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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】電池用非水電解液及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20231205BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20231205BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231205BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018165150
(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公開番号】P2020038783
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
(72)【発明者】
【氏名】大西 仁志
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096643(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030487(WO,A1)
【文献】特開2016-201197(JP,A)
【文献】特開2002-359001(JP,A)
【文献】特開平10-189042(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054197(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045989(WO,A1)
【文献】特開2001-126765(JP,A)
【文献】特開2004-031244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 10/0569
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2-ジメトキシエタンを含む非水溶媒と、
電解質と、
下記式(S1)で表される化合物及び下記式(S5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Sと、
を含有する電池用非水電解液。
【化1】

〔式(S1)中、 11 は、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表し、R 12 ~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表す。式(1a)及び式(1b)において、*は、結合位置を表す
(S5)中、R51は、フッ素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルケニル基、炭素数1~6のアルキニル基、炭素数1~6のフッ化アルキル基、炭素数1~6のフッ化アルケニル基、又は炭素数1~6のフッ化アルキニル基を表す。〕
【請求項2】
前記1,2-ジメトキシエタンの含有量が、前記非水溶媒の全量に対し、10体積%~40体積%である請求項1に記載の電池用非水電解液。
【請求項3】
前記添加剤Sが、前記式(S1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載の電池用非水電解液。
【請求項4】
前記式(S1)中、前記R11が、前記式(1a)で表される基又は前記式(1b)で表される基であり、前記R12~前記R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項5】
前記添加剤Sの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%である請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項6】
前記非水溶媒が、更に、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含む請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液。
【請求項7】
正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
【請求項8】
請求項に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池用非水電解液及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池(例えばリチウム二次電池)に用いられる非水電解液に、1,2-ジメトキシエタンを含有させる場合がある。
例えば、特許文献1には、環状炭酸エステル誘導体と1,2-ジメトキシエタンとを含む非水電解液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-86722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1,2-ジメトキシエタンは、低粘度の溶媒として有効である。
しかし、1,2-ジメトキシエタンを含む非水電解液を用いた電池では、電池抵抗が上昇する場合がある。
本開示の一態様の目的は、1,2-ジメトキシエタンを含有する非水電解液でありながら、電池抵抗を低減させることができる電池用非水電解液を提供することである。
本開示の別の一態様の目的は、1,2-ジメトキシエタンを含有する非水電解液を用いたリチウム二次電池でありながら、電池抵抗が低減されるリチウム二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 1,2-ジメトキシエタンを含む非水溶媒と、
電解質と、
下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、下記式(S3)で表される化合物、下記式(S4)で表される化合物、及び下記式(S5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Sと、
を含有する電池用非水電解液。
【0006】
【化1】
【0007】
式(S1)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表す。式(1a)及び式(1b)において、*は、結合位置を表す。
式(S2)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S3)中、R31~R36は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S4)中、R41は、フッ素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S5)中、R51は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0008】
<2> 前記1,2-ジメトキシエタンの含有量が、前記非水溶媒の全量に対し、10体積%~40体積%である<1>に記載の電池用非水電解液。
<3> 前記添加剤Sが、前記式(S1)で表される化合物、前記式(S2)で表される化合物、及び前記式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載の電池用非水電解液。
<4> 前記添加剤Sが、前記式(S1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<5> 前記式(S1)中、前記R11が、前記式(1a)で表される基又は前記式(1b)で表される基であり、前記R12~前記R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基である<1>~<4>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<6> 前記添加剤Sの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%である<1>~<5>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<7> 前記非水溶媒が、更に、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含む<1>~<6>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液。
<8> 正極と、
金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属若しくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を負極活物質として含む負極と、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の電池用非水電解液と、
を含むリチウム二次電池。
<9> <8>に記載のリチウム二次電池を充放電させて得られたリチウム二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、1,2-ジメトキシエタンを含有する非水電解液でありながら、保存後の電池抵抗を低減させることができる電池用非水電解液が提供される。
本開示の別の一態様によれば、1,2-ジメトキシエタンを含有する非水電解液を用いたリチウム二次電池でありながら、保存後の電池抵抗が低減されるリチウム二次電池が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示のリチウム二次電池の一例である、ラミネート型電池の一例を示す概略斜視図である。
図2図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の、厚さ方向の概略断面図である。
図3】本開示のリチウム二次電池の別の一例である、コイン型電池の一例を示す概略断面図である。
図4】比較例1及び実施例1~4の各々の非水電解液を用いた場合における、ガス発生量(cm)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
〔電池用非水電解液〕
本開示の電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、
1,2-ジメトキシエタンを含む非水溶媒と、
電解質と、
下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、下記式(S3)で表される化合物、下記式(S4)で表される化合物、及び下記式(S5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である添加剤Sと、
を含有する。
【0013】
【化2】
【0014】
式(S1)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表す。式(1a)及び式(1b)において、*は、結合位置を表す。
式(S2)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S3)中、R31~R36は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S4)中、R41は、フッ素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
式(S5)中、R51は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0015】
本開示の非水電解液によれば、1,2-ジメトキシエタンを含有する非水電解液でありながら、電池抵抗を低減させることができる。
かかる効果が奏される理由は、以下のように推測される。
【0016】
1,2-ジメトキシエタン(以下、DMEともいう)を含有する非水電解液を用いた電池では、電池抵抗が上昇する場合がある。電池抵抗上昇の理由としては、DMEが、イオン(例えば、リチウム二次電池におけるリチウムイオン)に対して二座配位によって強固に溶媒和してイオンと共に負極中に共挿入されること;DMEが正極で分解され、ガス発生及び/又は堆積物の形成を引き起こすこと;等が考えられる。
この点に関し、本開示の非水電解液は、DMEを含む非水溶媒を含有し、かつ、添加剤Sを含有する。これにより、添加剤Sが、負極及び正極に良質な被膜を形成し、これらの被膜により、負極中への上記共挿入が抑制され、かつ、正極でのガス発生及び/又は堆積物の形成が抑制され、その結果、DMEに起因する電池抵抗の上昇が抑制されると考えられる。
【0017】
<非水溶媒>
本開示の非水電解液は、非水溶媒を含有する。
非水溶媒は、DME(即ち、1,2-ジメトキシエタン)を含む。
DMEは、低粘度の溶媒である。このため、非水溶媒がDMEを含むことにより、非水電解液の取り扱い性が向上する。
【0018】
DMEの含有量は、非水溶媒の全量に対し、好ましくは10質量%~40質量%である。
DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して10質量%以上である場合には、非水電解液の取り扱い性がより向上する。
また、一般的には、DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して10質量%以上である場合には、負極中への上記共挿入、及び、正極でのガス発生又は堆積物の形成がより顕著となり、その結果、電池抵抗がより上昇する傾向となる。しかし、本開示の非水電解液は、添加剤Sを含有することにより、DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して10質量%以上である場合であっても、電池抵抗の上昇を効果的に抑制できる。即ち、DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して10質量%以上である場合には、添加剤Sによる改善幅(即ち、電池抵抗の低減幅)がより大きくなる。DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して20質量%以上である場合には、添加剤Sによる改善幅が更に大きくなる。
一方、DMEの含有量が非水溶媒の全量に対して40質量%以下である場合には、DME自身の含有量が少ないことにより、電池抵抗の上昇が抑制される。
【0019】
非水溶媒は、更に、DME以外の溶剤種を含み得る。
DME以外の溶媒種としては、種々公知のものを適宜選択することができる。
DME以外の溶媒種としては、例えば、特開2017-45723号公報の段落0069~0087に記載の溶媒種を用いることができる。
【0020】
非水溶媒は、更に、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒に含まれる環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物は、それぞれ、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0021】
環状カーボネート化合物としては、例えば、エチレンカーボネート(以下、「EC」ともいう)、プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
これらのうち、誘電率が高い、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートが好適である。黒鉛を含む負極活物質を使用した電池の場合は、非水溶媒は、エチレンカーボネートを含むことがより好ましい。
【0022】
鎖状カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」ともいう)、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」ともいう)、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、エチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルヘプチルカーボネート、エチルヘプチルカーボネート、ジヘプチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、メチルオクチルカーボネート、エチルオクチルカーボネート、ジオクチルカーボネート、等が挙げられる。
【0023】
環状カーボネートと鎖状カーボネートの組み合わせとして、具体的には、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジメチルカーボネート、プロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとジメチルカーボネートとメチルエチルカーボネートとジエチルカーボネートなどが挙げられる。
【0024】
環状カーボネート化合物と鎖状カーボネート化合物の混合割合は、体積比で表して、環状カーボネート化合物:鎖状カーボネート化合物が、例えば5:95~80:20、好ましくは10:90~70:30、更に好ましくは20:80~60:40である。このような比率にすることによって、非水電解液の粘度上昇を抑制し、電解質の解離度を高めることができるため、電池の充放電特性に関わる非水電解液の伝導度を高めることができる。また、電解質の溶解度をさらに高めることができる。よって、常温または低温での電気伝導性に優れた非水電解液とすることができるため、常温から低温での電池の負荷特性を改善することができる。
【0025】
非水溶媒は、環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物以外のその他の化合物を含んでいてもよい。
この場合、非水溶媒に含まれるその他の化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
その他の化合物としては、環状カルボン酸エステル化合物(例えばγブチロラクトン)、環状スルホン化合物、環状エーテル化合物、鎖状カルボン酸エステル化合物、鎖状エーテル化合物、鎖状リン酸エステル化合物、アミド化合物、鎖状カーバメート化合物、環状アミド化合物、環状ウレア化合物、ホウ素化合物、ポリエチレングリコール誘導体、等が挙げられる。
これらの化合物については、特開2017-45723号公報の段落0069~0087の記載を適宜参照できる。
【0026】
環状カーボネート化合物及び鎖状カーボネート化合物の合計含有量は、非水溶媒の全量に対し、好ましくは60体積%~90体積%であり、より好ましくは60体積%~80体積%である。
【0027】
<電解質>
本開示の非水電解液は、電解質を含有する。
電解質は、LiPFを含むことが好ましい。
この場合、電解質中に占めるLiPFの比率は、好ましくは1質量%~100質量%、より好ましくは10質量%~100質量%、さらに好ましくは50質量%~100質量%である。
【0028】
本開示の非水電解液における電解質の濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
また、本開示の非水電解液におけるLiPFの濃度は、0.1mol/L~3mol/Lが好ましく、0.5mol/L~2mol/Lがより好ましい。
【0029】
電解質は、LiPF以外の化合物を含んでいてもよい。
LiPF以外の化合物としては;
(CNPF、(CNBF、(CNClO、(CNAsF、(CSiF、(CNOSO(2k+1)(k=1~8の整数)、(CNPF[C(2k+1)(6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)などのテトラアルキルアンモニウム塩;
LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiOSO(2k+1)(k=1~8の整数)、LiPF[C(2k+1)(6-n)(n=1~5、k=1~8の整数)、LiC(SO)(SO)(SO)、LiN(SOOR10)(SOOR11)、LiN(SO12)(SO13)(ここでR~R13は互いに同一でも異なっていてもよく、フッ素原子又は炭素数1~8のパーフルオロアルキル基である)等のリチウム塩(即ち、LiPF以外のリチウム塩);
等が挙げられる。
【0030】
<添加剤S>
本開示の非水電解液は、添加剤Sを含有する。
添加剤Sは、下記式(S1)で表される化合物、下記式(S2)で表される化合物、下記式(S3)で表される化合物、下記式(S4)で表される化合物、及び下記式(S5)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0031】
添加剤Sの含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%~10質量%が好ましく、0.001質量%~5.0質量%がより好ましく、0.001質量%~3.0質量%が更に好ましく、0.01質量%~3.0質量%が更に好ましく、0.1~3.0質量%が更に好ましく、0.1~2.0質量%が更に好ましく、0.1~1.0質量%が更に好ましい。
【0032】
(式(S1)で表される化合物)
式(S1)で表される化合物は、以下のとおりである。
【0033】
【化3】
【0034】
式(S1)中、R11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表す。式(1a)及び式(1b)において、*は、結合位置を表す。
【0035】
式(S1)中、R11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
【0036】
式(S1)中、R11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、イソプロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基等のアルケニル基;等が挙げられる。
【0037】
式(S1)中、R11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(S1)中、R11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0038】
式(S1)で表される化合物の具体例としては、下記式(S1-1)~下記式(S1-4)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(S1-1)~化合物(S1-4)ともいう)が挙げられるが、式(S1)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
【0039】
【化4】
【0040】
(式(S2)で表される化合物)
式(S2)で表される化合物は、以下のとおりである。
【0041】
【化5】
【0042】
式(S2)中、R21~R24は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0043】
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(S1)中のR11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0044】
本開示において、フッ化炭化水素基とは、少なくとも1つのフッ素原子で置換された炭化水素基を意味する。
【0045】
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロイソブチル基等のフルオロアルキル基;2-フルオロエテニル基、2,2-ジフルオロエテニル基、2-フルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-プロペニル基、3-フルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基等のフルオロアルケニル基;等が挙げられる。
【0046】
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基が好ましく、フッ化アルキル基がより好ましい。
式(S2)中、R21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0047】
式(S2)中、R21~R24としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0048】
式(S2)で表される化合物の具体例としては、下記式(S2-1)~下記式(S2-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(S2-1)~化合物(S2-21)ともいう)が挙げられるが、式(S2)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(S2-1)(即ち、1,3-プロペンスルトン;以下、「PRS」ともいう)が特に好ましい。
【0049】
【化6】
【0050】
(式(S3)で表される化合物)
式(S3)で表される化合物は、以下のとおりである。
【0051】
【化7】
【0052】
式(S3)中、R31~R36は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0053】
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(S1)中のR11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0054】
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例としては、式(S2)中のR21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例と同様である。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基が好ましく、フッ化アルキル基がより好ましい。
式(S3)中、R31~R36で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0055】
式(S3)中、R31~R36としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0056】
式(S3)で表される化合物の具体例としては、下記式(S3-1)~下記式(S3-21)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物(S3-1)~化合物(S3-21)ともいう)が挙げられるが、式(S3)で表される化合物は、これらの具体例には限定されない。
これらのうち、化合物(S3-1)(即ち、1,3-プロパンスルトン;以下、「PS」ともいう)が特に好ましい。
【0057】
【化8】
【0058】
(式(S4)で表される化合物)
式(S4)で表される化合物は、以下のとおりである。
【0059】
【化9】
【0060】
式(S4)中、R41は、フッ素原子、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0061】
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のアルコキシ基は、直鎖のアルコキシ基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するアルコキシ基であってもよい。
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のアルコキシ基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0062】
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例は、式(S2)中のR21~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例と同様である。
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基、フッ化アルケニル基、又はフッ化アルキニル基が好ましく、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基がより好ましく、フッ化アルキル基が特に好ましい。
式(S4)中、R41で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0063】
式(S4)中、R41としては、電池抵抗をより低減させる観点から、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基が好ましく、炭素数1~6のフッ化炭化水素基が特に好ましい。
【0064】
式(S4)で表される化合物としては、
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム又はペンタフルオロエタンスルホン酸リチウムが好ましく、
トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(以下、「TFMSLi」ともいう)が特に好ましい。
【0065】
(式(S5)で表される化合物)
式(S5)で表される化合物は、以下のとおりである。
【0066】
【化10】
【0067】
式(S5)中、R51は、フッ素原子、炭素数1~6の炭化水素基、又は炭素数1~6のフッ化炭化水素基を表す。
【0068】
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6の炭化水素基は、直鎖の炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有する炭化水素基であってもよい。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例は、式(S1)中のR11~R14で表される炭素数1~6の炭化水素基の具体例と同様である。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が好ましく、アルキル基又はアルケニル基がより好ましく、アルキル基が特に好ましい。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6の炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0069】
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基は、直鎖のフッ化炭化水素基であってもよいし、分岐及び/又は環構造を有するフッ化炭化水素基であってもよい。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例は、式(S2)中のR22~R24で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の具体例と同様である。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基としては、フッ化アルキル基、フッ化アルケニル基、又はフッ化アルキニル基が好ましく、フッ化アルキル基又はフッ化アルケニル基がより好ましく、フッ化アルキル基が特に好ましい。
式(S5)中、R51で表される炭素数1~6のフッ化炭化水素基の炭素数としては、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0070】
式(S5)中、R51としては、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、又はペンタフルオロエチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0071】
式(S5)で表される化合物としては、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、パーフルオロブタンスルホニルフルオリド、エテンスルホニルフルオリド、1-プロペン-1-スルホニルフルオリド、又は2-プロペン-1-スルホニルフルオリドが好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、ヘキサンスルホニルフルオリド、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド、パーフルオロエタンスルホニルフルオリド、パーフルオロプロパンスルホニルフルオリド、又はパーフルオロブタンスルホニルフルオリドがより好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、プロパンスルホニルフルオリド、2-プロパンスルホニルフルオリド、ブタンスルホニルフルオリド、2-ブタンスルホニルフルオリド、又はヘキサンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリド、エタンスルホニルフルオリド、又はプロパンスルホニルフルオリドが更に好ましく、
メタンスルホニルフルオリド(以下、「MSF」ともいう)が特に好ましい。
【0072】
上述した添加剤Sは、前述のとおり、負極及び正極に良質な被膜を形成することで、DMEを含有する非水電解液を用いた電池における電池抵抗を低減させる効果を奏する。
更に、上述した添加剤Sは、DMEを含有する非水電解液を用いた電池におけるガス発生(即ち、DMEが正極で分解されることによるガスの発生)を抑制する効果も奏する。
【0073】
ガス発生をより効果的に抑制する観点から、添加剤Sは、式(S1)で表される化合物、式(S2)で表される化合物、及び式(S3)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、式(S1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0074】
また、ガス発生を更に効果的に抑制する観点から見て、
式(S1)で表される化合物の好ましい態様は、式(S1)中、R11が、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基を表し、かつ、R12~R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基である態様であり;
式(S1)で表される化合物のより好ましい態様は、式(S1)中、R11が、式(1a)で表される基又は式(1b)で表される基を表し、かつ、R12~R14が、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6の炭化水素基、式(1a)で表される基、又は式(1b)で表される基である態様である。
【0075】
本開示の非水電解液は、リチウム二次電池用の非水電解液として好適であるばかりでなく、一次電池用の非水電解液、電気化学キャパシタ用の非水電解液、電気二重層キャパシタ、アルミ電解コンデンサー用の電解液としても用いることができる。
【0076】
〔リチウム二次電池〕
本開示のリチウム二次電池は、正極と、負極と、本開示の非水電解液と、を備える。
【0077】
<負極>
負極は、負極活物質及び負極集電体を含んでもよい。
負極における負極活物質としては、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれた少なくとも1種(単独で用いてもよいし、これらの2種以上を含む混合物を用いてもよい)を用いることができる。
リチウム(又はリチウムイオン)との合金化が可能な金属もしくは合金としては、シリコン、シリコン合金、スズ、スズ合金などを挙げることができる。また、チタン酸リチウムでもよい。
これらの中でもリチウムイオンをドープ・脱ドープすることが可能な炭素材料が好ましい。このような炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料(人造黒鉛、天然黒鉛)、非晶質炭素材料、等が挙げられる。上記炭素材料の形態は、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状いずれの形態であってもよい。
【0078】
上記非晶質炭素材料として具体的には、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが例示される。
上記黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが用いられる。また、黒鉛材料としては、ホウ素を含有するものなども用いることができる。また、黒鉛材料としては、金、白金、銀、銅、スズなどの金属で被覆したもの、非晶質炭素で被覆したもの、非晶質炭素と黒鉛を混合したものも使用することができる。
【0079】
これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。
上記炭素材料としては、特にX線解析で測定した(002)面の面間隔d(002)が0.340nm以下の炭素材料が好ましい。また、炭素材料としては、真密度が1.70g/cm以上である黒鉛又はそれに近い性質を有する高結晶性炭素材料も好ましい。以上のような炭素材料を使用すると、電池のエネルギー密度をより高くすることができる。
【0080】
負極における負極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
負極集電体の具体例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられる。中でも、加工しやすさの点から特に銅が好ましい。
【0081】
<正極>
正極は、正極活物質及び正極集電体を含んでもよい。
正極における正極活物質としては、MoS、TiS、MnO、Vなどの遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1-X)〔0<X<1〕、α-NaFeO型結晶構造を有するLi1+αMe1-α(Meは、Mn、Ni及びCoを含む遷移金属元素、1.0≦(1+α)/(1-α)≦1.6)、LiNiCoMn〔x+y+z=1、0<x<1、0<y<1、0<z<1〕(例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.2Mn0.3等)、LiFePO、LiMnPOなどのリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアセン、ジメルカプトチアジアゾール、ポリアニリン複合体などの導電性高分子材料等が挙げられる。これらの中でも、特にリチウムと遷移金属とからなる複合酸化物が好ましい。負極がリチウム金属又はリチウム合金である場合は、正極として炭素材料を用いることもできる。また、正極として、リチウムと遷移金属との複合酸化物と、炭素材料と、の混合物を用いることもできる。
正極活物質は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。正極活物質は導電性が不充分である場合には、導電性助剤とともに使用して正極を構成することができる。導電性助剤としては、カーボンブラック、アモルファスウィスカー、グラファイトなどの炭素材料を例示することができる。
【0082】
正極における正極集電体の材質には特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
正極集電体の具体例としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タンタルなどの金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパーなどの炭素材料;等が挙げられる。
【0083】
<セパレータ>
本開示のリチウム二次電池は、負極と正極との間にセパレータを含むことが好ましい。
セパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁し且つリチウムイオンを透過する膜であって、多孔性膜や高分子電解質が例示される。
多孔性膜としては微多孔性高分子フィルムが好適に使用され、材質としてポリオレフィン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル等が例示される。
特に、多孔性ポリオレフィンが好ましく、具体的には多孔性ポリエチレンフィルム、多孔性ポリプロピレンフィルム、又は多孔性のポリエチレンフィルムとポリプロピレンフィルムとの多層フィルムを例示することができる。多孔性ポリオレフィンフィルム上には、熱安定性に優れる他の樹脂がコーティングされてもよい。
高分子電解質としては、リチウム塩を溶解した高分子や、電解液で膨潤させた高分子等が挙げられる。
本開示の非水電解液は、高分子を膨潤させて高分子電解質を得る目的で使用してもよい。
【0084】
<電池の構成>
本開示のリチウム二次電池は、種々公知の形状をとることができ、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、フィルム型その他任意の形状に形成することができる。しかし、電池の基本構造は、形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更を施すことができる。
【0085】
本開示のリチウム二次電池の例として、ラミネート型電池が挙げられる。
図1は、本開示のリチウム二次電池の一例であるラミネート型電池の一例を示す概略斜視図であり、図2は、図1に示すラミネート型電池に収容される積層型電極体の厚さ方向の概略断面図である。
図1に示すラミネート型電池は、内部に非水電解液(図1中では不図示)及び積層型電極体(図1中では不図示)が収納され、且つ、周縁部が封止されることにより内部が密閉されたラミネート外装体1を備える。ラミネート外装体1としては、例えばアルミニウム製のラミネート外装体が用いられる。
ラミネート外装体1に収容される積層型電極体は、図2に示されるように、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介して交互に積層されてなる積層体と、この積層体の周囲を囲むセパレータ8と、を備える。正極板5、負極板6、セパレータ7、及びセパレータ8には、本開示の非水電解液が含浸されている。
上記積層型電極体における複数の正極板5は、いずれも正極タブを介して正極端子2と電気的に接続されており(不図示)、この正極端子2の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において正極端子2が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
同様に、上記積層型電極体における複数の負極板6は、いずれも負極タブを介して負極端子3と電気的に接続されており(不図示)、この負極端子3の一部が上記ラミネート外装体1の周端部から外側に突出している(図1)。ラミネート外装体1の周端部において負極端子3が突出する部分は、絶縁シール4によってシールされている。
なお、上記一例に係るラミネート型電池では、正極板5の数が5枚、負極板6の数が6枚となっており、正極板5と負極板6とがセパレータ7を介し、両側の最外層がいずれも負極板6となる配置で積層されている。しかし、ラミネート型電池における、正極板の数、負極板の数、及び配置については、この一例には限定されず、種々の変更がなされてもよいことは言うまでもない。
【0086】
本開示のリチウム二次電池の別の一例として、コイン型電池も挙げられる。
図3は、本開示のリチウム二次電池の別の一例であるコイン型電池の一例を示す概略斜視図である。
図3に示すコイン型電池では、円盤状負極12、非水電解液を注入したセパレータ15、円盤状正極11、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板17、18が、この順序に積層された状態で、正極缶13(以下、「電池缶」ともいう)と封口板14(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶13と封口板14とはガスケット16を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ15に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0087】
なお、本開示のリチウム二次電池は、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を備えるリチウム二次電池(充放電前のリチウム二次電池)を、充放電させて得られたリチウム二次電池であってもよい。
即ち、本開示のリチウム二次電池は、まず、負極と、正極と、上記本開示の非水電解液と、を含む充放電前のリチウム二次電池を作製し、次いで、この充放電前のリチウム二次電池を1回以上充放電させることによって作製されたリチウム二次電池(充放電されたリチウム二次電池)であってもよい。
【0088】
本開示のリチウム二次電池の用途は特に限定されず、種々公知の用途に用いることができる。例えば、ノート型パソコン、モバイルパソコン、携帯電話、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、電子手帳、電卓、ラジオ、バックアップ電源用途、モーター、自動車、電気自動車、バイク、電動バイク、自転車、電動自転車、照明器具、ゲーム機、時計、電動工具、カメラ等、小型携帯機器、大型機器を問わず広く利用可能なものである。
【実施例
【0089】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例によって制限されるものではない。
以下において、「添加量」は、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量を意味し、「wt%」は、質量%を意味する。
【0090】
〔実施例1〕
以下の手順にて、リチウム二次電池であるコイン型電池(試験用電池)を作製した。
【0091】
<負極の作製>
アモルファスコート天然黒鉛(97質量部)、カルボキシメチルセルロース(1質量部)及びSBRラテックス(2質量部)を水溶媒で混練してペースト状の負極合剤スラリーを調製した。
次に、この負極合剤スラリーを厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。このときの負極活物質層の塗布密度は12mg/cmであり、充填密度は1.5g/mLであった。
【0092】
<正極の作製>
LiNi0.5Mn0.3Co0.2(90質量部)、アセチレンブラック(5質量部)及びポリフッ化ビニリデン(5質量部)を、N-メチルピロリジノンを溶媒として混練してペースト状の正極合剤スラリーを調製した。
次に、この正極合剤スラリーを厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。このときの正極活物質層の塗布密度は22mg/cmであり、充填密度は2.5g/mLであった。
【0093】
<非水電解液の調製>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と1,2-ジメトキシエタン(DME)とを、それぞれ30:10:30:30(体積%)の割合で混合し、混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒中に、電解質としてのLiPFを、最終的に得られる非水電解液中におけるLiPFの濃度が1.0mol/Lとなるように溶解させた。
上記で得られた溶液に対し、添加剤Sとして下記化合物(S1-1)(式(S1)で表される化合物の具体例)(添加量0.5質量%)を添加し、非水電解液を得た。
【0094】
【化11】
【0095】
<コイン型電池の作製>
上述の負極を直径14mmで、上述の正極を直径13mmで、それぞれ円盤状に打ち抜き、コイン状の負極及びコイン状の正極をそれぞれ得た。また、厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムを直径17mmの円盤状に打ち抜き、セパレータを得た。
得られたコイン状の負極、セパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(2032サイズ)内に積層し、次いで、この電池缶内に非水電解液20μLを注入し、セパレータと正極と負極とに含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより電池を密封した。
以上により、直径20mm、高さ3.2mmの図3で示す構成を有するコイン型電池(即ち、コイン型のリチウム二次電池)を得た。
【0096】
<電池抵抗の評価>
得られたコイン型電池に対し、コンディショニング及びエージングをこの順に施し、エージング後のコイン型電池について、高温保存前後の電池抵抗の評価を行った。
ここで、「コンディショニング」とは、コイン型電池を、恒温槽内で25℃にて、2.75Vと4.2Vとの間で充放電を三回繰り返すことを指す。
また、「エージング」とは、コンディショニング後のコイン型電池を、SOC(State of Charge)100%の状態で、60℃で72時間保存する操作を意味する。
本実施例におけるSOC100%の状態は、充電電圧4.25Vで充電された状態に相当する。
また、「高温保存」とは、エージング後のコイン型電池を、SOC100%の状態で、60℃で72時間保存する操作を意味する。
以下、電池抵抗は、25℃及び-20℃の2つの温度条件の各々にて測定した。
【0097】
(高温保存前の電池抵抗の測定)
エージング後のコイン型電池のSOC(State of Charge)を80%に調整し、次いで、以下の方法により、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(直流抵抗)を測定した。
上述のSOC80%に調整されたコイン型電池を用い、放電レート0.2CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート1CでのCC10s放電、300秒間の休止、放電レート2CでのCC10s放電、300秒間の休止、及び、放電レート5CでのCC10s放電をこの順に行った。
なお、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間放電することを意味する。
各放電レートと、各放電レートでの放電開始後10秒目の電圧と、の関係に基づき直流抵抗を求め、得られた直流抵抗(Ω)を、コイン型電池の高温保存前の電池抵抗(Ω)とした。
結果を表1に示す。
【0098】
(高温保存後の電池抵抗の測定)
高温保存前の電池抵抗を測定したコイン型電池を、25℃にて充電レート0.2Cで4.25VまでCC-CV充電してSOC100%の状態とし、この状態で高温保存(即ち、60℃にて72時間の保存)を施した。ここで、CC-CV充電とは、定電流定電圧(Constant Current - Constant Voltage)を意味する。
高温保存後のコイン型電池のSOCを80%に調整し、次いで、高温保存前の電池抵抗の測定と同様の方法により、コイン型電池の高温保存後の電池抵抗(Ω)を測定した。
結果を表1に示す。
【0099】
〔実施例2~7〕
添加剤Sの種類を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
実施例2~7で用いた添加剤Sは、以下のとおりである。
【0100】
【化12】
【0101】
〔比較例1〕
非水電解液に、添加剤Sを含有させなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
表1中、「-」は、添加剤を含有させなかったことを意味する。
【0102】
【表1】
【0103】
表1に示すように、DMEを含む非水溶媒及び添加剤Sを含有する実施例1~7では、DMEを含む非水溶媒を含有し、かつ、添加剤Sを含有しない比較例1と比較して、高温保存前の電池抵抗及び高温保存後の電池抵抗が低減されていた。
【0104】
<ガス発生の評価>
比較例1及び実施例1~4の各々における非水電解液を用いてラミネート型電池を作製し、得られたラミネート型電池を用い、ガス発生の評価を行った。
以下、詳細を示す。
【0105】
(負極片の作製)
実施例1で調製した負極合剤スラリーを、厚さ10μmの帯状銅箔製の負極集電体の片面に塗布し乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して負極集電体と負極活物質層からなるシート状の負極を得た。
得られたシート状の負極から、40mm×60mmの負極片を2枚切り出した。
各負極片には、ニッケルタブを超音波溶接した。
【0106】
(正極片の作製)
実施例1で調製した正極合剤スラリーを、厚さ20μmの帯状アルミ箔の正極集電体の両面に塗布し、乾燥した後に、ロールプレスで圧縮して正極集電体と正極活物質層とからなるシート状の正極を得た。
得られたシート状の正極から、40mm×40mmの正極片を1枚切り出した。
正極片には、アルミタブを超音波溶接した。
【0107】
(セパレータ)
厚さ20μmの微多孔性ポリエチレンフィルムから、60mm×110mmのサイズのセパレータを切り出した。
【0108】
(ラミネート電池の作製)
セパレータをその長手方向中央部で折り曲げて正極片を挟み、セパレータ/正極片/セパレータの積層構造を有する積層体1を得た。
得られた積層体1を2枚の負極片で挟み、負極片/セパレータ/正極片/セパレータ/負極片の積層構造を有する積層体2を得た。
得られた積層体2を、ラミネート外装体に収容し、ラミネート外装体の3辺を熱融着した。
次に、ラミネート外装体の熱融着していない1辺側からラミネート外装体内に、比較例1及び実施例1~4のいずれかにおける非水電解液1gを注入し、正極片、負極片、及びセパレータに含浸させた。次いで、上記熱融着していない1辺を熱融着することにより、ラミネート外装体を密封した。
以上により、ラミネート型電池を得た。
【0109】
(ガス発生量の測定)
ラミネート型電池の大気中での比重、及び、ラミネート型電池の水中での比重を、それぞれ、比重測定装置(島津製作所社製,SGM-300P)によって測定した。
得られた結果に基づき、アルキメデスの原理を利用してガス発生量(cm)を求めた。
【0110】
図4は、比較例1及び実施例1~4の各々の非水電解液を用いた場合における、ガス発生量(cm)を示すグラフである。
図4に示すように、実施例1~4の非水電解液を用いた場合には、比較例1の非水電解液を用いた場合と比較して、ガス発生量が顕著に低減されていた。
これにより、非水電解液中の添加剤Sとして、式(S1)で表される化合物(実施例1及び2)、式(S2)で表される化合物(実施例3)、及び式(S4)で表される化合物(実施例4)を用いた場合には、DMEに起因するガス発生が顕著に抑制されることがわかった。
【符号の説明】
【0111】
1 ラミネート外装体
2 正極端子
3 負極端子
4 絶縁シール
5 正極板
6 負極板
7、8 セパレータ
11 正極
12 負極
13 正極缶
14 封口板
15 セパレータ
16 ガスケット
17、18 スペーサー板
図1
図2
図3
図4