(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】現像装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/08 20060101AFI20231205BHJP
G03G 15/09 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/09 A
(21)【出願番号】P 2019122803
(22)【出願日】2019-07-01
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 太
(72)【発明者】
【氏名】稲田 保幸
(72)【発明者】
【氏名】金原 規之
(72)【発明者】
【氏名】池田 英明
(72)【発明者】
【氏名】木下 健
(72)【発明者】
【氏名】村川 淳二
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072753(JP,A)
【文献】特開2014-059557(JP,A)
【文献】特開2002-304060(JP,A)
【文献】特開2011-128333(JP,A)
【文献】特開2016-166988(JP,A)
【文献】特開2018-004814(JP,A)
【文献】特開平08-022193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 15/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支承された中空略円筒状の現像スリーブと、
軸線周りに並ぶ複数の磁極を有するとともに前記現像スリーブの内部において前記現像スリーブと略同軸上に配置された略円柱状のマグネット部と、
前記軸線の延在方向における前記マグネット部の一端から延びるように前記マグネット部に固定的に設けられ、前記現像スリーブの軸方向の一端から引き出されたロッド部と、
前記現像スリーブから引き出された部分の前記ロッド部に装着されて被固定部に対して固定されることにより、前記ロッド部を保持しつつ前記マグネット部が回転することを規制する保持具とを備え、
前記保持具は、前記被固定部に対する固定位置を調整することにより、前記軸線と交差する平面の面内方向における所定範囲内の任意の位置に前記ロッド部を配置させて当該位置において前記ロッド部を保持することが可能に構成されたものからなり、
前記保持具が前記ロッド部に装着されて前記被固定部に対して固定される前の状態を非固定状態とした場合に、前記保持具が、前記ロッド部の周方向に沿った前記ロッド部の前記非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるように前記ロッド部を回転させつつ、前記配設角度が前記規制角度になった状態における前記ロッド部の配設位置がそのまま維持されるように、前記ロッド部に装着されて前記被固定部に対して固定されている、現像装置。
【請求項2】
前記ロッド部が、周面に平面形状の当て留め面を有する略円柱状の形状を有し、
前記保持具が前記ロッド部に装着されて前記被固定部に対して固定された状態を固定状態とした場合に、前記保持具が、前記非固定状態において前記当て留め面に当接することで前記ロッド部を回転させるとともに、前記固定状態において前記当て留め面に当接することで前記ロッド部の回転を防止する回転防止部と、前記固定状態において前記ロッド部を挟み込むように前記ロッド部に当接することで前記ロッド部の移動を防止する移動防止部とを有している、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記面内方向における前記回転防止部の幅が、前記面内方向における前記当て留め面の幅よりも大きい、請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記保持具が、前記回転防止部を有する第1部材と、前記移動防止部を有する第2部材とを含み、
前記回転防止部が前記当て留め面に当接された状態において、前記第1部材が前記被固定部に対して固定されているとともに、前記移動防止部が前記ロッド部を挟み込むように前記ロッド部に当接された状態において、前記第2部材が前記被固定部に対して固定されている、請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記移動防止部が、前記ロッド部の前記当て留め面以外の周面部分の少なくとも一部に沿う曲面形状を有している、請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記ロッド部が、前記回転防止部と前記移動防止部とによってさらに挟み込まれている、請求項4または5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記面内方向であってかつ前記固定状態における前記当て留め面と直交する方向に沿って前記第1部材を案内することが可能な案内部が、前記被固定部に設けられている、請求項4から6のいずれかに記載の現像装置。
【請求項8】
前記保持具が、前記回転防止部と前記移動防止部とを有する単一の部材にて構成され、
前記ロッド部が、前記回転防止部と前記移動防止部とによって挟み込まれている、請求項2または3に記載の現像装置。
【請求項9】
前記面内方向であってかつ前記固定状態における前記当て留め面と直交する方向に沿って前記保持具を案内することが可能な案内部が、前記被固定部に設けられている、請求項8に記載の現像装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の現像装置を画像形成のために備えてなる、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に対して現像剤を供給する現像装置に関し、また、カラー/モノクロ等の種別を問わず、電子写真方式を利用して画像を形成する画像形成部に当該現像装置を備えてなる複写機、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式の画像形成装置においては、現像装置に設けられた現像剤担持体としての現像ローラーを用いて現像剤が像担持体としての感光体に供給される。現像ローラーは、回転可能に支承された中空略円筒状の現像スリーブと、軸線周りに並ぶ複数の磁極を有する略円柱状のマグネット部とを備えており、現像スリーブの内部にマグネット部が配置された構成を有している。
【0003】
マグネット部は、その組付時において、予め定められた規制角度となるようにその配設角度が調整される(すなわち、周方向の位置決めが行なわれる)とともに、その回転が規制されるように固定されることが必要である。そのため、通常は、マグネット部に設けられたロッド部が現像スリーブの軸方向の一端から引き出され、当該ロッド部のうちの現像スリーブから引き出された部分が現像装置の筐体等からなる被固定部に対して回転不能に固定されることにより、マグネット部の角度調整とその回転の規制とが行なわれる。ここで、被固定部に対するロッド部の固定には、金属製の板状部材からなる保持具が用いられることが一般的である。
【0004】
上記構成の現像装置が開示された文献としては、たとえば特開2007-316456号公報(特許文献1)がある。当該特許文献1に開示の現像装置においては、所定形状に折り曲げられた金属製の板状部材からなる保持具の一部がマグネット部から延設されたロッド部の端面に設けられた溝に圧入固定されるとともに、当該保持具がビスを用いて筐体に固定されており、これによりマグネット部の角度調整とその回転の規制とが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、現像装置においては、マグネット部によって磁気吸引されることで現像スリーブの表面に付着した現像剤の層厚を調整するために、現像スリーブの外周面に対向して規制部材が配置される。この規制部材は、一般に磁性体からなるため、マグネット部には、その磁気吸引力によって規制部材側に向けて撓みが発生する。加えて、現像スリーブに付着した現像剤に含まれるキャリアに磁気吸引力が働くことにより、これによってもマグネット部に撓みが発生する。このマグネット部の撓みに伴い、ロッド部にも必然的に撓みが発生する。
【0007】
また、マグネット部およびロッド部は、金属製の軸部材に対して磁石を貼り付けることで製作されたり、金属製の軸部材に対して磁石を樹脂成形によって一体的に固定することで製作されたり、あるいは、磁性粉末と樹脂材料とからなる複合材料を用いて射出成形によって形成された磁石に金属製の軸部材を外挿することで製作されたりするものであるため、その出来映えにより、寸法精度に相当程度のばらつきが発生するものでもある。
【0008】
ここで、上記特許文献1に開示されるような従来公知のマグネット部の固定方法は、予め定められた設計中心位置にロッド部の軸線が合致するように、上述した金属製の板状部材からなる保持具を用いてロッド部を位置決めしつつその回転が規制されるように固定するものである。そのため、当該固定方法を採用した場合には、上述したマグネット部およびロッド部に生じる撓みやマグネット部およびロッド部の出来映えに基づく寸法のばらつきを何ら吸収することなく、強制的にロッド部が設計中心位置に配置されることになるため、撓んだ状態が自然な状態であるマグネット部およびロッド部に不自然な撓みを生じさせてしまう。
【0009】
この不自然なマグネット部およびロッド部の撓みは、ロッド部と現像スリーブとの間に配置される軸受に応力となって作用する。そのため、この応力が現像スリーブの回転に対する回転抵抗となることで現像スリーブのスムーズな回転が阻害されてしまい、結果として、形成される画像に乱れが生じたり、ノイズが発生したりする原因となってしまう。
【0010】
したがって、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、現像スリーブのスムーズな回転が実現された現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に基づく現像装置は、現像スリーブと、マグネット部と、ロッド部と、保持具とを備えている。上記現像スリーブは、回転可能に支承された中空略円筒状の部材からなり、上記マグネット部は、軸線周りに並ぶ複数の磁極を有するとともに上記現像スリーブの内部において上記現像スリーブと略同軸上に配置された略円柱状の部材からなる。上記ロッド部は、上記軸線の延在方向における上記マグネット部の一端から延びるように上記マグネット部に固定的に設けられており、上記現像スリーブの軸方向の一端から引き出されている。上記保持具は、上記現像スリーブから引き出された部分の上記ロッド部に装着されて被固定部に対して固定されることにより、上記ロッド部を保持しつつ上記マグネット部が回転することを規制している。上記保持具は、上記被固定部に対する固定位置を調整することにより、上記軸線と直交する平面の面内方向における所定範囲内の任意の位置に上記ロッド部を配置させて当該位置において上記ロッド部を保持することが可能に構成されたものからなる。上記本発明に基づく現像装置にあっては、上記保持具が上記ロッド部に装着されて上記被固定部に対して固定される前の状態を非固定状態とした場合に、上記保持具が、上記ロッド部の周方向に沿った上記ロッド部の上記非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるように上記ロッド部を回転させつつ、上記配設角度が上記規制角度になった状態における上記ロッド部の配設位置がそのまま維持されるように、上記ロッド部に装着されて上記被固定部に対して固定されている。
【0012】
上記本発明に基づく現像装置にあっては、上記ロッド部が、周面に平面形状の当て留め面を有する略円柱状の形状を有していてもよく、その場合には、上記保持具が上記ロッド部に装着されて上記被固定部に対して固定された状態を固定状態とした場合に、上記保持具が、上記非固定状態において上記当て留め面に当接することで上記ロッド部を回転させるとともに、上記固定状態において上記当て留め面に当接することで上記ロッド部の回転を防止する回転防止部と、上記固定状態において上記ロッド部を挟み込むように上記ロッド部に当接することで上記ロッド部の移動を防止する移動防止部とを有していることが好ましい。
【0013】
上記本発明に基づく現像装置にあっては、上記面内方向における上記回転防止部の幅が、上記面内方向における上記当て留め面の幅よりも大きいことが好ましい。
【0014】
上記本発明に基づく現像装置の第1態様にあっては、上記保持具が、上記回転防止部を有する第1部材と、上記移動防止部を有する第2部材とを含んでいてもよい。その場合には、上記回転防止部が上記当て留め面に当接された状態において、上記第1部材が上記被固定部に対して固定されているとともに、上記移動防止部が上記ロッド部を挟み込むように上記ロッド部に当接された状態において、上記第2部材が上記被固定部に対して固定されていることが好ましい。
【0015】
上記第1態様にあっては、上記移動防止部が、上記ロッド部の上記当て留め面以外の周面部分の少なくとも一部に沿う曲面形状を有していてもよい。
【0016】
上記第1態様にあっては、上記ロッド部が、上記回転防止部と上記移動防止部とによってさらに挟み込まれていてもよい。
【0017】
上記第1態様にあっては、上記面内方向であってかつ上記固定状態における上記当て留め面と直交する方向に沿って上記第1部材を案内することが可能な案内部が、上記被固定部に設けられていてもよい。
【0018】
上記本発明に基づく現像装置の第2態様にあっては、上記保持具が、上記回転防止部と上記移動防止部とを有する単一の部材にて構成されていてもよい。その場合には、上記ロッド部が、上記回転防止部と上記移動防止部とによって挟み込まれていることが好ましい。
【0019】
上記第2態様にあっては、上記面内方向であってかつ上記固定状態における上記当て留め面と直交する方向に沿って上記保持具を案内することが可能な案内部が、上記被固定部に設けられていてもよい。
【0020】
本発明に基づく画像形成装置は、上述した本発明に基づく現像装置を画像形成のために備えてなるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、現像スリーブのスムーズな回転が実現された現像装置およびこれを備えた画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。
【
図2】実施の形態に係る現像装置の模式断面図である。
【
図3】
図2に示す現像ローラーの構成ならびに当該現像ローラーの筐体に対する組付構造を示す模式断面図である。
【
図4】従来例に係るマグネット部の固定方法の概念を説明するための模式図である。
【
図5】従来例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。
【
図7】従来例に係るロッド部の固定状態を示す図である。
【
図8】実施の形態に係るマグネット部の固定方法の概念を説明するための模式図である。
【
図9】第1構成例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。
【
図10】第1構成例に係る保持具の形状を示す図である。
【
図11】第1構成例に係るマグネット部の仮固定状態を示す図である。
【
図12】第1構成例に係るロッド部の固定状態を示す図である。
【
図13】第2構成例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。
【
図14】第2構成例に係る保持具の形状を示す図である。
【
図15】第2構成例に係るロッド部の固定状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、本発明が適用された画像形成装置および現像装置として、電子写真方式を採用したいわゆるタンデム型のカラープリンターおよびこれに具備された現像装置を例示して説明を行なう。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0024】
図1は、実施の形態に係る画像形成装置の概略図である。まず、この
図1を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置1について説明する。
【0025】
図1に示すように、画像形成装置1は、画像形成ユニット2Y,2M,2C,2Kと、中間転写ベルト3と、転写部と、二次転写ローラー5と、ベルトクリーニング装置6と、定着装置7と、制御装置8と、カセット10とを備えている。
【0026】
画像形成ユニット2Yは、トナーボトル9Yからトナーの供給を受けてイエロー(Y)のトナー像を形成する。画像形成ユニット2Mは、トナーボトル9Mからトナーの供給を受けてマゼンタ(M)のトナー像を形成する。画像形成ユニット2Cは、トナーボトル9Cからトナーの供給を受けてシアン(C)のトナー像を形成する。画像形成ユニット2Kは、トナーボトル9Kからトナーの供給を受けてブラック(K)のトナー像を形成する。
【0027】
画像形成ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、中間転写ベルト3の回転方向(
図1中に示す矢印A方向)に沿って順に配置されている。画像形成ユニット2Y,2M,2C,2Kは、それぞれ、感光体20と、帯電装置21と、露光装置22と、クリーニング装置23と、本実施の形態に係る現像装置30とを含んでいる。
【0028】
感光体20は、トナー像を担持する像担持体である。一例として、感光体20は、ドラム形状を有する。感光体20の表面には、感光層が形成されている。帯電装置21は、感光体20の表面を一様に帯電する。露光装置22は、制御装置8からの制御信号に応じて感光体20にレーザーを照射し、指定された画像パターンに従って感光体20の表面を露光する。これにより、入力画像に応じた静電潜像が感光体20上に形成される。感光体20上に形成された静電潜像は、現像装置30によってトナー像として現像される。現像装置30の詳細については後述する。
【0029】
転写部は、一次転写ローラー4を含む。感光体20と中間転写ベルト3とは、一次転写ローラー4が設けられた部分において互いに接触している。この接触部分に印加された転写バイアスにより、感光体20上に現像されたトナー像が中間転写ベルト3に転写される。一次転写ローラー4は、現像装置30によって現像されたトナー像を記録媒体に転写させる。このとき、イエロー(Y)のトナー像、マゼンタ(M)のトナー像、シアン(C)のトナー像、およびブラック(K)のトナー像が順に重ねられて中間転写ベルト3に転写される。これにより、カラーのトナー像が中間転写ベルト3上に形成される。
【0030】
クリーニング装置23は、クリーニングブレードを備える。クリーニングブレードは、感光体20に圧接され、トナー像の転写後に感光体20の表面に残留するトナーを回収する。
【0031】
カセット10には、記録媒体としての用紙Sがセットされる。用紙Sは、カセット10から1枚ずつ二次転写ローラー5に送られる。二次転写ローラー5は、中間転写ベルト3に転写されたトナー像を用紙Sに転写する。用紙Sの送り出しおよび搬送のタイミングと、中間転写ベルト3上のトナー像の位置とを同期させることで、用紙Sの適切な位置にトナー像が転写される。その後、用紙Sは、定着装置7に送られる。
【0032】
定着装置7は、用紙Sを加圧および加熱する。これにより、トナー像は、用紙S上で融解し、用紙S上に定着する。その後、用紙Sは、トレー11に排紙される。
【0033】
ベルトクリーニング装置6は、クリーニングブレードを備える。クリーニングブレードは、中間転写ベルト3に圧接され、トナー像の転写後に中間転写ベルト3に残留するトナーを回収する。回収されたトナーは、搬送スクリューで搬送され、廃トナー容器(不図示)に貯められる。
【0034】
図2は、本実施の形態に係る現像装置の模式断面図である。次に、
図2を参照して、本実施の形態に係る現像装置30の概略的な構成ならびに動作について説明する。
【0035】
図2に示すように、現像装置30は、現像容器としての筐体31と、規制部材36と、現像ローラー40とを有している。筐体31の内部には、隔壁31aが設けられており、隔壁31aは、現像ローラー40の軸方向に沿って設けられている。筐体31の内部の空間は、隔壁31aによって撹拌槽32と供給槽33に区画されている。撹拌槽32および供給槽33の各々の内部には、現像剤Dが収容されている。現像剤Dは、トナーと磁性キャリアとを含んでいる。
【0036】
撹拌槽32の内部には、第1撹拌部材34が設けられている。第1撹拌部材34が回転することにより、撹拌槽32は、現像剤Dを撹拌しながら当該現像剤Dを供給槽33に向けて搬送する。供給槽33の内部には、第2撹拌部材35が設けられている。第2撹拌部材35が回転することにより、供給槽33は、現像剤Dを撹拌しながら当該現像剤Dを現像ローラー40に向けて搬送し、現像ローラー40に供給する。
【0037】
第1撹拌部材34および第2撹拌部材35は、互いに反対方向に向けて回転する。これにより、現像剤Dは、隔壁31aの両端に設けられている循環口(不図示)を通じて撹拌槽32と供給槽33との間で循環する。
【0038】
現像ローラー40は、現像スリーブ41とマグネット部44とを含んでおり、このうちの現像スリーブ41が図中に示す矢印方向Bに沿って回転可能に構成されている。現像ローラー40は、感光体20に対向するように、当該感光体20の周面と所定の距離をもって配置されている。
【0039】
現像スリーブ41は、中空略円筒状の形状を有しており、その外周面上において現像剤Dを担持する。マグネット部44は、略円柱状の形状を有しており、現像剤Dを磁気によって引き付けたり引き離したりするものである。マグネット部44は、現像スリーブ41の内部に配置されている。
【0040】
マグネット部44は、軸線周りに並ぶ複数の磁極を有している。複数の磁極は、汲上極S2、搬送極N2、規制極S1、現像極N1および剥離極S3からなる。これら汲上極S2、搬送極N2、規制極S1、現像極N1および剥離極S3は、この順で現像スリーブ41の回転方向に沿って互いに距離を隔てて並んで配置されている。
【0041】
規制部材36は、現像スリーブ41の外周面と所定の距離を隔てて位置するように、現像ローラー40に対向して配置されている。規制部材36は、上述したマグネット部44に設けられる複数の磁極のうちの規制極S1に対向して位置している。規制部材36は、板状の部材にて構成されており、現像ローラー40の軸方向に沿って延在している。
【0042】
規制部材36は、現像スリーブ41の外周面上に担持されている現像剤Dの量(すなわち、現像剤Dの層厚)を規制する。規制部材36は、たとえば磁性体にて構成される。このように規制部材36を磁性体にて構成した場合には、規制部材36と現像ローラー40との間で磁界が形成されることになり、規制部材36の表面に磁気吸引力が働くことになる。そのため、現像剤Dがより擦り切り易くなり、現像剤Dの層厚が調整し易くなる。
【0043】
現像剤Dは、撹拌されることで静電気を発生し、帯電される。帯電された現像剤Dは、汲上極S2に引き付けられることで現像スリーブ41に付着する。現像スリーブ41に付着した現像剤Dは、搬送極N2によって規制極S1に向けて搬送される。
【0044】
搬送極N2によって搬送された現像剤Dは、規制部材36によって擦り切られ、現像剤Dの搬送量が一定となる。上述したように、規制極S1は、現像スリーブ41に担持されている現像剤Dの量を規制部材36と共働して規制する。
【0045】
現像剤Dは、規制部材36を通過した後に現像極N1に搬送される。現像剤Dは、現像極N1からの磁力を受けて、磁力の方向に連なった状態になる。これにより現像極N1は、現像スリーブ41に担持された現像剤Dを穂立ちさせて磁気ブラシを形成する。
【0046】
ここで、現像剤Dに含まれるトナーは、負極性に帯電されており、現像剤Dに含まれるキャリアは、正極性に帯電されている。感光体20に形成されている静電潜像は、負極性に帯電されているが、現像ローラー40に印加されている現像電位と比較すると電位が高くなっている。そのため、トナーが、感光体20に付着することになる。
【0047】
これにより、感光体20に形成されている静電潜像は、トナー像として現像される。その後、現像スリーブ41上に残留する現像剤Dは、剥離極S3に搬送される。剥離極S3に搬送された現像剤Dは、剥離極S3を通過した後から磁界が弱まった状態が続くことにより、現像スリーブ41から剥離される。
【0048】
図3は、
図2に示す現像ローラーの構成ならびに当該現像ローラーの筐体に対する組付構造を示す模式断面図である。次に、この
図3を参照して、現像ローラー40の詳細な構成ならびに現像ローラー40の筐体31に対する組付構造について説明する。なお、
図3に示す断面は、
図2中に示すIII-III線に沿った現像装置30の断面を模式的に表わしたものである。
【0049】
図3に示すように、現像ローラー40は、上述した現像スリーブ41を含む回転体と、上述したマグネット部44を含む非回転体と、これら回転体と非回転体との間に介装された軸受46,47とによって主として構成されている。ここで、非回転体は、回転体の内部において回転体と略同軸上に配置されている。
【0050】
回転体は、現像スリーブ41と、現像スリーブ41の軸方向の一端に嵌着された第1シャフト部材42と、現像スリーブ41の軸方向の他端に嵌着された第2シャフト部材43とを有している。非回転体は、マグネット部44と、マグネット部44の軸線の延在方向における一端から延びるようにマグネット部44に固定的に設けられたロッド部45とを有している。また、マグネット部44のうちのロッド部45が設けられた上記一端とは反対側に位置する他端には、当該他端から突き出るように棒状の突出部44aが設けられている。
【0051】
軸受46は、第1シャフト部材42とロッド部45との間に介在するように、その外輪が第1シャフト部材42に固定されているとともに、その内輪がロッド部45に固定されている。軸受47は、第2シャフト部材43とマグネット部44の突出部44aとの間に介在するように、その外輪が第2シャフト部材43に固定されているとともに、その内輪が突出部44aに固定されている。
【0052】
第1シャフト部材42は、中空略円筒状の形状を有しており、当該第1シャフト部材42の中空部には、ロッド部45が挿通されている。これにより、ロッド部45は、現像スリーブ41の軸方向の一端から第1シャフト部材42の中空部を経由してその先端が引き出されており、当該引き出された部分のロッド部45は、被固定部としての筐体31の側壁31bに、後述する保持具50を介して固定されている。
【0053】
また、現像スリーブ41を含む回転体と筐体31との間には、軸受48,49が介装されている。軸受48は、筐体31と第1シャフト部材42との間に介在するように、その外輪が筐体31に固定されているとともに、その内輪が第1シャフト部材42に固定されている。軸受49は、筐体31と第2シャフト部材43との間に介在するように、その外輪が筐体31に固定されているとともに、その内輪が第2シャフト部材43に固定されている。
【0054】
これにより、マグネット部44を含む非回転体は、詳細については後述するが、筐体31に回転不能かつ移動不能に固定されることになる一方、現像スリーブ41を含む回転体は、マグネット部44を含む非回転体によって軸受46,47を介して回転可能に支承されることになるとともに、筐体31によって軸受48,49を介して回転可能に支承されることになる。
【0055】
ここで、筐体31の側壁31bには、開口部31b1が設けられており、上述した第1シャフト部材42から引き出された部分のロッド部45は、当該開口部31b1を介してその先端が筐体31の外部に突出して位置している。保持具50は、この筐体31の外部に突出する部分のロッド部45を保持した状態で筐体31の側壁31bの外側表面に宛がわれて固定されている。
【0056】
図4は、従来例に係るマグネット部の固定方法の概念を説明するための模式図である。
図5は、従来例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。また、
図6は、従来例に係る保持具の形状を示す図であり、
図7は、従来例に係るロッド部の固定状態を示す図である。次に、本実施の形態に係るマグネット部の固定方法を説明するに先立って、これら
図4ないし
図7を参照して、典型的な従来例に係るマグネット部の固定方法について説明する。なお、
図5および
図7は、
図3中に示した矢印C方向に沿って従来例に係る現像装置30Xを見た場合の図であるが、理解を容易とするために、ロッド部45には斜線を付している。
【0057】
上述したように、現像装置においては、マグネット部自身が有する磁気吸引力に基づき、マグネット部が当該マグネット部の周囲に位置する磁性体からの影響を受けることになり、マグネット部およびロッド部に意図しない撓みが発生する。また、上述したように、マグネット部およびロッド部には、その製作の際の出来映えに基づき、寸法精度に相当程度のばらつきが発生する。そのため、現像ローラーが筐体に組付けられる一方、ロッド部が筐体に保持具を用いて固定される前の状態においては、通常、ロッド部の軸線は、その設計中心位置には配置されず、当該設計中心位置から位置ずれした状態で配置されることになる。
【0058】
図4(A)は、従来例に係る現像装置30Xにおいて、このロッド部45の位置ずれが生じた状態を表わしている。すなわち、保持具50X(
図4(B)参照)によってロッド部45が筐体31の側壁31bに対して固定される前の非固定状態においては、マグネット部44およびロッド部45に上述した磁気吸引力に基づく撓みが発生し、上述した出来映えに基づく寸法精度のばらつきも相まって、ロッド部45に設計中心位置からの位置ずれが発生している。
【0059】
図4(B)に示すように、従来例に係る現像装置30Xにおいては、保持具50Xをロッド部45に装着し、当該保持具50Xを予め定められた位置において筐体31の側壁31bに固定することにより、ロッド部45が回転するとともにロッド部45が図中に示す矢印D方向に向けて移動し、ロッド部45の軸線が設計中心位置に重なるように配置されることでロッド部45の位置ずれが強制的に修正される。
【0060】
より詳細には、
図5に示すように、従来例に係る現像装置30Xにおいては、筐体31の側壁31bの上述した設計中心位置に対応した位置に開口部31b1が設けられている。当該開口部31b1は、ロッド部45の外形よりも十分に大きく形成されている。また、当該開口部31b1の周囲の所定位置には、一対のビス孔31b2が設けられている。
【0061】
一方、ロッド部45は、保持具50Xが装着される部分の周面に平面形状の当て留め面45aが設けられた略円柱状の形状を有している。すなわち、ロッド部45の保持具50Xに装着される部分は、断面視略D字状の形状を有している。ロッド部45は、非固定状態において開口部31b1に挿通しており、これによりロッド部45は、開口部31b1の内部に位置している。なお、このとき、ロッド部45には、上述した位置ずれが発生している。
【0062】
図6に示すように、保持具50Xは、平面視矩形状の金属製の板状部材からなり、その所定位置に貫通孔形状の係合孔51が設けられている。係合孔51は、上述したロッド部45の外形と同形状に形成されており、平面視略D字状の形状を有している。係合孔51は、ロッド部45の大きさと同じかそれよりも僅かに大きく形成されている。また、当該係合孔51の周囲の所定位置には、貫通孔形状の一対の挿通孔54が設けられている。一対の挿通孔54は、上述した一対のビス孔31b2と同等の大きさおよび形状を有している。
【0063】
ここで、保持具50Xに設けられた係合孔51および一対の挿通孔54は、それぞれ筐体31の側壁31bに設けられた開口部31b1および一対のビス孔31b2に対応した位置に設けられている。すなわち、一対の挿通孔54が一対のビス孔31b2重なるように保持具50Xが筐体31の側壁31bの外側表面に宛がわれた場合に、係合孔51は、上述したロッド部45の設計中心位置に重なることになる。
【0064】
そのため、
図7に示すように、固定状態においては、保持具50Xがロッド部45に装着され、その後、保持具50Xが筐体31の側壁31bに一対のビス591を用いて固定されることにより、ロッド部45の軸線が設計中心位置に合致するように配置されることになる。すなわち、一対のビス591が保持具50Xに設けられた挿通孔54に挿通された状態で筐体31の側壁31bに設けられた一対のビス孔31b2に螺合されることにより、ロッド部45が保持具50Xによって強制的に回転させられるとともに図中に示す矢印D方向に移動させられ、その軸線が設計中心位置に配置される。
【0065】
ここで、係合孔51を規定する部分の保持具50Xのうち、平面視直線形状に構成された部分は、固定状態においてロッド部45の当て留め面45aに当接することにより、当該ロッド部45が回転することを防止する回転防止部52として機能する。
【0066】
また、係合孔51を規定する部分の保持具50Xのうち、平面視曲線形状に構成された部分と、上述した平面視直線形状に構成された部分とは、固定状態においてロッド部45を挟み込むようにロッド部45に当接することにより、当該ロッド部45が移動することを防止する移動防止部53となる。すなわち、本従来例においては、保持具50Xのうちの係合孔51を規定する部分が、すべて移動防止部53となる。
【0067】
したがって、上述した従来例に係る現像装置30Xにおいては、保持具50Xを用いることにより、固定状態においてロッド部45が規制角度に調整されるとともにその回転および移動が規制されることになる反面、強制的にロッド部45を設計中心位置に配置するため、撓んだ状態が自然な状態であるマグネット部44およびロッド部45に不自然な撓みを生じさせてしまうことになる。
【0068】
図8は、本実施の形態に基づいた第1構成例に係るマグネット部の固定方法の概念を説明するための模式図である。
図9は、当該第1構成例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。また、
図10は、当該第1構成例に係る保持具の形状を示す図であり、
図11および
図12は、それぞれ当該第1構成例に係るロッド部の仮固定状態および固定状態を示す図である。次に、これら
図8ないし
図12を参照して、本実施の形態に基づいた第1構成例に係るマグネット部の固定方法について説明する。なお、
図9、
図11および
図12は、
図3中に示した矢印C方向に沿って第1構成例に係る現像装置30Aを見た場合の図であるが、理解を容易とするために、ロッド部45および後述するガイド突起31b6には斜線を付している。
【0069】
図8(A)は、本構成例に係る現像装置30Aにおいて、後述する保持具50A(
図8(B)参照)がロッド部45に装着されて筐体31の側壁31bに対して固定される前の非固定状態を表わしており、当該非固定状態においては、ロッド部45に上述した位置ずれが発生している。
【0070】
図8(B)に示すように、本構成例に係る現像装置30Aにおいては、後述する保持具50Aをロッド部45に装着し、当該保持具50Aを筐体31の側壁31bに固定することにより、ロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整されつつも、設計中心位置からの位置ずれが生じた状態のまま当該ロッド部45が規制角度に調整された後の配設位置において固定される。すなわち、本構成例に係るロッド部の固定方法は、上述した従来例に係るロッド部の固定方法とは異なり、ロッド部45の軸線を設計中心位置に強制的に合致させるものではない。
【0071】
その際、保持具50Aは、ロッド部45の軸線と概ね直交する平面の面内方向においてその筐体31の側壁31bに対する固定位置が調整され、これにより、当該面内方向における所定範囲内においてその配設角度が規制角度に調整された後のロッド部45が、その位置に配置された状態のままで当該保持具50Aによって保持されることになる。
【0072】
より詳細には、
図9に示すように、本構成例に係る現像装置30Aにおいては、筐体31の側壁31bの上述した設計中心位置に対応した位置に開口部31b1が設けられている。当該開口部31b1は、ロッド部45の外形よりも十分に大きく形成されている。また、当該開口部31b1の周囲の所定位置には、一対の第1ビス孔31b3、一対の第2ビス孔31b4および一対のガイド突起31b6が設けられている。一対のガイド突起31b6は、組付けに際して後述する第1部材50A1を所定方向に沿って案内するためのものであり、いずれも側壁31bの外側表面から外方に向けて突出している。
【0073】
一方、ロッド部45は、保持具50Aが装着される部分の周面に平面形状の当て留め面45aが設けられた略円柱状の形状を有している。すなわち、ロッド部45の保持具50Aに装着される部分は、断面視略D字状の形状を有している。ロッド部45は、非固定状態において開口部31b1に挿通しており、これによりロッド部45は、開口部31b1の内部に位置している。なお、このとき、ロッド部45には、上述した位置ずれが発生している。
【0074】
図10(A)および
図10(B)に示すように、保持具50Aは、互いに形状の異なる平面視矩形状の第1部材50A1および第2部材50A2を含んでいる。これら第1部材50A1および第2部材50A2は、いずれも金属製の板状部材からなる。第1部材50A1には、その所定位置に貫通孔形状の一対の第1挿通孔55および一対のガイド孔58が設けられており、第2部材50A2には、その所定位置に貫通孔形状の一対の第2挿通孔56が設けられている。
【0075】
ここで、第1部材50A1に設けられた一対の第1挿通孔55は、いずれも平面視長孔形状を有しており、それらの短軸方向の幅は、上述した筐体31の側壁31bに設けられた一対の第1ビス孔31b3の直径と同等に構成されている。また、第1部材50A1に設けられた一対のガイド孔58は、いずれも平面視長孔形状を有しており、それらの短軸方向の幅は、上述した筐体31の側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6の幅と同等に構成されている。なお、これら平面視長孔形状の一対の第1挿通孔55および一対のガイド孔58は、互いに平行に延びている。
【0076】
また、第2部材50A2に設けられた一対の第2挿通孔56は、いずれも平面視円形状を有しており、その大きさは、上述した筐体31の側壁31bに設けられた一対の第2ビス孔31b4よりも十分に大きく構成されている。
【0077】
第1部材50A1に設けられた一対の第1挿通孔55および一対のガイド孔58は、それぞれ筐体31の側壁31bに設けられた一対の第1ビス孔31b3および一対のガイド突起31b6に対応した位置に設けられている。また、第2部材50A2に設けられた一対の第2挿通孔56は、筐体31の側壁31bに設けられた一対の第2ビス孔31b4に対応した位置に設けられている。
【0078】
ここで、第1部材50A1には、平面視直線形状に構成された回転防止部52が設けられている。回転防止部52は、平面視矩形状の第1部材50A1の一辺にて規定されており、その延在方向は、第1部材50A1に設けられた上述した平面視長孔形状の一対の第1挿通孔55および一対のガイド孔58の各々の延在方向と直交する方向とされている。なお、回転防止部52の幅は、ロッド部45の当て留め面45aの幅よりも大きく構成されている。
【0079】
また、第2部材50A2には、平面視曲線形状に構成された移動防止部53が設けられている。移動防止部53は、平面視矩形状の第1部材50A1の一辺に湾曲状の切り欠き部を設けることで形成されている。ここで、移動防止部53は、ロッド部45の当て留め面45a以外の周面部分に沿う形状とされている。
【0080】
図11および
図12に示すように、保持具50Aがロッド部45に装着されて筐体31の側壁31bに対して固定される際には、まず、第1部材50A1を用いたロッド部45の仮固定が行われ、その後、第2部材50A2を用いたロッド部45の固定が行われる。
【0081】
具体的には、まず、
図11に示すように、ロッド部45の非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるようにロッド部45を回転させつつ、当該配設角度が規制角度になった状態におけるロッド部45の配設位置がそのまま維持されるように、第1部材50A1がロッド部45と筐体31の側壁31bとに対して宛がわれる。その際、第1部材50A1をロッド部45および側壁31bに宛がう前に、予めロッド部45の配設角度が規制角度に大まかに合致した状態となるようにロッド部45を回転させておくとよい。
【0082】
このとき、側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6が第1部材50A1に設けられた一対のガイド孔58に挿入されることにより、第1部材50A1が図中に示す矢印X方向に沿って案内されることになる。そのため、第1部材50A1を側壁31bの外側表面に宛がいつつ、第1部材50A1を当該矢印X方向に移動させることにより、ロッド部45に大きな負荷をかけることなく、第1部材50A1をロッド部45の当て留め面45aと筐体31の側壁31bとに対して宛がうことができる。
【0083】
ここで、当該非固定状態においては、上述した回転防止部52が、ロッド部45の当て留め面45aに当接させられる。すなわち、非固定状態においては、回転防止部52は、ロッド部45の当て留め面45aに当接することでロッド部45を回転させ(本例では、この回転方向が図中に示す矢印E方向となる)、これによりロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整する。
【0084】
また、このとき、回転防止部52は、第1部材50A1に設けられた一対のガイド孔58が側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6に挿入されていることにより、規制角度に配置された状態におけるロッド部45の当て留め面45aが成すべき角度に合致するように配置されている。すなわち、一対のガイド突起31b6は、固定状態における当て留め面45aと直交する方向に沿って第1部材50A1を案内することができるように設けられている。そのため、上述のとおり当て留め面45aと回転防止部52とが当接することにより、ロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整されることになる。
【0085】
次に、第1部材50A1が筐体31の側壁31bに一対の第1ビス592を用いて固定される。その際、側壁31bに設けられた一対の第1ビス孔31b3と第1部材50A1に設けられた平面視長孔形状の一対の第1挿通孔55の一部とが重なることになるため、一対の第1ビス592を用いた第1部材50A1の固定が容易に行なえることになる。
【0086】
続いて、
図12に示すように、第1部材50A1によって配設角度が規制角度になるように調整された後のロッド部45の配設位置がそのまま維持されるように、第2部材50A2がロッド部45と筐体31の側壁31bとに対して宛がわれ、その後、第2部材50A2が筐体31の側壁31bに一対の第2ビス593を用いて固定される。
【0087】
その際、第2部材50A2に設けられた移動防止部53がロッド部45の当て留め面45a以外の周面部分に沿うとともに、第2部材50A2に設けられた一対の第2挿通孔56が側壁31bに設けられた一対の第2ビス孔31b4に重なるように第2部材50A2を配置し、その状態を維持しつつ、一対の第2ビス593を用いて第2部材50A2を筐体31の側壁31bに固定する。
【0088】
このとき、上述したように一対の第2挿通孔56が一対の第2ビス孔31b4よりも十分に大きいことにより、第2部材50A2を大まかに位置決めするのみでこれら一対の第2挿通孔56と一対の第2ビス孔31b4とが重なることになり、さらには、図示するようにねじ頭が十分に大きい一対の第2ビス593を用いることにより、当該大まかな位置決めのみを行なった第2部材50A2をその位置において固定することが可能になる。
【0089】
以上により、固定状態においては、第1部材50A1に設けられた回転防止部52がロッド部45の当て留め面45aに当接した状態になるとともに、第2部材50A2に設けられた移動防止部53がロッド部45を挟み込むように当該ロッド部45に当接した状態になる。さらには、ロッド部45は、第1部材50A1に設けられた回転防止部52と第2部材50A2に設けられた移動防止部53とによっても挟み込まれた状態となる。
【0090】
そのため、上記構成の保持具50Aを用いることにより、ロッド部45の非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるように調整しつつ、当該配設角度が規制角度になった後のロッド部45の配設位置をそのまま維持した状態で、当該ロッド部45を筐体31の側壁31bに対して固定することが可能になり、これにより、固定状態においてロッド部45の回転および移動がいずれも規制できることになる。
【0091】
したがって、本第1構成例の如くの構成を採用することにより、マグネット部44およびロッド部45の角度を規制角度に調整しつつも、撓んだ状態が自然な状態であるマグネット部44およびロッド部45を当該自然な状態のまま固定することが可能になり、マグネット部44およびロッド部45に不自然な撓みが生じることなく、これを概ね無負荷の状態で保持および固定することができる。そのため、現像スリーブ41のスムーズな回転が実現できることになり、結果として、形成される画像に乱れが生じたり、ノイズが発生したりすることが未然に防止できることになる。
【0092】
図13は、本実施の形態に基づいた第2構成例に係るマグネット部の固定方法を採用した場合の、非固定状態におけるロッド部の配設位置の一例を示す図である。また、
図14は、当該第2構成例に係る保持具の形状を示す図であり、
図15は、当該第2構成例に係るロッド部の固定状態を示す図である。次に、これら
図13ないし
図15を参照して、本実施の形態に基づいた第2構成例に係るマグネット部の固定方法について説明する。なお、
図13および
図15は、
図3中に示した矢印C方向に沿って第2構成例に係る現像装置30Bを見た場合の図であるが、理解を容易とするために、ロッド部45およびガイド突起31b6には斜線を付している。
【0093】
本構成例に係る現像装置30Bは、上述した第1構成例に係る現像装置30Aと同様に、後述する保持具50Bをロッド部45に装着し、当該保持具50Bを筐体31の側壁31bに固定することにより、ロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整されつつも、設計中心位置からの位置ずれが生じた状態のまま当該ロッド部45が規制角度に調整された後の配設位置において固定されたものである。すなわち、本構成例に係るロッド部の固定方法も、上述した第1構成例に係る現像装置30Aと同様に、上述した従来例に係るロッド部の固定方法とは異なり、ロッド部45の軸線を設計中心位置に強制的に合致させるものではない。
【0094】
より詳細には、
図13に示すように、本構成例に係る現像装置30Bにおいては、筐体31の側壁31bの上述した設計中心位置に対応した位置に開口部31b1が設けられている。当該開口部31b1は、ロッド部45の外形よりも十分に大きく形成されている。また、当該開口部31b1の周囲の所定位置には、一対のビス孔31b5および一対のガイド突起31b6が設けられている。一対のガイド突起31b6は、組付けに際して後述する保持具50Bを所定方向に沿って案内するためのものであり、いずれも側壁31bの外側表面から外方に向けて突出している。ここで、ガイド突起31b6の突出量は、側壁31bからのロッド部45の突出量よりも十分に大きくされている。
【0095】
一方、ロッド部45は、保持具50Bが装着される部分の周面に平面形状の当て留め面45aが設けられた略円柱状の形状を有している。すなわち、ロッド部45の保持具50Bに装着される部分は、断面視略D字状の形状を有している。ロッド部45は、非固定状態において開口部31b1に挿通しており、これによりロッド部45は、開口部31b1の内部に位置している。なお、このとき、ロッド部45には、上述した位置ずれが発生している。
【0096】
図14に示すように、保持具50Bは、平面視矩形状の単一の金属製の板状部材からなり、その所定位置に貫通孔形状の係合孔51が設けられている。係合孔51は、上述したロッド部45の外形と同様に平面視略D字状の形状を有しているが、細部においてその形状が異なっている。係合孔51は、ロッド部45の大きさよりも所定方向において十分に大きく形成されている。また、当該係合孔51の周囲の所定位置には、貫通孔形状の一対の挿通孔57および一対のガイド孔58が設けられている。
【0097】
ここで、係合孔51を規定する部分の保持具50Bのうち、平面視直線形状に構成された部分であってかつその幅が最も長い部分は、固定状態においてロッド部45の当て留め面45aに当接することにより、当該ロッド部45が回転することを防止する回転防止部52として機能する。
【0098】
また、係合孔51を規定する部分の保持具50Bのうち、上述した平面視直線形状に構成された部分であってかつその幅が最も長い部分と、当該部分に対向して位置する平面視直線形状に構成された部分とは、固定状態においてロッド部45を挟み込むようにロッド部45に当接することにより、当該ロッド部45が移動することを防止する移動防止部53となる。なお、これら対向配置された移動防止部53の間の距離は、ロッド部45の当て留め面45aが設けられた部分の当該当て留め面45aと直交する方向における最大厚みよりも僅かに小さく構成されている。
【0099】
また、一対の挿通孔57は、いずれも平面視長孔形状を有しており、それらの短軸方向の幅は、上述した筐体31の側壁31bに設けられた一対のビス孔31b5の直径と同等に構成されている。また、一対のガイド孔58は、いずれも平面視長孔形状を有しており、それらの短軸方向の幅は、上述した筐体31の側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6の幅と同等に構成されている。なお、これら平面視長孔形状の一対の第1挿通孔55および一対のガイド孔58は、互いに平行に延びている。
【0100】
一対の挿通孔57および一対のガイド孔58は、それぞれ筐体31の側壁31bに設けられた一対のビス孔31b5および一対のガイド突起31b6に対応した位置に設けられている。
【0101】
図13に示すように、保持具50Bがロッド部45に装着されて筐体31の側壁31bに対して固定されるに際しては、まず、ロッド部45の非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるようにロッド部45を回転させつつ、当該配設角度が規制角度になった状態におけるロッド部45の配設位置がそのまま維持されるように、保持具50Bがロッド部45と筐体31の側壁31bとに対して宛がわれる。その際、保持具50Bをロッド部45および側壁31bに宛がう前に、予めロッド部45の配設角度が規制角度に大まかに合致した状態となるようにロッド部45を回転させておくとよい。
【0102】
このとき、側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6が保持具50Bに設けられた一対のガイド孔58に挿入されるようにすることにより、保持具50Bが図中に示す矢印X方向に沿って案内されることになる(この時点においては、ロッド部45は、未だ係合孔51に挿入されていない)。そのため、保持具50Bを当該矢印X方向に移動させることが可能になる。
【0103】
次に、保持具50Bを側壁31b側に向けて移動させ、Y方向に沿って保持具50Bの位置を調整しつつロッド部45が係合孔51に挿入可能となるようにロッド部45を回転させ(本例では、この回転方向が図中に示す矢印E方向となる)、その後、ロッド部45を係合孔51に挿入し、保持具50Bを側壁31bに宛がう。このとき、上述したように、対向配置された移動防止部53の間の距離がロッド部45の上記最大厚みよりも僅かに小さいため、ロッド部45は、係合孔51に圧入されることになる。
【0104】
ここで、上述した回転防止部52は、ロッド部45の当て留め面45aに当接させられることになる。すなわち、回転防止部52は、ロッド部45を回転させることでロッド部45の当て留め面45aに当接することになり、これによりロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整される。
【0105】
また、このとき、回転防止部52は、保持具50Bに設けられた一対のガイド孔58が側壁31bに設けられた一対のガイド突起31b6に挿入されていることにより、規制角度に配置された状態におけるロッド部45の当て留め面45aが成すべき角度に合致するように配置されている。すなわち、一対のガイド突起31b6は、固定状態における当て留め面45aと直交する方向に沿って保持具50Bを案内することができるように設けられている。そのため、上述のとおり当て留め面45aと回転防止部52とが当接することにより、ロッド部45の配設角度が規制角度となるように調整されることになる。
【0106】
続いて、保持具50Bが筐体31の側壁31bに一対のビス594を用いて固定される。その際、側壁31bに設けられた一対のビス孔31b5と保持具50Bに設けられた平面視長孔形状の一対の挿通孔57の一部とが重なることになるため、一対のビス594を用いた保持具50Bの固定が容易に行なえることになる。
【0107】
以上により、固定状態においては、回転防止部52がロッド部45の当て留め面45aに当接した状態になるとともに、回転防止部52および移動防止部53がロッド部45を挟み込むように当該ロッド部45に当接した状態になる。
【0108】
そのため、上記構成の保持具50Bを用いることにより、ロッド部45の非固定状態における配設角度が予め定められた規制角度となるように調整しつつ、当該配設角度が規制角度になった後のロッド部45の配設位置をそのまま維持した状態で、当該ロッド部45を筐体31の側壁31bに対して固定することが可能になり、これにより、固定状態においてロッド部45の回転および移動がいずれも規制できることになる。
【0109】
したがって、本第2構成例の如くの構成を採用することにより、マグネット部44およびロッド部45の角度を規制角度に調整しつつも、撓んだ状態が自然な状態であるマグネット部44およびロッド部45を当該自然な状態のまま固定することが可能になり、マグネット部44およびロッド部45に不自然な撓みが生じることなく、これを概ね無負荷の状態で保持および固定することができる。そのため、現像スリーブ41のスムーズな回転が実現できることになり、結果として、形成される画像に乱れが生じたり、ノイズが発生したりすることが未然に防止できることになる。
【0110】
以上において説明した本発明の実施の形態に基づいた第1構成例および第2構成例に係る保持具は、被固定部に対する固定位置を調整することにより、所定範囲内の任意の位置にロッド部を配置させて当該位置においてロッド部を保持することが可能に構成された保持具のあくまでも例示に過ぎない。すなわち、保持具の構成は、これらに限定されるものではなく、種々その変更が可能である。
【0111】
また、上述した本発明の実施の形態においては、電子写真方式を採用したいわゆるタンデム型のカラープリンターおよびこれに具備される現像装置に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、電子写真方式を採用した各種の画像形成装置およびこれに具備される現像装置に本発明を適用することができる。
【0112】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0113】
1 画像形成装置、2C,2K,2M,2Y 画像形成ユニット、3 中間転写ベルト、4 一次転写ローラー、5 二次転写ローラー、6 ベルトクリーニング装置、7 定着装置、8 制御装置、9C,9K,9M,9Y トナーボトル、10 カセット、11 トレー、20 感光体、21 帯電装置、22 露光装置、23 クリーニング装置、30,30A,30B,30X 現像装置、31 筐体、31a 隔壁、31b 側壁、31b1 開口部、31b2,31b5 ビス孔、31b3 第1ビス孔、31b4 第2ビス孔、31b6 ガイド突起、32 撹拌槽、33 供給槽、34 第1撹拌部材、35 第2撹拌部材、36 規制部材、40 現像ローラー、41 現像スリーブ、42 第1シャフト部材、43 第2シャフト部材、44 マグネット部、44a 突出部、45 ロッド部、45a 当て留め面、46~49 軸受、50,50A,50B,50X 保持具、50A1 第1部材、50A2 第2部材、51 係合孔、52 回転防止部、53 移動防止部、54,57 挿通孔、55 第1挿通孔、56 第2挿通孔、58 ガイド孔、591,594 ビス、592 第1ビス、593 第2ビス、D 現像剤、N1 現像極、N2 搬送極、S1 規制極、S2 汲上極、S3 剥離極、S 用紙。