(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】搬送装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20231205BHJP
G03G 21/12 20060101ALI20231205BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G21/00 312
G03G21/12
G03G15/08 364
(21)【出願番号】P 2019054308
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 雄三
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-060777(JP,U)
【文献】特開2008-185856(JP,A)
【文献】実開昭62-116012(JP,U)
【文献】特開平09-272621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/10
G03G 21/12
G03G 15/08
B65G 33/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部が形成された空洞を有する筒部と、
前記空洞内に配置され
た搬送部材と、
前記搬送部材を回転駆動する駆動部とを備え、
前記搬送部材が、
連続体からなる軸を備えるとともに、
前記軸に直接に固定されて該軸の周りに広がり該軸とともに回転して周囲の被搬送物を軸方向に搬送する、該軸を周回する周回方向について一周以下の各第1の領域であって該周回方向について順次に位置がずれた各第1の領域にそれぞれ広がる複数の第1の羽根を、該軸が延びる方向についての第2の領域に備え、
前記軸が延びる方向についての該第2の領域に隣接する第3の領域に、該軸を螺旋状に、途中で分断されることなく複数回周回する長さの、該軸に固定された第2の羽根を備え、
前記第2の領域が、継手を介在させることなく可撓性を有
し、
前記空洞内に、前記複数の第1の羽根が形成された可撓性のある領域が前記屈曲部に配置され、
前記軸を中心とした回転により前記空洞内の被搬送物を搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記複数の第1の羽根が、前記軸の周りを一周以上に亘って螺旋状に周回する第3の羽根が前記周回方向一周当たり複数箇所のスリットで分断された形状の複数の第1の羽根であることを特徴とする請求項1に記載の搬送
装置。
【請求項3】
前記スリットが、前記第1の羽根の前記軸に垂直な方向についての全長に亘って延びるスリットであることを特徴とする請求項2に記載の搬送
装置。
【請求項4】
前記スリットが、前記周回方向一周の間の少なくとも3か所に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送
装置。
【請求項5】
前記複数の第1の羽根が、前記軸が延びる方向について互いに隣接する2枚の羽根の互いに近接した端面どうしが、該軸が延びる方向に順次に移動した位置にある複数の羽根であることを特徴とする請求項1に記載の搬送
装置。
【請求項6】
前記複数の第1の羽根が、前記軸が延びる方向に見たときに該軸が延びる方向について隣接する2枚の第1の羽根が重なる領域を有する、複数の第1の羽根であることを特徴とする請求項5に記載の搬送
装置。
【請求項7】
トナー像を形成する像形成部と、
前記被搬送物としてのトナーを搬送する請求項
1から6のうちのいずれか1項に記載の搬送装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記像形成部が、
トナー像を保持し該トナー像を被転写体に転写する像保持部と、
前記像保持部の転写後の領域に残存するトナーを該像保持部から取り除く清掃部とを備え、さらに
当該画像形成装置が、前記像保持部から取り除かれたトナーを貯留しておく貯留部を備え、
前記搬送装置が、前記清掃部から前記貯留部にトナーを運ぶ装置であることを特徴とする請求項
7に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転により粉体を搬送する搬送部材を粉体搬送用の筒内に配置して回転させる構造の搬送装置が知られている。例えば、粉体としてのトナーを用いて画像を形成する、いわゆる電子写真方式の画像形成装置では、廃トナーを廃トナータンクに搬送する搬送装置として、上記の構造の搬送装置が備えられている。
【0003】
ここで、上記の筒は、直線状に延びているとは限らず、搬送経路の途中に屈曲部が形成されている場合がある。それに対応して、屈曲部を有する筒内に配置される、可撓性のある搬送部材が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、コイルスプリング形状の搬送部材であって、筒の屈曲部に配置される部分のスパイラルピッチを筒の直線部に配置される部分のスパイラルピッチよりも小さくした搬送部材が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、軸とそのまわりのコイル形状部分とを樹脂材料を用いて一体成形により形成した第一搬送部分と、樹脂を用いてコイル状に成形して搬送経路の屈曲部分に配置する第二搬送部分とを備えた、エラストマー製の搬送部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-256740号公報
【文献】特開2007-286322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、コイルスプリング形状の搬送部材よりも一般的に搬送能力が高い搬送部材である、軸と、その軸の周りに広がり軸とともに回転して周囲の粉体を軸方向に搬送する螺旋形状の羽根とを備えた搬送部材を、屈曲部が形成された空洞を有する筒部内に配置し回転させて空洞内の粉体を搬送することを考える。この場合、搬送部材を、例えばエラストマー等の可撓性のある材料で製造することが必須である。ただし、搬送部材は、常に回転し続ける訳ではなく、例えば装置の稼働停止時等には回転を停止する。この停止が長引くと、例えばエラストマー等の可撓性のある材料を使っていても、搬送部材がその停止しているときの形状のまま固まり気味となる。このため、次に稼働を開始して搬送部材を回転させた時に、搬送部材の、屈曲部に配置されて曲がった形状のまま固まった部分の先の部分が振り回され筒部の内壁に衝突して異音が発生するおそれがある。
【0008】
本発明は、長尺の螺旋羽根を備えて屈曲部にもその長尺の螺旋羽根が配置される搬送部材と比べ可撓性の高い形状を有する搬送部材を備えて被搬送物を搬送する搬送装置、およびその搬送装置でトナーを搬送する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、
曲部が形成された空洞を有する筒部と、
空洞内に配置された搬送部材と、
搬送部材を回転駆動する駆動部とを備え、
上記搬送部材が、
連続体からなる軸を備えるとともに、
その軸に直接に固定されてその軸の周りに広がその該軸とともに回転して周囲の被搬送物を軸方向に搬送する、軸を周回する周回方向について一周以下の各第1の領域であって周回方向について順次に位置がずれた各第1の領域にそれぞれ広がる複数の第1の羽根を、軸が延びる方向についての第2の領域に備え、
軸が延びる方向についての第2の領域に隣接する第3の領域に、軸を螺旋状に、途中で分断されることなく複数回周回する長さの、軸に固定された第2の羽根を備え、
第2の領域が、継手を介在させることなく可撓性を有し、
上記空洞内に、上記複数の第1の羽根が形成された可撓性のある領域が上記屈曲部に配置され、
軸を中心とした回転により上記空洞内の被搬送物を搬送することを特徴とする搬送装置である。
【0010】
請求項2は、前記複数の羽根が、周回方向複数個所において、前記軸の周りを螺旋状に周回する螺旋羽根が、該螺旋羽根の該軸から離れる向きの先端から該軸に向かう、周回方向複数箇所のスリットで分断された形状の複数の羽根であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置である。
【0011】
請求項3は、前記スリットが、前記先端から前記軸の表面にまで至るスリットであることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置である。
【0012】
請求項4は、前記スリットが、前記螺旋羽根の周回方向一周の間の少なくとも3か所に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送装置である。
【0013】
請求項5は、前記複数の羽根が、互いに隣接する2枚の羽根の互いに近接した端面どうしが軸方向に順次に移動した位置にある複数の羽根であることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置である。
【0014】
請求項6は、前記複数の羽根が、軸方向に見たときに隣接する2枚の羽根の一部領域どうしが重なる広がりを有する複数の羽根であることを特徴とする請求項5に記載の搬送装置である。
【0016】
請求項7は、
トナー像を形成する像形成部と、
前記被搬送物としてのトナーを搬送する請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の搬送装置とを備えたことを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
請求項8は、
前記像形成部が、
トナー像を保持し該トナー像を被転写体に転写する像保持部と、
前記像保持部の転写後の領域に残存するトナーを該像保持部から取り除く清掃部とを備え、さらに
当該画像形成装置が、前記像保持部から取り除かれたトナーを貯留しておく貯留部を備え、
前記搬送装置が、前記清掃部から前記貯留部にトナーを運ぶ装置であることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の搬送装置、並びに、請求項7および請求項8の画像形成装置によれば、屈曲部に長尺の螺旋羽根が配置される搬送部材と比べ搬送部材の可撓性が高い。
【0019】
請求項2の搬送装置によれば、従来の長尺の螺旋羽根を備えた搬送部材製造用の型の、螺旋羽根のスリットを形成するための僅かな加工で済む。
【0020】
請求項3の搬送装置によれば、螺旋羽根の先端から軸に向かう途中までのスリットが形成されている場合と比べ、可撓性が増す。
【0021】
請求項4の搬送装置によれば、前記スリットが、前記螺旋羽根の周回方向一周の間の2か所に形成されている場合と比べ、可撓性が増す。
【0022】
請求項5の搬送装置によれば、互いに隣接する2枚の羽根の互いに近接した端面どうしが軸方向に順次に移動した位置にはない場合と比べ、搬送能力が高い。
【0023】
請求項6の搬送装置によれば、軸方向に見たときに隣接する2枚の羽根の一部領域どうしが重ならない場合と比べ、搬送能力が高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタの概略構成図である。
【
図2】クリーナから廃トナータンクに至る、廃トナーの搬送経路の模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の搬送部材の斜視図(A)と、その搬送部材の軸を一直線状に伸ばして、
図3(A)の領域Dの部分を軸方向に見たときの模式図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の搬送部材の斜視図(A)と、その部分拡大図(B)である。
【
図5】
図4の領域Dの部分を軸方向に見たときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の画像形成装置の一実施形態であるプリンタの概略構成図である。このプリンタには、本発明の一実施形態としての搬送装置および本発明の一実施形態としての搬送部材が組み込まれている。
【0027】
図1に示すプリンタ10は、いわゆる電子写真方式のモノクロプリンタであり、このプリンタ10とは別の装置、例えばパーソナルコンピュータ等で作成された、画像を表す画像信号が、不図示の信号ケーブル等を介してこのプリンタ10に入力される。プリンタ10には、このプリンタ10内の各構成要素の動きを制御する制御部11が備えられており、画像信号はこの制御部11に入力される。そして、プリンタ10では、この制御部11の制御の下で画像信号に基づく画像の形成が行われる。
【0028】
この制御部11は、プログラムを実行するCPUやメモリなどからなる情報処理装置としての機能を備えている。そして、このプリンタ10は、制御部11内での制御プログラムの実行により、画像形成のための動作が制御される。
【0029】
プリンタ10の下部には用紙トレイ21が備えられていて、用紙トレイ21には、用紙Pが積み重なった状態に収容されている。用紙トレイ21は、用紙Pの補給のために、引出し自在に構成されている。用紙トレイ21に収容される用紙Pのサイズはユーザによって変更される場合があり、複数の用紙トレイ21に異なるサイズや厚みの用紙Pが収容される場合もある。そして、実際に用紙トレイ21に収容されている用紙Pのサイズや厚みを制御部11が認識して各部の制御に用いる。図示は省略するが、このプリンタ10には、この認識のために必要となるセンサなどによる自動認識の機構、あるいはユーザの入力などによる認識の機構が組み込まれている。
【0030】
用紙トレイ21内の用紙Pは、ピックアップローラ22およびさばきローラ23により待機ローラ24へと送られる。待機ローラ24に到達した用紙Pは、搬送のタイミングが調整されてさらに搬送される。
【0031】
このプリンタ10には、矢印Aで示す向きに回転する円筒状の像保持体12が備えられ、その像保持体12の周囲に、帯電器13、露光器14、現像器15、転写器16、およびクリーナ17が配備されている。この像保持体12は、本発明にいう像保持部の一例に相当する。また、この像保持体12とその周囲の、帯電器13、露光器14、現像器15、転写器16、およびクリーナ17を合わせた構成が、本発明にいう像形成部の一例に相当する。
【0032】
帯電器13は、像保持体12の表面を帯電させ、露光器14は、制御部11から送られてくる画像信号に従って像保持体12の表面を露光して静電潜像を形成する。現像器15は、像保持体12上の静電潜像をトナーで現像する。そして、この現像により、像保持体12上にトナー像が形成される。
【0033】
このプリンタ10には、トナーが収容されたトナーボトル19が備えられており、現像器15によりトナーが消費されると、トナーボトル19から現像器15にトナーが補給される。
【0034】
ここで、待機ローラ24は、像保持体12上のトナー像が、転写器16に対面した位置に達するタイミングに合わせてその位置に到達するように用紙Pを送り出す。そして、像保持体12上に形成されたトナー像は、転写器16の作用により、その送り出されてきた用紙P上に転写される。これにより、用紙P上に未定着トナー像が形成される。
【0035】
転写後の像保持体12上の残存トナーは、クリーナ17により像保持体12上から除去される。ここで、このクリーナ17は、像保持体12に接して像保持体12上の残存トナーを掻き取るブレード31と、そのブレード31を支持するとともに掻き取った残存トナーを収容する収容部32と、その収容部32に収容された残存トナーを
図1の紙面に垂直な向きに運ぶ搬送部材33とを備えている。このクリーナ17は、本発明にいう清掃部の一例に相当する。また、この搬送部材33は、本発明の搬送部材の一例に相当する。詳細は後述する。
【0036】
この搬送部材33で搬送された残存トナーは、廃トナータンク30に収容される。この廃トナータンクは、本発明にいう貯留部の一例に相当する。なお、この残存トナーは、廃トナータン30に廃棄されるトナーであることから、これ以降、廃トナーと称する。
【0037】
転写器16の作用により未定着トナー像の転写を受けた用紙Pは、さらに矢印B方向に進み、定着器18を通過することにより加熱および加圧され、その結果、未定着トナー像が定着され、用紙P上には定着トナー像からなる画像が形成される。
【0038】
定着器18を通過した用紙Pは、矢印C方向に進み、さらに、排出ローラ20によって排紙トレイ25の上に排出される。
【0039】
図2は、クリーナから廃トナータンクに至る、廃トナーの搬送経路の模式図である。実際の搬送経路は、この
図2ほど単純ではないが、ここでは、単純化して示している。
【0040】
この
図2には、クリーナ17の収容部32と、その収容部32内の搬送部材33が示されている。この搬送部材33は、モータ39の駆動により回転して廃トナーを搬送する。クリーナ17の収容部32と廃トナータンク30との間は、搬送筒35でつながっている。そして、クリーナ17の収容部32内の搬送部材33は、搬送筒35内にも延びている。ここで、クリーナ17の収容部32と搬送筒35との接続部36は屈曲しており、このため、搬送部材33は、その接続部36では弧を描くように曲がっている。すなわち、この搬送部材33は、屈曲した接続部36では曲がったまま回転する。このため、搬送部材33には、十分な搬送能力に加え、曲がったまま回転することができる十分な可撓性が要求される。この要求を満たすため、この搬送部材33は、エラストマー(elastomer)を材料としている。ここで、収容部32と搬送筒35を合わせたものが、本発明にいう筒部の一例に相当し、接続部36が、本発明にいう屈曲部の一例に相当する。また、モータ39は本発明にいう駆動部の一例に相当する。
【0041】
ここで、本発明の実施形態の搬送部材33に説明に進む前に、比較例としての搬送部材について説明する。ただし、分かり易さのため、比較例の搬送部材についても実施形態の搬送部材33と同じ符号を用いて説明する。比較例としての搬送部材33は、図示は省略するが、断面円形の軸と、その軸の周りを螺旋状に多数回取り巻いた螺旋羽根とを有し、接続部36にもその螺旋羽根が延びている構成を有する。
【0042】
この搬送部材33は、回転し続けているときはほぼ十分な可撓性が維持されるが、搬送部材は、常に回転し続ける訳ではなく、例えば装置の稼働停止時等には回転を停止する。この停止が長引くと、可撓性のあるエラストマー製であっても、搬送部材がその停止しているときの形状のまま固まり気味となる、いわゆる「曲がり癖」がついてしまう。特に、高温環境下で長時間放置された時に顕著になる場合がある。
このため、次に稼働を開始して搬送部材33を回転させた時に、搬送部材33の、屈曲した接続部36に配置されて曲がった形状のまま固まった部分の先の部分が振り回され搬送筒35の内壁に衝突して異音が発生するおそれがある。
【0043】
以下に説明する実施形態としての搬送部材33は、上記の比較例の搬送部材と比べ、曲がった部分の可撓性をさらに高めた搬送部材である。
【0044】
図3は、本発明の第1実施形態の搬送部材の斜視図(A)と、その搬送部材の軸を一直線状に伸ばして、
図3(A)の領域Dの部分を軸方向に見たときの模式図である。
【0045】
この搬送部材33は、エラストマーで一体成形されたものあって、断面円形の軸331と、その軸331の周りを螺旋状に取り巻く螺旋羽根332とを有する。ただし、この搬送部材33の領域Dの部分に関しては、周回方向複数箇所(ここに示す例では周回方向4か所)において、その螺旋羽根332が、軸331から離れる向きの螺旋羽根332の先端から軸331に向かって切り込まれた形状のスリット333により分断され、一周につき複数(ここに示す例では一周につき4つ)の短い羽根332a,332b,332c,332dが形成されている。これらの一周につき4つの羽根332a,332b,332c,332dは、軸方向に見た
図3(B)では、一番手前側の4枚の羽根332a,332b,332c,332dしか見えないが、領域Dにわたって繰り返し出現している。ここでスリットとは、羽根同士の間に空間を有していればよい。スリットの形成方法は、元々接続されていた羽根を切断や切り欠いて形成するものでもよく、羽根の成型時に元々空間を有しているように成型することで形成してもよい。
【0046】
この領域Dの部分を、
図2示した接続部36に配置する。この領域Dの部分は、その部分に長尺の螺旋羽根332が形成されていた場合における曲げに対するしなやかさよりもずっとしなやかに曲がり、したがって、振り回されて搬送筒35の内壁に衝突し異音が発生するという不具合が抑制される。
【0047】
なお、この
図3に示す例では、螺旋羽根332が一周につき4つの羽根332a,332b,332c,332dに分断されているが、一周につきいくつに分断するかは任意である。ただし、しなやかさを確保するために3つ以上に分断することが好ましい。
【0048】
また、この
図3に示す搬送部材33は、領域Dの部分については、軸331も細く形成されている。これにより、曲げに対するしなやかさをさらに増している。ただし、これによって領域Dの部分が強度的に弱すぎることとなるときは、スリット333は、螺旋羽根332の先端から軸331の表面にまで至るスリットではなく、
図3(B)に点線で示したように、一周につき4つの羽根332a,332b,332c,332dのうちの隣接する羽根どうしを、軸331の近傍の部分331aで繋げたままとしてもよい。
【0049】
図4は、本発明の第2実施形態の搬送部材の斜視図(A)と、その部分拡大図(B)である。
【0050】
また、
図5は、
図4の領域Dの部分を軸方向に見たときの模式図である。
この第2実施形態の搬送部材33も、
図3に示した第1実施形態の搬送部材33と同じく、エラストマーで一体成形されたものあって、断面円形の軸331と、その軸331の周りを螺旋状に取り巻く螺旋羽根332とを有する。ただし、この搬送部材33の領域Dの部分には、単純な螺旋羽根332ではなく、
図3に示した第1実施形態と同様、
図4(B)に示すように、一周につき4枚の羽根332a,332b,332c,332dが形成されている。ただし、
図3の第1実施形態とは異なり、これら一周につき4枚の羽根332a,332b,332c,332dは、互いに隣接する2枚の羽根の互いに近接した端面(例えば、
図5(A),(B),(C)のそれぞれに示す、羽根332aの端面332a_1と羽根332bの端面332b_1)どうしが軸方向に順次に移動した位置にある。すなわち、
図3に示した第1実施形態における一周につき4つの羽根332a,332b,332c,332dは、長尺の螺旋羽根332をスリット333で分断しただけの形状の羽根であるが、この第2実施形態の羽根332a,332b,332c,332dは、その分断された羽根を軸方向に順に移動させた形状となっている。
【0051】
図5(A)は、
図3に示した第1実施形態の羽根332a,332b,332c,332dをそのまま軸331方向に位置をずらした形状の羽根となっている。このため、この
図5(A)には、軸方向に見たときに、
図3に示した第1実施形態におけるスリット333に相当する隙間334が現れている。
【0052】
図5(B)は、軸方向に見たときに
図5(A)に示した隙間334が埋まるまで、4枚の羽根332a,332b,332c,332dを少しずつ広げた形状の羽根となっている。
図5(B)の場合は、4枚の羽根332a,332b,332c,332dを少しずつ広げたことにより、
図5(A)と比べ、廃トナーの搬送能力が増している。
【0053】
図5(C)は、4枚の羽根332a,332b,332c,332dが、軸方向に見たときに隣接する2枚の羽根の一部領域どうしが重なる広がりを有する羽根となっている。この形状の羽根の場合、
図5(B)の場合よりもさらに搬送能力が増している。
【0054】
なお、
図3に示した第1実施形態および
図4に示した第2実施形態の搬送部材33は、いずれも、領域Dの部分のみ短い羽根332a,332b,332c,332dとし、その両側は螺旋羽根332のままとしたが、例えばその全長等、直線状に延びる部分も含めて、単純な螺旋羽根332ではなく、短い羽根332a,332b,332c,332dとしてもよい。
【0055】
また、ここでは、廃トナーを廃トナータンク30に搬送する搬送部材を例に挙げて説明したが、本発明の搬送部材は、廃トナーを廃トナータンク30に搬送する搬送部材に限られるものではない。例えば、本発明の搬送部材は、トナーボトル19から現像器15にトナーを運ぶ搬送部材等であってもよい。
【0056】
さらに、本発明の搬送部材はトナーを搬送する搬送部材に限られるものではなく、様々な粉体を搬送する搬送部材にも適用することができる。さらには、本発明の搬送部材は、粉体を搬送する搬送部材に限られるものではなく、例えば砂や砂利、あるいは生コンクリートなどを搬送する搬送部材にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 プリンタ
11 制御部
12 像保持体
13 帯電器
14 露光器
15 現像器
16 転写器
17 クリーナ
18 定着器
30 廃トナータンク
31 ブレード
32 収容部
33 搬送部材
35 搬送筒
39 モータ
331 軸
332 螺旋羽根
332a,332b,332c,332d 羽根
332a_1,332b_1 羽根の端面
333 スリット
334 隙間