(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法
(51)【国際特許分類】
B66B 1/30 20060101AFI20231204BHJP
B66B 1/18 20060101ALI20231204BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B66B1/30 H
B66B1/18 N
B66B5/02 S
(21)【出願番号】P 2022127434
(22)【出願日】2022-08-09
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 雅文
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/053825(WO,A1)
【文献】特開2012-111611(JP,A)
【文献】特開2010-246246(JP,A)
【文献】特開2003-292260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
B66B 5/00- 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路により変換された前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサにより平滑化された前記直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、該交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させるインバータ装置と、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記温度が基準温度以上であるか否かを判定する第1の判定装置と、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度以上であると判定された場合、前記スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、該乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる制御装置と、
を備え
、
前記制御装置は、前記乗りかごが呼び登録に応じて目的階に移動した後、または、前記制御装置が前記乗りかごを前記低速動作にさせた後に、前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度未満であると判定された場合、前記乗りかごを待機状態にするエレベータ制御装置。
【請求項2】
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路により変換された前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサにより平滑化された前記直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、該交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させるインバータ装置と、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記温度が基準温度以上であるか否かを判定する第1の判定装置と、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度以上であると判定された場合、前記スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、該乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる制御装置と、
を備え、
前記乗りかごは、複数であり、
前記インバータ装置は、前記乗りかごそれぞれに対応して複数備えられ、
前記制御装置は、前記乗りかごそれぞれに対応して複数備えられ、
それぞれの前記制御装置を介して複数の前記乗りかごに対する群管理による制御を行う群管理制御装置を、さらに備え、
前記群管理制御装置は、前記温度が前記基準温度以上であると判定された前記スイッチング素子に対応する前記乗りかごのうち少なくとも一部を、他の乗りかごよりも自身の乗りかごの利用に集中させる第1の動作モードで動作するように設定する
エレベータ制御装置。
【請求項3】
前記群管理制御装置は、
前記群管理の運行効率が低下しているか否かを判定し、
前記運行効率が低下していると判定した場合、自身の乗りかごの利用を回避可能な場合は回避させて他の乗りかごの利用へ代替させる第2の動作モードに設定されている前記乗りかごのうち少なくとも一部を前記第1の動作モードに変更する請求項
2に記載のエレベータ制御装置。
【請求項4】
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路により変換された前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサにより平滑化された前記直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、該交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させるインバータ装置と、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記温度が基準温度以上であるか否かを判定する第1の判定装置と、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度以上であると判定された場合、前記スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、該乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる制御装置と、
回転動作により前記スイッチング素子を冷却する冷却ファンと、
前記冷却ファンを回転駆動する駆動装置と、
を
備え、
前記駆動装置は、
前記第1の判定装置による前記温度に対する処理の開始後、前記冷却ファンの回転数を最大値に設定し、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度以上であると判定された場合、前記冷却ファンの回転数を前記最大値よりも小さい通常値に設定する
エレベータ制御装置。
【請求項5】
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、
前記整流回路により変換された前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサにより平滑化された前記直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、該交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させるインバータ装置と、
前記スイッチング素子の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記温度が基準温度以上であるか否かを判定する第1の判定装置と、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記第1の判定装置により前記温度が前記基準温度以上であると判定された場合、前記スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、該乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる制御装置と、
前記温度が前記基準温度を跨ぐ温度変化の回数をカウントするカウント装置と、
前記カウント装置によりカウントされた前記回数が所定回数以上であるか否かを判定する第2の判定装置と、
前記第2の判定装置により前記回数が前記所定回数以上であると判定された場合、前記スイッチング素子の交換が必要である旨を通知する通知装置と、
を
備えた
エレベータ制御装置。
【請求項6】
交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する整流回路と、前記整流回路により変換された前記直流電圧を平滑化する平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサにより平滑化された前記直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、該交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させるインバータ装置と、を備えたエレベータ制御装置のエレベータ制御方法であって、
温度センサにより、前記スイッチング素子の温度を検出する検出ステップと、
前記温度センサにより検出された前記温度が基準温度以上であるか否かを判定する判定ステップと、
呼び登録に応じて前記乗りかごが目的階に移動した後に前記温度が前記基準温度以上であると判定した場合、前記スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、該乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる制御ステップと、
前記乗りかごが呼び登録に応じて目的階に移動した後、または、前記乗りかごを前記低速動作にさせた後に、前記温度が前記基準温度未満であると判定した場合、前記乗りかごを待機状態にするステップと、
を有するエレベータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御装置およびエレベータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの制御装置は、乗りかごの昇降動作を実現するためのモータを駆動するため可変電圧可変周波数の交流電圧を出力するためのインバータ装置を備えている。このインバータ装置には、直流電圧を交流電圧に変換するための複数のスイッチング素子が備えられており、スイッチング素子は、高速にオンオフ動作を繰り返すことにより温度上昇を伴う。従来のエレベータの制御装置では、乗りかごの昇降動作中においては、冷却ファンをオン状態にすることにより当該スイッチング素子を冷却している。また、乗りかごが待機状態(停止状態)では、スイッチング素子は動作していないため、冷却ファンをオフ状態としている。このような冷却ファンのオンオフ制御は、あくまでスイッチング素子の温度上昇を抑制することを目的として行われている。
【0003】
このようなスイッチング素子の温度管理をする制御として、スイッチング素子の急激な冷却を抑制するために、インバータ装置の動作が停止した際に冷却ファンを停止するエレベータの制御装置が開示されている。また、エレベータの動作前にインバータ装置のスイッチング素子に徐々に電流を流すことによって、スイッチング素子の急激な温度上昇を抑制するエレベータの制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-208709号公報
【文献】特開2011-139632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インバータ装置のスイッチング素子は、温度変化の繰り返しにより劣化し寿命が短縮していくという性質があるため、従来の技術では、急激な温度の上昇または冷却を抑制することはできても、温度変化の繰り返しを抑制してスイッチング素子の延命化を図ることができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のエレベータ制御装置は、整流回路と、平滑コンデンサと、インバータ装置と、温度センサと、第1の判定装置と、制御装置と、を備える。整流回路は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。平滑コンデンサは、整流回路により変換された直流電圧を平滑化する。インバータ装置は、平滑コンデンサにより平滑化された直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、交流電圧により電動機を回転駆動させることにより乗りかごを移動させる。温度センサは、スイッチング素子の温度を検出する。第1の判定装置は、温度センサにより検出された温度が基準温度以上であるか否かを判定する。制御装置は、呼び登録に応じて乗りかごが目的階に移動した後に第1の判定装置により温度が基準温度以上であると判定された場合、スイッチング素子のオンオフ動作を制御することによって、乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる。制御装置は、さらに、乗りかごが呼び登録に応じて目的階に移動した後、または、制御装置が乗りかごを低速動作にさせた後に、第1の判定装置により温度が基準温度未満であると判定された場合、乗りかごを待機状態にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態のインバータ装置のスイッチング素子の温度変化を説明する図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第3の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第4の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第4の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態のエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、これらの実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、かつ、容易なもの、または、実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
以下の各実施形態のエレベータシステムは、例えば、ビル等の建物に設置可能なシステムである。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
図1を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1の全体構成および動作の概要について説明する。
【0011】
図1に示すように、エレベータシステム1は、交流電源10と、制御装置20(エレベータ制御装置の一例)と、エレベータ駆動モータ30(電動機)と、乗りかご31と、カウンターウェイト32と、を有する。
【0012】
交流電源10は、商用電源としての交流電力を制御装置20へ供給する電源である。
【0013】
制御装置20は、交流電源10から電力供給を受け、エレベータ駆動モータ30の駆動制御を行うことによって乗りかご31の昇降動作を制御する装置である。制御装置20は、
図1に示すように、整流回路21と、平滑コンデンサ22と、インバータ装置23と、マイコン25(制御装置)と、ゲート駆動回路26と、温度センサ27と、温度情報判定装置28(第1の判定装置)と、を備えている。
【0014】
整流回路21は、交流電源10から供給された交流電圧を直流電圧に変換する三相全波整流回路(三相ブリッジ整流回路)等の回路である。
【0015】
平滑コンデンサ22は、整流回路21の出力端間に接続され、整流回路21から出力される直流電圧の脈動を平滑化する電子部品である。
【0016】
インバータ装置23は、複数のスイッチング素子24を搭載し、当該スイッチング素子24のオンオフ動作により平滑コンデンサ22により平滑化された直流電圧を可変電圧可変周波数の交流電圧に変換するVVVF(Variable Voltage Variable Frequency)を実現する装置である。スイッチング素子24は、例えばMOSFET(Metal-Oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の素子である。
【0017】
マイコン25は、ゲート駆動回路26を介したスイッチング素子24のオンオフ動作を制御することにより、乗りかご31の昇降動作における動作方向および動作速度等の制御を行う演算装置である。
【0018】
ゲート駆動回路26は、マイコン25による制御に従って、インバータ装置23のスイッチング素子24のゲート端子への出力動作により、スイッチング素子24のオンオフ動作を行うことによって、インバータ装置23から交流電圧を出力させる回路である。
【0019】
温度センサ27は、インバータ装置23のスイッチング素子24の温度を検出し、その温度データを温度情報判定装置28へ出力するセンサである。
【0020】
温度情報判定装置28は、温度センサ27から出力された温度データを受信し、当該温度データ、すなわちスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、乗りかご31の運行方法の指令をマイコン25へ出力する装置である。温度情報判定装置28は、上記の温度に対する判定機能、および運行方法の指令機能を実現するためCPU(Central Processing Unit)またはマイコン等を搭載する。
【0021】
エレベータ駆動モータ30は、インバータ装置23から出力される交流電圧によってメインシーブを回転させ、メインロープに吊り下げられた乗りかご31を昇降動作させるモータである。
【0022】
乗りかご31は、メインローブによりエレベータ駆動モータ30で回転駆動されるメインシーブと接続され、エレベータ駆動モータ30の回転駆動によって各階床に移動し、開閉扉から利用客を収容することにより当該利用客を搬送する構造物である。
【0023】
カウンターウェイト32は、メインロープによりエレベータ駆動モータ30で回転駆動されるメインシーブと接続され、エレベータ駆動モータ30の回転に合わせて上下移動することにより乗りかご31とのバランスをとるおもりである。
【0024】
図2は、第1の実施形態のインバータ装置のスイッチング素子の温度変化を説明する図である。
図2を参照しながら、スイッチング素子24の温度変化により生じるストレスについて説明する。
【0025】
図2に示すグラフは、乗りかご31の昇降動作について、無制御で行った場合、スイッチング素子24の温度が高温に維持されるように制御した場合、および、スイッチング素子24の温度が低温に維持されるように制御した場合の3パターンの温度の推移を示している。スイッチング素子24は、温度変化が繰り返されると、大きなストレスがかかり劣化の進行を増進させる。
図2に示す例では、無制御で行った場合に、スイッチング素子24の温度が所定の基準温度X[℃]を跨いで上下動を繰り返すため、他の2パターンによる制御と比較してスイッチング素子24に大きなストレスを与えることになる。したがって、スイッチング素子24の温度変化の繰り返しが抑制されるように制御されることが望ましい。よって、本実施形態の制御装置20は、
図2に示す無制御の場合ように温度変化が繰り返されることが抑制されるように、すなわち基準温度X[℃]を跨いで上下動する回数が少なくなるように、乗りかご31の昇降動作を制御する。具体的には、制御装置20は、スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上になった場合には、その高温状態が維持されるように制御し、スイッチング素子24の基準温度X[℃]未満である場合には、その低温状態が維持されるように制御する。以下、制御装置20による具体的な制御動作について説明する。
【0026】
図3は、第1の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図3を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1の制御動作の流れについて説明する。
【0027】
<ステップS11>
エレベータシステム1が起動した後に、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されるインバータ装置23のスイッチング素子24の温度の監視を開始する。そして、ステップS12へ移行する。
【0028】
<ステップS12>
制御装置20は、エレベータ駆動モータ30に対する回転制御により、エレベータホールおよび乗りかご31で発生している呼び登録に応じて、目的階へ乗りかご31を移動させ、当該目的階に到着させると当該乗りかご31を停止させ、当該呼び登録に対する応答を完了させる。そして、ステップS13へ移行する。
【0029】
<ステップS13>
乗りかご31が目的階で停止した際に、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定する。スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS13:Yes)、ステップS14へ移行し、基準温度X[℃]未満である場合(ステップS13:No)、ステップS17へ移行する。
【0030】
<ステップS14>
スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合、温度情報判定装置28は、マイコン25に対して乗りかご31に対して待機状態ではなく、呼び登録に応答して移動する通常動作のよりも低速な低速動作をさせるように指令を出力する。マイコン25は、温度情報判定装置28の指令に応じて、乗りかご31を低速動作させる。これによって、ステップS12で呼び登録に応じた乗りかご31の移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせることができる。すなわち、低速動作によりスイッチング素子24の温度が高温状態に維持され、さらにこの状態で新たな呼び登録が発生した場合、当該呼び登録に対する応答として乗りかご31を昇降動作させると、スイッチング素子24の温度は上昇するため、さらに高温状態を維持することができる。そして、ステップS15へ移行する。
【0031】
<ステップS15>
マイコン25は、乗りかご31に対して新たな呼び登録が発生したか否かを確認する。呼び登録が発生している場合(ステップS15:Yes)、ステップS12へ戻り、呼び登録が発生していない場合(ステップS15:No)、ステップS16へ移行する。
【0032】
<ステップS16>
乗りかご31の低速動作が行われた後、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定する。スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS16:Yes)、ステップS14へ戻り、マイコン25は、乗りかご31の低速動作を維持する。一方、基準温度X[℃]未満である場合(ステップS16:No)、ステップS17へ移行する。
【0033】
<ステップS17>
スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満である場合、温度情報判定装置28は、マイコン25に対して乗りかご31を待機状態にするように指令を出力する。マイコン25は、温度情報判定装置28の指令に応じて、乗りかご31を待機状態にする。これによって、基準温度X[℃]未満のスイッチング素子24の温度を低温状態に維持することができる。
【0034】
以上のステップS11~S17の流れによって、エレベータシステム1の制御動作が繰り返される。
【0035】
以上のように、本実施形態の制御装置20では、整流回路21は、交流電源10から供給される交流電圧を直流電圧に変換し、平滑コンデンサ22は、整流回路21により変換された直流電圧を平滑化し、スイッチング素子24は、平滑コンデンサ22により平滑化された直流電圧を、複数のスイッチング素子24のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、当該交流電圧によりエレベータ駆動モータ30を回転駆動させることにより乗りかご31を移動させ、温度センサ27は、スイッチング素子24の温度を検出し、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出された温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、マイコン25は、呼び登録に応じて乗りかご31が目的階に移動した後に温度情報判定装置28により温度が基準温度X[℃]以上であると判定された場合、スイッチング素子24のオンオフ動作を制御することによって、乗りかご31を呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせるものとしている。これによって、呼び登録に応じた乗りかご31の移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせ、温度変化の繰り返しを抑制することができる。よって、インバータ装置23のスイッチング素子24を延命化することができる。
【0036】
また、マイコン25は、乗りかご31が呼び登録に応じて目的階に移動した後、または、マイコン25が乗りかご31を低速動作にさせた後に、温度情報判定装置28により温度が基準温度X[℃]未満であると判定された場合、乗りかご31を待機状態にするものとしている。これによって、基準温度X[℃]未満のスイッチング素子24の温度を低温状態に維持することができ、温度変化の繰り返しを抑制することができる。よって、インバータ装置23のスイッチング素子24を延命化することができる。
【0037】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るエレベータシステムについて、第1の実施形態に係るエレベータシステム1と相違する点を中心に説明する。本実施形態では、複数の乗りかご31を制御する群管理を行うエレベータシステムにおいて、スイッチング素子の温度に基づいて、各乗りかご31の動作モードとして高稼働モードまたは低稼働モードに切り替える動作について説明する。
【0038】
図4は、第2の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
図4を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1aの全体構成および動作の概要について説明する。
【0039】
図4に示すように、エレベータシステム1aは、第1の実施形態のエレベータシステム1と同一の構成と、当該エレベータシステム1と同一の構成を有する他の構成と、共通盤40と、を有する。エレベータシステム1と同一の構成を有する他の構成は、
図4に示すように、交流電源10aと、制御装置20aと、エレベータ駆動モータ30aと、乗りかご31aと、カウンターウェイト32aと、を有する。制御装置20aは、
図4に示すように、整流回路21aと、平滑コンデンサ22aと、インバータ装置23aと、スイッチング素子24aと、マイコン25a(制御装置)と、ゲート駆動回路26aと、温度センサ27aと、温度情報判定装置28a(第1の判定装置)と、を備えている。
【0040】
交流電源10a、制御装置20a、エレベータ駆動モータ30a、乗りかご31aおよびカウンターウェイト32aは、それぞれ交流電源10、制御装置20、エレベータ駆動モータ30、乗りかご31およびカウンターウェイト32と同様の機能を有する。したがって、制御装置20aの整流回路21a、平滑コンデンサ22a、インバータ装置23a、スイッチング素子24a、マイコン25a、ゲート駆動回路26a、温度センサ27aおよび温度情報判定装置28aは、それぞれ制御装置20の整流回路21、平滑コンデンサ22、インバータ装置23、スイッチング素子24、マイコン25、ゲート駆動回路26、温度センサ27および温度情報判定装置28と同様の機能を有する。すなわち、制御装置20は、エレベータ駆動モータ30の駆動制御を行うことによって乗りかご31の昇降動作を制御し、制御装置20aは、エレベータ駆動モータ30aの駆動制御を行うことによって乗りかご31aの昇降動作を制御する。また、制御装置20および制御装置20aの制御動作の内容は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0041】
なお、
図4では、交流電源10と、交流電源10aとは別の電源として図示しているが、共通の電源であってもよい。また、
図4では乗りかご31および乗りかご31aの2台の乗りかごを群管理する構成を示しているが、3台以上の乗りかごの群管理であってもよい。
【0042】
共通盤40は、群管理制御装置41を搭載している。群管理制御装置41は、制御装置20および制御装置20aを介して、乗りかご31および乗りかご31aの昇降動作について群管理を行う制御装置である。具体的には、群管理制御装置41は、乗りかご31の昇降動作を制御する制御装置20のマイコン25、および乗りかご31aの昇降動作を制御する制御装置20aのマイコン25aから、乗りかご31および乗りかご31aの動作状況、ならびにスイッチング素子24およびスイッチング素子24aの温度データを受信し、群管理の運行効率が低下しないように、高稼働モードの指定を行う。ここで、高稼働モード(第1の動作モード)とは、他の乗りかごを可能な限り利用させず、自身の乗りかごに利用を集中させる動作モードである。また、低稼働モード(第2の動作モード)とは、自身の乗りかごの利用を回避可能な場合は回避させ、他の乗りかごの利用へ代替させる動作モードである。
【0043】
なお、制御装置20、制御装置20aおよび群管理制御装置41は、本発明のエレベータ制御装置の一例に相当する。
【0044】
図5は、第2の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図5を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1aの制御動作の流れについて説明する。なお、
図5では、号機数が2台、すなわち乗りかご31および乗りかご31aに対する群管理の動作であるものとして説明するが、上述のように号機数が3台以上であっても
図5に示す制御動作を適用することは可能である。
【0045】
<ステップS21>
エレベータシステム1が起動した後に、温度情報判定装置28、28aは、それぞれ温度センサ27、27aにより検出されるインバータ装置23、23aのスイッチング素子24、24aの温度の監視を開始する。そして、ステップS22へ移行する。
【0046】
<ステップS22>
制御装置20は、エレベータ駆動モータ30に対する回転制御により、エレベータホールおよび乗りかご31で発生している呼び登録に応じて、目的階へ乗りかご31を移動させ、当該目的階に到着させると当該乗りかご31を停止させ、当該呼び登録に対する応答を完了させる。また、制御装置20aは、エレベータ駆動モータ30aに対する回転制御により、エレベータホールおよび乗りかご31aで発生している呼び登録に応じて、目的階へ乗りかご31aを移動させ、当該目的階に到着させると当該乗りかご31aを停止させ、当該呼び登録に対する応答を完了させる。そして、ステップS23へ移行する。
【0047】
<ステップS23>
乗りかご31が目的階で停止した際に、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、その判定結果をマイコン25を介して群管理制御装置41へ送信するまた、乗りかご31aが目的階で停止した際に、温度情報判定装置28aは、温度センサ27aにより検出されたスイッチング素子24aの温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、その判定結果をマイコン25aを介して群管理制御装置41へ送信する。スイッチング素子24またはスイッチング素子24aの少なくともいずれかの温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS23:Yes)、ステップS24へ移行し、いずれもの温度も基準温度X[℃]未満である場合(ステップS23:No)、ステップS30へ移行する。
【0048】
<ステップS24>
群管理制御装置41は、スイッチング素子の温度が基準温度X[℃]以上であるインバータ装置が制御する乗りかごのうち少なくともいずれか一部の乗りかごの昇降動作の動作モードを、対応するマイコンを介して高稼働モードに設定する。例えば、群管理制御装置41は、スイッチング素子24、24aの温度のいずれも基準温度X[℃]以上である場合、乗りかご31、31aのうちいずれか一方の動作モードを高稼働モードに設定する。また、群管理制御装置41は、スイッチング素子24aの温度のみ基準温度X[℃]以上である場合、乗りかご31aの動作モードのみを高稼働モードに設定する。これによって、乗りかご31または乗りかご31aの移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24またはスイッチング素子24aの温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせることができる。すなわち、高稼働モードに設定されたことによりスイッチング素子24またはスイッチング素子24aの温度が高温状態に維持され、さらにこの状態で新たな呼び登録が発生した場合、当該呼び登録に対する応答として乗りかご31または乗りかご31aを昇降動作させると、スイッチング素子24またはスイッチング素子24aの温度は上昇するため、さらに高温状態を維持することができる。そして、ステップS25へ移行する。
【0049】
<ステップS25>
群管理制御装置41は、乗りかご31、31aの昇降動作に対する群管理の運行効率が低下しているか否かを判定する。ここで、エレベータホールまたは乗りかごで呼び登録が発生した後、目的階への到着までの待機時間が長ければ長いほど運行効率が低下していると判断される。例えば、群管理制御装置41は、エレベータホールまたは乗りかごで発生した複数の呼び登録に対する応答動作(目的階までの移動動作)がスムーズに消化されず、呼び登録数が所定数以上となった場合、または、エレベータホールまたは乗りかごで呼び登録が発生してから目的階に到着するまでの待機時間が所定時間以上となった場合等に、運行効率が低下していると判定する。運行効率が低下している場合(ステップS25:Yes)、ステップS26へ移行し、運行効率が低下していない場合(ステップS25:No)、ステップS27へ移行する。
【0050】
<ステップS26>
群管理制御装置41は、低稼働モードに設定されている乗りかご(号機)のうち少なくとも一部の動作モードを、対応するマイコンを介して高稼働モードに変更する。これによって、低下した群管理の運行効率を向上させることができる。
【0051】
<ステップS27>
マイコン25、25aは、それぞれ乗りかご31、31aに対して新たな呼び登録が発生したか否かを確認する。呼び登録が発生している場合(ステップS27:Yes)、ステップS22へ戻り、呼び登録が発生していない場合(ステップS27:No)、ステップS28へ移行する。
【0052】
<ステップS28>
新たな呼び登録が発生していな場合、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、その判定結果をマイコン25を介して群管理制御装置41へ送信するまた、新たな呼び登録が発生していな場合、温度情報判定装置28aは、温度センサ27aにより検出されたスイッチング素子24aの温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、その判定結果をマイコン25aを介して群管理制御装置41へ送信する。スイッチング素子24またはスイッチング素子24aの少なくともいずれかの温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS28:Yes)、ステップS24へ戻り、いずれもの温度も基準温度X[℃]未満である場合(ステップS28:No)、ステップS29へ移行する。
【0053】
<ステップS29>
群管理制御装置41は、スイッチング素子の温度が基準温度X[℃]未満となったインバータ装置が制御する乗りかごについての高稼働モードの設定を、対応するマイコンを介してリセットする。そして、ステップS30へ移行する。
【0054】
<ステップS30>
群管理制御装置41は、スイッチング素子の温度が基準温度X[℃]未満となったインバータ装置が制御する乗りかごを待機状態にするように、対応するマイコンを介して指令を出力する。これによって、基準温度X[℃]未満のスイッチング素子の温度を低温状態に維持することができる。
【0055】
以上のステップS21~S30の流れによって、エレベータシステム1aの制御動作が繰り返される。
【0056】
以上のように、本実施形態のエレベータシステム1aでは、群管理制御装置41は、それぞれのマイコンを介して複数の乗りかごに対する群管理による制御を行い、温度が基準温度X[℃]以上であると判定されたスイッチング素子に対応する乗りかごのうち少なくとも一部を、他の乗りかごよりも自身の乗りかごの利用に集中させる高稼働モードで動作するように設定するものとしている。これによって、呼び登録に応じた乗りかごの移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせ、温度変化の繰り返しを抑制することができる。よって、インバータ装置23、23aのスイッチング素子24、24aを延命化することができる。
【0057】
また、群管理制御装置41は、群管理の運行効率が低下しているか否かを判定し、運行効率が低下していると判定した場合、自身の乗りかごの利用を回避可能な場合は回避させて他の乗りかごの利用へ代替させる低稼働モードに設定されている乗りかごのうち少なくとも一部を高稼働モードに変更するものとしている。これによって、低下した群管理の運行効率を向上させることができる。
【0058】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るエレベータシステムについて、第1の実施形態に係るエレベータシステム1と相違する点を中心に説明する。本実施形態では、冷却ファンを搭載し、冷却ファンのスイッチング素子に対する冷却機能を利用して、当該スイッチング素子の温度変化の繰り返しを抑制する動作について説明する。
【0059】
図6は、第3の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
図6を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1bの全体構成および動作の概要について説明する。
【0060】
図6に示すように、エレベータシステム1bは、交流電源10と、制御装置20b(エレベータ制御装置の一例)と、エレベータ駆動モータ30(電動機)と、乗りかご31と、カウンターウェイト32と、を有する。なお、このうち交流電源10、エレベータ駆動モータ30、乗りかご31およびカウンターウェイト32の機能は、上述の第1の実施形態で説明した通りである。
【0061】
制御装置20bは、交流電源10から電力供給を受け、エレベータ駆動モータ30の駆動制御を行うことによって乗りかご31の昇降動作を制御する装置である。制御装置20bは、
図6に示すように、整流回路21と、平滑コンデンサ22と、インバータ装置23と、マイコン25(制御装置)と、ゲート駆動回路26と、温度センサ27と、温度情報判定装置28(第1の判定装置)と、冷却ファン駆動装置29(駆動装置)と、冷却ファン29aと、を備えている。なお、このうち整流回路21、平滑コンデンサ22、インバータ装置23、マイコン25、ゲート駆動回路26および温度センサ27の機能は、上述の第1の実施形態で説明した通りである。
【0062】
温度情報判定装置28は、温度センサ27から出力された温度データを受信し、当該温度データ、すなわちスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、乗りかご31の運行方法の指令をマイコン25へ出力する。また、温度情報判定装置28は、スイッチング素子24の温度に対する判定結果に応じて、冷却ファン29aの回転数の指令を、冷却ファン駆動装置29へ出力する。
【0063】
冷却ファン駆動装置29は、温度情報判定装置28からの冷却ファン29aの回転数の指令に応じて、冷却ファン29aを当該回転数となるように回転させる駆動装置である。
【0064】
冷却ファン29aは、冷却ファン駆動装置29の制御に応じて回転することによって、インバータ装置23に、またはスイッチング素子24に直接、風を当てるファン装置である。この冷却ファン29aによる風によって、スイッチング素子24の温度上昇を抑制することができる。
【0065】
図7は、第3の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図7を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1bの制御動作の流れについて説明する。
【0066】
<ステップS41>
エレベータシステム1bが起動した後に、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されるインバータ装置23のスイッチング素子24の温度の監視を開始する。そして、ステップS42へ移行する。
【0067】
<ステップS42>
温度情報判定装置28は、冷却ファン29aの回転数を最大値にする指令を、冷却ファン駆動装置29へ出力する。そして、冷却ファン駆動装置29は、温度情報判定装置28からの冷却ファン29aの回転数を最大値にする指令に応じて、冷却ファン29aの回転数を最大値となるように回転させる。そして、ステップS43へ移行する。
【0068】
<ステップS43>
制御装置20は、エレベータ駆動モータ30に対する回転制御により、エレベータホールおよび乗りかご31で発生している呼び登録に応じて、目的階へ乗りかご31を移動させ、当該目的階に到着させると当該乗りかご31を停止させ、当該呼び登録に対する応答を完了させる。そして、ステップS44へ移行する。
【0069】
<ステップS44>
乗りかご31が目的階で停止した際に、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定する。スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS44:Yes)、ステップS45へ移行し、基準温度X[℃]未満である場合(ステップS44:No)、ステップS49へ移行する。
【0070】
<ステップS45>
スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合、温度情報判定装置28は、冷却ファン29aの回転数を最大値よりも小さい通常値にする指令を、冷却ファン駆動装置29へ出力する。そして、冷却ファン駆動装置29は、温度情報判定装置28からの冷却ファン29aの回転数を通常値にする指令に応じて、冷却ファン29aの回転数を通常値となるように回転させる。このように冷却ファン29aの回転数を低下させることにより、ステップS43で呼び登録に応じた乗りかご31の移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせることができる。そして、ステップS46へ移行する。
【0071】
<ステップS46>
さらに、温度情報判定装置28は、マイコン25に対して乗りかご31に対して待機状態ではなく、呼び登録に応答して移動する通常動作のよりも低速な低速動作をさせるように指令を出力する。マイコン25は、温度情報判定装置28の指令に応じて、乗りかご31を低速動作させる。これによって、ステップS43で呼び登録に応じた乗りかご31の移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせることができる。すなわち、低速動作によりスイッチング素子24の温度が高温状態に維持され、さらにこの状態で新たな呼び登録が発生した場合、当該呼び登録に対する応答として乗りかご31を昇降動作させると、スイッチング素子24の温度は上昇するため、さらに高温状態を維持することができる。そして、ステップS47へ移行する。
【0072】
<ステップS47>
マイコン25は、乗りかご31に対して新たな呼び登録が発生したか否かを確認する。呼び登録が発生している場合(ステップS47:Yes)、ステップS43へ戻り、呼び登録が発生していない場合(ステップS47:No)、ステップS48へ移行する。
【0073】
<ステップS48>
乗りかご31の低速動作が行われた後、温度情報判定装置28は、温度センサ27により検出されたスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定する。スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上である場合(ステップS48:Yes)、ステップS46へ戻り、マイコン25は、乗りかご31の低速動作を維持する。一方、基準温度X[℃]未満である場合(ステップS48:No)、ステップS49へ移行する。
【0074】
<ステップS49>
スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満である場合、温度情報判定装置28は、冷却ファン29aの回転数をリセットする指令を、冷却ファン駆動装置29へ出力する。そして、冷却ファン駆動装置29は、温度情報判定装置28からの冷却ファン29aの回転数をリセットする指令に応じて、冷却ファン29aの回転を停止させる。そして、ステップS50へ移行する。
【0075】
<ステップS50>
さらに、温度情報判定装置28は、マイコン25に対して乗りかご31を待機状態にするように指令を出力する。マイコン25は、温度情報判定装置28の指令に応じて、乗りかご31を待機状態にする。これによって、基準温度X[℃]未満のスイッチング素子24の温度を低温状態に維持することができる。
【0076】
以上のステップS41~S50の流れによって、エレベータシステム1bの制御動作が繰り返される。
【0077】
以上のように、本実施形態の制御装置20bでは、冷却ファン29aは、回転動作によりスイッチング素子24を冷却し、冷却ファン駆動装置29は、温度情報判定装置28による温度に対する処理の開始後、冷却ファン29aの回転数を最大値に設定し、呼び登録に応じて乗りかご31が目的階に移動した後に温度情報判定装置28により温度が基準温度X[℃]以上であると判定された場合、冷却ファン29aの回転数を最大値よりも小さい通常値に設定するものとしている。このように冷却ファン29aの回転数を低下させることにより、呼び登録に応じた乗りかご31の移動動作により基準温度X[℃]以上に上昇したスイッチング素子24の温度を高温状態に維持し、当該温度の低下を緩やかにさせることができ、温度変化の繰り返しを抑制することができる。よって、インバータ装置23のスイッチング素子24を延命化することができる。
【0078】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係るエレベータシステムについて、第1の実施形態に係るエレベータシステム1と相違する点を中心に説明する。本実施形態では、スイッチング素子の温度変化の回数をカウントし、当該回数によりスイッチング素子の寿命を判断して通知する動作について説明する。
【0079】
図8は、第4の実施形態のエレベータシステムの全体構成の一例を示す図である。
図8を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1cの全体構成および動作の概要について説明する。
【0080】
図8に示すように、エレベータシステム1cは、交流電源10と、制御装置20c(エレベータ制御装置の一例)と、エレベータ駆動モータ30(電動機)と、乗りかご31と、カウンターウェイト32と、を有する。なお、このうち交流電源10、エレベータ駆動モータ30、乗りかご31およびカウンターウェイト32の機能は、上述の第1の実施形態で説明した通りである。
【0081】
制御装置20cは、交流電源10から電力供給を受け、エレベータ駆動モータ30の駆動制御を行うことによって乗りかご31の昇降動作を制御する装置である。制御装置20cは、
図8に示すように、整流回路21と、平滑コンデンサ22と、インバータ装置23と、マイコン25と、ゲート駆動回路26と、温度センサ27と、温度情報判定装置28(第1の判定装置)と、温度変化記録装置51(カウント装置)と、寿命算出装置52(第2の判定装置)と、部品情報通知装置53(通知装置)と、を備えている。なお、このうち整流回路21、平滑コンデンサ22、インバータ装置23、マイコン25、ゲート駆動回路26および温度センサ27の機能は、上述の第1の実施形態で説明した通りである。
【0082】
温度情報判定装置28は、温度センサ27から出力された温度データを受信し、当該温度データ、すなわちスイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]以上であるか否かを判定し、乗りかご31の運行方法の指令をマイコン25へ出力する。また、温度情報判定装置28は、スイッチング素子24の温度に対する判定結果を、温度変化記録装置51へ出力する。
【0083】
温度変化記録装置51は、温度情報判定装置28から受信したスイッチング素子24の温度に対する判定結果に基づいて、温度変化をした回数(例えば基準温度X[℃]未満から基準温度X[℃]以上となった回数)をカウントして記憶する装置である。
【0084】
寿命算出装置52は、温度変化記録装置51に記憶されたスイッチング素子24の温度変化の回数を取得し、スイッチング素子24の寿命を算出する装置である。具体的には、寿命算出装置52は、取得した温度変化の回数が所定回数であるY回以上であるか否かを判定することにより寿命を算出する。
【0085】
部品情報通知装置53は、寿命算出装置52による算出結果を取得し、当該算出結果が寿命に達していないことを示す場合、スイッチング素子24についてリユース可能である旨を通知し、当該算出結果が寿命に達したことを示す場合、スイッチング素子24の交換が必要である旨を通知する装置である。例えば、部品情報通知装置53は、通信インターフェースを有し、上述の通知内容をネットワークを介して所定の装置へ送信するものとしてもよい。または、部品情報通知装置53は、表示装置を備え、上述の通知内容を当該表示装置に表示させるものとしてもよい。
【0086】
図9は、第4の実施形態のエレベータシステムの制御動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図9を参照しながら、本実施形態のエレベータシステム1cの制御動作の流れについて説明する。
【0087】
<ステップS61~S66>
ステップS61~S66の処理は、上述の
図3に示したステップS11~S16の処理と同様である。なお、ステップS63において、スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満である場合、ステップS71へ移行する。また、ステップS66において、スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満である場合、ステップS67へ移行する。
【0088】
<ステップS67>
低速動作後、スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満となった場合、温度変化記録装置51は、ステップS63で当該温度が基準温度X[℃]以上となった後にステップS66で基準温度X[℃]未満となったことで、基準温度X[℃]を跨ぐ温度変化が生じたものとして温度変化の回数をカウントして(回数を1増加させて)、記憶する。そして、ステップS68へ移行する。
【0089】
<ステップS68>
寿命算出装置52は、温度変化記録装置51に記憶されたスイッチング素子24の温度変化の回数を取得し、当該回数が所定回数であるY回以上であるか否かを判定する。当該回数がY回未満である場合(ステップS68:No)、ステップS69へ移行し、Y回以上である場合(ステップS68:Yes)、ステップS70へ移行する。
【0090】
<ステップS69>
部品情報通知装置53は、寿命算出装置52による判定結果からスイッチング素子24が寿命に達していないと判断し、当該スイッチング素子24についてリユース可能である旨を通知する。そして、ステップS71へ移行する。
【0091】
<ステップS70>
部品情報通知装置53は、寿命算出装置52による判定結果からスイッチング素子24が寿命に達したと判断し、当該スイッチング素子24の交換が必要である旨を通知する。そして、ステップS71へ移行する。
【0092】
<ステップS71>
スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]未満である場合、温度情報判定装置28は、マイコン25に対して乗りかご31を待機状態にするように指令を出力する。マイコン25は、温度情報判定装置28の指令に応じて、乗りかご31を待機状態にする。これによって、基準温度X[℃]未満のスイッチング素子24の温度を低温状態に維持することができる。
【0093】
以上のステップS61~S71の流れによって、エレベータシステム1cの制御動作が繰り返される。
【0094】
以上のように、本実施形態の制御装置20cでは、温度変化記録装置51は、スイッチング素子24の温度が基準温度X[℃]を跨ぐ温度変化の回数をカウントし、寿命算出装置52は、温度変化記録装置51によりカウントされた回数がY回以上であるか否かを判定し、部品情報通知装置53は、寿命算出装置52により回数がY回以上であると判定された場合、スイッチング素子24の交換が必要である旨を通知するものとしている。これによって、スイッチング素子24の寿命を特定することができ、当該スイッチング素子24の交換を促すことが可能となる。
【0095】
なお、上述の第2の実施形態のエレベータシステム1aは、第1の実施形態のエレベータシステム1を適用したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、第3の実施形態のエレベータシステム1bまたは第4の実施形態のエレベータシステム1cを適用することも可能である。また、第3の実施形態のエレベータシステム1bと第4の実施形態のエレベータシステム1cとを組み合わせることも可能である。
【0096】
また、上述の各実施形態は、例示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述の各実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更および組み合わせを行うことができる。
【符号の説明】
【0097】
1、1a~1c エレベータシステム、10、10a 交流電源、20、20a~20c 制御装置、21、21a 整流回路、22、22a 平滑コンデンサ、23、23a インバータ装置、24、24a スイッチング素子、25、25a マイコン、26、26a ゲート駆動回路、27、27a 温度センサ、28、28a 温度情報判定装置、29 冷却ファン駆動装置、29a 冷却ファン、30、30a エレベータ駆動用モータ、31、31a 乗りかご、32、32a カウンターウェイト、40 共通盤、41 群管理制御装置、51 温度変化記録装置、52 寿命算出装置、53 部品情報通知装置
【要約】
【課題】インバータ装置のスイッチング素子を延命化することができるエレベータ制御装置およびエレベータ制御方法を提供する。
【解決手段】エレベータ制御装置は、整流回路と、平滑コンデンサと、インバータ装置と、温度センサと、第1の判定装置と、制御装置と、を備える。整流回路は、交流電源から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。平滑コンデンサは、変換された直流電圧を平滑化する。インバータ装置は、直流電圧を、複数のスイッチング素子のオンオフ動作により可変電圧可変周波数の交流電圧に変換し、電動機を回転駆動させて乗りかごを移動させる。温度センサは、スイッチング素子の温度を検出する。第1の判定装置は、温度が基準温度以上であるか否かを判定する。制御装置は、呼び登録に応じて乗りかごが移動した後に温度が基準温度以上であると判定された場合、乗りかごを呼び登録に応じて移動させる場合の動作よりも低速な低速動作をさせる。
【選択図】
図1