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特許7395706電動式のブレーキ装置用の電動機を運転するための方法および装置
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  • 特許-電動式のブレーキ装置用の電動機を運転するための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】電動式のブレーキ装置用の電動機を運転するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/22 20060101AFI20231204BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20231204BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
B60T17/22 Z
B60T13/74 Z
B60T8/17 Z
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022199395
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2020571714の分割
【原出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2023027274
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】102018211239.8
(32)【優先日】2018-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ベールレーミラー フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエンケン フーベルトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ツェヒマイスター シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】カーニー ノベルト
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-013101(JP,A)
【文献】特開2010-100112(JP,A)
【文献】特開2006-211825(JP,A)
【文献】特開2003-237605(JP,A)
【文献】特開2015-142435(JP,A)
【文献】特開2017-053490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電動式のブレーキ装置(300)用の電動機(200)を運転するための方法であって、前記ブレーキ装置(300)は、前記電動機(200)を第1の回転方向で運転することよって第1の運転状態に移行可能であり、前記電動機(200)を前記第1の回転方向とは異なる第2の回転方向で運転することによって第2の運転状態に移行可能である方法において、前記方法は、装置(100)を用いて前記電動機(200)の内部抵抗を特徴付ける第1の値を算出(400)するステップと、前記装置(100)を用いて前記第1の値を予め設定可能な第1の閾値と比較(402)するステップと、前記比較(402)により前記第1の値が前記第1の閾値を超えたことが明らかになったときに、前記装置(100)を用いて、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態を算出するステップと、前記装置(100)を用いて、予め設定可能な制御時間である第1の制御時間だけ、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態に相当する回転方向で前記電動機(200)を制御(410)するステップとを有していて、
前記ブレーキ装置(300)が前記第1の運転状態にある時には、前記実際の運転状態に相当する回転方向は前記第1の回転方向であり、前記ブレーキ装置(300)が前記第2の運転状態にある時には、前記実際の運転状態に相当する回転方向は前記第2の回転方向であり、前記第1の値の算出(400)、前記比較(402)、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態の算出および前記制御(410)のステップを繰り返し行い、前記制御時間が繰り返しの回数に伴って増やされる、電動式のブレーキ装置(300)用の電動機(200)を運転するための方法。
【請求項2】
前記第1の値が前記第1の閾値以下となるまで、前記第1の値の算出(400)、前記比較(402)、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態の算出および前記制御(410)のステップを繰り返し行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記算出(400)およびオプション的に前記比較(402)も、前記装置(100)の初期化中、若しくは初期化後に実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記算出(400)およびオプション的に前記比較(402)も、前記装置(100)の初期化中、若しくは初期化直後に実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態を前記制御(410)の前に算出する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の値の算出(400)および/または前記比較(402)および/または前記制御(410)のステップを繰り返し行う、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の値の算出(400)および/または前記比較(402)および/または前記制御(410)のステップを定期的に繰り返し行う、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の値の算出(400)および前記比較(402)および前記制御(410)のステップを、繰り返し行い、この場合、前記制御(410)のステップのために選択的に、制御時間が予め設定可能である、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の値の算出(400)および前記比較(402)および前記制御(410)のステップを、繰り返し行い、この場合、前記制御(410)のステップのために選択的に、制御時間が予め設定可能であり、前記制御時間が、1マイクロ秒と100ミリ秒との間の値を有している、請求項またはに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の値の算出(400)および前記比較(402)および前記制御(410)のステップを、繰り返し行い、この場合、前記制御(410)のステップのために選択的に、制御時間が予め設定可能であり、前記制御時間が、20マイクロ秒と20ミリ秒との間の値を有している、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
最初の制御(410;B26,B29)のために、1マイクロ秒μsと100マイクロ秒μsとの間の範囲内の第1の制御時間を選択し、この場合、第2の制御(410;B28,B29)のために、1ミリ秒msと20ミリ秒msとの間の範囲内の第2の制御時間を選択する、請求項から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
最初の制御(410;B26,B29)のために、20マイクロ秒μsと60マイクロ秒μsとの間の範囲内の第1の制御時間を選択し、この場合、第2の制御(410;B28,B29)のために、1ミリ秒msと5ミリ秒msとの間の範囲内の第2の制御時間を選択する、請求項から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電動式のブレーキ装置(300)は、電動式のパーキングブレーキである、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記車両は自動車である、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の方法の使用法において、前記方法を、電動機(200)の整流システム(204)の少なくとも1つの構成要素における酸化物層を取り除くために使用する、使用法。
【請求項16】
請求項1から14までの少なくともいずれか1項に記載の方法を、電動式のブレーキ装置(300)の修復点検のために使用する、使用法。
【請求項17】
車両の電動式のブレーキ装置(300)用の電動機(200)を運転するための装置(100)であって、前記ブレーキ装置(300)が、前記電動機(200)を第1の回転方向で運転することよって第1の運転状態に移行可能であり、前記電動機(200)を前記第1の回転方向とは異なる第2の回転方向で運転することによって第2の運転状態に移行可能である形式のものにおいて、前記装置(100)は、前記電動機(200)の内部抵抗を特徴付ける第1の値を算出(400)するステップと、前記第1の値を予め設定可能な第1の閾値と比較(402)するステップと、前記比較(402)により前記第1の値が前記第1の閾値を超えたことが明らかになったときに、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態を算出するステップと、設定可能な制御時間である第1の制御時間だけ、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態に相当する回転方向で前記電動機(200)を制御(410)するステップと、を実行するために構成されていて、
前記ブレーキ装置(300)が前記第1の運転状態にある時には、前記実際の運転状態に相当する回転方向は前記第1の回転方向であり、前記ブレーキ装置(300)が前記第2の運転状態にある時には、前記実際の運転状態に相当する回転方向は前記第2の回転方向であり、
前記装置(100)は、前記第1の値の算出(400)、前記比較(402)、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態の算出および前記制御(410)のステップを繰り返し行い、前記制御時間が繰り返しの回数に伴って増加されように構成されている、電動式のブレーキ装置(300)用の電動機(200)を運転するための装置(100)。
【請求項18】
前記装置(100)は、前記第1の値が前記第1の閾値以下となるまで、前記第1の値の算出(400)、前記比較(402)、前記ブレーキ装置(300)の実際の運転状態の算出および前記制御(410)のステップを繰り返し行ように構成されている、請求項17に記載の装置(100)。
【請求項19】
請求項2から16のいずれか1項に記載の方法を実行するために構成されている、請求項17または18記載の装置(100)。
【請求項20】
前記電動式のブレーキ装置(300)は、電動式のパーキングブレーキである、請求項17から19のいずれか1項に記載の装置(100)
【請求項21】
前記車両は自動車である、請求項17から20のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項22】
車両の電動式のブレーキ装置(300)のためのコントロールユニット(1000)において、請求項17から21のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置(100)を有している、コントロールユニット(1000)。
【請求項23】
前記電動式のブレーキ装置(300)は、電動式のパーキングブレーキである、請求項22に記載のコントロールユニット(1000)。
【請求項24】
前記車両は自動車である、請求項22または23に記載のコントロールユニット(1000)。
【請求項25】
車両の電動式のブレーキ装置(300)において、前記ブレーキ装置(300)が、請求項1721のいずれか1項に記載の少なくとも1つの装置(100)および/または請求項22から24のいずれか1項に記載のコントロールユニット(1000)を有している、電動式のブレーキ装置(300)。
【請求項26】
前記電動式のブレーキ装置(300)は、電動式のパーキングブレーキである、請求項25に記載の電動式のブレーキ装置(300)。
【請求項27】
前記車両は自動車である、請求項25または26に記載の電動式のブレーキ装置(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特に自動車の、電動式のブレーキ装置、特に電動式のパーキングブレーキ用の電動機を運転するための方法であって、ブレーキ装置は、電動機を第1の回転方向で運転にすることよって第1の運転状態に移行可能であり、電動機を第1の回転方向とは異なる第2の回転方向で運転することによって第2の運転状態に移行可能である方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、相応の装置、電動式のブレーキ装置のためのコントロールユニット並びに電動式のブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に述べた形式の電動式のブレーキ装置において使用されるような、電動機のための電気配線の例えばいわゆる配線破断、つまり電動機の制御がもはや(確実に)可能でなくなるような、電動機の少なくとも1つの電気配線の断線を監視することは公知である。公知の方法の欠点は、事情によっては配線破断の間違った検知が行われ得る、つまり公知の方法では事情によっては、配線破断が実際には存在していなくても、配線破断が推定される、という点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の方法を改良して、前記欠点を減らすか若しくは避けることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
好適な実施例では、この方法は、電動機の内部抵抗を特徴付ける第1の値を算出するステップと、第1の値を予め設定可能な第1の閾値と比較するステップと、比較により第1の値が第1の閾値を超えたことが明らかになったときに、予め設定可能な第1の制御時間だけ、ブレーキ装置の実際の運転状態に相当する回転方向で電動機を制御するステップとを有している。
【0006】
本出願人の調査によれば、冒頭に述べた従来の方法では、電動機が比較的長時間に亘って作動されていなくて、それに伴って電動式のブレーキ装置が比較的長時間に亘って使用されていないときに、配線破断の誤った推定が行われ得る。この場合、電動機の整流システムの構成要素が酸化し、その結果、電動機の高められた内部抵抗が生ぜしめられる。これによってまた、例えば配線の電気抵抗の評価に基づく配線破断の評価時に、誤って配線破断として検出され得ることになる。
【0007】
これに対して、前記実施例による原理は、整流システムの構成要素の領域内の不都合な酸化物層を取り除くことを好適に可能にするので、抵抗に基づいて配線破断を監視するための方法は誤りが発生しにくい。酸化物層の除去は、特に電動機を、前記のようにブレーキ装置の実際の運転状態に相当する回転方向で予め設定可能な第1の制御時間だけ制御することによって行われる。これによって同時に、好適には、前記のように予め設定可能な第1の制御時間だけ制御することによって、ブレーキ装置はその実際の運転状態から別の運転状態への切替えが行われないことが保証され、それにより安全性が高められる。特にこれによって好適には、ブレーキ装置が制御によって作動若しくは閉じられた状態から非作動若しくは開放された状態へおよびその逆へ切替えられることは避けられる。さらに好適には、第1の値の前記閾値比較を介して、場合によっては前記不都合な酸化物層が整流システムの領域内に存在するかどうかを確認することができる。これがそうであれば、好適な実施例では、前記制御を第1の制御時間だけ行うことができる。
【0008】
別の好適な実施例では、制動装置の第1の運転状態は例えば閉じた状態(ブレーキ装置作動)に相当し、これに対してブレーキ装置の第2の運転状態は例えば開放した状態(ブレーキ装置非作動)に相当する。別の実施例では、第1の運転状態から第2の運転状態への状態移行およびその逆の状態移行は、それぞれ電動機を相応の回転方向で予め設定可能な状態変化制御時間にわたって制御することによって行われる。特に好適には、酸化物層を取り除くための制御を目的とした第1の制御時間は著しく短い、特に、ブレーキ装置の考えられ得る運転状態間の所望の切替えを目的とした状態変化制御時間よりも、少なくとも1単位だけ、好適には2単位超だけ、短い。
【0009】
前記実施例による方法は、例えば電動機を運転するための装置によって実行されてよい。例えばこの装置は、電動式のブレーキ装置のためのコントロールユニットの一部であってもよいか若しくはコントロールユニットに相当していてもよい。
【0010】
別の好適な実施例では、算出およびオプション的に比較も、装置の初期化中、若しくは初期化後、特に初期化直後に実行されるようになっている。第1の値が第1の閾値を超えている限りは、同じことが第1の制御時間だけの相応の制御にも当てはまる。これによって、前記実施例による原理は、好適には、電動機の整流システムの領域内に比較的高い確率で酸化物層が存在する装置の運転状態において用いることができる。
【0011】
別の好適な実施例では、ブレーキ装置の実際の運転状態が算出され、この際に、特にブレーキ装置の実際の運転状態が制御の前に算出されるようになっている。これによって、第1の制御時間中に電動機がどの回転方向で制御されるべきかを確実に確かめることができる。別の好適な実施例では、算出は、例えば少なくとも一時的に装置によって記憶可能なステータス変数(例えばビットフラグ)の評価によって行うことができる。別の実施例では、電動機の制御は第1の制御時間中に、ブレーキ装置が非作動であるときに、非作動運転状態に相当する回転方向で行われ、また電動機の制御は第1の制御時間中に、ブレーキ装置が作動しているときに、作動運転状態に相当する回転方向で行われるようになっている。
【0012】
別の好適な実施例では、第1の値の算出および/または比較および/または制御のステップを繰り返し行い、この場合、特に第1の値の算出および/または比較および/または制御のステップを定期的に繰り返し行うようになっている。別の好適な実施例では、第1の値の算出のステップは、例えば電動機の電気接続部間の電気抵抗の算出および/または電動機の電気接続部における電圧降下の算出を含む。
【0013】
別の好適な実施例では、第1の値の算出および比較および制御のステップは、繰り返しの予め設定可能な最大回数だけ繰り返し行われ、この場合、制御のステップのために選択的に、様々な制御時間が予め設定可能であり、特に様々な制御時間が、概ね1マイクロ秒と概ね100ミリ秒との間の値、特に概ね20マイクロ秒と概ね20ミリ秒との間の値を有している。別の実施例では、電動機のための制御エネルギおよびひいては規則的な比較的低い内部抵抗の回復の可能性を連続的に高めるために、制御時間が繰り返しの回数に伴って延長されるようになっている。
【0014】
別の好適な実施例では、最初の制御のために、概ね1マイクロ秒μsと概ね100μsとの間の範囲内、特に概ね20μsと概ね60μsとの間の範囲内の第1の制御時間が選択され、この場合、特に第2の制御のために、概ね1ミリ秒msと概ね20msとの間の範囲内、特に概ね5msの範囲内の第2の制御時間が選択されるようになっている。
【0015】
別の好適な態様は、電動機の整流システムの少なくとも1つの構成要素における酸化物層を取り除くための前記実施例による方法の使用法に関する。
【0016】
別の好適な実施例では、特に第1の値の算出のステップおよび第1の値を第1の閾値と比較するステップなしで、1回の制御だけを、第1の制御時間だけ前記実施例に従って(つまり特にブレーキ装置の実際の運転状態に相当する電動機の回転方向で)実行することも考えられる。これによって、コストは削減され、制御が第1の制御時間だけいわば予防的に実行され得る。従って、例えば前記酸化物層が原因となって整流システムの領域内に接触低下が存在する場合、酸化物層は、接触低下が実際に存在するかどうかもしくはどのくらい強く現れているかを前もって再点検することなしに、取り除かれる。実際に接触低下が発生していなくても、制御は第1の制御時間だけ実行される。この態様において、制御は第1の制御時間だけ好適な形式で定期的に実行され得る。
【0017】
別の好適な態様は、電動機および/または電動式のブレーキ装置の修復点検のためにの前記実施例による方法の使用に関する。例えば配線破断を算出するための従来の方法(または第1の閾値との前記比較)によって、電動機に配線破断(または、例えば電動機の整流システムの領域内の酸化物層に起因して高められた内部抵抗)が存在することが確認された場合、好適には、前記実施例による原理が用いられ、例えば別の好適な実施例では、第1の値を算出するステップと、第1の値を第1の閾値と比較するステップと、特に配線破断をひょっとすると間違って算出する原因となる、場合によっては存在する酸化物層を取り除くために、電動機を場合によっては制御するステップとを含む。それによって、例えば、配線破断を算出するための(または第1の閾値との前記のような比較を行うための)通常の方法を新たに実行することができ、この通常の方法は、前記実施例による原理が正しく実行されている場合には、配線破断(または高められた内部抵抗)を新たにもたらすことはない。何故ならば、電動機を第1の制御時間だけ制御することによって、場合によっては存在する酸化物層が取り除かれているからである。これは、電動機若しくはブレーキ装置の前記修復点検に相当する。
【0018】
前記実施例による原理を用いなければ、整流システムの領域内の酸化物層に起因する抵抗上昇に基づいて誤った配線破断が検知され、従って、実際には配線破断が存在せず「単に」前記酸化物層が整流システムの領域内に存在するだけであるにも拘わらず、ブレーキ装置が時々使用不能となる危険性がある。
【0019】
別の好適な実施例では、修復点検のために、前記実施例の原理による制御が繰り返し行われ、この場合、特に様々な繰り返しのための制御時間は変えられる。別の好適な実施例では、不成功に終わった(特に最初の)修復点検後に、例えば警告および/またはエラーメモリ内への書き込み実施等を含むエラー反応が開始されるようになっている。別の好適な実施例では、ブレーキ装置の解放は、前もって実行された前記実施例による少なくとも1回の修復点検に依存して行われるようになっている。別の好適な実施例では、前記実施例による修復点検作動が、電動機の高められた接触抵抗の検出の直後に行われるようになっている。別の好適な実施例では、修復点検作動が、ブレーキ装置を備えた車両の次に検知された車両停止時に行われるようになっている。
【0020】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の、電動式のブレーキ装置、特に電動式のパーキングブレーキ用の電動機を運転するための装置に関し、この場合、ブレーキ装置は、電動機を第1の回転方向で運転することよって第1の運転状態に移行可能であり、電動機を前記第1の回転方向とは異なる第2の回転方向で運転することによって第2の運転状態に移行可能であって、この場合、装置は、電動機の内部抵抗を特徴付ける第1の値を算出するステップと、第1の値を予め設定可能な第1の閾値と比較するステップと、比較により前記第1の値が第1の閾値を超えたことが明らかになったときに、設定可能な第1の制御時間だけ、ブレーキ装置の実際の運転状態に相当する回転方向で電動機を制御するステップと、を実行するために構成されている。
【0021】
別の好適な実施例では、前記装置は、前記実施例による方法を実行するために構成されている。
【0022】
別の好適な実施例では、前記修復点検を例えば装置によって実行することができる。このために、前記装置は、例えばコンピュータ装置および対応配設された記憶装置並びに相応のコンピュータプログラム、および/または相応のシーケンスを制御するために構成されたハードウエア回路を有していてよい。例えばこの装置は、別の好適な実施例では、前記実施例による方法を実行するために構成された少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)を有していてもよい。
【0023】
別の好適な実施例では、電動式のブレーキ装置は、前記実施例による方法の態様を実行するために、前記実施例によるコントロールユニット若しくは装置によって制御されるようになっていてもよい。例えば別の好適な実施例では、前記装置は、電動機の高められた内部抵抗を算出し、次いでインターフェースを介して電動式のブレーキ装置に、前記実施例の原理に従って規定された方向で、ブレーキ装置の新たな制御を要求する。この場合、ブレーキ装置は、要求された制御に切り替えられ、それによってやはり、ブレーキ装置の電動機の制御が、前記実施例に従って予め設定可能な第1の制御時間だけ、特に電動機の整流システムにおいて酸化物層を取り除くために、実現可能である。
【0024】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の電動式のブレーキ装置、特に電動式のパーキングブレーキ用のコントロールユニットに関し、この場合、コントロールユニットは、前記実施例による少なくとも1つの装置を有している。代替的に、コントロールユニットは、前記装置によって形成されていてもよい。
【0025】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の電動式のブレーキ装置、特に電動式のパーキングブレーキに関し、この場合、ブレーキ装置は前記実施例による少なくとも1つの装置および/またはコントロールユニットを有している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施例による電動機を制御するための概略的な簡略化した回路図である。
図2A】一実施例による電動式のブレーキ装置の概略的な簡略化したブロック図である。
図2B】一実施例によるコントロールユニットの概略的な簡略化したブロック図である。
図3A】一実施例による方法の簡略化したフローチャートである。
図3B】別の実施例による方法の簡略化したフローチャートである。
図4】別の実施例による方法の簡略化したフローチャートである。
図5】別の実施例による方法の簡略化したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のその他の特徴、使用可能性および利点は、図面の図に示された本発明の複数の実施例の以下の説明から得られる。この場合、すべての記載されたまたは図示された特徴はそれ自体または任意の組み合わせで、請求項の組み合わせまたはその引用関係とは無関係に並びに明細書若しくは記述若しくは図面の表現とは無関係に、本発明の対象を形成する。
【0028】
図1は、一実施例による電動式のブレーキ装置のための電動機200を制御するための概略的な簡略化した回路図を示す。電動機200は、第1の電気的な接続部202aおよび第2の電気的な接続部202bを有していて、図1に示されているように、第1の抵抗R1および第2の抵抗R2と電気的に直列接続されている。抵抗R1,R2は、好適な実施例ではいわゆるプルアップ抵抗(R1)若しくはプルダウン抵抗(R2)として構成されていてよい、つまり、第1の接続部202aを第1の電気的な基準電位P1に「引き込み」、第2の接続部202bを第2の電気的な基準電位P2に「引き込む」ために構成されていてよい。
【0029】
さらに、電動機200は、好適には機械式の整流システム204を有している。図1で上側の、第1の抵抗R1の接続部は、第1の電気的な基準電位P1に接続されていて、図1で下側の、第2の抵抗R2の接続部は、第2の電気的な基準電位P2、例えばアース電位に接続されている。第1の基準電位P1が第2の基準電位P2とは異なっている場合、特に電動機200の電気的な内部抵抗に依存している構成要素R1,200、R2の直列回路による電流の流れが得られる。従って、電動機200の電気的な接続部202a、202b間に電圧降下Uが得られる。
【0030】
構成要素R1,200,R2の直列回路は、例えば電動機200若しくはその接続部202a,202bの電気的な点検のために用いられてよく、この場合、特に配線破断、つまり例えば電気的な接続部202a,202bの少なくとも1つの断線が検知され得る。配線破断が検知されると直ちにエラー反応が開始され得る。さらに、例えば整流システム204または整流システム204の構成要素が酸化する際に発生するような、電動機200の高められた内部抵抗も、直列回路R1,200,R2によって算出され得る。一般的に、直列回路R1,200,R2は、いわゆるパッシブモニタリングを可能にする、つまり電動機200の制御を必要とすることなしに電動機200若しくはその接続部の内部抵抗の監視を可能にする。
【0031】
電動機200の制御のために、ここでは例えば4つの半導体スイッチS1,S2,S3,S4を有するHブリッジ10が設けられている。半導体スイッチは、電界効果トランジスタS1,S2,S3,S4の場合、相応の制御接続部S1′,S2′,S3′,S4′、例えばゲート電極接続部によって制御され得る。Hブリッジ10の第1の回路分岐点N1は、例えば自動車の車載電源網電圧に相当する第3の基準電位P3に接続されている。Hブリッジ10の第2の回路分岐点N2は、電動機200の第1の接続部202aに接続されている。Hブリッジ10の第3の回路分岐点N3は、第3の抵抗R3を介して電動機202の第2の接続部202bに接続されている。Hブリッジ10の第4の回路分岐点N4は、第4の抵抗R4を介して別の基準電位P2′に接続されており、この別の基準電位P2′は、例えば第2の基準電位P2、つまりここでは例えばアース電位と同じであってよい。
【0032】
第1の回転方向で電動機200を制御するために、第2の半導体スイッチS2と第3の半導体スイッチS3とが、制御接続部S2′,S3′を相応に制御することによって導電接続される。別の2つの半導体スイッチS1,S4は遮断接続される。これによって、電流の流れは、第1の回路分岐点N1から、第3の半導体スイッチS3および第2の回路分岐点N2を介して電動機200の第1の電気的な接続部202aに達し、電動機200を通って、さらに電動機200の第2の電気的な接続部202b、第3の抵抗R3、第3の回路分岐点N3、第2の半導体スイッチS2、第4の回路分岐点N4、最後に第4の抵抗R4を介してアース電位P2′へ達する。好適な実施例では、抵抗R3,R4は、比較的小さい抵抗(好適には概ね1オームと同じかまたはこれより小さい、さらに好適には概ね0.1オームと同じかまたはこれよりも小さい)を有しており、従って分路抵抗として構成されている。
【0033】
好適な実施例では、電動機200若しくは電動機200によって操作可能な電動式のブレーキ装置300(図2A参照)を、このブレーキ装置がそれ自体公知の形式で制動作用を例えば自動車の少なくとも1つのホイール20に加える第1の運転状態(例えばブレーキ装置作動)に変えるために、電動機200は、上述したように(特に予め設定可能な状態変化-制御時間を越えて)制御され得る。
【0034】
別の好適な実施例では、電動機200(図1)は、この電動機200が第1の回転方向とは異なる第2の回転方向に回転するように制御されてもよい。このために、第1の半導体スイッチS1および第4の半導体スイッチS4が導電接続され、別の2つの半導体スイッチS2,S3は遮断接続される。これによって、第3の基準電位P3から別の構成要素N1,S1,N3,R3,202b,200,202a、N2,S4,R4,P2′を介して、電流の流れが得られ、これによって、電動機200は第2の回転方向に回転する。これによって、ブレーキ装置300は第2の運転状態(例えばブレーキ装置非作動)に変えられる。第2の運転状態への確実な移行を保証するために、相応の制御が、やはり特に予め設定可能な状態変化-制御時間に渡って維持され得る。
【0035】
好適な実施例では、以下に例えば図3Aに示した簡略化されたフローチャートに関連して記載された方法の実行が予定される。ステップ400で、電動機200の内部抵抗を特徴付ける第1の値が算出される。この場合、第1の値は、例えば電圧降下U図1)(または直接的に内部抵抗)に相当し得る。第1の値は、特に、すべての4つの半導体スイッチS1,S2,S3,S4が遮断接続され、従って電動機200が制御されないときでも算出され得る。これは、基準電位P1,P2が第1の抵抗R1および第2の抵抗R2に印加されることによって可能となる(パッシブモニタリング)。
【0036】
次のステップ402(図3A)で、第1の値が、予め設定可能な第1の閾値と比較される。この場合、第1の閾値は好適には、第1の値が電動機200の通常の運転時には第1の閾値を超えないが、電動機200の整流システムの酸化時には第1の閾値を超えるように選択される。これにより、ステップ402で比較することによって、電動機200の整流システム204の酸化が検知され得る。例えば第1の閾値は、これが前記内部抵抗に関連している場合は、概ね700mΩ(ミリオーム)乃至概ね1000mΩの範囲内に選択され得る。
【0037】
比較402により第1の値が第1の閾値を超えたことが明らかになると、ステップ410で、電動機200は、予め設定可能な第1の制御時間だけ、ブレーキ装置300の実際の運転状態に相当する回転方向で予め設定可能な第1の制御時間だけ制御され得る。従って、ステップ410における制御によって、好適には電動機200の場合によっては酸化された整流システム204が、制御により、相応の酸化物層を突き破るか若しくは焼き切るか若しくは除去する電気エネルギで第1の制御時間だけ負荷され得る。
【0038】
これによって、好適にはそれと同時に、前記制御によって予め設定可能な第1の制御時間だけブレーキ装置300のその実際の運転状態から別の運転状態への切替えが行われないことが保証されており、これによって安全性が向上する。特に、これによって好適には、制御によりブレーキ装置300が作動若しくは閉鎖された状態から非作動若しくは開放された状態へもたらされることは避けられる。第1の値の前記閾値比較402を介して、好適にはさらに、場合によっては前記不都合な酸化物層が整流システムの領域内に存在するかどうかが検知され得る。これが存在する場合、好適な実施例において前記制御が第1の制御時間だけ行われてよい。
【0039】
別の好適な実施例では、ブレーキ装置300の第1の運転状態は例えば閉鎖された状態(ブレーキ装置作動)に相当し、これに対してブレーキ装置の第2の運転状態は例えば開放された状態(ブレーキ装置非作動)に相当する。別の実施例では、第1の運転状態から第2の運転状態への状態移行およびその逆の状態移行は、電動機200を相応の回転方向で、前記状態移行制御時間にわたってそれぞれ制御することによって行われる。特に好適には、酸化物層を取り除くための制御を対象としている第1の制御時間は、ブレーキ装置300の可能な複数の運転状態間の意図的な切替えを対象としている状態移行制御時間よりも著しく小さい、特に少なくとも1単位またはそれどころか2単位だけ小さい。
【0040】
前記実施例による方法は、電動機200を運転するための、例えば装置100(図2B参照)によって実行することができる。例えば装置100は、電動式のブレーキ装置300のためのコントロールユニット1000の一部であるか若しくはコントロールユニットに相当していてもよい。
【0041】
別の好適な実施例では、装置100の初期化398中、若しくは初期化398後、特に初期化398直後に、算出400およびオプション的に比較402も行われるようになっている。図3Bのフローチャート参照。同じことが、第1の値が第1の閾値を超えている場合、第1の制御時間だけの相応の制御410にもあてはまる。これにより、この実施例による原理は好適には、電動機200の整流システム204の領域内に酸化物層が存在する確率が比較的高い、装置100の運転状態において用いることができる。別の好適な実施例では、この方法は、定期的に繰り返されてもよいか、若しくは相応のブレーキ装置300を含有する自動車の走行サイクルの最後に実行されてもよい。
【0042】
別の好適な実施例では、ブレーキ装置300(図2A)の実際の運転状態が算出され、この場合、特にブレーキ装置300の実際の運転状態が制御410(図3A)の前に算出されるようになっている。これにより、どの回転方向で電動機200が第1の制御時間中に制御されるかを、確実に検知することができる。図1を参照して前述したように、電動機200の回転方向は、Hブリッジ10の作動させるようとする半導体スイッチの選択によって制御若しくは選択され得る。
【0043】
ブレーキ装置300の実際の運転状態の算出は、別の好適な実施例で、例えば少なくとも一時的に装置100によって記憶可能なステータス変数(例えばビットフラグ)の評価によって行うことができる。別の実施例では、電動機200の制御が第1の制御時間中に、ブレーキ装置300が非作動であるときに非作動運転状態に相当する回転方向で行われ、電動機200の制御が第1の制御時間中に、ブレーキ装置300が作動しているときに作動運転状態に相当する回転方向で行われるようになっている。
【0044】
別の好適な実施例では、第1の値の算出400のステップ、および/または比較402のステップおよび/または制御410のステップが繰り返され、この場合、特に第1の値の算出のステップ、および/または比較のステップおよび/または制御のステップが定期的に繰り返されるようになっている。別の好適な実施例では、第1の値の算出400のステップは、例えば電動機200の電気的な接続部202a,202b間の電気抵抗の算出および/または電動機200の電気的な接続部202a,202bにおける電圧降下Uの算出を含んでいる。
【0045】
別の好適な態様は、電動機200の整流システム204の少なくとも1つの構成要素における酸化物層を取り除くための実施例による方法の使用に関する。言い換えれば、例えば図3Aを参照して上述した方法は、電動機200の整流システム204の領域内の不都合な酸化物層を的確に取り除くために、繰り返され、特に定期的に実行されてよい。従って、好適には、図1に示した構成の再点検時における配線破断であるとの誤った結果を阻止することができる。
【0046】
別の好適な態様は、電動式のブレーキ装置300の修復点検のための実施例による方法の使用に関する。例えば配線破断を算出するための一般的な方法によって、電動機200に配線破断が存在することが算出されている場合、好適には、前記実施例による原理が適用され、この原理は、例えば好適な実施例では、第1の値の算出400のステップ、第1の値と第1の閾値との比較402のステップ、および、特に場合によっては配線破断の誤った算出をもたらす、場合によっては存在する酸化物層を取り除くための、場合によっては電動機200の制御410のステップを含む。次いで、例えば新たに配線破断を算出するための従来の方法が実行され、この方法は、この実施例による原理が正常に行われたときには、新たに配線破断を導き出すことはない。何故ならば、電動機200の制御410によって、場合によっては存在する酸化物層が取り除かれているからである。これは、電動機200の前記修復点検に相当する。この実施例による原理を使用しなければ、従来の配線破断の点検実施時に間違って配線破断が検出され、従って実際には配線破断が存在しているのではなく、場合によっては前記酸化物層が整流システム204の領域内に存在しているにも拘わらず、ブレーキ装置300が時々使用不能になる、という危険性が存在する。
【0047】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の電動式のブレーキ装置、特に電動式のパーキングブレーキ用の電動機を運転するための装置100に関し、この場合、ブレーキ装置は、電動機を第1の回転方向で運転することによって第1の運転状態に変更可能、および電動機を第1の回転方向とは異なる第2の回転方向で運転することによって第2の運転状態に変更可能であり、この装置は次のステップを実行するために構成されている。つまり、電動機の内部抵抗を特徴付ける第1の値を算出するステップ、第1の値を予め設定可能な第1の閾値と比較するステップ、第1の値が第1の閾値を超える比較結果が得られたときにブレーキ装置の実際の運転状態に相当する回転方向で予め設定可能な第1の制御時間だけ電動機を制御するステップを実行するために構成されている。別の好適な実施例では、この装置100は、前記実施例による方法を実行するために構成されている。
【0048】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の電動式のブレーキ装置300、特に電動式のパーキングブレーキのためのコントロールユニット1000(図2B)に関し、この場合、コントロールユニット1000は、前記実施例による少なくとも1つの装置100を有している。選択的に、このコントロールユニットは、装置100によって形成されていてもよい。
【0049】
別の好適な実施例は、車両、特に自動車の電動式のブレーキ装置300、特に電動式のパーキングブレーキに関し、この場合、ブレーキ装置は、前記実施例による少なくとも1つの装置および/またはコントロールユニットを有している。
【0050】
以下に図4図5を参照しながら別の好適な実施例を説明する。
【0051】
図4ではブロックB1がコントロールユニット1000(図3B)の初期化段階を表しており、この初期化段階で、コントロールユニット1000は例えばその固有の機能を点検して、特にすべての機能が保護され、かつ準備されていることを保証する。ブロックB2でカウンタ変数nが初期化され、特にゼロに設定される、n=0。
【0052】
次いで、ブロックB3およびB4で例えば基準電位P1,P2(図1参照)を用いて、およびブロックB4で接続部202a,202b間の電圧差Uの評価を用いて、配線破断の再点検が行われる。特に、再点検B3,B4中に、電動機200のアクティブな制御は行われず、半導体スイッチS1乃至S4が相応に作動停止されていて、つまり高インピーダンスで接続されている。
【0053】
ブロックB3、B4による再点検は、好適な実施例では、例えば図3Aによるステップ400および402の実行に相当する。ブロックB3,B4での再点検により、配線破断が存在していないことが確認された場合には、電動式のブレーキ装置300が解放され、次いでブロックB5に分岐する。
【0054】
しかし、ブロックB4での再点検で、配線破断若しくは電動機200の高められた内部抵抗が存在する(例えば予め設定可能な第1の閾値よりも大きい電圧差U)ことが判明した場合、ブロックB4からブロックB6に分岐される。ブロックB6で、カウンタ変数nが評価される。特に、カウンタ変数が、ゼロより大きい値を有しているかどうか、従って図4を参照して前述されたシーケンスがすでに少なくとも一度完全に実行されているか(「n>0」)どうかが再点検される。そうであれば、ブロックB7に分岐され、ブロックB7で、例えばエラー反応が開始される。エラー反応は、例えば電動式のブレーキ装置300を有する自動車の運転者へのエラー情報のアウトプットを含んでいてよい。
【0055】
カウンタ変数nが値ゼロを有しており、従って図4に応じた前記シーケンスが予め完全に実行されていない場合、ブロックB6からブロックB8へ分岐される。ブロックB8で、電動式のブレーキ装置300が作動運転状態(「ロックされた」)にあるかどうかが算出される。そうであれば、ブロックB9へ分岐され、ブロックB9で、電動式のブレーキ装置300の電動機200が予め設定可能な第1の制御時間だけ、ブレーキ装置300の作動状態に相当する(「Turn2Lock」)回転方向で制御される。これによって、電動機200の整流システム104において場合によっては存在する酸化物層が、ブレーキ装置300の運転状態の不都合な変更を生ぜしめることなしに、取り除かれる。
【0056】
ブロックB8で、ブレーキ装置300が非作動運転状態にあることが算出されると、ブロックB10に分岐され、ブロックB10で、電動式のブレーキ装置300の電動機200が、予め設定可能な第1の制御時間だけ、ブレーキ装置300の非作動状態に相当する(「Turn2Release」)回転方向で制御される。これによっても、ブレーキ装置300の運転状態の不都合な変更を生ぜしめることなしに、電動機200の整流システム104において場合によっては存在する酸化物層が取り除かれる。
【0057】
ブロックB9またはB10に従って第1の制御時間だけ制御した後で、ブロックB11で、カウンタ変数nが、例えばn=n+1に増加される。これによって、次のステップで、前記実施例の原理による制御がすでに少なくも一度実行されていることが分かる。ブロックB11の後で再びブロックB3(再点検)に移行される。ブロックB9またはブロックB10による制御によって、期待通りに酸化物層の取り除きが得られた場合(整流システムの期待された導電率を示す効果を伴って)、ブロックB3による再点検の再度の実行時に、新たに間違って配線破断が検知されず(ブロックB4参照)、修復点検に相当するブロックB5に移行される。
【0058】
しかし、ブロックB4による再点検で、問題が存続していることが分かると、新たにブロックB6に移行され、ブロックB6で、カウンタ変数nが評価される。カウンタ変数nがゼロより大きい値を有している場合、これは、前記一例として記載されたシーケンスに従った場合であるが、ブロックB7に分岐される。これは正当化され得る。何故ならば、前記実施例の原理に従って制御がすでに実行されているからであり(ブロックB9またはブロックB10参照)、またこれによってブロックB3,B4による点検に関連して状況の改善は行われていないことが明らかだからである。このようなシナリオは、例えば実際に配線破断が存在している場合にも生じる。しかしながら、電動機200の整流システム204の領域内に、ブロックB9,B10における制御によって取り除かれ得る酸化物層が存在する場合、前述のように、ステップB3,B4による再点検の再度の実行後に、ブロックB5に移行される。これはやはり既に挙げた修復点検に相当する。
【0059】
次に、図5のブロック図を参照しながら、別の好適な実施例を説明する。図5では、ブロックB20がコントロールユニット1000(図3B)の初期化段階を表しており、この初期化段階でコントロールユニット1000が例えばその固有の機能を点検し、特に、すべての機能が保護されかつ準備されていることが保証している。ブロックB21で、電動機200の内部抵抗を特徴付ける第1の値が予め設定可能な第1の閾値を超えているかどうか、従って電動機200が例えばその整流システム204の領域内に高められた内部抵抗若しくは接触抵抗を有しているかどうかの点検が、好適な形式で定期的若しくは周期的に行われる。そうであれば、ブロックB22に移行され、ブロックB22で、カウンタ変数nが初期化され、特にゼロ、n=0に設定される。
【0060】
オプション的に、次のブロックB23で、いまだになお、つまりブロックB22によるカウンタ変数の初期化後でも、ブロックB21内で規定された高められた内部抵抗若しくは接触抵抗が存在するかどうかが点検され得る。そうでなければ、ブロックB24に分岐される。
【0061】
しかし、そうであれば、カウンタ変数がその初期値(n=0)を有している場合(ブロックB25a参照)、ブロックB26に分岐される。ブロックB26で、エンジンテスト-パルス、つまりこの実施例による原理の意味で制御が、予め設定可能な第1の制御時間だけ、および特にブレーキ装置300の実際の運転状態に相当する回転方向で実行される。特に好適には、ブロックB26で、第1の制御時間が例えば数10μs、例えば40μsまたは60μsまたは80μs等に選定されてよい。この第1の制御時間の電動機200の制御は、好適には図1に示したHブリッジ10の半導体スイッチS1,…,S4の制御のために構成された、特定用途向け集積回路(ASIC)によって実行されてよい。選択的に、この制御は離散的な論理回路等によって実行されてもよい。ブロックB26によるこの制御が、電動機200のための比較的短い始動時間長さを実現することによって、電動機200はその制御に基づいて回転させられない。何故ならば、制御B26によってもたらされたエネルギ量は、そのために十分ではないからである。相応に、ブロックB26による制御のための別の好適な実施例では、ブレーキ装置300がその時点でどのような運転状態にあるかを考慮しなくてもよい。何故ならば、比較的短い第1の制御時間に基づいて、そもそも電動機200の回転およびひいてはブレーキ装置の場合によっては付随して現れる運転状態変化が生じることはないからである。しかしながら別の実施例では、ブロックB26による制御のために、ブレーキ装置300の実際の運転状態が評価され、電動機200の制御は実際の運転状態の方向(回転方向)で実行されてもよい。
【0062】
次いで、ブロックB27内のカウンタ変数nが増加され(n=n+1)、ブロックB21a内で配線破断に関する再度の点検が行われるか若しくは電動機200の高められた内部抵抗若しくは接触抵抗がブロックB21と同じように行われる。ブロックB21aによる再度の点検により、電動機200の高められた内部抵抗若しくは接触抵抗がもはや存在しない(ブロックB23参照)ことが明らかになると、ブロックB24に分岐され、これは正常な修復点検に相当する。
【0063】
しかしながら、ブロックB21aによる再点検により、依然として高められた内部抵抗が存在することが明らかになった場合、カウンタ変数がn=1の値を有すると(ブロックB25b参照)、ブロックB28に分岐する。ブロックB28で新たにエンジンテスト―パルス、つまり前記実施例に従った原理による制御が実行されるが、今回は第1の制御時間より長い予め設定可能な第2の制御時間だけ、例えば第1の制御時間よりも少なくとも1単位だけ長く実行される。好適な実施例では、ブロックB28のための第2の制御時間は、例えば概ね1ms乃至概ね20ms、好適には概ね5msであってよい。この場合、ブロックB28による電動機200の制御は、やはりブロックB28に従った電動機200の制御によるブレーキ装置の不都合な運転状態変更を避けるために、好適には、ブレーキ装置の実際の運転状態に相当する回転方向で行われる。電動機200の実際の運転状態の関係する評価、および正しい回転方向でのブロックB28に従った制御は、図5にブロックB29によって表されており、このブロックB29は、概ね図4のブロックB8,B9,B10に相当する。
【0064】
次いで、新たにブロックB27に移行され、このブロックB27内でカウンタ変数が増加される。つまり、ブロックB27の再度の実行後にカウンタ変数nは値n=2を有する。次いで、高められた内部抵抗がもはや存在しない場合、既に上述したように再度の再点検B21aがブロックB24への移行の可能性を伴って行われる。依然として高められた内部抵抗が存在するかぎり、n=2の場合にブロックB25cによってブロックB30へ分岐され、このブロックB30で、電動機の再度の制御、今回は好適には第2の制御時間よりも長い第3の制御時間だけ、ブロックB28に従って行われる。例えば第3の制御時間は、概ね10msと概ね50msの間の値、特に概ね20msが採用されてよい。第3の制御時間のために、ブレーキ装置300の不都合な運転状態移行が行われないことが保証される必要があることも明らかである。これは他方ではブロックB29によって保証されている。第3の制御時間での制御後にも(ブロックB30,B29参照)、電動機200の規則的な比較的低い内部抵抗の回復が得られない場合、ブロックB27,B21a,B23,B25dを介して、エラー状態を表すブロックB31へ分岐される。ブロックB31では例えば、エラー反応が開始されるようになっており、例えばブレーキ装置300を備えた自動車の運転者に、状態に関して聴覚的および/または視覚的な信号によって通知し、かつ/またはエラーメモリに記憶させるようになっている。
【0065】
第3の制御時間による制御後に、規則的な比較的低い、電動機200の内部抵抗が回復された場合(制御B26,B20,B30,B29によって酸化物層を取り除くことによって)、n=3のカウンタ変数の値においてブロックB23からブロックB24へ移行され、これは正しい修復点検を表す。
【0066】
別の好適な実施例において、例えば前記ブロックB26乃至B30による様々な制御の回数nも、相応の制御のためのそれぞれの制御時間も変えられることは明らかである。例えば別の好適な実施例では、より細かく段階付けられた方法を可能にするために、例えば図5を参照して記載された4つより多いケース識別(n=0、…、n=3)を行うことができる。別の実施例では、4つより少ないケース識別も考えられる。
【0067】
前記実施例による原理は、好適にはすべての電動式のブレーキ装置300に使用することができ、特に直流モータ(DC-モータ)として構成された電動機200を備えたブレーキ装置に使用することができる。特に好適には、この実施利例に従って原理は、機械式の整流システム204を有する電動機のために適している。
【0068】
別の好適な実施例では、特に第1の値を算出400するステップおよび第1の値を第1の閾値と比較402するステップなしで、制御410(図3A)だけを、前記実施例の方向で(つまり特にブレーキ装置の実際の運転状態に相当する、電動機200の回転方向で)、第1の制御時間だけ実行することも考えられる。これによって、コストが削減され、制御410が第1の制御時間だけ、いわば予防的に実行され得る。従って、例えば前記酸化物層によって、整流システム204の領域内に接触低下が発生した場合、このような接触低下は、接触低下が実際に発生しているかどうか若しくはどの程度強く現れているかどうかを事前に再点検することなしに、取り除かれる。実際に接触低下が発生していなくても、制御410が第1の制御時間だけ実行される。このような態様において、制御410は第1の制御時間だけ好適な形式で定期的に実行され得る。
【符号の説明】
【0069】
10 Hブリッジ
100 装置
200 電動機
202a 第1の電気的な接続部
202b 第2の電気的な接続部
204 整流システム
300 電動式のブレーキ装置
398 初期化
400 ステップ、算出
402 ステップ、比較
410 ステップ、制御
1000 コントロールユニット、
B1,B2,B3,B4,B5、B6,B7,B8,B9,B10,B20,B21,B21a,B22,B22,B23,B24,B25a,B25b,B25c,B25d,B26,B27,B28,B29,B30,B31 ブロック
n カウンタ変数
N1 第1の回路分岐点
N2 第2の回路分岐点
N3 第3の回路分岐点
N4 第4の回路分岐点
P1 第1の電気的な基準電位
P2 第2の電気的な基準電位
P2′ 別の基準電位、アース電位
P3 第3の基準電位
R1 第1の抵抗(プルアップ抵抗)
R2 第2の抵抗(プルアップ抵抗)
R3 第3の抵抗
S1、S2,S3,S4 半導体スイッチ、電界効果トランジスタ
S1′,S2′,S3′,S4′ 制御接続部、ゲート電極接続部
電圧降下、電圧差
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5