(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-01
(45)【発行日】2023-12-11
(54)【発明の名称】レーダーシステム、レーダー装置、及び監視方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/87 20060101AFI20231204BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20231204BHJP
【FI】
G01S13/87
G01S13/34
(21)【出願番号】P 2023543540
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031088
(87)【国際公開番号】W WO2023026384
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-10-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 良太郎
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049892(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1744692(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第111443348(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0058581(US,A1)
【文献】特開2004-220224(JP,A)
【文献】特開2014-062804(JP,A)
【文献】特開平06-308225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーダー装置を備えたレーダーシステムにおいて、
通常時は、前記複数のレーダー装置の各々が、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視し、
前記複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合は、前記故障したレーダー装置の監視エリアを、前記故障したレーダー装置に隣接する少なくとも1つのレーダー装置が、前記第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
前記複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、前記少なくとも1つのレーダー装置が、レーダー信号の掃引範囲のうち、前記故障したレーダー装置の監視エリアが存在しない方向に対しては、前記第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信し、前記故障したレーダー装置の監視エリアが存在する方向に対しては、前記第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のレーダーシステムにおいて、
前記複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、前記少なくとも1つのレーダー装置が、レーダー信号の掃引範囲の全てに対して、前記第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレーダーシステムにおいて、
前記複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、前記故障したレーダー装置に隣接する少なくとも2つのレーダー装置が、前記故障したレーダー装置の監視エリアを、交互に監視することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項5】
レーダー信号の変調帯域を変更可能なレーダー装置であって、
通常時は、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に変調されたレーダー信号を用いて監視し、
隣接するレーダー装置が故障した場合は、前記故障したレーダー装置の監視エリアを、前記第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とするレーダー装置。
【請求項6】
複数のレーダー装置を備えたレーダーシステムによる監視方法において、
通常時は、前記複数のレーダー装置の各々が、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視し、
前記複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合は、前記故障したレーダー装置の監視エリアを、前記故障したレーダー装置に隣接する少なくとも1つのレーダー装置が、前記第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波やミリ波帯などを用いたレーダー装置として、
図1のような構造のFMCW(Frequency Modulated Continuous-Wave)レーダー装置が実用されている。
図1のレーダー装置100は、FMCW送信源101からの周波数変調されたレーダー信号を、送信電力増幅器103で増幅し、送信アンテナ104から発射する。レーダー装置100の検出エリア内に物体T(反射物)が存在する場合には、レーダー送信波が物体Tで反射される。物体Tからの反射波は、レーダー装置100の受信アンテナ105で受信され、受信電力増幅器106で増幅された後、電力分配器102からの送信レーダー信号成分と混合器107によってミキシングされ、IF信号に変換される。混合器107から出力されたIF信号は、信号処理部108でA/D変換及び信号処理される。その結果として、物体Tによる反射受信電力(反射波電力)、物体Tまでの距離、物体Tの方位、また、物体Tが移動している場合の速度(レーダー装置100に対する相対速度)等のレーダー検出結果が得られる。
【0003】
ここで、本発明に係る技術分野の従来技術としては、以下のようなものがある。例えば、特許文献1には、レーダー装置が監視エリア内で物体を検知した場合に、移動判定部が、レーダー検出結果に基づいて物体が移動体であるか否かを判定し、移動判定部により物体が移動体であると判定された場合に、停止制御部が、レーダー装置のレーダー動作を一時的に停止させる制御を行う発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダー装置の使用用途として、空港の滑走路や高速道路などの路面上に落下している異物を検知する用途がある。このような広範囲のエリアを監視するためには、複数のレーダー装置を設置して、各レーダー装置による検知結果を集約するレーダーシステムを構築することが一般的である。
【0006】
上記のような空港の滑走路や高速道路を監視するレーダーシステムにおいて、複数のレーダー装置のうちのいずれかが故障した場合には、復旧のために、故障したレーダー装置を予備機に交換等する作業が必要となる。しかしながら、空港の滑走路や高速道路での作業は容易ではなく、復旧作業の完了までに時間がかかってしまう。その結果、故障したレーダー装置の監視エリア内に落下物が存在しても、長時間にわたって検知することができず、監視業務に不備が生じることになる。
【0007】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、いずれかのレーダー装置が故障した場合でも、そのレーダー装置の監視エリアの監視を継続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様であるレーダーシステムは、以下のように構成される。
すなわち、複数のレーダー装置を備えたレーダーシステムにおいて、通常時は、複数のレーダー装置の各々が、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視し、複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合は、故障したレーダー装置の監視エリアを、故障したレーダー装置に隣接する少なくとも1つのレーダー装置が、第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明に係るレーダーシステムにおいて、複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、少なくとも1つのレーダー装置が、レーダー信号の掃引範囲のうち、故障したレーダー装置の監視エリアが存在しない方向に対しては、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信し、故障したレーダー装置の監視エリアが存在する方向に対しては、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信するように構成され得る。
【0010】
また、本発明に係るレーダーシステムにおいて、複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、少なくとも1つのレーダー装置が、レーダー信号の掃引範囲の全てに対して、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信するように構成され得る。
【0011】
また、本発明に係るレーダーシステムにおいて、複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合、故障したレーダー装置に隣接する少なくとも2つのレーダー装置が、故障したレーダー装置の監視エリアを、交互に監視するように構成され得る。
【0012】
また、本発明の一態様であるレーダー装置は、以下のように構成される。
すなわち、レーダー信号の変調帯域を変更可能なレーダー装置であって、通常時は、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に変調されたレーダー信号を用いて監視し、隣接するレーダー装置が故障した場合は、故障したレーダー装置の監視エリアを、第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様である監視方法は、以下のように構成される。
すなわち、複数のレーダー装置を備えたレーダーシステムによる監視方法において、通常時は、複数のレーダー装置の各々が、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視し、複数のレーダー装置のいずれかが故障した場合は、故障したレーダー装置の監視エリアを、故障したレーダー装置に隣接する少なくとも1つのレーダー装置が、第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、いずれかのレーダー装置が故障した場合でも、そのレーダー装置の監視エリアの監視を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示す図である。
【
図4】レーダー装置の故障の検知時の第1制御例を説明する図である。
【
図5】レーダー装置の故障の検知時の第2制御例を説明する図である。
【
図6】レーダー装置の故障の検知時の第3制御例を説明する図である。
【
図7】レーダー装置の故障の検知時の第4制御例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係るレーダーシステムについて、図面を参照して説明する。
図2には、本発明の一実施形態に係るレーダーシステムの概要を示してある。本例のレーダーシステムは、監視対象となる路面(例えば、空港の滑走路)に向けて設置された複数のレーダー装置100と、制御室や監視室などに設置されたレーダー制御装置200及び表示装置300とを備えている。複数のレーダー装置100とレーダー制御装置200は、光ファイバーケーブル等により互いに接続されている。
図2では、監視対象となる路面の両側に、路面に並行するように設置された6台のレーダー装置100-1~100-6を示しているが、これらの台数は任意である。
【0017】
各レーダー装置100は、
図3に示すように、所定回り(例えば、反時計回り)に360度回転しながら、自身の監視エリアに対してレーダー信号を発射し、レーダー信号の反射波を受信する。レーダー装置100は、レーダー信号の反射波を信号処理して得られるレーダー検出結果を、レーダー制御装置200に送信する。レーダー監視装置200は、レーダー装置100から受信したレーダー検出結果に基づいて、監視対象となる路面上に存在する物体の検出情報(例えば、物体の位置、大きさ、形状など)を表示装置300に表示させる。
【0018】
また、各レーダー装置100は、レーダー制御装置200による制御の下で、レーダー信号の変調帯域を変化させる機能を有する。すなわち、レーダー装置100は、FMCW送信源101から第1の変調帯域で周波数変調されたレーダー信号が出力される第1の動作モードと、FMCW送信源101から第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域で周波数変調されたレーダー信号が出力される第2の動作モードとを有し、レーダー制御装置200からの制御信号に従って動作モードを切り替えることが可能である。第2の変調帯域のレーダー信号は第1の変調帯域のレーダー信号よりも遠くまで到達するため、第2の動作モードでは第1の動作モードよりも広いエリアを監視することが可能となる。
【0019】
変調帯域を狭めることで監視エリアが広がる原理について説明する。変調帯域幅と距離分解能は、下記の関係式で決定される。
(関係式) d=c/2B
ここで、dは距離分解能であり、cは光速であり、Bは変調帯域幅である。つまり、変調帯域幅Bが広いほど距離分解能dは細かくなり、変調帯域幅Bが狭いほど距離分解能dは粗くなる。
【0020】
信号処理の能力により取り込み可能なポイント数をNとすると、処理可能な最大距離は、距離分解能d×ポイント数Nとなる。したがって、距離分解能dが細かくなる(つまり、小さくなる)と、処理可能な最大距離は短くなる。逆に、距離分解能dが粗くなる(つまり、小さくなる)と、処理可能な最大距離は長くなる。例えば、変調帯域が8GHzの場合の距離分解能は0.01875mだが、変調帯域が4GHzの場合(8GHzの半分の場合)の距離分解能は0.0375mとなり、処理可能な最大距離は倍となる。したがって、変調帯域を狭めることで監視エリアが広がることになる。
【0021】
レーダー制御装置200は、複数のレーダー装置のいずれかが故障したことを検知する故障検知部210と、故障したレーダー装置の監視エリアの監視を他のレーダー装置に代替させる制御を行うレーダー制御部220とを有する。レーダー制御装置200は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェア資源を備えたコンピュータであり、所定のプログラムを実行することで故障検知部210やレーダー制御部220の動作を実現するように構成される。
【0022】
故障検知部210は、種々の手法により、レーダー装置の故障を検知することが可能である。一例として、故障検知部210は、レーダー装置から故障の発生を示す信号を受信した場合に、そのレーダー装置が故障したと判断することができる。別の例として、故障検知部210は、レーダー装置との通信が途切れた場合に、そのレーダー装置が故障したと判断することができる。
【0023】
レーダー制御部220は、故障検知部210によってレーダー装置の故障が検知された場合に、故障したレーダー装置に隣接するレーダー装置の動作を制御する制御信号を出力することで、故障したレーダー装置の監視エリアの監視を代替的に継続させる。例えば、レーダー装置100-2が故障した場合には、レーダー制御装置200は、レーダー装置100-2に隣接するレーダー装置100-1又はレーダー装置100-3の少なくとも一方の動作を制御する制御信号を出力して、レーダー装置100-2の監視エリアの監視を継続させる。
【0024】
ここで、レーダー制御部220は、種々の手法により、故障したレーダー装置に隣接するレーダー装置を特定することが可能である。一例として、レーダー制御部220は、複数のレーダー装置の各々とそのレーダー装置に隣接するレーダー装置とを対応付けたデータを予めメモリに記憶させておき、当該データに基づいて、故障したレーダー装置に隣接するレーダー装置を特定することができる。別の例として、レーダー制御部220は、複数のレーダー装置の各々の位置データ(緯度及び経度)を予めメモリに記憶させておき、当該データに基づいて、故障したレーダー装置から各レーダー装置までの距離を算出し、距離が小さい順に、故障したレーダー装置に隣接するレーダー装置として特定することができる。
【0025】
レーダー制御部220は、故障したレーダー装置に隣接するレーダー装置の監視エリアを部分的又は全体的に拡大するよう制御することで、故障したレーダー装置の監視を代替的に継続させる。以下、
図4~
図7を参照しつつ、具体的に説明する。
【0026】
図4には、レーダー装置100-2が故障した場合の第1制御例を示してある。第1制御例では、故障したレーダー装置100-2の右隣りにあるレーダー装置100-1の監視エリアを部分的に拡大することで、レーダー装置100-2の監視エリアをレーダー装置100-1にカバーさせる。本例では、レーダー信号の変調帯域を通常時よりも狭めることで、レーダー信号の到達距離を延ばす。すなわち、通常時の変調帯域を第1の変調帯域とすると、隣接するレーダー装置の故障時は、第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を発射させることで、監視エリアの拡大を実現する。
【0027】
図4の例では、レーダー装置100-1は、レーダー信号の掃引範囲のうち、故障したレーダー装置100-2の監視エリアが存在しない方向に対しては、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信し、故障したレーダー装置100-2の監視エリアが存在する方向に対しては、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信する。これにより、レーダー装置100-1は、故障したレーダー装置100-2の監視エリアまでレーダー信号を到達させることが可能となる。したがって、レーダー装置100-1は、自身の監視エリアだけでなく、レーダー装置100-2の監視エリアも監視することが可能となる。
【0028】
図5には、レーダー装置100-2が故障した場合の第2制御例を示してある。第2制御例では、故障したレーダー装置100-2の右隣りにあるレーダー装置100-1の監視エリアを全体的に拡大することで、レーダー装置100-2の監視エリアをカバーする。すなわち、レーダー装置100-1は、レーダー信号の掃引範囲の全てに対して、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信する。この場合にも、レーダー装置100-1は、故障したレーダー装置100-2の監視エリアまでレーダー信号を到達させることができるため、自身の監視エリアだけでなく、レーダー装置100-2の監視エリアも監視することが可能となる。
【0029】
図6には、レーダー装置100-2が故障した場合の第3制御例を示してある。第3制御例では、故障したレーダー装置100-2の左隣りにあるレーダー装置100-3の監視エリアを部分的に拡大することで、レーダー装置100-2の監視エリアをカバーする。具体的には、レーダー装置100-3は、レーダー信号の掃引範囲のうち、故障したレーダー装置100-2の監視エリアが存在しない方向に対しては、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信し、故障したレーダー装置100-2の監視エリアが存在する方向に対しては、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信する。これにより、レーダー装置100-3は、自身の監視エリアだけでなく、レーダー装置100-2の監視エリアも監視することが可能となる。
【0030】
図7には、レーダー装置100-2が故障した場合の第4制御例を示してある。第4制御例では、故障したレーダー装置100-2の左隣りにあるレーダー装置100-3の監視エリアを全体的に拡大することで、レーダー装置100-2の監視エリアをカバーする。すなわち、レーダー装置100-3は、レーダー信号の掃引範囲の全てに対して、第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を送信する。この場合にも、レーダー装置100-3は、故障したレーダー装置100-2の監視エリアまでレーダー信号を到達させることができるため、自身の監視エリアだけでなく、レーダー装置100-2の監視エリアも監視することが可能となる。
【0031】
ここで、
図4~
図7に示した第1制御例~第4制御例では、レーダー装置100-2が故障した場合に、レーダー装置100-2に隣接するレーダー装置100-1又はレーダー装置100-3の一方の監視エリアを拡大していたが、レーダー装置100-1及びレーダー装置100-3の両方の監視エリアを拡大してもよい。すなわち、故障したレーダー装置100-2の両隣のレーダー装置100-1及びレーダー装置100-3が、レーダー装置100-2の監視エリアを、交互に監視するようにしてもよい。また、レーダー装置100-1,100-3に代えて、又はレーダー装置100-1,100-3と共に、監視対象となる路面を挟んでレーダー装置100-2の正面にあるレーダー装置100-5が、レーダー装置100-2の監視エリアを監視するようにしてもよい。
【0032】
以上のように、本例のレーダーシステムは、通常時は、複数のレーダー装置100-1~100-6の各々が、自身の監視エリアを、第1の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視し、複数のレーダー装置100-1~100-6のいずれかが故障した場合は、故障したレーダー装置(例えば、レーダー装置100-2)の監視エリアを、故障したレーダー装置に隣接する少なくとも1つのレーダー装置(例えば、レーダー装置100-1)が、第1の変調帯域より狭い第2の変調帯域に周波数変調されたレーダー信号を用いて監視するように構成されている。
【0033】
したがって、いずれかのレーダー装置が故障した場合でも、そのレーダー装置の監視エリアの監視を継続することが可能となる。これにより、故障したレーダー装置の復旧前でも、レーダーシステムを継続的に運用することができる。また、空港の滑走路などでのレーダー装置の交換作業を早急に対応する必要がなくなり、作業計画を立てやすくなり、その結果、安全面やコスト面でも有利な効果が得られる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これら実施形態は例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、その他の様々な実施形態をとることが可能であると共に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等の種々の変形を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0035】
また、本発明は、上記の説明で挙げたような装置や、これら装置で構成されたシステムとして提供することが可能なだけでなく、これら装置により実行される方法、これら装置の機能をプロセッサにより実現させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、監視エリアに存在する物体をレーダー装置により検知するレーダーシステムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
100:レーダー装置、 101:FMCW送信源、 102:電力分配器、 103:送信電力増幅器、 104:送信アンテナ、 105:受信アンテナ、 106:受信電力増幅器、 107:混合器、 108:信号処理部、 200:レーダー制御装置、 210:故障検知部、 220:レーダー制御部、 300:表示装置