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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ステープル取り外し装置
(51)【国際特許分類】
   B25C 11/00 20060101AFI20231205BHJP
【FI】
B25C11/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018213339
(22)【出願日】2018-11-13
(65)【公開番号】P2020078845
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 信昭
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101653(JP,A)
【文献】特開2000-127064(JP,A)
【文献】特開2018-047535(JP,A)
【文献】特許第5565180(JP,B2)
【文献】米国特許第03528643(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウン部と一対の脚部とからなるステープルにより綴じられた用紙束からステープルを取り外すステープル取り外し装置であって、
前記用紙束を載置可能な載置面を有する載置部と、
前記載置面に前記用紙束が載置された状態において、前記用紙束の前記クラウン部が露出する側の用紙面と対向するように配置され、前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入可能であって、先端部に向けて楔状に形成される挿入部と、
前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記用紙面に沿って移動させて前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入後、前記載置から離間する方向に移動させることで前記ステープルを前記用紙束から引き抜く挿入部移動部と、
前記挿入部を前記載置面に対する前記用紙束の厚み方向に移動可能に前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記厚み方向に移動させることで前記載置面に対する前記挿入部の突出量を調整する挿入部調整部と
を備えるステープル取り外し装置。
【請求項2】
前記挿入部調整部は、
基端部と、
先端部と、
前記基端部と前記先端部との間に回転可能に配置される回転軸と、
前記基端部と前記回転軸の間に位置し、前記回転軸が反時計方向に回転すると、前記載置面から離れる方向に移動する第1部と、
前記回転軸と前記先端部との間に位置し、前記回転軸が反時計方向に回転すると、前記載置面に近づく方向に移動する第2部と、
前記第1部を前記載置面から離れる方向に移動させる第1部移動部と
を備え、
前記挿入部は、前記第2部に接続される
請求項1に記載のステープル取り外し装置。
【請求項3】
前記第1部移動部は、偏心軸を有し、前記偏心軸を中心に回転可能に構成され、前記偏心軸の外周面が前記第1部に当接する
請求項2に記載のステープル取り外し装置。
【請求項4】
前記第2部は、前記回転軸から前記先端部に向けて延びる長孔を有し、
前記挿入部は、前記長孔に係合する係合部を有する
請求項2又は3に記載のステープル取り外し装置。
【請求項5】
前記第1部移動部は、操作者により回転操作可能に構成される
請求項3又は4に記載のステープル取り外し装置。
【請求項6】
クラウン部と一対の脚部とからなるステープルにより綴じられた用紙束からステープルを取り外すステープル取り外し装置であって、
前記用紙束を載置可能な載置面を有する載置部と、
前記載置面に前記用紙束が載置された状態において、前記用紙束の前記クラウン部が露出する側の用紙面と対向するように配置され、前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入可能であって、先端部に向けて楔状に形成される挿入部と、
前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記用紙面に沿って移動させて前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入後、前記載置から離間する方向に移動させることで前記ステープルを前記用紙束から引き抜く移動部と、
前記載置面を前記挿入部に対する前記用紙束の厚み方向に移動可能に前記載置部に接続され、前記載置部を前記厚み方向に移動させることで前記載置面に対する前記挿入部の突出量を調整する載置部調整部と
を備えるステープル取り外し装置。
【請求項7】
前記載置部調整部は、操作者により調整可能に構成される
請求項6に記載のステープル取り外し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステープル取り外し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クラウン部一対の脚部を有するステープルを用いて複数枚の用紙を綴じることで作成した用紙束からステープルを取り外すステープル取り外し装置が利用されている。
【0003】
一般的なステープル取り外し装置では、ステープル近傍の用紙を押さえ部材により押さえた後、用紙束とステープルのクラウン部との間に挿入部材を挿入して前進させることによりステープルを用紙束から取り外している。例えば、特許文献1及び2には、原稿束の上面に当接させられる略U字形状の当接部を有する押さえ手段と、用紙束と用紙束を綴じるステープルとの間に挿入される挿入部材と、を備えた綴じ部材除去装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-094362号公報
【文献】特開2000-127064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、用紙束を綴じるステープルの綴じ状態は、用紙の種類や枚数、使用するステープル綴じ装置やステープルの種類によって異なり、ステープルのクラウン部が用紙束表面上にある場合だけでなく、用紙束表面より窪んでいる場合など様々である。一般的なステープル取り外し装置では、用紙束を載置する載置台から、挿入部材を所定量用紙束側に突出させて用紙束とクラウン部の間に挿入している。
【0006】
しかしながら、このような方法では、以下のような問題がある。すなわち、例えば、薄い用紙束や角部を綴じた用紙束のステープル取り外しを行う場合、用紙束が挿入部材の押し込み力により移動してしまい、用紙束とクラウン部の間に挿入部材が挿入されないという問題点がある。この問題を解決するには、挿入部材の用紙束側への突出量を多くする必要がある。一方で、薄い用紙束用の挿入部材の突出量で、厚い用紙束のステープル取り外しを行うと、挿入部材が用紙束に突き当たって用紙束を破ってしまうという問題がある。このように、用紙束を綴じる用紙やステープルの種類によって、挿入部材の用紙束に対する突出量(高さ)の最適値は異なる。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、用紙束の種類に応じて挿入部材の載置台に対する突出量を変更できることが可能で様々な状態で綴じられた用紙束からなステープル取り外し装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のステープル取り外し装置は、クラウン部と一対の脚部とからなるステープルにより綴じられた用紙束からステープルを取り外すステープル取り外し装置であって、前記用紙束を載置可能な載置面を有する載置部と、前記載置面に前記用紙束が載置された状態において、前記用紙束の前記クラウン部が露出する側の用紙面と対向するように配置され、前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入可能であって、先端部に向けて楔状に形成される挿入部と、前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記用紙面に沿って移動させて前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入後、前記載置から離間する方向に移動させることで前記ステープルを前記用紙束から引き抜く挿入部移動部と、前記挿入部を前記載置面に対する前記用紙束の厚み方向に移動可能に前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記厚み方向に移動させることで前記載置面に対する前記挿入部の突出量を調整する挿入部調整部とを備える。
【0009】
また、本開示の他のステープル取り外し装置は、クラウン部と一対の脚部とからなるステープルにより綴じられた用紙束からステープルを取り外すステープル取り外し装置であって、前記用紙束を載置可能な載置面を有する載置部と、前記載置面に前記用紙束が載置された状態において、前記用紙束の前記クラウン部が露出する側の用紙面と対向するように配置され、前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入可能であって、先端部に向けて楔状に形成される挿入部と、前記挿入部に接続され、前記挿入部を前記用紙面に沿って移動させて前記クラウン部と前記用紙面との間に挿入後、前記載置から離間する方向に移動させることで前記ステープルを前記用紙束から引き抜く移動部と、前記載置面を前記挿入部に対する前記用紙束の厚み方向に移動可能に前記載置部に接続され、前記載置部を前記厚み方向に移動させることで前記載置面に対する前記挿入部の突出量を調整する載置部調整部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示のステープル取り外し装置によれば、用紙やステープルの種類、綴じ位置が異なる場合であっても、挿入部調整部の操作により挿入部の載置面に対する用紙束の厚み方向における位置を調整できるので、用紙やステープルの種類等の各種状況に応じた挿入部の載置台に対する最適な突出量を設定できる。これにより、ステープル取り外し時の用紙へのダメージやステープル取り外しの失敗を防止できる。
【0011】
また、本開示の他のステープル取り外し装置によれば、用紙やステープルの種類、綴じ位置が異なる場合であっても、載置部調整部の操作により載置部の挿入部に対する用紙束の厚み方向における位置を調整できるので、用紙やステープルの種類等の各種状況に応じた挿入部の載置台に対する最適な突出量を設定できる。これにより、ステープル取り外し時の用紙へのダメージやステープル取り外しの失敗を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置を斜め前方から見た斜視図である。
図2】第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置を斜め後方から見た斜視図である。
図3】第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置の内部構成を示す斜視図である。
図4A】第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置の断面図である。
図4B】ステープルで綴じられた用紙束の拡大図である。
図5】第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置の分解斜視図である。
図6A】第1の実施の形態に係る調整支点軸の斜視図である。
図6B】第1の実施の形態に係る調整支点軸の側面図である。
図7】第1の実施の形態に係る楔板の突出量を第1突出量とする場合のステープル取り外し装置の動作を示す図である
図8】第1の実施の形態に係る楔板の突出量を第2突出量とする場合のステープル取り外し装置の動作を示す図である。
図9】第1の実施の形態に係る楔板の突出量を第3突出量とする場合におけるステープル取り外し装置の動作を示す図である
図10】第2の実施の形態に係るステープル取り外し装置の斜視図である。
図11】第2の実施の形態に係るステープル取り外し装置の分解斜視図である。
図12】第2の実施の形態に係るスライド軸及び第1取付部の要部拡大斜視図である。
図13】第2の実施の形態に係る調整つまみ及び調整ネジの要部拡大断面図である。
図14A】第2の実施の形態に係る楔板の突出量を第4突出量とする場合のステープル取り外し装置の動作図である。
図14B】第2の実施の形態に係るスライド軸の動作図である。
図14C】第2の実施の形態に係る楔板及び載置台の動作図である。
図15A】第2の実施の形態に係る楔板の突出量を第5突出量とする場合のステープル取り外し装置の動作図である。
図15B】第2の実施の形態に係るスライド軸の動作図である。
図15C】第2の実施の形態に係る楔板及び載置台の動作図である。
図16A】第2の実施の形態に係る楔板の突出量を第6突出量とする場合のステープル取り外し装置の動作図である。
図16B】第2の実施の形態に係るスライド軸の動作図である。
図16C】第2の実施の形態に係る楔板及び載置台の動作図である。
図17】第3の実施の形態に係るステープル取り外し装置の斜視図である。
図18】第3の実施の形態に係るステープル取り外し装置の斜視図である。
図19】第3の実施の形態に係る針除装置の分解斜視図である。
図20A】第3の実施の形態に係るステープル取り外し装置の断面図である。
図20B図20Aの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示に係るステープル取り外し装置100A,100B,100Cの一例について説明する。
【0014】
<第1の実施の形態>
[ステープル取り外し装置100Aの全体構成例]
図1は第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Aを斜め前方から見た斜視図、図2は第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Aを斜め後方から見た斜視図である。
【0015】
ステープル取り外し装置100Aは、ステープルSにより綴じられた用紙束PからステープルSを自動で取り外すステープルステープル装置である。ステープル取り外し装置100Aは、略直方体状の筐体102と、筐体102の上面部に設けられ、用紙束Pを載置可能な載置面104hを有する載置台104と、載置台104上に載置された用紙束Pを押さえる紙押さえ機構部170とを備える。載置台104と紙押さえ機構部170との間には、用紙束Pを挿入するための用紙束挿入口105が設けられている。
【0016】
なお、本実施の形態において、紙押さえ機構部170(筐体102から露出している部分)が設けられる側をステープル取り外し装置100Aの後側とし、その反対側をステープル取り外し装置100Aの前側とする。また、後述する調整つまみ106が設けられる側をステープル取り外し装置100Aの左側とし、その反対側をステープル取り外し装置100Aの右側とする。また、載置台104側が設けられる側をステープル取り外し装置100Aの上側とし、その反対側をステープル取り外し装置100Aの下側とする。
【0017】
紙押さえ機構部170の上面部には、ステープル取り外し装置100Aの動作を開始させる起動スイッチ108が設けられている。筐体102の左側面の前部には、載置台104の高さを調整するための調整つまみ(操作部)106が設けられている。筐体102の後部には、用紙束Pから取り外したステープルを収容するダストボックス202が設けられている。ダストボックス202は、筐体102の後部から着脱可能に構成される。
【0018】
[ステープル取り外し装置100Aの内部構成例]
図3は第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Aの内部構成を示す斜視図、図4Aは第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Aの断面図、図4BはステープルSで綴じられた用紙束Pの拡大図、図5は第1の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Aの分解斜視図である。
【0019】
まず、図4A及び図4Bを参照してステープルSで綴じられた用紙束Pについて説明する。ステープルSは、クラウン部Saと、クラウン部Saの長手方向の両端部を折り曲げて形成される一対の脚部Sb,Sbを有する。用紙束Pは、ステープルSの一対の脚部Sb,Sbを積層された複数枚の用紙の最下層の用紙の第1用紙面Paから最上層の用紙の第2用紙面Pbに向けて貫通させ、貫通した脚部Sb,Sbを内側に折り曲げて綴じることで作成される。ステープルSの綴じ位置は、例えば用紙の角部や縁部である。本実施の形態では、このような用紙束PからステープルSを取り除く。
【0020】
ステープル取り外し装置100Aは、用紙束PからステープルSを引き抜くクラウン部Saと第1用紙面Paとの間に挿入可能な楔板(挿入部)112を含むステープル抜き機構部110Aと、載置台104上に載置された用紙束Pを押さえる紙押さえ機構部170と、ステープル抜き機構部110A及び紙押さえ機構部170とを駆動する駆動部205と、前記各部を収容する空間を区画するケース250とを備える。ケース250は、図5に示すように、モータ206、ステープル抜き機構部110A及び紙押さえ機構部170の左右方向のそれぞれに対向して配置される第1側壁252及び第2側壁253を有する。
【0021】
駆動部205は挿入部移動部の一例で、例えばDCモータで構成されるモータ206と、図示しない複数のギアで構成され、前記複数のギアを介して駆動軸144に接続されている。モータ206は、例えば起動スイッチ108のオンにより駆動し、駆動軸144を回転させることで、ステープル抜き機構部110A及び紙押さえ機構部170を駆動する。具体的には、モータ206は、駆動軸144等を介して楔板112に接続され、楔板112を第1用紙面Paに沿って移動させる。
【0022】
ステープル抜き機構部110Aは、載置面104hに用紙束Pが載置された状態において、用紙束Pのクラウン部Saが露出する側の第1用紙面Paと対向するように配置され、筐体102内を前進してクラウン部Saと第1用紙面Paとの間に挿入可能な楔板112と、楔板112に接続され、楔板112の載置面104hに対する用紙束Pの厚み方向における位置を調整可能な調整機構(挿入部調整部)200Aとを備える。なお、本実施の形態において、楔板112の筐体102内の前側から後側への移動を前進とし、筐体102内の後側から前側への移動を後退とする。また、楔板112の前進する方向を挿入方向Dとする。
【0023】
楔板112は、筐体102の前後方向に移動可能に構成され、用紙束PとステープルSとの間に挿入されることで用紙束PからステープルSを引き抜く部材である。楔板112は、細長の板状部材であって、用紙束とステープルSとの間に挿入し易いように先端側が先細り形状となっている。より具体的には、楔板112の先端側は、先端部に向かって板厚が徐々に薄くなるように構成されている。楔板112の基端部は、楔板ホルダ114に取り付けられている。
【0024】
楔板ホルダ114は平板を折り曲げ加工して形成される部材からなり、楔板ホルダ114の下部には軸孔を介して楔板軸118が取り付けられている。楔板軸118は、楔板112を第1用紙面Pa(載置台104)に沿って平行に移動させるための軸である。楔板ホルダ114の前部側には、軸孔を介して楔板ドライブ軸126が取り付けられている。楔板ドライブ軸126は、楔板112を前進及び後退移動させる軸である。
【0025】
楔板112に対向するとともに楔板ホルダ114の内側には、クラウンホルダ116が設けられている。クラウンホルダ116は、用紙束Pから引き抜かれたステープルSを支持するための部材である。クラウンホルダ116の側壁の下部には、軸孔を介して楔板軸118が取り付けられている。クラウンホルダ116の側壁の後部には、軸孔を介して楔板ドライブ軸126が取り付けられている。このような構成により、クラウンホルダ116は、楔板112と一体で前進及び後退移動できるようになっている。
【0026】
載置台104上に載置された用紙束PのステープルSに対して楔板112の挿入方向Dの下流側(後方)には、ステープル押さえ部162が設けられている。ステープル押さえ部162は、楔板112の挿入方向Dとは反対方向からステープルSのクラウン部に当接してクラウン部の挿入方向Dへの移動を規制する。ステープル押さえ部162は、支持部材163によって支持されている。
【0027】
支持部材163は、図4Aに示すように、ステープル押さえ部162の両側面部から後方側に折り曲げられた一対の平板部材で構成される。支持部材163の一端部にステープル押さえ部162が取り付けられ、支持部材163の他端部が軸158によって回動可能に支持されている。
【0028】
楔板112とクラウンホルダ116との間には、図4Aに示すように、エジェクタ156が挿入、挟持される。エジェクタ156は、ステープルSを引き抜いて楔板112及びクラウンホルダ116が後退する際に、クラウンホルダ116によって保持されるステープルSに当接してステープルSを下方のダストボックス202内に落下させる。エジェクタ156は、エジェクタレバー154によって支持されている。
【0029】
エジェクタレバー154は、一対の平板部材から構成され、支持部材163の外側に重なるようにして配置される。エジェクタレバー154の後部には軸孔を介して軸158が取り付けられており、エジェクタレバー154が軸158を支点として回動可能に構成されている。また、エジェクタレバー154は、引張バネ(図示省略)を介して支持部材163に取り付けられる。
【0030】
[調整機構200Aの構成例]
調整機構200Aは挿入部調整部の一例で、図4A及び図5に示すように、基端部140d(前端)と先端部140e(後端)とを有する引下げリンク140と、基端部140dと先端部140eの間に設けられる回動支点部(回転軸)Fと、基端部140dと回動支点部Fとの間に位置し、回動支点部Fが反時計方向に回転すると、載置面104hから離れる方向に移動する第1部140bと、先端部140eと回動支点部Fとの間に位置し、回動支点部Fが反時計方向に回転すると、載置面104hに近づく方向に移動する第2部140cと、第1部140bを載置面104hから離れる方向に移動させる調整支点軸(第1部移動部)122とを備える。引下げリンク140の第1部140bには、調整支点軸122が回転可能に支持される。引下げリンク140の第2部140cには、回動支点部Fから第2部140cの先端部140eに向けて延びる長孔141が設けられ、楔板ホルダ114及び楔板軸118等の係合部を介して楔板112が長孔141に接続(係合)される。
【0031】
引下げリンク140は、図3図5及び図7に示すように、例えば金属板を折り曲げ加工して形成される一対の平板部材から構成され、クラウンホルダ116の下方かつ内側のそれぞれに配置される。引下げリンク140には、前後方向に沿って延びる長孔141が形成されている。長孔141の長径は、楔板112の前後方向における移動範囲に基づいて決定される。長孔141には、楔板軸(接続部)118がスライド可能に挿通される。これにより、楔板軸118に取り付けられた楔板112及びクラウンホルダ116が、引下げリンク140の長孔141の長径方向に沿って移動することで前進及び後退できるようになっている。また、引下げリンク140の第1部140bには調整支点軸122が取り付けられ、引下げリンク140は調整支点軸122を回動することにより回動支点部Fを支点として回動可能に構成されている。
【0032】
長孔141の下端縁には、上方に突出する突出部141aが形成されている。突出部141aの長径方向の長さ(区間)は、楔板112が用紙束Pの第1用紙面Paとクラウン部Saとの間に挿入されるまで、楔板112を持ち上げて第1用紙面Paに押し付けられた状態を維持できる長さで構成される。これは、楔板112が一度用紙束PとステープルSのクラウン部との間に挿入されれば、その状態が保持されるため、それ以降は楔板112を持ち上げる必要がないからである。これにより、用紙束Pに楔板112を押し付ける力が常時作用することを防止できるので、用紙束Pへのダメージを防止することができる。
【0033】
引下げリンク140の略中央部に形成される軸孔には、駆動軸144が挿通される。駆動軸144の引上げリンク140よりも外側には、引上げリターンカム150が取り付けられている。引下げリンク140の外側の中央上部側には、引下げリターンカムローラー152が引下げリターンカム150に当接可能に取り付けられている。引下げリンク140、引上げリターンカム150及び引下げリターンカムローラー152は、ステープルSを用紙束Pから引き抜く際に楔板112を載置台104から離れる方向に引き下げるための機構の一例である。また、本実施の形態において回動支点部Fは、引下げリターンカム150と引下げリターンカムローラー152との接点位置の中心である。
【0034】
[調整支点軸122の構成例]
図6Aは第1の実施の形態に係る調整支点軸122の斜視図、図6Bは第1の実施の形態に係る調整支点軸122の側面図である。
【0035】
調整支点軸122は、偏心軸A1を有し、偏心軸A1を中心に回転可能に構成され、偏心軸A1の外周面が引下げリンク140に設けられた第1部140bに当接する。
【0036】
調整支点軸122は、第1軸径D1を有する第1軸部122aと、第1軸部122aの軸心方向の両端部のそれぞれに連続して設けられ、第1軸径D1よりも小さい第2軸径D2を有する第2軸部122b,122cとを備える。
【0037】
第1軸部122aは、図5に示すように、引下げリンク140の軸孔140a,140aに挿通され、引下げリンク140によって回転可能に支持される。第2軸部122bは、第1側壁252の軸孔252cに挿通され、第1側壁252によって回転可能に支持される。第2軸部122cは、第2側壁253の軸孔253cに挿通され、第2側壁253によって回転可能に支持される。
【0038】
第1軸部122aの偏心軸A1は、第2軸部122b,122cの軸A2とは、径方向に距離Xだけずれた位置に設けられる。また、第2軸部122b,122cは、第1軸部122aの外周の内側であって、第2軸部122bの外周の一部が第1軸部122aの外周の一部に接するように設けられる。
【0039】
第1軸部122aのうち第2軸部122b,122cから外側に突出する部分は、楔板112の載置台104からの突出量を調整する調整部122d(図6Bの色付き部分参照)となっている。また、調整部122dにおける第2軸部122b,122cから突出した部分のうち、最大の径を有する部分を最大部Mとする。このような構成により、調整支点軸122の第2軸部122b,122cが軸A2回りに回転すると、第1軸部122aも偏心軸A1回りに回転し、第1軸部122aの回転位置に応じて引下げリンク140を上下方向に回動できるようになっている。
【0040】
調整支点軸122の第2軸部122bには、図5に示すように、調整つまみ106が取り付けられている。操作者は、調整つまみ106を回転操作し、調整支点軸122を時計回り又は反時計回りに回転させることで、載置台104の高さを調整する。
【0041】
[紙押さえ機構部170の構成例]
図3及び図4Aに示すように、紙押さえ機構部170は、第1側壁252を介して筐体102の内部から外部に跨って設けられる。紙押さえ機構部170の外部側の載置台104に対向する位置には、紙押さえ板192が設けられている。紙押さえ板192は、ステープル取り外し動作が開始されると、載置台104側に降下していき、載置台104上の用紙束Pを押し付ける。
【0042】
[ステープル取り外し装置100Aの楔板112の突出量調整時の動作例]
次に、楔板112の載置台104に対する突出量を変更する場合のステープル取り外し装置100Aの動作について説明する。なお、以下では、図7に示すように、楔板軸118が引下げリンク140の長孔141の突出部141a上に位置し、楔板112を載置台104から突出させた場合の楔板112の載置台104から突出する突出量を基準として説明する。また、この場合の第1軸部122aの最大部Mが前側に位置する状態を、楔板112の標準の突出量である中間位置とし、調整つまみ106の中間位置とする。さらに、以下では、ステープル取り外し装置100Aの左側の動作について説明するが、ステープル取り外し装置100Aの右側も同様の動作であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
図7は、第1の実施の形態に係る楔板112の突出量を第1突出量H1とする場合のステープル取り外し装置100Aの動作を示す図である。なお、楔板112の第1突出量H1は、調整つまみ106を中間位置に設定した場合の突出量である。
【0044】
ユーザーにより調整つまみ106が中間位置に設定されると、調整支点軸122の調整部122dの最大部Mが挿入方向Dとは反対の水平方向に向く。この場合、調整支点軸122の調整部122dは、偏心軸A1と軸A2が水平であり楔板112の突出量にほぼ影響しないため、引下げリンク140は上下動せず、楔板112の上面112cの載置面104hに対する突出量が標準の第1突出量H1となる。
【0045】
図8は、第1の実施の形態に係る楔板112の突出量を第2突出量H2とする場合のステープル取り外し装置100Aの動作を示す図である。
【0046】
ユーザーにより楔板調整つまみ107が中間位置から反時計回りに回されると、調整支点軸122も反時計回りに回転する。これに伴い、調整支点軸122の調整部122dの最大部Mが下方に移動することで、調整部122dの最大部Mの突出量に応じて、引下げリンク140の第1部140bが楔板112から離れる方向に移動する。これにより、引下げリターンカム150と引下げリターンカムローラー152との回動支点部Fを中心に引下げリンク140が反時計回りに回転し、第2部140cに設けられた楔板軸118が押し上がる。
【0047】
楔板軸118が押し上げられると、楔板ドライブ軸126を支点として楔板112が上方に回動することで楔板112の先端側が上昇する。この場合、楔板112の上面112cの載置面104hに対する突出量は、図7に示す第1突出量H1よりも多い第2突出量H2となる。このように、楔板調整つまみ106を中間位置から反時計回りに回すことで、楔板112の突出量を基準の突出量から多くできる。
【0048】
図9は、第1の実施の形態に係る楔板112の突出量を第3突出量H3とする場合におけるステープル取り外し装置100Aの動作を示す図である。
【0049】
ユーザーにより楔板調整つまみ106が中間位置から時計回りに回されると、調整支点軸122も時計回りに回転する。これに伴い、調整支点軸122の調整部122dの最大部Mが上方に移動することで、調整部122dの最大部Mの突出量に応じて引下げリンク140の第1部140bが楔板112に近づく方向に移動する。これにより、引下げリターンカム150と引下げリターンカムローラー152との回動支点部Fを中心に引下げリンク140が時計回りに回転し、第2部140cに設けられた楔板軸118が押し下がる。
【0050】
楔板軸118が押し下げられると、楔板ドライブ軸126を支点として楔板112が下方に回動することで楔板112の先端側が降下する。この場合、楔板112の上面112cにおける載置面104hに対する突出量は、図9に示す第1突出量H1よりも少ない第3突出量H3となる。このように、楔板調整つまみ107を中間位置から時計回りに回すことで、楔板112の突出量を基準の突出量から少なくできる。
【0051】
[ステープル取り外し装置100の除針時の動作例]
次に、用紙束PからステープルSを引き抜く場合におけるステープル取り外し装置100Aの動作について図4等を参照して説明する。
【0052】
ユーザーにより用紙束Pが載置台104上に載置され、起動スイッチ108が押されると、モータ206が駆動することで、紙押さえ機構部170の紙押さえ板192が下降し、紙押さえ板192により用紙束Pが押さえられる。続けて、用紙束Pが紙押さえ板192により押さえられると、楔板112が、挿入方向Dに沿って前進し、用紙束PとステープルSのクラウン部との間に挿入される。楔板112が前進すると、楔板112の厚みの増加に伴ってステープルSの脚部Sb,Sbが徐々に起きた状態となり、楔板112による押し込みが完了すると、ステープルSの脚部Sb,Sbが起きる。
【0053】
続けて、図4A等に示す引下げリンク140、引上げリターンカム150及び引下げリターンカムローラー152の動作により、楔板112及びクラウンホルダ116が載置台104から離間する方向、つまり下方に移動する。これにより、脚部Sb,Sbが起きた状態のステープルSが用紙束Pから引き抜かれる。ステープルSが用紙束Pから引き抜かれると、楔板112及びクラウンホルダ116が後退しつつ、載置台104に近づく方向、つまり上方に再び移動する。つまり、楔板112等がホームポジションに戻る。これにより、クラウンホルダ116からステープルSが落下し、ステープルSがダストボックス202内に収容される。このような動作が、ステープル取り外し時に繰り返し実行される。
【0054】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、調整つまみ106を操作することで、調整支点軸122を介して引下げリンク140を上下方向に回動させ、楔板112の載置台104に対する突出量を変更することができる。これにより、用紙束PやステープルSの種類に応じて楔板112の載置台104に対する突出量を変更できるので、ステープル取り外し対象となる用紙束Pの用紙やステープルSの種類、綴じ位置が異なる場合であっても、用紙やステープルSの種類等の各種状況に応じた楔板112の載置台104に対する最適な突出量(高さ)を設定できる。その結果、ステープル取り外し時の用紙へのダメージやステープル取り外しの失敗を防止できる。
【0055】
また、他のユーザーが使用していない種類の用紙で構成される用紙束Pなど、一般的な用紙束Pとは楔板112の最適な突出量が異なる種類の用紙束Pに対するステープル取り外しを行う場合でも、楔板112の突出量を適宜調整できる。また、薄い用紙束Pの角部の綴じが多いユーザーや、厚い用紙束Pの平綴じが多いユーザーなど、各ユーザーが使用頻度の高い用紙束Pに対して、ユーザー自身が楔板112の最適な突出量に調整できる。
【0056】
さらに、ステープル取り外し装置100Aの部品精度の差で、楔板112の突出量に誤差が生じる場合や、ステープル取り外し装置100Aの長期間の使用により部品に摩耗や変形が生じた場合でも、ユーザーにより楔板112の突出量を任意に設定して解決できるので、ステープル取り外し装置100Aを問題なく継続して使用できる。
【0057】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態のステープル取り外し装置100Bでは、載置台104の楔板112に対する位置を変更することで、楔板112の載置台104に対する突出量を変更する。なお、第1の実施の形態のステープル取り外し装置100Aと共通する構成及び動作等については、共通の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0058】
[ステープル取り外し装置100Bの構成例]
図10は第2の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Bの斜視図、図11は第2の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Bの分解斜視図、図12は第2の実施の形態に係るスライド軸261及び第1取付部104aの要部拡大斜視図、図13は第2の実施の形態に係る調整つまみ106及び調整ネジ107の要部拡大断面図である。
【0059】
ステープル取り外し装置100Bは、少なくとも、ステープル抜き機構部110B等を収容するケース250と、載置台104に接続され、載置面104hの楔板112に対する用紙束Pの厚み方向における位置を調整可能な載置部調整部の一例である調整機構200Bとを備える。
【0060】
ケース250は、左辺、右辺、前辺及び後辺を有する平面視矩形状の底壁251と、底壁251の左辺から立設する第1側壁252と、底壁251の右辺から立設し、第1側壁252に対向する第2側壁253と、底壁251の前辺から立設し、第1側壁252と第2側壁253との間を結ぶ前壁254と、底壁251の後辺から立設し、前壁254に対向する後壁255とを有する。
【0061】
図11及び図12に示すように、第1側壁252には、載置部調整部の一例である調整リンク260のスライド軸(ガイド軸)261をスライド可能に係合するためのガイド溝252aが形成されている。ガイド溝252aは、第1側壁252の前後方向に延びる開口であり、その開口の後端側にスライド軸261の拡径部を挿入可能な挿入口が設けられる。
【0062】
第2側壁253には、調整リンク260のスライド軸262をスライド可能に係合するためのガイド溝253aが形成されている。ガイド溝253aは、第2側壁253の前後方向に延びる開口であり、その開口の後端側にスライド軸262の拡径部を挿入可能な挿入口が設けられる。
【0063】
図10及び図11に示すように、載置台104には、左右方向の側面部のそれぞれから下方に延びる側壁である第1取付部104a及び第2取付部104bが設けられる。なお、載置台104、第1取付部104a及び第2取付部104bは、金属板を折り曲げ加工することで形成することもできる。
【0064】
載置台104は、ステープル抜き機構部110B等の上方を閉塞するように配置され、第1取付部104aが第1側壁252の外側上端に取り付けられるとともに、第2取付部104bが第2側壁253の外側上端に取り付けられている。
【0065】
第1取付部104a、第2取付部104b、第1側壁252及び第2側壁253の前端部に形成された各軸孔には、支点軸101が挿通される。支点軸101の両端部のそれぞれには、止め具270,271が取り付けられており、支点軸101がケース250から外れないように構成される。
【0066】
図11及び図12に示すように、第1取付部104aの後端部には、上下方向に延びる長孔104eが形成されている。第1取付部104aの後端側は、段付きガイドピン272により長孔104eを介して、第1側壁252に上下方向に移動可能に取り付けられる。
【0067】
同様に、第2取付部104bの後端部には、上下方向に延びる長孔104fが形成されている。第2取付部104bの後端側は、段付きガイドピン273により長孔104fを介して、第2側壁253に上下方向に移動可能に取り付けられる。
【0068】
第1取付部104aの後端部の下方に張り出した部位には、ガイド溝104cが形成されている。ガイド溝104cは、前端側から後端側にむけて載置台104から離れる方向に傾斜した傾斜面を備え、その後端縁は切り欠かれた開口で構成される。ガイド溝104cには、調整リンク260のスライド軸261が傾斜面に当接しスライド可能に係合される。
【0069】
同様に、第2取付部104bの後端部の下方に張り出した部位には、ガイド溝104dが形成されている。ガイド溝104dは、後端縁から前方かつ載置台104側に向かって(斜め前方)に傾斜するように切り欠かれた開口で構成される。ガイド溝104dには、調整リンク260のスライド軸262が傾斜面に当接しスライド可能に係合される。
【0070】
図10及び図13に示すように、調整機構200Bは、調整つまみ106と、調整つまみ106が取り付けられる調整ネジ107と、楔板112の挿入方向D及び挿入方向とは反対方向に移動可能な調整リンク260とを備える。調整機構200Aは、操作者により操作可能に構成される。
【0071】
前壁254の前面略中央上部には、調整ネジ107の頭部107aが取り付けられ、調整ネジ107のネジ溝が形成されたネジ部107bが前壁254の前方側に向かって突出している。調整ネジ107のネジ部107bには、調整つまみ106が回転可能に取り付けられている。第2の実施の形態では、調整つまみ106が、筐体102の側面側ではなく、筐体102の前面側に設けられる。ユーザーにより調整つまみ106が回されると、調整つまみ106が調整ネジ107の軸心方向である前後方向に移動する。
【0072】
図10及び図11に示すように、調整リンク260は、略U字状からなる細長の板状部材であって、前壁254、第1側壁252及び第2側壁253の上部外周に沿うようにしてケース250に取り付けられている。具体的には、調整リンク260は、前壁254に沿って延びる前部260aと、第1側壁252に沿って延びる第1側部260bと、第2側壁253に沿って延びる第2側部260cとを有する。
【0073】
調整リンク260の前壁254側の略中央部の下端縁には凹部260dが形成されており、凹部260dが前壁254に形成された調整ネジ107に上方側から嵌合される。このとき、調整リンク260の前面が、図13に示すように、調整つまみ106の後面に当接する。
【0074】
図11及び図12に示すように、第1側部260bの後端部内側にはスライド軸261の一端部が取り付けられる。スライド軸261の他端側は、第1側壁252のガイド溝252a及び第1取付部104aのガイド溝104cのそれぞれにスライド可能に係合する。
【0075】
第2側部260cの後端部内側には、スライド軸262の一端部が取り付けられる。スライド軸262の他端側は、第2側壁253のガイド溝252a及び第2取付部104bのガイド溝104dのそれぞれにスライド可能に係合する。
【0076】
このような構成により、調整つまみ106が前後方向に移動すると、これに連動して調整リンク260が前後方向に移動することで、スライド軸261がガイド溝104c,252aをスライドし、スライド軸262がガイド溝104d,253aをスライドする。このとき、スライド軸261,262は、上下方向の位置を変位せずにガイド溝252a,253aに沿って前後方向に移動するので、ガイド溝104c,104dは傾斜面にスライド軸261,262が当接し上下方向に押されながらスライドする。これにより、ガイド溝104c,104dでは、前後方向の移動が上下方向の移動に変換されるので、第1取付部104a及び第2取付部104bが上下移動する。
【0077】
[ステープル取り外し装置100Bの動作例]
次に、第2の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Bの動作例について説明する。なお、以下では、載置台104の楔板112に対する位置のうち、中間(標準)となる位置での楔板112の突出量を第4突出量H4とする。また、この場合における調整つまみ106の回転位置を中間位置と呼ぶ。さらに、以下では、ステープル取り外し装置100Bの左側の動作について説明するが、ステープル取り外し装置100Bの右側と同様の構成及び動作であるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
図14Aは、第2の実施の形態に係る楔板112の突出量を第4突出量H4とする場合のステープル取り外し装置100Bの動作図、図14Bはスライド軸261の動作図、図14Cは楔板112及び載置台104の動作図である。
【0079】
図14Aに示すように、ユーザーにより調整つまみ106が中間位置に設定されると、図14Bに示すように、スライド軸261がガイド溝104cの長径方向の略中間に位置し、段付きガイドピン272が第1取付部104aの長孔104eの長径方向の略中間に位置する。これにより、図14Cに示すように、楔板112の上面112cが載置面104hから第4突出量H4だけ突出する。
【0080】
図15Aは、第2の実施の形態に係る楔板112の突出量を第5突出量H5とする場合のステープル取り外し装置100Bの動作図、図15Bはスライド軸261の動作図、図15Cは楔板112及び載置台104の動作図である。
【0081】
図15Aに示すように、ユーザーにより調整つまみ106が中間位置から時計回りに所定角度回されると、調整つまみ106が調整ネジ107に沿って前進することで、調整つまみ106に取り付けられた調整リンク260も前進する。これに伴い、図15Bに示すように、スライド軸261が第1取付部104aのガイド溝104c及び第1側壁252のガイド溝252aに沿ってスライドして前進することで、第1取付部104aがガイド溝104c及び長孔104eに沿って押し上げられる。載置台104は、図15Cに示すように、支点軸101を支点として楔板112に近づく方向に移動する。つまり、載置台104の先端側(後方側)の高さが上昇する。これにより、楔板112の上面112cが、載置面104hとほぼ同一の高さとなり、第4突出量H4よりも少ない第5突出量H5となる。
【0082】
図16Aは、第2の実施の形態に係る楔板112の突出量を第6突出量H6とする場合のステープル取り外し装置100Bの動作図、図16Bはスライド軸261の動作図、図16Cは楔板112及び載置台104の動作図である。
【0083】
図16Aに示すように、ユーザーにより調整つまみ106が中間位置から反時計回りに所定角度回されると、調整つまみ106が調整ネジ107に沿って後退することで、調整つまみ106に取り付けられた調整リンク260も後退する。これに伴い、図16Bに示すように、スライド軸261が第1取付部104aのガイド溝104c及び第1側壁252のガイド溝252aに沿ってスライドして後退することで、第1取付部104aがガイド溝104c及び長孔104eに沿って押し下がる。載置台104は、図16Cに示すように、支点軸101を支点として楔板112から離れる方向に移動する。つまり、載置台104の先端側の高さが下降する。これにより、楔板112の上面112cが、載置面104hから突出した位置となり、第4突出量H4よりも多い第6突出量H6となる。
【0084】
以上説明したように、第2の実施の形態では、調整つまみ106の操作により調整リンク260を前後方向に移動させ、調整リンク260の前後方向の移動を載置台104の上下方向の移動に変換する。これにより、用紙束PやステープルSの種類に応じて楔板112の載置台104に対する突出量を変更できるので、ステープル取り外し対象となる用紙束Pの用紙やステープルSの種類、綴じ位置が異なる場合であっても、用紙やステープルSの種類等の各種状況に応じた楔板112の載置台104に対する最適な突出量を設定できる。その結果、ステープル取り外し時の用紙へのダメージやステープル取り外しの失敗を防止できる。
【0085】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、楔板112の取付位置を直接変更することで、楔板112の載置台104に対する突出量を変更している。なお、第1の実施の形態のステープル取り外し装置100Aと共通する構成及び動作等については、共通の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0086】
[ステープル取り外し装置100Cの構成例]
図17は第3の実施の形態に係るステープル取り外し装置100Cの斜視図、図18は第3の実施の形態に係る調整機構200Cの斜視図、図19は第3の実施の形態に係る調整機構200Cの分解斜視図、図20Aは第3の実施の形態に係る調整機構200C断面図、図20B図20Aの要部拡大図である。
【0087】
図17に示すように、載置台104には、工具を筐体102内に挿入して調整ネジ284,285を操作するための調整孔104gが形成されている。調整孔104gは、載置台104を厚み方向に貫通し、2個の調整ネジ284,285を含むような外形からなる開口で構成される。なお、調整孔104gは、調整ネジ284,285の個数に合わせて2個の開口で構成してもよい。
【0088】
図18図19図20A及び図20Bに示すように、ステープル抜き機構部110Cは、楔板ホルダ114と、楔板112と、調整機構200Cとを備える。調整機構200Cは、波スプリング280と、楔板サポート282と、調整ネジ284,285とを有する。
【0089】
楔板ホルダ114の天面部114cには、調整ネジ284,285が挿通される2個の挿通孔114a,114b(図19参照)が形成されている。楔板112と楔板ホルダ114との間には、波スプリング280が設けられている。波スプリング280は、楔板112及び楔板ホルダ114が離れる方向に付勢し、楔板112と楔板ホルダ114との間の隙間C(図20B参照)を常時広げるように構成される。これにより、楔板112等のガタつきが防止できるようになっている。波スプリング280には、調整ネジ284,285が挿通される2個の挿通孔280a,280bが形成されている。
【0090】
楔板112の基端側には、調整ネジ284,285が嵌め合わされる2個の挿通孔112a,112b(図19参照)が形成されている。楔板112の下面側には、楔板112を支持する楔板サポート282が設けられている。楔板サポート282には、調整ネジ284,285が嵌め合わされる2個のネジ孔282a,282b(図19参照)が形成されている。
【0091】
調整ネジ284,285は、楔板ホルダ114の天面部114c側から、楔板ホルダ114の挿通孔114a,114b及び波スプリング280の挿通孔280a,280b、楔板112の挿通孔112a,112bに挿通され、楔板サポート282のネジ孔282a,282bに嵌め合わされる。このようにして、ステープル抜き機構部110Cでは、楔板ホルダ114、波スプリング280、楔板112及び楔板サポート282が一体的に構成される。
【0092】
[ステープル取り外し装置100Cの動作例]
図20A,20B等を参照して、楔板112の載置台104に対する取付位置を変更する場合の動作について説明する。
【0093】
楔板112の載置台104の表面に対する突出量を変更する場合、図17に示す載置台104の調整孔104gに工具を挿入し、工具により調整ネジ284,285を時計回り、又は反時計回りに回す。
【0094】
例えば、工具により調整ネジ284,285を時計回りに回すと、楔板112及び楔板サポート282が波スプリング280の弾性力に抗して楔板ホルダ114に近づく方向に移動し、楔板112と楔板ホルダ114との隙間Cが狭くなる。つまり、楔板112の載置台104に対する取付位置が上昇する。これにより、楔板112の載置台104の表面からの突出量を多くできる。
【0095】
これに対し、例えば、工具により調整ネジ284,285を反時計回りに回すと、楔板112及び楔板サポート282が楔板ホルダ114から離れる方向に移動し、楔板112と楔板ホルダ114との隙間Cが広くなる。つまり、楔板112の載置台104に対する取付位置が下降する。これにより、楔板112の載置台104の表面からの突出量を少なくできる。
【0096】
以上説明したように、第3の実施の形態では、調整ネジ284,285の操作により楔板112の取付位置を直接変更する。これにより、用紙束やステープルの種類に応じて楔板112の載置台104に対する突出量を変更できるので、ステープル取り外し対象となる用紙束Pの用紙やステープルの種類、綴じ位置が異なる場合であっても、用紙やステープルの種類等の各種状況に応じた楔板112の載置台104に対する最適な突出量を設定できる。その結果、ステープル取り外し時の用紙へのダメージやステープル取り外しの失敗を防止できる。
【符号の説明】
【0097】
100A,100B,100C ステープル取り外し装置
104 載置台(載置部)
104h 載置面
106 調整つまみ(操作部)
112 楔板(挿入部)
112c 上面
114 楔板ホルダ(係合部)
118 楔板軸(係合部)
122 調整支点軸(第1部移動部)
140 引下げリンク
140b 第1部
140c 第2部
200A,200C 調整機構(挿入部調整部)
200B 調整機構(載置部調整部)
205 駆動部(挿入部移動部)
206 モータ
260 調整リンク
F 回動支点部(回転軸)
P 用紙束
Pa 第1用紙面(用紙面)
S ステープル
Sa クラウン部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17
図18
図19
図20A
図20B