(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20231205BHJP
B60K 17/04 20060101ALI20231205BHJP
B60K 17/16 20060101ALI20231205BHJP
B60K 17/12 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K17/04 N
B60K17/16 E
B60K17/12
(21)【出願番号】P 2019229733
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】竹田 昇悟
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-189171(JP,A)
【文献】特開2018-016126(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069774(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/148410(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 17/04
B60K 17/16
B60K 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラダーフレームを備える車両に駆動力を発生するモータと、前記モータから伝達される前記駆動力を変速する変速機構と、前記変速機構から伝達される前記駆動力を差動して前記車両の駆動輪に伝達する差動部と、を含む駆動ユニットを備える車両用駆動装置であって、
前記駆動ユニットの少なくとも一部を収容する駆動ユニットハウジングと、
前記駆動ユニットハウジングのモータ側端部領域に設けられる2つの連結部により前記駆動ユニットハウジングと前記ラダーフレームとを連結するモータ側支持部と、
前記駆動ユニットハウジングの差動部側端部領域
に設けられる2つの連結部により前記駆動ユニットハウジングと前記ラダーフレームとを連結する差動部側支持部と、を含み、
前記モータ側支持部の2つの連結部は、前記差動部側支持部よりも車両幅方向において外側に配置される車両用駆動装置。
【請求項2】
前記モータ側支持部の2つの連結部を結ぶ仮想線は、車両幅方向に対して平行である請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記モータ側支持部の2つの連結部と前記差動部側支持部の2つの連結部は、前記モータ側支持部の2つの連結部と前記差動部側支持部の2つの連結部を結ぶ仮想線が車両上方 からの平面視において前記モータ側支持部の2つの連結部間を下底とする車幅方向において線対称な台形となるように配置される
請求項1又は2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記モータ側支持部は、前記差動部側支持部よりも車両高方向において下方に位置する請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記モータ側支持部は、前記差動部側支持部よりも車両高方向において上方に位置する請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、トラック等の商用車の分野においても内燃機関を備えず、電動モータのみによって駆動する電動トラックの開発が行われている。このような電動車両の駆動ユニットとして、例えば、モータと、複数のギアからなる減速機構等の動力伝達機構とを備え、駆動輪が連結するディファレンシャルギアにモータの駆動力を伝達することができるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような駆動ユニットを商用車等の電動車両に搭載する場合、当該駆動ユニットは、ラダーフレームやクロスメンバにより支持される。
【0005】
しかしながら、電動トラックの場合、乗用車と比較してモータで発生する駆動トルクが大きいことから、結果としてモータ駆動時に駆動ユニットに生じるトルク反力が大きくなる。このため、ブラケット等の車両用駆動装置により高い信頼性が要求されるため、支持装置が大型化・高重量化する虞がある。
【0006】
また、電動トラックの場合、乗用車と比較して駆動ユニット自体が大型化・高重量化していることから、車両がローリングまたはピッチングする場合において駆動ユニットに発生するモーメントも大きくなる。故に、このような車両用駆動装置においては、車両ロール時またはピッチ時における駆動ユニット安定性を向上させる必要がある。
【0007】
本発明はこのような問題の少なくとも一部を解決するためになされたもので、その目的とするところは、支持装置の大型化・高重量化を抑制しつつ、車両ロール時等における駆動ユニット安定性を向上させることができる車両用駆動装置を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本適用例に係る車両用駆動装置は、ラダーフレームを備える車両に駆動力を発生するモータと、前記モータから伝達される前記駆動力を変速する変速機構と、前記変速機構から伝達される前記駆動力を差動して前記車両の駆動輪に伝達する差動部と、を含む駆動ユニットを備える車両用駆動装置であって、前記駆動ユニットの少なくとも一部を収容する駆動ユニットハウジングと、前記駆動ユニットハウジングのモータ側端部領域に設けられる2つの連結部により前記駆動ユニットハウジングと前記ラダーフレームとを連結するモータ側支持部と、前記駆動ユニットハウジングの差動部側端部領域おいて、前記駆動ユニットハウジングと前記ラダーフレームとを連結する差動部側支持部と、を含み、前記モータ側支持部の2つの連結部は、前記差動部側支持部よりも車両幅方向において外側に配置される。
【0009】
上記適用例に係る車両用駆動装置においては、モータ側支持部の2つの連結部は、差動部側支持部である連結部よりも車両幅方向においてそれぞれ外側に配置される構成を採用することができる。当該構成をとらない車両用駆動装置に比較して、2つの連結部は、駆動ユニットの重心であるローリングの中心から遠くに位置することから、連結部が受ける駆動ユニットのローリングに対するモーメントを小さくすることができる。そのため、連結部の剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部の大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレームに対して駆動ユニットを支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニットの安定性を向上させることができる。
【0010】
(2)また、本適用例に係る車両用駆動装置は、上記(1)において、前記モータ側支持部の2つの連結部を結ぶ仮想線は、車両幅方向に対して平行であってもよい。すなわち、モータ側支持部の2つの連結部は、車両前後方向に対して同じ位置に位置することとなり、2つの連結部にかかる力を均等となる。そのため、2つの連結部の剛性要求は同等となり、連結部の大型化・高重量化を抑制することができる。
【0011】
(3)また、本適用例に係る車両用駆動装置は、上記(1)又は(2)において、前記差動部側支持部は、前記駆動ユニットハウジングの前記差動部側端部領域に設けられる2つの連結部により前記駆動ユニットハウジングと前記ラダーフレームとを連結してもよい。差動部側支持部を2つの連結部で構成することにより、1つの連結部で構成する場合に比較して応力集中をさけ、連結部の剛性要求を低減させることができるため、連結部の大型化・高重量化を抑制することができる。
【0012】
(4)また、本適用例に係る車両用駆動装置は、上記(3)において、前記モータ側支持部の2つの連結部と前記差動部側支持部の2つの連結部は、前記モータ側支持部の2つの連結部と前記差動部側支持部の2つの連結部を結ぶ仮想線が車両上方からの平面視において前記モータ側支持部の2つの連結部間を下底とする車幅方向において線対称な台形となるように配置されてもよい。
このように、車両上方からの平面視において、モータ側支持部の連結部、及び差動部側支持部の連結部の4点の連結部からなる仮想線が台形を構成するように、当該4点の連結部を配置することで、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。具体的には、車両と駆動装置は互いに独立した質量体であることから、車両全体としてのロール性能を向上させるためには、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心をできる限り一致させることが望ましい。よって、前記モータ側支持部の2つの連結部と前記差動部側支持部の2つの連結部が、車幅方向において線対称な台形となるように配置されることで、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心を一致させやすくなり、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。
【0013】
(5)また、本適用例に係る車両用駆動装置は、上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記モータ側支持部は、前記差動部側支持部よりも車両高方向において下方に位置してもよい。このような構成では、モータ側支持部と差動部側支持部を結ぶ軸は、駆動ユニットハウジングの内部を通過する。そのため、モータ側支持部の連結部の剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部の大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレームに対して駆動ユニットを支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニットの安定性を向上させることができる。
【0014】
(6)また、本適用例に係る車両用駆動装置は、上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記モータ側支持部は、前記差動部側支持部よりも車両高方向において上方に位置してもよい。このような構成では、モータ側支持部と差動部側支持部を結ぶ軸は、駆動ユニットハウジングの内部を通過する。そのため、モータ側支持部の連結部の剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部の大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレームに対して駆動ユニットを支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニットの安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一の実施例に係る車両用駆動装置の概略を車両側方から示す図である。
【
図2】
図1の車両用駆動装置を車両前方から示す図である。
【
図3】
図1の車両用駆動装置を車両上方から示す図である。
【
図4】本発明の比較例に係る車両用駆動装置の概略を車両側方から示す図である。
【
図5】
図4の車両用駆動装置を車両前方から示す図である。
【
図6】
図4の車両用駆動装置を車両上方から示す図である。
【
図7】本発明の他の実施例に係る車両用駆動装置の概略を車両側方から示す図である。
【
図8】
図7の車両用駆動装置を車両前方から示す図である。
【
図9】
図7の車両用駆動装置を車両上方から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつその構成について詳細に説明する。
【0017】
<実施例の構成>
以下、本発明の一の実施例に係る車両用駆動装置1の概略を
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本発明の一の実施例に係る車両用駆動装置1の概略を車両側方から示す図である。なお、
図1は、特徴部分の説明上、後述する一対のサイドレール4L,4Rを側視したときに奥側のサイドレール4Rのみが見える視点で示している。また、
図2は、車両用駆動装置1を車両前方から示す図である。
図3は、車両用駆動装置1を車両上方から示す図である。
【0018】
車両用駆動装置1が適用される車両は、例えば、走行用駆動源としてモータを備える電動トラックであって、ラダーフレーム2上に図示しないキャブ及び荷台等が搭載される。ラダーフレーム2は、車両前後方向Yに延在した左右一対のサイドレール4L、4Rと、サイドレール4L、4R間に配設される複数のクロスメンバ6F、6Rと、を備える。
【0019】
一対のサイドレール4L、4Rは、車両幅方向Xに所定間隔を有して設けられる。クロスメンバ6F、6Rは、車両幅方向Xに延在し、両端が各サイドレール4L、4Rに接続され、車両前後方向Yに所定間隔を有するように複数設けられている。そして、ラダーフレーム2の下方には車両の駆動ユニット8が設けられる。
【0020】
クロスメンバ6の形状は、後述される連結部28a、28b、29a、29bを介して駆動ユニット8を支持できる限り、特に限定されない。
【0021】
駆動ユニット8は、車両の走行用駆動源であるモータ10と、モータ10に接続されるギアボックス12に収容される変速機構20と、変速機構20に接続される差動装置(差動部)14とを備える。モータ10は、車両に搭載された図示しないバッテリから供給される電力によって駆動することにより駆動力を発生する。
【0022】
差動装置14には一対のドライブシャフト16L,16Rが連結されている。変速機構20は複数のギア20a、20b等を有する。モータ10の回転軸18は、変速機構20の入力側のギア20aに連結されている。
【0023】
変速機構20は、モータ10側から入力される高回転低トルクを変速することで、例えば低回転高トルクに変換して出力可能である。差動装置14は、ディファレンシャルギア24を備え、変速機構20の出力側のギア20bがディファレンシャルギア24に接続することにより、変速機構20で減速された出力が差動装置14に入力される。
【0024】
このように、モータ10の駆動力は、変速機構20を介して差動装置14に伝達される。差動装置14は、車両の走行状態に応じて、ギアボックス12側から入力される動力を、所定比率で左右一対の出力軸を介して左右一対のドライブシャフト16L,16Rひいては図示しない車輪に伝達する。これにより、車両の走行が実現される。
【0025】
ここで、モータ10、変速機構20、及び差動装置14は、駆動ユニット8を構成する駆動ユニットハウジング25内に収容され、駆動ユニット8として一体的に構成されている。駆動ユニットハウジング25は、ラダーフレーム2を構成するクロスメンバ6Fと連結するためのモータ側支持部28を構成する2つの連結部28a、28bによりモータ側端部領域が支持される。詳細には、クロスメンバ6Fは、クロスメンバ6Fから車両高方向Zの下方に延在する支持部材7L,7Rが接続されて構成され、支持部材7L,7Rと連結部28a、28bが連結される構成である。また、駆動ユニットハウジング25は、ラダーフレーム2を構成するクロスメンバ6Rと連結するための差動部側支持部29を構成する2つの連結部29a、29bにより差動部側端部領域が支持される。このようにして車両用駆動装置1は、駆動ユニットハウジング25が、連結部28a、28b及び連結部29a、29bクロスメンバ6F、6Rと連結されることにより、ラダーフレーム2の車両高方向Zの下方に支持される。なお、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bは、車両前後方向Yに対して同じ位置に位置する。すなわち、2つの連結部28a、28bを結ぶ仮想線(
図3の一点鎖線)は、車両幅方向Xに対して平行である。また、差動部側支持部29の2つの連結部29a、29bは、車両前後方向Yに対して同じ位置に位置する。すなわち、2つの連結部29a、29bを結ぶ仮想線(
図3の一点鎖線)は、車両幅方向Xに対して平行である。なお、
図3において、点線で示す連結部28a’、28b’は、後述する比較例に係る連結部を示している。
【0026】
モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bは、差動部側支持部29である連結部29a、29bよりも車両幅方向Xにおいてそれぞれ外側に配置されるように構成される。
図3で示すように、連結部28aと連結部29aを比較したとき、連結部28aは車両の中心、すなわちサイドレール4Lと4Rの中心から見て、連結部29aよりもサイドレール4L側、すなわち車両幅方向Xにおける外側に配置される。連結部28bと連結部29bを比較したとき、連結部28bは車両の中心、すなわちサイドレール4Lと4Rの中心から見て、連結部29aよりもサイドレール4R側、すなわち車両幅方向Xにおける外側に配置される。そのため、車両上方からの平面視において、連結部28a、28b及び連結部29a、29bをそれぞれ結ぶ仮想線(
図3の一点鎖線)は、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28b間を下底とし、差動部側支持部29の2つの連結部29a、29b間を上底とする台形となる。
【0027】
また、モータ側支持部28の連結部28a、28bは、
図2で示すように差動部側支持部29の連結部28a、28bよりも車両高方向Zにおいて下方に位置するように構成される。
【0028】
<比較例の構成>
次に、本発明の比較例に係る車両用駆動装置1’の概略を
図4から
図6を用いて説明する。なお、先に説明した実施例と同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。また、先に説明した実施例と機能等が対応する構成には、先に説明した実施例の符号に「’」を付して示している。
図4は、本発明の比較例に係る車両用駆動装置1’の概略を車両側方から示す図である。なお、
図4は、特徴部分の説明上、後述する一対のサイドレール4L’,4R’を側視したときに奥側のサイドレール4R’のみが見える視点で示している。また、
図5は、車両用駆動装置1’を車両前方から示す図である。
図6は、車両用駆動装置1’を車両上方から示す図である。
【0029】
駆動ユニットハウジング25’は、ラダーフレーム2’を構成するクロスメンバ6F’と連結するためのモータ側支持部28’を構成する2つの連結部28a’、28b’によりモータ側端部領域が支持される。また、駆動ユニットハウジング25’は、ラダーフレーム2’を構成するクロスメンバ6R’と連結するための差動部側支持部29’を構成する2つの連結部29a’、29b’により差動部側端部領域が支持される。このようにして、車両用駆動装置1は、駆動ユニットハウジング25’が、連結部28a’、28b’及び連結部29a’、29b’クロスメンバ6F’、6R’と連結されることにより、ラダーフレーム2’に支持される。
【0030】
モータ側支持部28’の2つの連結部28a’、28b’は、差動部側支持部29’である連結部29a’、29b’と車両幅方向Xにおいてそれぞれ同じ位置に配置されるように構成される。そのため、
図6の車両上方からの平面視において、連結部28a’、28b’及び連結部29a’、29b’をそれぞれ結ぶ仮想線(
図6の一点鎖線)は、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28b間を底辺とし、差動部側支持部29の2つの連結部29a、29b間を上辺とする長方形となる。
【0031】
また、モータ側支持部28の連結部28a、28bは、
図5で示すように差動部側支持部29の連結部28a、28bと車両高方向Zにおいて同じ高さに位置するように構成される。
【0032】
<実施例と比較例の対比>
次に、先に説明した実施例と比較例の対比について説明する。
【0033】
車両走行時において、車両がローリングやピッチングする場合において、重量物である駆動ユニット8に発生するモーメントも大きくなる。そのため、駆動ユニット8に発生するモーメントは、連結部28a、28b(比較例の連結部28a’、28b’)及び連結部29a、29b(比較例の連結部29a’、29b’)を介してラダーフレーム2(比較例のラダーフレーム2’)に入力される。駆動ユニット8のローリングやピッチングと、車両のローリングやピッチングは、走行安定性の観点から同位相であることが望ましい。しかし、連結部28a、28b(比較例の連結部28a’、28b’)及び連結部29a、29b(比較例の連結部29a’、29b’)の取付剛性が低い場合、車両と駆動ユニット8のローリングやピッチングの位相がずれ、走行安定性を損なう。なお、ローリングとは、車両前後方向Yの軸を中心にして車両が左右に揺動している状態のことをいい、ピッチングとは、車両幅方向Xの軸を中心にして車両が前後に揺動している状態のことをいう。
【0034】
ここで、実施例の構成では、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bは、差動部側支持部29である連結部29a、29bよりも車両幅方向Xにおいてそれぞれ外側に配置されるように構成される。それに対して、比較例の構成では、モータ側支持部28’の2つの連結部28a’、28b’は、差動部側支持部29’である連結部29a’、29b’と車両幅方向Xにおいてそれぞれ同じ位置に配置されるように構成される。
【0035】
ここで、車両のローリングに伴う駆動ユニット8のローリングについて検討する。車両がローリングする際、駆動ユニット8もローリングする。しかし、実施例に係る駆動ユニット8を収容する駆動ユニットハウジング25は、重量物であるモータ10側のモータ側支持部28を構成する連結部28aと連結部28bの車両幅方向Xの距離が、比較例に比べて大きい。すなわち、連結部28aと連結部28bは、駆動ユニット8の重心であるローリングの中心から遠くに位置することから、連結部28a、28bが受ける駆動ユニット8のローリングに対するモーメントを小さくすることができる。そのため、連結部28a、28bの剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2に対して駆動ユニット8を支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0036】
また、車両がローリングする際、駆動ユニット8を収容する駆動ユニットハウジング25は、実施例の形態においては
図1の側方から見た図においてモータ側支持部28と差動部側支持部29を結ぶ軸(
図1の一点鎖線)を中心として揺れが生じる。比較例の形態ではモータ側支持部28’と差動部側支持部29’を結ぶ軸(
図4の一点鎖線)は駆動ユニットハウジング25’の車両高方向Zの上方となる。そのため、重量物である駆動ユニット8は、車両のローリングに伴い大きな揺れを生じやすい。それに対して、実施例の形態では、モータ側支持部28は、差動部側支持部29よりも車両高方向Zで下方に位置するため、モータ側支持部28と差動部側支持部29を結ぶ軸(
図1の一点鎖線)は、駆動ユニットハウジング25の内部を通過する。また、モータ側支持部28は、駆動ユニット8の構成中の重量物であるモータ10の重心付近に構成される。つまり、モータ側支持部28と差動部側支持部29を結ぶ軸(
図1の一点鎖線)は、駆駆動ユニット8の重心の近くを通過することになる。そのため、連結部28a、28bの剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2に対して駆動ユニット8を支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0037】
さらに、駆動ユニット8がローリングする際に、先に述べたようにモータ10は駆動ユニット8の構成物として重量が大きいため、駆動ユニットハウジング25のモータ側端部領域と、差動部側端部領域では動きが異なり、モータ側端部領域が大きくローリングする場合がある。その際に、比較例は、
図6の車両上方からの平面視において、連結部28a’、28b’及び連結部29a’、29b’をそれぞれ結ぶ仮想線(
図6の一点鎖線)は、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28b間を底辺とし、差動部側支持部29の2つの連結部29a、29b間を上辺とする長方形となる。それに対して実施例に係る形態においては、
図3で示すように車両上方からの平面視において、連結部28a、28b及び連結部29a、29bをそれぞれ結ぶ仮想線(
図3の一点鎖線)は、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28b間を下底とし、差動部側支持部29の2つの連結部29a、29b間を上底とし、車両幅方向Xにおいて線対称な台形(線対象軸:車両前後方向Yに延びる)となる。
【0038】
このように、車両上方からの平面視において、モータ側支持部28の連結部28a、28b、及び差動部側支持部29の連結部29a、29bの4点の連結部からなる仮想線が台形を構成するように、当該4点の連結部を配置することで、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。具体的には、車両と駆動装置は互いに独立した質量体であることから、車両全体としてのロール性能を向上させるためには、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心をできる限り一致させることが望ましい。よって、
図3に示すように、比較例と比して増加する車両幅方向Xの長さLが、連結部28aと連結部28bにおいて均等となるように配置することで、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心を一致させやすくなり、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。
。
【0039】
次に、車両のピッチングに伴う駆動ユニット8のピッチングについて検討する。車両がピッチングする際、駆動ユニット8もピッチングする。しかし、実施例に係る駆動ユニット8を収容する駆動ユニットハウジング25は、重量物であるモータ10側のモータ側支持部28を構成する連結部28a、28bと、差動部側支持部29を構成する連結部29a、29bの車両前後方向Yの距離が、比較例に比べて大きい。すなわち、連結部28aと連結部28bは、駆動ユニット8の重心であるピッチングの中心から遠くに位置することから、連結部28a、28bが受ける駆動ユニット8のピッチングに対するモーメントを小さくすることができる。そのため、連結部28a、28bの剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2に対して駆動ユニット8を支持することができる。それにより、車両のピッチング時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0040】
次に、モータ10を励磁した際のトルク反力について検討する。モータ10を励磁させると、回転軸18が回転し、変速機構20を介して差動装置14のディファレンシャルギア24に回転が伝達され、一対のドライブシャフト16L,16Rを介して車輪を回転させる。その際、車輪の回転に対する路面からの反力によって駆動ユニット8には、ドライブシャフト16L,16Rを中心とした回転モーメントが発生する。ここで、ドライブシャフト16L,16Rの軸と実施例に係るモータ側支持部28の連結部28a、28bの距離は、比較例のモータ側支持部28’の連結部28a’、28b’との距離に対して大きい。すなわち、駆動ユニット8にかかる回転モーメントをより遠くの位置で支えることができる。そのため、実施例に係るモータ側支持部28の連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2に対して駆動ユニット8を支持し、モータ10の駆動時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0041】
以上のように本実施形態の車両用駆動装置1は、ラダーフレーム2を備える車両に駆動力を発生するモータ10と、モータ10から伝達される駆動力を変速する変速機構20と、変速機構20から伝達される駆動力を差動して車両の駆動輪に伝達する差動装置14と、を含む駆動ユニットを備える車両用駆動装置1であって、駆動ユニット8の少なくとも一部を収容する駆動ユニットハウジング25と、駆動ユニットハウジング25のモータ側端部領域に設けられる2つの連結部により駆動ユニットハウジング25とラダーフレーム2とを連結するモータ側支持部28と、駆動ユニットハウジング25の差動部側端部領域おいて、駆動ユニットハウジング25とラダーフレーム2とを連結する差動部側支持部29と、を含み、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bは、差動部側支持部29よりも車両幅方向Xにおいて外側に配置される構成を採用することができる。
【0042】
そのため、当該構成をとらない車両用駆動装置に比較して、2つの連結部28a、28bは、駆動ユニット8の重心であるローリングの中心から遠くに位置することから、連結部28a、28bが受ける駆動ユニット8のローリングに対するモーメントを小さくすることができる。そのため、連結部28a、28bの剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部の大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2に対して駆動ユニット8を支持することができる。それにより、車両のローリング時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0043】
また、モータ側支持部の2つの連結部28a、28bは、車両前後方向Yに対して同じ位置に位置し、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bを結ぶ仮想線は、車両幅方向Xに対して平行となる。そのため、2つの連結部28a、28bにかかる力を均等とすることができることから、2つの連結部28a、28bの剛性要求は同等となり、連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制することができる。
【0044】
また、差動部側支持部29は、駆動ユニットハウジング25の差動部側端部領域に設けられる2つの連結部29a、29bにより駆動ユニットハウジング25とラダーフレーム2のクロスメンバ6Rと連結される。そのため、差動部側支持部29を2つの連結部29a、29bで構成することにより、1つの連結部で構成する場合に比較して応力集中をさけ、連結部29a、29bの剛性要求を低減させ、連結部29a、29bの大型化・高重量化を抑制することができる。
【0045】
また、モータ側支持部28の2つの連結部28a、28bと差動部側支持部29の2つの連結部29a、29bを結ぶ仮想線が車両上方からの平面視においてモータ側支持部28の2つの連結部間を下底とする車幅方向において線対称な台形となるように配置される。
このように、車両上方からの平面視において、モータ側支持部28の連結部28a、28b、及び差動部側支持部29の連結部29a、29bの4点の連結部からなる仮想線が台形を構成するように、当該4点の連結部を配置することで、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。具体的には、車両と駆動装置は互いに独立した質量体であることから、車両全体としてのロール性能を向上させるためには、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心をできる限り一致させることが望ましい。よって、
図3に示すように、比較例と比して増加する車両幅方向Xの長さLが、連結部28aと連結部28bにおいて均等となるように配置することで、駆動装置側のロール軸中心と車両側のロール軸中心を一致させやすくなり、車両全体としてのロール性能を向上させることができる。
。
【0046】
また、モータ側支持部28は、差動部側支持部29よりも車両高方向Zで下方に位置する。そのため、モータ側支持部28と差動部側支持部29を結ぶ軸は、駆動ユニットハウジング25の内部を通過する。そのため、モータ側支持部28の連結部28a、28bの剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部28a、28bの大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2にクロスメンバ6Fから延びる支持部材7L、7R対して駆動ユニットを支持することができる。それにより、車両のローリング時等における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施例において、差動部側支持部29は、2つの連結部29a、29bで構成されるが、連結部29aと連結部29bを合わせた1つの連結部として構成しても構わない。
【0048】
<他の実施例の構成>
次に、本発明の他の実施例に係る車両用駆動装置1’’の概略を
図7から
図9を用いて説明する。なお、先に説明した実施例と同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。また、先に説明した実施例と機能等が対応する構成には、先に説明した実施例の符号に「’’」を付して示している。
図7は、本発明の他の実施例に係る車両用駆動装置1’’の概略を車両側方から示す図である。なお、
図7は、特徴部分の説明上、後述する一対のサイドレール4L’’,4R’’を側視したときに奥側のサイドレール4R’’のみが見える視点で示している。また、
図8は、車両用駆動装置1’’を車両前方から示す図である。
図9は、車両用駆動装置1’’を車両上方から示す図である。
【0049】
駆動ユニットハウジング25’’は、ラダーフレーム2’’を構成するクロスメンバ6F’’と連結するためのモータ側支持部28’’を構成する2つの連結部28a’’、28b’’によりモータ側端部領域が支持される。詳細には、クロスメンバ6F’’は、クロスメンバ6F’’から車両高方向Zの上方に延在する支持部材7L’’,7R’’が接続されて構成され、支持部材7L’’,7R’’と連結部28a’’、28b’’が連結される構成である。また、駆動ユニットハウジング25’’は、ラダーフレーム2’’を構成するクロスメンバ6R’’と連結するための差動部側支持部29’’を構成する2つの連結部29a’’、29b’’により差動部側端部領域が支持される。このようにして車両用駆動装置1’’は、駆動ユニットハウジング25’’が、連結部28a’’、28b’’及び連結部29a’’、29b’’とクロスメンバ6F、6Rと連結されることにより、ラダーフレーム2’’の車両高方向Zの上方に支持される。
【0050】
モータ側支持部28’’の2つの連結部28a’’、28b’’は、差動部側支持部29’’である連結部29a’’、29b’’よりも車両幅方向Xにおいてそれぞれ外側に配置されるように構成される。
図9で示すように、連結部28a’’と連結部29a’’を比較したとき、連結部28a’’は車両の中心、すなわちサイドレール4L’’と4R’’の中心から見て、連結部29a’’よりもサイドレール4L’’側、すなわち車両幅方向Xにおける外側に配置される。同様に、連結部28b’’と連結部29b’’を比較したとき、連結部28b’’は車両の中心、すなわちサイドレール4L’’と4R’’の中心から見て、連結部29’’aよりもサイドレール4R’’側、すなわち車両幅方向Xにおける外側に配置される。そのため、車両上方からの平面視において、連結部28a’’、28b’’及び連結部29a’’、29b’’をそれぞれ結ぶ仮想線(
図9の一点鎖線)は、モータ側支持部28’’の2つの連結部28a’’、28b’’間を下底とし、差動部側支持部29’’の2つの連結部29a’’、29b’’間を上底とする台形となる。
【0051】
また、モータ側支持部28’’の連結部28a’’、28b’’は、
図8で示すように差動部側支持部29’’の連結部28a’’、28b’’よりも車両高方向Zにおいて上方に位置するように構成される。
【0052】
このように、本発明の他の実施例に係る車両用駆動装置1’’はラダーフレーム2’’の車両高方向Zの上方に駆動ユニット8が位置する構成である。
図7、8で示すように、本発明の他の実施例に係る車両用駆動装置1’’のモータ側支持部28’’は、差動部側支持部29’’よりも車両高方向Zの上方に位置する。車両がローリングする際、駆動ユニット8を収容する駆動ユニットハウジング25’’は、実施例の形態においては
図7の側方から見た図においてモータ側支持部28’’と差動部側支持部29’’を結ぶ軸を中心として揺れが生じる。モータ側支持部28’’は、差動部側支持部29’’よりも車両高方向Zで上方に位置するため、モータ側支持部28’’と差動部側支持部29’’を結ぶ軸(
図7の一点鎖線)は、駆動ユニットハウジング25’’の内部を通過する。また、モータ側支持部28’’は、駆動ユニット8の構成中の重量物であるモータ10の重心付近に構成される。つまり、モータ側支持部28’’と差動部側支持部29’’を結ぶ軸(
図7の一点鎖線)は、駆駆動ユニット8の重心の近くを通過することになる。そのため、連結部28a’’、28b’’の剛性要求を低減することができ、すなわち支持装置である連結部28a’’、28b’’の大型化・高重量化を抑制しつつ、ラダーフレーム2’’に対して駆動ユニット8を支持することができる。それにより、ラダーフレーム2’’の車両高方向Zの上方に駆動ユニット8が位置する構成する場合であっても、車両のローリング時における駆動ユニット8の安定性を向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施例では、走行用駆動源としてモータ10のみを有する電動トラックを例に説明したが、内燃機関をモータ10と併用するハイブリッド式の電動トラックにも車両用駆動装置1を適用可能である。また、電動トラックに限らず、モータ10を備える商用車全般にも車両用駆動装置1を適用可能である。
【0054】
また、上記実施例では、駆動ユニットハウジング25は駆動ユニット8を収容しているが、駆動ユニット8の一部のみを収容する構成でも構わない。
【0055】
また、上記実施例では、駆動ユニットハウジング25は駆動ユニット8を収容しているが、駆動ユニット8の一部のみを収容する構成でも構わない。
【0056】
また、上記実施例では、変速機構20を有する駆動ユニット8を例に説明したが、本発明に係る駆動ユニット8は、多段変速機構を備える駆動ユニットであっても良い。
【0057】
以上、本発明の実施例を説明したが、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【0058】
1…車両用駆動装置
2…ラダーフレーム
4L、4R…サイドレール
6F、6R…クロスメンバ
7L、7R…支持部材
8…駆動ユニット
10…モータ
14…差動装置
16L、16R…ドライブシャフト
18…回転軸
20…変速機構
20a,20b…変速ギア
24…ディファレンシャルギア
25…駆動ユニットハウジング
28…モータ側支持部
28a、28b…連結部
29…差動部側支持部
29a、29b…連結部