(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】IDH1変異体阻害剤の塩形、結晶形およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 235/30 20060101AFI20231204BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20231204BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231204BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C07D235/30 B CSP
A61K31/4184
A61P1/16
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022529669
(86)(22)【出願日】2020-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2020138174
(87)【国際公開番号】W WO2021129587
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】201911335601.7
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520505191
【氏名又は名称】昆薬集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KPC PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.166 Keyi Road, New and High Technology Development Zone Kunming, Yunnan 650106 P.R.China
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 亜仙
(72)【発明者】
【氏名】楽 豹
(72)【発明者】
【氏名】喩 鵬
(72)【発明者】
【氏名】韋 昌青
(72)【発明者】
【氏名】錢 文遠
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-529200(JP,A)
【文献】特表2018-527328(JP,A)
【文献】特表2018-521095(JP,A)
【文献】特表2017-505793(JP,A)
【文献】特表2018-524371(JP,A)
【文献】特表2018-524383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが、9.78±0.20°、12.06±0.20°、20.37±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)で示される化合物のA結晶形。
【化1】
【請求項2】
X線粉末回折パターンが、7.66±0.20°、9.78±0.20°、12.06±0.20°、17.43±0.20°、18.02±0.20°、18.81±0.20°、20.37±0.20°、23.10±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項1に記載のA結晶形。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが、7.66±0.20°、9.78±0.20°、12.06±0.20°、17.43±0.20°、18.02±0.20°、18.81±0.20°、20.37±0.20°、20.91±0.20°、22.46±0.20°、23.10±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項2に記載のA結晶形。
【請求項4】
XRPDパターンが
図1に示される、請求項3に記載のA結晶形。
【請求項5】
X線粉末回折パターンが、11.66±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(I)で示される化合物のB結晶形。
【化2】
【請求項6】
X線粉末回折パターンが、7.48±0.20°、11.66±0.20°、15.83±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°、19.68±0.20°、21.79±0.20°、22.90±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項5に記載のB結晶形。
【請求項7】
X線粉末回折パターンが、7.48±0.20°、11.66±0.20°、12.47±0.20°、15.83±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°、19.68±0.20°、21.79±0.20°、22.90±0.20°、23.84±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項6に記載のB結晶形。
【請求項8】
XRPDパターンが
図4に示される、請求項7に記載のB結晶形。
【請求項9】
示差走査熱量曲線が、246.8±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する、請求項5~8のいずれか1項に記載のB結晶形。
【請求項10】
DSC曲線が
図5に示される、請求項9に記載のB結晶形。
【請求項11】
熱重量分析曲線が、230.0℃±3.0℃で、重量減少が0.54%に達する、請求項5~8のいずれか1項に記載のB結晶形。
【請求項12】
TGA曲線が
図6に示される、請求項11に記載のB結晶形。
【請求項13】
X線粉末回折パターンが、9.59±0.20°、18.19±0.20°、19.74±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする(I)で示される化合物のC結晶形。
【化3】
【請求項14】
X線粉末回折パターンが、9.59±0.20°、12.17±0.20°、12.65±0.20°、18.19±0.20°、18.87±0.20°、19.74±0.20°、21.27±0.20°、23.05±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項13に記載のC結晶形。
【請求項15】
X線粉末回折パターンが、9.59±0.20°、11.60±0.20°、12.17±0.20°、12.65±0.20°、18.19±0.20°、18.87±0.20°、19.74±0.20°、21.27±0.20°、22.20±0.20°、23.05±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項14に記載のC結晶形。
【請求項16】
XRPDパターンが
図7に示される、請求項15に記載のC結晶形。
【請求項17】
式(II)に示される化合物。
【化4】
【請求項18】
X線粉末回折パターンが、16.85°±0.20°、19.93°±0.20°、21.89°±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(II)で示される化合物のD結晶形。
【化5】
【請求項19】
X線粉末回折パターンが、7.31±0.20°、8.48±0.20°、13.08±0.20°、16.85±0.20°、17.44±0.20°、19.93±0.20°、21.89±0.20°、22.49±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項18に記載のD結晶形。
【請求項20】
X線粉末回折パターンが、7.31°、8.48°、13.08°、14.64°、16.85°、17.44°、19.93°、21.89°、22.49°、25.87°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、請求項19に記載のD結晶形。
【請求項21】
XRPDパターンが
図10に示される、請求項20に記載のD結晶形。
【請求項22】
肝内胆管腫瘍などを治療するための医薬品の製造における、請求項17に記載の化合物、請求項1~4のいずれか一項に記載のA結晶形、請求項5~12のいずれか一項に記載のB結晶形、請求項13~16のいずれか一項に記載のC結晶形、又は請求項18~21のいずれか一項に記載のD結晶形、の使用。
【発明の詳細な説明】
【相互参照】
【0001】
本願は、2019年12月23日に、中国特許局に出願された出願番号が201911335601.7、発明名称が「IDH1変異体阻害剤の塩形、結晶形およびその製造方法」である中国特許出願に基づく優先権を主張し、その全内容は援用により本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、IDH1変異体阻害剤の塩形、結晶形およびその製造方法にに関する。
【背景技術】
【0003】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(Isocitrate dehydrogenase)は、クエン酸循環過程における重要な酵素であり、イソクエン酸の2-オキソグルタル酸(すなわち、2-α-ケトグルタル酸,α-KG)への酸化的脱炭酸を触媒する。遺伝子IDH 1によってコードされるタンパク質は、細胞質およびペルオキシソームに見られたNADP(+)-依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼであり、PTS-1ペルオキシソーム・ターゲティング・シグナル配列を含有する。ペルオキシソームにおけるこの酵素の存在は、内部NADPH再生への役割を示唆している。
【0004】
非変異、例えば野生型IDHは、イソクエン酸の酸化脱炭酸を触媒しながら、NAD+(NADP+)をNADP(NADPH)に還元する。
イソクエン酸エステル+NAD+(NADP+)→α-KG+CO2+NADP(NADPH)+H+
【0005】
変異型IDH1/2タンバク質(IDH 1/2m)は、神経膠腫、急性骨髄性白血病(AML)、軟骨肉腫、肝内胆管腫瘍、黒色腫、前立腺がん、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫を含む多くの腫瘍において発見されている。また、神経膠腫においては、非原発性神経膠芽腫の70%以上はIDH1変異を持ち、IDH1変異腫瘍の92.7%はアルギニンがヒスチジンに置換されている(即ち、IDH1 R132H)(Hartmann C,Acta Neuropathol.2009,Oct;118(4):469-74).
【0006】
IDH変異タンパク質は、α-KGの還元を触媒して発癌性代謝物である2-ヒドロキシ基グルタル酸(2-HG)を産生する新たなタンバク質機能を持っている。2-HGの産生は、がんの形成及び進行に寄与すると考えられている(Dang L,Nature、2009 Dec 10;462(7274):739-44)。正常細胞は、非常に低レベルの2-HGを産生するが、IDH変異を持つ細胞は高レベルの2-HGを産生する。IDH変異を持つ腫瘍において、高レベルの2-HGも発見できる。
【0007】
したがって、変異型IDH及びその新しい活性の阻害は、がん治療のための潜在的なアプローチであり、そして、IDH変異体が2-HGを産生する新しい作用を阻害するためにその阻害剤が求められる。
【0008】
Acta Neuropathol (2017,Vol(133),Issue 4,629-644)は、化合物BAY1436032の具体的な構造を開示している。
【化1】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、X線粉末回折パターンが9.78±0.20°、12.06±0.20°、20.37±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有することを特徴とする式(I)で示される化合物のA結晶形、を提供する。
【化2】
【0010】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形のX線粉末回折パターンが7.66±0.20°、9.78±0.20°、12.06±0.20°、17.43±0.20°、18.02±0.20°、18.81±0.20°、20.37±0.20°、23.10±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0011】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形のX線粉末回折パターンが、7.66±0.20°、9.78±0.20°、12.06±0.20°、17.43±0.20°、18.02±0.20°、18.81±0.20°、20.37±0.20°、20.91±0.20°、22.46±0.20°、23.10±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0012】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形のX線粉末回折パターンが4.88°,6.03°,7.66°、9.78°、10.57°、11.65°、12.06°、13.13°、13.55°、14.70°、14.94°、15.34°、15.73°、16.02°、16.64°、17.43°、18.02°、18.34°、18.81°、19.25°、19.60°、20.37°、20.91°、21.17°、22.03°、22.46°、23.10°、23.68°、24.25°、25.16°、25.51°、26.44°、27.14°、28.77°、29.42°、30.97°、31.76°、32.29°、33.16°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0013】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形は、そのXRPDパターンが
図1に示される。
【0014】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記A結晶形のXRPDパターンの分析データが表1に示される。
【表1】
【0015】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形の示差走査熱量曲線が248.7±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形のDSC曲線が
図2に示される。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形は、その熱重量分析曲線において、230.0℃±3.0℃で、重量減少が0.97%に達する。
【0018】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のA結晶形のTGA曲線が
図3に示される。
【0019】
さらに、本発明は、X線粉末回折パターンが11.66±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有することを特徴とする式(I)で示される化合物のB結晶形を提供する。
【0020】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のX線粉末回折パターンが、7.48±0.20°、11.66±0.20°、15.83±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°、19.68±0.20°、21.79±0.20°、22.90±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0021】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のX線粉末回折パターンが7.48±0.20°、11.66±0.20°、12.47±0.20°、15.83±0.20°、16.69±0.20°、17.69±0.20°、19.68±0.20°、21.79±0.20°、22.90±0.20°、23.84±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のX線粉末回折パターンが、7.48°、11.66°、12.47°、14.56°、15.83°、16.06°、16.69°、17.69°、18.13°、19.68°、21.19°、21.79°、22.12°、22.90°、23.84°、25.50°、29.72°の2θ角で特徴的な回折を有する。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形は、そのXRPDパターンが
図4に示される。
【0024】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のXRPDパターンの分析データが表2に示される。
【表2】
【0025】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形の示差走査熱量曲線が246.8±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のDSC曲線が
図5に示される。
【0027】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形は、その熱重量分析曲線において230.0℃±3.0℃で、重量減少が0.54%に達する。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のB結晶形のTGA曲線が
図6に示される。
【0029】
さらに、本発明は、X線粉末回折パターンにおいて、9.59±0.20°、18.19±0.20°、19.74±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有することを特徴とする式(I)で示される化合物のC結晶形を提供する。
【0030】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形のX線粉末回折パターンが9.59±0.20°、12.17±0.20°、12.65±0.20°、18.19±0.20°、18.87±0.20°、19.74±0.20°、21.27±0.20°、23.05±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形のX線粉末回折パターンが、9.59±0.20°、11.60±0.20°、12.17±0.20°、12.65±0.20°、18.19±0.20°、18.87±0.20°、19.74±0.20°、21.27±0.20°、22.20±0.20°、23.05±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0032】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形のX線粉末回折パターンが、7.70°、9.59°、10.78°、11.60°、12.17°、12.65°、17.70°、18.19°、18.87°、19.74°、20.12°、21.27°、22.20°、23.05°、25.25°、25.61°、26.43°、28.53°の2θ角で特徴的な回折を有する。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形は、そのXRPDパターンが
図7に示される。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記C結晶形のXRPDパターンの分析データが表3に示される。
【表3】
【0035】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形の示差走査熱量曲線が248.6±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形のDSC曲線が
図8に示される。
【0037】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形は、その熱重量分析曲線において230.0℃±3.0℃で、重量減少が3.01%に達する。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のC結晶形のTGA曲線が
図9に示される。
【0039】
さらに、本発明は、式(II)で示される化合物を提供する。
【化3】
【0040】
さらに、本発明は、X線粉末回折パターンが、16.85°±0.20°、19.93°±0.20°、21.89°±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する、ことを特徴とする式(II)で示される化合物のD結晶形を提供する。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形のX線粉末回折パターンが、7.31±0.20°、8.48±0.20°、13.08±0.20°、16.85±0.20°、17.44±0.20°、19.93±0.20°、21.89±0.20°、22.49±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形のX線粉末回折パターンが、7.31°、8.48°、13.08°、14.64°、16.85°、17.44°、19.93°、21.89°、22.49°、25.87°の2θ角で特徴的な回折を有する。
【0043】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形は、そのXRPDパターンが
図10に示される。
【0044】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記D結晶形のXRPDパターンの分析データが、表4に示される。
【表4】
【0045】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形の示差走査熱量曲線が、211.6±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形のDSC曲線が、
図11に示される。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形は、その熱重量分析曲線において210.0℃±3.0℃で、重量減少が2.50%に達する。
【0048】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のD結晶形のTGA曲線が、
図12に示される。
【0049】
さらに、本発明は、式(III)で示される化合物を提供する。
【化4】
【0050】
さらに、本発明は、X線粉末回折パターンが、15.07°±0.20°、20.07°±0.20°、25.50°±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する式(III)で示されることを特徴とする化合物のE結晶形を提供する。
【0051】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形のX線粉末回折パターンが、11.80±0.20°、15.07±0.20°、17.71±0.20°、20.07±0.20°、22.54±0.20°、24.42±0.20°、25.50±0.20°、26.20±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0052】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形のX線粉末回折パターンが、11.10°、11.80°、15.07°、16.70°、17.71°、20.07°、20.48°、22.54°、24.42°、25.50°、26.20°、28.99°、30.63°、35.34°、38.41°、39.31°の2θ角で特徴的な回折を有する。
【0053】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形は、そのXRPDパターンが、
図13に示される。
【0054】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形のXRPDパターンの分析データが、表5に示される。
【表5】
【0055】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形は、示差走査熱量曲線において、それぞれの163.5±3.0℃及び240.4±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0056】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形のDSC曲線が、
図14に示される。
【0057】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形は、その熱重量分析曲線において140.0℃±3.0℃で、重量減少が0.29%に達する。
【0058】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のE結晶形のTGA曲線が、
図15に示される。
【0059】
さらに、本発明は、式(IV)で示される化合物を提供する。
【化5】
【0060】
さらに、本発明は、X線粉末回折パターンが、8.19°±0.20°、11.11°±0.20°、22.37°±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有することを特徴とする式(IV)で示される化合物のF結晶形を提供する。
【0061】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形のX線粉末回折パターンが、8.19±0.20°、11.11±0.20°、15.74±0.20°、17.12±0.20°、18.16±0.20°、21.78±0.20°、22.37±0.20°、23.86±0.20°の2θ角で特徴的な回折ピークを有する。
【0062】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形のX線粉末回折パターンが、8.19°、8.53°、11.11°、15.74°、17.12°、18.16°、18.95°、19.50°、21.12°、21.78°、22.37°、22.77°、23.86°、25.66°の2θ角で特徴的な回折を有する。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形は、そのXRPDパターンが
図16に示される。
【0064】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記F結晶形のXRPDパターンの分析データが、表6に示される。
【表6】
【0065】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形の示差走査熱量曲線が、141.5±3.0℃で吸熱ピークのピーク値を有する。
【0066】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形のDSC曲線が、
図17に示される。
【0067】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形は、その熱重量分析曲線において、130.0℃±3.0℃で、重量減少が1.08%に達する。
【0068】
本発明の幾つかの実施形態においては、上記のF結晶形のTGA曲線が、
図18に示される。
【0069】
さらに、本発明は、肝内胆管腫瘍などを治療するための医薬品の製造における、上記の化合物、A結晶形、B結晶形、C結晶形、D結晶形、E結晶形、又はF結晶形の使用を提供する。
【発明の効果】
【0070】
本発明の化合物の各結晶形は、安定且つ吸湿性に優れ、光および熱による影響が少ないという利点を有し、薬製品になる見通しがある。式(I)で示される化合物は、酵素的レベルで、変異形IDH1R132H及びIDH1R132Cに対して良好な阻害効果を有するとともに、野生型IDHタンバク質に対しては阻害効果を有しない。細胞レベルでは、式(I)で示される化合物は、IDH1R132H変異を持つU87MG脳の神経膠腫細胞に対して良好な2-HG阻害効果を示す。また、式(I)で示される化合物は、良好なマウス体内の薬物動態学特性を持っている。
定義及び説明
【0071】
特に断りがない限り、本明細書に用いられる以下の用語及び文句は、以下の意味を持つことを意図している。特定の文句又は用語は、特に定義されていない限り、不確定または不明確であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に記載されている商品名は、対応する市販製品またはその有効成分を指すことを意図している。
【0072】
本発明の中間体化合物は、以下に例示される具体的な実施形態、それと他の化学合成方法との組み合わせによって形成される実施形態、及び当業者に知られている同等の置換形態などを含む、当業者に知られている様々な合成方法で製造することができ、好適な実施形態には、本発明の実施例が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の具体的な実施形態の化学反応は、本発明の化学変化及び必要とする試薬と物質に適した適切な溶媒中に実施される。本発明の化合物を得るためには、当業者は、実施形態に基づいて合成ステップ又は反応スキームを改変または選択することが必要な場合がある。
【0074】
以下、実施例を通じて本発明を詳細に説明するが、それらの実施例は、本発明を限定することを意味するものではない。
【0075】
本発明で使用される全ての溶媒は、市販されており、さらなる精製することなく使用することができる。
【0076】
本発明で使用される溶媒は、市販品として入手することができる。本発明においては、下記の略語が使用される。EtOHはエタノール、MeOHはメタノール、EtOAcは酢酸エチル、TFAはトリフルオロ酢酸、TsOHはp-トルエンスルホン酸、mpは融点、THFはテトラヒドロフラン、K2CO3は炭酸カリウム、NaOHは水酸化ナトリウム、DMSOはジメチルスルホキシド、MeSO3Hはメタンスルホン酸、EDCIは1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩を表す。
【0077】
化合物は、当技術分野における従来の命名法に従って、又はChemDraw(登録商標)ソフトウェアにより命名され、市販の化合物は、サプライヤーのカタログ名が使用される。
【0078】
本発明の粉末X線回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)法
機器モデル:PANalytical(パナリティカル)社のX’Pert3型X線回折装置
測定方法:約10mgのサンプルをXRPD検出に使用した。
詳細的なXRPDパラメータは、以下の通りである。
放射線源:Cu、kα(Kα1=1.540598Å、Kα2=1.544426Å、Kα2/Kα1強度比:0.5)
管電圧:45kV、ライトチューブ電流:40mA
発散スリット:恒定1/8deg
一次ソーラスリット:0.04rad、二次ソーラスリット:0.04rad
受光スリット:なし、散乱防止スリット:7.5mm
測定時間:5min
走査角度範囲:3~40deg
ステップ幅角度:0.0263deg
ステップサイズ:46.665秒
サンプルトレイの回転速度:15rpm
【0079】
本発明の示差熱分析(Differential Scanning Calorimeter, DSC)法
機器モデル:TA DiscoveryDSC2500型の示差走査熱量計
測定方法:サンプル(1~10mg)をを取り、蓋付きのアルミニウムるつぼに入れ、10℃/minの加熱速度、及び50mL/minの乾燥N2の保護下でサンプルを室温から300℃(又は350℃)に加熱しながら、TAソフトウェアで加熱プロセス中のサンプルの熱変化を記録した。
【0080】
本発明の熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)法
機器モデル:TADiscoveryTGA 5500型の熱重量分析計
測定方法:サンプル(2~15mg)を取り、白金るつぼに入れ、段階的な高分解能検出方を採用し、10℃/minの加熱速度、及び50mL/minの乾燥N2のの保護下でサンプルを室温から350℃まで加熱しながら、TAソフトウェアで加熱プロセス中のサンプルの熱変化を記録した。
【0081】
本発明の動的水蒸気吸着分析(Dynamic Vapor Sorption、DVS)法
機器モデル:SMS DVS intrinsic動的水分吸着測定装置
測定条件:10mgのサンプルを計量し、DVSサンプルトレイに置いて測定した。
詳細的なDVSパラメータは、以下の通りである。
温度:25℃
平衡:dm/dt=0.01%/min
乾燥:0%RH下で120分間乾燥
RH(%)測定ラング:5%
RH(%)測定ラング範囲:0%~95%~0%
【0082】
吸湿性評価は、以下のように分類される。
【表6.5】
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】
図1は、式(I)で示される化合物A結晶形のCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、式(I)で示される化合物A結晶形のDSC曲線である。
【
図3】
図3は、式(I)で示される化合物A結晶形のTGA曲線である。
【
図4】
図4は、式(I)で示される化合物B結晶形のCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図5】
図5は、式(I)で示される化合物B結晶形のDSC曲線である。
【
図6】
図6は、式(I)で示される化合物B結晶形のTGA曲線である。
【
図7】
図7は、式(I)で示される化合物C結晶形のCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図8】
図8は、式(I)で示される化合物C結晶形のDSC曲線である。
【
図9】
図9は、式(I)で示される化合物C結晶形のTGA曲線である。
【
図10】
図10は、式(II)で示される化合物D結晶形のCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図11】
図11は、式(II)で示される化合物D結晶形のDSC曲線である。
【
図12】
図12は、式(II)で示される化合物D結晶形のTGA曲線である。
【
図13】
図13は、式(III)で示される化合物E結晶形のCu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図14】
図14は、式(III)で示される化合物E結晶形のDSC曲線である。
【
図15】
図15は、式(III)で示される化合物E結晶形的TGA曲線である。
【
図16】
図16は、式(IV)で示される化合物F結晶形的Cu-Kα放射線によるXRPDパターンである。
【
図17】
図17は、式(IV)で示される化合物F結晶形のDSC曲線である。
【
図18】
図18は、式(IV)で示される化合物F結晶形的TGA曲線である。
【
図19】
図19は、式(I)で示される化合物B結晶形のDVS曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以下、本発明をさらに理解するために、具体的な実施例を合わせて本発明を詳細に説明するが、それら具体的な実施形態は、本発明の内容を制限するものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1:式(I)で示される化合物の製造
【0086】
【0087】
ステップ1:
50Lの高温低温反応釜に、THF(4.05L)を一度に加え、内温を20~30℃に制御しながら、化合物1(1345.47g,7.91mol)を加えた後、ホスホノ酢酸トリエチル(1912.00g,8.36mol)を加えた。内温を制御しながら、調製したK2CO3水溶液(3.97L,4M)を滴下した。滴下終了後、系を20~30℃で17時間撹拌し、反応を停止させた。反応釜に水(12L)を加え、2時間撹拌し、系をろ過し、フィルターケーキを水(5L)でリンスし、真空乾燥(-0.1Mpa,50℃)させ、化合物2を得た。
【0088】
ステップ2:
50Lの高温低温反応釜に酢酸エチル(4.55L)とn-ヘキサン(4.55L)を加え、内温を30~40℃に制御し、さらに、順に化合物2(1710.00g,7.15mol)、K2CO3(1001.00 g,7.17mol)、及び(R)-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフチルアミン(1111.50g,7.49mol)を加え、内温を70~80℃に制御しながら16時間撹拌し、反応を停止させた。内温を70~75℃に制御し、撹拌しながら、系を3つの5Lのバケツに放出し、30~40℃自然に冷却し、多量の固形物を析出させ、それを粉砕して粗生成物を得た。反応釜にn-ヘキサン(17L)及び水(5.1L)を加え、内温を30~40℃に制御し、上記の粗生成物を加え、4時間撹拌した。ろ過したフィルターケーキをn-ヘキサン(5L)と水(5L)との混合溶媒でリンスし、フィルターケーキを吸引乾燥し、真空乾燥(-0.1Mpa,50℃)させて化合物3を得た。
【0089】
ステップ3:
10Lのオートクレーブに化合物3(500.00g,1.36mol)、ウェットパラジウム炭素(50g,10%含有量)、及びTHF(5L)を加え、アルゴンガスで3回置換し、さらに水素ガスで3回置換し、そして、水素ガス(2.8Mpa)を通過させ、25~35℃で1時間撹拌した。水素ガスを2.8Mpaまで補充し、続いて1時間撹拌し、さらに水素ガスを2.8Mpaまで補充し、16.5時間撹拌し、反応を停止させた。反応液を珪藻土層でろ過し、ろ液を収集し、フィルターケーキをTHFで2回(500mL×2)リンスし、合わせて約6Lのろ液を得た。化合物4を含むろ液を直接次のステップに使用し、収率を理論的に100%と計算した。
【0090】
ステップ4:
50Lの高温低温反応釜に化合物4(1837.36g,5.43mol,18.5LのTHF溶液)を一度に加え、内温を20~30℃に制御しながら、4-(トリフルオロメチル)フェニルイソチオシアネート(1194.00g,5.45mol)を加え、40~45℃に昇温し、1時間撹拌した後、EDCI(1150.00g,6.00mol)を加え、65~70℃に昇温し、17時間撹拌しながら反応させた。反応系を30~40℃に冷却し、ろ過し、ろ液を収集した。ろ液を(-0.1MPa,50℃)濃縮し、化合物5を得た。次のステップに直接使用し、収率を理論的に100%と計算した。
【0091】
ステップ5:
50Lの高温低温反応釜に化合物5(2832.31g,5.41mol)及びEtOH(11.37L)を順に加え、NaOH(437.13g,10.93mol)を水(5.65L)に溶解し、反応釜にゆっくりと滴下し、滴下速度を温度変化に応じて制御し、内温を25~35℃に制御した。滴下終了後、25~35℃下で16時間撹拌し、反応を停止させた。系に希塩酸(1M)をゆっくりと滴下し、pH=5~6に調製し、約11Lの希塩酸を使用した。調整完了後、続いて25~35℃で2時間撹拌し、次に、ろ過し、吸引乾燥した。フィルターケーキをEtOHと水との混合溶媒(EtOH:水=1:1,5.6L)で洗浄し、吸引乾燥した。得られたフィルターケーキを減圧下でスピン乾燥させ(-0.1MPa,50℃)、式(I)で示される化合物を得た。
1H NMR(400 MHz,CD3OD) δ 7.60(d,J=8.6Hz,2H),7.33-7.15(m,5H),7.04(br t,J=7.0Hz,1H),6.83(br d,J=7.6Hz,1H),6.74(br d,J=7.9Hz,1H),6.41(br d,J=8.1Hz,1H),5.88(br t,J=8.1Hz,1H),3.15-3.01(m,1H),3.00-2.85(m,3H),2.57(br t,J=7.4Hz,2H),2.30(br s,2H),2.13(br s,1H),2.01(br d,J=16.1Hz,1H).
実施例2:式(I)で示される化合物A結晶形の製造
【0092】
式(I)で示される化合物(360g)をDMSO(400mL)に溶解し、80℃に加熱した。撹拌しながら、溶液中にEtOH(2480mL)と水(1080mL)との混合溶液を滴下し、約2時間後、滴下を終了し、加熱を停止した。溶液をゆっくりと20℃に冷却し、続いて58時間撹拌し、その後、ろ過した。得られたフィルターケーキをEtOH(500mL)に10分間浸し、ろ過し、吸引乾燥した。3回繰り返し、フィルターケーキを収集し、恒量になるまで真空乾燥させ、式(I)で示される化合物のA結晶形を得た。
実施例3:式(I)で示される化合物B結晶形の製造
【0093】
式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)を反応フラスコに量り、アセトン(0.3mL)を加えて懸濁液を形成した。懸濁液を室温下で6日間磁気撹拌し、遠心分離し、上澄みを除去し、固形物を50℃で2時間真空乾燥させ、式(I)で示される化合物のB結晶形を得た。
【0094】
式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)をフラスコに量り、酢酸エチル(0.3mL)を加えて懸濁液を形成した。懸濁液を室温下で6日間磁気撹拌し、遠心分離し、上澄みを除去し、固形物を50℃で2時間真空乾燥させ、式(I)で示される化合物のB結晶形を得た。
実施例4:式(I)で示される化合物B結晶形の製造
【0095】
50Lの高温低温反応釜にEtOH(7344mL)、DMSO(1836mL)と式(I)で示される化合物(2295.00g,4.63mol)を順に加えた。添加後、内温を80~85℃に制御してそれを完全に溶解させた。その後、熱いうちにろ過して不溶性不純物を除去し、ろ液を再び反応器に注ぎ、反応器内の温度を82℃に制御した。温度が安定になった後、系にEtOH:水=2:1との混合溶液をゆっくりと滴下し、滴下しながら反応釜内の状況を観察し、滴下中にわずかに濁り、すぐに溶けて透明になる現象が発生すると(この時点で温度が78℃、溶媒消費量が1200mL)、6gの式(I)で示される化合物のB結晶形を種結晶としてバッチで系に加えた。種結晶を加えた後、系が濁り、加熱を停止し、温度を自然に25-35℃に下げ、16.5時間撹拌した。温度を25~35℃に制御し、系にEtOH:水=2:1の混合溶液17160mLをゆっくりと滴下し、滴下後、続いて25~35℃で撹拌し、合わせて24時間撹拌した後、撹拌を停止し、ろ過し、吸引乾燥した。フィルターケーキをEtOH:水=2:1の溶媒で(5L×2)洗浄し、乾燥まで吸引ろ過した。得られた固形物を反応釜に加え、EtOH(5.5L)を加え、25~35℃で1.5時間撹拌し、撹拌を停止し、ろ過し、吸引乾燥した。フィルターケーキを50℃で恒量になるまで真空乾燥させ、式(I)で示される化合物のB結晶形を得た。
実施例5:式(I)で示される化合物C結晶形の製造
【0096】
計量した式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)をフラスコに量り、THF(0.3mL)を加えて懸濁液を形成した。懸濁液を室温下で6日間磁気撹拌し、不溶性物質が析出するまでn-ヘキサンを滴下し、遠心分離し、上澄みを除去した。固形物を50℃で2時間真空乾燥させ、式(I)で示される化合物C結晶形を得た。
実施例6:式(II)で示される化合物D結晶形の製造
【0097】
計量した式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)をフラスコに量り、MeSO3H(3μL)を含むアセトン(0.3mL)を加え、室温下で5日間磁気撹拌し、遠心分離し、上澄みを除去し、固形物を50℃で2時間真空乾燥させ、式(II)で示される化合物のD結晶形を得た。
実施例7:式(III)で示される化合物Eの結晶形の製造
【0098】
式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)とD-グルクロン酸(8.5mg)をフラスコに量り、アセトン(0.3mL)を加え、室温下で5日間磁気撹拌し、遠心分離し、上澄みを除去し、固形物を50℃で2時間真空乾燥させ、式(III)で示される化合物のE結晶形を得た。
実施例8:式(IV)で示される化合物F結晶形の製造
【0099】
式(I)で示される化合物A結晶形(20mg)とマレイン酸(5.1mg)をフラスコに量り、酢酸エチル(0.3mL)を加え、室温下で5日間磁気撹拌し、固形物が析出するまでn-ヘプタンを加えた。分離し、フィルターケーキを収集し、50℃で2時間真空乾燥させ、式(IV)で示される化合物のF結晶形を得た。
実施例9:式(I)で示される化合物B結晶形の吸湿性に関する調査
【0100】
実験材料:
SMS DVS intrinsic動的蒸気吸着装置
【0101】
実験方法:
10.03mgの式(I)で示される化合物B結晶形を秤量し、DVSサンプルトレイに置いて測定に供した。
【0102】
実験結果:
式(I)で示される化合物B結晶形のDVS曲線は、
図19に示し、ここで、△W=0.09%。
【0103】
実験結論:
式(I)で示される化合物B結晶形は、25℃及び80% RH下で、吸湿による重量増加が0.09%であり、吸湿性ではない。
実施例10:式(I)で示される化合物B結晶形の固体の安定性試験
【0104】
《原料薬及び製剤の安定性試験に関するガイドライン》(中国薬局方2015版第4部の一般原則9001)に従って、高温(60℃、オープン)、高湿(室温/相対湿度92.5%、オープン)、及び強光照射(5000lx、クローズ)条件下での式(I)で示される化合物Eの結晶形の安定性を調査した。
【0105】
約10mgの式(I)で示される化合物を乾燥した清潔なガラス瓶に正確に量り、薄層に広げ、アルミホイルで覆い、小さな穴を開け、影響因子の試験条件下(60℃、92.5%RH)及び加速条件下(40℃/75%RH及び60℃/75%RH)で置いた。光照射(可視光1200000Lux、紫外線200W)条件下で置かれたサンプルは、透明なガラス瓶に入れられ、一方のグループは完全に露出され、他方の一グループはアルミホイルで完全に包まれた。各条件は各時点で2つのコピーに配置され、XRPD検出に用いられるサンプルは別々に置いた。異なる条件下で置いたサンプルは、計画された試験終点でXRPD検出のためにサンプリングされ、その測定結果を0日目での最初の測定結果と比較し、試験結果を表7に示す。
【0106】
【0107】
結論:式(I)で示される化合物B結晶形は高温、高湿度、強光照射および加速条件下で良好な安定性を有する。
実験例1:IDH1のインビトロでの酵素活性の測定
【0108】
IDH1変異体は、NADPHに依存したα-KG(α-ケトグルタル酸)から2-HG(2-ヒドロキシ基グルタル酸)への還元を触媒し、消費したNADPHは、蛍光によって読み取ることができる。
【0109】
試薬:
基本反応緩衝液:50mM KH2PO4,pH7.5,10mM MgCl2,10%グリセリン、150 mM NaCl,0.05% BSA(ウシ血清アルブミン)、2mM b-ME(2-メルカプトエタノール)、0.003% Brij35(オキシエチレンラウリルエーテル)
【0110】
基質及び補因子:
IDH1wt(野生型):65μM イソクエン酸+50μM NADP
IDH1(R132H):1500μM α-KG+15μM NADPH
IDH1(R132C):500μM α-KG+15μM NADPH
【0111】
反応プロセス:
反応プレートのウェルに1.33X酵素(コントロールウェルには加えなかった)、緩衝液、及びNADP又はNADPH(コントロールウェル)を加え、被験化合物を100%DMSOに溶解した後、酵素混合物(Echo550、ナノリットルレベル)に加え、簡単に遠心分離した後、60分間インキュベートし、4X基質と補因子との混合物を加えて反応を開始し、簡単に遠心分離した後、振とうし、室温下で45分間インキュベートした。3Xリポアミドデヒドロゲナーゼとレサズリンとの混合物を調製し、それを反応液に加え、生成または残留したNADPHの量を測定し、簡単に遠心分離した後、室温下で10分間インキュベートし、多機能マイクロプレートリーダーEnvisionによって(Ex/Em=535/590nm)測定した。
【0112】
実験結果は、表8及び表9を示す。
【表8】
【表9】
【0113】
結論:式(I)の化合物は、変異のIDH1R132H及びIDH1R132Cに対して酵素的レベルで良好な阻害作用を有し、また、野生型IDHタンバク質に対しては阻害作用を有しない。結論:式(I)の化合物は、変異型IDH1R132HおよびIDH1R132Cに対して酵素レベルで優れた阻害効果を示し、野生型IDHタンパク質に対しては阻害効果を示しません。
実験例2:IDH1の細胞学的活性試験
【0114】
この研究は、化合物をIDH1変異体細胞株と共培養した後、細胞培養上清中の2HG含有量をLC-MSで検出し、IDH1変異体に対する化合物の阻害活性を測定した。IDH1は、生体内でのイソクエン酸のα-ケトグルタル酸(α-KG)への還元を触媒し、IDH1変異体は、α-KGから2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)への還元を触媒する。
【0115】
U87MG-IDH1-R132H細胞株は、IDH1-R132HでU87MG細胞をトランスフェクトすることでスクリーニングされた、IDH1-R132H変異体を安定して発現できる安定的トランスフェクト細胞株であり、HT1080細胞株は、内因性IDH1-R132C変異体を含有する。
【0116】
実験プロセスは次のとおりである。
1)化合物をDMSOで3倍段階希釈した後、合計10個の濃度で、細胞培養プレートに加え、各濃度でダブルウェルに入れた。陰性コントロールウェルには、DMSOのみを含み、陽性コントロールウェルには、終濃度が5μMのBAY1436032を含んだ。全てのウェルでのDMSO終濃度は0.5%であった。
2)IDH1変異体細胞株を40000個細胞/ウェルの密度で化合物を含む細胞培養プレートに播種した。細胞を化合物と共に37℃、5% CO2インキュベーターで3日間共培養した。
3)3日後、10μlの細胞培養上清を取り、200μlのddH2O水で210μlまで21倍希釈し、よく混合し、希釈溶液50μlを取り出し、200μlの沈殿剤(0.4μg/mlのD-2-ヒドロキシ基グルタル酸13C5を含むアセトニトリル)を加えた。4000rpmで10分間遠心分離した後、100μlの上清を採取してLC-MSで2-HGの含有量を検出した。
4)同時に、ATPlite 1Stepキットを並行して使用し、説明書方法でIDH1変異体細胞株の細胞生存率に対する化合物の影響を検出した。
5)IDH1変異体に対する各濃度の化合物の阻害百分率(阻害率%)は、2HG含有量のデータから以下の式により計算した。
阻害率%=(CPD-ZPE)/(HPE-ZPE)×100%
IDH1変異体細胞株に対する化合物の細胞毒性の百分率(細胞毒性%)は、細胞生存率データから以下の式により計算した。
細胞毒性%=(1-CPD/ZPE)×100%
CPD:化合物ウェルの信号値
ZPE:化合物の代わりに0.5%DMSOを使用した陰性コントロールウェル信号の平均値
HPE:陽性コントロールウェル信号の平均値
6)阻害率%及び細胞毒性%をGraphPad Prismソフトウェアで用量反応曲線に適合させ、試験化合物のIC50を得た。
【0117】
【0118】
結論:細胞レベルでは、式(I)の化合物は、IDH1R132H変異を持つU87MG脳神経膠腫細胞に対して良好な2-HG阻害効果を有する。
実験例3 マウス体内での薬物動態学の評価
【0119】
実験の目的:
マウス体内での式(I)化合物の薬物動態パラメータを調べた。
【0120】
実験プログラム:
1)実験薬剤:式(I)の化合物
2)実験動物:7~10週齢の雄CD-1マウス8匹を、グループあたりに4匹ずつ、2つのグループに分けた。
3)薬剤の調製:尾静脈注射群では、適量の薬剤を秤量し、DMSO:20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPbCD)=10:90の混合溶媒に溶かし、0.5mg/mLの溶液を調製した。胃内投与群では、適量の薬剤を秤量し、DMSO:ポリオキシエチレンヒマシ油EL(Cremophor EL):5%スルホブチルシクロデキストリン(Captisol)=5:10:85に溶かし、懸濁液を調製した。
【0121】
実験操作:
グループ1の動物には、尾静脈注射により濃度が0.5mg/mLの薬剤を投与量1mg/kgで単回投与し、グループ2の動物には、強制経口投与により濃度が2mg/mLの化合物を投与量20mg/kgで投与した。投与後0.0833(尾静脈注射群のみ)、0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間で動物から血漿サンプルを交差採取した。LC-MS/MS法で血漿サンプル中の薬物濃度を測定し、試験薬剤の動態学パラメータを表11に示す。
【0122】
【0123】
結論:式(I)の化合物は、良好なマウス体内での薬物動態学的性を示す。