与量を(例えば50PPMに)設定
するのに応じて、その設定投与量に望ましい自動較正スケジュールを、例えば装置が実行
可能な命令によって自動的に選択することができる。別の実施例では、使用者が設定投与
量を(例えば、75PPMから25PPMに、25PPMから50PPMに)変更するの
に応じて、その設定投与量の変更の絶対値に望ましい自動較正スケジュールを、例えば装
置が実行可能な命令によって自動的に選択することができる。
【0087】
図10を参照すると、例えば設定投与量の変更に応じて適切な再較正スケジュールを自
動的に実行するための例示的方法が示されており、治療用ガス供給システムはこの方法の
複数の工程の少なくとも一部を実行することができる。表1には、例示的な再較正スケジ
ュールの組み合わせが示されている。例えば、記憶装置(治療用ガス供給システムに接続
された記憶装置)に保存された設定投与量変更応答アルゴリズム1000は、装置が実行
可能な命令を含むことができ、この命令を、演算処理装置(治療用ガス供給システムに接
続された(作動可能なように接続された)演算処理装置)が、例えば設定投与量の変更に
応じて読み取り、実行することができる。この設定投与量の変更は初期設定の投与量でも
よく、および/または治療用ガスを患者に供給している間の設定投与量の変更でもよい。
簡単のため、下記の例では、設定投与量の初期の変更と治療用ガスを患者に供給中の変更
を区別している。これは単に分かり易さを目的としておりこれに限定されない。当業者に
は明らかだが、アルゴリズムあるいは公式が適用可能であれば、それらで再較正スケジュ
ールを作成してもよい。
【表1】
【0088】
ステップ1002では、最初の設定投与量を(例えば使用者が)入力することができ、
それに加えて/あるいはそれに代えて最初の設定投与量の値を記憶装置(治療用ガス供給
システム制御装置に接続された記憶装置)に保存することができる。これは設定投与量の
最初の値であるから、前の設定投与量の値を0と考えることもできる。場合によっては、
使用者が、例えば他の治療用ガス供給システムから、設定投与量を事前に取得してもよい
。その場合、使用者は、前の設定投与量(例えば、別の治療用ガス供給システムで患者に
供給されていた値)を(例えば使用者用インタフェースから)入力してもよく、前の設定
投与量値を記憶装置(治療用ガス供給システム制御装置に接続された記憶装置)に保存す
ることもできる。また、そのような場合、可能なら、治療用ガス供給システムは、他の治
療用ガス供給システム(例えば、治療用ガスを患者に供給していた以前の治療用ガス供給
システム)と、(例えば、治療用ガス供給システムに接続された通信部を介して)通信し
てもよく、また、前の設定投与量値(例えば、患者に供給されていた以前の設定投与量)
を(例えば、治療用ガス供給システムに接続された(作動可能なように接続された)通信
部を介して)通信し、記憶装置(治療用ガス供給システム制御装置に接続された記憶装置
)に保存することができる。
【0089】
例示的実施形態では、最初の自動較正を、最初の基準値を決定するために実行しても、
システムが停止している間(例えば、保存、点検、NOの容器の交換中)の何らかの変動
を補償するために実行してもよい。その後、使用者が入力した最初の設定投与量を用いて
、変更の絶対値(すなわち0PPMからの変更)および自動較正スケジュールを決定して
もよい。ガス供給システムが起動し稼働していていても設定投与量が0PPMの場合は、
自動較正を24時間毎に実行してもよい。そのような0PPM運転の間にセンサーが脱飽
和し、それによって変動の補償が必要になることもある。
【0090】
種々の実施形態では、治療用ガス供給システムが起動したら、その直後に初期設定の較
正(例えば24時間ごとの較正)を開始し、また、基準値較正を、起動の後だが使用者が
最初の設定投与量を入力できるようになる前に開始して、センサーが確実に較正され、正
しい基準値がシステム制御装置記憶部に保存されるようにしてもよい。そのような初期較
正を実施して、基準値をリセットしてもよく、および/またはシステムが保管されている
間の、あるいは治療用ガス供給システムの電源が前回の治療後かつ次回の治療に先だって
再度投入されたときの脱飽和を補償してもよい。
【0091】
そのような自動基準値較正の間に、使用者が使用前に確認しようとする場合、使用前の
確認を開始しているシステム制御装置は、患者への供給および性能試験の監視が、自動基
準値較正および何らかの再稼働の試みが完了するまで遅れることを使用者に自動的に知ら
せることができる。
【0092】
治療用ガス供給システム制御装置は、ステップ1004では、設定投与量の変更の絶対
値を決定し、例えば、ステップ1006では、例えば設定投与量の変更の絶対値が閾値を
満たしているか判断し、および/またはステップ1008では、所望の較正スケジュール
を選択することができる。設定投与量の変更の絶対値は、前の設定投与量から新しい設定
投与量を差し引いた絶対値を求めることによって決定することができる。例えば、演算処
理装置(治療用ガス供給システムと接続している演算処理装置)は、前の設定投与量値(
例えば、50PPMのNO、0PPMのNOなど)を読み取り、新しい設定投与量(例え
ば、25PPMのNO、40PPMのNOなど)を前の設定投与量から差し引くことがで
きる。決定された設定投与量の変更の絶対値を、必要なら正の値にすることができる。種
々の実施形態では、設定投与量の閾値をNOの5PPMとして、再較正スケジュールの決
定および/または選択を開始する。
【0093】
ステップ1006では、治療用ガス供給システム制御装置により、望ましい再較正スケ
ジュールの選択および/または実施を開始するための閾値(例えば5PPMのNO)が満
たされているかどうか判断してもよい。この閾値は、設定投与量の変更の最小絶対値およ
び/または供給された設定投与量の累積量(例えば、PPM-時間)に基づいて決めるこ
とができ、この累積値は150PPM-時間でもよい。望ましい較正スケジュールの選択
および/または実施を開始するための閾値は、設定投与量変更応答アルゴリズム1000
に含まれていてもよく、そのようにすると、治療用ガス供給システムは、設定投与量の変
更の絶対値および/または設定投与量の累積供給量が閾値を下回っていれば、新しい較正
スケジュールを選択および/または実行しなくてもよく、および/またはもっと後に設定
投与量の変更および/または新たな設定投与量の供給(例えば、供給された設定投与量の
累積量への追加)があった場合に、新しい設定投与量値を記憶装置に保存してもよい。設
定投与量の変更が小さいとき、および/または供給された設定投与量の累積値が小さいと
きに、設定投与量の変更の絶対値が閾値(例えば5PPM)を越えていることの確認を行
い、較正スケジュールの選択および/または実施を不要としてもよい。
【0094】
例えば、設定投与量の変更の絶対値が5PPM未満なら、実質的な変動にならない場合
があり、したがって5PPM以下の変更では、再較正スケジュールの再計算または再判定
は開始されない。供給済み設定投与量の累積量が100PPM-時間未満(例えば、20
PPMを5時間供給)の別の例では、実質的な変動にならない場合がある。さらに別の例
で、供給された設定投与量の累積量が100PPM-時間未満(例えば、20PPMを5
時間供給)であることと設定投与量の変更絶対値が5PPM未満であることとが合わさっ
て、実質的な変動にならない場合がある。閾値が満たされない場合、治療用ガス供給シス
テムは何もせず、設定投与量変更が発生したら、ステップ1012に進むことができる。
閾値が満たされたら、治療用ガス供給システムは適切な較正スケジュールの選択および/
または実施に進むことができる。
【0095】
例示的実施形態では、ステップ1008において、演算処理装置は、決定した設定投与
量値の変更の絶対値に適した較正スケジュールを、例えば記憶装置(治療用ガス供給シス
テムに接続された記憶装置)に保存された較正スケジュールから、決定した設定投与量値
の変更の絶対値に基づき選択することができる。
【0096】
ステップ1010では、治療用ガス供給システムは、選択された較正スケジュールを実
施することができ、その結果、基準値較正が、選択された較正スケジュールで規定された
間隔で(例えば自動的に)実施される。例えば、選択された較正スケジュールが実施され
るとき、試料採取装置は、例えば基準値較正を実行する手順を実施することができ、この
手順では、試料採取ポンプを作動させて、および/または気体試料採取弁(例えば3方弁
など)を開放して外気の気体試料(例えば調整された室内空気)を採取し、この外気の気
体試料をガスセンサー(例えば、触媒型電気化学NOガスセンサー)にある時間曝し、(
例えばNOが0PPMの)外気中の対象ガス(例えばNO)の濃度を示す情報をセンサー
から取得し、例えば、対象ガスが0PPMであることを示す最初および/または前回の情
報を、対象ガスが0PPMであることを示す取得した情報で置き換え、初期および/また
は前回の較正線の傾き(例えば、最初の0点とスパン較正点とを繋いだ最初の較正線の傾
き、あるいは前回の0点と前回のスパン較正点とを繋いだ前回の較正線の傾き)を用いて
、新しい較正線を作成および/または既存の較正線を変更する。較正線を、基準値較正の
0切片および最初の較正の傾きとして制御器記憶部に保存して、公式Y=mx+bの値を
提供してもよい。「m」は傾き、「b」は0切片である。較正線を、0切片を含む較正範
囲全体のデータ点の値の表として制御器記憶部に保存してもよい。基準再較正で決定され
た0切片の変化を用いて、その後、上記公式および/または保存されたデータ点を修正し
て、新しい較正線を表すこともできる。
【0097】
ステップ1012では、治療用ガス供給システムは、治療用ガスを患者に供給しつつ、
設定投与量の変更を監視および/または検出することができる。例えば治療用ガス供給シ
ステムは、使用者が入力する設定投与量の変更に基づいて、設定投与量の値の変化を検出
することができる。当然だが、設定投与量の変更が検出されなければ、治療用ガス供給シ
ステムは、設定投与量の変更の検出を続けることができ、および/または設定投与量の変
更の検出を待ち続けることができる。設定投与量の変更が検出されたら、治療用ガス供給
システムは、ステップ1004で記述した工程を実行することができる。
較正の延期
【0098】
1つ以上の実施形態では、較正が実施される予定の時間に警報が作動している場合、較
正をある時間延期してもよい。システム制御装置は、警報が作動していることを判断して
もよく、継続的に警報の有無を再確認してもよく、および/または較正動作の実施をある
設定時間だけ遅らせ(例えば、警報が解消された後に再開)、設定時間の終了後にその警
報を再度確認してもよい。実施形態では、システム制御装置は警報を監視してもよく、警
報がいつ解消されたかを確認してもよく、そのときに制御装置は、例えば、その警報が再
発しないことを確認するために自動較正を所定の時間だけ遅らせてもよい。また、システ
ム制御装置は、較正が実行される以前の所定時間枠内に、警報が以前に作動したかどうか
判断してもよく、上記警報の作動が検出されれば較正を延期してもよく、上記警報の作動
が検出されなければ較正を実行してもよい。また制御装置は、その他の作動の発生および
/または別な理由で自動較正を妨害し、その状況を解消するのを遅れさせるような装置外
の状況を監視してもよい。またシステム制御装置は、較正が実行される時刻に、使用者が
治療用ガス供給システムを操作しているかあるいは所定時間枠内に操作したかを検出して
もよく、使用者が治療用ガス供給システムを操作しているかあるいは所定時間枠内に操作
した場合、較正を延期し、使用者が治療用ガス供給システムを操作していないかあるいは
所定時間枠内に操作しなかった場合、較正を実行する。
【0099】
1つ以上の実施形態では、較正が実施される予定の時間に使用者が治療用ガス供給シス
テムを操作している場合、較正をある時間だけ延期してもよい。操作には、使用者の入力
操作、治療用ガス供給源の交換、気体試料調整器の交換、取り付け台車から供給システム
の取り外し、ガスの置換などを含むがこれらに限定されない。システム制御装置は使用者
が供給システムを操作していることを決定し、継続的に警報の有無を再確認し、および/
または較正動作の開始を設定時間だけ(例えば最後の操作の終了後まで)遅らせ、設定時
間の終了後に使用者の操作を再度確認してもよい。
【0100】
1つ以上の実施形態では、外気による基準値の再較正の間のセンサー出力が、例えばH
2S、NO2などの妨害ガスの存在を示した場合、較正をある時間延期してもよい。妨害
ガスは洗浄製品、内部に溜まっていた気体、システム内の漏れ、または他の汚染物質源に
由来する場合がある。そのような場合、再較正は中断され、および/あるいは中止されて
、外気を清浄にするまで1、5、10、または15分間延期される。少なくとも場合によ
っては、較正の延期が必要になる場合がある。理由は、この時間のセンサー出力を基にし
た新しい基準値較正は、必ずしもセンサー変動を示すとは限らず、その結果、新しい較正
線が不正確になってしまう。それによって、不適切な投与情報が使用者に表示されること
になる。少なくとも場合によって、このセンサー出力は破棄され、変動の補償に用いられ
ない。種々の実施形態では、システム制御装置は、較正が実行される時刻に、1種以上の
妨害ガスがセンサー出力を閾値範囲外にしているかあるいは所定時間枠内に範囲外にした
ことを検出してもよく、較正が実行される時刻に、センサー出力が範囲外であるかあるい
は所定時間枠内に範囲外になった場合、較正は延期され、センサー出力が範囲外ではない
あるいは所定時間枠内に範囲外にならなかった場合、較正は実行される。種々の実施形態
では、システム制御装置は、較正が実行される時刻に、所定時間枠内のセンサー出力が閾
値範囲外であることの検出によって、1種以上の妨害ガスが較正を延期しているあるいは
延期したかどうかを検出してもよく、較正が実行される時刻に、所定時間枠内のセンサー
出力が依然範囲外であれば、較正は再度延期されてもよく、所定時間枠内のセンサー出力
が範囲外でなければ、較正は実行されてもよい。
【0101】
例示的実施形態では、システム制御装置は、センサー出力が、変動によって想定される
範囲(例えば、ADCカウントの0から655まで変動)を外れることがあるので、セン
サーがいつ妨害ガスの影響を受けた可能性があるかを判断することができる。例えば、シ
ステム制御装置は、センサー出力が想定される出力閾値より大きい場合、較正を延期する
ことができる。少なくとも一部の実施形態では、想定される出力閾値をADCカウントの
0から655までに設定することができ、センサー出力がこの想定される出力閾値を外れ
たら、システム制御装置は、較正を、ある時間(例えば、1、5、10、または15分)
延期することができる。センサーの較正はその後に行う。しかし、センサー出力が上記の
想定される出力閾値を再度越えたら、較正を再度延期することができる。必要であればこ
れを繰り返すことができ、そのようにすることによって、妨害ガスを確実に消散させる(
例えば、外気を清浄にする)。
較正スケジュール(回数)
【0102】
例示的実施形態では、1つまたは少数の較正スケジュールを記憶装置(治療用ガス供給
システムに接続された記憶装置)に保存してもよい。例えば、記憶装置使用量の節約およ
び/または煩雑さの低減のために、限られた定数の較正スケジュールが利用可能でもよい
。例えば、少なくとも一部の例示的実施形態では、較正スケジュールを記憶装置に1つだ
け保存してもよく、および/あるいはこの較正スケジュールは、大半の使用で見られる設
定投与量の変更の最大絶対値に対処できるように選択してもよい。次にステップ1008
では、この設定投与量(例えば、大半の時間に見られる最大設定投与量)に対する較正ス
ケジュールを用い、この予定だけが選択可能でもよい。このようにすることは、記憶装置
使用量および/または煩雑さが低減できる点で有利であり、センサー変動に対処する較正
スケジュールを実施しつつ、センサーが非作動になる時間の回数および/またはその長さ
を減らすことができる。例えば、全ての治療用ガス供給の大多数(例えば99%)のNO
の設定投与量は約50PPM未満でよいので、設定投与量の変更の絶対値が50PPMに
基づく較正スケジュールを使用することによって、最悪の事態に対処できると共に、セン
サーの非作動時間を短くできるという利点がある。この実施例に従えば、設定投与量の変
更の絶対値が例えば20PPMであれば、使用される較正スケジュールは、設定投与量の
変更の絶対値が50PPMの場合の較正スケジュールでもよい。
試料弁
【0103】
例示的実施形態では、上記気体試料採取弁(例えば
図1A、1Bに示した弁118)を
3方弁にして、この3方弁を、ガスセンサー(例えばNOセンサー)、呼吸回路(例えば
、
図1に示した試料採取経路124経由の回路)内の気体、および調整されていてもよい
外気などの較正ガス(例えば、
図1に示した試料採取経路134経由のガス)と流体連通
状態にすることができる。3方弁を用いると、弁が第1の位置で開放されたときに、セン
サーを呼吸回路内のガスの試料に曝すことができ、この間、較正ガス流は遮られる。また
、弁が第2の位置で開放されたとき、センサーを較正ガス(例えば調整された外気)に曝
すことができ、この間、呼吸回路の試料ガス流は遮られる。上記構成を利用すると、基準
値較正が実施されるときに、呼吸回路試料経路を呼吸回路および/または治療用供給シス
テムから切り離す必要がない。このような構成が無いと、使用者は呼吸回路試料経路を呼
吸回路および/または治療用供給システムから切り離さなければならない場合があり、一
般に望ましくない。呼吸回路に変更を加えると、回路および回路に接続された構成要素を
損傷する危険性が増え、患者に対する危険性が増え、および/または治療用ガスの患者へ
の供給に影響を与えることがあるからである。
【0104】
少なくとも場合によって、本発明のシステムおよび方法は、例えば不適切な較正を防止
するために、気体試料採取弁が正しく機能しているかどうかを検出することができる。こ
れが検出できることは、自動的に実施される基準値較正にとって特に重要になる。較正中
のガスセンサーの測定値を監視する使用者が不在の場合があるからである。例示的実施形
態では、治療用ガス供給システムは、気体試料採取弁が正しく機能しているかどうかを、
弁の電流(例えば、作動時に流れる電流など)を監視すること、および/または試料採取
経路(例えば、
図1A、1Bに示した試料採取経路134および/または124)の流量
および/または圧力を監視することによって検出することができる。例えば、治療用ガス
供給システムは、気体試料採取弁が適切に機能しているかどうかを、試料採取ポンプの少
し上流の気体試料経路の圧力および/または流量を監視することによって検出することが
できる。外気試料および/またはスパン試料を取り入れる経路(例えば、
図1Aに示した
試料経路134)の圧力および/または流量は、患者呼吸回路の試料を取り入れる経路(
例えば、
図1Aに示した試料経路124)の圧力および/または流量とは異なる場合があ
るためである。種々の実施形態では、較正の直前のADCカウントを一時記憶装置に保存
して、基準値較正中のADCカウントと比較してもよい。その場合、ADCカウントの小
さな変化は、弁が正しく作動しなかったことを示している可能性がある。正しく作動しな
かったと検出された場合、較正を延期、停止することができ、および/または取り消して
もよい。
使用者への通知
【0105】
例示的実施形態では、使用者が、較正中の値を設定投与量測定値と誤解しないように、
較正中は表示器に何も表示しなくてもよい。そのような混乱を避けるために、使用者に、
較正が実施されていることを示すメッセージを表示しても、および/または電子医療記録
(EMR)に記録してもよく、システムの動作を使用者に知らせてもよい。例えば、使用
者に、呼吸回路126の吸気経路127の濃度監視が現在稼働していないことを、例えば
適切なメッセージおよび/または音声表示器によって知らせることができる。
【0106】
例示的実施形態では、較正の間に、設定投与量とセンサーで測定した濃度の相違によっ
て警報が発生することを、システムの警報を非作動にして防止してもよい。これを警報停
電と呼ぶことがある。この警報停電は、測定された濃度(例えば、使用者に表示された濃
度)が設定投与量と異なるときに警報が出ると予測している使用者を混乱させるかもしれ
ない。較正の間(例えば、5~10分間)警報は無効であるというメッセージを表示して
、使用者に適切な情報を知らせるようにしてもよい。
【0107】
例示的実施形態では、システムは、較正が失敗したことを使用者に警告してもよい。こ
の警告は、弁が正しく作動していない場合、あるいは較正時の複数の試みによって、セン
サー値が閾値を外れた場合に発生することがある。失敗メッセージを表示するまでの較正
の再試行の回数(例えば、4、5、6など)は使用者が選択してもよく、あるいは予め決
定してシステム制御装置に直接記載されていても、あるいは記憶装置に保存されていても
よい。
変動の概要
【0108】
上記のように、理論に拘束される、あるいは本発明の範囲を何らかの方法に限定する意
図はないが、感知電極は対象ガス(例えばNO)に曝されるが補助電極は曝されないとい
うことを除き、補助電極および感知電極はほぼ同じ条件下に置かれるよう意図されている
が、局所的影響があるようで、少なくとも最初の間は補助電極および感知電極は同じ条件
下に置かれないことがあると現在は考えられている。これら局所的影響には、温度変化、
化学的変化、湿度、および/または装置に対する最初の基準値較正(これは例えば、セン
サーの非標準的な使用法に特有の基準値較正)の実施以降の物理的な内部抵抗の変化など
、いくつかあるがこれらに限定されない。
【0109】
化学的影響に関して考えられることは、触媒型電気化学ガスセンサー(例えばNOセン
サー)内の電解質は、酸化物(例えば、NOの窒素の酸化物)で汚染される場合がある。
というのは、例えば、使用されるNOの濃度は、これらの種類のセンサーが従来通りに曝
される濃度よりも実質的に高い場合があること、および/または治療用NO供給に使用さ
れるときのこれらセンサーの被曝時間は、これらセンサーが毒性ガス放出測定値に従来通
りに用いられるときの被曝時間よりも実質的に長い場合があるからである。少なくとも場
合によっては、この局所的影響は、センサーを非標準的に使用するときに見られるセンサ
ー変動の原因、主原因になる可能性があると考えられる。
【0110】
温度の影響に関し、
図2Aを参照すると、連続運転で使用される3端子型電気化学セン
サーの基準値信号は、時間および温度により指数関数的に増加する(例えば、温度が30
℃上昇するごとにほぼ2倍になる)という傾向があることが知られている。温度変化に対
するこの信号変化の割合(百分率)は、基準値信号出力と所与の対象ガス濃度に対する出
力の間で類似であることが知られている。補助電極を備える電気化学センサー(例えば4
端子型電気化学センサー)では、補助電極218は、反応性ガスに曝されることなく感知
電極202の近傍に配置できるため、補助電極218および感知電極202は同じ温度に
できる。同じ温度に置かれた補助電極218および感知電極202(かつ、補助電極21
8は対象ガスに曝されず、感知電極202は対象ガスに曝される)により、補助電極21
8の信号を感知電極202から引き算して、温度の影響による長期の変動を補償すること
ができる。上記技術は、いくつかの状況(例えば、これらセンサーの従来の使用方法)に
用いることができるが、吸入NO治療の場合には、基準値変動を十分に修正しない場合が
あることが分かった。
【0111】
幅広い研究により、これら触媒型電気化学センサー(例えば、低濃度のNOで使用され
る、あるいは短時間の使用に適したセンサー)を吸入NO治療に非標準的に使用するとき
、変動は、感知電極202と異なる速度で変動する補助電極218、補助電極218で検
出されない感知電極202の局所的温度変化、および/または感知電極202と異なる速
度で温度上昇する補助電極218と関連する場合があるということが分かった。
【0112】
また、これら温度変化は、1つ以上の電極(例えば、感知電極202、対電極206な
ど)部で発熱(または吸熱)反応する対象ガス(NO)によって生じ、および/または増
幅される場合があるということが分かった。場合によって、これら温度変化は、これらセ
ンサーを従来の方法で使用するときには意味のあるものではないことがあるが、これらセ
ンサーを吸入NO治療に用いる非標準使用の場合には意味を持つ変化になる場合がある。
その理由は、例えば、用いられるNOの濃度が、これらの種類のセンサーが従来的に曝さ
れる可能性がある濃度よりも実質的に高くなる場合があること、これに加えてあるいはこ
れに代えて治療用NO供給に使用されるときのこれらセンサーの暴露時間は、毒性ガス放
出測定に従来的に使用されるときにあり得る被曝時間よりも実質的に長いためである。
【0113】
上記に着目すると、感知電極202の温度の局所変化は、補助電極218では検出され
ないかあるいは異なる変化率で検出される場合がある。補助電極218では発生しない感
知電極202のこの局所的温度変化により、セル「基準電流」変動は、上記のように単に
補助電極218の信号を感知電極202から引き算することで修正されない場合がある。
さらに、研究により分かったことは、反応性ガスが(例えば同じ濃度で)、十分に長い時
間(例えば24時間)供給されると、補助電極218の温度は最終的に感知電極202の
温度と同じになる場合がある。例えば、この理由は、電気化学センサー200が最終的に
安定状態、すなわち平衡状態などになる場合があるからである。
温度補償
【0114】
例示的実施形態では、上記較正過程に代えてあるいはそれと組み合わせて、上記の驚く
べき現象の少なくともいくつかに対処するために、感知電極の(例えば、感知されている
NOの設定濃度に基づいて特定の時間に)局所温度を(例えば熱伝導解析などを用いて数
学的に)推定することができる。さらに、推定温度において補助電極218によって一般
に発生する(例えば、実験的に決定された)既知の信号を、感知電極によって発生した信
号から引き算することができる。この技術を用いて、感知電極の局所的な基準値変動を、
特定の時間に補償することができる。安定状態になった後に、温度に関係する基準値変動
を、上記のように単に補助電極218の信号を感知電極202から引き算することによっ
て補償することができる。
【0115】
例えば、感知電極の局所温度および/または時間経過に対する電気化学センサー200
の熱分布(すなわち温度のばらつき)を決定するために、熱電導方程式を用いることがで
きる。例えば、補助電極218が感知電極202と同じ温度であれば、補助電極218か
らの予測出力信号を感知電極202から引き算することによって、時間経過に対するこの
熱分布を補償することができる。
【0116】
別の実施例では、種々の時間における感知電極202の局所温度を、他の方法を用いて
決定および/または補償することができる。例えば、集中容量モデルを用いることができ
る。別の実施例では、経験的知見を用いることができる。
【0117】
例示的実施形態では、上記現象の少なくとも一部に対処するために、電気化学センサー
200を冷却することができる。この冷却は、発熱反応が生じたら、発生熱をその冷却温
度で有効に抑制できる実質的に十分な冷却でなければならない場合がある。あるいは、こ
の冷却は、電気化学センサー200の安定温度をこの冷却温度で有効に抑制できる実質的
に十分な冷却でなければならない場合がある。
【0118】
例示的実施形態では、上記現象の少なくとも一部に対処するために、電気化学センサー
200の安定温度および/または感知電極の局所温度(例えば安定状態に達したときの局
所温度)を(例えば、数学的に、実験的に)決定することができ、次に電気化学センサー
200を、その温度またはそれに近い温度まで予備加熱して、例えば電気化学センサー2
00が安定状態に達するのに必要な時間を短縮することができる。例えば、電気化学セン
サーを、既知濃度の場合の感知電極の既知温度まで加熱し、次にその既知濃度が加えられ
たときに、熱源を(例えば、感知電極の局所温度ではなく)電気化学センサーの安定状態
まで下げることができる。
【0119】
例示的実施形態では、上記現象の少なくとも一部に対処するために、(同じNO供給流
に使用される同じまたは異なるセンサーの)第2の感知電極の電源を間欠的に入れて、供
給されている濃度に相応しい信号を出力してもよい。感知電極とこの第2の感知電極の信
号出力の差を次に除去して(例えば、この差は、温度に関係した変動に関係するため)、
0変動となるように補償することができる。第2の感知電極の使用頻度は時間に応じて調
節することができる。明らかだが、使用されるセンサー(例えば、第1の感知電極を有す
る第1の電気化学センサー、第2の感知電極を備える第2の電気化学センサーなど)は、
3端子型(例えば補助電極無し)でもよい。
複式NOセンサー
【0120】
例示的実施形態では、治療用ガス供給システムは2つ以上の触媒型電気化学センサー(
例えば2つ以上のNOセンサー)を備え、一方のセンサーを較正中(例えば基準値較正な
ど)に、他方のセンサーを呼吸回路の試料ガスに曝すことができる。この技術を用いて、
一方のセンサーが作動していないとき(例えば、較正を実行中、基準値較正を実行中など
)に、他方のセンサーを稼働させることができる。したがって、使用者には、非作動時間
は較正の間に観察されず、患者が投与されている治療用ガスの濃度が所望の設定投与量で
あるという確認を、中断無く、例えばユーザーインタフェースに提供される。例示的実施
形態では、この2つのセンサーを間欠的に監視に用いて(例えば、一方のセンサーを試料
ガスに曝し、他方のセンサーを濃度0の気体に曝して)、どちらのセンサーも飽和しない
ようにすることができる。例示的実施形態では、第2のセンサーを用いて、0較正と同じ
予定に基づいて、変動を決定することができる。
【0121】
2つのセンサーを用いて試料ガスを連続的に監視するのとは異なり、間欠的な監視では
センサーの老朽化速度が減少し、センサーの故障までの時間が延びる。センサーを低湿度
の気体に連続的に曝すと、センサー電解質を乾燥させてしまう。一方のセンサーを第1の
すなわち主センサーとして、第2のセンサーを予備センサーとして使用すると、これらの
センサーは異なる条件に異なる時間置かれることになる。また、両方のセンサーを連続的
に曝すと、両方のセンサーの変動が同程度に増え、照合確認が不正確になり、両センサー
がほぼ同時に故障することになるが、予備センサーを、較正の間に吸気経路内の採取装置
の気体に間欠的に曝すと、センサーの寿命が延び、主センサーを変動が少ない予備センサ
ーで照合確認できるようになる。また、予備センサーを間欠的に使用すると、このセンサ
ーの対象ガスによる飽和も避けられる。照合確認によって、2つのセンサーが2つの独立
した較正値を出力できるようになり、これを比較して、変動の相対量が閾値より大きいか
どうかを決定することができる。暴露と老朽化が同等で、両センサーの変動が同程度に大
きすぎる場合には、照合確認は、変動が実際よりも少ない印象を与えることになるであろ
う。
試料ガス(濃度低減)
【0122】
例示的実施形態では、触媒型電気化学センサー(例えばNOセンサー)を、かなり高濃
度(例えば>5PPM)の対象ガス(例えばNO)を含むことがある呼吸回路からの試料
ガスに曝す前に、対象ガス(例えばNO)の濃度が既知量だけ低下するように試料ガスを
薄める(比測定として知られている)ことができる。その後、センサーの出力に、対象ガ
スを希釈した既知の量を考慮することにより、治療用ガス(例えばNO)が所望の濃度(
例えば所望の設定投与量)で供給されているという確認を使用者に提供することができる
。センサー(例えばNOセンサー)に曝される対象ガス(例えばNO)の濃度を下げるこ
とで患者に供給されている設定投与量を監視できるとはいえ、変動は減るか変動が無くな
る可能性がある。
【0123】
例えば、(例えば非活性ガス、窒素ガス流などの供給源からの)希釈ガス流を、呼吸回
路からの試料ガス流量に比例して混合し、試料ガスのNOの濃度を下げることができる。
試料ガス流量は、例えば、既知流量の試料ガスを試料ポンプで吸引する、例えば弁で流量
を制御する、かつ/あるいは試料ガス流量センサーで流量を測定することによって知るこ
とができる。希釈ガス流量(例えば非活性ガス、窒素ガス流などの供給源からの)は、例
えばポンプによって供給および/または吸引する、流量センサーを用いて測定する、かつ
/または例えば弁でガスの流速を制御することによって知ることができる。
【0124】
例示的実施形態では、治療用ガス供給システムは、例えば装置が実行可能な命令を用い
、(例えば窒素気体容器の)窒素など既知濃度の希釈ガスと、試料ガス流量センサーおよ
び/または試料ポンプの既知流量を用いた患者回路からの試料ガス流量と、ガス流量セン
サー、希釈ガスポンプの希釈ガスの既知流量および/または流量制御器からの希釈ガスの
既知流量によって報告される希釈ガス流量を用いて試料ガス濃度低減の計算を実行し、試
料ガスを希釈ガスと混合することができる。そのようにすると、NOセンサー部の最終N
O濃度は患者に供給される濃度の分画濃度となる。平均濃度を低減することにより、長期
の変動を最小にすることになる。(例えば弁など)
間欠監視
【0125】
例示的実施形態では、触媒型電気化学ガスセンサー(例えばNOセンサー)の変動を少
なくとも低減するために、患者に供給されている治療用ガスの濃度(例えば、NOの設定
投与量)を間欠的に監視することがあり、その際、ガスセンサーは、対象ガスに連続的で
はなく限られた時間曝される。種々の実施形態では、暴露時間はセンサーの応答時間より
僅かに長くすることがある。対象ガス濃度を(例えば連続的ではなく)間欠的に監視する
ことによって、センサーを対象ガスに曝す時間の長さを短縮することができ、対象ガスに
曝していない間は、センサーを外気(例えば調整された外気)に曝すことができる。これ
は、応答時間が実質的に速い(例えば数秒、5秒未満など)触媒型電気化学ガスセンサー
(例えばNOセンサー)を用いて達成することができる。
【0126】
例えば、応答時間が約15秒の触媒型電気化学センサー(例えばNOセンサー)ではな
く、応答時間が約5秒の触媒型センサーを用いることがあり、その場合、センサーを対象
ガス(例えば高濃度のNO)に5秒間、外気(例えば調整された外気)に10秒間および
/または少なくとも残り10秒の一部の時間曝される。対象ガスに曝していない間に使用
者インタフェースによって使用者に表示される出力は、暴露中に測定された値でもよい。
この技術を用いることによってセンサーの変動が減るか無くなり、同じ所望の情報(例え
ば、所望の設定投与量が供給されていることの確認)を効果的に使用者に提供することも
できる。
【0127】
当業者には明らかだが、本発明の薬剤ガスを供給する治療用ガス供給システムおよび方
法に多くの変更および改良を実施することができ、それによって既知の所望の量の薬剤ガ
スを患者に導入する方法およびシステムが改良されるが、それらの全てが、以下の特許請
求の範囲に規定された本発明の範囲および概念の範囲に入る。すなわち、本発明は以下の
特許請求の範囲およびその均等物によってのみ制限される。
【0128】
本明細書全体で、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、「
例示的実施形態」、「複数の例示的実施形態」および/または「一実施形態」による参照
は、その実施形態との関連で記述された具体的な特徴、構造、材料、または特性が、本発
明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。すなわち、本明細書のいろい
ろな場所に現れる「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では、」、「一実施形
態では」、「例示的実施形態」、「複数の例示的実施形態」、および/または「一実施形
態では」などの表現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、こ
れらの具体的な特徴、構造、材料、または特性は、任意の適切な方法で1つ以上の実施形
態に組み合わせることができる。
【0129】
明らかだが、記述したどの工程も、本発明の範囲から逸脱せずに再構成、分離、および
/または結合することができる。簡単のため、工程は逐次的に提示されていることがある
。これは単に簡単にするためであり、これに限定されない。さらに、明らかだが、記述し
た本発明のどの要素および/または実施形態も、本発明の範囲から逸脱せずに再構成、分
離、および/または組み合わせることができる。簡単のため、種々の要素は別々に記述さ
れていることがある。これは単に簡単にするためであり、これに限定されない。明らかだ
が、場合によって見出しを使用している。これは単に簡単にするためであり、これに限定
されない。
【0130】
本明細書の発明を具体的な実施形態を参照しながら記述してきたが、当然ながら、これ
ら実施形態は本発明の原理および応用の単なる説明である。当業者には明らかだが、本発
明の方法および装置に、本発明の概念および範囲から逸脱せずに、種々の改良および変更
を実施することができる。すなわち、本発明には、添付の特許請求の範囲およびその均等
物の範囲の改良および変更が含まれるものとする。