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特許7395760測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/34 20200101AFI20231204BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20231204BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/931
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022546148
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2021025752
(87)【国際公開番号】W WO2021262278
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】63/005,011
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520155044
【氏名又は名称】アクロノス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AQRONOS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】マリン イリエフ
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン ヴィラース
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0343652(US,A1)
【文献】特開2010-203884(JP,A)
【文献】特開平08-304541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調連続波LiDAR(FMCW-LiDAR)システムであって、
レーザを変調するように構成されている電気光学変調器と、
渉信号を処理し、前記干渉信号に応じたビートノート信号を出力するように構成されている、平衡光検出器であって、前記レーザの第1の部分を、ターゲットから返される戻りレーザで干渉することによって、前記干渉信号を処理するように構成されており、前記戻りレーザは、前記ターゲットに送信される前記レーザの第2の部分に対応する、前記平衡型光検出器と、
2つの出力を有する変調源であって、前記電気光学変調器及び前記平衡光検出器のために前記2つの出力を別々に位相掃引するように構成されており、前記2つの出力のうちの第1の出力は前記電気光学変調器に対応し、前記レーザを変調するように構成され、前記2つの出力のうちの第2の出力は前記平衡型光検出器に対応する、前記変調源と、
測定アプリケーションのための周波数情報高速抽出(「FIRE-RA」)システムであって、
前記平衡光検出器から前記ビートノート信号を受信し、
前記第2の出力からの信号で前記ビートノート信号を処理し、
前記処理されたビートノート信号に応じて、前記ターゲットの距離及び速度データを出力するように構成されている、前記FIRE-RAシステムと、
を含む、FMCWLiDARシステム。
【請求項2】
前記変調源は、高出力電圧制御発振器とスプリッタとを含み、前記高出力電圧制御発振器は、前記電気光学変調器を駆動するように構成されており、前記スプリッタは、前記平衡光検出器を駆動するように構成されている、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項3】
前記FIRE-RAシステムは、前記ビートノート信号と前記第2の出力からの前記信号とが一致する周波数差を抽出することによって、前記ビートノート信号を処理するようにさらに構成されている、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項4】
前記FIRE-RAシステムは、前記周波数差を抽出するように構成されている無線周波数ミキサを含む、請求項3に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項5】
前記FIRE-RAシステムは、
前記無線周波数ミキサと通信可能に結合されたバンドパスフィルタ又はバンドリジェクトフィルタであって、ビートノートが前記ビートノート信号で発生するときの周波数付近のウィンドウを切り出すように構成されている、前記バンドパスフィルタ又は前記バンドリジェクトフィルタと、
前記バンドパスフィルタ又は前記バンドリジェクトフィルタと通信可能に結合されたエンベロープ検出器であって、ビートノートが前記ビートノート信号で発生するときの発生を記録するように構成されている、前記エンベロープ検出器と、
をさらに含む、請求項4に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項6】
前記FIRE-RAシステムは、
前記エンベロープ検出器と通信可能に結合された時間-デジタルコンバータであって、時間における前記ビートノートの前記発生を判定するように構成されている、前記時間-デジタルコンバータをさらに含む、請求項5に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項7】
前記FIRE-RAシステムは、2ワット以下の熱負荷を保ちながら、300メートル離れた範囲にわたって5cm又は5cmより優れた総距離精度で検出するようにさらに構成されている、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項8】
前記FIRE-RAシステムから前記距離及び速度データを受信するように構成されているクライアントをさらに含む、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項9】
前記クライアントは、自律走行車である、請求項8に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項10】
前記ターゲットの前記距離及び速度データは、前記ターゲットのX及びYの位置情報をさらに含む、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項11】
前記平衡光検出器に通信可能に結合されたIQ復調光学ユニットであって、前記レーザの前記第1の部分と前記第2の部分と間の相対位相差を保ち、前記レーザの前記第1の部分及び前記第2の部分を、前記ターゲットから戻ってきた前記レーザの信号で別々に干渉するように構成されている、前記IQ復調光学ユニットをさらに含む、請求項1に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項12】
前記IQ復調光学ユニットは、前記レーザの前記第1の部分及び前記第2の部分の各々を、前記ターゲットから戻ってきた前記レーザの前記信号の50%で別々に干渉するようにさらに構成されている、請求項11に記載のFMCWLiDARシステム。
【請求項13】
前記平衡光検出器の出力は、1チャープサイクルの持続時間の間、固定RF周波数として扱われる、請求項11に記載のFMCWLiDARシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本開示は、2020年4月3日に米国特許商標庁に出願された米国仮特許出願第63/005,011号に基づき、その優先権と利益を主張するものである。上記出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、光検出と測距(「LiDAR」)の分野に関し、より具体的には、周波数変調連続波(「FMCW」)LiDARシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
LiDARは、オブジェクトまでの距離を測定するためにレーザ光を使用するリモートセンシング方法である。フラッシュ又はスキャニングLiDARは、周囲の3次元点群を提供する。以前及び現在のLiDARナビゲーションシステム(例えば、車両に関するナビゲーションシステム)は、飛行時間(「ToF」)LiDARと呼ばれる第1世代のパルス技術に依存していた。最近では、FMCW LiDARは、ToFビジョンシステムへのアップグレードを提供し、戻り信号を検出する際にコヒーレンシに起因して有利である。FMCW LiDARシステムを、スケーラブルにし、自律走行車などの、コンパクトで要求の厳しい環境に容易に統合する需要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、スケーラブルであり、例えば自律走行車といった、コンパクトで要求の厳しい環境に容易に統合され得るFMCW LiDARシステムを含む。本開示の改良されたFMCW LiDARシステムは、レーザ源によって生成されたレーザを変調するように構成されている電気光学変調器と;レーザのローカルコピーの干渉信号をターゲットから戻ってきたレーザの信号と結合するように処理し、ビートノート信号を出力するように構成されている、平衡光検出器と;2つの出力を有する変調源であって、電気光学変調器及び平衡光検出器のために必要とされる帯域幅にわたって位相掃引するように構成されている、変調源と;測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出(「FIRE-RA」)システムであって、平衡光検出器から干渉信号を受信し、干渉信号を変調源の2つの出力のうちの1つから平衡光検出器への信号で処理し、処理された干渉信号に応じてターゲットの距離及び速度データを出力するように構成されている、FIRE-RAシステムと;を含み得る。
【0005】
FIRE-RAシステムは、現代のFMCW LiDAR製品で利用可能な従来の周波数領域DSPシステムに対して、より簡単な開発で、よりコスト効率の良いソリューションを提供し得る。それは、一般的な、複雑で高電力のFPGAチップのオーバーヘッドなしに、依然として視線速度及び距離情報を同時に抽出し得る、真にスケーラブルで、より低電力のビジョンソリューションへの道を開き得る。
【0006】
本明細書で説明されたこれらの実施形態及びその他のものは、LiDARの分野、特にFMCW LiDARの分野の改良である。これらのデバイスの様々な構成は、例示に過ぎない実施形態によって説明され、制限することを意図していないが、主張されるような本発明のさらなる説明を提供することを意図している。本明細書で説明された対象の他のシステム、デバイス、方法、特徴及び利点は、以下の図及び詳細な説明を検討すれば、当業者には明らかであろう。そのような追加のシステム、デバイス、方法、特徴及び利点の全ては、本明細書内に含まれ、本明細書で説明された対象の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることを意図している。決して、例示的な実施形態の特徴は、特許請求の範囲にそれらの特徴の明示的な記載がない限り、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的なFMCW LiDARシステムの概略図を示す。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による、測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出を有するFMCW LiDARシステムの例示的な高レベルの概略図を示す。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態による、IQ復調構成を有する例示的なFMCW LiDARシステムの概略図を示す。
図4図4は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的なIQ復調光学ユニット構成の概略図を示す。
図5図5は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な高レベルのFIRE-RAビートノート検出構成の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の開示は、本発明、及びその好ましい、最良の態様の実施形態の少なくとも1つの使用方法の様々な実施形態を説明し、以下の説明でさらに詳細に定義される。当業者は、その精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されたものに変更及び変形を行うことができるであろう。本発明は、異なる形態の異なる実施形態の影響を受けやすく、本開示は、本発明の原理の例示とみなされ、本発明の広範な態様を、図示された実施形態に限定することを意図しないことを理解した上で、図面に示され、本明細書に本発明の好ましい実施形態が詳細に説明されるであろう。本明細書で提供される任意の実施形態に関して説明される全ての特徴、要素、コンポーネント、機能、及びステップは、特に明記しない限り、任意の他の実施形態からのものと自由に組み合わせ可能であり、置換可能であることを意図している。したがって、図示されているものは、例示の目的のためにのみ記載されており、本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではないことを理解されたい。
【0009】
ToF LiDARは、多くの不利な点を有した。例えば、受信信号は、日中の眩しさに起因してノイズを含み得る。同じ近傍にある複数のシステム間で干渉があり得る。検出範囲が限定され得る。FMCW LiDARシステムは、ToFビジョンシステムへのアップグレードを提供し得る。FMCW LiDARシステムは、いくつかの利点をもたらし得る。例えば、FMCW LiDARシステムは、戻り信号を検出する際にコヒーレントな方法を提供し得る。FMCW LiDARシステムでは、戻り光は、ローカルコピーとコヒーレントでない外部ノイズに対して検出を良好にシールドする初期信号のローカルコピーと干渉され得る。
【0010】
FMCW LiDARシステムのコヒーレント干渉の性質は、検出信号がサンプリング光の強度(EMfield )ではなく、電磁(「EM」)場そのものに比例することに起因して、ダイナミックレンジが著しく広くなり得ることである。さらに、FMCW LiDARシステムは、ターゲットからのドップラーシフト情報を観察することができ、一連のフレーム間で速さ(speed)/速度(velocity)を推定するために複雑なAI演算を使用するToFシステムに対して、瞬時に速さ/速度を測定し得る。例示的なFMCW LiDARシステムは、PCT特許出願番号PCT/US2018/059033に記載されており、その全体が本明細書に援用される。
【0011】
図1は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的なFMCW LiDARシステムの概略図を示す。図1に示されるように、FMCWシステム100は、変調される狭帯域レーザ源(例えば、ダイオード)110を含み得る。狭帯域レーザ源110は、レーザ101を生成することができ、レーザの一部分130は、ターゲットに送り出され、残りは、ローカルコピーとして保持され、後にターゲットからの戻り信号140と干渉される。いくつかの実施形態では、レーザの一部分130は、スプリッタ112から分割される。いくつかの実施形態では、スプリッタ112は、75:25のスプリッタである。いくつかの実施形態では、図1に示されるように、レーザは、電気光学変調器(「EOM」)111、エルビウム添加光ファイバ増幅器(「EDFA」)114、及び光トランシーバ115を介してさらに処理される。いくつかの実施形態では、EOM111は、狭帯域レーザ源110からのレーザ101を変調するように構成されている。
【0012】
結果として生じる干渉信号は、ビートノート(又はビートと呼ばれることもある)150と呼ばれ、任意のコモンモードノイズを除去し、システムの精度をさらに改善するために、平衡光検出器(「BPD」)116によって記録され得る。いくつかの実施形態では、BPD116は、戻り信号140と結合されたレーザのローカルコピーの干渉信号を処理し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、電気通信グレードのコンポーネントは、その高い信頼性及び相対的な入手可能性により、容易に入手可能であり、使用に適することがある。さらに、電気通信グレードのコンポーネントは、その動作が通常1550nmの光スペクトルに制限されるので、概して目に安全であると考えられている。光は、搬送波周波数として使用され、搬送波周波数の上にはるかに低い変調周波数が刻まれ得る。変調周波数は、波長1550nmのキャリアに対応する数百テラヘルツ(「THz」)周波数よりもサンプリングが容易である。約2-200メートルの測距距離をカバーするための、典型的な変調周波数の範囲は、約6GHzの変調周波数で500-700MHzの帯域幅(「BW」)を有し、各変調周波数は、LiDAR源から離れた特定の動径距離に対応することになる。
【0014】
しかしながら、FMCW LiDARシステムの主な課題の1つは、変調周波数の全スペクトルが、時には500KHz以上のレートでサンプリングされる必要があることに起因した、FMCW LiDARシステムが処理し得るポイントの数である。例えば、図1に示されるように、BPD116が変調周波数を一度にサンプリングし得るにもかかわらず、デジタル信号処理(「DSP」)システムは、作るのが簡単ではないことがあり、通常、少なくとも1つの(例えば、1GHzよりも大きい)高速アナログ-デジタルコンバータ(「ADC」)181と、干渉信号の高速フーリエ変換(「FFT」)を行い、必要な情報を抽出するために2000個より多いルックアップテーブル(「LUT」)を有するフィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)182とを必要とする。例えば、図1に示されるように、信号がADC181によって処理された後、専用ユニットFFT184は、干渉信号のFFTを行うために、FPGA182上に実装され得る。さらに、変調周波数に関するパラメータが変更されるたびにカスタムチップ設計が必要とされ、通常、特定用途向け集積回路(「ASIC」)設計又は他の過剰なソリューションを伴うことに起因して、スケーラビリティが問題となっている。
【0015】
さらに、これらの複雑なFPGA(例えば、図1のFPGA182)は、高い熱負荷を有し、数十から百ワットの電力を消費することがあり、様々なアプリケーション(例えば、自律走行車)における統合には非実用的である。
【0016】
スケーラブルであり、自動運転車両などのコンパクトで要求の厳しい環境に容易に統合され、本明細書で説明されるような他の利点を提供するFMCW信号処理システムに対するニーズがある。
【0017】
本開示の実施形態は、上述された課題を解決するための方法及びシステムを提供する。図2は、本開示のいくつかの実施形態による、測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出を有するFMCW LiDARシステムの例示的な高レベルの概略図を示す。図2に示されるように、FMCW LiDARシステム200は、スケーラブルであり、コンパクトで要求の厳しい環境に容易に統合され得る。FMCW LiDARシステム200のいくつかのコンポーネントは、図1で説明されたものと同様であることが理解される。例えば、狭帯域レーザ源210、EOM211、スプリッタ212、スプリッタ213、EDFA214、及び光トランシーバ215は、それぞれ図1に示される狭帯域レーザ源110、EOM111、スプリッタ112、スプリッタ113、EDFA114、及び光トランシーバ115と同様であり得る。
【0018】
FMCW LiDARシステム200は、FMCW LiDARシステム200がスケーラブルになり、コンパクトで要求の厳しい環境(例えば、自動運転車両)に容易に統合されることを可能にし得る、測距アプリケーションのための周波数情報高速抽出(「FIRE-RA」)280サンプリング及び処理ソリューションを含み得る。いくつかの実施形態では、このソリューションの例示的な利点は、以下を含んでもよい。第1に、周波数領域から時間領域へのスカラー変換が実現され、FFTが必要とされない。第2に、FMCW LiDARシステムは、安価な商用オフザシェルフ(「COTS」)コンポーネントを使用することを可能し得る。第3に、約2cmの動径距離分解能に対応する時間-デジタルコンバータ(「TDC」)を介して100psの時間分解能が認められ得る。第4に、モジュール設計は、ASIC開発(例えば、図1に示されるASIC183又はFPGA182)のニーズを減らし、或いは排除するために使用され得る。第5に、FMCW LiDARシステム200は、従来のFMCW DSPシステムと比較して、より低い消費電力を使用し得る。例えば、FMCW LiDARシステム200は、約2Wの電力を使用し、従来のFMCW DSPシステムよりも7倍低くなり得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、FMCW LiDARシステム200は、2つの出力を有する変調源270を含み得る。変調源270からの出力は、図2に示されるEOM211及びBPD216のために必要とされる帯域幅にわたって位相掃引し得る。いくつかの実施形態では、これは、ダイレクトデジタルシンセサイザ(「DDS」)、又は高出力(例えば、10W RF)電圧制御発振器(「VCO」)の後のスプリッタで実現されることができ、高出力チャネルは、EOMを駆動し、スプリッタは、BPDのためのサンプリングを駆動する。いくつかの実施形態では、DDS及びVCOは、図2に示される変調源270の一部分であり得る。VCO設定の利点は、既製のRF部品が使用されてもよく、システムがDDSを使用するときなど出力波形の制御を実装する必要がない場合があるので、トラブルシューティングが容易になされ得る。大量実装の場合、DDS方式は、製造上の大きな利点をもたらし得るので、好ましいことがある。
【0020】
いくつかの実施形態では、FIRE-RAシステムは、1チャープサイクル(例えば、500KHzの反復率)の持続時間の間、固定RF周波数としてBPDの出力を扱ってもよく、変調源270は、約5.7GHzから約7.2GHzにEOM変調をランプアップし得る。いくつかの実施形態では、変調源270は、利用可能なCOTS VCOの最適な性能のために選択され得る。次いで、BPDサンプリングチャネルは、EOMと同期して掃引され、BPDビートノートとミキサで掃引された局部発振器(「LO」)ポートとが一致する周波数差を抽出するために、無線周波数(「RF」)ミキサで混合され得る。いくつかの実施形態では、RFミキサは、約0から1.5GHzの動作範囲を有し得る。従来の高速ADCシステムに対する利点の1つは、BPDの全出力スペクトルを1GS/s超の分解能でサンプリングする必要がなく、ミキサで、サンプリングがアナログ方式で行われることである。FIRE-RAシステムのRFミキサは、BPDからの残りのスペクトルの情報を追跡する必要はなく、ビートノートが発生したときに単に検出し、波形を記録する。いくつかの実施形態では、BPDに複数の周波数がある場合、複数のダウンコンバート信号がミキサの出力に存在し得る。FIRE-RAシステムのIQ復調実装の場合、これらは、動径距離及び速さ又は速度を抽出するために後段で解釈され得る。
【0021】
概して、FIRE-RAシステムは、「いつビートノートが発生するか」、且つ変調源帯域幅と「固定値」ビートノートとが発生する間の混合周波数がいくつあるかを追跡し得る。これは、FFTの使用のニーズを排除することができ、したがって、動径距離及び速度の値を計算するためにFPGAに必要とされる計算能力を大幅に低下させる。いくつかの実施形態では、FIRE-RAシステムは、光トランシーバから300メートル離れた範囲にわたって5cm又は5cmよりも優れた総距離精度で検出し、同時に0-156mphの範囲で視線速度を抽出してもよい。これは、FFT及び高速ADCに対する要件がないことに起因して、熱負荷を2W未満に保ちながら、互いに78mphで移動する2つのオブジェクトに対応する。
【0022】
いくつかの実施形態では、混合周波数が時間においていつ発生するかを「見つける」ために、図2のRFミキサの出力でバンドパスフィルタ(「BPF」)281が適用され得る。これは、ビートノートが発生するときの周波数付近のウィンドウを切り出し、エンベロープ検出器282が発生を記録することを可能にし得る。例えば、エンベロープ検出器が0から離れた変調を「見る」たびに、パケットの概要を追跡し、時間の関数としてパルス形状を出力し得る。そのようなスキームの利点は、「発生時」のみを追跡するのではなく、ビートノートの実際の形状を知る必要性がない場合があることである。いくつかの実施形態では、論理ゲートを介して、FIRE-RAシステムは、ビートノート発生時間のピークに中心を有する矩形波のように見える時間の関数としてデジタル信号を抽出し得る。いくつかの実施形態では、ドップラーシフト(又は視線速度の大きさ)に関する情報は保存され得るが、1チャープの周期(例えば、2μs)にわたる時間における検出イベントの数及びその位置は保存できない。いくつかの実施形態では、バンドパスフィルタ281は、バンドリジェクトフィルタであり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、FIRE-RAシステムは、100psの精度で時間におけるビートノートの発生を判定し得るTDCを含んでもよく、5cm精度を実現するために時間における必要とされる分解能は、300psである。この意味で、FIRE-RAシステムは、単一のTDCが提供し得る限界に突き当たる前に、十分な余裕のあるマージンを有する。いくつかの実施形態では、TDCは、1W未満の電力を有するFPGAを使用する。
【0024】
いくつかの実施形態では、FIRE-RAシステムは、図2に示された光トランシーバ215から来るX及びYの位置情報と結合されたTDC動径距離及び速度データを(制御線のスペースを節約する)最適化SERDESケーブルで出力してもよく、ユーザデータグラムプロトコル(「UDP」)構造を使用してイーサネットケーブルを介して、可視化システム(「ROS」)、自律走行車、又は自動運転車、AIユニットなどのクライアントに出力してもよい。いくつかの実施形態では、X及びYの位置情報と結合された距離及び速度データは、ターゲットから測定される。
【0025】
図3は、本開示のいくつかの実施形態による、IQ復調構成を有する例示的なFMCW LiDARシステムの概略図を示す。図3に示されるFMCW LiDARシステム300のいくつかのコンポーネントは、図2で説明されたものと同様であることが理解される。例えば、狭帯域レーザ源310、EOM311、スプリッタ312、EDFA314、及び光トランシーバ315は、それぞれ図2に示される狭帯域レーザ源210、EOM211、スプリッタ212、EDFA214、及び光トランシーバ215と同様であり得る。
【0026】
図3に示されるように、FMCW LiDARシステム300は、IQ復調光学ユニット360を使用し、システム内の光LOの2つの別々のコピー(例えば、45度の位相差を有する、円偏光)間の相対位相差を保ち、それらをRxビームと別々に干渉し、いわゆるIチャネル(「I-Ch」)とQチャネル(「Q-Ch」)との間の分離を実現し得る。いくつかの実施形態では、2つのコピーは、Rxビームの50%で別々に干渉される。次いで、いくつかの実施形態では、ドップラーシフトの方向は、BPD各々によって終端された両チャネルのビートノート間の位相シフトに基づいて抽出されてもよい。いくつかの実施形態では、Iチャネルは、標準的なFIRE-RA検出スキームを要請し、そのコピーがQチャネルに対して混合され、2つの間の位相差を抽出し、最終的に速度ベクトルの方向に従う。2つのチャネル間でミキサを使用する利点の1つは、その後、低速ADC388が位相差を抽出し、システムのコスト及び熱負荷を最適化し得ることである。次いで、「正」又は「負」の値は、上記のUDPパケットに割り当てられる。
【0027】
図4は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的なIQ復調光学ユニット構成の概略図を示す。図4に示されるIQ復調光学ユニット構成は、図3に示されるFMCW LiDARシステム300に(例えば、IQ復調光学ユニット360として)組み込まれ得ることが理解されよう。図4に示されるように、IQ復調光学ユニット構成は、視線速度ベクトルの符号を区別することを可能にし得る。例えば、IチャネルとQチャネルとの位相差を追跡することによって、視線速度ファクタの符号は区別され得る。ユニットの目的は、LOと受信Rxビームとの間のビートノートを物理的に生成し、出力を2つの直交する偏光軸上の投影として分離することである。
【0028】
いくつかの実施形態では、図2と同様に、図4のLO発振器は、Rxビームと混合されてもよい。しかしながら、LOは、(例えば、1/4波長板(「QWP」)の手段を介して)自由空間において円偏光に変換され得る。これは、システムのための基準を確立し得る。いくつかの実施形態では、Rxビームはまた、直交する偏光軸上の等しい投影に分離されてもよいが、それらの間に遅延を有するのではなく、単に半波長板(「HWP」)によって回転されてもよい。円形LO及び直線的であるが偏光回転されたRxビームは、非偏光ビームスプリッタ(「nPBS」)で干渉してもよく、次いで、偏光ビームスプリッタ(「PBS」)を介して別々のコンポーネントに分割されてもよい。いくつかの実施形態では、信号の50%損失があってもよく、偏光分割チャネルの別のセットを追加することによってさらに改善され得る。いくつかの実施形態では、50%損失は、信頼性のあるビートノート信号を生成するために許容可能であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、生成されたビートノートは、その後、Rxビーム上のドップラーシフトの符号に応じて、一方向に或いは他方向に常に回転してもよい。I及びQの2つのチャネルは、電子的に追跡され得る。例えば、2つのチャネルは、2つのPBDの出力のコピーを取り、位相関係符号を抽出する単一のミキサを介して追跡され得る。次いで、いくつかの実施形態では、図3に示されるように、位相関係符号は、ADCに供給されてもよい。
【0030】
図5は、本開示のいくつかの実施形態による、例示的な高レベルのFIRE-RAビートノート検出構成の概略図を示す。図5に示されるビートノート検出構成は、図3に示されるFMCW LiDARシステム300に組み込まれ得ることが理解される。図5に示されるように、FIRE-RAビートノート検出構成は、リアルタイムの、非FFTのFMCW LiDAR信号処理を可能にし得る。図5のいくつかの要素は簡略化されており、より詳細なステップは図2図3、又は図4で示され得ることが理解される。図5に示されるように、光ビートノート周波数は、発生の瞬間後に固定されたものとして扱われてもよく、変調掃引源は、BPDの帯域幅にわたって常に掃引していてもよい。ミキサは、ビートノートをダウンコンバートしてもよく、バンドパスフィルタは、エンベロープ検出器の関心範囲内にある振動の一部分を分離してもよい。次いで、エンベロープは、(例えば、TDCの手段を介して)ビニングされ、サンプリングされ、(例えば、1つのチャープランプで検出されたピークの数に基づいて)時間から距離及び速度情報に変換され、点群をもたらすX及びYの位置情報と結合され得る。点群は、ラップトップなどの可視化デバイスに、UDPで送信されてもよいが、さらなる分析のためにAI(例えば、自律走行車のAI)に直接供給され得る。
【0031】
前のセクションで説明されたプロセス、方法、及びアルゴリズムの各々は、コンピュータハードウェアを含む1つ又は複数の、コンピュータシステム又はコンピュータプロセッサによって実行されるコードモジュールに具現化され、そのコードモジュールによって完全に或いは部分的に自動化されてもよい。プロセス及びアルゴリズムは、部分的に或いは全体的に、特定用途向け回路に実装されてもよい。
【0032】
上述された様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して使用されてもよく、或いは様々な方法で組み合わされてもよい。全ての可能なコンビネーション及びサブコンビネーションは、本明細書の範囲内であることを意図している。さらに、いくつかの実施形態では、特定の方法又はプロセスブロックは、省略されてもよい。本明細書で説明された方法及びプロセスはまた、任意の特定のシーケンスに限定されず、それに関連するブロック又は状態は、適切な他のシーケンスで実行され得る。例えば、説明されたブロック又は状態は、具体的に開示された以外の順序で実行されてもよく、或いは複数のブロック又は状態は、単一のブロック又は状態で組み合わされてもよい。ブロック又は状態の例は、直列に、並列に、或いはいくつかの他の方法で実行されてもよい。ブロック又は状態は、開示された実施形態に追加されてもよく、或いは開示された実施形態から削除されてもよい。本明細書で説明されたシステム及びコンポーネントの例は、説明されたのとは異なって構成されていてもよい。例えば、開示された実施形態と比較して、要素が追加され、削除され、或いは並び替えられてもよい。
【0033】
本明細書で説明された方法の様々な動作は、関連する動作を実行するように(例えば、ソフトウェアによって)一時的に構成されており、或いは恒久的に構成されている1つ又は複数のプロセッサによって、少なくとも部分的に実行されてもよい。一時的に或いは恒久的に構成されているかにかかわらず、そのようなプロセッサは、本明細書で説明された1つ又は複数の動作又は機能を実行するように動作するプロセッサ実装エンジンを構成していてもよい。
【0034】
同様に、本明細書で説明される方法は、ハードウェアの一実施例である、特定の1つのプロセッサ又は複数のプロセッサを有する、少なくとも部分的なプロセッサ実装方法であってもよい。例えば、方法の動作の少なくともいくつかは、1つ又は複数の、プロセッサ又はプロセッサ実装エンジンによって実行されてもよい。さらに、1つ又は複数のプロセッサはまた、「クラウドコンピューティング」環境において、或いは「software as a service」(SaaS)として、関連する動作の性能をサポートするように動作してもよい。例えば、動作の少なくともいくつかは、(プロセッサを含むマシンの例として)コンピュータのグループによって実行されてもよく、これらの動作は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して、1つ又は複数の適切なインターフェース(例えば、アプリケーションプログラムインターフェース(API))を介してアクセス可能である。
【0035】
特定の動作の性能は、単一のマシン内に存在するだけでなく、多数のマシンにわたって展開されたプロセッサ間で分散されてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ又はプロセッサ実装エンジンは、単一の地理的場所(例えば、家庭環境内、オフィス環境内、又はサーバファーム内)に配置されてもよい。他の実施形態では、プロセッサ又はプロセッサ実装エンジンは、多数の地理的場所に分散されてもよい。
【0036】
本明細書を通じて、複数のインスタンスは、単一のインスタンスとして説明されたコンポーネント、動作、又は構造を実装し得る。1つ又は複数の方法の個々の動作は、別々の動作として図示され、説明されているが、1つ又は複数の個々の動作は、同時に実行されてもよく、動作が図示された順序で実行することを何も要求しない。構成上、別々のコンポーネントとして示された構造及び機能性は、結合された構造又はコンポーネントとして実装されてもよい。同様に、単一のコンポーネントとして示された構造及び機能性は、別々のコンポーネントとして実装されてもよい。これら及び他の変更、変形、追加、及び改良は、本明細書の対象の範囲内である。
【0037】
本明細書で使用されるように、同様の要素は、同様の参照数字で識別される。「例えば」、「など」、及び「又は」の使用は、特に明記しない限り、制限のない非排他的な代替を示す。「含む(including)」又は「含む(includes)」の使用は、特に明記しない限り、「含む(including)が、これに限定されない」又は「含む(includes)が、これに限定されない」を意味する。
【0038】
本明細書で使用されるように、第1のエンティティと第2のエンティティとの間に置かれる用語「及び/又は」は、(1)第1のエンティティ、(2)第2のエンティティ、及び(3)第1のエンティティ及び第2のエンティティ、のうちの1つを意味する。「及び/又は」で記載された複数のエンティティは、同じように、すなわち、そのように結合されたエンティティの「1つ又は複数」に解釈されるべきである。他のエンティティは、「及び/又は」節によって具体的に特定されるエンティティ以外に、具体的に特定されるそれらのエンティティに関連するか或いは関連しないかにかかわらず、任意に存在し得る。したがって、非限定的な実施例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンドの言語とともに使用されるとき、一実施形態では、Aのみ(B以外のエンティティを任意に含む)、別の実施形態では、Bのみ(A以外のエンティティを任意に含む)、さらに別の実施形態では、AとBとの両方(他のエンティティを任意に含む)、と言及してもよい。これらのエンティティは、要素、アクション、構造、ステップ、動作、値などを言及し得る。
【0039】
特定の実施形態を参照して対象の概要が説明されたが、本明細書の実施形態のより広い範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変形及び変更が行われ得る。詳細な説明は、限定的な意味で取られるべきではなく、様々な実施形態の範囲は、添付の請求項によってのみ、そのような請求項が権利を有する全範囲の均等物とともに定義される。さらに、本明細書で使用される関連用語(「第1」、「第2」、「第3」など)は、任意の順序、高さ、又は重要性を示すものではなく、1つの要素を他の要素から区別するために使用されるものである。さらに、用語「a」、「an」などの単数形表記、及び用語「複数」は、本明細書において量の限定を示すものではなく、言及された物品のうちの少なくとも1つの存在を示すものである。
図1
図2
図3
図4
図5