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特許7395671エレベータのドア制御装置およびエレベータのドア制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】エレベータのドア制御装置およびエレベータのドア制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20231204BHJP
   B66B 13/08 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B66B13/14 A
B66B13/08 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022115001
(22)【出願日】2022-07-19
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】井浦 秀保
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-072676(JP,A)
【文献】特開2020-196550(JP,A)
【文献】特開2011-144021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごに備えられる第1のかごドアおよび第2のかごドアの制御を行うエレベータのドア制御装置であって、
前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力を低下させる制御を行う制御部を具備し、
前記制御部は、
前記乗りかごの着床時に、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアのうち、乗場ドアに面しているかごドアよりも、前記乗場ドアに面していないかごドアの方が、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力が低下する度合いが小さくなるように制御する、エレベータのドア制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて、戸閉保持力をゼロにしないように低下させる制御を行う、
請求項1に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて、戸閉保持力を段階的に低下させる制御を行う、
請求項2に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項4】
前記乗りかごに利用者が乗っているか否かを検知する利用者検知部を更に具備し、
前記制御部、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアが全閉状態となったときに、前記乗りかごに利用者が乗っていないことが検知された場合に、全閉状態にある前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの戸閉保持力が予め定められた最小値となるように制御する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエレベータのドア制御装置。
【請求項5】
乗りかごに備えられる第1のかごドアおよび第2のかごドアの制御をエレベータのドア制御装置が実行するエレベータのドア制御方法であって、
前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力を低下させる制御を行うことを含み、
前記戸閉保持力を低下させる制御を行うことは、
前記乗りかごの着床時に、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアのうち、乗場ドアに面しているかごドアよりも、前記乗場ドアに面していないかごドアの方が、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力が低下する度合いが小さくなるように制御することを含む、エレベータのドア制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア制御装置およびエレベータのドア制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおいては、省エネルギー運転を行えるようにすることが望まれている。そのためには、例えば、乗りかごの待機状態が長く続く場合に、エレベータを制御するエレベータ制御装置(制御盤)から、乗りかごのドア(かごドア)を制御するドア制御装置(ドアコントローラ)へ供給する電力を遮断し、ドア制御装置を停止させることも一つの方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4912722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した方法では、一度停止させたドア制御装置を再び動作させるには一定以上の時間がかかるため、エレベータとしての運転性能が低下する。運転性能を一定以上に保ちつつ省エネルギー化を図ることは容易なことではない。例えば駅舎などに設置される2方向ドアの乗りかご(乗る時に通るかごドアと降りる時に通るかごドアとが異なる乗りかご)の場合、制御するかごドアは1つだけではないため、対策がより難しくなる。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、運転性能を一定以上に保ちつつ省エネルギー化を図ることのできるエレベータのドア制御装置およびエレベータのドア制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るエレベータのドア制御装置は、乗りかごに備えられる第1のかごドアおよび第2のかごドアの制御を行うエレベータのドア制御装置であって、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて、戸閉保持力を低下させる制御を行う制御部を具備し、前記制御部は、前記乗りかごの着床時に、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアのうち、乗場ドアに面しているかごドアよりも、前記乗場ドアに面していないかごドアの方が、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力が低下する度合いが小さくなるように制御する
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1のエレベータシステムに適用される2方向ドアを備える乗りかごの第1の着床状態を示す図である。
図3図3は、図1のエレベータシステムに適用される2方向ドアを備える乗りかごの第2の着床状態を示す図である。
図4図4は、記憶部24に記憶される情報テーブル25の情報の一例を示す図である。
図5図5は、ドア制御装置20による動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、ドア制御装置20による動作の別の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0009】
<エレベータシステムの構成>
図1に、実施形態に係るエレベータシステムの構成の一例を示す。また、図2及び図3に、図1のエレベータシステムに適用される2方向ドアを備える乗りかごの2種類の着床状態を示す。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態に係るエレベータシステムは、エレベータ制御装置10と、ドア制御装置20と、乗りかご30とを有する。
【0011】
乗りかご30は、例えば駅舎に設置される2方向ドアの乗りかご(乗る時に通るかごドアと降りる時に通るかごドアとが異なる乗りかご)であり、2方向ドアとして2つのかごドア(第1のかごドア)31Aおよびかごドア(第2のかごドア)31Bを備える。2方向ドアには、「スルー型」(乗る時の向きと降りる時の向きとが同じになるタイプ)と「直角2方向型」(乗る時の向きと降りる時の向きとが90°異なるタイプ)とがある。本実施形態では、「スルー型」の例を挙げるが、これに限定されるものではなく、代わりに「直角2方向型」を採用してもよい。
【0012】
図2に示されるように、昇降路11内を昇降する乗りかご30が、駅舎のホーム階に着床している状態では、かごドア31Aは、ホーム階の乗場ドア(第1の乗場ドア)41Aに面している。このとき、かごドア31Bは、改札階の乗場ドア(第2の乗場ドア)41Bには面していない。この状態では、かごドア31Aは、乗場ドア41Aとともに戸開または戸閉を行うことが可能であるが、かごドア31Bは、戸閉したままで戸開しないように制御される。
【0013】
また、図3に示されるように、昇降路11内を昇降する乗りかご30が、駅舎の改札階に着床している状態では、かごドア31Bは、改札階の乗場ドア41Bに面しているが、かごドア31Aは、ホーム階の乗場ドア41Aには面していない。この状態では、かごドア31Bは、乗場ドア41Bとともに戸開または戸閉を行うことが可能であるが、かごドア31Aは、戸閉したままで戸開しないように制御される。
【0014】
<エレベータ制御装置10>
図1に示されるエレベータ制御装置10は、コンピュータを用いて実現され、例えば機械室あるいは昇降路内に設置され、乗りかご30の運転制御を含むエレベータ全体の制御を行うものである。エレベータ制御装置10は、乗りかご30の運転状態を示す運転情報(運転中/停止中もしくは着床中の区別、運転方向、着床階などの情報)をドア制御装置20に伝える。
【0015】
<ドア制御装置20>
ドア制御装置20は、コンピュータを用いて実現され、例えば乗りかご30に設置され、乗りかご30のかごドア31A,31Bの各々を制御対象として制御するものである。このドア制御装置20は、エレベータの省エネルギー化(もしくは省電力化)のための処理を、エレベータ制御装置10によらずに、ドア制御装置20単体で実施する能力を有する。
【0016】
ドア制御装置20は、省エネルギー化を実現するために、かごドア31A,31Bの各々について、かごドアが完全に閉じている状態(全閉状態)になってからの経過時間(以降、「全閉時間」と称す)に応じて、戸閉保持力を低下させる処理(すなわち、通常モードから省エネルギーモードへの移行)を行う。具体的な処理の内容については後で述べる。なお、当該処理は、エレベータ制御装置10の制御のもとで実施するように構成してもよいが、本実施形態では、エレベータ制御装置10によらずに、ドア制御装置20自身の判断で実施するものとする。これを実現するため、本実施形態では、エレベータシステムの運転中は、エレベータ制御装置10が省エネルギー化のためにドア制御装置20の動作を停止させることがないものとする。
【0017】
ドア制御装置20には、利用者検知部21、制御部22、駆動部23、記憶部24、および計時部27が備えらえる。記憶部24には、情報テーブル25および状態情報26が記憶される。計時部27には、タイマ1およびタイマ2が備えられる。
【0018】
利用者検知部21は、カメラ34により撮影される乗りかご30内の画像または荷重センサ35により計測される乗りかご30の荷重に基づき、乗りかご30に利用者が乗っているか否か(乗りかご30内の利用者の有無)を検知する。
【0019】
例えば、利用者検知部21は、カメラ34の画像を解析処理することにより乗りかご30内の利用者の有無を検知し、その検知結果(乗りかご30内の利用者の有無)を示す利用者検知情報を制御部22に出力する。あるいは、利用者検知部21は、乗りかご30の荷重から乗りかご30内の利用者の有無を検知し、その検知結果(乗りかご30内の利用者の有無)を示す利用者検知情報を制御部22に出力する。利用者検知部21は、エレベータ制御装置10に設けられてもよく、エレベータ制御装置10側で乗りかご30内の利用者の有無を検知するように構成してもよい。なお、利用者検知部21は、ドア制御のために必ずしも必要とされるものではない。
【0020】
制御部22は、エレベータ制御装置10から伝えられる乗りかご30の運転情報や、記憶部24に記憶される情報テーブル25や状態情報26、計時部27のタイマ1やタイマ2を用い、場合によっては利用者検知部21から伝えられる利用者検知情報をも用いることにより、駆動部23を介して乗りかご30におけるかごドア31A,31Bの各々の開閉動作や戸閉保持力を制御する。
【0021】
駆動部23は、制御部22から送られる制御信号にしたがって乗りかご30のドアモータを駆動するものである。
【0022】
記憶部24は、情報テーブル25および状態情報26を記憶している。これらの情報は、制御部22が制御対象とするかごドア31A,31Bの各々の戸閉保持力を決定するために使用する情報である。
【0023】
情報テーブル25は、制御対象のかごドアの状態と、制御対象のかごドアの全閉時間とから、制御対象のかごドアの戸閉保持力を決定するために使用される情報である。状態情報26は、エレベータシステムの運転中におけるかごドア31A,31Bの各々の状態を示す情報である。
【0024】
なお、記憶部24に記憶される情報テーブル(以下、テーブルと称する)25および状態情報26の詳細については、後で説明する。また、計時部27に備えられるタイマ1およびタイマ2の詳細についても、後で説明する。
【0025】
<制御部22の機能>
制御部22は、かごドア31Aおよびかごドア31Bの各々について、全閉時間に応じて、戸閉保持力をゼロにしないように低下させる機能を有する。これにより、戸閉保持力に使用する電力は遮断しないため、時間のかかる復帰処理は不要であり、エレベータの運転性能を一定以上に保ちながら省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
また、制御部22は、かごドア31Aおよびかごドア31Bの各々について、全閉時間に応じて、戸閉保持力を段階的に低下させる機能を有する。これにより、戸閉保持力が段階的に調整されるため、全閉時間が閾値を超える毎に、省電力化が一段と促進され、戸閉保持時の電流値の低減によるモータの発熱の抑制、モータの発熱の抑制によるベルト等の部材の長寿命化が促進される。なお、本実施形態では、全閉時間に応じて、戸閉保持力を段階的に低下させる例を挙げるが、段階的にではなく、連続的に低下させるようにしてもよい。
【0027】
<テーブル25の情報>
図4に、記憶部24に記憶されるテーブル25の情報の一例を示す。
【0028】
図4に示されるように、テーブル25には、各種の項目として「状態」、「全閉時間」、「戸閉保持力」がある。すなわち、このテーブル25は、制御対象のかごドアの「状態」と、制御対象のかごドアの「全閉時間」と、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」との関係を示している。制御部22は、これらの情報を用いることにより、制御対象のかごドア31A,31Bの各々の戸閉保持力を決定する。
【0029】
図4中に示される「状態」には、“着床=H”、“着床=L”、“走行中”の3種類がある。
【0030】
“着床=H”は、乗りかご30がある階に着床しており、かつ、制御対象のかごドアが乗場ドアに面している状態を指す。一方、“着床=L”は、乗りかご30がある階に着床しており、かつ、制御対象のかごドアが乗場ドアに面していない状態を指す。“走行中”は、“着床=H”にも“着床=L”にも該当しない状態を指す。
【0031】
例えば、かごドア31Aが制御対象であるとすると、図2のように乗りかご30がホーム階に着床している状況においては、かごドア31Aは、乗場ドア41Aに面しているので、“着床=H”の状態にあるといえる。一方、図3のように乗りかご30が改札階に着床している状況においては、かごドア31Aは、乗場ドア41Aに面していない(乗場ドア41Bにも面していない)ので、“着床=L”の状態にあるといえる。
【0032】
また、かごドア31Bが制御対象であるとすると、図2のように乗りかご30がホーム階に着床している状況においては、かごドア31Bは、乗場ドア41Bに面していない(乗場ドア41Aにも面していない)ので、“着床=L”の状態にあるといえる。一方、図3のように乗りかご30が改札階に着床している状況においては、かごドア31Bは、乗場ドア41Bに面しているので、“着床=H”の状態にあるといえる。
【0033】
「全閉時間」は、前述したように、制御対象のかごドアが完全に閉じている状態(全閉状態)になってからの経過時間を指す。また、「戸閉保持力」は、制御対象のかごドアの戸閉保持力を指す。
【0034】
図4の例では、制御対象のかごドアの「状態」が、“着床=H”である場合に、制御対象のかごドアの「全閉時間」が“1分未満”であれば、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」を“A(例えば100N)”に設定し、制御対象のかごドアの「全閉時間」が“1分以上”であれば、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」を“C(例えば50N)”に設定すべきことが定められている。
【0035】
また、図4の例では、制御対象のかごドアの「状態」が、“着床=L”である場合(又は、“走行中”である場合)に、制御対象のかごドアの「全閉時間」が“1分未満”であれば、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」を“A(例えば100N)”に設定し、制御対象のかごドアの「全閉時間」が“1~3分”であれば、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」を“B(例えば80N)”に設定し、制御対象のかごドアの「全閉時間」が“3分以上”であれば、制御対象のかごドアの「戸閉保持力」を“C(例えば50N)”に設定すべきことが定められている。
【0036】
なお、図4中の100N、80N、50Nといった具体的な値は、一例であって、この例に限定されるものではない。具体的な値は、適宜変えるようにしてもよい。
【0037】
“着床=H”の状態にあるかごドアは、乗場に通じる乗場ドアに面している。このとき、かりに利用者が乗りかご30に乗っており、そのかごドアを利用者が手動で開けて乗場側へ出られるようにしても、安全上問題はなく、災害時などの際にはむしろ手の力で開けられるようにすることが望ましい場合もある。そこで、“着床=H”の状態にあるかごドアについては、「全閉時間」に応じて戸閉保持力を比較的早く低下させることで、省エネルギー化を積極的に行う。
【0038】
一方、“着床=L”の状態にあるかごドアは、乗場に通じる乗場ドアに面していない。このとき、もし利用者が乗りかご30に乗っているとすると、安全上、そのかごドアの戸閉が開けられないようにしなくてはならない。そこで、“着床=L”の状態にあるかごドアについては、「全閉時間」に応じて戸閉保持力を比較的遅く低下させることで、安全面を重視した省エネルギー化を行う。
【0039】
図4の例では、“着床=H”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面しているかごドア)は、「全閉時間」に応じて戸閉保持力が2段階で低下するのに対し、“着床=L”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面していないかごドア)は、「全閉時間」に応じて戸閉保持力が3段階で低下するように設定されている。例えば、“着床=H”の状態にあるかごドアの場合は、「全閉時間」が“1分以上”になったら、「戸閉保持力」を“C(例えば50N)”にするに対し、“着床=L”の状態にあるかごドアの場合は、「全閉時間」が“3分以上”になるまでは、「戸閉保持力」を“C(例えば50N)”まで下げることはしないようになっている。
【0040】
図4の例によれば、制御部22は、“着床=H”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面しているかごドア)よりも、“着床=L”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面していないかごドア)の方が、「全閉時間」に応じて戸閉保持力が低下する度合いが小さくなるように(戸閉保持力がゆっくりと低下するように)制御することになる。
【0041】
なお、テーブル25には、図4に示される情報のほかに、例えばかごドア31Aおよびかごドア31Bの各々が全閉状態となったときに、乗りかご30に利用者がいないことが検知された時点で、かごドア31Aおよびかごドア31Bの各々の「戸閉保持力」を予め定められた最小値として“C(例えば50N)”にすべきことが定められた情報が更にあってもよい。その場合、制御部22は、当該情報に従い、かごドア31Aおよびかごドア31Bの各々が全閉状態となったとき、乗りかご30に利用者が乗っていないことが検知された時点で、かごドア31Aおよびかごドア31Bの各々の戸閉保持力が予め定められた最小値“C(例えば50N)”となるように制御する。
【0042】
<状態情報26>
図1に示される状態情報26は、エレベータシステムの運転中におけるかごドア31A,31Bの各々の現在の状態を示す情報であり、かごドア31A,31Bの各々が、“着床=H”,“着床=L”,“走行中”のいずれの状態にあるのか、全閉状態にあるのか否か、戸閉保持力が“A(例えば100N)”,“B(例えば80N)”,“C(例えば50N)”のいずれの状態にあるのか、といった情報を含む。
【0043】
<タイマ1およびタイマ2>
計時部27は、上述したようにタイマ1およびタイマ2を備えている。タイマ1は、“着床=H”の状態にあるかごドアの全閉時間を計測するために使用される。タイマ2は、“着床=L”または“走行中”の状態にあるかごドアの全閉時間を計測するために使用される。
【0044】
<乗りかごの構成>
乗りかご30には、上記したかごドア31A,31Bが設けられるとともに、かごドア31Aに対応するドアモータ32A、ドア開閉機構33Aと、かごドア31Bに対応するドアモータ32B、ドア開閉機構33Bとが設けられる。
【0045】
かごドア31A、ドアモータ32A、およびドア開閉機構33Aと、かごドア31B、ドアモータ32B、およびドア開閉機構33Bとは、同様の構成を有する。以下では、かごドア31A、ドアモータ32A、およびドア開閉機構33Aの構成を中心に説明し、かごドア31B、ドアモータ32B、およびドア開閉機構33Bの構成の説明を省略する。
【0046】
かごドア31Aは、例えば2枚のドアパネルからなり、乗りかご30の乗降口に開閉自在に設けられている。かごドア31Aの開閉方式(単にドア方式とも言う)が中央両開き方式であれば、かごドア31Aを構成する2枚のドアパネルは互いに逆方向に開閉動作する。片開き方式であれば、かごドア31Aを構成する2枚のドアパネルは同じ方向に開閉動作する。
【0047】
乗場の乗降口に設置された乗場ドア41Aのドア方式は、かごドア31Aのドア方式と同様であり、かごドア31Aの開閉動作に追従して移動する。ドア開閉機構33Aは、例えば複数の滑車やこれらの滑車に巻回されるベルトなどを備え、ドアモータ32Aの回転力を戸開閉に必要な力に変換する。
【0048】
図1中のP1はモータ出力、P2は走行抵抗(摩擦力等の戸開動作を妨げる力)、P3は戸閉保持力(戸閉状態を保持するために必要な力)である。モータ出力P1は、ドアモータ32Aの回転速度とトルクによって決まる。ここでは、モータ出力P1の全てがかごドア31Aに伝達されるものとする。モータ出力P1は、下記の(1)式で表すことができる。なお、走行抵抗P2は、予め据付け時に各階毎に測定される。
【0049】
P1=P2+P3
=P2+(M×a) …(1)
Mはドア重量であり、かごドア31Aの重量と乗場ドア41Aの重量とを含む。aは加速度である。
【0050】
<動作の一例>
次に、図5のフローチャートを参照して、ドア制御装置20による動作の一例を説明する。
【0051】
ドア制御装置20は、かごドア31A,31Bの各々を制御対象として制御するものであるが、ここでは、かごドア31A,31Bのうち、かごドア31Aの制御に着目して説明する。なお、かごドア31Bの制御は、かごドア31Aの制御と同様となるため、ここではその説明を省略する。
【0052】
いま、エレベータシステムは平常運転中の状態にあるものとする。
【0053】
制御部22は、制御対象のかごドア31Aが戸閉し、全閉状態になったか否かを判定する(ステップS1)。
【0054】
全閉状態でなければ(ステップS1のNo)、制御部22は、全閉状態以外の場合の通常の処理(その他の処理)を行い(ステップS20)、ステップS1からの処理を繰り返す。一方、全閉状態になった場合(ステップS1のYes)、制御部22は、かごドア31Aが“着床=H”の状態にあるか否か(図2図3の例では、乗りかご30がホーム階に着床しており、かつ、かごドア31Aが乗場ドア41Aに面している状態にあるか否か)を判定する(ステップS2)。
【0055】
かごドア31Aが“着床=H”の状態にある場合(ステップS2のYes)、例えば図2の例のように、乗りかご30がホーム階に着床しており、かつ、かごドア31Aが乗場ドア41Aに面している状態にある場合、制御部22は、かごドア31Aの全閉時間を計測するために、計時部27のタイマ1のカウントアップを開始する(ステップS3)。このとき、タイマ2のカウント値はクリアにする。
【0056】
なお、タイマ1のカウント中に、かごドア31Aが全閉状態でなくなった場合や“着床=H”の状態でなくなった場合には、カウント処理を中止し、ステップS1からの処理を繰り返すものとする。
【0057】
制御部22は、タイマ1のカウント値が1分以上になるまでは(ステップS4のNo)、かごドア31Aの戸閉保持力を、“A(例えば100N)”に設定し(ステップS5)、タイマ1のカウント値が1分以上になったら(ステップS4のYes)、かごドア31Aの戸閉保持力を、“C(例えば50N)”に設定する(ステップS6)。
【0058】
また、ステップS2において、かごドア31Aが“着床=H”の状態にない場合、すなわち、“着床=H”または“走行中”の状態にある場合(ステップS2のNo)、例えば図3の例のように、乗りかご30が改札階に着床しており、かつ、かごドア31Aが乗場ドア41Aに面していない(乗場ドア41Bにも面していない)状態にある場合、かごドア31Aの戸開が検知されていないのであれば(ステップS7のNo)、制御部22は、かごドア31Aの全閉時間を計測するために、計時部27のタイマ2のカウントアップを開始する(ステップS8)。このとき、タイマ1のカウント値はクリアにする。
【0059】
なお、タイマ2のカウント中に、かごドア31Aが全閉状態でなくなった場合やかごドア31Aが“着床=L”または“走行中”の状態でなくなった場合には、カウント処理を中止し、ステップS1からの処理を繰り返すものとする。
【0060】
制御部22は、タイマ2のカウント値が1分以上になるまでは(ステップS9のNo)、かごドア31Aの戸閉保持力を、“A(例えば100N)”に設定し(ステップS10)、タイマ1のカウント値が1分以上になったら(ステップS9のYes)、3分以上になるまでは(ステップS11のNo)、かごドア31Aの戸閉保持力を、“B(例えば80N)”に設定する(ステップS12)。一方、タイマ1のカウント値が3分以上になったら(ステップS11のYes)、制御部22は、かごドア31Aの戸閉保持力を、“C(例えば50N)”に設定する(ステップS13)。
【0061】
また、ステップS7において、戸開が検知された場合(ステップS7のYes)、制御部22は、危険防止のため、戸閉保持力を強化するブースト処理(戸閉保持力を例えば120Nに上げる処理)を実施する(ステップS14)。戸開が検知された場合(ステップS7のYes)とは、例えば地震の揺れによる戸開であったり乗客のいたずらによる戸開であったりなどがあるが、これらに限定しないものとする。
【0062】
<動作の変形例>
次に、図6のフローチャートを参照して、ドア制御装置20による動作の別の例を説明する。ここでは、図5のフローチャートと異なる部分を中心に説明する。
【0063】
図6のフローチャートが、図5のフローチャートと異なる点は、ステップS1とステップS2との間に、ステップS21が追加されている点である。
【0064】
すなわち、ステップS1において、制御対象のかごドア31Aが戸閉し、全閉状態になった場合(ステップS1のYes)、制御部22は、利用者検知部21から伝えられる利用者検知情報に基づき、乗りかご30に利用者が乗っているか否かを判定する(ステップS21)。乗りかご30に利用者が乗っている場合(ステップS21のYes)、ステップS2へ進む。一方、乗りかご30に利用者が乗っていない場合(ステップS21のNo)、制御部22は、かごドア31Aの戸閉保持力を、“C(例えば50N)”に設定する(ステップS22)。
【0065】
なお、図6では、ステップS21を、ステップS1とステップS2との間に追加する例を示したが、この例に限らず、ステップS21をそのほかのステップ間に追加してもよい。例えば、ステップS21を、ステップS1とステップS2との間に追加する代わりに、ステップS2とステップS3との間、および、ステップS7とステップS8との間に追加してもよい。
【0066】
<まとめ>
実施形態によれば、運転性能を一定以上に保ちつつ省エネルギー化を図ることができる。具体的には、省電力化、戸閉保持時の電流値の低減によるモータの発熱の抑制、モータの発熱の抑制によるベルト等の部材の長寿命化、ひいてはドアモータの小型化を実現することが可能になる。
【0067】
特に実施形態では、エレベータ制御装置10によらずに、ドア制御装置20単体で、エレベータの省エネルギー化を図ることが可能になる。
【0068】
また、実施形態では、“着床=H”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面しているかごドア)だけでなく、“着床=L”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面していないかごドア)についても、全閉時間に応じて戸閉保持力を低下させる制御を行うため、従前よりも省エネルギー化の効果を大きくすることができる。
【0069】
また、実施形態では、2つのかごドア31A,31Bの各々について、戸閉保持力に使用する電力を遮断することなく、全閉時間に応じて戸閉保持力をゼロにしないように低下させる制御を行うので、時間のかかる復帰処理が不要であり、エレベータの運転性能を一定以上に保ちながら省エネルギー化を図ることができる。
【0070】
また、実施形態では、“着床=H”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面しているかごドア)に対しては、「全閉時間」に応じて戸閉保持力を比較的早く低下させることで、省エネルギー化を積極的に行い、一方、“着床=L”の状態にあるかごドア(乗場ドアに面しているかごドア)に対しては、「全閉時間」に応じて戸閉保持力を比較的遅く低下させることで、安全面を重視した省エネルギー化を行うので、安全性の確保と省エネルギー化とを両立させることができる。
【0071】
また、実施形態では、カメラまたは荷重センサを用いて乗りかご内の人の有無を検知することにより、省エネルギーモードへの時間の短縮化を図ることも可能である。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1,2…タイマ、10…エレベータ制御装置、11…昇降路、20…ドア制御装置、21…利用者検知部、22…制御部、23…駆動部、24…記憶部、25…情報テーブル、26…状態情報、27…計時部、30…乗りかご、31A,31B…かごドア、32A,32B…ドアモータ、33A,33B…ドア開閉機構、34…カメラ、35…荷重センサ、41A,41B…乗場ドア。
【要約】
【課題】 運転性能を一定以上に保ちつつ省エネルギー化を図ることができる。
【解決手段】 実施形態に係るエレベータのドア制御装置は、乗りかごに備えられる第1のかごドアおよび第2のかごドアの制御を行うエレベータのドア制御装置であって、前記第1のかごドアおよび前記第2のかごドアの各々について、全閉状態の経過時間に応じて戸閉保持力を低下させる制御を行う制御部を具備する。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6