(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】ゲルファイバ製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
D01D 5/06 20060101AFI20231204BHJP
【FI】
D01D5/06 Z
(21)【出願番号】P 2023542937
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2023023968
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2022104391
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000181147
【氏名又は名称】持田製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古迫 正司
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 智裕
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-035464(JP,A)
【文献】特開昭54-073913(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262469(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/066306(WO,A1)
【文献】特開2014-014785(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00 - 13/02
D01F 1/00 - 13/04
D12M 1/00 - 3/10
D12N 1/00 - 15/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア液を含有する本液を吐出する第1吐出部と、
前記第1吐出部の径方向外方を包囲するように設けられ、前記コア液を硬化させるシース液を吐出する第2吐出部と、
前記シース液に対して一定圧力と前記一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加えて、前記シース液を前記第2吐出部に供給するシース液供給部と、を
備え、
前記高圧力が加えられた前記シース液によって、前記本液から生成したゲルファイバが切断される、
ゲルファイバ製造装置。
【請求項2】
前記シース液供給部は、前記高圧力をパルス状の波形で前記シース液に加える、
請求項1に記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項3】
前記第1吐出部に対して前記本液を一定の圧力で供給する本液供給部をさらに備える、
請求項1または2に記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項4】
前記コア液が含有する組成と、前記シース液が含有する組成の組合せは、
アルギン酸および/または化学修飾されたアルギン酸と、多価金属イオン、
フィブリンモノマーおよび/または化学修飾されたフィブリンモノマーと、カルシウムイオン、
コラーゲンおよび/または化学修飾されたコラーゲンと、温水、
カラギーナンおよび/または化学修飾されたカラギーナンと、カルシウムまたはカリウムイオン、
アクリル酸系合成ゲルと、ナトリウムイオン、
キトサン塩および/または化学修飾されたキトサン塩と、アルカリ溶液、
のいずれかである、請求項1または2に記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項5】
前記組合わせにおける前記コア液は、
アルギン酸および/または化学修飾されたアルギン酸、
フィブリンモノマーおよび/または化学修飾されたフィブリンモノマー、
コラーゲンおよび/または化学修飾されたコラーゲン、
カラギーナンおよび/または化学修飾されたカラギーナン、
アクリル酸系合成ゲル、
キトサン塩および/または化学修飾されたキトサン塩、
の少なくとも1つをさらに組成として含む、請求項4に
記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項6】
前記第1吐出部は、前記本液を吐出する本液ノズルを有し、
前記第2吐出部は、前記本液ノズルの径方向外方を包囲し、前記シース液を吐出するシース液ノズルを有する、
請求項1または2に記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項7】
前記本液に、細胞及び/または化合物が含まれる、
請求項1または2に記載のゲルファイバ製造装置。
【請求項8】
コア液を含有する本液を吐出する過程と、
吐出された前記本液の径方向外方を包囲するように、前記コア液を硬化させるシース液を吐出する過程と、
前記シース液に対して一定圧力と前記一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加える過程と、
を含み、
前記高圧力が加えられた前記シース液によって、前記本液から生成したゲルファイバが切断される、
ゲルファイバ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルファイバ製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞などを含有するゲルファイバは、様々な用途で従来用いられている。このようなゲルファイバを製造する方法及び装置に関しても、例えば特許文献1の技術が従来から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/066306号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、特許文献1のように、流路内のゲル化前駆体に断続的に気体を注入することにより、ゲル化前駆体と気体の交互流を形成し、交互流にゲル化剤を合流させることで、ゲルファイバを製造する方法が開示されている。
【0005】
上記のような従来の切断方法は、弾力性がありかつ柔らかいゲルファイバに応用することはできない。また、ゲルファイバを切断刃で切断する方法や、ゲルファイバを引っ張ることで切断する方法も考えられるが、弾力性がありかつ柔らかいゲルファイバを、きれいに切断することが困難であった。
【0006】
上記のような課題に鑑み、本件では、ゲルファイバをきれいに切断することができる製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一態様として、コア液を含有する本液を吐出する第1吐出部と、前記第1吐出部の径方向外方を包囲するように設けられ、前記コア液を硬化させるシース液を吐出する第2吐出部と、前記シース液に対して一定圧力と前記一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加えて、前記シース液を前記第2吐出部に供給するシース液供給部と、を備えるゲルファイバ製造装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、一態様としてコア液を含有する本液を吐出する工程と、吐出された前記本液の径方向外方を包囲するように、前記コア液を硬化させるシース液を吐出する工程と、前記シース液に対して一定圧力と前記一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加える工程と、を含むゲルファイバ製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、ゲルファイバをきれいに切断することができる製造装置及び製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態によるゲルファイバ製造装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態によるノズルの断面図を図(a)に示し、(a)図のIIb線による断面図を図(b)に示す。
【
図3】(a)加圧液にポンプが加える圧力の時刻歴、(b)硬化液にポンプが加える圧力の時刻歴、及び(c)シース液に生じる圧力の時刻歴を模式的に示すグラフである。
【
図4】生成されたゲルファイバが切断される状況を説明する図である。
【
図5】ノズルから吐出されたゲルファイバの保存状態を示す図である。
【
図6】変形例によるゲルファイバ製造装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下において「A及び/またはB」とは、AとBの両方、Aのみ、Bのみ、のいずれかであることを意味する。
【0012】
<実施形態>
図1に示されるように、実施形態のゲルファイバ製造装置1は、ゲルファイバを形成するための液体として本液を貯留する本液貯留部10、吐出部20、シース液貯留部30、本液供給部40、シース液供給部50、動力部60、計測部70、及び、制御部80を備える。
【0013】
本液貯留部10は、ゲルファイバの材料となる本液を貯留する槽である。本液とは、別個に形成されたコア液と中心液に対する総称である。本明細書では、コア液と中心液を混合した状態、及び、コア液及び中心液とを分離した状態のいずれにおいても、コア液及び中心液をまとめて本液と称する。実施形態における本液貯留部10は、コア液と中心液とが混合された状態で、1つの槽を用いて本液を貯留する。
【0014】
コア液はゲルファイバの材料を含む液であり、具体例としては、アルギン酸誘導体を含む液が挙げられる。
【0015】
中心液は、ゲルファイバに含有させる物質を含む液であり、細胞または化合物を含有する。細胞を含む場合の具体例としては、細胞懸濁液を中心液とすることが挙げられる。細胞懸濁液が中心液に用いられた場合、生成されるゲルファイバは、細胞含有ゲルファイバとも称される。
【0016】
中心液に含んでもよい細胞とは、本明細書において特に制限されないが、例えば、抗体(ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体等の各種のモノクローナル抗体又はそれらのバイスペシフィック抗体、低分子化抗体、糖鎖改変抗体等の各種の改変型抗体)産生細胞、生理活性物質(酵素、サイトカイン、ホルモン、血液凝固系因子、ワクチン等)産生細胞、医薬品原料、化学原料、食品原料等として有用な各種の有用物質を産生できる細胞が挙げられる。好ましくは、抗体産生細胞または生理活性物質産生細胞である。
【0017】
また、中心液に含んでもよい化合物とは、本明細書において特に制限されないが、例えば、低分子医薬品、抗体医薬品、核酸医薬品、ペプチド医薬品、中分子医薬品、タンパク性医薬品、または、エキソソームが挙げられる。
【0018】
吐出部20は、
図2に示すように、同軸に配置された2つのノズル21、22を有する。ノズル22は、略円環形の断面を持つ管状の部材であり、本液供給部40から本液の供給を受け、本液を吐出する機能を有する。詳細に述べると、ノズル22は、開放された吐出端22Aを有し、吐出端22Aから本液を吐出することができる。ノズル22は、吐出端22Aに向かって先細りになるように、テーパ状に形成されるが、2つのノズル21,22が同軸に配置されていれば、必ずしも22Aに向かって先細りになっている必要はない。
【0019】
ノズル21は、ノズル22の径方向外方を包囲するように形成された、略円環形の断面を持つ管状または略円筒形状の部材であり、ノズル22と同軸に配置される(
図2(b))。ノズル21は、シース液供給部50からシース液の供給を受け、シース液を吐出する機能を有する。詳細に述べると、ノズル21は、吐出端22Aと同じ方向に開放された吐出端21Aを有し、吐出端21Aからシース液を吐出することができる。シース液の詳細については後述する。
【0020】
シース液貯留部30は、
図1に示すように、2つの液槽31、32を備える。液槽31は、加圧液を貯留する槽であり、液槽32は、硬化液を貯留する槽である。加圧液は、硬化液に対して圧力を伝達する液である。
【0021】
硬化液及び加圧液は、それぞれ、シース液の一部を構成する液である。詳細は後述するが、硬化液と加圧液は、シース液供給部50で混合されてシース液を形成する。本明細書では、硬化液と加圧液を混合した状態、及び、硬化液と加圧液とを分離した状態のいずれにおいても、硬化液と加圧液をまとめてシース液と称する。
【0022】
シース液及び硬化液は、コア液(及びコア液を含有する本液)を硬化させる液であり、その成分はコア液の組成によって決定される。なお、本明細書において、硬化とは、必ずしも固体とすることを指すのではなく、ゲル化させることを含む。
【0023】
コア液(または本液)及び硬化液(またはシース液)がそれぞれ含有する組成、成分の具体的な組み合わせとしては、以下のような例が挙げられる。コア液または本液を調製する際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、培地、細胞培養用培地、培養液、等張緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、水道水、純水(例えば、蒸留水、イオン交換水、RO水、RO-EDI水、等)、超純水(MilliQ水)、及び生理食塩水等が挙げられる。また、コア液または本液に含有される成分のうち、特に表記のないものは塩を形成していてもよい。
【表1】
【0024】
上記のうち、複数種の組み合わせ例を混合させてコア液(または本液)及び硬化液(またはシース液)としてもよい。例えば、アルギン酸ナトリウム及びコラーゲンを含む液をコア液とし、多価金属イオンを有する温水を硬化液とすることが可能である。
【0025】
また、コア液に複数の組成が含有されていてもよい。例えば、アルギン酸ナトリウムとカラギーナンを両方含むコア液(または本液)としてもよい。この場合、硬化液(またはシース液)の組成に、対応する組み合わせのいずれか、つまり、多価金属イオン、カルシウムイオン、カリウムイオンのいずれかが含まれていればよい。
【0026】
加圧液には、硬化液と同一の液をそのまま用いてもよいし、生理食塩水を用いてもよい。
【0027】
本液供給部40は、
図1に示すように、ポンプ41、及び、供給管42を有する。供給管42は、本液貯留部10とノズル22とを接続し、ノズル22へ本液を供給する。ポンプ41は、本液貯留部10に貯留された本液に対して圧力を加え、供給管42を介してノズル22まで本液を輸送する、すなわち送出する機能を有する。
【0028】
シース液供給部50は、
図1に示すように、供給管53、供給管54、及び、ポンプ51、52を有する。供給管53は、液槽31と供給管54とを接続し、加圧液を供給管54へ供給する管として機能する。供給管54は、液槽32とノズル21とを接続し、硬化液及びシース液をノズル21へ供給する管として機能する。
【0029】
ポンプ52は、液槽32に貯留された硬化液に対して圧力を加え、供給管54を介して硬化液を送出する機能を有する。
【0030】
また、ポンプ51は、液槽31に貯留された加圧液に対して圧力を加え、供給管53を介して加圧液を送出する機能を有する。供給管53は供給管54に接続されるため、送出された加圧液は供給管54内において硬化液と混合され、シース液とされる。供給管54は、生成されたシース液をノズル21へ供給する。
【0031】
ポンプ41、52は、それぞれ、本液貯留部10及び液槽32内に一定の圧力を加えることにより、本液、硬化液を加圧する(
図3(b))。一方、ポンプ51は、液槽31内に圧力を加えることで、
図3(a)に示すように、加圧液に対して一定周期で高い圧力を加えるように制御される。加圧液は供給管54内部に供給されて圧力を伝達するため、供給管54内部のシース液に生じる圧力は、
図3(c)に示すように、一定の圧力と、一定周期で発生する高圧力とを繰り返すような時刻歴を示す。
【0032】
なお、ポンプ41、51、52が本液、加圧液、及び硬化液に加える圧力の大きさ及び周期は、製造するゲルファイバの種類やゲルファイバの長さなどに応じて適宜調整される。例えば、ポンプ51が加える圧力は、ゲルファイバの長さに応じて不定周期とできる。
加圧液に加える圧力はパルス波とすることが好ましい。なお、圧力の時刻歴波形は、正弦波や矩形波、三角波など、ゲルファイバ生成の条件に応じて適宜変更してもよい。
【0033】
動力部60は、ポンプ41、51、52に対して動力を供給する装置である。動力部60は、本実施形態において圧縮空気を供給するコンプレッサーであり、ポンプ41、51、52のそれぞれに対して、動力として圧縮空気を供給する。動力部60は、電力を供給する装置など、その他のエネルギーを供給する装置であってもよい。
【0034】
計測部70は、流体の流量を計測する装置であり、少なくとも3つのセンサ71、72、73を備える。センサ71は、供給管42に取り付けられ、供給管42を流れる本液の流量を計測する。センサ72は、供給管53に取り付けられ、供給管53を流れる加圧液の流量を計測する。センサ73は、供給管54に取り付けられ、供給管54を流れる硬化液の流量を計測する。
【0035】
制御部80は、計測部70、動力部60、本液供給部40、及びシース液供給部50と通信可能に接続され、ゲルファイバ製造装置1の動作を制御する。具体的には、計測部70から取得した流量に基づき、動力部60、及び、ポンプ41、51、52を制御する。
【0036】
(動作)
上記のように構成されるゲルファイバ製造装置1の動作について説明する。
【0037】
制御部80によって、ポンプ51、52を制御し、
図3に示すような圧力が、加圧液及び硬化液に加えられるように制御する。
【0038】
制御部80は、本液に一定の圧力が加わるように、ポンプ41を制御する。本液は、一定の速度と流量を維持した状態でノズル22を通り、吐出端22Aから吐出される。
【0039】
加圧液及び硬化液は、供給管54内部で混合されて、上述の通りシース液を形成する。
シース液には、
図3(c)のように圧力が加えられた状態でノズル21に供給される。
図2(a)の「枠内拡大図」に示すように、ノズル21内部のシース液は、吐出端22Aから吐出された本液の外周部を包囲するように、かつ、本液と同方向に流れる。
【0040】
吐出端22Aから吐出された本液流の外周部は、シース液と接触するため、シース液と反応してゲル化する。このようにして本液は、細長く繊維状に形成されたゲルファイバとなる。形成されたゲルファイバは、吐出端21Aからシース液と共に吐出される。
【0041】
吐出端21Aから吐出されるまでの間に、ゲルファイバはシース液によって、一定の長さ毎に切断される。詳細に述べると、シース液に高圧力が加えられた場合(
図3(c))、ノズル21内部のゲルファイバにも、径方向外方からシース液を介して高圧力が加えられる。加えられた圧力によって、ゲルファイバは
図4に示すように切断される。シース液に加えられる高圧力は一定の周期で発生するため、ゲルファイバは、一定の長さ毎に切断される。
【0042】
吐出部20から吐出されたゲルファイバの保存方法や使用方法は様々である。例えばゲルファイバが細胞含有ゲルファイバとして製造された場合、
図5に示すように、吐出部20から生物反応装置Rの培養液内に吐出され、保存されてもよい。また、ゲルファイバが、チューブCなどを介してバッグBに吐出され、保存されてもよい。
【実施例1】
【0043】
(硬化液と加圧液に同一の組成を使用する場合)
【0044】
上記のような装置、方法を用いたゲルファイバ生成の実施例について、以下に説明する。
【0045】
3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。続いて、ブルーデキストラン含有水溶液を調製し、前記アルギン酸ナトリウム水溶液と等容量混合することで、アルギン酸混合溶液を生成し、本液とした。続いて、100mM塩化カルシウム水溶液を調製し、硬化液、および、加圧液とした。本液、加圧液、硬化液をそれぞれのボトル(本液貯留部10、液槽31、32)に充填し、対応するキャップを接続した。
【0046】
キャップへ供給管42、53、54(この実施例では、シリコンチューブあるいはPTFEチューブを用いた)の一方を接続し、他方を吐出部20へ接続した後、供給管内を対応する各溶液でプライムした。
【0047】
続いて、硬化液(3kPa)、アルギン酸混合溶液(30kPa)の順に吐出を開始し、下表2に記載の条件で加圧液を吐出し、硬化液と同一成分の水溶液が含まれるビーカーで回収した。
【表2】
【実施例2】
【0048】
(硬化液と加圧液に別の組成を使用する場合)
【0049】
3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。続いて、ブルーデキストラン含有水溶液を調製し、前記アルギン酸ナトリウム水溶液と等容量混合することで、アルギン酸混合溶液を生成し、本液とした。続いて、100mM塩化カルシウム水溶液を調製し、硬化液とした。また、生理食塩水を加圧液とした。
【0050】
本液、加圧液、硬化液をそれぞれの本液貯留部10、液槽31、32に充填し、対応するキャップを接続した。キャップへ供給管42、53、54(シリコンチューブあるいはPTFEチューブを用いた)の一方を接続し、他方を吐出部20へ接続した後、供給管内を、対応する各溶液でプライムした。
【0051】
続いて、硬化液(25mL/分)、本液(4mL/分)の順に吐出を開始し、下表3に記載の条件で加圧液を吐出し、硬化液と同一成分の水溶液が含まれるビーカーで回収した。
【表3】
【実施例3】
【0052】
(本液に細胞を封入する場合)
【0053】
3重量%アルギン酸ナトリウム水溶液を調製した。続いて、細胞懸濁液(1×10^8細胞/mL)を調製し、前記アルギン酸ナトリウム水溶液と等容量混合することで、アルギン酸混合溶液を生成し、本液とした。続いて、0.9%塩化ナトリウム含有20mM塩化バリウム水溶液を調製し、硬化液、および、加圧液とした。本液、加圧液、硬化液、をそれぞれのボトル(本液貯留部10、液槽31、32)に充填し、対応するキャップを接続した。
【0054】
キャップへ供給管42、53、54(この実施例では、シリコンチューブあるいはPTFEチューブを用いた)の一方を接続し、他方を吐出部20へ接続した後、供給管内を対応する各溶液でプライムした。
【0055】
続いて、硬化液(12mL/分)、アルギン酸混合溶液(2mL/分)の順に吐出を開始し、下表4に記載の条件で加圧液を吐出し、硬化液と同一成分の水溶液が含まれるビーカーで回収した。
【表4】
【0056】
上記3つの実施例では、加圧液として異なる溶液を用いているが、いずれの実施例においてもゲルファイバを生成し、所定の長さに切断することができた。なお、上記実施例に限らず、圧力や時間、加圧間隔などの条件は、上述の通り、ゲルファイバの種類等に応じて様々に設定可能である。
【0057】
<変形例>
上記構成では、ポンプ41、51、52には、様々な種類、形式の加圧装置を採用することができる。たとえば、空気を液槽内に供給し、液槽内を加圧することによって貯留された液に加圧する形式のポンプを用いてもよいし、液に対して直接加圧する装置を用いることも可能である。装置の具体例としては、例えば、空気圧ポンプ、無脈動ポンプ、ダイアフラムポンプ、遠心ポンプ等が挙げられる。
【0058】
また、ポンプなどの装置が液に加圧する箇所は液槽内に限定されない。例えば
図6の変形例によるゲルファイバ製造装置100に示すように、供給管42、53、54に加圧装置が配置される構成としてもよい。
【0059】
詳細に述べると、ゲルファイバ製造装置100は、本液貯留部10、吐出部20、シース液貯留部30、動力部60、計測部70、及び、制御部80に加え、本液供給部140、シース液供給部150を備える。なお、実施形態と同様の構成に対しては同じ参照番号を付し、説明を省略する。
【0060】
本液供給部140のポンプ141は、本液貯留部10とノズル22とを接続する供給管42に取り付けられている。ポンプ141は、供給管42内部の本液に対して加圧し、本液をノズル22へ向けて送出する。
【0061】
また、シース液供給部150は、ポンプ151、152を備える。ポンプ151は、液槽31と供給管54とを接続する供給管53に取り付けられている。また、ポンプ152は、液槽32とノズル21とを接続する供給管54に取り付けられている。
【0062】
ポンプ151は、供給管53内部の加圧液に対して加圧し、加圧液を供給管54へ向けて送出する。また、ポンプ152は、供給管54内部の硬化液に対して加圧し、ノズル21へ向けて硬化液を送出する。
【0063】
上記構成においても、実施形態と同様に各ポンプ141、151、152が本液、加圧液、硬化液に加圧し、ゲルファイバ製造装置100がゲルファイバを生成、切断することができる。
【0064】
なお、実施形態及び変形例における、ポンプ52、152から硬化液に加圧される一定圧力Pとは、厳密に一定の圧力を意味するものでは無く、シース液をノズル21から吐出でき、ゲルファイバを形成できる圧力であれば、圧力変動が許容される。同様に、ポンプ41、141から本液に加圧される圧力についても、厳密に一定の圧力とする必要は無く、本液をノズル22から吐出でき、ゲルファイバを形成できる圧力であれば、圧力変動が許容される。
【0065】
(効果)
上記各実施形態では、以下のような態様が開示される。
【0066】
(態様1)上記各実施形態では、ゲルファイバ製造装置1、100は、コア液を含有する本液を吐出するノズル22(第1吐出部に相当)と、第1吐出部の径方向外方を包囲するように設けられ、コア液を硬化させるシース液を吐出するノズル21(第2吐出部に相当)と、シース液に対して一定圧力と一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加えて、シース液をノズル21に供給するシース液供給部50、150と、を備える。
【0067】
上記構成では、ゲルファイバを製造し、切断面を乱すことなく目的の長さに切断することが可能である。従来のように切断刃を用いてゲルファイバを切断した場合、ゲルファイバが柔らかいために綺麗な切断面を形成することができなかった。また、細胞ファイバを製造した場合、含まれる細胞を痛める可能性があった。しかし、本構成では、切断面を乱さず、また、ゲルファイバに含まれる物質を損傷することなく、ゲルファイバをきれいに切断することができる。
【0068】
(態様2)態様1において、シース液供給部50、150は、高圧力をパルス状の波形で前記シース液に加える。
【0069】
上記構成では、パルス状波形で高圧力を加えることにより、ゲルファイバをきれいに切断することができる。
【0070】
(態様3)態様1または2において、ゲルファイバ製造装置1、100は、第1吐出部に対して本液を一定の圧力で供給する本液供給部40、140を備える。
【0071】
本液供給部40、140が一定の圧力を本液に対して加えることにより、ゲルファイバを一定の速度で製造することができる。そのため、目的の長さにゲルファイバを切断することが可能である。
【0072】
(態様4)態様1から3のいずれかにおいて、コア液及び前記シース液の組合せは、アルギン酸および/または化学修飾されたアルギン酸と、多価金属イオン;フィブリンモノマーおよび/または化学修飾されたフィブリンモノマーと、カルシウムイオン;コラーゲンおよび/または化学修飾されたコラーゲンと、温水;カラギーナンおよび/または化学修飾されたカラギーナンと、カルシウムまたはカリウム金属イオン;アクリル酸系合成ゲルと、ナトリウムイオン;キトサン塩および/または化学修飾されたキトサン塩とアルカリ溶液、のいずれかである。また、コア液または本液に含有される成分のうち、特に表記のないものは塩を形成していてもよい。
【0073】
(態様5)態様4に示すコア液とシース液の組合わせにおけるコア液は、アルギン酸および/または化学修飾されたアルギン酸、フィブリンモノマーおよび/または化学修飾されたフィブリンモノマー、コラーゲンおよび/または化学修飾されたコラーゲン、カラギーナンおよび/または化学修飾されたカラギーナン、アクリル酸系合成ゲル、キトサン塩および/または化学修飾されたキトサン塩、の少なくとも1つをさらに組成として含む。
【0074】
上記のコア液及び前記シース液を用いることにより、ゲルファイバ製造装置1、100は、ゲルファイバを製造し、きれいに切断することができる。
【0075】
(態様6)態様1から5のいずれかにおいて、第1吐出部は、本液を吐出するノズル22(本液ノズルに相当)を有し、第2吐出部は、本液ノズルの径方向外方を包囲し、シース液を吐出するノズル21(シース液ノズルに相当)を有する。
【0076】
上記構成により、ゲルファイバ製造装置1、100は、本液を1つのノズル22から吐出し、ポリカチオン型のゲルファイバを製造し、きれいに切断することができる。
【0077】
(態様7)態様1から6のいずれかにおいて、本液には、細胞及び化合物の一方または両方が含まれる。
【0078】
上記構成では、ゲルファイバ製造装置1、100は、ゲルファイバとして細胞含有ゲルファイバを製造することも、薬品を含有するゲルファイバを製造することも可能である。
いずれにおいても、ゲルファイバ製造装置1、100は、ゲルファイバを製造し、きれいに切断することができる。
【0079】
上記各構成では、加圧液を介して高圧力をシース液へ加える構成としていたが、加圧液を用いない構成としてもよい。例えば、シース液貯留部30を、シース液を貯留する1つの液槽としてもよい。この場合、
図3(c)に示す圧力時刻歴を直接シース液に加えることにより、シース液を、供給管54を介して吐出部20へ供給することができる。
【符号の説明】
【0080】
1、100 ゲルファイバ製造装置、
10 本液貯留部、
20 吐出部、
30 シース液貯留部、
40、140 本液供給部、
50、150 シース液供給部、
60 動力部
70 計測部
80 制御部
【要約】
コア液を含有する本液を吐出する第1吐出部と、前記第1吐出部の径方向外方を包囲するように設けられ、前記コア液を硬化させるシース液を吐出する第2吐出部と、前記シース液に対して一定圧力と前記一定圧力より高い圧力である高圧力とを交互に加えて、前記シース液を前記第2吐出部に供給するシース液供給部と、を備えるゲルファイバ製造装置。