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特許7395724リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20231204BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231204BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20231204BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/36 E
C01G53/00 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022523166
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 KR2020014282
(87)【国際公開番号】W WO2021075942
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0130033
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134483
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ムンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホ, ギョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, スンヒョン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/137942(WO,A1)
【文献】特開2012-146443(JP,A)
【文献】特開2016-081716(JP,A)
【文献】特開2019-091692(JP,A)
【文献】特開2003-146662(JP,A)
【文献】特開2007-258095(JP,A)
【文献】特表2013-503450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム複合酸化物粒子を含み、
前記リチウム複合酸化物粒子の内部に、結晶構造が層状構造として下記の化学式1で表されるリチウム過剰酸化物を含み、
前記リチウム複合酸化物粒子の外部に、下記の化学式2で表されるリチウムマンガン酸化物を含み、
前記リチウム複合酸化物粒子は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含み、
大きさが300nm~10μmである1次粒子が前記2次粒子に含まれる全体の1次粒子中に50vol%~100vol%に調節され、
リチウムを除いた金属(M)全体のモル数に対するリチウム(Li)のモル数の比率をLi/Mとしたとき、前記内部に含まれるリチウム過剰酸化物と前記外部に含まれるリチウムマンガン酸化物は、Li/M値が異なる、二次電池用正極活物質。
[化1]rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+ z)
(前記化学式1において、0<r≦0.6、0<a≦1、0≦x≦1、0≦y<1、0≦z<1、及び0<x+y+z≦1であり、前記M1は、Na、K、Mg、Al、Fe、Cr、Y、Sn、Ti、B、P、Zr、Ru、Nb、W、Ba、Sr、La、Ga、Mg、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ta、Mo、Sc、V、Zn、 Cu、In、S、B、Ge、Si及びBiから選ばれる少なくともいずれか一つ以上である。)
[化2]LiMn
(前記化学式2において、0.1≦b/p≦2.5で、0<q≦15である。)
【請求項2】
前記リチウム複合酸化物粒子は、内部から外部に行くほど、リチウムの濃度が勾配を形成する、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム複合酸化物粒子の内部のLi/Mは、1.1~1.6である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム複合酸化物粒子の外部のLi/Mは、0.1~0.9である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、結晶構造がスピネル構造である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム複合酸化物粒子の外部のLi/Mは、1.8~2.5である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、結晶構造が層状構造である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム複合酸化物粒子の内部は、ニッケル全体のモル数に対するマンガンのモル数の比率(Mn/Ni)が1~4.5である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム複合酸化物粒子は、内部から外部に行くほど、マンガンの濃度が勾配を形成する、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム複合酸化物粒子は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含み、
前記化学式1のM1は、前記1次粒子を成長させる融剤(Flux)として作用するドーパントである、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記化学式1の前記M1は、Ba、Sr、B、P、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWから選ばれる少なくともいずれか一つ以上である、請求項1に記載の二次電池用正極活物
質。
【請求項12】
請求項1の二次電池用正極活物質を製造する方法において、
前記正極活物質の内部を形成するための前駆体粒子を形成する段階;
前記形成された前駆体粒子とリチウム化合物とを混合し、第1熱処理を行う段階;
前記正極活物質の外部を形成するために前記第1熱処理が行われた粒子を蒸留水又はアルカリ水溶液に分散させた後、マンガンを含む化合物を投入してコーティングする段階;及び
前記コーティングされた粒子にリチウム化合物を混合し、第2熱処理を行う段階;を含む、二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記第1熱処理を行う段階は、前記化学式1のM1を含む化合物をさらに混合して熱処理する、請求項12に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項1の正極活物質を含む、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム複合酸化物粒子の内部に、結晶構造が層状構造であるリチウム過剰酸化物を含み、前記粒子の外部に、リチウムの濃度及び金属の濃度を過剰又は欠乏状態にしたリチウム二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、MP3プレーヤー、タブレットPCなどの携帯用モバイル電子機器の発展に伴い、電気エネルギーを貯蔵できる二次電池に対する需要が爆発的に増加している。特に、電気自動車、中大型エネルギー貯蔵システム、及び高エネルギー密度が要求される携帯機器の登場により、リチウム二次電池に対する需要が増加している実情である。
【0003】
近年、正極活物質として最も脚光を浴びている物質は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物Li(NiCoMn)O(この場合、前記x、y、zは、それぞれ独立的な酸化物組成元素の原子分率であり、0<x≦1、0<y≦1、0<z≦1、及び0<x+y+z≦1)である。この材料は、これまで正極活物質として活発に研究されて使用されてきたLiCoOより高電圧で使用されるので、高容量を示すという長所を有し、Co含量が相対的に少ないので、低価格であるという長所を有する。しかし、レート特性(rate capability)及び高温での寿命特性が良くないという短所を有している。
【0004】
そこで、既存のLi(NiCoMn)Oを凌ぐ、高い可逆容量を示すリチウム過剰層状酸化物をリチウム二次電池に適用するための研究が進められている。
【0005】
しかし、寿命サイクリングの間に発生する放電容量減少(cycle life)及び電圧降下(voltage decay)現象が問題となるが、これは、寿命サイクリング中における遷移金属の移動によるスピネルと類似する構造からキュービック(cubic)までの相転移によるものである。このような放電容量減少(cycle life)及び電圧降下(voltage decay)現象は、リチウム二次電池への商用化のために必ず解決しなければならない問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記課題を解決するために、寿命サイクリング中の相転移を抑制することによって、充放電容量を増加させ、寿命劣化及び電圧強化の問題を解消しようとする。
【0007】
また、層状構造のリチウム過剰酸化物の外部に作られた相によってリチウムイオン移動度を増加させ、レート特性を向上させようとする。
【0008】
また、従来の多結晶リチウム過剰酸化物に比べて、エネルギー密度が増加し、粒子の比表面積が減少するように調節し、粒子の内部構造安定性を向上させようとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、リチウム複合酸化物粒子を含み、前記リチウム複合酸化物粒子の内部に、結晶構造が層状構造として化学式1で表されるリチウム過剰酸化物を含み、前記リチウム複合酸化物粒子の外部に、下記の化学式2で表されるリチウムマンガン酸化物を含み、リチウムを除いた金属(M)全体のモル数に対するリチウム(Li)のモル数の比率をLi/Mとしたとき、前記内部に含まれるリチウム過剰酸化物と前記外部に含まれるリチウムマンガン酸化物は、Li/M値が異なる。
[化1]rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)
(前記化学式1において、0<r≦0.6、0<a≦1、0≦x≦1、0≦y<1、0≦z<1、及び0<x+y+z≦1であり、前記M1は、Na、K、Mg、Al、Fe、Cr、Y、Sn、Ti、B、P、Zr、Ru、Nb、W、Ba、Sr、La、Ga、Mg、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ta、Mo、Sc、V、Zn、Cu、In、S、B、及びBiから選ばれる少なくともいずれか一つ以上である。)
[化2]LiMnpq
(前記化学式2において、0.1≦b/p≦2.5で、0<q≦15である。)
【0010】
また、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、前記リチウム複合酸化物粒子の内部から外部に行くほど、リチウムの濃度が勾配を形成することができる。
【0011】
また、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質は、前記リチウム複合酸化物粒子の内部から外部に行くほど、マンガンの濃度が勾配を形成することができる。
【0012】
また、本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質を製造する方法は、正極活物質の内部を形成するための前駆体粒子を形成する段階;前記形成された前駆体粒子とリチウム化合物とを混合し、第1熱処理を行う段階;正極活物質の外部を形成するために前記第1熱処理が行われた粒子を蒸留水又はアルカリ水溶液に分散させた後、マンガンを含む化合物を投入してコーティングする段階;及び前記コーティングされた粒子にリチウム化合物を混合し、第2熱処理を行う段階;を含む。
【0013】
また、本発明の実施例に係る二次電池は前記正極活物質を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の実施例に係る正極活物質は、充放電容量が増加し、寿命劣化及び電圧強化の問題が解消される。
【0015】
また、層状構造のリチウム過剰酸化物の外部に作られた相によってリチウムイオン移動度が増加し、レート特性が向上する。
【0016】
また、粒子の内部構造安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の比較例及び実施例に係る正極活物質のSEMイメージを示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る正極活物質の概念図である。
図3】本発明の実施例2に係る正極活物質の概念図である。
図4】本発明の比較例及び実施例に係る正極活物質のTEMイメージを示す図である。
図5】本発明の実施例に係る正極活物質のEDS分析結果を示す図である。
図6】本発明の比較例及び実施例に係る正極活物質のXRD分析結果を示す図である。
図7】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池の充放電容量を比較する図である。
図8】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池の充放電容量を比較する図である。
図9】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池の過電圧を比較する図である。
図10】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池のレート特性を比較する図である。
図11】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池の容量維持率を比較する図である。
図12】本発明の比較例及び実施例に係る二次電池の電圧維持率を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される「含む」などの表現は、他の構成要素を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)と理解しなければならない。
【0019】
本明細書で使用される「好ましい」及び「好ましく」は、所定の環境下で所定の利点を提供できる本発明の実施形態を称するものであり、本発明の範疇から他の実施形態を排除しようとするものではない。
【0020】
本発明の実施例に係る正極活物質は、リチウム複合酸化物粒子を含み、前記リチウム複合酸化物粒子の内部に、結晶構造が層状構造として下記の化学式1で表されるリチウム過剰酸化物を含む。
[化1]rLiMnO・(1-r)LiNiCoMnM11-(x+y+z)
(前記化学式1において、0<r≦0.6、0<a≦1、0≦x≦1、0≦y<1、0≦z<1、及び0<x+y+z≦1であり、前記M1は、Na、K、Mg、Al、Fe、Cr、Y、Sn、Ti、B、P、Zr、Ru、Nb、W、Ba、Sr、La、Ga、Mg、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ta、Mo、Sc、V、Zn、Nb、Cu、In、S、B、Ge、Si及びBiから選ばれる少なくともいずれか一つ以上である。)
【0021】
前記層状構造のリチウム過剰酸化物は、単斜晶系(monoclinic)構造のLiMnOと菱面体(rhombohedral)構造のLiMOとが混在している固溶体相(phase)であり得る。また、前記Mは、Ni、Co、Mn及びM1から選ばれる少なくともいずれか一つ以上であり得る。
【0022】
前記層状構造のリチウム過剰酸化物は、初期充放電プロファイルの4.4V領域でLiMnOによる平坦区間(plateau)が表れ得る。
【0023】
前記正極活物質は、層状構造として、リチウム原子層とNi、Co、Mn、又はM1の金属原子層とが酸素原子層を経て交互に重なった層状構造であり得る。
【0024】
前記正極活物質の層状構造の層をなす面は、C軸に対して垂直な方向に結晶配向性を有し得るが、この場合、前記正極活物質内に含まれるリチウムイオンの移動性が向上し、前記正極活物質の構造安定性が増加し、電池への適用時、初期容量特性、出力特性、抵抗特性及び長期寿命特性が向上し得る。
【0025】
リチウムを除いた金属(M)全体のモル数に対するリチウム(Li)のモル数の比率をLi/Mとしたとき、前記リチウム複合酸化物粒子の内部のLi/Mは、1.1~1.6、1.2~1.6、1.3~1.6又は1.4~1.5であり得る。
【0026】
前記化学式1において、前記xの値は、0より大きく0.5以下、0より大きく0.4以下、0より大きく0.3以下、0より大きく0.2以下、又は0より大きく0.1以下であり得る。
【0027】
前記化学式1において、前記yの値は、0より大きく0.5以下、0より大きく0.4以下、0より大きく0.3以下、0より大きく0.2以下、又は0.1~0.2であり得る。
【0028】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の内部は、ニッケル全体のモル数に対するマンガンのモル数の比率(Mn/Ni)が1~4.5、2~4、又は3~4であり得る。
【0029】
前記化学式1において、M1は、Na、K、Mg、Al、Fe、Cr、Y、Sn、Ti、B、P、Zr、Ru、Nb、W、Ba、Sr、La、Ga、Mg、Gd、Sm、Ca、Ce、Fe、Al、Ta、Mo、Sc、V、Zn、Cu、In、S、B、Ge、Si及びBiから選ばれる少なくともいずれか一つ以上の物質である。
【0030】
より好ましい一例として、前記M1は、前記1次粒子を成長させる融剤(Flux)として作用するドーパントであり得る。融剤として作用することは、1次粒子の大きさを増加させるドーパントとして作用し得ることを意味する。
【0031】
より好ましくは、前記M1は、1次粒子の大きさをより成長させ、特定の範囲により適宜調節できるBa、Sr、B、P、Y、Zr、Nb、Mo、Ta及びWから選ばれる少なくともいずれか一つ以上であり得る。また、最も好ましくは、前記M1は、Nb及びTaから選ばれる少なくともいずれか一つ以上であり得る。
【0032】
一例として、前記M1は、前記リチウム過剰層状酸化物全体に対して0.01モル%~3モル%、より好ましくは、0.1モル%~1モル%が含まれ得る。1次粒子の成長を誘導する融剤として含まれるドーパントM1が前記範囲を超える場合は、リチウム複合酸化物が過量で作られ、容量及び効率低下の原因になり得る一方で、ドーパントM1が前記範囲未満である場合は、1次粒子を成長させる効果が微々たるものとなり得る。
【0033】
本発明の実施例に係る正極活物質は、前記リチウム複合酸化物粒子の外部に下記の化学式2で表されるリチウムマンガン酸化物を含む。
【0034】
[化2]LiMnpq
(前記化学式2において、0.1≦b/p≦2.5で、0<q≦15である。)
【0035】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の外部のLi/Mを意味するb/p値は、0.1~0.9、より好ましくは0.3~0.9、より好ましくは0.5~0.8であり得る。
【0036】
この場合、前記リチウムマンガン酸化物は、LiMn12又はLiMnであり得る。
【0037】
また、一例として、前記b/p値は、1.8~2.5、より好ましくは1.9~2.1であり得る。
【0038】
この場合、前記リチウムマンガン酸化物はLiMnOであり得る。
【0039】
本発明は、Mnを含むようにコーティングした後でLiを追加し、スピネル結晶構造又はリチウム過剰の層状構造を有するリチウムマンガン酸化物の外部を形成することによって内部と外部とを異ならせる。
【0040】
本発明の実施例に係る正極活物質は、前記リチウムを除いた金属(M)全体のモル数に対するリチウム(Li)のモル数の比率をLi/Mとしたとき、前記内部に含まれるリチウム過剰酸化物と前記外部に含まれるリチウムマンガン酸化物は、Li/M値が異なる。
【0041】
層状構造のリチウム過剰酸化物は、サイクリング中に放電容量減少(cycle life)及び電圧降下(voltage decay)の問題があるが、前記リチウム複合酸化物粒子の外部にリチウムの濃度及び金属の濃度を過剰又は欠乏状態にして作られた相によってレート特性が向上し得る。
【0042】
また、リチウム及びマンガンが豊富な酸化物のMn溶出を抑制し、サイクリング時に主に正極活物質の表面から発生するスピネル(spinel)相から岩塩(rock-salt)相への格子変化を抑制することによって、寿命特性向上、放電容量減少及び電圧降下抑制の効果がある。
【0043】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、内部よりリチウムが欠乏状態であり得る(図2)。
【0044】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の内部のLi/Mは1.2~1.6であり得る。また、前記リチウム複合酸化物粒子の外部のLi/Mは0.1~0.9であり得る。このとき、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、結晶構造がスピネル構造であり得る。
【0045】
このように、前記リチウム複合酸化物粒子の内部の2D構造の表面に3D構造のスピネル構造のリチウムマンガン酸化物をコーティングすることによって、リチウムイオンの移動度を増加させることができる。
【0046】
また、一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、内部よりリチウムが過剰状態であり得る(図3)。
【0047】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の内部のLi/Mは1.2~1.6であり得る。また、前記リチウム複合酸化物粒子の外部のLi/Mは1.8~2.5であり得る。このとき、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、結晶構造が層状構造であり得る。
【0048】
このように、粒子の外部を、リチウムの濃度がより過剰状態であるリチウムマンガン酸化物でコーティングすることによって、コーティング層の容量が発現され、充電容量及び放電容量が増加し得る。
【0049】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子は、内部から外部に行くほど、リチウムの濃度が減少又は増加する濃度勾配を形成することができる。
【0050】
本発明は、Mnを含むようにコーティングした後でLiを追加することによって、外部がスピネル結晶構造又はリチウム過剰の層状構造を有しながら濃度勾配を形成することができる。
【0051】
一例として、リチウム複合酸化物粒子の外部に形成されるコーティング層のマンガンのモル濃度は、粒子の内部のマンガンのモル濃度と異なり得る。
【0052】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、内部よりマンガンの濃度が減少し得る。
【0053】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子の外部は、内部よりマンガンの濃度が増加し得る。
【0054】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子は、内部から外部に行くほど、マンガンの濃度が減少又は増加する濃度勾配を形成することができる。
【0055】
一例として、前記リチウム複合酸化物粒子は、1次粒子が凝集して形成される2次粒子を含むことができる。
【0056】
より好ましい一例として、融剤として作用するドーパントをリチウム化合物との焼成段階で混合して共に熱処理することによって、1次粒子の大きさが増加するように調節し、放電容量減少及び電圧降下の問題を解消し、正極活物質の密度を改善させることができる。
【0057】
一例として、大きさが300nmより大きく10μm以下である1次粒子が前記2次粒子に含まれる全体の1次粒子中に50vol%~100vol%、70vol%~100vol%、又は100vol%に調節され得る。
【0058】
一例として、大きさが500nmより大きく10μm以下である1次粒子が前記2次粒子に含まれる全体の1次粒子中に50vol%~100vol%、70vol%~100vol%、又は100vol%に調節され得る。
【0059】
一例として、大きさが1μmより大きく10μm以下である1次粒子が前記2次粒子に含まれる全体の1次粒子中に50vol%~100vol%、70vol%~100vol%、又は100vol%に調節され得る。
【0060】
このとき、前記1次粒子の大きさは、粒子の最大長さを意味する。
【0061】
前記正極活物質の1次粒子の平均粒径は、500nmより大きく10μm以下、又は1μm~10μmに調節され得る。
【0062】
前記正極活物質の前記2次粒子の平均粒径は、2μm~20μmであり得る。
【0063】
このとき、前記平均粒径は、粒子の粒径分布曲線において、体積累積量の50%に該当する粒径と定義することができる。
【0064】
より好ましい一例として、1次粒子の大きさを増加させ、単結晶構造に該当する部分が増加するように調節するが、単結晶構造に該当する部分が多いほど、すなわち、1次粒子の数が少ないほど、多結晶で表れる電圧降下の問題が改善され得る。また、前記1次粒子の大きさを調節することによって正極活物質の比表面積を減少させ、電解液との副反応の問題を解消することができる。
【0065】
本発明において、前記1次粒子の成長を誘導することは、nucleation & ostwald ripening & particle aggregation概念を全て含む。
【0066】
一例として、ドーパントM1の添加及び含量調節を通じて前記1次粒子の大きさを調節することによって、前記正極活物質のXRD分析時、I(104)での半価幅(FWHM(deg.))は0.1(deg.)~0.25(deg.)であり得る。
【0067】
一例として、ドーパントM1の添加及び含量調節を通じて前記1次粒子の大きさを調節することによって、前記正極活物質の体積当たりのエネルギー密度(Wh/L)は2.7(Wh/L)~4.0(Wh/L)であり得る。
【0068】
一例として、ドーパントM1の添加及び含量調節を通じて前記1次粒子の大きさを調節することによって、前記正極活物質の比表面積(BET、m/g)は0.01(BET、m/g)~2(BET、m/g)であり得る。
【0069】
しかし、1次粒子が大きくなると、リチウムイオン拡散距離が増加するので、充放電時にリチウムイオンの濃度分極(Concentration polarization)による過電圧(Overpotential)が発生するという問題がある。結局、キネティクス(Kinetics)が低下し、却って正極活物質の容量が減少し得る。そこで、本発明は、粒子表面にリチウムの濃度又は金属の濃度を過剰又は欠乏状態にしたり、濃度勾配を形成することによってこれを解消することができる。
【0070】
本発明の実施例に係る二次電池用正極活物質を製造する方法は、まず、前記正極活物質の内部を形成するための前駆体粒子を形成する第1段階を含む。
【0071】
前記前駆体粒子の形成は、共沈(co-precipitation)、噴霧乾燥(spray-drying)、固相法、湿式粉砕、流動層乾燥法、振動乾燥法で行うことができ、これに特に制限されない。
【0072】
前記第1段階後、第2段階前に、前記形成された前駆体粒子を水洗及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0073】
また、前記第1段階後、第2段階前に、前記形成された前駆体粒子を300℃~600℃で焙焼する段階をさらに含むことができる。
【0074】
次に、前記第1段階後、前記形成された前駆体粒子とリチウム化合物とを混合し、第1熱処理を行う第2段階を含む。
【0075】
このとき、前記第1熱処理温度は700℃~900℃であり得る。
【0076】
より好ましい一例として、前記第1熱処理を行う段階は、前記化学式1のM1を含む化合物をさらに混合して熱処理することができる。
【0077】
次に、前記第2段階後、前記正極活物質の外部を形成するために前記第1熱処理が行われた粒子を蒸留水又はアルカリ水溶液に分散させた後、マンガンを含む化合物を投入してコーティングする第3段階を含む。
【0078】
一例として、前記第3段階後、第4段階前に、水洗及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0079】
次に、前記第3段階後、前記コーティングされた粒子にリチウム化合物を混合し、第2熱処理を行う第4段階を含む。
【0080】
このとき、前記第2熱処理温度は400℃~700℃であり得る。
【0081】
一例として、第4段階後、水洗及び乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0082】
本発明の実施例に係る二次電池は前記正極活物質を含む。
【0083】
前記正極活物質は、上述した通りであり、バインダー、導電材、及び溶媒は、二次電池の正極集電体上に使用できるものであれば、これに特に制限されない。
【0084】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する電解質を含み得るが、二次電池として使用できるものであれば、これに特に制限されない。
【0085】
以下、本発明の実施例に係る正極活物質に対して具体的に説明する。
【0086】
<実施例1>外部にリチウムを欠乏状態にしてスピネル構造のリチウムマンガン酸化物を形成する。
【0087】
内部合成
共浸法(co-precipitation method)を用いて球状のNi0.2Co0.1Mn0.7CO前駆体を合成した。90L級の反応器でNiSO・6HO、CoSO・7HO及びMnSO・HOを20:10:70のモル比(mole ratio)で混合した2.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に25wt%のNaCOと28wt%のNHOHを投入した。反応器内のpHは10.0~12.0に維持し、このときの反応器の温度は45℃~50℃に維持した。そして、不活性ガスであるNを反応器に投入し、製造された前駆体が酸化されることを防止した。合成・撹拌が完了した後、フィルタープレス(Filter Press、F/P)装備を用いて洗浄及び脱水を進行した。最終的に、脱水品を120℃で2日間乾燥し、75μm(200mesh)の篩でろ過し、18μm及び4μmのNi0.2Co0.1Mn0.7CO前駆体を得た。
【0088】
焙焼
前記前駆体をBox焼成炉でO又は空気(50L/min)雰囲気に維持し、1分当たり2℃に昇温し、焼成温度550℃で1時間~6時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0089】
第1熱処理
前記前駆体に対するLi/Mの比率が1.45になるようにLiOH又はLiCOを秤量し、融剤ドーパント(Flux dopant)としてNbを0.6モル%秤量し、これをミキサー(Manual mixer、MM)を用いて混合した。混合品をBox焼成炉でO又は空気(50L/min)雰囲気に維持し、1分当たり2℃に昇温し、焼成温度900℃で7時間~12時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0090】
外部合成
共浸法を用いて前記焼成品の表面にMn 5モル%をコーティングした。活物質と蒸留水を重さ比1:2で秤量し、活物質を蒸留水に分散させた後、MnSO・HOを蒸留水に溶かした金属硫酸水溶液を投入した。このとき、NaOHを用いてpHを10.0~12.0に維持させた。コーティング後、フィルタープレス(Filter press、F/P)装備を用いて洗浄及び脱水を進行した後、これを150℃で14時間乾燥した。
【0091】
第2熱処理
次に、前記湿式コーティング品にLi/Mn(コーティング量)が0.5~0.8になるようにLiOH又はLiCOを秤量した後、これをミキサーを用いて混合した。混合品をBox焼成炉でO又は空気雰囲気に維持し、1分当たり4.4℃に昇温し、焼成温度450℃で7時間~12時間維持した後、炉冷(furnace cooling)した。
【0092】
<実施例2>
外部にリチウムを過剰状態にして層状構造のリチウムマンガン酸化物を形成する。
【0093】
前記第2熱処理段階において、前記湿式コーティング品にLi/Mn(コーティング量)が2.0になるようにLiOH又はLiCOを秤量し、600℃で第2熱処理を行うことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0094】
<比較例>
外部にリチウムマンガン酸化物を形成しない。
前記実施例1の外部合成及び第2熱処理段階を行わないことを除いては、実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0095】
<製造例>
リチウム二次電池の製造
前記実施例及び比較例に係る正極活物質90重量%、カーボンブラック5.5wt%、及びPVDFバインダー4.5wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させ、正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmの正極集電体であるアルミニウム(Al)薄膜に塗布及び乾燥し、ロールプレス(roll press)を実施することによって正極を製造した。正極のローディングレベルは5.5mg/cmであり、電極密度は2.3g/cmであった。
【0096】
前記正極に対して金属リチウムを対極(counter electrode)とし、電解液としては1M LiPF、EC/DMC=1/1(v/v)を使用した。
【0097】
前記正極と負極との間に多孔質ポリエチレン(PE)フィルムからなるセパレーターを介在させることによって電池組立体を形成し、前記電解液を注入することによってリチウム二次電池(コインセル)を製造した。
【0098】
<実験例>
図1のSEM分析により、実施例に係る正極活物質において、1次粒子の大きさを成長させた層状構造のリチウム過剰酸化物粒子の表面にリチウムマンガン酸化物が均一にコーティングされたことを確認することができる。
【0099】
図4のTEM分析により、実施例1に係る正極活物質において、層状構造のリチウム過剰酸化物粒子の表面にスピネル構造のリチウムマンガン酸化物が形成されたことを確認することができる。
【0100】
図5のLine-EDS分析は、粒子表面に電圧を加えることによって金属の濃度変化を分析する方法であり、リチウム複合酸化物粒子の内部から外部に行くほど、マンガンの濃度勾配が形成されることを確認することができる。また、表面のMn含量は、比較例よりも実施例2でさらに多いことを確認することができる。
【0101】
図6のXRD分析により、実施例1に係る正極化物質でスピネル構造のリチウムマンガン酸化物が形成されたことを確認することができる。
【0102】
図7を参照すると、実施例1の正極活物質は、比較例に比べて放電容量が増加したことを確認することができる。これは、2D構造の表面への3D構造のスピネルコーティングでリチウムイオン移動度が速くなったためである。
【0103】
図8を参照すると、実施例2の正極活物質は、比較例に比べて充電容量が増加したことを確認することができる。これは、初期充電時にコーティングされたLiMnOが容量を発現するためである。また、充電容量のみならず、放電容量も増加したことを確認することができる。
【0104】
図9を参照すると、本発明の実施例に係る正極活物質は、比較例に比べて過電圧が大きく減少することを確認することができる。これは、表面にコーティングされた物質によってリチウムイオン伝導度が向上したためである。
【0105】
図10を参照すると、本発明の実施例に係る正極活物質は、比較例に比べてレート特性が向上することを確認することができる。これは、表面にコーティングされた物質によってリチウムイオン伝導度が向上したためである。
【0106】
図11を参照すると、本発明の実施例に係る正極活物質は、比較例に比べて寿命特性が向上することを確認することができる。これは、表面にコーティングされた物質によってサイクリング中に相転移が緩和されたためである。
【0107】
図12を参照すると、本発明の実施例に係る正極活物質は、比較例に比べて電圧降下が抑制されることを確認することができる。これは、実施例1の場合は、表面にコーティングされたスピネル3D構造によって、実施例2の場合は、表面にコーティングされたLiMnOにより、リチウム移動度が増加し、サイクリング中に発生する相転移が緩和されたためである。
【0108】
以上の実験結果を下記の表1に示した。
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12