(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】タイヤコード用接着組成物、タイヤコードおよびタイヤ
(51)【国際特許分類】
C09J 175/00 20060101AFI20231204BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231204BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231204BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231204BHJP
C09J 107/02 20060101ALI20231204BHJP
C09J 109/08 20060101ALI20231204BHJP
C09J 111/02 20060101ALI20231204BHJP
C09J 123/22 20060101ALI20231204BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20231204BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20231204BHJP
D06M 13/325 20060101ALI20231204BHJP
D06M 13/395 20060101ALI20231204BHJP
B05D 1/18 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
C09J175/00
C09J175/04
C09J201/00
C09J11/06
C09J107/02
C09J109/08
C09J111/02
C09J123/22
C09J133/00
C09J175/06
D06M13/325
D06M13/395
B05D1/18
(21)【出願番号】P 2022533628
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2021004456
(87)【国際公開番号】W WO2021206491
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043566
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0045707
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-506994(JP,A)
【文献】特開平08-259744(JP,A)
【文献】特開2013-023668(JP,A)
【文献】特開平04-314719(JP,A)
【文献】特開平05-140405(JP,A)
【文献】特開2001-064620(JP,A)
【文献】国際公開第2010/125992(WO,A1)
【文献】特表2021-531391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/00
C09J 175/04
B05D 1/18
C09J 11/06
C09J 107/02
C09J 109/08
C09J 111/02
C09J 123/22
C09J 133/00
C09J 175/06
C09J 201/00
D06M 13/325
D06M 13/395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂とジオール化合物の反応生成物;
イソシアネート化合物;
ラテックス;
水分散ポリウレタン
アミン化合物;および
溶媒
を含み、
前記ジオール化合物は、炭素数3~8の直鎖または分枝鎖の脂肪族ジオール化合物である、タイヤコード用接着組成物。
【請求項2】
0.5~10.0重量%の前記反応生成物;
1.0~20.0重量%の前記イソシアネート化合物;
1.0~30.0重量%の前記ラテックス;
0.5~10.0重量%の前記水分散ポリウレタン;
0.1~10.0重量%の前記アミン化合物;および
60.0~85.0重量%の前記溶媒
を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項3】
前記反応生成物は、前記エポキシ樹脂と前記ジオール化合物とが1:0.1~1:5の重量比で反応したものである、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、およびオキサゾリドン系エポキシ樹脂からなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項5】
前記ジオール化合物は、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項6】
前記イソシアネート化合物は、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項7】
前記ラテックスは、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスとその変性ラテックス、スチレン-ブタジエンラテックスとその変性ラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体ラテックス、ブチルゴムラテックス、およびクロロプレンゴムラテックスからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項8】
前記水分散ポリウレタンは、ポリカーボネート系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリアクリル系ウレタン、ポリテトラメチレン系ウレタン、ポリカプロラクトン系ウレタン、ポリプロピレン系ウレタン、およびポリエチレン系ウレタンからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項9】
前記アミン化合物は、脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群より選ばれた1種以上を含む、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項10】
前記溶媒は水である、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項11】
ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて25℃の下で測定された、2.0~3.0の相対粘度を有する、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物。
【請求項12】
繊維基材;および
前記繊維基材上に形成され、請求項1に記載のタイヤコード用接着組成物から形成された接着層
を含む、タイヤコード。
【請求項13】
前記繊維基材はポリエステル繊維を含むローコード(raw cord)である、請求項
12に記載のタイヤコード。
【請求項14】
請求項
12に記載のタイヤコードを含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤコード用接着組成物、前記接着組成物から形成された接着層を含むタイヤコード、および前記タイヤコードを含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム構造物の強度などを補強するために繊維補強材が使用される。
【0003】
例えば、ゴムタイヤには、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド繊維やポリビニルアルコール繊維などが、繊維補強材として使用できる。
【0004】
繊維によってはゴムとの接着性が良くない場合もあるので、接着剤を繊維表面にコートした後に、ゴムと繊維との接着性を補完する場合もある。
【0005】
例えば、タイヤコード用ローコード(raw cord)とタイヤ用ゴムとの間の接着力を向上させるために、ポリエステル繊維に接着剤が塗布される。
【0006】
前記用途の接着組成物において、接着組成物にはレゾルシノール-ホルムアルデヒド(resorcinol-formaldehyde、以下「RF」という)樹脂またはこれに由来する成分を含むゴム(またはラテックス)が含まれることが一般的であった。
【0007】
しかし、RF樹脂は人体と環境に有害であるためその使用が厳格に規制されている。そのため、RF樹脂を含まない前記接着組成物に対する研究が着実に進められている。
【0008】
前記接着組成物は浸漬や噴射によって前記繊維補強材上に付与され得る。前記接着組成物の付与による物性向上効果が、充分に、かつ均一に発現できるようにするためには、前記接着組成物が適切な流れ性を有しながらも固形分が均等に分散していなければならない。
【0009】
一方、前記接着組成物は、前記繊維補強材とタイヤ用ゴムとの間の接着力を向上させるが、前記接着組成物の付与によって前記繊維補強材のスチフネス(stiffness)が変化し得る。前記繊維補強材の硬度が必要以上に大きくなる場合は、前記繊維補強材の強力が減少し得るのであり、結果的にそれを含むタイヤの物性が劣るものとなり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、タイヤゴムとタイヤコードとの間の接着力を改善しながらもタイヤコードの強力を向上させ得る、環境に優しいタイヤコード用接着組成物を提供する。
【0011】
本発明は、タイヤゴムとの高い接着力と向上した強力を有するタイヤコードを提供する。
【0012】
そして、本発明は、前記タイヤコードを含むタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、本発明の実施形態によるパラ-アラミド繊維の製造方法についてより詳細に説明する。
【0014】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0015】
本明細書で使用される単数形は、文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0017】
本発明者らの継続的な研究の結果によれば、エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物は、本来のエポキシ樹脂に比べて大きい分子の大きさを有しながらも、相対的に高い、分子内のソフトセグメント(soft segment)の比率を有する。そのため、前記反応生成物を含むタイヤコード用接着組成物は、任意の繊維基材に適用されて、優れた接着力と適切な水準のスチフネス(stiffness)を付与し得るのであり、向上した強力の発現を可能にする。
【0018】
発明の一実施形態によれば、
エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物;
イソシアネート化合物;
ラテックス;
水分散ポリウレタン
アミン化合物;および
溶媒
を含む、タイヤコード用接着組成物が提供される。
【0019】
前記タイヤコード用接着組成物は、RF樹脂を含まないため環境汚染を誘発せず作業環境の改善を可能にする。
【0020】
前記タイヤコード用接着組成物には、エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物が含まれる。
【0021】
前記エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物は、エポキシ反応性基を有することで、前記接着組成物の反応性および接着性を向上させる。前記反応生成物は、後述するイソシアネート化合物と共に、前記接着組成物によって形成される接着層(またはコート層)に3次元ネットワーク構造を形成して、接着層(またはコート層)の接着力および安定性を向上させる。
【0022】
特に、前記エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物は、本来のエポキシ樹脂に比べて、大きい分子の大きさを有しながらも、相対的に高い分子内のソフトセグメント(soft segment)の比率を有する。そのため、前記反応生成物は前記接着組成物が任意の繊維基材に適用されて優れた接着力と適切な水準のスチフネス(stiffness)を示し得るようにする。
【0023】
ここで、前記ソフトセグメント(soft segment)は、前記ジオール化合物から前記反応生成物の分子内に導入された炭素-炭素鎖を含んだセグメントを意味する。ハードセグメント(hard segment)はエポキシ反応性基と後述するイソシアネート化合物の反応によって形成されるセグメントを意味する。
【0024】
相対的に高い分子内のハードセグメント(hard segment)の比率を有するエポキシ樹脂が適用された繊維補強材は、過度なスチフネス(stiffness)を示し得るのであり、これによって、タイヤコードが有する強力の低下が誘発され得る。
【0025】
一実施例によれば、前記反応生成物は、前記エポキシ樹脂と前記ジオール化合物とが1:0.1~1:5の重量比で反応したものであり得る。
【0026】
好ましくは、前記反応生成物は、前記エポキシ樹脂と前記ジオール化合物が1:0.1以上、あるいは1:0.5以上;そして1:5.0以下、あるいは1:4.5以下、あるいは1:4.0以下、あるいは1:3.5以下、あるいは1:3.0以下の重量比で反応したものであり得る。
【0027】
具体的には、前記反応生成物は、前記エポキシ樹脂と前記ジオール化合物とが、1:0.1~1:5.0、あるいは1:0.1~1:4.5、あるいは1:0.1~1:4.0、あるいは1:0.1~1:3.5、あるいは1:0.1~1:3.0、あるいは1:0.5~1:5.0、あるいは1:0.5~1:4.5、あるいは1:0.5~1:4.0、あるいは1:0.5~1:3.5、あるいは1:0.5~1:3.0の重量比で反応したものであり得る。
【0028】
前記反応生成物が、分子内における高いソフトセグメントの比率を有するようにするために、前記ジオール化合物は、前記エポキシ樹脂に対して1:0.1以上の重量比で適用されることが好ましい。
【0029】
ただし、前記ジオール化合物が過量に適用される場合、前記反応生成物が有するエポキシ当量が減少して、前記接着組成物の接着性が低下し得る。また、前記ジオール化合物が過量に適用される場合、前記反応生成物の分子量が過度に大きくなり、前記接着組成物の接着性が低下し得る。したがって、前記ジオール化合物は、前記エポキシ樹脂に対して1:5.0以下の重量比で適用されることが好ましい。
【0030】
前記エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物は、700~1200g/mol、あるいは700~1150g/mol、あるいは730~1150g/molの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
【0031】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている、分析装置と示差屈折率検出器(refractive index detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。
【0032】
前記測定条件の具体的な例として、ポリウレタン樹脂などの高分子樹脂は、1.0(w/w)% in THF(固形分基準約0.5(w/w)%)の濃度になるようにテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、0.45μm孔径(pore size)のシリンジフィルター(syringe filter)を用いて濾過した後、GPCに20μlを注入して、GPCの移動相はテトラヒドロフラン(THF)を使用し、1.0mL/分の流速に流入し、カラムはAgilent PLgel 5μm Guard(7.5×50mm)1個とAgilent PLgel 5μm Mixed D(7.5×300mm)2個を直列に連結し、検出器としてはAgilent 1260 InfinityIISystem、RI Detectorを用いて40℃で測定することができる。
【0033】
これを、テトラヒドロフランに0.1(w/w)%濃度で下記のように多様な分子量を有するポリスチレンを溶解させたポリスチレン標準品試料(STD A、B,C,D)を、0.45μm孔径(pore size)のシリンジフィルター(syringe filter)でもって濾過した後に、GPCに注入して形成された検定曲線を用いて高分子の重量平均分子量(Mw)値を求めることができる。
【0034】
STD A(Mp):791,000/27,810/945
STD B(Mp):282,000/10,700/580
STD C(Mp):126,000/4,430/370
STD D(Mp):51,200/1,920/162
【0035】
一実施例によれば、前記エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物は、前記タイヤコード用接着組成物に0.5~10.0重量%で含まれ得る。
【0036】
好ましくは、前記反応生成物は、前記接着組成物の全体の重量に対して、0.5重量%以上、あるいは1.0重量%以上で;10.0重量%以下、5.0重量%以下、あるいは4.5重量%以下、あるいは4.0重量%以下、あるいは3.5重量%以下、あるいは3.0重量%以下で含まれ得る。
【0037】
具体的には、前記反応生成物は、前記接着組成物の全体重量に対して、0.5~10.0重量%、あるいは0.5~5.0重量%、あるいは0.5~4.5重量%、あるいは0.5~4.0重量%、あるいは0.5~3.5重量%、あるいは0.5~3.0重量%、あるいは1.0~10.0重量%、あるいは1.0~5.0重量%、あるいは1.0~4.5重量%、あるいは1.0~4.0重量%、あるいは1.0~3.5重量%、あるいは1.0~3.0重量%で含まれ得る。
【0038】
前記接着組成物の反応性および架橋度の低下を防止するために、前記反応生成物は、前記接着組成物の全体の重量に対して0.5重量%以上で含まれることが好ましい。
【0039】
ただし、前記反応生成物が過量に適用される場合、過度な反応性により前記接着組成物の硬化度が増加して、前記接着組成物によって形成された接着層の接着力が低下し得る。したがって、前記反応生成物は、前記接着組成物の全体の重量に対して10.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0040】
前記エポキシ樹脂の種類は、特に制限されず、本発明が属する技術分野における通常のものを適用することができる。
【0041】
非制限的な例として、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック系エポキシ樹脂、およびオキサゾリドン系エポキシ樹脂からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。前記ビスフェノール系エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などであり得る。前記ノボラック系エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などであり得る。そして、前記エポキシ樹脂としては、NAGASE社のEX614B、Kolon社のKETL6000、Ipox chemical社のCL16、およびRaschig社のGE500などのような商用品が使用できる。
【0042】
前記エポキシ樹脂は、その反応性と前記接着組成物の接着性などを考慮して、120~600のエポキシ当量を有することができる。
【0043】
前記ジオール化合物としては、炭素数3~8の直鎖または分枝鎖の脂肪族ジオール化合物が好ましく使用できる。
【0044】
非制限的な例として、前記ジオール化合物は1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、および1,6-ヘキサンジオールからなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0045】
一方、前記タイヤコード用接着組成物にはイソシアネート化合物が含まれる。
【0046】
前記イソシアネート化合物は架橋剤の役割をする。
【0047】
前記イソシアネート化合物は、前記反応生成物と反応して、前記接着組成物によって形成される接着層(またはコート層)に、3次元ネットワーク構造を形成して、接着層(またはコート層)の接着力および安定性を向上させる。
【0048】
前記イソシアネート化合物は、フェニル基を有するイソシアネート化合物であり得る。具体的には、前記イソシアネート化合物は、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0049】
そして、前記イソシアネート化合物でもってブロックされたイソシアネート(blocked isocyanate)化合物が適用されうる。前記ブロックされたイソシアネート化合物は、前記イソシアネート化合物に、公知のブロッキング剤を付加する反応によって得られる。
【0050】
前記ブロッキング剤としては、フェノール、チオフェノール、クロロフェノール、クレゾール、レゾルシノール、p-sec-ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-sec-アミルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノールなどのフェノール類;イソプロピルアルコール、tert-ブチルアルコールなどの第2級または第3級のアルコール;ジフェニルアミン、キシリジンなどの第2級アミン類;フタル酸イミド類;δ-バレロラクタムなどのラクタム類;ε-カプロラクタムなどのカプロラクタム類;マロン酸ジアルキルエステル、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステルなどの活性メチレン化合物;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;3-ヒドロキシピリジンなどの塩基性窒素化合物;酸性亜硫酸ソーダなどが使用できる。
【0051】
前記ブロックされたイソシアネート化合物としては、EMS社のIL-6、およびMEISEI Chemical社のDM-6500などのような水分散製品が使用できる。
【0052】
一実施例によれば、前記イソシアネート化合物は、前記タイヤコード用接着組成物に1.0~20.0重量%で含まれ得る。
【0053】
好ましくは、前記イソシアネート化合物は、前記接着組成物の全体の重量に対して、1.0重量%以上、あるいは2.0重量%以上、あるいは3.0重量%以上;そして、20.0重量%以下、あるいは18.0重量%以下、あるいは16.0重量%以下、あるいは15.0重量%以下、あるいは14.0重量%以下、あるいは12.0重量%以下、あるいは10.0重量%以下で含まれ得る。
【0054】
具体的には、前記イソシアネート化合物は前記接着組成物の全体の重量に対して、1.0~20.0重量%、あるいは1.0~18.0重量%、あるいは1.0~16.0重量%、あるいは1.0~14.0重量%、あるいは1.0~12.0重量%、あるいは1.0~10.0重量%、あるいは2.0~20.0重量%、あるいは2.0~18.0重量%、あるいは2.0~16.0重量%、あるいは2.0~14.0重量%、あるいは2.0~12.0重量%、あるいは2.0~10.0重量%、あるいは3.0~20.0重量%、あるいは3.0~18.0重量%、あるいは3.0~16.0重量%、あるいは3.0~14.0重量%、あるいは3.0~12.0重量%、あるいは3.0~10.0重量%で含まれ得る。
【0055】
前記接着組成物によって形成される接着層にて十分な架橋が行われるようにするために、前記イソシアネート化合物は、前記接着組成物の全体の重量に対して1.0重量%以上で含まれることが好ましい。
【0056】
ただし、前記イソシアネート化合物が過量に適用される場合、過度の架橋反応によって接着層の硬化度の増加とタイヤコードの疲労度増加が誘発され得る。したがって、前記イソシアネート化合物は、前記接着組成物の全体の重量に対して20.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0057】
一方、前記タイヤコード用接着組成物にはラテックスが含まれる。
【0058】
前記ラテックスは接着成分として、前記接着組成物によって形成される接着層に、接着力を付与する。特に、前記ラテックスは、前記接着層とゴム組成物間の親和度と接着力を向上させる。
【0059】
前記ラテックスは、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックスとその変性ラテックス、スチレン-ブタジエンラテックスとその変性ラテックス、天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体ラテックス、ブチルゴムラテックス、およびクロロプレンゴムラテックスからなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0060】
好ましくは、前記ラテックスとしては、タイヤ用ゴム組成物に配合されるゴム成分と同種のゴム成分を、水または有機溶媒に分散させて製造したラテックスが使用できる。
【0061】
非制限的な例として、前記ラテックスとしては、Denaka社のLM-60、APCOTEX社のVP-150、Nippon A&L社のVB-1099、Closlen社の5218および0653などのような商用品が使用できる。
【0062】
一実施例によれば、前記ラテックスは、前記タイヤコード用接着組成物に1.0~30.0重量%で含まれ得る。
【0063】
好ましくは、前記ラテックスは、前記接着組成物の全体の重量に対して、1.0重量%以上、あるいは5.0重量%以上、あるいは10.0重量%以上で;30.0重量%以下、あるいは25.0重量%以下、20.0重量%以下、あるいは16.0重量%以下で含まれ得る。
【0064】
具体的には、前記ラテックスは、前記接着組成物の全体の重量に対して、1.0~30.0重量%、あるいは1.0~25.0重量%、あるいは1.0~20.0重量%、あるいは1.0~16.0重量%、あるいは5.0~30.0重量%、あるいは5.0~25.0重量%、あるいは5.0~20.0重量%、あるいは5.0~16.0重量%、あるいは10.0~30.0重量%、あるいは10.0~25.0重量%、あるいは10.0~20.0重量%、あるいは10.0~16.0重量%で含まれ得る。
【0065】
前記接着組成物によって形成される接着層にて十分な接着力とゴム親和度が発現できるようにするために、前記ラテックスは、前記接着組成物の全体の重量に対して1.0重量%以上で含まれることが好ましい。
【0066】
ただし、前記ラテックスが過量に適用される場合、前記接着組成物によって形成された接着層が、硬化できずに非常にべたつく状態になって、タイヤコードの製造効率が低下し得る。したがって、前記ラテックスは、前記接着組成物の全体の重量に対して30.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0067】
一方、前記タイヤコード用接着組成物には水分散ポリウレタンが含まれる。
【0068】
一般にポリウレタンは、有機溶媒に溶解した状態で製造および流通する。しかし、有機溶媒は、人体と環境に有害であり、火気による引火の危険性がある。このような見地から、有機溶媒系のポリウレタンでない、水系のポリウレタンである前記水分散ポリウレタンが好ましく使用できる。
【0069】
特に、前記水分散ポリウレタンは、後述する硬化剤であるアミン化合物を保護するかキャプチャーすることによって、前記接着組成物によって形成される接着層が、安定的に硬化できるようにする。ひいては、前記水分散ポリウレタンは、ゴムに対する優れた親和性を有し、前記接着層上に、タイヤ用ゴム組成物が安定的にくっ付くことができるようにする。また、前記水分散ポリウレタンは、前記接着層に優れた耐摩耗性と弾性を付与することができる。
【0070】
前記水分散ポリウレタンは、例えば、20~60重量%のポリウレタンおよび40~80重量%の水を含むことができる。
【0071】
前記ポリウレタンは、分子中にウレタン結合を有する高分子化合物であって、一般的にジイソシアネート化合物とポリオールとの反応によって形成されうる。
【0072】
前記水分散ポリウレタンは、ポリカーボネート系ウレタン、ポリエステル系ウレタン、ポリアクリル系ウレタン、ポリテトラメチレン系ウレタン、ポリカプロラクトン系ウレタン、ポリプロピレン系ウレタン、およびポリエチレン系ウレタンからなる群より選ばれた1種以上のポリウレタンを含むことができる。
【0073】
一実施例によれば、前記水分散ポリウレタンに含まれたポリウレタンは、250,000~350,00g/molの重量平均分子量(Mw)を有することができる。
【0074】
具体的には、前記ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)は、250,000g/mol以上、あるいは255,000g/mol以上、あるいは260,000g/mol以上、あるいは265,000g/mol以上、あるいは270,000g/mol以上、あるいは275,000g/mol以上、あるいは280,000g/mol以上、あるいは285,000g/mol以上、あるいは290,000g/mol以上、あるいは295,000g/mol以上、あるいは300,000g/mol以上、あるいは305,000g/mol以上であり得る。
【0075】
そして、前記ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)は、例えば、350,00g/mol以下、あるいは345,000g/mol以下、あるいは340,000g/mol以下、あるいは335,000g/mol以下、あるいは330,000g/mol以下、あるいは325,000g/mol以下、あるいは320,000g/mol以下、あるいは315,000g/mol以下、あるいは310,000g/mol以下、あるいは305,000g/mol以下、あるいは300,000g/mol以下であり得る。
【0076】
前記ポリウレタンの重量平均分子量の範囲を満たす場合、前記水分散ポリウレタンの使用による接着力、耐摩耗性および弾性を確保することができる。
【0077】
前記重量平均分子量を満たす場合、前記水分散ポリウレタンの製造方法は特に制限されない。例えば、ポリエステルポリオール、ジオールおよびジイソシアネート由来の単位を有するプレポリマーを、中和剤で中和した後に蒸留水と攪拌する方式で前記水分散ポリウレタンが得られる。
【0078】
一実施例によれば、前記水分散ポリウレタンは、前記タイヤコード用接着組成物に0.5~10.0重量%で含まれ得る。
【0079】
好ましくは、前記水分散ポリウレタンは、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、0.5重量%以上、あるいは1.0重量%以上、あるいは1.5重量%以上;そして、10.0重量%以下、あるいは8.0重量%以下、あるいは5.0重量%以下で含まれ得る。
【0080】
具体的には、前記水分散ポリウレタンは、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、0.5~10.0重量%、あるいは0.5~8.0重量%、あるいは0.5~8.0重量%、あるいは0.5~5.0重量%、あるいは1.0~10.0重量%、あるいは1.0~8.0重量%、あるいは1.0~8.0重量%、あるいは1.0~5.0重量%、あるいは1.5~10.0重量%、あるいは1.5~8.0重量%、あるいは1.5~8.0重量%、あるいは1.5~5.0重量%で含まれ得る。
【0081】
接着力向上効果が発現できるようにするために、前記水分散ポリウレタンは、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して0.5重量%以上で含まれることが好ましい。
【0082】
ただし、前記水分散ポリウレタンが過量に適用される場合、前記接着組成物は、前記接着組成物によって形成された接着層が硬化できずに、非常にべたつく状態になって、前記接着層の接着力と耐久性が低下し得る。したがって、前記水分散ポリウレタンは、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して10.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0083】
一方、前記タイヤコード用接着組成物にはアミン化合物が含まれる。
【0084】
前記アミン化合物は硬化剤として作用する。前記アミン化合物によって、接着組成物の硬化が行われるか促進され、前記接着組成物による安定した接着層が形成されうる。
【0085】
前記アミン化合物の種類は、特に制限されず、硬化剤として使用可能であると知らされているアミン化合物が適用されることができる。例えば、前記アミン化合物は、脂肪族アミンおよび脂環族アミンからなる群より選ばれた1種以上を含むことができる。
【0086】
非制限的な例として、前記アミン化合物としてはDAEJUNG社のPiperazine、KUKDO化学社のG640、およびハンツマン社のHK511などのような商用品が使用できる。
【0087】
一実施例によれば、前記アミン化合物は、前記タイヤコード用接着組成物に0.1~10.0重量%で含まれ得る。
【0088】
好ましくは、前記アミン化合物は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、0.1重量%以上、あるいは0.2重量%以上、あるいは0.3重量%以上;そして、10.0重量%以下、あるいは5.0重量%以下、あるいは3.0重量%以下、あるいは2.5重量%以下、あるいは2.0重量%以下、あるいは1.5重量%以下、あるいは1.0重量%以下で含まれ得る。
【0089】
具体的には、前記アミン化合物は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、0.1~10.0重量%、あるいは0.1~5.0重量%、あるいは0.1~3.0重量%、あるいは0.1~2.5重量%、あるいは0.1~2.0重量%、あるいは0.1~1.5重量%、あるいは0.1~1.0重量%、あるいは0.2~10.0重量%、あるいは0.2~5.0重量%、あるいは0.2~3.0重量%、あるいは0.2~2.5重量%、あるいは0.2~2.0重量%、あるいは0.2~1.5重量%、あるいは0.2~1.0重量%、あるいは0.3~10.0重量%、あるいは0.3~5.0重量%、あるいは0.3~3.0重量%、あるいは0.3~2.5重量%、あるいは0.3~2.0重量%、あるいは0.3~1.5重量%、あるいは0.3~1.0重量%で含まれ得る。
【0090】
前記接着組成物の硬化が十分に行われるようにするために、前記アミン化合物は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して0.1重量%以上で含まれることが好ましい。
【0091】
ただし、前記アミン化合物が過量に適用される場合、過度な硬化により、前記接着組成物によって形成される接着層の接着力が低下し得る。したがって、前記アミン化合物は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して10.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0092】
一方、前記タイヤコード用接着組成物には溶媒が含まれる。
【0093】
好ましくは、前記溶媒として水(H2O)が使用できる。
【0094】
より好ましくは、前記溶媒として脱塩水(demineralized water)、蒸留水(distilled water)などが使用できる。
【0095】
一実施例によれば、前記溶媒は、前記タイヤコード用接着組成物に60.0~85.0重量%で含まれ得る。
【0096】
好ましくは、前記溶媒は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、60.0重量%以上、あるいは65.0重量%以上、あるいは70.0重量%以上で;85.0重量%以下、あるいは80.0重量%以下で含まれ得る。
【0097】
具体的には、前記溶媒は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して、60.0~85.0重量%、あるいは60.0~80.0重量%、あるいは65.0~85.0重量%、あるいは65.0~80.0重量%、あるいは70.0~85.0重量%、あるいは70.0~80.0重量%、あるいは70.0~75.0重量%、あるいは65.0~70.0重量%で含まれ得る。
【0098】
固形分の混合および分散性確保のために、前記溶媒は、前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して60.0重量%以上で含まれることが好ましい。
【0099】
ただし、前記溶媒が過量に適用される場合、前記接着組成物による接着層の形成が難しくなり、その乾燥に長時間が必要とされ得る。したがって、前記溶媒は前記タイヤコード用接着組成物の全体の重量に対して85.0重量%以下で含まれることが好ましい。
【0100】
一つの例示で、前記全体の組成物中の水の含有量は、溶媒として混合される水の含有量を意味する。
【0101】
他の一つの例示で、前記全体の組成物中の水の含有量は、溶媒として混合される水の含有量だけでなく、前記水分散ポリウレタンなどの他の構成成分に混合された水の含有量まで含まれたものであり得る。
【0102】
その他に、前記タイヤコード用接着組成物には、鎖延長剤、分散剤、熱安定剤など通常の添加剤がさらに含まれ得る。
【0103】
前記タイヤコード用接着組成物は、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて25℃の下で測定された2.0~3.0の相対粘度を有することができる。好ましくは、前記タイヤコード用接着組成物は、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて25℃下で測定された2.00以上、あるいは2.20以上;そして3.00以下、あるいは2.85以下、あるいは2.80以下、あるいは2.77以下、あるいは2.75以下、あるいは2.70以下の相対粘度を有することができる。
【0104】
具体的には、前記タイヤコード用接着組成物は、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて25℃の下で測定された2.00~3.00、あるいは2.00~2.85、あるいは2.00~2.80、あるいは2.00~2.77、あるいは2.00~2.75、あるいは2.00~2.70、あるいは2.20~3.00、あるいは2.20~2.85、あるいは2.20~2.80、あるいは2.20~2.77、あるいは2.20~2.75、あるいは2.20~2.70の粘度を有することができる。
【0105】
前記タイヤコード用接着組成物は、前記粘度範囲を満たすことによって、タイヤコードの製造時における適正水準のピックアップ率の確保を可能にし、工程性および生産性を改善することができ、優れた接着力を提供することができる。
【0106】
一方、発明の他の一実施形態によれば、
繊維基材;および
前記繊維基材上に形成され、上述したタイヤコード用接着組成物から形成された接着層
を含む、タイヤコードが提供される。
【0107】
前記タイヤコード用接着組成物に関する具体的な内容は、先立って説明した内容で代えることとする。
【0108】
前記タイヤコード用接着組成物は、RF樹脂またはこれに由来する成分を含まないため、環境に優しい。特に、前記タイヤコード用接着組成物は、タイヤゴムとタイヤコードとの間の接着力を改善しながらもタイヤコードの強力を向上させることができる。
【0109】
前記繊維基材としては、本発明が属する技術分野にてタイヤコードとして適用可能な通常のものが特に制限なく使用できる。
【0110】
例えば、前記繊維基材は、ポリエステル繊維を含むローコード(raw cord)であり得る。
【0111】
前記接着層は、前記繊維基材を前記タイヤコード用接着組成物に浸漬するか、前記繊維基材に前記タイヤコード用接着組成物を噴射する方法で形成されることができる。
【0112】
前記接着層は、前記繊維基材の物性を阻害せず、かつタイヤゴムとタイヤコードとの間の接着力を改善できる程度の、適した厚さで形成されうる。
【0113】
前記タイヤコードを製造することにおいて、前記繊維基材上にタイヤコード用接着組成物を付与する方法、乾燥および硬化条件などは必要に応じて通常の範囲内で変更することができる。
【0114】
一実施例によれば、前記タイヤコードの製造方法は、前記繊維基材を第1コート液に浸漬し乾燥して前記繊維基材上に第1コート層を形成する1次コーティング段階;および、前記1次コートされた繊維基材を第2コート液に浸漬し乾燥して第1コート層上に第2コート層を形成する2次コーティング段階を含むことができる。
【0115】
前記第1コート液は、前記エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物、及び、前記イソシアネート化合物を含む。前記第1コート液によって形成された第1コート層は、前記繊維基材に接着活性基を付与する。
【0116】
第1コート液で処理された前記繊維基材は、100~160℃の温度で30~150秒間、熱処理して乾燥される。これにより、前記繊維基材上に第1コート層が形成される。次に、前記繊維基材は、200~260℃の温度で30~150秒間、熱処理して硬化する。このような熱処理によって、前記繊維基材上に第1コート層が安定的に形成されうる。
【0117】
前記第2コート液は上述したタイヤコード用接着組成物である。
【0118】
前記1次コートされた繊維基材を、第2コート液に浸漬して、100~160℃の温度で30~150秒間熱処理して乾燥される。これにより、第1コート層上に第2コート層が形成される。次に、前記繊維基材は200~260℃の温度で30~150秒間熱処理して硬化する。このような熱処理によって第1コート層上に第2コート層が安定的に形成されうる。
【0119】
一方、発明のまた他の一実施形態によれば、上述したタイヤコードを含むタイヤが提供される。
【0120】
前記タイヤは上述したタイヤコードを含むことを除いては、通常の構成を有することができる。
【0121】
例えば、前記タイヤは、トレッド部;前記トレッド部を中心に両側にそれぞれ連続した一対のショルダ部;前記ショルダ部のそれぞれに連続した一対のサイドウォール部;前記サイドウォール部のそれぞれに連続した一対のビード部;前記のトレッド部、ショルダ部、サイドウォール部、およびビード部の内側に形成されているカーカス層;前記カーカス層の内部に位置する前記タイヤコード;前記トレッド部の内側面とカーカス層との間に位置するベルト部;および前記カーカス層の内側に結合されたインナーライナを含むことができる。
【発明の効果】
【0122】
本発明によれば、タイヤゴムとタイヤコードとの間の接着力を改善しながらもタイヤコードの強力を向上させ得る環境に優しいタイヤコード用接着組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0123】
以下、発明の理解を深めるために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、本発明はこれらのみに限定するものではない。
【0124】
製造例A
(エポキシ樹脂とジオール化合物の反応生成物の製造)
エポキシ樹脂(NAGASE社のEX614B)とジオール化合物とを下記表1~表3に記載された重量比で混合し、常温(20℃)下で2時間の間、攪拌して#1~#14の反応生成物を得た。ただし、下記#C1は、ジオール化合物と反応させていないエポキシ樹脂(NAGASE社のEX614B)である。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
製造例B
(水分散ポリウレタンの製造)
ポリエステルポリオール(重量平均分子量2000g/mol)、ジオール(1,6-ヘキサンジオール)、およびイオノマー(dimethylol butanoic acid)を1:0.2:0.8のモル比で反応器に投入し、75±5℃および常圧の下で、4時間の間混合して混合物を得た。メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)を前記ポリエステルポリオールに対して1:2のモル比で前記混合物に添加し、2時間の間反応させてポリウレタンプレポリマーを製造した。製造されたポリウレタンプレポリマーの反応温度を60℃に下げ、溶媒(acetone)に中和剤(トリエタノールアミン、TEA)を投入して分散させた。中和したポリウレタンプレポリマーに、固形分含有量が60重量%になるように、蒸留水を投入して攪拌した。そして、鎖延長剤(ethylene diamine)を、前記ポリエステルポリオールに対して1:1のモル比で添加し攪拌して水分散ポリウレタンを得た(重量平均分子量:308,000g/mol)。
【0129】
実施例1~14および比較例1
(タイヤコード用接着組成物の製造)
下記表4、5および6に記載された含有量(重量%)で各成分を混合し、常温(20℃)下で24時間の間攪拌して実施例1~14および比較例1の接着組成物をそれぞれ製造した。
【0130】
下記表4~表6にアルファベットで表示された各成分は次のとおりである。
【0131】
-E:前記製造例Aによるエポキシ樹脂とジオール化合物の反応生成物、またはエポキシ樹脂
-I:イソシアネート化合物(EMS社のIL-6,caprolactam-blocked 4,4’-MDI)
-L:ラテックス(Closlen社の0653、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体)
-U:前記製造例Bによる水分散ポリウレタン
-A:アミン化合物(DAEJUNG社のPiperazine)
-S:溶媒(脱塩水)
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
比較例2
(タイヤコード用接着組成物の製造)
前記実施例1において、前記製造例Aの#1による1.8重量%の「エポキシ樹脂とジオール化合物の反応生成物」(E成分)の代わりに、エポキシ樹脂(NAGASE社のEX614B)1.2重量%および1,4-ブタンジオール0.6重量%を、前記I、L、U、AおよびS成分と共に添加し攪拌したことを除いては、前記実施例1と同一の方法で接着組成物を製造した。
【0136】
比較例3
(タイヤコード用接着組成物の製造)
前記実施例1において、前記製造例Aの#1による1.8重量%の「エポキシ樹脂とジオール化合物との反応生成物」(E成分)の代わりに、1,6-ヘキサンジオール-ジグリシジルエーテル1.8重量%を、前記I、L、U、AおよびS成分と共に添加し攪拌したことを除いては、前記実施例1と同様の方法で接着組成物を製造した。
【0137】
タイヤコードの製造
ポリエステル原糸を使用して360TPMの撚り数を有する下撚糸(Z-方向)2本を準備した。2本の下撚糸を、360TPMの撚り数で共に上撚り(S-方向)して(S-方向に撚り合わせて)合撚糸(1650dtex/2合計)を製造した。前記合撚糸をローコード(raw cord)として使用した。
【0138】
前記ローコードを、前記実施例または比較例の接着組成物に浸漬した後、乾燥温度150℃および硬化温度243℃でそれぞれ1分間熱処理し、前記ローコード上に形成された接着層を含むタイヤコード試験片を製造した。
【0139】
試験例
(1)ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて25℃の恒温水槽で、通常の方法により、前記実施例および比較例の接着組成物に対する相対粘度を測定した。相対粘度を測定する前に、脱塩水をウベローデ粘度計に一定量入れた後、脱塩水の粘度を測定する。測定された脱塩水の粘度を基準として、各実施例および比較例の接着組成物に対する相対粘度(R.V.)を測定する。
【0140】
(2)前記実施例および比較例の接着組成物によって形成された、接着層を有する前記タイヤコード試験片に対して、ASTM D4393の規格の試験法により単位面積当たり接着力を評価した。
【0141】
具体的には、0.6mm厚さのゴムシート、前記タイヤコード試験片、0.6mm厚さのゴムシート、前記タイヤコード試験片、および0.6mm厚さのゴムシートを順に積層し、60kg/cm2の圧力にて170℃で15分間加硫してサンプルを製作した。前記サンプルを裁断して1インチの幅を有する試験片を製造した。参考までに、前記ゴムシートは、タイヤを構成するカーカスに使用されるシートである。このようなゴムシートを用いた積層体を使用することによって、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を確認することができる。
【0142】
製造された前記試験片に対して、万能材料試験機(Instron社)を用いて25℃にて125mm/minの速度で剥離試験を行い、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を測定し、剥離時発生する荷重の3回平均値を接着力として算定した。測定された値は、前記実施例1の接着組成物によって形成された接着層の値を基準として正規化(normalization)して下記の表7および表8に示した。
【0143】
(3)前記実施例および比較例の接着組成物によって形成された接着層を有する前記タイヤコード試験片に対して、ASTM D885/D885Mの規格の試験法にしたがい、タイヤコードの強力およびスチフネス(stiffness)を評価した。測定された値は、前記実施例1の接着組成物によって形成された接着層の値を基準として正規化(normalizationして下記の表7および表8に示した。
【0144】
【0145】
【0146】
前記表7および表8を参照すると、実施例による接着組成物によって形成された接着層を含むタイヤコードは、タイヤゴムとの接着力に優れるのでありながらも、向上した強力を示し得ることが確認される。