(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】二次電池用絶縁板およびそれを備える二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/593 20210101AFI20231204BHJP
H01M 50/317 20210101ALI20231204BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20231204BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01M50/593
H01M50/317 101
H01M50/152
H01M10/04 W
(21)【出願番号】P 2022126751
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2021123290の分割
【原出願日】2018-01-23
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2017060788
(32)【優先日】2017-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】322003798
【氏名又は名称】パナソニックエナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 武史
(72)【発明者】
【氏名】横山 智彦
(72)【発明者】
【氏名】山上 雄史
(72)【発明者】
【氏名】小平 一紀
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-027635(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099295(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/067510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 50/30-50/392
H01M 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回式の電極群と、電解質と、前記電極群および前記電解質を収容する円筒形の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、を備える二次電池用の絶縁板であって、
前記絶縁板は、前記電極群と前記封口体との間に配置され、0.1mm以上の厚みTを有する円盤形状を有し、
前記絶縁板は、中央に形成された第1孔と、前記第1孔の周囲に形成された少なくとも1つの第2孔とを備え、
前記第2孔は、前記絶縁板の上面から見た時に、前記絶縁板の内周側に辺を有する形状を有し、
前記厚みTの前記絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、
前記絶縁板の開口率は、36%以下である
(ただし、5%以下の場合を除く)、絶縁板。
【請求項2】
前記第1孔の開口率は、1%以上であり、
前記第2孔の開口率は、5%以上である、請求項1に記載の絶縁板。
【請求項3】
前記第1孔は、前記電極群の巻回軸の上方に配置され、
前記第2孔は、前記電極群の外周側に配置される、請求項1
または2に記載の絶縁板。
【請求項4】
前記第1孔は、縦長形状であり、
前記第1孔のアスペクト比は、1.2以上4以下である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項5】
前記第1孔の開口率は、1%以上3%以下である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項6】
前記絶縁板の開口率は、20%以上32%以下である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項7】
前記第2孔は、少なくとも1つの弧状孔と、少なくとも1つのスポット孔とを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項8】
前記弧状孔は、前記円盤形状の外周側の2つのコーナー部と内周側の2つのコーナー部とを備え、
少なくとも前記外周側の2つのコーナー部は、丸みを帯びており、
前記外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ、0.8mm以上である、請求項
7に記載の絶縁板。
【請求項9】
前記弧状孔の開口率は5~30%である、請求項
7または
8に記載の絶縁板。
【請求項10】
前記第2孔は、前記絶縁板の外周からの距離が2.5mm以上の領域に形成されている、請求項1~
9のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項11】
100MPa以上の曲げ強度を有する材料で形成されている、請求項1~
10のいずれか1項に記載の絶縁板。
【請求項12】
巻回式の電極群と、
電解質と、
前記電極群および前記電解質を収容する円筒形の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、
前記電極群と前記封口体との間に配置された絶縁板と、を備え、
前記絶縁板は、0.1mm以上の厚みTを有する円盤形状を有し、
前記絶縁板は、中央に形成された第1孔と、前記第1孔の周囲に形成された少なくとも1つの第2孔とを備え、
前記第2孔は、前記絶縁板の上面から見た時に、前記絶縁板の内周側に辺を有する形状を有し、
前記厚みTの前記絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、
前記絶縁板の開口率は、36%以下である
(ただし、5%以下の場合を除く)、二次電池。
【請求項13】
前記第1孔の開口率は、1%以上であり、
前記第2孔の開口率は、5%以上である、請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記排気弁の開口径は、10mm以上である、請求項
12または13に記載の二次電池。
【請求項15】
20mm以上の外径を有する、請求項
14に記載の二次電池。
【請求項16】
前記電池ケースの底部に、排気弁を有さない、請求項
12~
15のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の電極群と封口体との間に配置される絶縁板の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、電極群と、電極群から引き出されるリード、電池ケース、電池ケースの開口部を封口する封口体などとの絶縁を保つために、電極群と封口体との間には絶縁板が配置される。また、二次電池には、電池内で発生したガスを排気するための排気弁が封口体に設けられているものがある。このような二次電池では、絶縁板には、電極群から引き出されたリードを通すための孔やガスを抜け易くするための孔が形成されている。
【0003】
特許文献1では、排気のための弁体が形成された封口体を用いた二次電池において、電極群と封口体との間に、中央付近に孔を有する絶縁板が配置されている。特許文献2では、
図8に示すような、平面図において、1つの半円状の孔821と、3つのスポット孔822bとを有する絶縁板820を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/157749号
【文献】国際公開第2013/099295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高容量を確保する観点からは、絶縁板の厚みは小さい方が好ましい。しかし、絶縁板には、孔が形成されていることもあり、厚みが小さくなると、十分な強度を確保し難くなる。また、電池の外径が大きくなり、この外径に合わせて絶縁板を大きくすると、絶縁板の厚みが同じでも強度が低くなる。絶縁板の強度が不十分である場合、電池内で発生したガスにより絶縁板が破壊されることがある。電池内において絶縁板が変形したり破壊されたりすると、電極群が封口体の方までせり出して、封口体の弁体を塞ぎ、排気が不十分になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面の絶縁板は、巻回式の電極群と、電解質と、前記電極群および前記電解質を収容する円筒形の電池ケースと、前記電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、を備える二次電池用の絶縁板であって、
前記絶縁板は、前記電極群と前記封口体との間に配置され、0.1mm以上の厚みTを有する円盤形状を有し、
前記絶縁板は、中央に形成された第1孔と、前記第1孔の周囲に形成された少なくとも1つの第2孔とを備え、
前記厚みTの前記絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、
前記絶縁板の開口率は、36%以下である、絶縁板に関する。
【0007】
本開示の他の局面は、巻回式の電極群と、
電解質と、
前記電極群および前記電解質を収容する円筒形の電池ケースと、
前記電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、
前記電極群と前記封口体との間に配置された絶縁板と、を備え、
前記絶縁板は、0.1mm以上の厚みTを有する円盤形状を有し、
前記絶縁板は、中央に形成された第1孔と、前記第1孔の周囲に形成された少なくとも1つの第2孔とを備え、
前記厚みTの前記絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、
前記絶縁板の開口率は、36%以下である、二次電池に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の上記局面によれば、二次電池の高容量を確保しながらも、排気をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図3】本発明のさらに他の実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図4】本発明の別の実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図5】本発明のさらに別の実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図6】本発明のさらに別の実施形態に係る絶縁板を概略的に示す上面図である。
【
図7】
図1の絶縁板を供える二次電池を概略的に示す縦断面図である。
【
図9】絶縁板の破断強度を測定するための治具を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る絶縁板は、巻回式の電極群と、電解質と、電極群および電解質を収容する円筒形の電池ケースと、電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、を備える二次電池用の絶縁板である。絶縁板は、電極群と封口体との間に配置され、0.1mm以上の厚みTを有する円盤形状を有する。絶縁板は、中央に形成された第1孔と、第1孔の周囲に、円盤形状の外周に沿うように形成された少なくとも1つの第2孔とを備える。厚みTの絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、絶縁板の開口率は、36%以下である。
【0011】
本発明の一実施形態に係る二次電池は、巻回式の電極群と、電解質と、電極群および電解質を収容する円筒形の電池ケースと、電池ケースの開口部を封口するとともに、排気弁を備える封口体と、電極群と封口体との間に配置された上記の絶縁板と、を備える。
【0012】
従来の二次電池には、封口体とは反対側の電池ケースの底部から排気するものがある。このような電池では、電池ケースの底部から多量のガスを排気することができるため、電極群と封口体との間に配置される絶縁板(第1絶縁板)の設計には、高い自由度があった。一方、封口体に排気弁を有する二次電池では、電池内で発生したガスが排気弁に向かって抜けるため、ガスの通り道に配置される第1絶縁板にはある程度の強度が求められる。また、第1絶縁板は、電池容量に寄与しないため、高容量を確保する観点からは、第1絶縁板の厚みが小さいことが好ましい。しかし、電極群から引き出されたリードを通したり、ガスを抜け易くしたりするために、第1絶縁板の中心に大きな孔を設けると、十分な強度を確保し難くなる。特に、第1絶縁板の厚みが小さい場合には、強度の低下が顕著になる。電池内において第1絶縁板が変形したり破壊されたりすると、電極群が封口体の方までせり出して、封口体の弁体を塞ぎ、排気が不十分になることがある。
【0013】
本発明の上記実施形態によれば、排気弁を備える封口体を用いる場合に、封口体と電極群との間に配置される第1絶縁板として、中央に形成された第1孔と、第1孔の周囲に、第1絶縁板の円盤形状の外周に沿うように形成された少なくとも1つの第2孔とを有する
絶縁板を用いる。巻回式電極群を備える二次電池では、電極群からガスが発生する場合、巻回軸近傍、電極群の外周近傍からの放出量が多くなり易い。そのため、上記のような位置に第1孔および第2孔を有する第1絶縁板を設けることで、第1絶縁板の開口率を36%以下と小さくしても、高い排気性を確保することができる。
【0014】
また、第1絶縁板は、開口率が36%以下であるとともに、0.1mm以上の厚みTを有し、厚みTの第1絶縁板の直径Dに対する比率(=T/D)が0.016以下である。そのため、T/D比が小さいながらも、第1絶縁板の強度を確保することができる。よって、二次電池の高い容量を確保することができるとともに、排気をスムーズに行うことができる。また、第1絶縁板の高い強度が確保されることで、第1絶縁板の変形や破壊が抑制されるため、封口体の排気弁からの排気が阻害されることが抑制される。
【0015】
このように、本実施形態に係る第1絶縁板は、排気弁を備える封口体を備える二次電池に使用されるが、特に、電池ケースの底部に排気弁を有さない二次電池に使用するのに適している。なお、電池ケースの底部の排気弁には、排気の目的で形成された薄肉部も含まれる。
【0016】
なお、第1絶縁板の厚みTは、第1絶縁板の孔以外の領域の厚みである。厚みTとしては、第1絶縁板の複数箇所(例えば、5箇所)について測定した厚みの平均値を用いてもよい。
【0017】
第1絶縁板は、面方向(厚み方向と直交する方向)において円形またはそれに類似する形状を有している。第1絶縁板の直径Dは、第1絶縁板の面方向における直径(外径)であり、第1絶縁板の外形が円形でない場合には、外形(第1絶縁板の面方向において外縁で囲まれる領域)と同じ面積を有する円(相当円)の直径である。
【0018】
第1絶縁板の開口率は、第1絶縁板の平面図(または上面図)において、第1絶縁板の外縁で囲まれる領域の面積に対する、孔の面積の比率(%)である。孔の面積とは、第1絶縁板の平面図における第1孔の面積および第2孔の面積の合計であり、第1絶縁板が第1孔および第2孔以外の孔(第3孔)を有する場合には、第1孔、第2孔および第3孔の合計面積である。
【0019】
以下に、本実施形態に係る絶縁板(第1絶縁板)および二次電池について、適宜図面を参照しながら、より具体的に説明する。
【0020】
[絶縁板(第1絶縁板)]
第1絶縁板は、排気弁を備える封口体を用いた二次電池において、封口体と電極群との間に配置され、上部絶縁板と呼ばれることもある。第1絶縁板は、円柱状またはそれに類似する形状の電極群上に配置されるため、円盤形状を有している。そして、第1絶縁板は、中央に形成された第1孔と、第1孔の周囲に、円盤形状の外周に沿うように形成された少なくとも1つの第2孔とを備えている。電極群でガスが発生した場合、ガスは、第1孔および第2孔を通って、封口体の排気弁から排出される。電極群から引き出されたリードは、第1孔および/または第2孔を通して封口体や電池ケースに接続してもよい。
【0021】
第1孔が円盤形状の第1絶縁板の中央に形成され、第2孔が第1絶縁板の外周に沿うように形成されることで、巻回軸および電極群の外周側から多くのガスが放出されても、第1孔および第2孔を通って、封口体の排気弁からスムーズにガスを排出することができる。ガスの排出性をさらに高める観点からは、第1孔は、電極群の巻回軸の上方に配置されることが好ましい。同様の理由で、第2孔は、電極群の外周側に配置されることが好ましい。
【0022】
第1絶縁板は、第1孔を2つ以上有していてもよいが、1つ有していればよい。
【0023】
第1絶縁板の強度を確保しながらも、第1孔からガスを排出し易いように、第1孔の開口率は、1%以上3%以下であることが好ましく、1%以上2%以下であることが特に好ましい。
【0024】
なお、第1孔の開口率は、第1絶縁板の平面図(または上面図)において、第1絶縁板の外縁で囲まれる領域の面積に対する、第1孔の面積の比率(%)である。第1孔の面積とは、第1絶縁板の平面図における第1孔の面積である。第1絶縁板が複数の第1孔を有する場合には、第1孔の開口率は、各第1孔の開口率の合計である。
【0025】
第1孔の形状としては、特に制限されないが、第1絶縁板の平面図において、円形、楕円形、四角形などの多角形、これらに類似する形状などが挙げられる。第1孔の形状は、楕円形、長方形、これに類似する形状などの縦長形状であることが好ましい。第1孔が縦長形状である場合、ガス排出性を確保しながらも、第1孔の短径に沿う方向の第1絶縁板の強度を高め易いため有利である。縦長形状の第1孔のアスペクト比は、例えば、1.2以上4以下であることが好ましく、1.3以上2以下であることがさらに好ましい。アスペクト比がこのような範囲である場合、ガス排出性と強度とのバランスを取り易い。
【0026】
第1絶縁板は、第2孔を、少なくとも1つ有していればよいが、電極群の外周側から放出されるガスをスムーズに通過させる観点からは、複数の第2孔を第1絶縁板の外周に沿うように(好ましくは、さらに電極群の外周側に)形成することが好ましい。
【0027】
第2孔の形状は特に制限されず、第1孔について記載した形状から適宜決定できる。第1絶縁板が複数の第2孔を有する場合、第1孔を取り囲むように第2孔を形成し易い観点から、第2孔の平面形状は、円形、楕円形、角形、弧状、またはこれらに類似する形状であることが好ましい。第1孔を取り囲むように第2孔を形成し易い観点からは、特に、第2孔が、少なくとも1つの弧状孔と、少なくとも1つ(好ましくは2つ以上)のスポット孔とを含む場合が好ましい。
【0028】
1つの第2孔の開口率は、例えば、7%以上35%以下であり、20%以上30%以下であることが好ましい。スポット孔は、主に、電極群の外周から放出されるガスを排出するためのものであるため、1つのスポット孔の開口率は、それほど大きくする必要はなく、例えば、1%以上15%以下であり、1%以上5%以下であることが好ましい。1つの弧状孔の開口率は、スポット孔の開口率と同じ範囲から選択してもよい。弧状孔は、電極群の外周から放出されるガスを排出するとともに、電極群から引き出され、封口体や電池ケースに接続されるリードを通すために利用することが好ましい。この場合、1つの弧状孔の開口率は、5%以上30%以下であることが好ましく、15%以上25%以下であることがさらに好ましい。
【0029】
弧状孔の個数は、1つであってもよく、2つ以上(例えば、2個以上4個以下)であってもよい。一方の電極から引き出されたリードのみを弧状孔に通す場合には、弧状孔は1つ形成すればよく、必要に応じて、弧状孔を2つ形成して、双方の電極から引き出されたリードを弧状孔のそれぞれに通してもよい。
【0030】
個々の第2孔の開口率および個数と、第1孔の開口率および個数とを調節することで、第1絶縁板の開口率を調節すればよい。
【0031】
弧状孔は、円盤形状の第1絶縁板の外周側の2つのコーナー部と内周側の2つのコーナー部とを有する。弧状孔において、開口面積を上げるために、外周側のコーナー部の角度は、内周側のコーナー部の角度に比べて小さくなるように形成されることが好ましい。この場合、外周側のコーナー部の角度が内周側のコーナー部の角度より小さくなることで、第1絶縁板の外周側のコーナー部近傍の領域の強度が小さくなり易い。そのため、少なくとも外周側の2つのコーナー部が丸みを帯びるように弧状孔を形成することが好ましい。外周側の2つのコーナー部の曲率半径(R)は、それぞれ、0.8mm以上であることが好ましく、1mm以上または1.5mm以上であることがさらに好ましい。外周側のコーナー部の曲率半径がこのような範囲である場合には、第1絶縁板の外周側のコーナー部近傍の領域の強度を確保し易い。必要に応じて、内周側のコーナー部も丸みを帯びるように形成してもよい。
【0032】
電極群の外周付近から放出されるガスを抜けやすくするため、第1絶縁板は、円盤状の外周に沿うように形成された複数のスポット孔を有することが好ましい。スポット孔の個数は、例えば、2個以上6個以下であり、2個以上5個以下であることが好ましく、3個または4個がさらに好ましい。
【0033】
本実施形態に係る第1絶縁板では、中央に第1孔が形成されるとともに、第1孔の周囲に、第1絶縁板の円盤形状の外周に沿うように第2孔が形成される。つまり、第1絶縁板において、第1孔の周囲(具体的には、第1孔と第2孔との間)には、少なくとも環状の領域が残った状態となる。この環状領域が第1絶縁板の支えとなり、第1絶縁板の高い強度を確保することができる。
【0034】
第1孔と第2孔との間に形成される環状領域の最小幅wは、1mm以上5mm以下であることが好ましく、2mm以上3mm以下であることがさらに好ましい。最小幅wがこのような範囲である場合、第1絶縁板の強度の確保がさらに容易になる。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁板(第1絶縁板)を概略的に示す上面図である。
図2~
図6は、第1絶縁板の変更例である。
【0036】
図1の第1絶縁板20は、面方向の中央に形成された第1孔121と、第1孔121を取り囲むように第1孔121の周囲に形成された第2孔122とを有する。第1孔121は、楕円形状(縦長形状)を有している。第2孔121は、1つの弧状孔122aと、3つのスポット孔122bとからなる。これらの第2孔122は、第1絶縁板20の外周に沿うように形成されている。図示例では、スポット孔122bに比べてサイズが大きな弧状孔122aは、第1絶縁板20の半分の領域に配置され、残る半分の領域にスポット孔122bが並んで配置されている。第1孔121の周囲(具体的には、第1孔121と第2孔122との間)には、少なくとも、最小幅wを有する環状領域が形成されている。
【0037】
図2の第1絶縁板220は、面方向に形成された第1孔221と、第1孔の周囲に形成された第2孔222とを有する。第2孔222は、弧状孔222aとスポット孔222bとからなる。
図2の例は、第1孔221およびスポット孔222bの形状、スポット孔222bの個数が異なる以外は、
図1の絶縁板20と同じである。第1孔221は、第1絶縁板220の上面から見た時に、長方形の4つの角部が丸まったような縦長形状を有している。第1絶縁板220は、1つの弧状孔222aと4つのスポット孔222bとを有している。4つのスポット孔222bは、それぞれ、楕円形であり、楕円形の長軸方向が円形の第1絶縁板の周方向に沿うように並んで配置されている。
【0038】
図3の第1絶縁板320は、面方向の中央に形成された第1孔321と、その周囲に形成された第2孔322とを有する。第2孔322は、1つの弧状孔322aと、4つのスポット孔322bとからなる。
図3の第1絶縁板320は、弧状孔322aの外周側および内周側の合計4つのコーナー部の曲率半径が
図2に比べて大きく、スポット孔322bのサイズおよび形状が
図2と異なる以外は、
図2の第1絶縁板220と同じである。
図3では、各スポット孔322bは、第1絶縁板320の内周側の辺が短く外周側の辺が長い台形の角部が丸まった形状を有している。
【0039】
図4の第1絶縁板420は、面方向の中央に形成された第1孔421と、その周囲に形成された第2孔422とを有する。第2孔422は、1つの弧状孔422aと、4つのスポット孔422bとからなる。
図4の第1絶縁板420は、弧状孔422aの弧に沿う方向における長さが
図3に比べて短く、コーナー部の曲率半径が大きいだけで、その他は
図3と同じである。
【0040】
図1~
図4では、第1絶縁板の平面図において、半分の領域に弧状孔が形成され、残りの半分の領域にスポット孔が形成される場合を示したが、これらの場合に限らない。例えば、複数の弧状孔と複数のスポット孔とが交互に配置されていてもよい。
【0041】
図5の第1絶縁板520は、面方向の中央に形成された第1孔521と、その周囲に形成された第2孔522とを有する。第2孔522は、第1孔521を取り囲むように、第1絶縁板520の周方向に沿って形成された3つの弧状孔522aと、隣接する2つの弧状孔522a間に配置された1つのスポット孔522bとからなる。第1孔521およびスポット孔522bの形状やサイズは、
図4とほぼ同じである。第1絶縁板520は、弧状孔522aとして、第1孔521を挟んで対向する一対のサイズの大きな弧状孔と、この一対の弧状孔間で、かつスポット孔522bとは第1孔521を挟んで反対側の位置に配置されたサイズの小さな弧状孔とを有する。
【0042】
図6の第1絶縁板620は、面方向の中央に形成された第1孔621と、第1孔の周囲に形成された第2孔622とを有する。第1孔621は、
図2~
図5の例と同じ形状である。
図6では、第2孔622は、1つの弧状孔622aのみからなる。弧状孔622aの開口率は、
図1~
図5の弧状孔の開口率よりも小さくなっている。
【0043】
二次電池では、電池ケースに電極群を収容した後、電池ケースが縮径されるが、このとき、電極群の上部において、電池ケースを内側に突出させることで電池ケースの外側に溝部(溝部に対応して内側に突出部)を形成して、突出部により電極群を固定している。ガスが放出される際に、この突出部に繰り返しガスが当たると、突出部が劣化しやすくなる。そのため、突出部にガスが当たるのを抑制する観点から、第2孔は、第1絶縁板の外周からの距離が2mm以上の領域(外周から2mmおよびこれよりも内側の領域)に形成することが好ましい。第1絶縁板の外周から第2孔までの距離は、2.5mm以上であることがさらに好ましい。電極群の外周近傍から放出されるガスを排出し易くする観点からは、第1絶縁板の外周から第2孔までの距離は、3mm以下であることが好ましい。
【0044】
なお、第1絶縁板の外周から第2孔までの距離とは、第1絶縁板のある半径方向において、第1絶縁板の外周(外縁)から第2孔の最も外側の位置までの距離である。複数の半径方向において、第1絶縁板の外周から第2孔の最も外側の位置までの距離が異なる場合には、最も短い箇所の距離が上記の範囲であればよい。
【0045】
第1絶縁板の開口率は、36%以下であり、32%以下であることが好ましく、28%以下であることがさらに好ましい。開口率がこのような範囲であることで、第1絶縁板の強度を確保することができる。第1絶縁板の開口率は、8%以上であることが好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。ガスの排気性をさらに高める観点からは、開口率は、20%以上であることが好ましい。これらの上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。第1絶縁板の開口率は、例えば、8%以上36%以下、10%以上36%以下、または10%以上32%以下であってもよい。
【0046】
第1絶縁板において、厚みTの直径Dに対する比率(=T/D)は、0.016以下であり、0.015以下であることが好ましい。T/D比がこのような範囲である場合、直径Dに対して第1絶縁板の厚みTが比較的小さいため、第1絶縁板の強度が低下し易い。本実施形態では、0.1mm以上の厚みTを確保するとともに、第1絶縁板に上記のような第1孔および第2孔を設け、開口率を36%以下とする。これにより、T/D比が上記のように小さくても、第1絶縁板が占める容積により容量が低下するのを抑制しながら、強度と排気性とを確保することができる。第1絶縁板の厚みTは、0.1mm以上であり、0.2mm以上であることが好ましい。
【0047】
第1絶縁板は、例えば、絶縁性樹脂や絶縁処理された金属などにより形成できる。第1絶縁板の強度を確保し易い観点から、第1絶縁板は、100MPa以上の曲げ強度を有する材料で形成することが好ましい。このような材料のうち、絶縁性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの硬化性樹脂(熱硬化性樹脂など)などの他、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。金属としては、例えば、ステンレス鋼や鉄などが挙げられる。金属の絶縁処理は、例えば、金属を絶縁性樹脂で被覆することにより行なうことができる。金属を被覆する絶縁性樹脂としては、特に制限されず、例えば、ポリイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。また、第1絶縁板は、ガラス繊維などの絶縁性の繊維状芯材に絶縁性樹脂(フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂など)を含浸させ、硬化させた材料で形成してもよい。
【0048】
第1絶縁板の破断強度は、30N以上であることが好ましく、50N以上であることがさらに好ましい。強度がこのような範囲である場合、第1絶縁板の破壊が抑制され、ガスの排気性を確保し易くなる。
【0049】
なお、本明細書中、第1絶縁板の破断強度とは、
図9に示す治具を用いて測定される破断強度である。破断強度の測定治具は、所定の厚みを有するリング状の台座900と、台座900の孔の内径よりも小さな直径を有する円柱状の押圧部材901とを備える。台座900の孔が鉛直方向に開口した状態となるように、台座900を配置し、台座900の孔全体を覆うように第1絶縁板のサンプルSを台座900の上面に配置する。そして、サンプルSの上方から押圧部材901で鉛直下方に押圧し、サンプルSが破断したときに加えた力を、第1絶縁板の破断強度とする。サンプルSを押圧する際に、台座900と、サンプルSと、押圧部材901とは、水平方向における互いの中心が重なるように配置した状態で押圧することが好ましい。
【0050】
台座のサイズは、第1絶縁板と台座とが重なる部分の幅が、例えば、0.5mm以上2mm以下となるように選択すればよい。押圧部材のサイズは、台座の孔に押圧部材を挿入したときに、台座の孔部分の内壁と押圧部材の外壁との間に、例えば、1mm以上6mm以下の幅の隙間が押圧部材の周囲全体に形成されるように選択すればよい。例えば、第1絶縁板の直径が21mmの場合、台座の内径(
図9のL)を18mmとし、押圧部材の直径(
図9のW)を7mmとしてもよい。
【0051】
本実施形態に係る第1絶縁板は、容積が小さいものの、優れた強度を有しており、高い排気性を確保することができる。よって、排気弁を有する封口体を用いた二次電池において、電極群と封口体との間に配置される絶縁板として使用するのに特に適している。
【0052】
[二次電池]
本実施形態に係る二次電池は、巻回式の電極群と、電解質と、これらを収容する円筒形の電池ケースと、電池ケースの開口部を封口する封口体と、電極群と封口体との間に配置された上記の絶縁板(第1絶縁板)と、を備える。封口体は、排気弁を備えている。
【0053】
図7は、本発明の一実施形態に係る円筒形二次電池の概略縦断面図である。以下に、
図7を参しながら、リチウムイオン二次電池を例にとって本実施形態に係る二次電池についてより詳細に説明する。
【0054】
円筒形二次電池(以下、電池)10は、電極群18と、電解質(図示せず)と、これらを収容する電池ケース(電池缶)22とを具備する。電極群18は、正極板15と負極板16とをセパレータ17を介して捲回して形成されている。電池缶22の開口端の近傍には、環状溝部が形成されている。
【0055】
電池缶22の開口部は、周縁部にガスケット21を具備する封口体11で封口されている。封口体11は、弁体12と、金属板13と、弁体12の外周部と金属板13の外周部との間に介在する環状の絶縁部材14とを具備する。弁体12と金属板13は、それぞれの中心部において互いに接続されている。正極板15から導出された正極リード15aは、金属板13に接続されている。よって、弁体12は、正極の外部端子として機能する。負極板16から導出された負極リード16aは、電池缶22の底部内面に接続されている。封口体11と電極群18の一方の端面との間には、第1絶縁板20が配置されている。電極群18の他方の端面と電池缶22の底部との間には、第2絶縁板19が配置されている。
【0056】
電池10内でガスが発生して電池内圧が過度に上昇すると、弁体12に形成された薄肉部12aが押し上げられて膨らみ、弁体12の薄肉部12aより内側の部分も膨らんで、この膨らんだ部分から排気される。つまり、弁体12の薄肉部12aおよびそれより内側の部分が排気弁(防爆弁)として機能する。
図7においては、符号Bで表される部分(薄肉部12aおよびそれより内側の部分)が排気弁である。なお、Bの部分の径が排気弁の開口径とされる。
【0057】
正極板15は、箔状の正極集電体と、その表面に形成された正極活物質層とを具備する。正極集電体の材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等を用いることができる。正極活物質としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく用いられる。例えばコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムよりなる群から選択される少なくとも1種と、リチウムとを含む複合酸化物が使用される。
【0058】
負極板16は、箔状の負極集電体と、その表面に形成された負極活物質層とを具備する。負極集電体の材料としては、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼等を用いることができる。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵し、放出し得る炭素材料、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンや、酸化錫、酸化珪素等を用いることができる。
【0059】
セパレータ17としては、例えば、ポリオレフィンで形成された微多孔膜を用いることができる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体などが例示できる。
【0060】
電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解させたリチウム塩とを具備する。非水溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、鎖状エーテルなどが用いられる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4などが使用される。
【0061】
電池缶22の材質には、例えば、鉄、鉄合金、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金などが用いられるが、特に限定されない。
【0062】
電池の外径は、例えば、18mm以上26mm以下であってもよい。ただし、電池の外形が大きくなると、第1絶縁板の強度を担保し難くなる。本発明では、第1絶縁板の厚みTと、T/D比と、第1絶縁板の開口率とを上記のように調節するため、電池の外形が20mm以上と大きくても、第1絶縁板の強度を十分に確保することができるとともに、排気性が損なわれるのを抑制できる。電池の外径は、20mm以上26mm以下であることが好ましい。
【0063】
また、排気弁の開口径が12mm以上と大きい場合にも、第1絶縁板に負荷がかかり易いが、このように排気弁の開口径が大きい場合でも、第1絶縁板の強度を確保できるとともに、ガスの排気性を担保することができる。排気弁の開口径は、10mm以上であることが好ましく、12mm以上であることがさらに好ましい。
【0064】
第2絶縁板の材質は、特に制限されず、第1絶縁板について例示したものから選択してもよい。第2絶縁板として、ポリプロピレンやエポキシ樹脂のような絶縁性樹脂を主成分とする材料であり、絶縁性の繊維状材料を芯材に含むものを用いてもよい。
【0065】
[実施例]
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
《実施例1》
(1)正極板の作製
正極活物質(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)100質量部と、結着剤(ポリフッ化ビニリデン)1.7質量部と、導電剤(アセチレンブラック)2.5重量部とを分散媒中に投入し、混練して正極合剤スラリーを調製した。正極合剤スラリーをアルミニウム箔製の正極集電体の両面に塗布し、乾燥し、圧延して正極活物質層を形成し、所定寸法に切断して正極板を得た。正極集電体の一部に露出部を設け、アルミニウム製の正極リードを接続した。
【0067】
(2)負極板の作製
負極活物質(黒鉛)100質量部と、結着剤(スチレンブタジエンゴム)0.6質量部と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)1重量部とを分散媒中に投入し、混練して負極合剤スラリーを調製した。負極合剤スラリーを銅箔製の負極集電体の両面に塗布し、乾燥し、圧延して負極活物質層を形成し、所定寸法に切断して負極を得た。負極集電体の一部に露出部を設け、ニッケル製の負極リードを接続した。
【0068】
(3)非水電解質の調製
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を混合して非水溶媒を調製した。非水溶媒にLiPF6を1mol/Lの濃度で溶解して非水電解質を得た。
【0069】
(4)電池の作製
正極板と負極板とをポリオレフィン製の微多孔製膜(セパレータ)を介して巻回して電極群を作製した。電極群の下端面に第2絶縁板を配置し、電池缶に挿入し、負極リードを電池缶の底部に抵抗溶接した。電池缶には、内面にニッケルめっきを施した鉄缶を用いた。
【0070】
電極群の上端面に、ガラス繊維にフェノール樹脂を含浸させた円盤状の第1絶縁板を配置した後、電池缶の開口端の近傍に、環状溝部を形成した。第1絶縁板としては、
図1に示す第1孔および第2孔を有するものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は31.2%であり、第1孔のアスペクト比は1.5であり、第1孔の開口率は1.6%であった。また、第1絶縁板の破断強度は82Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ1mmであった。
【0071】
次に、安全機構を具備する封口体が具備する金属板に正極リードを接続し、電池缶に形成された環状溝部にガスケットを介して支持させ、電池缶の開口端を封口体の周縁にかしめ、リチウムイオン二次電池を完成させた。
【0072】
《実施例2》
第1絶縁板として、
図2に示すものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は27.6%であり、第1孔のアスペクト比は1.36であり、第1孔の開口率は1.9%であった。また、第1絶縁板の破断強度は65Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ0.8であった。
【0073】
《実施例3》
第1絶縁板として、
図3に示すものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は28.3%であり、第1孔のアスペクト比は1.36であり、第1孔の開口率は1.9%であった。また、第1絶縁板の破断強度は83Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ2mmと1.5mmであった。
【0074】
《実施例4》
第1絶縁板として、
図4に示すものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は24.3%であり、第1孔のアスペクト比は1.36であり、第1孔の開口率は1.9%であった。また、第1絶縁板の破断強度は110Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ2mmと1.5mmであった。
【0075】
《実施例5》
第1絶縁板として、
図5に示すものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は35.2%であり、第1孔のアスペクト比は1.36であり、第1孔の開口率は1.9%であった。また、第1絶縁板の破断強度は80Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ0.8mmであった。
【0076】
《実施例6》
第1絶縁板として、
図6に示すものを用いた。第1絶縁板の厚みTは0.3mmであり、T/D比は0.0149であり、開口率は8.9%であり、第1孔のアスペクト比は1.36であり、第1孔の開口率は1.9%であった。また、第1絶縁板の破断強度は180Nであった。弧状孔の外周側の2つのコーナー部の曲率半径は、それぞれ0.8mmであった。
【0077】
このように、実施例では、T/D比が小さいにもかかわらず、第1絶縁板の高い破断強度が得られる。そのため、実施例の第1絶縁板を用いると、第1絶縁板の破壊や変形が起こり難く、封口体の排気弁からの排気が損なわれるのを抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る絶縁板は、強度に優れるとともに、高い排気性を確保することができるため、電池内でガスが発生するような二次電池、特に、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池に用いるのに有用である。
【符号の説明】
【0079】
10:二次電池
11:封口体
12:弁体
12a:薄肉部
13:金属板
14:絶縁部材
15:正極板
15a:正極リード
16:負極板
16a:負極リード
17:セパレータ
18:電極群
19:第2絶縁板
20:第1絶縁板
21:ガスケット
22:電池ケース(電池缶)
220,320,420,520,620:第1絶縁板
121,221,321,421,521,621:第1孔
122,222,322,422,522,622:第2孔
122a,222a,322a,422a,522a,622a:弧状孔
122b,222b,322b,422b,522b:スポット孔
820:第1絶縁板
821:半円状の孔
822b:スポット孔
B:排気弁