(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20231205BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231205BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20231205BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/16 C
G08G1/0969
G09B29/00 F
(21)【出願番号】P 2019063063
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(72)【発明者】
【氏名】小川 修治
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G05D 1/00- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行するルートの探索を行うルート探索部と、
前記車両の周辺画像を含む前記車両の周辺情報を取得する周辺情報取得部と、
前記周辺情報に基づいて前記車両周辺の道路の安全度合を判定する安全度合判定部と、
探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御部と、
を備え、
前記安全度合判定部は、前記周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が前記車両の走行の支障となる位置に存在している際に、前記周辺画像上における前記障害物の位置の変化が、前記障害物を避ける前記車両の挙動を示す場合、前記道路に予め設定された安全度合を低くするよう変更し、
前記ルート探索部は、前記安全度合が低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う、ナビゲーション装置。
【請求項2】
前記車両の操作情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部をさらに備え、
前記安全度合判定部は、さらに、前記障害物が検出され、かつ、前記障害物が前記車両の走行の支障となる位置に存在した際に、前記車両情報が車両操作を行ったことを示し、かつ、前記周辺画像上で前記障害物が前記車両操作と逆の方向に移動したことを検出した場合、及び、前記周辺画像上での前記障害物の動きベクトルの変化が、前記車両と前記障害物の接近に逆らう向きへの変化である場合、のうち少なくともいずれかの場合に、前記障害物を避ける前記車両の挙動があったとして、前記道路に予め設定された安全度合を低くするよう変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記安全度合判定部は、前記障害物が検出され、かつ、前記障害物が車両の走行の支障となる位置に存在した際に、前記障害物と前記車両との距離に応じた所定のタイミングにて取得した車両情報によって、前記道路の安全度合の判定を行う、
ことを特徴とする請求項2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
車両の周辺画像を含む前記車両の周辺情報を取得する周辺情報取得ステップと、
前記周辺情報に基づいて、前記周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が前記車両の走行の支障となる位置に存在している際に、前記周辺画像上における前記障害物の位置の変化が、前記障害物を避ける前記車両の挙動を示す場合、前記
車両周辺の道路に予め設定された安全度合を低くするよう変更する安全度合判定ステップと、
前記安全度合が低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う、ルート探索ステップと、
探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御ステップと、
を含むことを特徴とするナビゲーション方法。
【請求項5】
コンピュータに、
車両の周辺画像を含む前記車両の周辺情報を取得する周辺情報取得ステップと、
前記周辺情報に基づいて、前記周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が前記車両の走行の支障となる位置に存在している際に、前記周辺画像上における前記障害物の位置の変化が、前記障害物を避ける前記車両の挙動を示す場合、前記
車両周辺の道路に予め設定された安全度合を低くするよう変更する安全度合判定ステップと、
前記安全度合が低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う、ルート探索ステップと、
探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御ステップと、
を含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置、ナビゲーション方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行において、道路上には各種の障害物が発生し、車両の安全な走行にとって支障となる。特許文献1には、水たまりや落ち葉などの障害物が発生する可能性がある場所ごとに、前記障害物の種類と、前記障害物の発生条件とを関連付けた障害物情報を生成して地図データとする地図データ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
道路上に存在する障害物、例えば歩行者や自転車、路上駐車車両が多い場合、車両を運転するユーザはその障害物を回避する車両操作を行う必要があり、歩行者の急な動きや路上駐車車両の陰からの飛び出しなど、事故の要因となり得る挙動も多くなる。このような道路ごとの障害物の多さを地図データとすることで、各道路の安全度合を把握する技術が求められている。
【0005】
そこで本発明は、上記課題を解決すること、すなわち、道路上に存在する車両の安全な走行にとって支障となる障害物を検出し、障害物の多寡に応じて各道路の安全度合を設定して安全度合が高い道路を優先的に探索することで、ユーザにとってより安全なルートを案内することができるナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のナビゲーション装置の一側面は、車両が走行するルートの探索を行うルート探索部と、前記車両の周辺画像を含む車両周辺の情報を取得する周辺情報取得部と、前記周辺情報に基づいて車両周辺の道路の安全度合を判定する安全度合判定部と、探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御部と、を備え、前記安全度合判定部は、前記車両周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合、前記道路の安全度合を相対的に低いと判定し、前記ルート探索部は、前記安全度合が相対的に低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う。
【0007】
本発明のカーナビゲーション方法の一側面は、安全度合が相対的に低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う、ルート探索ステップと、前記車両の周辺画像を含む車両周辺の情報を取得する周辺情報取得ステップと、前記周辺情報に基づいて車両周辺の道路の安全度合を、前記車両周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合、前記道路の安全度合を相対的に低いと判定する安全度合判定ステップと、探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御ステップと、を含む。
【0008】
本発明のプログラムの一側面は、コンピュータに、安全度合が相対的に低いと判定された道路が選択される可能性を低く設定したルート探索を行う、ルート探索ステップと、前記車両の周辺画像を含む車両周辺の情報を取得する周辺情報取得ステップと、前記周辺情報に基づいて車両周辺の道路の安全度合を、前記車両周辺画像から障害物が検出され、かつ、前記障害物が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合、前記道路の安全度合を相対的に低いと判定する安全度合判定ステップと、探索した前記ルートをユーザに提示するルート提示制御ステップと、を含む処理を実行させるを含む処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、障害物を検出し、自車両の安全な走行にとって支障となるか否かを判断して当該の走行区間の安全度合を決定することにより、ユーザにとってより安全で障害物との衝突可能性が低い道路を優先的に探索するルート案内を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ナビゲーション装置1の概要を示す図である。(実施形態1)
【
図2】ナビゲーション装置1の処理について説明するためのフローチャートであ る。
【
図3】ナビゲーション装置1の概要を示す図である。(実施形態2)
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るナビゲーション装置1の機能構成について説明するための機能ブロック図である。
【0012】
図1において、ナビゲーション装置1は、例えば、ルート探索部10、周辺情報取得部20、安全度合判定部30、提示制御部50を含んで構成される。モニタ60、スピーカ70を含んでもよい。ナビゲーション装置1は、車両に搭載されるカーナビゲーションシステムの他、ユーザが車両に持ち込んで使用する携帯電話や携帯端末の機能の一部として実装される。
【0013】
ルート探索部10は、現在位置取得部11、目的地情報取得部12、地図情報データベース13、ルート演算部14を含んで構成され、車両の現在位置から、図示しないユーザインタフェースを介して取得した目的地までの適切なルートを、地図情報データベースを参照しながら演算する。演算されたルートは、提示制御部50に出力される。
【0014】
現在位置情報取得部11は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)111などを用いて、車両の現在位置情報を取得する。現在位置情報取得部11はGNSS111を含んで構成されてもよく、GNSS111が出力する現在位置情報を取得する入力部であってもよい。現在位置情報は、緯度経度で表わされる値でもよく、住所などの情報でもよい。高度情報を含んでもよい。現在地情報取得部11は、取得した現在位置情報を、ルート演算部14に出力する。
【0015】
目的地情報取得部12は、例えば、図示しないユーザインタフェースを介して目的地の位置情報を取得する。ユーザインタフェースは、タッチパネル、ボタン、通信を介しての取得など、公知の技術を用いればよい。また地図情報データベース13を参照して、施設名称や住所などによって検索した情報を取得してもよい。目的地情報は、緯度経度で表わされる値でもよく、住所などの情報でもよい。高度情報を含んでもよい。目的地情報取得部12は、取得した目的地情報を、ルート演算部14に出力する。
【0016】
地図情報データベース13は、地図データを記憶しているデータベースである。地図情報データベース13は、地図データを管理する地図情報データベース管理部131を備える。地図情報データベース13に記憶される地図情報は、車両が通行可能な道路等の情報を、例えばリンク情報とノード情報の集合として格納する。リンクとは各種の道路であり、ノードとは交差点、分岐点、合流点などの道路の接続部である。各ノード間を結ぶ各道路が各道路リンクとなる。地図情報データベース13は、ナビゲーション装置1が有する、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、半導体メモリ(例えば、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))などに記憶されるデータベースであってもよい。地図情報データベース13は外部サーバに備えられ、ナビゲーション装置1が有する図示しない通信部によりアクセスされるデータベースであってもよい。
【0017】
ここで、各道路リンクのリンク情報について説明する。第1実施形態に係るナビゲーション装置では、各ノード間を結ぶ道路を、道路リンクと称する。各道路リンクのリンク情報には、例えば、各道路リンクのリンク長、道路幅員、道路名称、道路種別、有料道路である場合には走行料金などの情報が含まれる。また各ノードのノード情報には、例えば、各ノードの緯度経度などの座標情報、交差点名などの情報が含まれる。
【0018】
各道路リンクのリンク情報には、各道路リンクのリンク長、道路幅員、道路種別などに応じて設定されるリンクコストが含まれる。リンクコストは、リンク長に応じた距離コスト、道路幅員に応じた幅員コスト、道路種別が有料道路である場合には走行料金コストなどの種類が設定され、例えば、リンク長が長いほど距離コストが高く設定される。また第1実施形態に係るナビゲーション装置では、各道路リンクのリンクコストの種類として、当該道路リンクの安全度合を判定し、判定された安全度合に基づいたリンクコストを設定する。これを安全リンクコストと称し、道路リンクごとに、相対的に安全である場合にはその道路リンクの安全リンクコストを低く設定し、相対的に安全でない場合にはその道路リンクの安全リンクコストを高く設定する。
【0019】
地図情報データベース管理部131は、地図情報データベース13が記憶するこれら施設および道路に関する情報の更新および検索を行い、また、道路リンクごとにリンク長、道路幅員、道路種別などに応じたリンクコストを設定する。第1実施形態に係るナビゲーション装置では、地図情報データベース管理部131は、後述する安全度合判定部30が判定する安全度合に基づいた安全リンクコストを、道路リンクごとに設定する。
【0020】
ルート演算部14は、上述した車両の現在位置情報および目的地情報を入力とし、地図情報データベース13を参照しながら、現在地から目的地までの適切なルートを演算する。ルートの演算には、例えば、ダイクストラ法によるコスト計算が用いられてよい。リンク長、道路幅員、道路種別などに応じたリンクコストを用い、評価値計算を行って、出発地から目的地までのリンクコストが最も低くなるルートを、適切なルートとして算出する。例えば目的地までの距離が短いルートを優先して探索する距離優先探索モードや、目的地への到着時間が早い、つまり走行時間が短いルートを優先して探索する時間優先探索モードなどを選択することができ、それぞれの探索モードにおいて、上述した各種類のリンクコストの重み付けを変更してユーザの希望に沿ったルートを探索する。
【0021】
第1実施形態に係るナビゲーション装置では、ルート演算部14は、後述する安全度合判定部30が出力する安全度合を入力とし、歩行者や自転車などの障害物との衝突可能性が低いルートを適切とするルートを演算する、安全優先探索モードを備える。より詳細には、第1実施形態に係るナビゲーション装置では、車両の走行の安全を重要視する安全優先探索モードにより、安全リンクコストを大きく重み付けしたリンクコストを用いたダイクストラ法によるコスト計算を行って、目的地までのルートを探索することで、より安全と判定されるルートが設定され易くなる。
【0022】
周辺情報取得部20は、例えば、画像情報取得部21を含んで構成され、車両周辺を撮像した画像情報や、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)やミリ波レーダなどのセンサ類により取得した情報を安全度合判定部30に出力する。
【0023】
画像情報取得部21は、カメラ211などを用いて、車両周辺の画像情報を取得する。画像情報取得部21はカメラ211を含んで構成されてもよく、カメラ211が出力する画像データを取得する入力部であってもよい。カメラ211は、例えば、車両の進行方向である車両前方に向けて設置されるが、これに限定されず、車両側方あるいは車両後方に向けて設置されてもよく、複数のカメラから成るカメラ群として構成されてもよい。
【0024】
安全度合判定部30は、例えば、障害物検出部31と、障害物位置判定部32を含んで構成され、車両走行車線にはみ出して走行している自転車や、車両の走行する車線内に存在する歩行者などの障害物を検出して、これら障害物の情報に基づいて、走行中の道路の安全度合を判定する。安全度合判定部30は、判定した安全度合を、地図情報データベース管理部131に出力する。
【0025】
障害物検出部31は、例えば、周辺情報取得部20が取得した画像情報から、パターンマッチングなどの画像認識技術を用いて、歩行者や自転車、路上駐車車両などの障害物を検出する。障害物検出部31は、例えば、人物認識辞書などを備えて人物を認識する。また、自転車や車両それぞれを認識する辞書を用いて自転車認識および車両認識を行う。画像認識用の辞書をそれぞれに備えることで、樹木や水たまり、標識や電柱を認識して、障害物として検出してもよい。画像認識に用いる辞書は、障害物検出部31が備えてもよく、外部サーバなどに備えられ、図示しない通信部により照会を行ってもよい。歩行者または自転車などの障害物を検出した場合、障害物情報を障害物位置判定部32に出力する。
【0026】
障害物位置判定部32は、周辺情報取得部20が取得した画像情報と障害物検出部31が出力する障害物情報から、画像上の位置に基づいて、検出した障害物が存在する位置が、車両の走行の支障となる位置か否かを判定する。障害物位置判定部32は、取得した画像上において、車両の走行予測軌跡が含まれる領域と、車両の走行予測軌跡が含まれない領域とを予め定めて、検出した障害物がどの領域に存在するかに基づいて、障害物が存在する位置を検出する。例えば、画像の上部は空を撮影しており、画像上部に障害物が検出されても、車両の走行の支障とはならない。画像上の車両の走行予測軌跡が含まれない領域は、カメラ211の取付け位置および取付け角度に応じて、画面上のタッチパネル等をユーザが操作して設定することが好ましい。
【0027】
障害物位置判定部32は、周辺情報取得部20が取得した画像情報に基づいて、車両の走行車線の境界線を認識し、障害物検出部31が出力する障害物が、自車両が走行する車線内に存在するか否かを判定してもよい。障害物位置判定部32は、自車両の左右に車線境界線が存在している場合に、左右それぞれの自車両に最も近い車線境界線の内側を、自車両が走行する自車両走行車線領域とする。画像上の自車両走行車線領域に、検出した障害物、たとえば自転車が存在するか否かによって、障害物が存在する位置が、車両の走行の支障となる位置か否かを判定する。障害物位置検出部32は、画像からガードレールを検出して、自車両が走行する車線を認識し、車両が走行する車線内に車両が存在するか否かを判定してもよい。
【0028】
安全度合判定部30は、例えば、障害物検出部31が自転車などの障害物を検出し、障害物位置判定部32がその自転車が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合、走行中の道路リンクの安全度合を、低いと判定する。あるいは、当該の道路リンクに予め設定されている安全度合を、低めに設定変更する。安全度合は、例えば1(安全でない)から10(安全)までのレベルとして算出される。安全度合は、上中下などの評価であってもよく、100点(安全)を上限とする点数であってもよい。安全度合判定部30は、例えば、予め安全度合レベルが5(中間)に設定されている道路において、上述のように車両走行車線内を走行している自転車などの障害物が存在した場合、安全度合レベルを下げ、4に設定する。
【0029】
安全度合判定部30は、道幅や制限速度、車線境界線や歩道、ガードレールの有無などの地図情報を取得して、道路ごとの安全度合を予め定めてもよい。一般に住宅街では道路の道幅が細く、車線と歩行者用の歩道が分離されていない場合が多い。このような道路では、子供の飛び出しや歩行車と車両との接触が発生する可能性が相対的に高い。例えばガードレールが設定されておらず、車線と歩道との境界が明確でない道路の安全度合を予め低めの設定、例えば、1(安全でない)から10(安全)までのレベルのうち、3としておくことで、より的確な各道路の安全度合を判定することができる。
【0030】
提示制御部50は、ルート探索部10が探索したルート情報を、モニタ60やスピーカ70を介してユーザに報知するよう、ルート情報の出力を制御する。より詳細には、提示制御部50は、例えば、ルート探索部10が安全リンクコストに基づく安全優先探索モードにより探索したルート情報を、地図情報データベース13から取得した地図情報に重畳し、地図画像データを生成してモニタ60に出力して表示させる。また、スピーカ70を介した音声出力により、ユーザに対して探索したルートのルート案内を行う。
【0031】
図2を参照して、実施形態1に係るナビゲーション装置1の動作について説明する。
図2はナビゲーション装置1における、道路の安全度合に基づいたルート探索および各道路リンクの走行コスト設定のフローチャートである。
【0032】
図2において、実施形態1に係るナビゲーション装置1では、ステップ(以下、Sと略記する)1において、現在位置情報取得部11は、GNSS111を用いて車両の現在位置情報を取得する。現在位置情報を取得後、S2に進む。
【0033】
次に、S2において、目的地情報取得部12は図示しないユーザインタフェースを介して目的地の位置情報を取得する。目的地情報を取得後、S3に進む。
【0034】
次に、S3において、ルート演算部14は、車両の現在位置情報および目的地情報から、地図情報データベース13を参照して、適切なルートを演算する。このとき、地図情報データベース13が記憶する各ノードの情報および各ノード間のリンク情報を参照することで、リンクコストの低いリンクを優先的に選択して、現在位置から目的地までの適切なルートを演算する。実施形態1では、安全度合判定部30が判定する各道路リンクの安全度合に基づいて設定される安全リンクコストを大きく重み付けしたルート探索モードである安全優先探索モードにより、ルート演算を行う。
【0035】
次にS4にて、提示制御部50は、ルート演算部14が演算したルート情報を地図情報に重畳した画像データを生成し、モニタ60に出力して、ユーザに提示する。ここまでが安全度合に基づいたルート探索およびルート提示のフローである。この後、安全度合に基づいた各道路リンクの変更フローとなる。
【0036】
S5にて、画像情報取得部21は、カメラ211を用いて、車両周辺の画像情報を取得する。
取得後、S6に進む。
【0037】
S6にて、障害物検出部31は、取得した画像情報から画像認識を行い、障害物を検出する。検出後、S7に進む。
【0038】
S7にて、障害物が検出された場合(S7でYES)、S8に進む。障害物が検出されない場合(S12でNO)、S5に戻り、処理を継続する。
【0039】
S8にて、障害物位置判定部32は、検出した障害物が走行の支障となる位置に存在しているか否かを判定する。障害物が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合(S8でYES)、S9に移行する。障害物が車両の走行の支障となる位置に存在していないと判定した場合(S9でNO)、S5に戻り、処理を継続する。
【0040】
S9にて、地図情報データベース管理部131は、安全度合が低いと判定された走行中の道路リンクの安全リンクコストを、低く設定する。設定後、S10に進む。
【0041】
S10にて、車両の走行が終了する場合(S10でYES)、処理を終了する。車両の走行が継続する場合(S10でYES)、S5に戻り、処理を継続する。
【0042】
このように、実施形態1に係るナビゲーション装置1は、例えば、ルート探索部10、周辺情報取得部20、安全度合判定部30、ルート提示制御部50を備えることにより、障害物が車両周囲に存在しており、かつ、当該の障害物が走行の支障となる位置に存在している場合に、当該道路リンクの安全度合を低いと判定し、当該道路の安全リンクコストを高く設定する。この構成とすることにより、車両の走行に関し、自転車や歩行者などの障害物による影響が及ぶ可能性が高い場合に、当該の道路が推奨ルートとして案内される可能性を低くする、安全を優先したルート探索およびルート案内を行うことができる。
【0043】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係るナビゲーション装置について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本発明の一実施例であるナビゲーション装置1の機能構成について説明するための機能ブロック図である。第2実施形態にかかるナビゲーション装置1は、基本的な構成は第1実施形態と同一であるが、車両情報取得部40を備える点が異なる。以下の説明においては、第1実施形態にかかるナビゲーション装置1と同様の構成要素には、同一の符号または対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0044】
車両情報取得部40は、例えば、CAN(Controller Area Network)を介して、または加速度センサや速度計、ジャイロセンサなどのセンサ類41を用いて、車両が走行中であるか停止中であるか、車両速度、車両加速度、ステアリングの操舵角度などの車両の走行に関する車両挙動情報、および、アクセルやブレーキなどの操作、ステアリング操作、クラクション操作などの、ユーザによる車両の操作に関する車両操作情報を取得する。車両挙動情報および車両操作情報を車両情報と称し、車両情報取得部40は、取得した車両情報を安全度合判定部30に出力する。
【0045】
車両情報取得部40は、センサ類41を含んで構成されてもよく、センサ類41が出力するセンシングデータを取得する入力部であってもよい。
【0046】
安全度合判定部30は、車両情報取得部が取得した車両情報と、障害物検出部31および障害物位置判定部32が取得した障害物に関する情報に基づいて、当該道路リンクの安全度合を演算する。より詳細には、安全度合判定部30は、障害物が車両の走行の障害になり得ると判断され、かつ、ユーザがその障害物を避けるような車両操作を行ったことを示す、または、その障害物を避けるような車両の車両挙動を示す、車両情報が取得された場合に、当該道路リンクの安全度合が低いと判定する。
【0047】
障害物を避けるような車両情報とは、例えば、車両走行車線を走行している自転車を避けるため、当該の自転車との距離が近くなった場合に、当該の自転車とは逆の方向にステアリングを切ったことを示す車両情報である。具体的には、障害物検出部31が障害物を検出し、障害物位置判定部32が当該の障害物が走行の支障となる位置に存在していると判定した場合に、その前後のタイミング、例えば前後3秒以内に、車両情報取得部40が所定値以上のステアリング操作を行った旨の情報を取得した場合に、障害物を避けるような車両情報と判定する。またこのとき、画像情報取得部21が取得する画像上にて、認識された障害物、たとえば自転車が画面上で左右端方向に移動したことを検出して、障害物を避けるような車両情報と判定してもよい。画像情報取得部21が取得する画像上にて、認識された障害物、たとえば自転車が、画面上でステアリング操作と逆の方向に移動したことを検出して、障害物を避けるような車両情報と判定してもよい。
【0048】
障害物を避けるような車両情報とは、例えば、車両走行車線に存在する歩行者を避けるため、当該の歩行者との距離が近くなった場合に、車両速度を落とすまたは停止することを示す車両情報である。具体的には、障害物検出部31が障害物を検出し、障害物位置判定部32が当該の障害物が走行の支障となる位置に存在していると判定した場合に、その前後のタイミング、例えば前後3秒以内に、車両情報取得部40が所定値以上のブレーキ操作を行った旨の情報、または、車両情報取得部40が所定値以上の減速情報を取得した場合に、障害物を避けるような車両情報と判定する。このとき、画像情報取得部21が取得する画像上にて、障害物、たとえば自転車の、画面上での移動速度が変化したことを検出して、障害物を避けるような車両情報と判定してもよい。画像情報取得部21が取得する画像から、動き検出または動きベクトル検出などの技術を用いることで、障害物の動きベクトルに変化があり、その変化が車両と障害物の接近に逆らう向きへの変化であることを検出して、障害物を避けるような車両情報と判定してもよい。
【0049】
障害物を避けるような車両情報とは、例えば、車両走行車線に存在する歩行者の注意を喚起するため、当該の歩行者との距離が近くなった場合に、クラクションを鳴らす操作を行うことを示す車両情報を含む。例えば、障害物検出部31が障害物、たとえば路上の歩行者を検出し、障害物位置判定部32が、その歩行者が車両の走行の支障となる位置に存在していると判定した場合に、さらにその歩行者が移動しているか否かを判定する、図示しない障害物移動判定部を備えて、歩行者が移動していない場合は、ユーザがクラクションを鳴らし、歩行者の注意を喚起する操作を、障害物を避けるような車両情報と判定する。
【0050】
このように、実施形態2に係るナビゲーション装置1は、例えば、ルート探索部10、周辺情報取得部20、安全度合判定部30、車両情報取得部40、ルート提示制御部50を備えることにより、自転車や歩行者が車両走行車線に存在しており、かつ、車両がその自転車や歩行者を避ける挙動を示した場合に、当該道路リンクの安全度合を低いと判定し、当該道路の安全リンクコストを高く設定する。この構成とすることにより、車両の走行挙動に関し、自転車や歩行者などによる影響があった場合に、当該道路の安全リンクコストを高く設定することで、当該の道路が推奨ルートとして案内される可能性を低くする、安全を優先したルート探索およびルート案内を行うことができる。また、車両の減速やステアリング操作の有無を条件とするだけでなく、車両の減速度合やステアリング操作量が大きい場合に、安全リンクコストをより高く設定し、当該道路が推奨ルートとなる可能性をより低くする形態があってもよい。
【0051】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、DVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0052】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0053】
また、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0054】
地図情報データベース13は、上述したように外部サーバに備えられてもよい。このとき、地図情報データベース13は、外部サーバが備える図示しない通信部により複数のナビゲーション装置1と通信し、各ナビゲーション装置1が判定した安全度合を受信する。地図情報データベース管理部131は、受信した安全度合に基づいた安全リンクコストを、道路リンクごとに設定する。各ナビゲーション装置1は、複数の車両がそれぞれに判定した安全度合に基づいて設定される安全リンクコストに依る、安全優先探索モードにてルート探索を行うことで、自車両が走行した履歴のない道路であっても、車両の走行に関し、自転車や歩行者などの障害物による影響が及ぶ可能性が高い場合に、当該の道路が推奨ルートとして案内される可能性を低くする、安全を優先したルート探索およびルート案内を行うことができる。
【0055】
地図情報データベース13は、外部サーバが備える図示しない情報蓄積部から、複数の他車両が判定した安全度合を、通信部により受信してもよい。このとき地図情報データベース管理部131は、自車両のナビゲーション装置1が判定した安全度合と、受信した他車両が判定した安全度合と、に基づいた安全リンクコストを、道路リンクごとに設定する。または、安全度合判定部30は、複数の他車両が検出した障害物などの情報を通信部により外部サーバから受信し、安全度合を判定してもよい。障害物検出部31は、複数の他車両が取得した周辺情報を通信部により外部サーバから受信し、障害物を検出してもよい。
【0056】
ナビゲーション装置1は、上述したように複数の他車両からの情報に基づく安全度合判定を行う場合、他車両に関する他車両情報を合わせて取得する、図示しない他車両情報取得部を備えてもよい。他車両情報取得部は、他車両の車幅、車高、最小回転半径などの車両情報や、走行した日付、時間帯、走行速度などの走行情報を取得する。安全度合判定部30は、これらの他車両情報に基づいて、例えば、自車両の走行日時とのかい離が小さい走行日時である他車両の画像情報や障害物情報を重く重み付けした情報によって、安全度合を判定してもよい。安全度合判定部30は、自車両と類似の車幅、自車両の走行と類似の走行時間帯など、自車両との類似性が高い他車両からの画像情報や障害物情報を大きく重み付けした情報によって、安全度合を判定してもよい。地図情報データベース管理部131は、自車両とのかい離が小さい、または、自車両と類似した他車両が判定した安全度合を大きく重み付けした安全度合に基づいて、安全リンクコストを設定してもよい。
【0057】
地図情報データベース管理部131は、時間帯や曜日、天候に応じて各道路リンクの安全度合に基づいた安全リンクコストを設定してもよい。具体的には、安全度合判定部30は、通勤通学時間帯や夜間などの時間帯ごとに、検出した路上駐車車両や自転車などの障害物に基づいた安全度合を判定し、地図情報データベース管理部131は、時間帯ごとに安全リンクコストを設定する。安全度合判定部30は、雨天や晴天などの天気種別ごとに安全度合を判定してもよい。また、周辺情報取得部20は、降雪時の積雪や、降雨量が所定値以上の場合に水たまりなどの、天気種別ごとに特有の障害物を検出してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…ナビゲーション装置
10…ルート探索部
11…現在位置取得部
111…GNSS
12…目的地情報取得部
13…地図情報データベース
131…地図情報データベース管理部
14…ルート演算部
20…周辺情報取得部
21…画像情報取得部
211…カメラ
30…安全度合判定部
31…障害物検出部
32…障害物位置判定部
40…車両情報取得部
41…センサ類
50…提示制御部
60…モニタ
70…スピーカ