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特許7395691付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 5/02 20060101AFI20231204BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20231204BHJP
   B04C 5/23 20060101ALN20231204BHJP
【FI】
B08B5/02 Z
B08B3/02 A
B04C5/23
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022170053
(22)【出願日】2022-10-24
【審査請求日】2023-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】森光 孝典
(72)【発明者】
【氏名】岩村 和也
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 賢哲
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154146(JP,A)
【文献】特開平10-020557(JP,A)
【文献】特表2018-529512(JP,A)
【文献】特表2015-506837(JP,A)
【文献】特許第7039666(JP,B1)
【文献】特公昭58-052713(JP,B2)
【文献】特開2007-54776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-15/04
B04C 5/00- 5/30
B02C19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリを回収する回収タンクの内壁面に付着する付着物を除去する付着物除去装置であって、
前記回収タンクの内壁面に向かって噴射するノズルと、
所定の溶媒量の溶媒が充填される溶媒タンクと、
前記溶媒タンクの上部と前記ノズルとを接続する配管と、
前記溶媒タンクの下部に圧縮エアを供給するエア供給部であり、前記圧縮エアの供給の初期においては前記溶媒タンク内の溶媒を前記ノズルから噴射させ、中期においては前記溶媒タンク内に残った溶媒と前記圧縮エアとが混在した液滴を前記ノズルから噴射させ、前記溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては前記圧縮エアを前記ノズルから噴射させるように前記圧縮エアの圧力が設定されるエア供給部と
を含む付着物除去装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記回収タンク内の上部に配設される第1ノズルと、前記回収タンク内の下部に配設される第2ノズルとを有し、
前記溶媒タンクは、前記第1ノズルに供給される溶媒が充填される第1溶媒タンクと、前記第2ノズルに供給される溶媒が充填される第2溶媒タンクとを有し、
前記配管は、前記第1溶媒タンクの上部と前記第1ノズルとを接続する第1配管と、前記第2溶媒タンクの上部と前記第2ノズルとを接続する第2配管とを有する
請求項1記載の付着物除去装置。
【請求項3】
前記溶媒タンクに所定量の溶媒を供給する溶媒供給部を含む請求項1または2に記載の付着物除去装置。
【請求項4】
スラリを回収する回収タンクの内壁面に付着する付着物を除去する付着物除去方法であって、
所定の溶媒量の溶媒が充填される溶媒タンクの下部に所定の圧力に設定された圧縮エアを供給することにより、前記圧縮エアの供給の初期においては前記溶媒タンク内の溶媒を、前記溶媒タンクの上部とノズルとを接続する配管を通じ、前記回収タンクの内壁面に向かって前記ノズルから噴射させ、中期においては前記溶媒タンク内に残った溶媒と前記圧縮エアとが混在した液滴を前記ノズルから噴射させ、前記溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては前記圧縮エアを前記ノズルから噴射させる
ことを特徴とする付着物除去方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の付着物除去装置を備えたスラリ回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に付着する付着物を除去する付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状態の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化する装置として、例えば特許文献1に記載された微粒化装置がある。また、衝突部への衝突により微粒化が行われた後の微小液滴をスラリとして回収する装置として、例えば特許文献2に記載されたスラリ回収装置がある。
【0003】
図3は特許文献2に記載のスラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。図3に示すように、スラリ回収装置100では、微粒化装置150において気体供給配管152を経由して気体流(空気流)を供給するとともに、液体供給配管151を経由して固体粒子を含む液体を供給すると、液体供給配管151を経由して供給される固体粒子を含む液体は、気体供給配管152を経由して供給される気体流によって加速され、流動状態の微小液滴となって微細化処理部153に送り込まれる。
【0004】
微細化処理部153においては、送り込まれた微小液滴を衝突部材155に衝突させることにより固体粒子が微細粒子に微粒化され、固体粒子を含む液体であるスラリがミスト状に交じり合った空気流S100となって気体流動空間154を経由してスラリ回収装置100の給気経路105へ供給される。給気経路105へ供給された空気流S100は、エルボ105bによって進行方向が90度曲げられ、チャンバ101の軸心101cとねじれの位置関係をなす方向へ吹き出し、チャンバ101の内周面101dに衝突するので、チャンバ101および回収部103の内部には軸心101cの周りを螺旋状に回転する旋回流が発生し、サイクロン効果が生じる。
【0005】
このサイクロン効果により、空気流S100に含まれている固体粒子を含む液体であるスラリは遠心力でチャンバ101の内周面101dに接近する方向へ移動して内周面101dに付着した後、重力により内周面101dに沿って回収部103の内周面103dに向かって下降し、内周面103dに到達した後は内周面103dに沿って下降して排液管108に流れ込み、所定の回収容器(図示せず)に回収される。また、サイクロン効果により、チャンバ101内の軸心101c近傍の旋回流はスラリの含有量が著しく低下した状態となった後、排気経路104の下端開口部4bから排気経路104内へ吸い込まれ、排気経路104を経由して排気ユニット109へ流入する。
【0006】
また、スラリ回収装置100においては、チャンバ101の蓋体102の下面側にスプレー106が設けられ、チャンバ101の周壁101wにスプレー107が設けられている。チャンバ101内において、スプレー106,107を3秒~60秒の間隔で、1秒~2秒ずつ交互に運転させることにより、チャンバ101の内周面101dならびに回収部103の内周面103dに付着するスラリを速やかに排液管108に向かって流下させ、チャンバ101の内周面101dならびに回収部103の内周面103dへのスラリなどの付着を減らすことができるので、スラリ消失量を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4447042号公報
【文献】特許第7039666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、スラリ回収装置10では、スラリをエアで噴射するので、スラリ中の溶媒は一定量気化し、スラリ固形分濃度を濃縮させる。一方、チャンバ101の内周面101dならびに回収部103の内周面103dの洗浄に使用する溶媒量は、スラリに混入するので、スラリ固形分濃度を希釈させる。スラリ回収装置10により回収するスラリは、品質維持のために固形分濃度を変えられないため、蒸発量と同量の溶媒量を洗浄に使用する。そこで、細かい微細液滴を散布して、壁面での固化を防止しているが、固形分濃度が高いスラリの場合は、壁面での付着固化が発生しやすいという問題がある。
【0009】
そこで、本発明においては、壁面に付着する付着物を固化前に除去し、壁面での付着固化を防止することが可能な付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の付着物除去装置は、スラリを回収する回収タンクの内壁面に付着する付着物を除去する付着物除去装置であって、回収タンクの内壁面に向かって噴射するノズルと、所定の溶媒量の溶媒が充填される溶媒タンクと、溶媒タンクの上部とノズルとを接続する配管と、溶媒タンクの下部に圧縮エアを供給するエア供給部であり、圧縮エアの供給の初期においては溶媒タンク内の溶媒をノズルから噴射させ、中期においては溶媒タンク内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴をノズルから噴射させ、溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアをノズルから噴射させるように圧縮エアの圧力が設定されるエア供給部とを含むものである。
【0011】
また、本発明の付着物除去方法は、スラリを回収する回収タンクの内壁面に付着する付着物を除去する付着物除去方法であって、所定の溶媒量の溶媒が充填される溶媒タンクの下部に所定の圧力に設定された圧縮エアを供給することにより、圧縮エアの供給の初期においては溶媒タンク内の溶媒を、溶媒タンクの上部とノズルとを接続する配管を通じ、回収タンクの内壁面に向かってノズルから噴射させ、中期においては溶媒タンク内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴をノズルから噴射させ、溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアをノズルから噴射させることを特徴とする。
【0012】
上記発明によれば、エア供給部から溶媒タンクの下部に所定の圧力の圧縮エアを供給することで、圧縮エアの供給の初期においては溶媒タンク内の溶媒がノズルから噴射されるので、この圧縮エアにより加圧噴射された溶媒により回収タンクの内壁面が洗浄される。次に、圧縮エアの供給の中期においては溶媒タンク内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴がノズルから噴射されるので、この溶媒と圧縮エアとの2流体が混在した高速の液滴により回収タンクの内壁面が洗浄される。そして、溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアがノズルから噴射されるので、回収タンクの内壁面がエアブローにより洗浄される。これにより、回収タンクの内壁面に付着する付着物が固化する前に除去される。
【0013】
ここで、ノズルは、回収タンク内の上部に配設される第1ノズルと、回収タンク内の下部に配設される第2ノズルとを有し、溶媒タンクは、第1ノズルに供給される溶媒が充填される第1溶媒タンクと、第2ノズルに供給される溶媒が充填される第2溶媒タンクとを有し、配管は、第1溶媒タンクの上部と第1ノズルとを接続する第1配管と、第2溶媒タンクの上部と第2ノズルとを接続する第2配管とを有するものであることが望ましい。
【0014】
これにより、エア供給部から第1溶媒タンクおよび第2溶媒タンクの下部に所定の圧力の圧縮エアをそれぞれ供給することで、圧縮エアの供給の初期においては第1溶媒タンクおよび第2溶媒タンク内の溶媒が、第1溶媒タンクおよび第2溶媒タンクの上部と第1ノズルおよび第2ノズルとをそれぞれ接続する第1配管および第2配管を通じ、回収タンクの内壁面に向かって第1ノズルおよび第2から噴射させ、中期においては第1溶媒タンクおよび第2溶媒タンク内にそれぞれ残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴を第1ノズルおよび第2ノズルからそれぞれ噴射させ、第1溶媒タンクおよび第2溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアを第1ノズルおよび第2ノズルからそれぞれ噴射させることができる。
【0015】
本発明の付着物除去装置は、溶媒タンクに所定量の溶媒を供給する溶媒供給部を含むことが望ましい。これにより、溶媒供給部から溶媒タンクに所定量の溶媒を供給して、上記のように回収タンクの内壁面に付着する付着物を除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エア供給部から溶媒タンクの下部に圧縮エアを供給することで、圧縮エアの供給の初期においては溶媒タンク内の溶媒をノズルから噴射させ、中期においては溶媒タンク内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴をノズルから噴射させ、溶媒タンク内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアをノズルから噴射させることにより、回収タンクの内壁面に付着する付着物が固化する前に除去されるので、付着物の再凝集化が防止され、スラリの固形分濃度を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態におけるスラリ回収装置に備えられた付着物除去装置の配管系統図である。
図2図1のスラリ回収装置の回収タンク周りの拡大図である。
図3】スラリ回収装置を示す一部省略垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施の形態におけるスラリ回収装置に備えられる付着物除去装置の配管系統図、図2図1のスラリ回収装置の回収タンク周りの拡大図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施の形態におけるスラリ回収装置10に備えられる付着物除去装置1は、スラリ回収装置10の回収タンク11の内壁面12A,13A,14A(図2参照。)に向かって噴射する第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bと、溶媒が充填される第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bと、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに圧縮エアを供給するエア供給部4と、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに溶媒を供給する溶媒供給部5とを有する。
【0020】
スラリ回収装置10は、固体粒子を含む液体を気体流によって加速して流動状体の微小液滴とし、この微小液滴を衝突部に衝突させることにより、固体粒子を微細粒子に微粒化し、微粒化が行われた後の微小液滴をスラリとして回収タンク11に回収する。回収タンク11は、図2に示すように、上部のチャンバ12と、下部の回収部13と、チャンバ12の上端開口部を閉塞する蓋体14とから構成される。チャンバ12は、円筒形状をなし、その軸心12Cが直立した状態に保持されている。回収部13は、その内壁面13Aが下方に向かって連続的に縮径する漏斗状をなしている。
【0021】
第1ノズル2Aは、回収タンク11のチャンバ12内の上部に、その内壁面12Aに沿うように環状に配設されたチューブにより形成されている。第1ノズル2Aには、チャンバ12の内周面(内壁面12A)および蓋体14の下面(内壁面14A)に向かってそれぞれ噴射する噴射口2A-1,2A-2が軸心12C周りに45°間隔で複数設けられている。なお、噴射口2A-1,2A-2の噴射方向および間隔は適宜変更可能である。
【0022】
第2ノズル2Bは、回収タンク11のチャンバ12内の下部に、その内壁面12Aに沿うように環状に配設されたチューブにより形成されている。第2ノズル2Bには、下方すなわち、回収部13の内周面(内壁面13A)に向かって噴射する噴射口2B-1が軸心12C周りに45°間隔で複数設けられている。なお、噴射口2B-1の噴射方向および間隔は適宜変更可能である。
【0023】
第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bには、所定の溶媒量の溶媒が充填される。充填される所定の溶媒量とは、回収タンク11内にスラリをエアで噴射した際に気化するスラリ中の溶媒の蒸発量と同量の溶媒量である。第1溶媒タンク3Aの上部と第1ノズル2Aとは第1配管6Aにより接続されている。第2溶媒タンク3Bの上部と第2ノズル2Bとは第2配管6Bにより接続されている。
【0024】
エア供給部4は、図示しない圧縮エア供給源に接続された減圧弁40と、減圧弁40に接続された圧力制御弁41と、圧力制御弁41に接続された第1電磁弁43と、第1電磁弁43に接続されたエアーフィルタ44とを備える。圧力制御弁41と第1電磁弁43とを接続する配管70の途中には圧力計42が設けられている。エアーフィルタ44に接続された配管71は、第1溶媒タンク3A側の配管71Aと第2溶媒タンク3B側の配管71Bとに分岐している。
【0025】
配管71Aには第2電磁弁45Aが接続されている。第2電磁弁45Aは逆止弁46Aを介して第1溶媒タンク3Aの下部に接続されている。配管71Bには第3電磁弁45Bが接続されている。第3電磁弁45Bは逆止弁46Bを介して第2溶媒タンク3Bの下部に接続されている。
【0026】
エア供給部4は、減圧弁40、圧力制御弁41、第1電磁弁43、エアーフィルタ44、第2電磁弁45Aおよび逆止弁46A、並びに第3電磁弁45Bおよび逆止弁46B等を通じて、それぞれ第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bの下部に、減圧弁40により減圧され、圧力制御弁41により予め設定された圧力の圧縮エアを供給する。
【0027】
溶媒供給部5は、溶媒が収容された溶媒供給タンク50と、溶媒供給タンク50から配管80を通じて溶媒を圧送するポンプ51とを備える。ポンプ51に接続された配管81は、第1溶媒タンク3A側の配管82Aと第2溶媒タンク3B側の配管82Bとに分岐している。
【0028】
配管82Aには第4電磁弁52Aが接続されている。第4電磁弁52Aは逆止弁53Aを介して第1溶媒タンク3Aの下部に接続されている。配管82Bには第5電磁弁52Bが接続されている。第5電磁弁52Bは逆止弁53Bを介して第2溶媒タンク3Bの下部に接続されている。
【0029】
溶媒供給部5は、ポンプ51、第4電磁弁52Aおよび逆止弁53A、並びに第5電磁弁52Bおよび逆止弁53B等を通じて、それぞれ第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに所定量の溶媒を供給する。第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bにそれぞれ供給する所定量の溶媒は、前述のように、回収タンク11内にスラリをエアで噴射した際に気化するスラリ中の溶媒の蒸発量と同量の溶媒量である。
【0030】
上記構成の付着物除去装置1では、まず、第4電磁弁52Aおよび第5電磁弁52Bを開き、ポンプ51を作動させて、所定量の溶媒をそれぞれ第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに圧送する。これにより、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bにそれぞれ所定の溶媒量の溶媒が充填される。第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに供給された溶媒は、逆止弁53A,53Bにより逆流が防止される。
【0031】
次に、第1電磁弁43、第2電磁弁45Aおよび第3電磁弁45Bを開き、圧力制御弁41により所定の一定圧力に設定された圧縮エアを、それぞれ第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bの下部へ供給する。第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3Bに供給された圧縮エアは、逆止弁46A,46Bにより逆流が防止される。
【0032】
これにより、圧縮エアの供給の初期においては、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内の溶媒が、それぞれ第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから噴射される。このとき、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内の溶媒は、圧縮エアにより回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aに向かって加圧噴射され、内壁面12A,13A,14Aが洗浄される。
【0033】
次に、圧縮エアの供給の中期においては第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内に残った溶媒が圧縮エアと混在した状態で、それぞれ第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから液滴として噴射される。この溶媒と圧縮エアとの2流体が混在した高速の液滴により回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aが洗浄される。
【0034】
そして、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内の溶媒が無くなった終期においては、圧縮エアのみがそれぞれ第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから噴射されるので、回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aがこのエアブローにより洗浄される。これにより、回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aに付着する付着物が固化する前に除去される。
【0035】
このように、本実施形態における付着物除去装置1では、強い洗浄力を得るために、所定の圧力の圧縮エアによる溶媒噴射(工程1)、所定の圧力の圧縮エアと溶媒との2流体の液滴の高速噴射(工程2)、所定の圧力の圧縮エアによるエアブロー(工程3)の3工程を順に行う。
【0036】
これにより、最初に工程1において主に大きな粒子の溶媒の液滴が噴射されて、付着した固形粉を濡らして内壁面12A,13A,14Aから浮き上がらせ、次に工程2において圧縮エアと溶媒の2流体ジェットで固形粉を含んだ液膜を吹き飛ばし、最後に工程3において圧縮エアが壁に残った液滴を吹き飛ばす3段階の洗浄を行うことになり、洗浄面である回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aの境界層を薄くして、スラリの固形粉を少ない溶媒量で除去することができる。
【0037】
なお、上記3工程中、圧縮エアの圧力は一定圧力に設定されている。すなわち、圧縮エアの供給の初期においては第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内の溶媒をそれぞれ第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから噴射させ、中期においては第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴を第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから噴射させ、第1溶媒タンク3Aおよび第2溶媒タンク3B内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアを第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bから噴射させるように、圧縮エアの圧力が所定の一定圧力に設定される。
【0038】
なお、本実施形態においては、第1電磁弁43、第2電磁弁45Aおよび第3電磁弁45Bを全て開くことで、第1ノズル2Aおよび第2ノズル2Bの両方から噴射する構成について説明しているが、必要に応じて第2電磁弁45Aまたは第3電磁弁45Bのいずれか一方のみを開いて噴射する構成とすることも可能である。また、溶媒タンクやノズルについては、任意に増減することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、壁面に付着する付着物を除去する付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置として有用であり、特に、壁面に付着する付着物を固化前に除去し、壁面での付着固化を防止することが可能な付着物除去装置および付着物除去方法ならびにスラリ回収装置として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 付着物除去装置
2A 第1ノズル
2B 第2ノズル
3A 第1溶媒タンク
3B 第2溶媒タンク
4 エア供給部
40 減圧弁
41 圧力制御弁
42 圧力計
43 第1電磁弁
44 エアーフィルタ
45A 第2電磁弁
45B 第3電磁弁
46A,46B 逆止弁
5 溶媒供給部
50 溶媒供給タンク
51 ポンプ
52A 第4電磁弁
52B 第5電磁弁
53A,53B 逆止弁
6A 第1配管
6B 第2配管
10 スラリ回収装置
11 回収タンク
12 チャンバ
13 回収部
14 蓋体
【要約】
【課題】壁面に付着する付着物を固化前に除去し、壁面での付着固化を防止する。
【解決手段】スラリを回収する回収タンク11の内壁面に付着する付着物を除去する付着物除去装置1であって、回収タンク11の内壁面12A,13A,14Aに向かって噴射するノズル2A,2Bと、所定の溶媒量の溶媒が充填される溶媒タンク3A,3Bと、溶媒タンク3A,3Bの上部とノズル2A,2Bとを接続する配管6A,6Bと、溶媒タンク3A,3Bの下部に圧縮エアを供給するエア供給部4であり、圧縮エアの供給の初期においては溶媒タンク3A,3B内の溶媒をノズル2A,2Bから噴射させ、中期においては溶媒タンク3A,3B内に残った溶媒と圧縮エアとが混在した液滴をノズル2A,2Bから噴射させ、溶媒タンク3A,3B内の溶媒が無くなった終期においては圧縮エアをノズル2A,2Bから噴射させるように圧縮エアの圧力が設定されるエア供給部4とを含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3