(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-04
(45)【発行日】2023-12-12
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20231205BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20231205BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G21/16 152
(21)【出願番号】P 2019126450
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】池野 雄一
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-191734(JP,A)
【文献】特開2018-054898(JP,A)
【文献】実開昭63-165787(JP,U)
【文献】特開2008-010252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
H05B 1/00-3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1係合部および第2係合部を有する基板と、
前記基板の周りを回転する無端状のベルトと、
前記基板に設けられた抵抗発熱体からなる発熱パターンと、
前記発熱パターンと導通する給電端子であって、前記基板の長手方向の端部に設けられた給電端子と、
前記給電端子に接続する電極を有し、前記基板の短手方向の一方側から前記端部に取り付けられるコネクタであって、前記長手方向への移動が規制されるように前記長手方向において前記基板の前記第1係合部と係合する第1被係合部を有するコネクタと、
前記基板の短手方向の他方側から前記コネクタに取り付けられる係合部材であって、前記長手方向への移動が規制されるように前記長手方向において前記基板の前記第2係合部と係合する第2被係合部を有する係合部材と、を備え、
前記第1係合部は、長手方向に直交する第1係合面を有し、
前記第1被係合部は、前記第1係合面に対向する第1被係合面を有し、
かつ、前記コネクタに一体的に設けられ、
前記第2係合部は、長手方向に直交する第2係合面を有し、
前記第2被係合部は、前記第2係合面に対向する第2被係合面を有し、
かつ、前記係合部材に一体的に設けられ、
前記第1係合部は、前記基板の前記短手方向の前記一方側の端部に設けられ、
前記第2係合部は、前記基板の前記短手方向の前記他方側の端部に設けられ、
前記コネクタを
前記短手方向の前記一方側から前記他方側に移動させて前記基板に取り付ける過程において、前記第1被係合部が
前記コネクタとともに前記短手方向の前記一方側から前記他方側に移動して前記第1係合部と係合し、
前記係合部材を
前記短手方向の前記他方側から前記一方側に移動させて前記コネクタに取り付ける過程において、前記第2被係合部が
前記係合部材とともに前記短手方向の前記他方側から前記一方側に移動して前記第2係合部と係合することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記短手方向に沿った同一直線上に位置することを特徴とする請求項
1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一方は、前記短手方向に凹む凹部であることを特徴とする請求項
2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第1係合部および前記第2係合部の一方は、前記凹部であり、他方は、前記短手方向に突出する凸部であることを特徴とする請求項
3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記凸部の前記長手方向の寸法は、前記凹部の前記長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項
4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記コネクタおよび前記係合部材は、互いに係合した状態で前記基板に対して前記短手方向への移動が規制されることを特徴とする請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記基板は、金属からなることを特徴とする請求項
1から請求項
6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記基板の一方側の面に対向して前記基板を保持するホルダを有し、
前記ホルダは、
前記ベルトを案内するガイド面、および、前記基板を保持する保持溝を有するベース部と、
前記ベース部から前記長手方向に延出し、前記基板と重なる延出部と、を有し、
前記コネクタは、前記基板と前記
延出部とを、前記基板の前記面の直交方向に挟むことを特徴とする請求項
1から請求項
7のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第1係合部および前記第2係合部の一方は、前記短手方向に凹む凹部であり、
前記
延出部は、前記凹部と前記直交方向において重なる第2凹部を有し、
前記第2凹部の前記長手方向の寸法は、前記凹部の前記長手方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項
8に記載の定着装置。
【請求項10】
前記コネクタは、
前記短手方向の前記他方側に向けて突出する突起を有し、
前記係合部材は、
前記基板の前記短手方向の前記他方側の端面に対向する第1壁であって、前記突起が係合する穴を有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記基板の前記第2係合部は、前記短手方向に突出する凸部であり、
前記係合部材の前記第2被係合部は、前記穴であり、
前記コネクタの前記突起と前記基板の前記第2係合部が、前記穴に係合することを特徴とする請求項10に記載の定着装置。
【請求項12】
前記延出部は、前記保持溝の底面と面一となる面を有することを特徴とする請求項8または請求項9に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板状のヒータを備えた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置として、平板状の基板を有するヒータと、基板の長手方向の端部に取り付けられるコネクタおよびコネクタ側係止部を備えたものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、コネクタとコネクタ係止部は、基板の端部を短手方向に挟むように基板に取り付けられている。そして、コネクタ係止部が、基板の短手方向の一端に形成された凹部に係合することで、コネクタが基板に対して長手方向に移動することが規制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、コネクタ係止部のみが基板と長手方向に係合しているだけなので、コネクタの長手方向への位置規制が十分でなく、コネクタが基板に対して長手方向にずれるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、基板に対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る定着装置は、基板と、前記基板の周りを回転する無端状のベルトと、前記基板に設けられた抵抗発熱体からなる発熱パターンと、前記発熱パターンと導通する給電端子であって、前記基板の長手方向の端部に設けられた給電端子と、前記給電端子に接続する電極を有し、前記基板の短手方向の一方側から前記端部に取り付けられて、前記長手方向への移動が規制されるように前記長手方向において前記基板に係合するコネクタと、前記基板の短手方向の他方側から前記コネクタに取り付けられて、前記長手方向への移動が規制されるように前記長手方向において前記基板に係合する係合部材と、を備える。
【0007】
この構成によれば、コネクタと、コネクタに取り付けられる係合部材との両方が基板に長手方向に係合するので、基板に対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えることができる。
【0008】
また、前記基板は、前記コネクタと係合して前記コネクタの前記長手方向への移動を規制する第1係合部と、前記係合部材と係合して前記係合部材の前記長手方向への移動を規制する第2係合部と、を有し、前記コネクタは、前記第1係合部と係合する第1被係合部を有し、前記係合部材は、前記第2係合部と係合する第2被係合部を有し、前記第1係合部は、長手方向に直交する第1係合面を有し、前記第1被係合部は、前記第1係合面に対向する第1被係合面を有し、前記第2係合部は、長手方向に直交する第2係合面を有し、前記第2被係合部は、前記第2係合面に対向する第2被係合面を有していてもよい。
【0009】
また、前記第1係合部は、前記基板の前記短手方向の前記一方側の端部に設けられ、前記第2係合部は、前記基板の前記短手方向の前記他方側の端部に設けられていてもよい。
【0010】
また、前記第1係合部と前記第2係合部とは、前記短手方向に沿った同一直線上に位置していてもよい。
【0011】
また、前記第1係合部および前記第2係合部の少なくとも一方は、前記短手方向に凹む凹部であってもよい。
【0012】
これによれば、例えば各係合部が両方とも凸部である構造に比べ、製造工程における一枚の板材からの基板の取り数を多くすることができる。
【0013】
また、前記第1係合部および前記第2係合部の一方は、前記凹部であり、他方は、前記短手方向に突出する凸部であってもよい。
【0014】
これによれば、例えば各係合部が両方とも凹部である構造に比べ、基板の剛性を高くすることができる。
【0015】
また、前記凸部の前記長手方向の寸法は、前記凹部の前記長手方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0016】
これによれば、基板の剛性を高くすることができる。
【0017】
また、前記コネクタおよび前記係合部材は、互いに係合した状態で前記基板に対して前記短手方向への移動が規制されていてもよい。
【0018】
これによれば、基板に対してコネクタおよび係合部材が短手方向にずれるのを抑えることができる。
【0019】
また、前記基板は、金属からなっていてもよい。
【0020】
これによれば、例えば基板がセラミックスからなる場合に比べ、基板を加工しやすいので、第1係合部や第2係合部を簡単に形成することができる。
【0021】
また、前記定着装置は、前記基板の一方側の面に対向して前記基板を保持するホルダを有し、前記コネクタは、前記基板と前記ホルダとを、前記基板の前記面の直交方向に挟んでいてもよい。
【0022】
また、前記第1係合部および前記第2係合部の一方は、前記短手方向に凹む凹部であり、前記ホルダは、前記凹部と前記直交方向において重なる第2凹部を有し、前記第2凹部の前記長手方向の寸法は、前記凹部の前記長手方向の寸法よりも大きくてもよい。
【0023】
これによれば、基板の長手方向への熱膨張によって、基板の凹部に係合するコネクタまたは係合部材の被係合部が基板に追従して長手方向に移動しても、凹部よりも長手方向の寸法が大きい第2凹部内を被係合部が移動するため、被係合部とホルダとの干渉を抑制することができる。
【0024】
また、前記ホルダは、前記ベルトの内周面に接触して前記ベルトを案内してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、基板に対してコネクタが長手方向にずれるのを良好に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタを示す断面図である。
【
図3】ヒータを分解して示す斜視図(a)と、ヒータの断面図(b)である。
【
図4】基板からコネクタおよび係合部材を外した状態を示す分解斜視図であり、特にコネクタの電極と基板の給電端子との関係を示す分解斜視図である。
【
図5】基板からコネクタおよび係合部材を外した状態を示す分解斜視図であり、特にコネクタおよび係合部材と基板との係合箇所を示す分解斜視図(a)と、コネクタおよび係合部材と基板との係合箇所を示す断面図(b)である。
【
図6】基板にコネクタおよび係合部材を取り付けた状態を示す斜視図(a)と、コネクタおよび係合部材と基板とが係合した状態を示す断面図(b)である。
【
図7】基板および係合部材の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、レーザプリンタ1は、筐体2内に、供給部3と、露光装置4と、プロセスカートリッジ5と、定着装置8とを主に備えている。
【0028】
供給部3は、筐体2内の下部に設けられ、シートSが収容される供給トレイ31と、押圧板32と、供給機構33とを主に備えている。供給トレイ31に収容されたシートSは、押圧板32によって上方に寄せられ、供給機構33によってプロセスカートリッジ5に供給される。
【0029】
露光装置4は、筐体2内の上部に配置され、図示しない光源装置や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。露光装置4では、光源装置から出射される画像データに基づく光ビームが、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0030】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から筐体2に対して着脱可能となっている。プロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とを備えている。ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナーを収容する収容部74とを主に備えている。
【0031】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からの光ビームによって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間でシートSが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像がシートS上に転写される。
【0032】
定着装置8は、シートSの搬送方向において、プロセスカートリッジ5の下流側に配置されている。トナー像が転写されたシートSは、定着装置8を通過することでトナー像が定着される。トナー像が定着されたシートSは、搬送ローラ23,24によって排出トレイ22上に排出される。
【0033】
図2に示すように、定着装置8は、加熱ユニット81と、加圧ローラ82とを備えている。加熱ユニット81および加圧ローラ82の一方は、図示せぬ付勢機構によって、他方に対して付勢されている。
【0034】
加熱ユニット81は、ヒータ110と、ホルダ120と、ステイ130と、ベルト140とを備えている。ヒータ110は、平板状のヒータであり、ホルダ120に支持されている。なお、ヒータ110の構造は、後で詳述する。
【0035】
ホルダ120は、樹脂などからなり、ベルト140の内周面141に接触してベルト140を案内するガイド面121Aを有している。ステイ130は、ホルダ120を支持する部材であり、ホルダ120より剛性が大きい板材、例えば、鋼板などを断面視略U字状に折り曲げることで形成されている。
【0036】
ベルト140は、耐熱性と可撓性を有する無端状のベルトであり、ステンレス鋼等の金属からなる金属素管と、その金属素管を被覆するフッ素樹脂層とを有する。ヒータ110、ホルダ120およびステイ130は、ベルト140の内側に配置されている。ベルト140は、ヒータ110、ホルダ120およびステイ130の周りを回転するように構成されている。
【0037】
加圧ローラ82は、金属製のシャフト82Aと、シャフト82Aを被覆する弾性層82Bとを有している。加圧ローラ82は、ヒータ110との間でベルト140を挟むことで、シートSを加熱・加圧するためのニップ部NPを形成している。
【0038】
加圧ローラ82は、筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することでベルト140(またはシートS)との摩擦力によりベルト140を従動回転させるようになっている。これにより、トナー像が転写されたシートSは、加圧ローラ82と加熱されたベルト140の間を搬送されることでトナー像が熱定着されるようになっている。
【0039】
図3(a),(b)に示すように、ヒータ110は、基板Mと、第1絶縁層G1と、第2絶縁層G2と、発熱パターンPHと、給電パターンPEと、給電端子Tと、保護層Cとを有している。
【0040】
基板Mは、細長い平板であり、ステンレス鋼などの金属からなっている。基板Mは、加熱ユニット81または加圧ローラ82の付勢方向に直交する第1面M1および第2面M2を有している。本実施形態では、基板Mの第1面M1が加圧ローラ82に向くように、ヒータ110が配置されることとする。
【0041】
基板Mは、第1係合部の一例としての凹部M11と、第2係合部の一例としての凸部M12とを有している。凹部M11および凸部M12は、基板Mの長手方向の一端部に配置されている。以下、基板Mの長手方向を単に「長手方向」とも称し、基板Mの短手方向を単に「短手方向」とも称する。基板Mの長手方向は加圧ローラ82の回転軸方向、すなわちシャフト82Aの延びる方向である。基板Mの短手方向は、ニップ部NPにおけるシートSの搬送方向であり、ニップ部NPにおけるベルト140の移動方向である。
【0042】
凹部M11は、後述するコネクタ200(
図4参照)と係合してコネクタ200の長手方向への移動を規制する部位である。凹部M11は、基板Mの短手方向の一方側の端部に設けられ、短手方向に凹んでいる。
【0043】
凸部M12は、後述する係合部材300(
図4参照)と係合して係合部材300の長手方向への移動を規制する部位である。凸部M12は、基板Mの短手方向の他方側の端部に設けられ、短手方向に突出している。
【0044】
図5(b)に示すように、凹部M11と凸部M12は、短手方向に沿った同一直線L1上に位置している。凸部M12の長手方向の寸法は、凹部M11の長手方向の寸法よりも大きくなっている。
【0045】
凹部M11は、長手方向において、凸部M12の範囲内に位置している。詳しくは、凹部M11の長手方向の中央と、凸部M12の長手方向の中央とが、同一直線L1上に位置している。
【0046】
図3(a),(b)に示すように、第1絶縁層G1、第2絶縁層G2および保護層Cは、ガラス材などの絶縁体からなっている。第1絶縁層G1は、基板Mの第1面M1の上に形成されている。第2絶縁層G2は、基板Mの第2面M2の上に形成されている。
【0047】
第1絶縁層G1の上には、発熱パターンPH、給電端子Tおよび給電パターンPEが形成されている。つまり、発熱パターンPH、給電端子Tおよび給電パターンPEは、第1絶縁層G1を介して基板Mに設けられている。
【0048】
発熱パターンPHは、通電により発熱する抵抗発熱体からなっている。本実施形態では、発熱パターンPHは、基板Mの短手方向における各端部と長手方向の他端部に沿って延びるU字形のパターンとして形成されている。
【0049】
給電端子Tは、発熱パターンPHに電気を供給するための端子であり、ヒータ110の長手方向の一端部に2つ設けられている。各給電端子Tは、給電パターンPEを介して発熱パターンPHと導通している。各給電端子Tは、後述するコネクタ200(
図4参照)と接続可能となっており、コネクタ200を介して筐体2内の図示せぬ電源に接続される。
【0050】
給電パターンPEは、給電端子Tと発熱パターンPHとを電気的に接続するためのパターンである。給電パターンPEと給電端子Tは、発熱パターンPHよりも抵抗値の小さな導電性の材料からなっている。
【0051】
保護層Cは、各給電端子Tが外部に露出するように、給電パターンPEと発熱パターンPHとを覆っている。
【0052】
図4に示すように、定着装置8は、コネクタ200と、係合部材300とをさらに備えている。以下、コネクタ200および係合部材300の構造について説明するが、この説明の前に、ホルダ120の構造について説明する。
【0053】
ホルダ120は、前述したガイド面121Aを有するベース部121と、ベース部121から長手方向外側に延出する延出部122とを有している。ベース部121は、基板Mを保持するための保持溝121B(
図2も参照)をさらに有している。保持溝121Bは、底面が基板Mの一方側の面(本実施形態では第2面M2)に対向した状態で、基板Mを保持している。
【0054】
延出部122は、保持溝121Bの底面と面一となる面を有しており、この面で基板Mの一端部を支持している。延出部122は、基板Mの第1面M1に直交する直交方向において基板Mの凹部M11と重なる第2凹部122Aを有している。なお、以下の説明では、第1面M1に直交する直交方向を、単に「直交方向」とも称する。
【0055】
言い換えると、
図5(b)に示すように、第2凹部122Aは、直交方向に投影したときに、凹部M11と重なっている。第2凹部122Aの長手方向の寸法は、凹部M11の長手方向の寸法よりも大きい。そして、第2凹部122Aの長手方向の中央と、凹部M11の長手方向の中央とが、前述した同一直線L1上に位置している。
【0056】
図4に戻って、コネクタ200は、基板Mの短手方向の一方側から基板Mの一端部に取り付け可能となっている。コネクタ200は、樹脂などからなるコネクタ本体200Aと、金属などの導電性の材料からなる、2つの電極200Bとを備えている。
【0057】
各電極200Bは、ヒータ110の各給電端子Tに接続される電極であり、長手方向に間隔を空けて並んでいる。各電極200Bは、図示せぬ配線を介して図示せぬ電源に接続されている。
【0058】
コネクタ本体200Aは、直方体形状のベース部210と、ベース部210から係合部材300に向けて延びる第1延出部220および第2延出部230とを有している。ベース部210は、直交方向における各端面に、第1突起211を1つずつ有している(1つのみ図示)。
【0059】
第1延出部220および第2延出部230は、直交方向において、間隔を空けて並んでいる。第1延出部220および第2延出部230は、コネクタ200が基板Mに取り付けられた状態において、基板Mとホルダ120の延出部122とを、直交方向に挟んでいる(
図6(a)参照)。
【0060】
第1延出部220の先端面には、第2突起221が設けられている。また、
図5(a)に示すように、ベース部210は、対向面212と、第1被係合部の一例としての被係合突起213とをさらに有している。
【0061】
対向面212は、基板Mの短手方向の一方側の端面に対向する面であり、直交方向において第1延出部220と第2延出部230との間に配置されている。被係合突起213は、基板Mの凹部M11に対して長手方向に係合する突起であり、対向面212から基板Mに向けて突出している。
【0062】
詳しくは、
図5(b)に示すように、基板Mの凹部M11は、長手方向に直交する2つの第1係合面F11を有している。被係合突起213は、コネクタ200が基板Mに取り付けられているときに、長手方向において第1係合面F11に対向する2つの第1被係合面F12を有している(
図6(b)参照)。
【0063】
このように基板Mの凹部M11にコネクタ200の被係合突起213が係合することで、基板Mに対するコネクタ200の長手方向への移動が規制されるようになっている。
【0064】
図5(a)に示すように、係合部材300は、基板Mの短手方向の他方側からコネクタ200に取り付け可能となっている。係合部材300は、樹脂などからなり、第1壁310と、第2壁320と、第3壁330とを有している。
【0065】
第1壁310は、対向面311と、第2被係合部の一例としての被係合穴312を主に有している。対向面311は、短手方向に直交する面であり、基板Mの短手方向の他方側の端面に対向している。
【0066】
被係合穴312は、基板Mの凸部M12およびコネクタ200の第2突起221と長手方向に係合する穴であり、第1壁310を短手方向に貫通している。詳しくは、
図5(b)に示すように、基板Mの凸部M12は、長手方向に直交する2つの第2係合面F21を有している。被係合穴312は、係合部材300がコネクタ200に取り付けられているときに、長手方向において第2係合面F21に対向する2つの第2被係合面F22を有している(
図6(b)参照)。このように基板Mの凸部M12に係合部材300の被係合穴312が係合することで、基板Mに対する係合部材300の長手方向への移動が規制されるようになっている。
【0067】
なお、コネクタ200の第2突起221にも、係合部材300がコネクタ200に取り付けられているときに、長手方向において被係合穴312の第2被係合面F22と対向する2つの係合面F23が設けられている。そして、コネクタ200の第2突起221が係合部材300の被係合穴312に係合することで、係合部材300に対するコネクタ200の長手方向への移動が規制されるようになっている。これにより、コネクタ200は、被係合突起213により基板Mに直接係合するとともに、第2突起221により係合部材300を介して基板Mに間接的に係合している。
【0068】
図5(a)に示すように、第2壁320は、第1壁310の直交方向の一端からコネクタ200に向けて延びている。第2壁320は、コネクタ200の第1突起211に係合する第2被係合穴321を有している。
【0069】
第2被係合穴321は、第2壁320から第1壁310にわたって形成され、第1壁310の被係合穴312に繋がっている。第2被係合穴321の長手方向の寸法は、被係合穴312の長手方向の寸法よりも小さい。第2被係合穴321は、第1壁310および第2壁320を厚み方向に貫通している。第2被係合穴321は、第1突起211の長手方向の各端面211Aと短手方向の一方側の端面211Bとに係合している。
【0070】
ここで、第1突起211の短手方向の一方側の端面211Bは、短手方向に直交し、他方側の端面211Cは、短手方向の他方側に向かうにつれて直交方向の内側に位置するように傾斜している。第2被係合穴321が第1突起211の短手方向の一方側の端面211Bに係合することで、係合部材300がコネクタ200から短手方向に外れることが規制されている。また、第1突起211の短手方向の他方側の端面211Cが傾斜することで、係合部材300をコネクタ200に容易に取り付けることが可能となっている。
【0071】
第3壁330は、第1壁310の直交方向の他端からコネクタ200に向けて延びている。第3壁330は、コネクタ200の第1突起211(図示略)に係合する第3被係合穴331を有している。
【0072】
第3被係合穴331は、第3壁330から第1壁310にわたって形成され、第1壁310の被係合穴312から離れている。第3被係合穴331の長手方向の寸法は、第2被係合穴321の長手方向の寸法と同じ大きさとなっている。第3被係合穴331は、第1壁310および第3壁330を厚み方向に貫通している。なお、第3被係合穴331と第1突起211の関係は、前述した第2被係合穴321と第1突起211の関係と同じなので、説明は省略する。
【0073】
係合部材300は、前述したように被係合穴312がコネクタ200の第2突起221に長手方向に係合することに加え、第2被係合穴321および第3被係合穴331がコネクタ200の各第1突起211に長手方向に係合している。これにより、係合部材300に対するコネクタ200の長手方向への移動を、より良好に規制することが可能となっている。
【0074】
図6(b)に示すように、基板Mに取り付けられたコネクタ200に対して係合部材300が取り付けられた状態において、基板Mは、コネクタ200の対向面212と係合部材300の対向面311との間で短手方向に挟まれている。これにより、コネクタ200および係合部材300は、互いに係合した状態で基板Mに対して短手方向への移動が規制されている。
【0075】
次に、本実施形態に係る定着装置8の作用効果について説明する。
印刷を実行すべく、ヒータ110に電気を供給すると、給電端子Tおよび給電パターンPEを介して各発熱パターンPHに電気が供給され、発熱パターンPHが発熱する。発熱パターンPHからの熱によって基板Mが長手方向に熱膨張すると、コネクタ200および係合部材300は、基板Mの膨張に追従するように長手方向に移動する。これにより、
図4に示すコネクタ200の各電極200Bと基板Mの各給電端子Tの位置関係が変わらず、各電極200Bが各給電端子Tから外れるのを良好に抑制することができる。
【0076】
また、金属などからなる基板Mの線膨張率は、樹脂などからなるホルダ120の線膨張率よりも大きい。そのため、基板Mが熱膨張すると、ホルダ120に対してコネクタ200が長手方向に移動するが、
図5(b)に示すように、コネクタ200の被係合突起213が、長手方向に大きい第2凹部122A内に配置されるので、コネクタ200とホルダ120との干渉を抑制することができる。
【0077】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
コネクタ200と、コネクタ200に取り付けられる係合部材300との両方が基板Mに長手方向に係合するので、基板Mに対してコネクタ200が長手方向にずれるのを良好に抑えることができる。
【0078】
コネクタ200と係合する基板Mの第1係合部を凹部M11としたので、例えば第1係合部と第2係合部が両方とも凸部である構造に比べ、製造工程における一枚の板材からの基板Mの取り数を多くすることができる。
【0079】
第1係合部を凹部M11とし、第2係合部を凸部M12としたので、例えば各係合部が両方とも凹部である構造に比べ、基板の剛性を高くすることができる。
【0080】
凸部M12の長手方向の寸法を凹部M11の長手方向の寸法よりも大きくしたので、基板Mの剛性を高くすることができる。
【0081】
コネクタ200および係合部材300が、互いに係合した状態で基板Mに対して短手方向への移動が規制されているので、基板Mに対してコネクタ200および係合部材300が短手方向にずれるのを抑えることができる。
【0082】
基板Mが金属からなることで、例えば基板がセラミックスからなる場合に比べ、基板Mを加工しやすいので、凹部M11や凸部M12を簡単に形成することができる。
【0083】
基板Mの長手方向への熱膨張によって、基板Mの凹部M11に係合するコネクタ200の被係合突起213が基板Mに追従して長手方向に移動しても、凹部M11よりも長手方向の寸法が大きい第2凹部122A内を被係合突起213が移動するため、被係合突起213とホルダ120との干渉を抑制することができる。
【0084】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0085】
前記実施形態では、コネクタ200に係合する第1係合部を凹部M11とし、係合部材300に係合する第2係合部を凸部M12としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1係合部を凸部とし、第2係合部を凹部としてもよい。また、第1係合部および第2係合部を、両方とも凸部としてもよいし、両方とも凹部としてもよい。なお、第1被係合部および第2被係合部は、第1係合部および第2係合部の形状に応じて適宜凸部または凹部とすればよい。以下に、各係合部および各被係合部の変形例として、
図7に示す形態を代表して説明する。
【0086】
図7に示す形態では、基板Mは、第2係合部の一例としての凹部M13を有している。つまり、この形態では、第1係合部および第2係合部の両方が、凹部M11,M13となっている。係合部材300は、基板Mの凹部M13に係合する凸部313を有している。この形態では、第1係合部および第2係合部の両方が凹部M11,M13となるため、例えば前記実施形態のように第2係合部が凸部M12となる形態と比べ、製造工程における一枚の板材からの基板Mの取り数を多くすることができる。
【0087】
前記実施形態では、第2被係合穴321を被係合穴312に繋げたが、本発明はこれに限定されず、第2被係合穴321は、被係合穴312から離れていてもよい。
【0088】
前記実施形態では、基板Mの材料を金属としたが、本発明はこれに限定されず、例えばセラミックスなどの絶縁材料であってもよい。
【0089】
前記実施形態では、2つの給電端子Tを基板Mの一端部に配置したが、本発明はこれに限定されず、基板の両端部に給電端子を1つずつ配置してもよい。なお、この場合には、コネクタおよび係合部材を基板の両端部にそれぞれ1つずつ設ければよい。
【0090】
前記実施形態では、保護層Cを設けたが、本発明はこれに限定されず、保護層Cはなくてもよい。つまり、発熱パターンをベルトに接触させてもよい。また、第2絶縁層G2もなくてもよい。
【0091】
前記実施形態では、ヒータ110のうち発熱パターンPHが形成される側の面をベルト140に接触させたが、本発明はこれに限定されず、ヒータ110のうち発熱パターンPHが形成されない側の面(前記実施形態では第2絶縁層G2の面)をベルト140に接触させてもよい。なお、この場合には、ベルト140との摺動性を高めるための保護層Cは不要となる。
【0092】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0093】
8 定着装置
140 ベルト
200 コネクタ
200B 電極
300 係合部材
M 基板
PH 発熱パターン
T 給電端子