(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】3次元距離測定システムで使用するためのラインパターンプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20231204BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20231204BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20231204BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20231204BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G02B5/00 Z
G02B3/00 A
G02B5/18
G03B21/00 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101698
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502429109
【氏名又は名称】奇景光電股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】蕭 名淑
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108227231(CN,A)
【文献】特開2019-113530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G02B 5/00
G02B 3/00
G02B 5/18
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラインパターンプロジェクタであって、
光ビームを発する複数の光源を含み、第1の方向に沿って配列された光源アレイと、
前記光ビームをコリメートするように構成されたレンズと、
前記コリメートされた光ビームを回折し、それによって照明パターンを投影するように構成された回折マイクロレンズアレイ(MLA)であって、前記第1の方向に関する前記回折MLAのレンズピッチは、第2の方向に関する前記回折MLAのレンズピッチよりも広い、回折MLAと
を備え、
ここで、前記照明パターンは、前記光源によって投影される複数のドットパターンを重ね合わせることによって形成され、前記照明パターンは、前記第1の方向に複数のライン光パターンを含む、
ラインパターンプロジェクタ。
【請求項2】
前記光源の各々が垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)である、請求項1に記載のラインパターンプロジェクタ。
【請求項3】
隣接する2つの光源間の光源ピッチが規則的である、請求項1に記載のラインパターンプロジェクタ。
【請求項4】
前記回折MLAの最大サグ高さが約33.69umであり、前記回折MLAの最大傾斜が約73度である、請求項1に記載のラインパターンプロジェクタ。
【請求項5】
前記第1の方向は、前記第2の方向に垂直である、請求項1に記載のラインパターンプロジェクタ。
【請求項6】
前記第1の方向は水平方向であり、前記第2の方向は垂直方向である、請求項1に記載のラインパターンプロジェクタ。
【請求項7】
光学距離測定システムであって、
少なくとも1つの光源と拡散器とを含み、第1の照明パターンを投影するように構成された投光イルミネータと、
第2の照明パターンを投影するように構成されたラインパターンプロジェクタであって、
光ビームを発する複数の光源を含み、第1の方向に沿って配列された光源アレイと、
前記光ビームをコリメートするように構成されたレンズと、
前記コリメートされた光ビームを回折し、それによって前記第2の照明パターンを投影するように構成された回折マイクロレンズアレイ(MLA)であって、前記第1の方向に関する前記回折MLAのレンズピッチは、第2の方向に関する前記回折MLAのレンズピッチよりも広い、回折MLAと
を備え、ここで、前記第2の照明パターンは、前記光源によって投影される複数のドットパターンを重ね合わせることによって形成され、前記第1の方向に複数のライン光パターンを含む、
ラインパターンプロジェクタと、
物体から反射された照明パターンの画像を取り込むように構成された画像取込装置と
を備える光学距離測定システム。
【請求項8】
前記投光イルミネータの前記拡散器がマイクロレンズアレイである、請求項7に記載の光学距離測定システム。
【請求項9】
前記投光イルミネータの前記拡散器が回折光学素子である、請求項7に記載の光学距離測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元光学距離測定に関し、より詳細には、3次元光学距離測定システムで使用するためのラインパターンプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的に、飛行時間(ToF)技術に基づく3次元光学距離測定は、物体または形状の距離測定を提供するために、撮像センサと共に投光イルミネータに依存する。しかしながら、投光イルミネータの投射距離は、その光エネルギーが弱いためかなり短い。
【0003】
これを踏まえて、高出力照明パターンおよびかなりの投影距離を提供することができるパターンプロジェクタを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0178915号明細書
【文献】米国特許出願公開第2019/0068853号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0356484号明細書
【文献】中国特許出願公開第107589623号明細書
【発明の概要】
【0005】
このことを考慮して、本発明の1つの目的は、3次元光学距離測定システムで使用するための規則的なラインパターンプロジェクタを提供することである。本発明の実施形態は、規則的に分布するラインを有する照明パターンを生成するために、レンズおよび回折マイクロレンズアレイと共に光源アレイに依存し得る。本発明の実施形態により、光源アレイの異なる光源によって生成されるドットパターンを重ね合わせて、複数のライン光パターンを有する照明パターンを形成することを可能にする。
【0006】
一実施形態によれば、ラインパターンプロジェクタが提供される。ラインパターンプロジェクタは、光源アレイと、レンズと、回折マイクロレンズアレイとを含む。光源アレイは、光ビームを発する複数の光源を含み、複数の光源は、第1の方向に沿って配置される。レンズは、光ビームをコリメートするように構成される。回折マイクロレンズアレイ(MLA)は、コリメートされた光ビームを回折し、それによって照明パターンを投影するように構成され、第1の方向に関する回折MLAのレンズピッチは、第2の方向に関する回折MLAのレンズピッチよりも広い。照明パターンは、光源によって投影される複数のドットパターンを重ね合わせることによって形成され、照明パターンは、第1の方向に複数のライン光パターンを含む。
【0007】
一実施形態によれば、光学距離測定システムが提供される。光学距離測定システムは、投光イルミネータと、ラインパターンプロジェクタと、画像取込装置とを備える。投光イルミネータは、少なくとも1つの光源と、拡散器とを備える。投光イルミネータは、第1の照明パターンを投影するように構成される。ラインパターンプロジェクタは、第2の照明パターンを投影するように構成され、光源アレイと、レンズと、回折マイクロレンズアレイ(MLA)とを備える。光源アレイは、光ビームを発する複数の光源を含み、複数の光源は、第1の方向に沿って配置される。レンズは、光ビームをコリメートするように構成される。回折MLAは、コリメートされた光ビームを回折し、それによって第2の照明パターンを投影するように構成され、第1の方向に関する回折MLAのレンズピッチは、第2の方向に関する回折MLAのレンズピッチよりも広く、第2の照明パターンは、光源によって投影される複数のドットパターンを重ね合わせることによって形成され、第1の方向に複数のライン光パターンを含む。画像取込装置は、物体から反射された照明パターンの画像を取り込むように構成される。
【0008】
本発明のこれらおよび他の目的は、様々な図および図面に示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に、当業者には疑いなく明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態による光学距離測定システムの概略図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態によるドットパターンプロジェクタおよび投光イルミネータの実装形態を示す。
【
図3】本発明の一実施形態によるドットパターンプロジェクタの詳細な概略図を示す。
【
図4A】本発明の一実施形態によるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図4B】本発明の一実施形態によるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図4C】本発明の一実施形態によるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図4D】本発明の一実施形態によるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図4E】本発明の一実施形態によるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図5A】本発明の一実施形態によるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図5B】本発明の一実施形態によるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図5C】本発明の一実施形態によるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図5D】本発明の一実施形態によるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図5E】本発明の一実施形態によるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図6A】本発明の異なる実施形態による、光源アレイの配置が照明パターンのドット分布にどのように影響を及ぼすかを示す。
【
図6B】本発明の異なる実施形態による、光源アレイの配置が照明パターンのドット分布にどのように影響を及ぼすかを示す。
【
図7】本発明の実施形態による、光源アレイおよびマイクロレンズアレイの配置ならびにインターレースタイプが照明パターンのドット分布にどのように影響を及ぼすかを示す。
【
図8】本発明の一実施形態によるラインパターンプロジェクタの詳細な概略図を示す。
【
図9】本発明の一実施形態にしたがってライン光パターンがどのように形成されるかを示す。
【
図10】本発明の一実施形態によるラインパターンプロジェクタで使用される回折マイクロレンズアレイのプロファイルを示す。
【
図11A】本発明の一実施形態による単一の光源によって生成される照明パターンを示す。
【
図11B】本発明の一実施形態による、同じ方向に沿って配置された複数の光源によって生成される照明パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細が記載される。しかしながら、本実施形態を実施するために特定の詳細を使用する必要がないことは、当業者には明らかであろう。他の事例では、本実施形態を曖昧にしないために、周知の材料または方法は詳細に説明されていない。
【0011】
本明細書全体にわたる「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態または例に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本実施形態の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所で「一実施形態では」または「ある実施形態では」という表現が出現するが、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適切な組合せおよび/または部分組合せで組み合わせられ得る。
【0012】
本発明の一実施形態による光学距離測定システム10の概略図を示す
図1を参照されたい。図示されるように、光学距離測定システム10は、ドットパターンプロジェクタ100と、投光イルミネータ200と、画像取込装置300とを備える。ドットパターンプロジェクタ100および投光イルミネータ200の両方は、画像取込装置300の視野内の物体上に高出力照明パターンを投影するように構成される。本発明の様々な実施形態によれば、ドットパターンプロジェクタ100および投光イルミネータ200は、異なるタイプの照明パターンを順次または同時に投影し得る。
図2は、ドットパターンプロジェクタ100および投光イルミネータ200の可能な配置を示す。図示されるように、ドットパターンプロジェクタ100(光源120と、コリメートレンズ140と、回折ユニット160とを備え、ドット照明パターンを投影する)および投光イルミネータ200(光源220および回折ユニット260を備え、投光照明パターンを投影する)は、同じ基板を共有する。ドットパターンプロジェクタ100および投光イルミネータ200は、別個の回折ユニット160および260を使用し得、それらはいずれも共有基板10上に配置される。ドットパターンプロジェクタ100の回折ユニット160は、マイクロレンズアレイまたは光回折ユニット(DOE)であってもよく、投光イルミネータ200の回折ユニット260(マイクロレンズアレイまたは光回折ユニット(DOE)であってもよい)が配置されている共有基板10上に配置される。同じ基板を共有し、2つの回折ユニットを互いに隣接して配置する利点は、製造プロセスの複雑さを低減することである。この点に関して、ドットパターンプロジェクタ100および投光イルミネータ200のエッチングまたは型反転を一緒に行うことができるので、コストが低くなり、組立て時間も短縮される。
【0013】
画像取込装置300は、(限定はしないが)集束レンズと、フィルタと、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電荷結合素子(CCD)センサ(図示せず)などの画像センサとを備え得る。画像取込装置300は、物体から反射された照明パターンの画像を取り込むように構成される。画像センサ300によって取り込まれた画像に基づいて、物体に関する奥行き情報を計測することができる。
【0014】
図3は、本発明の一実施形態によるドットパターンプロジェクタ100の概略図を示す。図示されるように、ドットパターンプロジェクタ100は、光源アレイ120と、レンズ140と、回折ユニット160とを備える。光源アレイ120は、光ビームを発するように配置され、アレイ状に配置された複数の光源120_1~120_Nを含む。様々な実施形態によれば、光源120_1~120_Nは、
図5Aに示されるように、規則的に分布されていてもよいし、または六角形に分布されていてもよい。図面中の光源120_1~120_Nの数は、単に例示を目的としたものであることに留意されたい。好ましくは、光源120_1~120_Nは、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得、ピッチD_Lで等しく分離される。
【0015】
レンズ140は、光源アレイ120が発する光ビームをコリメートするように配置される。好ましくは、光源アレイ120とレンズ140の光学中心との間の距離は、レンズ140の有効焦点距離D_EFLと同一である。したがって、レンズ140を用いることで、光ビームをより集光することができ、それにより、ドットパターンプロジェクタ100によって投影される照明パターン内のドットは、より小さいサイズおよび高いコントラストを有することができる。回折ユニット160は、光ビームを回折するように構成され、それによって、
図2に示されるようなドットが規則的に分布されている照明パターンを投影する。様々な実施形態によれば、回折ユニット160は、回折光学素子(DOE)またはマイクロレンズアレイ(MLA)であり得る。
【0016】
加えて、投光イルミネータ200は、光源と拡散器とを備え、DOEまたはMLAを拡散器として使用し得る。一実施形態では、ドットパターンプロジェクタ100内の回折ユニット160としてDOEが使用されると、投光イルミネータ200内の拡散器としてもDOEが使用される。一方、ドットパターンプロジェクタ100内の回折ユニット160としてMLAが使用されると、投光イルミネータ200内の拡散器としてもMLAが使用される。回折ユニット160としてMLAが使用される場合、MLA160は、平凸形状を有する複数のマイクロレンズを含み、MLA160の隣接する2つの単位レンズ間のレンズピッチはD_Mである。回折ユニット160としてDOEが使用される場合、DOE160の隣接する単位セル間のセルピッチはD_Eである。好ましい実施形態では、MLA160のレンズピッチD_MまたはDOE160のセルピッチD_Eは、10μmより大きくなり得、これは、製作が比較的容易である。
【0017】
光源120_1~120_Nによって投影されるドットの分布は、様々なパラメータにしたがって決定され得る。一実施形態では、単一の光源によって投影されるドットパターンの0次回折のドットとm次回折のドットとの間のファンアウト角をθ
mとし、光源が発する光ビームの波長をλとし、MLA160のレンズピッチをD_Mと仮定すると、これらのパラメータ間には以下の関係が存在することになる:
【数1】
ここで、mは回折次数である。これを踏まえて、ドットパターンの0次回折のドットと1次回折のドットとの間のファンアウト角θ
1は、次のようになる:
【数2】
【0018】
加えて、
図2に示されるように、レンズ140の光軸に配置されていない光源120_2によって投影されるドットパターン(パターンB)は、レンズ140の光軸に配置された光源120_1によって投影されるドットパターン(パターンA)と比較して垂直方向にシフトされる。様々な実施形態によれば、ドットパターンプロジェクタ100によって投影される照明パターンは、異なる光源によって投影されるドットパターンを重ね合わせるかまたはインターレースすることによって形成される。
【0019】
本発明の一実施形態による、異なる光源の異なるドットパターンを重ね合わせることによって照明パターンがどのように形成されるかを理解するために、
図4A~
図4Eを参照されたい。そのような実施形態では、光源アレイ120は、光源120_1~120_4を含む2×2アレイである。
図4Bおよび
図4Cは、レンズ140の光軸に配置された光源120_1~120_2によって生成されるドットパターンを示し、
図4Dおよび
図4Eは、レンズ140の光軸に配置されていない光源120_3~120_4によって生成されるドットパターンを示す。光源120_3~120_4のコリメートされた光ビームは、偏向角αだけレンズの光軸から偏向し、ここで、偏向角αは、次式によって決定され得る:
【数3】
(D_Lは隣接する光源間のピッチであり、D_EFLはレンズ140の有効焦点距離である)。したがって、光源120_3~120_4によって投影されるドットパターンは、光源120_1~120_2によって投影されるドットパターンと比較して垂直方向にシフトされる。
【0020】
ドットパターンを正確に重ね合わせるためには、以下を有する必要がある:
【数4】
【0021】
すなわち、光源のコリメートされた光ビームが光軸から偏向する偏向角αは、0次回折のドットと1次回折のドットとの間のファンアウト角θ1と同一である必要がある。光源ピッチD_Lと、有効焦点距離D_EFLと、レンズピッチD_M(回折ユニット160がMLAである場合)またはセルピッチD_E(回折ユニット160がDOEである場合)とがsinα=sinθを満たすように良好に制御される場合、ドットパターンは、互いに対して垂直方向または水平方向に正確に1ドットピッチD_P(すなわち、ドットパターン内の隣接するドット間の距離)だけシフトされ、それによって重複タイプの照明パターンを形成する。
【0022】
本発明の一実施形態による、異なる光源の異なるドットパターンをインターレースすることによって照明パターンがどのように形成されるかを理解するために、
図5A~
図5Eを参照されたい。そのような実施形態では、光源アレイ120は、光源120_1~120_4を含む2×2アレイである。
図4Bおよび
図4Cは、レンズ140の光軸に配置された光源120_1~120_2によって生成されるドットパターンを示し、
図4Dおよび
図4Eは、レンズ140の光軸に配置されていない光源120_3~120_4によって生成されるドットパターンを示す。光源120_3~120_4のコリメートされた光ビームは、偏向角αだけレンズの光軸から偏向し、ここで、偏向角αは、同じく、次式によって決定され得る:
【数5】
【0023】
ドットパターンをインターレースするためには、以下を有する必要がある:
【数6】
【0024】
インターレース係数Nは、ドットパターンがどのようにインターレースされるかを決定する。Nが1である場合、光軸に配置されていない光源によって投影されるドットパターンは、互いに対して垂直方向または水平方向に1ドットピッチD_Pだけシフトされ、それによって、
図4Aに示されるような重複タイプの照明パターンを形成する。Nが2である場合、光軸に配置されていない光源によって投影されるドットパターンは、互いに対して垂直方向または水平方向に1/2ドットピッチD_Pだけシフトされ、それによって、
図4Aに示されるようなインターレースタイプの照明パターンを形成する。Nが3である場合、光軸に配置されていない光源によって投影されるドットパターンは、互いに対して垂直方向または水平方向に1/3ドットピッチD_Pだけシフトされ、これもインターレースタイプの照明パターンを形成する。
【0025】
上記を踏まえて、回折ユニット160のレンズピッチD_M(回折ユニット160がMLAである場合)または回折ユニット160のセルピッチD_E(回折ユニット160がDOEである場合)は、単一光源によって投影されるドットパターンのドット分布(例えば、ドット密度)に影響を与えるファンアウト角θを決定することができる。加えて、光源ピッチD_Lおよびレンズ140の有効焦点距離D_EFLは、ドットパターンが互いに対してどのようにシフトされるかに影響を及ぼすファンアウト角θを決定することができる。
【0026】
有効焦点距離D_EFLが2mmであり、光源ピッチが30μmであると仮定すると、回折ユニット160のレンズピッチD_M(回折ユニット160がMLAである場合)または回折ユニット160のセルピッチD_Eは、次式によって決定され得る:
【数7】
【0027】
したがって、回折ユニット160のレンズピッチD_MまたはセルピッチD_Eは、N=1(すなわち、重複タイプ)のときに約62.7μm、またはN=2(すなわち、インターレースタイプ)のときに約31.3μmとなる。さらに、関心視野(FOI):60°(H)×40°(V)をカバーする照明パターンを実装するために、照明パターンの寸法は、次式によって決定され得る:
【数8】
ここで、θm
H=(60/2)、θm
V=(40/2)である。したがって、重複タイプ(N=1)では、水平方向の回折次数m
Hは±33、垂直方向の回折次数m
Vは±22となる。インターレースタイプ(N=2)では、水平方向の回折次数m
Hは±16、垂直方向の回折次数m
Vは±11となる。したがって、照明パターン内のドットの総数は、次式によって決定され得る。
【数9】
【0028】
N=1、mH=±33、およびmV=±22の場合、ドットの総数は約3015となり、N=2、mH=±16、およびmV=±11の場合、ドットの総数は約3036となる。これを踏まえて、レンズピッチD_M(またはセルピッチD_M)をインターレース係数「N」と併せて変更することで、所与のFOIにおいて同程度の数のドットをレンダリングすることが可能である。これにより、回折ユニット160の設計および製造の柔軟性が大幅に向上する。
【0029】
図6Aおよび
図6Bは、異なる光源アレイ120の配置およびそれらの対応する照明パターンを示す。図示されるように、照明パターンにおけるドットの分布は、光源アレイ120における光源の分布を継承している。
図7は、異なる光源配置、MLAの単位レンズ配置、異なるインターレースタイプの組合せに関する照明パターンを示している。
【0030】
上述のドットパターンプロジェクタに加えて、本発明は、いくつかの実施形態において、3次元距離測定のための照明パターンを提供するために、ラインパターンプロジェクタにも依存する。複数の直線光パターンで構成される照明パターンを投影するように動作可能なラインパターンプロジェクタ400を示す
図8を参照されたい。図示されるように、ラインパターンプロジェクタ400は、光源アレイ420と、レンズ440と、回折MLA460とを備える。光源アレイ420は、光ビームを発するように配置され、ライン状に配置された複数の光源420_1~420_4を含む。光源アレイに含まれる光源の数は、要件次第で変わり得ることに留意されたい。本発明の様々な実施形態では、単一の光源アレイ内により多くのまたはより少ない光源が存在し得る。好ましくは、光源420_1~420_4の各々は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)であり得、同じピッチで等しく分離される。レンズ440は、光源アレイ420が発する光ビームをコリメートするように配置される。好ましくは、光源アレイ420とレンズ440の光学中心との間の距離は、レンズ440の有効焦点距離と同一であり得る。レンズ440を用いることで、光ビームをより集光することができ、それにより、ラインパターンプロジェクタ400によって投影された照明パターンにおけるライン光パターンは、より薄くなり、より高いコントラストを有することができる。
図9に示すように、光源420の光源420_1~420_4は、ドットパターンを生成し得る。これらのドットパターンを水平方向に重なり合わせて、複数の直線光パターンを有する照明パターンを形成することができる。
【0031】
上述したように、ラインパターンプロジェクタ400の照明パターンは、光源420_1~420_4によって投影されるドットパターンを水平方向にわずかにシフトすることによって生成される。これを達成するために、回折MLA460は、
図10によって示されるようなプロファイルを有する。一実施形態では、水平方向に対するレンズピッチ(すなわち、中心間)は60μmであり得、垂直方向に対するレンズピッチは20μmであり得、凸面上の回折MLA460の最大サグ高さは33.69umであり得、回折MLA460の最大傾斜は約73度であり得る。上記の実施形態では、光源420_1~420_4は、水平方向に沿って配置され、水平方向に関するレンズピッチは垂直方向に関するレンズピッチよりも広く、それにより、光源420_1~420_4によって投影されるドットパターンが水平方向にわずかにシフトされて、水平方向に重なり合い、それによって水平方向に複数の直線パターンを形成することができる。
【0032】
図11Aは、単一の光源によって生成される照明パターンを示す。上述したように、回折MLA460のレンズピッチは水平方向に広くなっている。したがって、水平方向に対するドットパターン間のファンアウト角は小さくなり、ドットパターンは水平方向にわずかにシフトされるであろう。
図11Bは、水平方向に沿って配置された光源によって生成される照明パターンを示す。光源は水平方向に沿って配置されているので、ドットパターンは水平方向においてより多く重なる。
【0033】
いくつかの実施形態では、光源420_1~420_4は、垂直方向に沿って配置され得、回折MLA460の垂直方向のレンズピッチは回折MLA460の水平方向のレンズピッチよりも広く、それにより、光源420_1~420_4によって投影されるドットパターンが垂直方向にわずかにシフトされて、垂直方向に重なり合い、それによって垂直方向に複数の直線光パターンを形成することができる。本発明のいくつかの実施形態では、光源420_1~420_4は、第1の方向に沿って配列され得、回折MLA460の第1の方向のレンズピッチは、回折MLA460の第2の方向のレンズピッチよりも広く、それにより、光源420_1~420_4によって投影されるドットパターンが第1の方向にわずかにシフトされて、第1の方向に重なり合い、それによって第1の方向に複数の直線光パターンを形成することができる。
【0034】
ドットパターンプロジェクタ100と同様に、ラインパターンプロジェクタは、画像取込装置300が深度情報を得るために物体上にパターンを投影するための光学距離測定システムにおいて投光イルミネータ200と併せて利用され得る。さらに、ラインパターンプロジェクタ400および投光イルミネータ200は、同じ基板を共有し得る。ラインパターンプロジェクタ400および投光イルミネータ200は、別個の回折ユニット460および260を使用し得、それらはいずれも共有基板10上に配置される。MLAアレイであるラインパターンプロジェクタ100の回折MLA460は、同じくMLAである、投光イルミネータ200の回折ユニット260が配置されている共有基板10上に配置される。同じ基板を共有し、2つの回折ユニットを互いに隣接して配置する利点は、製造プロセスの複雑さを低減することである。この点に関して、ラインパターンプロジェクタ400および投光イルミネータ200のエッチングまたは型反転を一緒に行うことができるので、コストが低くなり、組立て時間も短縮される。
【0035】
結論として、本発明の実施形態は、3次元光学距離測定システムでの使用を意図したドットラインパターンプロジェクタおよびラインパターンプロジェクタを提供する。本発明のドットパターンプロジェクタまたはラインパターンプロジェクタは、光学距離測定システムにおいて投光イルミネータと共に使用され得、それによって、高出力照明パターンおよびかなり長い投影距離を提供することができる。投光イルミネータの拡散器およびドットパターンプロジェクタまたはラインパターンプロジェクタの回折ユニットの両方は、同じタイプの光学素子(例えば、両方ともMLAまたはDOEである)を用いて実装され得、それによって、光学距離測定システムの製造を簡略化する。さらに、本発明の実施形態により、光源アレイの異なる光源によって生成されたドットパターンを重ね合わせるかまたはインターレースすることができ、ドットパターンプロジェクタの構成要素のパラメータが広範囲の調整を有することができるようにする。これにより、ドットパターンプロジェクタの設計および製造の柔軟性が大幅に向上する。さらに、ラインパターンプロジェクタによって投影される照明パターンのライン光パターンは、ドットパターンをシフトして重ね合わせることによって生成されるので、照明パターンの均一性をより良好に達成することができる。
【0036】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置および方法の多数の修正および変更が行われ得ることを容易に認識するであろう。したがって、上記の開示は、添付の特許請求の範囲の境界によってのみ限定されるものとして解釈されるべきである。