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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】ドレーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20231205BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M25/14 512
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019089488
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020185033
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 晃
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】比恵島 徳寛
(72)【発明者】
【氏名】大久保 里紗
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-179727(JP,A)
【文献】特開平10-286310(JP,A)
【文献】特開2003-235987(JP,A)
【文献】特表2017-511229(JP,A)
【文献】特開2002-200163(JP,A)
【文献】特開2018-069070(JP,A)
【文献】米国特許第05100395(US,A)
【文献】特開平10-118191(JP,A)
【文献】西独国実用新案公開第08815869(DE,U)
【文献】特表2002-518104(JP,A)
【文献】特開平08-206216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に設けられた集液部と、
前記集液部の基端側に設けられた移行部と、
前記移行部の基端側に設けられた手元部とを備え、
前記集液部は、滲出液を集液する複数の集液口と、前記集液口により集液した滲出液を前記移行部へ誘導する複数の集液通路とを有し、複数の集液部チューブにより形成され、
前記移行部は、それぞれが前記集液通路に対応する複数の移行部管腔を有し、前記集液部チューブが接続された多管腔チューブにより形成され、
前記手元部は、1つの手元部管腔を有し、
複数の前記移行部管腔は、それぞれ径方向断面形状が真円状であり、
前記多管腔チューブは、前記移行部管腔以外の部分が中実である、ドレーンカテーテル。
【請求項2】
先端部に設けられた集液部と、
前記集液部の基端側に設けられた移行部と、
前記移行部の基端側に設けられた手元部とを備え、
前記集液部は、滲出液を集液する複数の集液口と、前記集液口により集液した滲出液を前記移行部へ誘導する複数の集液通路とを有し、
前記移行部は、それぞれが前記集液通路に対応する複数の移行部管腔を有し、
前記手元部は、1つの手元部管腔を有し、
前記集液部は、複数の前記集液通路が配置されたシート状部材からなり、
前記集液口は、前記集液通路の先端開口であり、
前記移行部は、渦巻き状に巻回された前記シート状部材と、渦巻き状に巻回された前記シート状部材を収容するシースとを有する、ドレーンカテーテル。
【請求項3】
前記移行部は、前記シース内に充填された充填材を有している、請求項2に記載のドレーンカテーテル。
【請求項4】
複数の前記集液通路は、それぞれが側面に長手方向に延びるスリットを有し、
前記集液口は、前記集液通路のスリットである、請求項1又は2に記載のドレーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はドレーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
手術後に体内の創部等において発生する滲出液を体外へ排出するために、ドレーンカテーテルと呼ばれるチューブが用いられる。一般的なドレーンカテーテルは、体内に埋め込まれ、滲出液を捕集する集液部と、集液部と貯留バッグ等とを接続する延長部とを有している。
【0003】
創部において発生する滲出液は、種々の成分を含み凝固しやすい。また、凝血塊や体組織断片等の固形又は半固形物が含まれている場合も多い。このため、滲出液を捕集して体外へ導くドレーンカテーテルには、狭窄や閉鎖が生じやすい。集液部を閉鎖しにくくするために、集液部を長手方向に延びる複数の部分に分割し、各部分に長手方向に延びるスリットを設けることにより、詰まりの発生を抑えることが検討されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
一方、延長部は、貯留バッグと接続され、場合によっては吸引のために減圧される。このため、延長部には単管腔のチューブが用いられる。集液部を複数の部分に分割した場合には、形状が異なる集液部と延長部とが接続されるが、このような接続部には浸出液が滞留したり、含有成分が堆積したりし易い。接続部における浸出液の滞留等を避けるために、集液部から延長部まで、内腔を滑らかに移行させながら接続することが検討されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-206219号公報
【文献】特開2002-224222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、ドレーンカテーテルを埋め込むための皮下トンネルを形成する手法が一般的であった。しかし、内視鏡手術の発達に従い、侵襲をできるだけ抑えるために、新たな皮下トンネルを設けることなく内視鏡のチャンネル孔を用いてドレーンカテーテルを埋め込むことが行われている。内視鏡のチャネル孔を用いてドレーンカテーテルを埋め込む場合には、チャネル孔やガイドシースの形状に合わせてカテーテル外周が円形状のドレーンカテーテルが体表面に対してほぼ垂直に挿入される。一方、患者の負担を考えるとドレーンカテーテルの体外部分はできるだけ体表面に沿わせることが好ましい。さらに、チャネル孔の周囲にドレーンカテーテルがこすれると潰瘍が発生する原因となるため、ドレーンカテーテルを一旦体表面から少し離れた位置まで引き出し、そこで体表面側に急角度に折り曲げて固定することが行われる。
しかし、従来のドレーンカテーテルを急角度で折り曲げると、チューブに折れ(キンク)が発生してカテーテルが閉鎖されてしまうおそれがある。また、従来のドレーンカテーテルでは、体外へ排出する滲出液の流量低下や滲出液が管腔内部で滞留することによる感染症のおそれもあった。
【0007】
本開示の課題は、体表面近傍において急角度に折り曲げられた際にも閉鎖が生じにくいドレーンカテーテルを実現することである。また、滲出液の排出流量低下や感染症の発生を抑えることができるドレーンカテーテルを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のドレーンカテーテルの一態様は、先端部に設けられた集液部と、集液部の基端側に設けられた移行部と、移行部の基端側に設けられた手元部とを備え、集液部は、滲出液を集液する複数の集液口と、集液口により集液した滲出液を移行部へ誘導する複数の集液通路とを有し、移行部は、それぞれが集液通路に対応する複数の移行部管腔を有し、手元部は、1つの手元部管腔を有し、複数の移行部管腔は、それぞれ径方向断面形状が円形状である。
【0009】
ドレーンカテーテルの一態様は、移行部を大きく屈曲させても移行部管腔がキンクしにくく、内視鏡手術において形成したチャンネル孔等を用いて創部に留置した場合にも、滲出液をスムーズに体外へ排出することができる。また、移行部管腔にデッドボリュームが生じにくく、管路抵抗を低減すると共に液溜まりを生じにくくできるため、滲出液の排出流量低下を回避すると共に感染症の発生を抑えることもできる。
ドレーンカテーテルの一態様において、集液部は、複数の集液通路が配置されたシート状部材からなり、集液口は集液通路の先端開口とすることができる。このような構成とすることにより、広い範囲から集液することができる。
【0010】
この場合において、移行部は、巻回されたシート状部材とすることができる。このような構成とすることにより、移行部を容易に形成することができる。また、移行部の外周形を容易に円形状とすることができる。
【0011】
ドレーンカテーテルの一態様において、複数の集液通路は、互いに独立したチューブであり、集液口は集液通路の先端開口とすることができる。このような構成とすることにより、複数の集液口を複数の方向に向けることができ、広い範囲から集液することができる集液部を容易に形成することができる。
【0012】
ドレーンカテーテルの一態様において、複数の集液通路は、それぞれが側面に長手方向に延びるスリットを有し、集液口は、集液通路のスリットとすることができる。このような構成とすることにより、集液口の閉塞を生じにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示のドレーンカテーテルによれば、体表面近傍において急角度に折り曲げられた際にも閉鎖を生じにくくすることができる。また、滲出液の排出流量低下や感染症の発生を抑えることもできる
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係るドレーンカテーテルを示す斜視図である。
図2図1のII-II線における断面図である。
図3図1のIII-III線における断面図である。
図4】変形例に係るドレーンカテーテルを示す斜視図である。
図5】シート状部材を拡大して示す斜視図である。
図6図3のV-V線における断面図である。
図7】キンクの生じにくさを評価する測定系を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示すように、本実施形態のドレーンカテーテル100Aは、先端側に設けられた集液部101と、集液部101の基端側に設けられた移行部102と、移行部102の基端側に設けられた手元部103とを有している。
【0016】
本実施形態において、集液部101は、3本の独立したチューブ115であり、各チューブ115の先端開口が創部の浸出液を集液する集液口として機能し、各チューブ115の管腔は、集液口により集液した滲出液を移行部102へ誘導する集液通路として機能する。
【0017】
図2に示すように、移行部102は、3本のチューブ115が束ねられてシース122に収容されており、各チューブ115の管腔は移行部管腔121として機能する。
【0018】
図3に示すように、手元部103は、長手方向に延びる1つの手元部管腔131を有する単管腔チューブからなる。手元部管腔131には、すべての移行部管腔121が接続されている。
【0019】
本実施形態のドレーンカテーテル100Aは、例えば、内視鏡手術を行った際のチャンネル孔から体内へ挿入されて、集液部101が創部の近傍に位置し、移行部102が体内と体外とに跨がって位置するように配置される。集液部101において集液された滲出液は、移行部102及び手元部103を通って、手元部103の基端に接続された排液バッグ等に貯留される。必要に応じて減圧して吸引することもできる。
【0020】
ドレーンカテーテルの一般的な使用方法においては、移行部102の体外へ引き出された部分が、チャンネル孔から5mm程度~15mm程度突出した位置において体表面側に折り曲げられ、チャネル孔から10mm程度~20mm程度離れた位置において体表面に接するように固定される。
【0021】
通常の管腔が1つだけのチューブを急角度で屈曲させた場合、キンクが生じて管腔がつぶれるとほぼ完全に閉塞してしまう。複数の管腔が設けられているチューブの場合には、急角度に曲げた場合に、幾つかの管腔が閉塞しても、全体として流通を維持できる可能性がある。しかし、管腔が直線的な隔壁により仕切られている場合には、各管腔の径方向断面形状が略扇形状となるため外部からの押圧に対する反発力が小さく、チューブが肉薄になる。そのため、各管腔において形状の極端な変形が生じやすく、チューブがキンクして流路の狭窄や閉塞が起こりやすい。また、実質的な流路は扇形の中心部となることから、角部を形成する管腔壁周辺部が管路抵抗となり、流量低下を引き起こしやすい。さらに、管腔に角部があると角部がデッドボリュームとなり、滲出液が滞留して滲出液に含まれる成分が堆積したり、固着したりし、感染症を引き起こす原因となる。
【0022】
本実施形態のドレーンカテーテル100Aは、移行部102が複数の移行部管腔121を有しており、移行部管腔121が、円形状の径方向断面形状を有している。これにより、移行部管腔121を囲む管壁に薄い部分が生じにくく、また、外部からの押圧に対する反発力を得られるため、移行部102が急角度で曲げられた際にチューブのキンクが生じにくい。管腔が流通可能に維持され、排出流量を確保することができる。ここでいう円形状には、真円に限らず、楕円、長円、及び卵形等の類円形を含む。また、移行部管腔121の径断面形状の中心点を結んだ形状が略正n角形状(nは移行部管腔の数)となるように配置されていることが好ましい。このような配置とすることにより、各移行部管腔121のバランスをとることができ、折り曲げられた際の閉塞をより生じにくくすることができる。このため、移行部102を引き出し箇所に配置して、移行部102が折り曲げられるようにすることにより、引き出し箇所における閉塞を生じにくくすることができる。
【0023】
また、移行部管腔121の径方向断面形状を円形状とすることによりデッドボリュームがなくなり、管腔内全体を液が流れるようになるため、管腔内における堆積や固着を生じにくくして、感染症の発生を抑えることができるという利点も得られる。
【0024】
移行部102は、体表面近くで折り曲げられる部分だけでよいが、位置合わせを容易にする観点からは長さが20mm以上あることが好ましく、30mm以上あることがより好ましい。また、製造コスト及びカテーテル全体としての流路断面積を大きくする観点からは、200mm以下とすることが好ましく、150mm以下とすることがより好ましい。集液部101の長さは使用状況に応じて適宜選択すればよいが、10mm程度~100mm程度とすることができる。集液部101の長さは、体内の創部の位置に応じて、使用時に調整することもできる。手元部103の長さも使用状況に応じて適宜選択すればよいが、20cm程度~150cm程度とすることができる。
【0025】
集液部101、移行部102及び手元部103の外径は、使用状況に応じて適宜選択すればよいが、一般的には2mm程度~10mm程度とすることができる。集液部101、移行部102及び手元部103の外径は、揃っている方が、挿入及び抜去の際に引っかかりにくくすることができるので好ましいが、外径に0.5mm程度~2mm程度の差があってもよい。
【0026】
手元部103の内径は外径に依存するが、1mm程度~8mm程度とすることが好ましい。移行部管腔121の内径は、移行部102の外径及び移行部管腔121の数に依存するが、外径に対して35%以下の大きさが好ましい。移行部管腔121の内径は、揃っている方が、折り曲げられた際に閉塞を生じにくくすることができる。
【0027】
本実施形態のドレーンカテーテル100Aは、例えば、3本のチューブ115を先端部を除いてシース122により束ね、この基端側に手元部103となるチューブを接続することにより製造することができる。手元部103は、例えば、外径がシース122の内径とほぼ等しいチューブをシース122に内嵌させることにより、移行部102と接続することができる。但し、移行部102と手元部103との接続方法はこのような方法に限定されない。
【0028】
この場合、シース122内に、充填材123を充填することができる。これにより、移行部102を屈曲させた際にキンクをより生じにくくすることができる。充填材123は、例えばポリウレタン、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の合成樹脂或いは天然ゴム等の柔軟性を有する樹脂とすることができる。但し、チューブ115及びシース122の材質等によっては充填材123を充填しなくてもよい。
【0029】
なお、本実施形態のドレーンカテーテル100Aの形成方法はこのような方法に限らず、例えば、3本の管腔を有する移行部102となるチューブを別途成形し、このチューブに集液部101となるチューブ及び手元部103となるチューブを接続して形成することもできる。
【0030】
本実施形態において、集液部101及び移行部102となるチューブ115及び手元部103となるチューブは、可撓性の樹脂材料により形成することができる。中でも、ポリアミド、ポリアミド系エラストマー、塩化ビニル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエステルエラストマー、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン等、シリコーン樹脂、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、若しくはポリアミド系エラストマー等の合成樹脂又は天然ゴム等の熱融着可能な材料が好ましい。なお、各部は同じ材料により形成されていても、異なる材料により形成されていてもよい。
【0031】
集液部101となるチューブ115には、外側に拡がるように予め癖を付けておくことができる。このようにすれば、チューブ115を束ねて外筒管(図示せず)に収容して創部付近まで挿入した後、外筒管を引き抜くことによりチューブ115が互いに異なる方向に拡がるようにすることができる。このようにすれば、創部付近の広い領域から滲出液を吸引することが可能となる。
【0032】
また、集液通路を構成するチューブ115の側面に長手方向に延びるスリットを設けることもできる。スリットが集液口として機能するため、チューブ115の側面からも集液することができ、集液範囲をより広くすることができる。なお、側面の集液口となる構成はスリットに限らず、側穴等とすることもできる。
【0033】
本実施形態において、集液通路111及び移行部管腔121を構成するチューブ115が3本である例を示したが、2本又は4本以上とすることもできる。
【0034】
図4に示す変形例のドレーンカテーテル100Bのように、集液部101を複数の集液通路111が径方向に配置されたシート状部材116により形成することもできる。図5に示すように、シート状部材116は、長手方向に平行に延びる複数の管腔を有するシートであり、各管腔は互いに独立した集液通路111となる。各集液通路111の先端開口は集液口として機能する。例えば、集液部101であるシート状部材116の先端部を巻回した状態で外筒管(図示せず)内に収容し、集液部101を創部の近傍に配置した状態で外筒管を引き抜けば、シート状部材116の先端部が展開された状態でドレーンカテーテル100Bを留置することができる。これにより、広い範囲から集液することが可能となる。
【0035】
なお、シート状部材116に設けられた各管腔に長手方向に延びるスリットを設け、シート状部材116の側面からも集液できるようにしてもよい。但し、側面の集液口となる構成はスリットに限らず、複数の側穴等とすることもできる。
【0036】
また、本変形例において、集液通路111となる管腔が一段に配置されているシート状部材116を示したが、管腔は2段以上に配置されていてもよい。さらに、複数のシート状部材を上下に重ねて用いることもできる。また、シート状部材116の先端部分に切れ込み等を設けて、先端部が拡がるようにすることもできる。
【0037】
第2変形例のドレーンカテーテル100Bにおいて、図6に示すように、シート状部材116の基端部を渦巻き状に巻回し、この部分をシース122内に収容することにより拡がらないように固定して移行部102とすることができる。シート状部材116を巻回することにより、屈曲させた際にキンクが生じにくくすることができる。シース122内には、充填材123を充填することができる。但し、充填材123は必要に応じて充填すればよく、充填しなくてもよい。
【0038】
また、巻回したシート状部材116が拡がらないようにできれば、シース122内に収容しなくてもよい。例えば、巻回して接着剤等により固定することもできる。
【0039】
移行部102の基端には、単管腔チューブである手元部103を接続することができる。移行部102がシース122に収容されている場合は、例えば手元部103を外径がシース122の内径とほぼ等しいチューブとして、シース122に内嵌させることにより、移行部102と接続することができる。但し、移行部102と手元部103との接続方法はこのような方法に限定されない。
【0040】
シート状部材116の大きさ等は、使用状況に応じて適宜選択すればよいが、例えば、幅が20mm程度~40mm程度で厚さが0.5mm程度~2mm程度とすることが好ましい。シート状部材116に設ける管腔は、内径が0.2mm程度~1.5mm程度とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態及び各変形例のドレーンカテーテルは、内視鏡手術において形成したチャンネル孔を用いて創部に留置することができるが、皮下トンネル法等により創部に留置することもできる。
【実施例
【0042】
集液部、移行部及び手元部を有するドレーンカテーテルについて、図10に示すような試験系により、キンクの生じにくさを評価した。疑似皮膚に設けたチャネル孔から移行部を引き出し、疑似皮膚の表面からの引き出し高さAが約30mmとなるようにして、チャネル孔からの距離Bが20mm又は10mmの位置を移行部が疑似皮膚に接触するまで軽く押圧して、屈曲させた状態の流量を、移行部を屈曲させていない状態の流量と比較した。試験液には生理食塩水を用い、屈曲させていない状態の流量は190mL/minに設定した。また、測定は3回繰り返して行い、その平均値をとった。
【0043】
測定には、移行部の外径が4.9mmで、内径3.9mmの断面円形状である3つの移行部管腔を有するカテーテル1、及び移行部の外径が5.5mmで、外壁の厚さが1mm、厚さが0.6mmの十字状の隔壁により仕切られた扇形状の4つの移行部管腔を有するカテーテル2について行った。カテーテル1及びカテーテル2共に、集液部は移行部管腔と同数の集液通路を有する構成とし、手元部は単管腔チューブとした。
【0044】
カテーテル1の場合、20mm位置を押圧した場合の流量は、屈曲させていない場合の76.8%であり、10mm位置を押圧した場合の流量は、屈曲させていない場合の45.0%であった。カテーテル2の場合、20mm位置を押圧した場合の流量は、屈曲させていない場合の70.9%であり、10mm位置を押圧した場合の流量は、屈曲させていない場合の29.4%であった。測定結果を表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示のドレーンカテーテルは、体表面近傍において急角度に折り曲げられた際にも閉鎖が生じにくく、内視鏡のチャンネル孔を用いて体内に留置するドレーンカテーテル等として有用である。
【符号の説明】
【0047】
100A ドレーンカテーテル
100B ドレーンカテーテル
101 集液部
102 移行部
103 手元部
111 集液通路
112 隔壁
113 外壁
113a スリット
115 チューブ
116 シート状部材
121 移行部管腔
122 シース
123 充填材
131 手元部管腔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7