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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20231204BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20231204BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231204BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20231204BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/90
H02J7/00 301D
H02J7/00 P
H02J50/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022501468
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006474
(87)【国際公開番号】W WO2021166109
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑典
(72)【発明者】
【氏名】加藤 進一
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-088358(JP,A)
【文献】特開2014-090528(JP,A)
【文献】特開2001-119806(JP,A)
【文献】特開2006-121791(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150678(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/008600(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/208539(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/90
H02J 7/00
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給する複数の送電部と、
対向する少なくとも一つの前記送電部から非接触で前記電力を受電する少なくとも一つの受電部と、
を備える複数種類の送受電ユニットを具備し、
複数種類の前記送受電ユニットの前記受電部は、生産設備において物品を搬送する搬送装置に設けられている非接触給電システムであって、
前記非接触給電システムは、代替電力を供給可能な電力供給装置を備え、
前記電力供給装置は、前記送電部が設けられていない前記生産設備の未設置領域において、前記搬送装置に設けられる前記受電部に追従して移動して前記受電部に前記代替電力を供給し、
前記非接触給電システムは、前記搬送装置の位置を検出する位置検出装置を備え、
前記電力供給装置は、前記代替電力を供給する給電部が前記生産設備の床下部に設けられる第二供給部を備え、
前記第二供給部は、前記位置検出装置によって検出された前記搬送装置の位置に合わせて、前記給電部が前記生産設備の前記床下部を移動する非接触給電システム。
【請求項2】
電力を供給する複数の送電部と、
対向する少なくとも一つの前記送電部から非接触で前記電力を受電する少なくとも一つの受電部と、
を備える複数種類の送受電ユニットを具備し、
複数種類の前記送受電ユニットの前記受電部は、生産設備において物品を搬送する搬送装置に設けられている非接触給電システムであって、
前記非接触給電システムは、代替電力を供給可能な電力供給装置を備え、
前記電力供給装置は、前記送電部が設けられていない前記生産設備の未設置領域において、前記搬送装置に設けられる前記受電部に追従して移動して前記受電部に前記代替電力を供給し、
前記電力供給装置は、搭載するバッテリから前記代替電力を生成し、前記搬送装置によって採取可能に前記生産設備に載置される第三供給部を備え、
前記搬送装置は、前記未設置領域の始点に設けられる採取位置に到達すると前記第三供給部を採取して、前記第三供給部から非接触給電によって前記代替電力を受電しつつ前記未設置領域を移動し、前記未設置領域の終点に設けられる放出位置に到達すると前記第三供給部を放出する非接触給電システム。
【請求項3】
前記採取位置および前記放出位置には、前記バッテリを充電する充電装置が設けられている請求項に記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記電力供給装置は、無人走行車に設けられる第一供給部を備え、
前記第一供給部は、前記代替電力を供給する給電部と前記搬送装置に設けられる前記受電部との間の離間距離を所定距離に維持しつつ、前記無人走行車によって前記生産設備を移動する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項5】
数の前記送電部のうちの少なくとも一部は、前記生産設備を移動可能な可動部材に設けられており、
前記可動部材は、前記送電部が設けられていない前記生産設備の未設置領域において、前記搬送装置の移動経路に合わせて移動する請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
複数種類の前記送受電ユニットのうちの一種類は、前記送電部が前記生産設備の複数の側壁部のうちの少なくとも一つの前記側壁部に設けられ、前記受電部が前記搬送装置の複数の側面部のうちの少なくとも一つの前記側面部に設けられている請求項1~請求項のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項7】
複数種類の前記送受電ユニットのうちの一種類は、前記送電部が前記生産設備の床部に設けられ、前記受電部が前記搬送装置の底部に設けられている請求項1~請求項のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項8】
前記送電部は、少なくとも四つの送電素子が十字状に配置されている複数の送電ユニットに設けられ、
複数の前記送電ユニットは、前記床部に並べられたときに複数の前記送電素子が格子状に配置され、
前記受電部は、複数の前記送電ユニットのうちの一の前記送電ユニットと対向したときに、複数の受電素子が一の前記送電ユニットの複数の前記送電素子と対向する位置に配置される受電ユニットに設けられている請求項に記載の非接触給電システム。
【請求項9】
複数種類の前記送受電ユニットのうちの少なくとも一種類は、同一種類の前記送受電ユニットにおいて同時に使用される複数の送受電部位を備える請求項1~請求項のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項10】
前記送電部および前記受電部のうちの少なくとも一方は、前記搬送装置の移動に伴って変動する前記送電部と前記受電部との間の送電効率が所定効率以上になるように、前記送電部の送電方向および前記受電部の受電方向のうちの少なくとも一方を調整する送電効率調整部を備える請求項1~請求項のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【請求項11】
前記送電効率調整部は、前記送電部および前記受電部のうちの少なくとも一方に設けられる撮像装置を用いて相手方に設けられる特徴部を撮像して、撮像画像における前記特徴部の位置が、前記送電方向と前記受電方向とが一致する際に撮像される所定位置と一致するように、前記送電方向および前記受電方向のうちの少なくとも一方を調整する請求項10に記載の非接触給電システム。
【請求項12】
前記送電効率調整部は、前記受電部によって受電された前記電力の受電電圧を検出して、検出された前記受電電圧が、前記送電方向と前記受電方向とが一致する際に検出される所定電圧値に達するように、前記送電方向および前記受電方向のうちの少なくとも一方を調整する請求項10または請求項11に記載の非接触給電システム。
【請求項13】
複数の前記送電部のうちの少なくとも一部は、前記生産設備の側壁部、柱部、天井部および床下部のうちの少なくとも一つに設けられている請求項10~請求項12のいずれか一項に記載の非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、非接触給電システムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の非接触給電システムは、送電コイルと、受電コイルと、送電コイルの位置角度調整機構と、検知手段と、制御部とを備えている。送電コイルの位置角度調整機構は、受電コイルに対する送電コイルの位置および相対角度を調整する。検知手段は、送電コイルから受電コイルまでの距離および鉛直方向に対する傾き角度を検知する。制御部は、検知手段による検知結果に基づいて、送電コイルの位置角度調整機構を介して受電コイルに対する送電コイルの位置および相対角度を調整して、送電装置から受電装置に給電される電力の電力伝送効率が最大値になるように制御する。
【0003】
特許文献2に記載の無線電力伝送方法は、送電コイルのコイル中心と受電コイルのコイル中心を通るコイル中心連結線に対して、送電コイルまたは受電コイルの中心軸の傾き角を定義する。特許文献2に記載の無線電力伝送方法は、受電コイルの中心軸と送電コイルのコイル中心との間の距離または送電コイルの中心軸と受電コイルのコイル中心との間の位置ずれ量が存在したときに、送電コイルおよび受電コイルの少なくとも一方の中心軸の方向を、傾き角が小さくなる方向に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/150678号
【文献】特開2012-191699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産設備において物品を搬送する搬送装置に受電部が設けられている非接触給電システムでは、送電効率を向上させる要請がある。
【0006】
このような事情に鑑みて、本明細書は、搬送装置に受電部が設けられている非接触給電システムであって、送電効率を向上させることが可能な非接触給電システムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、非接触給電システムを開示する。非接触給電システムは、電力を供給する複数の送電部と、対向する少なくとも一つの前記送電部から非接触で前記電力を受電する少なくとも一つの受電部と、を備える複数種類の送受電ユニットを具備する。複数種類の前記送受電ユニットの前記受電部は、生産設備において物品を搬送する搬送装置に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
上記の非接触給電システムは、複数種類の送受電ユニットを具備し、複数種類の送受電ユニットの受電部が搬送装置に設けられている。よって、搬送装置に受電部が設けられている非接触給電システムにおいて、一種類の送受電ユニットを具備する場合と比べて、送電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】生産設備の構成例を示す平面図である。
図2】送電部が生産設備の一つの側壁部に設けられている送受電ユニットの構成例を示す側面図である。
図3】送電部が生産設備の複数(2つ)の側壁部に設けられている送受電ユニットの構成例を示す平面図である。
図4】送電部が生産設備の床部に設けられている送受電ユニットの構成例を示す側面図である。
図5】送電ユニットの構成例を示す平面図である。
図6】複数の送電ユニットが床部に並べられている状態の一例を示す平面図である。
図7】受電ユニットの構成例を示す平面図である。
図8】送電ユニットと受電ユニットの間で非接触給電を行う給電回路の一例を示す回路図である。
図9】複数の送受電部位を備える送電ユニットの構成例を示す平面図である。
図10】複数の送受電部位を備える受電ユニットの構成例を示す平面図である。
図11】送電方向および受電方向の調整例を示す平面図である。
図12】送電方向および受電方向の他の調整例を示す側面図である。
図13】特徴部が撮像された撮像画像の一例を模式的に示す模式図である。
図14】受電電圧の変化の一例を示す図である。
図15】送電部が設けられていない生産設備の未設置領域の一例を示す平面図である。
図16】第一供給部の構成例を示す平面図である。
図17】第一供給部の構成例を示す側面図である。
図18】第一供給部の他の構成例を示す側面図である。
図19】第二供給部の構成例を示す平面図である。
図20】第二供給部の構成例を示す側面図である。
図21】第三供給部の構成例を示す平面図である。
図22】第三供給部の構成例を示し、搬送装置が第三供給部を採取する前の状態を示す側面図である。
図23】第三供給部の構成例を示し、搬送装置が第三供給部を採取している状態を示す側面図である。
図24】可動部材の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.送受電ユニット30の構成例
非接触給電システム40は、複数種類の送受電ユニット30を具備している。複数種類の送受電ユニット30の各々は、電力を供給する複数の送電部10と、対向する少なくとも一つの送電部10から非接触で電力を受電する少なくとも一つの受電部20とを備えている。複数種類の送受電ユニット30の受電部20は、生産設備50において物品を搬送する搬送装置60に設けられている。また、非接触給電システム40は、送電効率調整部70を備えることができる。非接触給電システム40は、電力供給装置80を備えることもできる。本実施形態の非接触給電システム40は、複数種類の送受電ユニット30と、送電効率調整部70と、電力供給装置80とを備えている。
【0011】
生産設備50および搬送装置60は、限定されず、種々の形態をとり得る。図1に示す生産設備50は、側壁部51と、床部52と、柱部53と、天井部54と、床下部55とを備えている。同図では、天井部54が取り除かれており、生産設備50に設けられている送電部10が模式的に示されている。また、本実施形態の生産設備50は、複数(同図では、4つ)の生産レーン(Aレーン~Dレーン)を備えている。
【0012】
搬送装置60は、例えば、作業者による運転操作が不要な自動走行可能な搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)を用いることができる。搬送装置60は、受電部20によって受電された電力を用いて、複数(4つ)の生産レーンを移動することができ、物品を搬送することができる。
【0013】
複数種類の送受電ユニット30のうちの一種類は、送電部10が生産設備50の複数の側壁部51のうちの少なくとも一つの側壁部51に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの少なくとも一つの側面部61に設けられる。図2に示す送受電ユニット30では、送電部10が生産設備50の複数の側壁部51のうちの一つの側壁部51に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの一つの側面部61に設けられている。破線で示す受電部20は、紙面奥側の側面部61に設けられていることを示している。
【0014】
図3に示す送受電ユニット30では、送電部10が生産設備50の複数の側壁部51のうちの二つの側壁部51,51に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの二つの側面部61,61に設けられている。図2および図3のいずれの形態においても、送電部10と受電部20の高さは、一致している。よって、受電部20は、対向する少なくとも一つの送電部10から非接触で電力を受電することができる。また、図3に示す搬送装置60は、図2に示す搬送装置60と比べて、二倍の電力を受電することができる。なお、送受電ユニット30は、図1に示す他の側壁部51に送電部10を設けることもでき、図3に示す他の側面部61に受電部20を設けることもできる。
【0015】
図4に示すように、複数種類の送受電ユニット30のうちの一種類は、送電部10が生産設備50の床部52に設けられ、受電部20が搬送装置60の底部62に設けられている。また、図5および図6に示すように、送電部10は、複数の送電ユニット10uに設けられている。複数の送電ユニット10uの各々は、少なくとも四つの送電素子13が十字状に配置されている。図6に示すように、複数の送電ユニット10uは、床部52に並べられたときに複数の送電素子13が格子状に配置される。
【0016】
さらに、図7に示すように、受電部20は、受電ユニット20uに設けられている。受電ユニット20uは、複数の送電ユニット10uのうちの一の送電ユニット10uと対向したときに、複数の受電素子21が一の送電ユニット10uの複数の送電素子13と対向する位置に配置される。同図では、受電素子21と対向する送電素子13が破線で示されている。
【0017】
図8は、送電ユニット10uと受電ユニット20uの間で非接触給電を行う給電回路の一例を示している。同図では、図示の便宜上、複数(2つ)の送電部10が図示されているが、送電ユニット10uは、複数(4つ)の送電部10を備えている。複数(4つ)の送電部10は、共通の交流電源11と並列接続されている。複数(4つ)の送電部10の各々は、送電側共振部12と、送電素子13とが直列接続されており、送電側共振回路が形成されている。例えば、送電側共振部12は、コンデンサを用いることができる。送電素子13は、コイルを用いることができる。
【0018】
同様に、同図では、図示の便宜上、複数(2つ)の受電部20が図示されているが、受電ユニット20uは、複数(4つ)の受電部20を備えている。複数(4つ)の受電部20の各々は、受電素子21および受電側共振部22が整流回路23の入力側において並列接続されており、受電側共振回路が形成されている。例えば、受電素子21は、コイルを用いることができる。受電側共振部22は、コンデンサを用いることができる。本実施形態では、送電部10から交流電力が供給される。整流回路23は、送電部10から供給された交流電力を整流する整流回路であり、ダイオードブリッジなどの公知の整流回路を用いることができる。なお、受電部20は、整流回路23によって整流された直流電力を交流電力に変換する電力変換器を備えることもできる。
【0019】
また、図5および図6では、図示の便宜上、送電側共振部12、受電ユニット20uを検出する検出器(例えば、フォトセンサなど)、図8に示す配線などの記載が省略されている。また、制御基板CT0には、供給制御装置が設けられている。供給制御装置は、上記検出器によって受電ユニット20uが検出されたときに、交流電源11から受電ユニット20uが検出された送電素子13に交流電力を供給可能にする。
【0020】
上記検出器は、複数(4つ)の送電素子13の各々の近傍に設けられており、供給制御装置は、受電ユニット20uが検出された送電素子13に対して、交流電源11から交流電力を供給させる。共通の交流電源11から供給される交流電力は、配電線AC0を介して、受電ユニット20uが検出された送電素子13に供給される。同様に、図7では、図示の便宜上、受電側共振部22、整流回路23、図8に示す配線などの記載が省略されている。
【0021】
なお、複数の送電ユニット10uが床部52に並べられたときに複数の送電素子13が格子状に配置されるので、搬送装置60は、格子状の送電素子13の上を移動することができる。搬送装置60が移動方向を変更する際は、例えば、搬送装置60に搭載されている全方位移動型車輪などによって、受電部20の方向を変更せずに搬送装置60の移動方向を変更することができる。また、送電部10は、送電ユニット10uに設けられているので、作業者は、送電ユニット10uを増減することにより、送電部10のレイアウトを容易に変更することができる。
【0022】
複数種類の送受電ユニット30のうちの少なくとも一種類は、同一種類の送受電ユニット30において同時に使用される複数の送受電部位30pを備えることもできる。図9は、複数(同図では、2つ)の送受電部位30pを備える送電ユニット10uの構成例を示している。図10は、図9に対応する複数(2つ)の送受電部位30pを備える受電ユニット20uの構成例を示している。
【0023】
図5に示す十字状に配置されている四つの送電素子13と、四つの送電素子13に対応する図7に示す四つの受電素子21との組み合わせを一つの送受電部位30pとする。図9に示す送電ユニット10uは、八つの送電素子13が十字状に配置されており、図10に示す受電ユニット20uは、八つの送電素子13に対応する八つの受電素子21を備えている。これらは、送電部10が生産設備50の床部52に設けられ、受電部20が搬送装置60の底部62に設けられる同一種類の送受電ユニット30において同時に使用される。
【0024】
したがって、図9および図10に示す形態では、二つの送受電部位30pを備える。図9および図10に示す形態は、図5および図7に示す形態と比べて、二倍の送電素子13および受電素子21を備えるので、二倍の電力を送電し二倍の電力を受電することができる。なお、上述したことは、他の種類の送受電ユニット30についても、同様に言える。例えば、送電部10が生産設備50の複数の側壁部51のうちの少なくとも一つの側壁部51に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの少なくとも一つの側面部61に設けられる形態においても、複数の送受電部位30pを備えることができる。
【0025】
1-2.送電効率調整部70の構成例
複数種類の送受電ユニット30のうちの少なくとも一種類において、送電部10および受電部20のうちの少なくとも一方は、送電効率調整部70を備えることができる。送電効率調整部70は、搬送装置60の移動に伴って変動する送電部10と受電部20との間の送電効率が所定効率以上になるように、送電部10の送電方向および受電部20の受電方向のうちの少なくとも一方を調整する。
【0026】
送電効率調整部70は、送電部10の送電方向および受電部20の受電方向のうちの少なくとも一方を調整することができれば良く、種々の形態をとり得る。図11は、送電方向および受電方向の調整例を示している。同図に示す紙面左側の搬送装置60では、送電部10が生産設備50の一つの側壁部51に設けられ、受電部20が搬送装置60の一つの側面部61に設けられている。同図では、送電部10の送電方向と受電部20の受電方向とが一致している。
【0027】
同様に、同図に示す紙面右側の搬送装置60では、紙面右側の送電部10の送電方向と受電部20の受電方向とが一致している。しかしながら、同図に示す紙面右側の搬送装置60では、紙面左側の送電部10の送電方向と受電部20の受電方向とが同図に示すように調整されないと、送電効率が低下する可能性がある。
【0028】
図12は、送電方向および受電方向の他の調整例を示している。同図に示す搬送装置60では、送電部10が生産設備50の床下部55に設けられ、受電部20が搬送装置60の底部62に設けられている。送電部10から供給される電力は、床部52を透過して、受電部20に到達する。同図では、送電部10の送電方向と受電部20の受電方向とが一致している。
【0029】
また、同図に示す搬送装置60では、送電部10が生産設備50の側壁部51または柱部53に設けられ、受電部20が搬送装置60の側面部61に設けられている。側壁部51または柱部53に設けられる送電部10の送電方向と、側面部61に設けられる受電部20の受電方向とが同図に示すように調整されないと、送電効率が低下する可能性がある。
【0030】
例えば、送電効率調整部70は、送電部10および受電部20のうちの少なくとも一方に設けられる撮像装置70cを用いて相手方に設けられる特徴部70fを撮像する。特徴部70fは、撮像画像において他の部位と識別可能であれば良く、種々の形態をとり得る。特徴部70fは、例えば、マーク(例えば、丸印)、二次元コード、キャリブレーション用の基準マークなどを用いることができる。
【0031】
送電効率調整部70は、撮像画像における特徴部70fの位置が、送電方向と受電方向とが一致する際に撮像される所定位置と一致するように、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方を調整する。送電方向と受電方向とが一致するときに、送電部10と受電部20との間の送電効率は、少なくとも所定効率以上になっているものとする。図13は、特徴部70fが撮像された撮像画像の一例を示している。同図では、特徴部70fは、マーク(丸印)であり、例えば、送電方向と受電方向とが一致するときに、特徴部70fは、所定位置である撮像画像の対角線上の角部70r,70rに撮像されるものとする。
【0032】
送電効率調整部70は、特徴部70fが所定位置(撮像画像の対角線上の角部70r,70r)に撮像されていないときに、図11および図12に示す送電部10および受電部20のうちの少なくとも一方を回転させる。同図では、送電部10および受電部20の回転軸が回転軸AR0で模式的に示されている。回転軸AR0は、紙面に垂直な方向である。送電効率調整部70は、特徴部70fが所定位置(撮像画像の対角線上の角部70r,70r)に撮像されたときに、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方の調整を終了する。
【0033】
なお、非接触給電システム40は、搬送装置60の位置を検出する位置検出装置40sを備えることができる。位置検出装置40sは、例えば、搬送装置60を移動させる電動機に設けられるエンコーダなどであっても良く、衛星測位システムなどであっても良い。送電効率調整部70は、位置検出装置40sによって検出された搬送装置60の位置情報に基づいて、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方の調整を行う調整対象を選定することができる。例えば、送電効率調整部70は、搬送装置60の現在位置から所定範囲の送電部10を調整対象として選定して、選定した調整対象の送電部10および当該送電部10に対応する受電部20のうちの少なくとも一方について、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方を調整することができる。
【0034】
図14は、受電電圧の変化の一例を示している。同図の横軸は、送電方向と受電方向の角度差を示し、同図の縦軸は、受電電圧を示している。送電方向と受電方向とが一致しているとき(角度差はゼロ)に検出される所定電圧値は、電圧VR11で示されている。曲線L11に示すように、送電方向と受電方向の角度差が大きくなるほど、受電電圧は低下する。
【0035】
そこで、送電効率調整部70は、受電部20によって受電された電力の受電電圧を検出して、検出された受電電圧が、送電方向と受電方向とが一致する際に検出される所定電圧値に達するように、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方を調整することもできる。送電方向と受電方向とが一致するときに、送電部10と受電部20との間の送電効率は、少なくとも所定効率以上になっているものとする。なお、図14の受電電圧の特性は、予め取得しておく。また、特徴部70fを撮像する形態および受電電圧を検出する形態のいずれの形態においても、送電部10と受電部20との間の送電効率が所定効率以上であれば良く、送電方向と受電方向とが一致している場合に限定されない。つまり、送電効率調整部70は、送電方向と受電方向の角度差が所定の許容値に収まるように、送電方向および受電方向のうちの少なくとも一方を調整することもできる。上記送電効率は、搬送装置60が物品を搬送する際に必要な電力を少なくとも受電可能に設定される。
【0036】
また、図11および図12に示すように、複数の送電部10のうちの少なくとも一部は、生産設備50の側壁部51、柱部53、天井部54および床下部55のうちの少なくとも一つに設けられている。いずれの場合も、送電効率調整部70は、上述した方法で、送電部10の送電方向および受電部20の受電方向のうちの少なくとも一方を調整することができる。
【0037】
1-3.電力供給装置80の構成例
図15は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nの一例を示している。同図に示すAレーンおよびBレーンは、同図の紙面上下方向に沿って一端側から他端側にかけて送電部10が設けられており、送電部10が設けられていない未設置領域50nは含まれない。しかしながら、同図に示すCレーンおよびDレーンは、側壁部51が一部欠落しており、送電部10が設けられていない未設置領域50nが存在する。この場合、例えば、搬送装置60は、CレーンおよびDレーンにおいて、紙面上下方向に沿って一端側から他端側にかけて移動することが困難である。また、搬送装置60は、BレーンからCレーン、BレーンからDレーン、CレーンからDレーンなどに移動することが困難である。
【0038】
そこで、複数種類の送受電ユニット30のうちの少なくとも一種類について、非接触給電システム40は、電力供給装置80を備えることができる。電力供給装置80は、送電部10から供給する電力と同等の電力である代替電力を供給する。また、電力供給装置80は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nにおいて、搬送装置60に設けられる受電部20に追従して移動して受電部20に代替電力を供給する。
【0039】
図16図18に示すように、電力供給装置80は、無人走行車80aに設けられる第一供給部81を備えることができる。図16に示すように、第一供給部81は、代替電力を供給する給電部80tと搬送装置60に設けられる受電部20との間の離間距離CL0を所定距離に維持しつつ、無人走行車80aによって生産設備50を移動する。図16は、送電部10が設けられていない未設置領域50nにおいて、搬送装置60をCレーンからDレーンに移動させている状態の一例を示している。これにより、搬送装置60は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nを移動することができる。
【0040】
第一供給部81は、バッテリを搭載し、バッテリによる駆動電力によって、搬送装置60の受電部20に代替電力を供給することができる。また、第一供給部81は、有線ケーブルによって他の電源から駆動電力が供給されても良い。搬送装置60は、送電部10が設けられていない未設置領域50nに到達すると、第一供給部81が到着するまで待機する。第一供給部81は、搬送装置60が未設置領域50nに到達したことを検出する検出器(例えば、近接センサなど)の検出信号に基づいて、未設置領域50nに移動することができる。また、搬送装置60は、搬送装置60および電力供給装置80を制御する制御装置に対して、第一供給部81の出動を要請することもできる。この場合、第一供給部81は、上記制御装置による指示に基づいて、指示された未設置領域50nに移動することができる。
【0041】
また、図16に示すように、第一供給部81は、搬送装置60の側面部61に設けられている受電部20と給電部80tとが対向する形態であっても良い。さらに、図17に示すように、第一供給部81は、搬送装置60の底部62に設けられている受電部20と給電部80tとが対向する形態であっても良い。また、図18に示すように、第一供給部81は、搬送装置60の底部62に設けられている受電部20と給電部80tが対向するように、給電部80tを移動させる形態であっても良い。
【0042】
図19および図20に示すように、電力供給装置80は、代替電力を供給する給電部80tが生産設備50の床下部55に設けられる第二供給部82を備えることもできる。この形態では、非接触給電システム40は、搬送装置60の位置を検出する位置検出装置40sを備える。第二供給部82は、位置検出装置40sによって検出された搬送装置60の位置に合わせて、給電部80tが生産設備50の床下部55を移動する。
【0043】
第二供給部82は、例えば、パラレルリンクロボット、直交ロボットなどを用いることができる。これにより、搬送装置60は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nを移動することができる。また、第二供給部82は、給電部80tが生産設備50の床下部55を移動するので、床下部55の空きスペースを活用することができる。
【0044】
図21図23に示すように、電力供給装置80は、搭載するバッテリから代替電力を生成し、搬送装置60によって採取可能に生産設備50に載置される第三供給部83を備えることもできる。搬送装置60は、採取位置50sに到達すると第三供給部83を採取する。採取位置50sは、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nの始点に設けられる。図22は、搬送装置60が第三供給部83を採取する前の状態を示し、図23は、搬送装置60が第三供給部83を採取している状態を示している。
【0045】
搬送装置60は、第三供給部83から非接触給電によって代替電力を受電しつつ未設置領域50nを移動し、未設置領域50nの終点に設けられる放出位置50eに到達すると第三供給部83を放出する。これにより、搬送装置60は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nを移動することができる。
【0046】
なお、搬送装置60が第三供給部83のバッテリを消費するので、採取位置50sおよび放出位置50eには、バッテリを充電する充電装置50cが設けられていると良い。これにより、搬送装置60が第三供給部83を使用する際のバッテリ不足を抑制することができる。
【0047】
1-4.可動部材50mの構成例
複数種類の送受電ユニット30のうちの少なくとも一種類において、複数の送電部10のうちの少なくとも一部は、生産設備50を移動可能な可動部材50mに設けることができる。図24に示すように、可動部材50mは、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nにおいて、搬送装置60の移動経路に合わせて移動する。
【0048】
可動部材50mは、例えば、図16に示す第一供給部81と同様に、生産設備50を移動することができる。また、可動部材50mは、図24に示す側壁部51の長手方向一端側を軸心にして、回動することもできる。この形態においても、搬送装置60は、送電部10が設けられていない生産設備50の未設置領域50nを移動することができる。
【0049】
1-5.その他
複数種類の送受電ユニット30のうちの一種類は、送電部10が生産設備50の柱部53に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの少なくとも一つの側面部61または上面部に設けられる場合が含まれる。また、複数種類の送受電ユニット30のうちの一種類は、送電部10が生産設備50の天井部54に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの少なくとも一つの側面部61または上面部に設けられる場合が含まれる。さらに、複数種類の送受電ユニット30のうちの一種類は、送電部10が生産設備50の床下部55に設けられ、受電部20が搬送装置60の複数の側面部61のうちの少なくとも一つの側面部61または底部62に設けられる場合が含まれる。このように、送電部10が設けられる生産設備50の部位、および、受電部20が設けられる搬送装置60の部位のうちの少なくとも一方が異なるときに、送受電ユニット30の種類は異なる。
【0050】
また、送受電ユニット30は、例えば、電磁誘導、磁界共鳴(磁気共振)、電界結合(静電結合)、電波受信、直流共鳴などによって非接触給電を行うことができ、非接触給電の方式は、限定されない。例えば、直流共鳴では、図8に示す交流電源11の代わりに直流電源を用いるので、電力変換に起因する電力損失を抑制することができ、送電効率の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、生産設備50には、例えば、基板に複数の部品を装着して基板製品を生産する基板製品の生産設備が含まれる。基板製品の生産設備では、少なくとも一つの基板生産レーンを備えており、基板生産レーンの各々は、基板に所定の対基板作業を行う対基板作業機を備えている。対基板作業機には、はんだ印刷機、はんだ検査機、部品装着機、リフロー炉、外観検査機などが含まれる。
【0052】
また、基板生産レーンは、保管装置、交換装置などを備えることもできる。保管装置は、対基板作業機に着脱可能に設けられる物品(例えば、部品装着機に部品を供給するフィーダなど)を一時的に保管する。交換装置は、基板生産レーンに沿って設けられるレール上を走行して保管装置に保管されている物品を対基板作業機に搬送する。また、交換装置は、対基板作業機に装備されている物品と保管装置に保管されていた物品とを交換することもできる。さらに、交換装置は、対基板作業機に装備されていた物品を保管装置に搬送することもできる。このように交換装置は、生産設備50において物品を搬送し、搬送装置60に含まれる。
【0053】
2.実施形態の効果の一例
非接触給電システム40は、複数種類の送受電ユニット30を具備し、複数種類の送受電ユニット30の受電部20が搬送装置60に設けられている。よって、搬送装置60に受電部20が設けられている非接触給電システム40において、一種類の送受電ユニット30を具備する場合と比べて、送電効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
10:送電部、10u:送電ユニット、13:送電素子、
20:受電部、20u:受電ユニット、21:受電素子、
30:送受電ユニット、30p:送受電部位、
40:非接触給電システム、40s:位置検出装置、
50:生産設備、50n:未設置領域、50s:採取位置、
50e:放出位置、50c:充電装置、50m:可動部材、
51:側壁部、52:床部、53:柱部、54:天井部、
55:床下部、60:搬送装置、61:側面部、62:底部、
70:送電効率調整部、70c:撮像装置、70f:特徴部、
80:電力供給装置、80a:無人走行車、80t:給電部、
CL0:離間距離、81:第一供給部、82:第二供給部、
83:第三供給部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
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