(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】インバータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231204BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/48 M
(21)【出願番号】P 2022571066
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2021036344
(87)【国際公開番号】W WO2022137709
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020218060
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 史大
(72)【発明者】
【氏名】竹本 寛之
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-173547(JP,A)
【文献】特開2002-238163(JP,A)
【文献】特開平10-313592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータがモータへ印加する印加電圧を出力指令値に基づいて制御するインバータ制御装置であって、
前記モータに流れるd軸電流およびq軸電流と前記出力指令値とに基づいて算出されるd軸電流指令値およびq軸電流指令値の差分から、前記印加電圧に応じた電圧項を算出する電圧項演算部と、
前記q軸電流指令値のフィルタ値と、前記d軸電流指令値のフィルタ値とに基づいて、d軸電圧値およびq軸電圧値の非干渉項をそれぞれ算出する非干渉項演算部と、を備え、
前記印加電圧をオフにする際、前記非干渉項演算部は、前記d軸電圧値の非干渉項および前記q軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方に、前記出力指令値が0である時の値をそれぞれ設定し、
前記印加電圧をオフからオンにする際、前記非干渉項演算部は、前記d軸電圧値の非干渉項および前記q軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方の演算を再開する
インバータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ制御装置であって、
前記印加電圧をオフにする際、前記出力指令値を0とし、
前記印加電圧をオフからオンにする際、前記出力指令値を0から有効値にする
インバータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータを制御してモータを駆動させるインバータ制御装置では、インバータの故障時や装置の保護のため、出力指令値に基づくPWM信号の演算結果に関わらず、インバータに対してゲートオフや3相短絡等の保護動作を実施するものがある。この際に、インバータ制御を再開する場合は、実施している保護動作を解除する必要がある。しかし、インバータ制御装置は保護動作中であってもPWM信号を正常に出力しようとする制御演算を続けているため、保護動作の解除時には意図しないPWM信号がインバータに出力され、インバータにおいて過剰な出力電流が発生するようになっていた。この課題を解決するための技術が以下のように開示されている。
【0003】
本願発明の背景技術として、下記の特許文献1が知られている。特許文献1では、インバータの制御部が、瞬低の発生を判定する系統状態判定部と、前記系統状態判定部の判定結果に応じて、インバータの出力を遮断するゲートブロックが行われるようにするゲートブロック部と、ゲートブロックが解除される際に、インバータの操作量の算出に関するパラメータを初期化する初期化処理部と、を有することで、保護動作が解除される前に出力指令を初期化処理し、インバータの操作量を適切に算出する技術について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では保護動作中に出力指令値算出前の算出パラメータは初期化処理できるものの、出力指令値より後段の算出パラメータが正常値に戻る前に制御を再開する場合には、インバータに対するPWM信号のパルス幅(デューティ)が不適切に算出され、出力の異常を招く問題があった。以上を鑑みて本発明は、保護動作の解除時に意図しない過電流を防止できるインバータ制御装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインバータ制御装置は、インバータがモータへ印加する印加電圧を出力指令値に基づいて制御するインバータ制御装置であって、前記モータに流れるd軸電流およびq軸電流と前記出力指令値とに基づいて算出されるd軸電流指令値およびq軸電流指令値の差分から、前記印加電圧に応じた電圧項を算出する電圧項演算部と、前記q軸電流指令値のフィルタ値と、前記d軸電圧指令値のフィルタ値とに基づいて、d軸電圧値およびq軸電圧値の非干渉項をそれぞれ算出する非干渉項演算部と、を備え、前記印加電圧をオフにする際、前記非干渉項演算部は、前記d軸電圧値の非干渉項および前記q軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方に、前記出力指令値が0である時の値をそれぞれ設定し、前記印加電圧をオフからオンにする際、前記非干渉項演算部は、前記d軸電圧値の非干渉項および前記q軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方の演算を再開する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護動作の解除時に意図しない過電流を防止できるインバータ制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る、インバータ回路の全体構成図。
【
図3】第1の実施形態に係る、保護動作時のフローチャート。
【
図4】モータ低回転の場合の保護動作解除時の出力波形。
【
図5】
図4にD軸非干渉対策した保護動作解除時の出力波形。
【
図6】
図4にQ軸非干渉対策した保護動作解除時の出力波形。
【
図7】
図4にDQ軸非干渉対策した保護動作解除時の出力波形。
【
図8】モータ高回転の場合の保護動作解除時の出力波形。
【
図10】
図8にQ軸非干渉対策した復帰時出力波形。
【
図11】
図8にDQ軸非干渉対策した復帰時出力波形。
【
図12】第2の実施形態に係る、PWM制御ロジックのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0010】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0011】
(本発明の第1の実施形態および構成)
図1は、第1の実施形態に係る、インバータ回路の全体構成図である。
【0012】
インバータ装置110は、HVDC電源101とモータ102との間で電力を変換している。インバータ装置110は、3相の上下アーム回路で構成されスイッチング素子103からなるスイッチング素子部105(制御対象)と、電圧平滑用コンデンサ104と、異常検出部108と、を持つ。
【0013】
インバータ制御部109は、PWM制御ロジック部106と、保護動作決定部107と、を持つ。PWM制御ロジック部106は、制御状態では上位装置(図示せず)から入力される出力指令値に基づき、出力PWM Dutyを算出し、それに応じたPWM信号を出力することで、インバータ装置110がモータ102へ印加する電圧を制御している。
【0014】
異常検出部108は、インバータ装置110において過電圧や過電流等の異常が発生した場合に、これを検出する。異常検出部108が、インバータ装置110の異常を検出すると、異常検出部108からインバータ制御部109の保護動作決定部107へ異常検出信号が伝達される。この異常検出信号を受けると、保護動作決定部107は、インバータ装置110の異常に対応した保護動作を行うための保護動作指令を、インバータ装置110へ出力する。保護動作決定部107から保護動作指令を受けると、インバータ装置110は、PWM制御ロジック部106から出力されるPWM信号よりも優先して、保護動作を実行する。この時、保護動作決定部107は、PWM制御ロジック部106へリセット信号を伝達し、保護動作中の演算を停止させる。これにより、保護動作が解除された際に、意図したPWM信号を出力できる。保護動作中は、インバータ装置110は、制御状態から非制御状態になる。
【0015】
なお、保護動作とは、異常が発生した際に装置全体を安全に停止させる動作であり、ゲートオフ(スイッチング素子オープン)や3相短絡のことである。ゲートオフの保護動作は、ソフトウェアのゲートON/OFFとハードウェア保護との両方の信号を合わせたゲートオフ信号から判定する。3相短絡の保護動作は、ハードウェアへ指令するPWM出力とゲートオフ信号がOFFの場合、3相短絡と判定される。
【0016】
図2は、
図1のPWM制御ロジック部のブロック図である。
【0017】
PWM制御ロジック部106は、dq軸電流指令生成部201、dq軸電圧指令生成部202、PWM Duty設定部203から構成される。
【0018】
出力指令値208は、外部から入力されるトルク指令値などである。この値に基づいてdq軸電流指令生成部201において、dq軸電流指令が生成される。なお、dq軸電流指令生成部201には、トルク指令値の急変防止のためのフィルタが実装されていてもよい。
【0019】
次に、dq軸電圧指令生成部202は、生成されたdq軸電流指令と、モータに流れるdq軸電流の検出結果をフィードバックしたフィードバック電流207と、の差分に基づいて、dq軸電圧比例項演算部204とdq軸電圧積分項演算部205とで、インバータ装置からモータへの印加電圧に応じたdq軸電圧の比例項と積分項の演算をそれぞれ実施する。
【0020】
モータに流れるdq軸電流について、例えばインバータ装置とモータとの間に電流センサを設け、この電流センサによって三相交流電流を検出し、検出された三相交流電流をモータの回転位置に基づいて変換することにより、dq軸電流を取得できる。一方、dq軸電圧非干渉項演算部206は、生成されたdq軸電流指令とモータから検出したモータ回転数209と、に基づいて演算を実施する。
【0021】
なお、dq軸非干渉項とは、dq軸間で互いに干渉しd軸電流とq軸電流とに影響を与える速度起電力を打ち消すためにある、フィードフォワード制御項である。d軸電圧値の非干渉項は、q軸電流指令値のフィルタ値に基づいて値が算出される。q軸電圧値の非干渉項は、d軸電流指令値のフィルタ値に基づいて値が算出される。それぞれの電流指令値のフィルタ値に基づいて非干渉項を算出することで、実電流の変化遅れが考慮されている。
【0022】
dq軸電圧指令生成部202の出力は、dq軸電圧比例項演算部204と、dq軸電圧積分項演算部205と、dq軸電圧非干渉項演算部206と、の結果の合計値であり、PWM Duty設定部203においてPWM Dutyに変換される。PWM制御ロジック部106では、このPWM Dutyに応じたPWM信号を生成し、インバータ装置へ出力する。
【0023】
ここで、モータへ印加される電圧をオフにすることで、ゲートオフまたは3相短絡の保護動作を行った際は、保護動作決定部107(
図1)からPWM制御ロジック部106へリセット信号が出力される。このリセット信号は、
図2に示すように、dq軸電圧非干渉項演算部206にリセット信号210として入力される。リセット信号210が入力されると、dq軸電圧非干渉項演算部206は、それまでに算出した非干渉項の値をリセットする。このリセットとは、d軸q軸それぞれの電圧値の項(非干渉項)のフィルタを無効化して、初期値(トランジスタの動作点の出力指令値が0の時の非干渉項値)に設定することを示す。ただし、非干渉項の初期値は動作条件によっては0とならない。
【0024】
図3は、第1の実施形態に係る、保護動作時のフローチャートである。
【0025】
ステップS1で保護動作を実施する。ステップS2で、PWM制御ロジック部106が保護動作決定部107からリセット信号受信(
図1参照)後、非干渉項をリセットする。なお、保護動作中は、非干渉項のリセットを継続する。ステップS3で、保護動作からの解除をするかどうか判断する。解除するならば、ステップS4で非干渉項の演算を再開し、そうでなければ、ステップS2の非干渉項のリセットを継続する。ステップS4で非干渉項の演算を再開させることにより、意図したPWM出力を得ることができる。ステップS4の非干渉項での演算の再開後、インバータ装置は通常制御にもどり待機状態になる。
【0026】
図4~
図7は、保護動作解除時の出力波形を示す図である。
図4は、モータ低回転の場合、
図5は、モータ低回転時にD軸非干渉対策した場合、
図6は、モータ低回転時にQ軸非干渉対策した場合、
図7は、モータ低回転時にDQ軸非干渉対策した場合、の保護動作解除時の出力波形である。なお、各値リセットのタイミングはゲートオフを認識して保護動作を解除した際に行われるものである。また、
図5~
図7に説明の図では、
図4と同様の符号や波形については説明を省略している。
【0027】
図4は、モータ低回転時にトルク指令をリセットしたときに、トルク、3相電流、ゲート状態、DQ軸電圧指令、DQ軸電圧積分項、DQ軸電圧非干渉項、のそれぞれの状態を表したものである。DQ軸電圧指令の波形にはQ軸電圧指令216とD軸電圧指令217との様子が示されている。DQ軸電圧積分項の波形にはQ軸電圧積分項218とD軸電圧積分項219とが示されている。DQ軸電圧非干渉項の波形には、Q軸電圧非干渉項220とD軸電圧非干渉項221とが示されている。なお、電圧指令の波形(右上)は、比例項と積分項と非干渉項との合計によってできる波形である。
【0028】
実トルク211は、ゲート状態(
図4左下)において、ゲートオフ214から再びゲートがオンになるゲート復帰215のタイミングで、トルクの波形(
図4左上)において、トルク指令リセット212によってトルクが0になり、徐々にトルクが復帰していく様子がわかる。
【0029】
しかし、トルクおよび3相電流の波形には、ゲート復帰215の直後では実トルク211が制御できておらず、過電流による暴れ213が発生していることがわかる。これは、出力指令値をリセットしたが、内部パラメータの電圧指令が戻り切っていないことが原因で、トルク指令リセット212後のトルク復帰の際に、リセット前の内部パラメータに基づく電圧指令が出力されてしまうために起きる現象である。
【0030】
図5は、
図4のトルク指令リセット212に加えて、D軸電圧非干渉項リセット222をした場合の波形である。なお、Q軸電圧非干渉項220は、暴れ対策なしの状態224である。
【0031】
トルク波形および3相電流波形の暴れ対策効果225に示すように、ゲートオフ214からのゲート復帰215の時に、過電流による暴れが抑えられている。これは、電圧指令の大半を占めているD軸非干渉項221をリセットしたことで、出力指令値と電圧指令値の差分が小さくなったためである。
【0032】
図6は、
図4のトルク指令リセット212に加えて、Q軸電圧非干渉項リセット223をした場合の波形である。なお、D軸電圧非干渉項221は、暴れ対策なしの状態224である。
【0033】
トルク波形および3相電流波形の暴れ対策効果225に示すように、ゲートオフ214からのゲート復帰215の時に、過電流による暴れが小程度抑えられている。これは、電圧指令においてQ軸非干渉項220をリセットしたことで、出力指令値と電圧指令値の差分が小さくなったためである。
図5に示したD軸非干渉項リセット222と比較して、暴れ対策効果が小さい理由は、Q軸非干渉項220がリセットされる量が、D軸非干渉項221がリセットされる量と比較して小さいためである。
【0034】
図7は、
図4のトルク指令リセット212に加えて、DQ軸電圧非干渉項リセット226をした場合の波形である。
【0035】
トルク波形および3相電流波形の暴れ対策効果225に示すように、ゲートオフ214からのゲート復帰215の時に、過電流による暴れが抑えられており、
図5に示したトルク指令リセット212とD軸電圧非干渉項リセット222による暴れの抑制よりも、効果が高く出ていることがわかる。これは、電圧指令の大半を占めている非干渉項をリセットしたことで、出力指令値と電圧指令値の差分が小さくなったためであり、D軸電圧非干渉項221をリセットした効果とQ軸電圧非干渉項220をリセットした効果が相乗されている。このように、トルク指令を0Nmにして非干渉項フィルタを無効化することで、非干渉項のリセットを模擬している。
【0036】
図8~
図11は、モータ高回転時の保護動作解除時の出力波形を示す図である。
図8は、モータ高回転時にトルク指令リセットを行った場合、
図9は、モータ高回転時にトルク指令リセットとD軸非干渉対策した場合、
図10は、モータ高回転時にトルク指令リセットとQ軸非干渉対策した場合、
図11は、モータ高回転時にトルク指令リセットとDQ軸非干渉対策した場合、の保護動作解除時の出力波形である。
【0037】
【0038】
(第2の実施形態)
図12は、第2の実施形態に係る、PWM制御ロジック部のブロック図である。
【0039】
本実施形態に係るPWM制御ロジック部106Aにおいて、第1の実施形態で説明した
図2のPWM制御ロジック部106との違いは、保護動作決定部107から出力されたリセット信号210Aが、dq軸電圧非干渉項演算部206に入力されるだけでなく、出力指令値208をリセットする点である。これにより、PWM制御ロジック部106Aは、ゲートオフまたは3相短絡の保護動作を行う際に、リセット信号210Aに応じて出力指令値208を0にリセットするとともに、dq軸電圧非干渉項演算部206のフィルタを無効化する。
【0040】
【0041】
図3のフローチャートとの違いは、非干渉項フィルタを無効(非干渉項をリセット)するだけでなく、出力指令値208として入力されたトルク指令をステップS8で0Nmに設定することである。これにより、保護動作を解除して復帰したタイミングで、ステップS10で非干渉項フィルタを有効(非干渉項の演算を再開する)にさせて、ステップS11でトルク指令の受信を再開(復帰)させる。これにより第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
以上説明した本発明の第1の実施形態および第2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0043】
(1)インバータ制御部109は、インバータ装置110がモータ102へ印加する印加電圧を出力指令値に基づいて制御するものであって、モータ102に流れるd軸電流およびq軸電流と出力指令値とに基づいて算出されるd軸電流指令値およびq軸電流指令値の差分から、印加電圧に応じたdq軸電圧項を算出するdq軸電圧比例項演算部204およびdq軸電圧積分項演算部205と、q軸電流指令値のフィルタ値と、d軸電流指令値のフィルタ値とに基づいて、d軸電圧値およびq軸電圧値の非干渉項をそれぞれ算出するdq軸電圧非干渉項演算部206と、を備える。印加電圧をオフにする際、dq軸電圧非干渉項演算部206は、d軸電圧値の非干渉項およびq軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方に、出力指令値が0である時の値をそれぞれ設定し(
図3ステップS2)、印加電圧をオフからオンにする際、dq軸電圧非干渉項演算部206は、d軸電圧値の非干渉項およびq軸電圧値の非干渉項の少なくとも一方の演算を再開する(
図3ステップS4)。このようにしたことで、保護動作の解除時に意図しない過電流を防止できるインバータ制御装置を提供できる。
【0044】
(2)インバータ制御部109は、印加電圧をオフにする際、出力指令値(電圧値)を0とし(
図13ステップS8)、印加電圧をオフからオンにする際、出力指令値を0から有効値にする(
図13ステップS11)。このようにしたことで、保護動作の解除時に意図しない過電流を防止できるインバータ制御装置を提供できる。
【0045】
以上説明したが、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能であり、その態様も本発明の範囲内に含まれる。さらに、上述の実施形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0046】
101・・・HVDC電源
102・・・モータ
103・・・スイッチング素子
104・・・コンデンサ
105・・・スイッチング素子部
106、106A・・・PWM制御ロジック部
107・・・保護動作決定部
108・・・異常検出部
109・・・インバータ制御部
110・・・インバータ装置
201・・・dq軸電流指令生成部
202・・・dq軸電圧指令生成部
203・・・PWM Duty設定部
204・・・dq軸電圧比例項演算部
205・・・dq軸電圧積分項演算部
206・・・dq軸電圧非干渉項演算部
207・・・フィードバック電流
208・・・出力指令値
209・・・モータ回転数
210、210A・・・リセット信号
211・・・実トルク
212・・・トルク指令リセット
213・・・過電流による暴れ
214・・・ゲートオフ
215・・・ゲート復帰
216・・・Q軸電圧指令
217・・・D軸電圧指令
218・・・Q軸電圧積分項
219・・・D軸電圧積分項
220・・・Q軸電圧非干渉項
221・・・D軸電圧非干渉項
222・・・D軸非干渉項リセット
223・・・Q軸非干渉項リセット
224・・・暴れ対策なしの状態
225・・・暴れ対策効果
226・・・DQ軸非干渉項リセット